除夜の鐘が鳴った。  年越し蕎麦を、ポケモン達と一緒に食べていたレッドはそれを聞くと手を合わせた。 「明けましておめでとう。今年も宜しくな、みんな」  レッドのその言葉に、それぞれの言葉を返すポケモン達。  去年より今年、今年より来年。  レッドと彼らの友情は深まっていく。  それを何となく実感しながら、レッドは年越し蕎麦の最後の一滴を飲みこんだ。     __________        また、今年も▼  国民的アイドル・くるみちゃんの出演も終わったから、そろそろ寝に行こう。  そう思い、ピカ以外をボールに戻す。  欠伸をしながら、ピカを片手に抱きベットに向かうレッド。  ベットに入って、今まさに寝ようとしたその瞬間。  ピンポンピンポーン  電子的なチャイム音が、続けて二回押された音。  ため息をついて上着を羽織り、玄関に向かっていく。  ついでに寒いので机の上に置きっぱなしだった、マフラーを首に1回巻く。  ピカはレッドの肩に飛び乗って、来た人物の顔を見ようとした。  チェーンを外し、カギを開けたそこには。 「明けおめ、レッド!」  レッドが密かに想っている、ブルーがいた。 「ブ、ブルー!?どうしたんだよ、こんな時間に」  慌ててそう聞くと、ブルーは腰から一つのボールを取り出す。  そして指の上でクルクル、と回してキャッチした。 「毎年恒例年越しバトル。約束したでしょ?忘れたとは言わせないよ」  結局バトルすることになった二人。  レッドとブルーは少しの距離を開けて、向かい合っていた。 「よろしく、カメちゃん!」 「頼んだ、ピカ!」  ブルーのボールからは彼女の相棒・カメックス。  レッド側からは肩に乗っていたピカが飛び出して、互いに向かい合う。 「カメちゃん、メガトンパンチ!」 「ピカ、電光石火!」  カメちゃんから放たれる強力なパンチを、雷光のようなスピードで避け続けるピカ。  避け続けるピカに怒ったのか、カメちゃんは突然先ほどまでとは比べ物にならない力を込めてパンチをした。  先ほどまでとは断然スピードも速くなっていたが、ピカには簡単に電光石火で避けることができた。 「10万ボルト!!」  ピカの尾から強力な電撃が放たれ、カメちゃんを襲った。  水系ポケモンであるカメちゃんには、電気攻撃は効果抜群。  たまらず、瀕死寸前まで追いこまれてしまうカメちゃん。 「とどめだ、ピカ!」  速いスピードでカメちゃんに直線で襲い掛かるピカ。 「今よカメちゃん!ハイドロポンプ!!」  動けないでいたかと思われていたカメちゃんは、ブルーのその声に背中の大砲もどきから強力な水攻撃を発射した。  直線上で、ピカとそのハイドロポンプはぶつかり合う。  ピカは凄まじいその威力に、飛ばされて大地に叩きつけられた。 「ピカ!!」  レッドの声に、辛そうながらも立ちあがるピカ。  ブルーは嬉しそうに言った。 「レッド、勝利を過信しちゃ駄目よ!……カメちゃんはピンチになると水技の威力が強くなる事、忘れてたでしょ?」 「うー……。……行けるか、ピカ?」  その声に頷くピカ。  それに頷き返したレッドは、ピカに10万ボルトの指示を出した。  マサラを、閃光が襲った。 「あーあ、負けちゃった。」  それから直ぐ後。  モンスターボールにカメちゃんを戻したブルーは、悔しそうに呟いた。 「ま、ブルーも強くなったよな。」  そのレッドの言葉に嬉しそうに笑うブルー。  でしょ?と返すブルーに、まあなと返すレッド。  少し話してから。  一段落ついたブルーはそろそろ帰ろうとしていた。 「んじゃ、そろそろ私も寝るね。お肌に夜更かしは悪いから。」 「あ、ブルー!!」  帰ろうとしていたブルーを引きとめるレッド。 「明けましておめでとう。今年もよろしくな!」  ブルーはそれを聞いて笑うと、レッドのマフラーを引っ張って顔を自分の顔のそばに寄せる。  チュ。  音を立ててレッドの頬にキスをすると、 「今年もよろしく、レッド。……んじゃ、またね〜」  そういいながら夜に消えた。  後に残るのは顔を紅くしたレッドと、そんなレッドを不思議そうに見つめるピカのみ。  少年は今年も少女に降りまわされる。  そしてまた今年も、少女を想う年。  二人の気持ちが通じ合うのは、まだまだ先のお話?             終