ポケットモンスター小説版
186話 ネーブルジム! 雪山の戦い(前編)

島々へ海を渡り、ポケモンを治療するジョーイを助けたサトシ一行は、フェニックスで
次の目的地であるネーブル島へ向かう。 そこにあるジムに挑戦するために、サトシ達は
その島へ向かっていた。 …とその間、第一甲板でサトシとヒロシは何かの会話をして
いた。

ヒロシ「…え? ツバキの事どう思うだって?」
サトシ「お前何も思わないのか? 例えば可愛いとか、頭がいいとか、ごっつい強いとか
    めちゃくちゃ鋭いとかテンションすっげぇ高いとかぽやや〜ん♪とかほえほえ
    はにゃ〜ん☆とか色々あるだろ?」
そ、そんなめちゃくちゃな…。(汗)
ヒロシ「え!? ぼ、僕が…!? な、何で突然…!?」
ヒロシはサトシの発言により、顔を赤く染め始めた。
サトシ「いや、あのさ…お前が
*ハッサク島でツバキをイカロボットから助けた時、どうも
    何か仲がいいなぁと思ってさ…。 何か事情とかあんじゃねぇのかなぁ〜と
    思ってな。 で、ツバキの事どう思ってんだ?」

*184話「さよならコダック! また来てゴルダック?」参照。

ヒロシ「え、ど、どう思ってるって…。 そ、そりゃ、いい友達だよ! 唯の幼馴染だし
    …うん、それだけだよ!」
余りにも恥ずかしさで焦り始めるヒロシ。
サトシ「ホントに?」
サトシはそう言いながら、疑いそうな目付きでヒロシに見詰めた。
ヒロシ「………ん…まあ…正直に言うと…そりゃあ…可愛い子で…元気あるし…無茶
    ばかりするけど…それでも一生懸命で…がんばり屋さんで……小さい頃は妹
    みたいな存在だったから…とても…大切な子で…。」
サトシ「…それって「好き」って意味か?」
ヒロシ「!!!? 好きって、そう言うつもりじゃ…!!!」
サトシ「じゃあ、何だ?」
ヒロシ「………う…うん…好き…だけど…。」
サトシ「やっぱりそうか! いやぁ、俺の勘通りだったぜぇ! ツバキと初めて会った時、
    どうもいい関係だなと思ったぜぇ! けど、ツバキはその事を知ってんのか?」
ヒロシ「え? いや、気付いてないと…思うけど…。」
…どうやら前回の最初辺りにあったツバキの言葉は実は告白だったと言う事すら気付いて
いないらしい。 フッ、鈍感☆(おい)

ヒロシ「…! そう言えばサトシこそ、好きな子とかいるの?」
サトシ「!? な、何だよ、いきなり!?」
今度はサトシも顔を赤く染め始めた。
ヒロシ「だって、さっきは僕に言ったんだから、次はサトシの番だよ! で、いるの?」
サトシ「……………ま、まあ…いる…って事だな。」
ヒロシ「ホントに!? じゃ、相手は誰!? やっぱりカスミ!?」
サトシ「!!!? な、何でそこまでぇ…!?」
ヒロシ「「勘」だよ☆」
サトシ「…ま、まあ、そう言う事だ。」
ヒロシ「あは、やっぱり♪ 僕の勘通りだったね! セフィロスとの戦いの時どうもいい
    感じになってたからそう思ってたよぉ♪ で、告白とかしたの?」
サトシ「…まだしてねぇよ…。 まだ、タイミングが決まってないだけだ。」
ヒロシ「じゃあ、いつするの?」
サトシ「…する時が来たら…だ。」
ヒロシ「ふぅ〜ん。 じゃあ、僕と同様って事だね。」
サトシ「まあな。 けど、この事を知ってるのはコゴロウとゼトラ、レッド兄ちゃんに
    シュウにマロン! お前もその次だから、この事をあいつに…。」
ヒロシ「分かってる! 誰にも言わなければいいんだろ? 僕も内緒するから、そっちも
    僕の事も内緒にしてよ!」
サトシ「おうよ! 男同士の約束ってトコだな!」
ヒロシ「うん!」

その後、第一甲板の扉からアツミが出て来た。
アツミ「あ、いたいた! サトシ君、ヒロシ君、もう直ぐネーブル島に到着するって
    カルロスさんが言ったから、到着前に操縦室に戻れですって!」
サトシ「え、もうッスか?」
ヒロシ「どれですか、その島?」
アツミ「あれがそうよ!」
サトシ・ヒロシ「ん?」
アツミはある島へ指した。 その島には高い山があり、天辺に雪雲に包まれていた。 
おまけに南国なのに雪まで積もっている。 どうやらあれがネーブル島らしい。
サトシ「あれがネーブル島!?」
ヒロシ「雪だらけじゃないですか!?」
アツミ「ネーブル島は南国の中でも唯一雪の降る島で、山では年中冬季状態なの。 
    南国は年中夏季状態ってな訳じゃないからね。」
サトシ「そうなんだぁ…。」
ヒロシ「ジムではどんな競技を行うんですか?」
アツミ「う〜ん…雪だからウインタースポーツ中心だったわね。」
サトシ「ウインタースポーツ? それって…?」
アツミ「うん、雪を使うスポーツが中心なの。 スキーとかボブスレーとかね!」
サトシ「なるほど…よーし、ネーブルジムでバッジゲットだぜぇ!!!」

―ネーブル島―

ここはネーブル島。 オレンジ諸島の中でも唯一雪降る島である。 高い雪山に雪雲が
あり、サトシ達はその島へ上陸した。 しかし、町があるとしても、余りにも人気が
感じない。 もしかして誰もいないのか…?

カスミ「…何、ここ?」
シゲル「誰もいないぞ…?」
ブルー「何か不気味な感じね…。」
イエロー「人の気配も感じませんし…。」
グリーン「…この島は襲われた気配がない。 恐らく、元はいなかったんだろう…。」
レッド「じゃあ、何でここら辺中に家が立ててあるんだ?」
ツバキ「何だか寂しい風景ねぇ…。」
カルロス「…この島に人がいない上、建物も少ないと言う事は…この島にも部品を
     売ってる店がないって事か。 ケッ、くだらねぇ…。」
そんなカルロスは呆れた顔をしながらダークになった。
ブルーザー「まあ、今回でも少しくらい我慢しろよな!」
ツバキ「部品って何の部品?」
ケンジ「さあ。」

???「ようこそ、ネーブル島へ!」
サトシ達「!?」
その時サトシ達が振り向き、そこには一人の少女が立っていた。 その少女は長い金髪で、
ガールスカウトらしい。
???「あ、驚かせてごめんなさい。 私、この島のジムに勤めている助手、ユキミと
    申します! 貴方達がジムの挑戦者かしら?」
サトシ「え、あ、ああ…サトシって言うけど…。」
ユキミ「サトシ…? …!? まさか、カントーで有名なあの救世主、
    勇崎 智(ゆうざき さとし)!?」
サトシ「え!? え、ええ…。」
ユキミ「きゃあああ!!! うっそぉ!! 本物なの!? 信じられない!!! まさか
    本物のサトシさんと出会うなんて、夢にも思わないほど感動だわぁ!!!」
サトシ「いっ…!?」
ユキミ「…はっ!! し、失礼しました…。 私サトシさんのファンでして、つい…。」
サトシ「あ、そ、そうなの…。」
ユキミ「あの、よかったら後でサインでも…?」
サトシ「あ、い、いいけど…。」

サムライ「それよりも、ここは一体どうなったんでござるか?」
サクラ「ここに上陸した時、人気も感じなくて、誰もいないんだけど…。」
アヤメ「何かあったのかしら?」
ユキミ「あ、別に何も悪い事は起こっていません! ちょうどこの島にいる人達は
    町内会で旅行しに行っているので、この島はしばらく無人中なんです。 けど、
    私は助手だから、ここの警備とかしているので…。」
アツミ「あ、じゃあ、ジムリーダーは…?」
ユキミ「ジムリーダーもここに残っているんです。 今はジムで待機中なので…。」
ボタン「そのジムってどこなの?」
ユキミ「ジムはね…あ!」
サトシ達「え?」

その時、どこからハワイアンな歌が流れて来た。
マロン「…? 何、この微妙な音楽?」
ココナッツ「聞いた事ないわね…?」
マチス「ホワット!? ユー達このソングの事知らないのか!? ハワイアンソング
    だよ!」
ピッピ「ハワイアンソング…って何でしゅか?」
ピカチュウ
3「ピ〜?」
ベルガーダ「! おい、誰か来るぞ!!」
サトシ達「え!?」

そしてサトシ達が海の方へ振り向いたら、そこにはウイングサーフィンしている男が
現れた。 彼は茶髪で、イシツブテ模様の赤いアロハシャツを着ていた。 そんな彼は、
ラジオからハワイアンソングを流しながら、上陸した。
???「アロハ、エブリバディ♪ ネーブルジムに挑戦しに行くのかい?」
アキラ「…何だ、あの兄ちゃん…?」
シュウ「…微妙な言葉使いだな…。」
サトシ「…まあ、取り合えず、そうだけど…。 貴方は?」
???「僕はジ…じゃなくて、ダンって言うんだ。 君達は?」
サトシ「俺サトシ、勇崎 智と言います!」
ダン「ユウザキ…サトシ…?」
サトシ「? はい?」
ダン「…あ、いや、何でもない。 で、そっちの女の子は?」
ダンはカスミに向けてそう言った。
サトシ「へ?」
カスミ「え、あたし? カスミですけど…。」
ダン「へぇ、カスミって言うんだ。 じゃあ、スミちゃんだね!」
カスミ「え? スミちゃん…?」
ダン「ああ、カスミのスミだからスミちゃんさ! よろしく! いやぁ〜、こんな可愛い
   子と出会えるなんて、ついてるなぁ〜!」
カスミ「ま、まあ…そ、そんな…恥ずかしいわ…。」
そんなカスミはダンの言葉に赤く染め始めた。
ツバキ「…何か、カスミちゃんいい感じね…?」
ブルー「って言うか、あたし達だけ無視…?」
ボタン「ちょ、ちょっと!! 何でカスミだけぇ!? あたし達はぁ!?」
エリカ「まあまあ、落ち着いてください…。」
ナツメ「そうそう、今回はしょうがないから…。」
サトシ「……………。(怒)」
その間、サトシはダンとカスミの関係を見ながら、何やら妬きもちし始めた。
ツバキ「!」
けどツバキは、密かに妬きもちを焼いているサトシに気付いた。
コゴロウ「む〜、何か厄介な展開になってきたなぁ…。」
ゼトラ「…フン、くだらん。」
ユキミ「もう、ダンさんったら…。」
クリスティ「あら? 貴方彼の事知ってるの?」
ユキミ「え!? あ、うん…ちょっとね!」

―路上―

その後、ダンは突然と青い襟付きシャツに白い袖なし上着、茶色い長ズボンと黒い
ブーツに着替え、大きなリュックを背負いながら、サトシ達と供にジムへ歩いていた。
彼らはユキミの案内によって、ユキミの後を追っている。

ユキミ「皆さん、ジムはこのまま真っ直ぐなので、私に着いて来てください!」
その間、カスミはダンに引っ付きながら歩いていた。
カスミ「重装備ですね、ダンさん!」
ダン「備えあれば憂いなしって言うのがモットーなんだ!」
カスミ「誰かさんとは違ってぇ!」
そう、サトシの事である。 そんなサトシ達は、ダンの後ろに歩いていた。
スイート「あの人もジムの挑戦者かしら?」
ソラオ「さあ…重装備しているって事は、それの可能性が高いかもしれない…。」
ウミオ「じゃあ、あいつはライバルって事か! ヘッ、面白ぇじゃねぇかよぉ!」
サトシ「……………。(怒)」
しかしサトシはその間、ダンとカスミのムードにより、まだ妬きもちを焼いていた。
アイ「…さ、サトシ君…何怒ってるの…?」
サトシ「怒ってねぇ…。」
けどサトシはあれからずーっとダンとカスミのムードを見続けた結果、もっと不機嫌に
なった。 さすがに側でサトシを見ているアイも、冷や汗をかけ始めた。
アイ「怒ってる、怒ってるよ〜〜〜!(泣)」

けど、その間ツバキは、そんな怒ってるサトシを見ていた。 そして彼女は、何かに
分かったかのように、密かに笑んだ。
ツバキ「…なるほどねぇ…。」

―ネーブルジム―

サトシ達は遂に、ネーブルジムに辿り着いた。 ネーブルジムは雪山の近くにあって、
サトシ達はその扉の前に立っていた。

ユキミ「ここがネーブルジムよ! 今門を開けるから!」
サァッ…ピィ!! ユキミがカードをある機械に通し、機械が赤いバルブが緑色い光に
変わった。
ガチャァッ!! その後、門が開き、サトシ達は中に入った。
サトシ「…あれ?」
しかし、中はジムと言うよりも、ただのフィールドだった。 登山道の入り口にロープ
ウェイ。 まるで唯のハイキング場であった。
セイヨ「な、何なのここ?」
ジュン「唯のハイキング場ですね?」
ユキミ「ううん、ここがジムなの。」
サトシ「ここがぁ?」
ユキミ「ジムリーダーは現在、この山の天辺に待機してるの。 だから、ここで
    挑戦者達の試練を行います!」
サトシ達「試練?」
ユキミ「このジムでは挑戦者達を山登りをさせてもらいます! 山の頂点にはジム
    リーダーがいるので、そこまで登れば、勝負を申し受けられます! ただし、
    登山中にポケモンで力を貸して、「つるの鞭」とかで山を登ったり、「空を飛ぶ」
    を使ったりすると、挑戦の資格を失われます!」
サトシ達「えぇえええええ!?」
シュウ「そんなのありかよぉ!?」
マロン「ポケモンを使わずに登るのぉ!?」
ユキミ「ごめんね。 ルールだから仕方がないの。 では、ここで挑戦者の申し込みを
    行います。 挑戦者のサトシさんにダンさん、他にいますか?」
シゲル「俺シゲル!」
ヒロシ「僕ヒロシ!」
ブルー「ブルーです!」
イエロー「イエローと言います。」
レッド「俺はレッド!」
グリーン「…グリーン。」
アキラ「俺はアキラだ!」
カツコ「カツコって言います!」
サイゾウ「拙者サイゾウ!」
カオルコ「カオルコと申します!」
ウミオ「俺はウミオ!」
ソラオ「ソラオだ。」
スイート「スイートです!」
シュウ「シュウだ!」
マロン「マロンでぇ〜す!」
ユキミ「…はい、分かりました! では、挑戦者の皆さん! 登山の準備をしてください! 
    なるべくポケモンを使わないようにしてくださいね。」
サトシ「あ、でも俺のピカチュウとシャワーズ、モンスターボールに入れないから…。」
シュウ「俺のピカチュウも同じだけど。」
ヒロシ「僕のレオンもだけど…。」
ユキミ「あ、それなら構わないわ! なるべく技を使わなければそれでいいの! では、
    挑戦者以外の人は、ロープウェイに乗って、山頂へお待ちしてください。」
ピッピ「マロンしゃん、大丈夫でしゅか?」
マロン「うん、大丈夫! ピカチュウとピッピ達はロープウェイで先に行ってて!」
アーモンド「俺も一緒に行こうか?」
ユキミ「ごめんなさい、挑戦者以外は登山禁止なの。 それだけは分かってね!」
ココナッツ「そうよ! マロンなんかほっといて、あたしと一緒にロープウェイに
      乗りましょう、アーモンド〜
v
マロン「ちょっと、何よそれぇ!?」
ゾーマ「止めろ、見苦しい…。」
サトシ「まあ、とりあえずがんばろうぜ、みんな!」
シゲル達「おう!」
気合を入れるサトシ達だが、ダンはそんなサトシを興味深く見詰めている。
ダン「……………。」
ダッ!!! けどサトシは勢いにダンに走った。
ダン「!?」
ダンの前に立ち止まったサトシは、怒りに震えるように睨んだ。
サトシ「絶対負けないッスからね!!!」
ダン「…あ…ああ…。(汗)」
ツバキ「…クスッ…。」
ツバキはそんなサトシを見ながら、密かに笑った。

―数分後―

その後サトシ達は、早速山登りに始めた。 サトシ達は少し高くまで登り、かなり苦労
している。 シゲル達とダンはもう既に崖に立っているが、サトシはその崖に着くために
登っている。 後少しで着くらしいのだが、さすがにまだ手が届かない。

サトシ「へぇ…へぇ…ま、まさかこんなに苦労するなんて思わなかった…。」
シャワーズ「がんばって、サトシ!」
ピカチュウ「ピカピ、ピカチュウ!」

その間のカスミ達は、ロープウェイに乗ってサトシ達を見ていた。
ピース「ひゃ〜、高いねぇ〜! さすがに山登りするのに苦労するね〜。」
ヒトカゲ「…その前にお前が山登りしたら途中で倒れちまうよ…。」
ムサシ「ねぇ、山の天辺って雪あんだってね? 早く行きたいなぁ〜♪」
コジロウ「ははは、そう言えばお前、雪大好きだったよな…。」
ヤマト「そうだったの?」
カスミ「ダンさんがんばってぇ〜♪」

ダン「ありがとう、スミちゃ〜ん!」

カスミ「サトシもついでにがんばってねぇ〜☆」

サトシ「!? 「ついで」って何だよ、「ついで」ってぇ!?(激怒)」
サイゾウ「おお、サトシ君!! 怒ると落ちるでござるぞぉ!!」
サトシ「ハッ!! ……………。」
そんなサトシは思わず下を向く。 彼は相当高く登ったのか、地面がかなり遠く見えて
いる。
サトシ「ひぃいいいいっ!!!」
レッド「って、サトシ!!! 下見るなぁあああああ!!!!」
ガラッ!! その後、サトシが掴んでいた凸っている石が割れ、落ち始めた!
サトシ「え、うわぁああああああああああ!!!!」
レッド達・ダン「サトシ(君)(さん)!!!」
サトシ「くっ!!!」
ガシィッ!!! だがサトシは運がよく、もう一つの凸っている石を掴み取った! 
そしてサトシは無事落ちずに済んだ。
サトシ「…ふぅ…危ねぇ所だったぁ…。」
ブルー「サトシ、大丈夫!?」
ソラオ「待ってろ!! 今バナード(フシギバナ)で助けて…!」
そう言いながらソラオはバナードのモンスターボールを取るが…。
サトシ「出すなぁ!!!!!」
レッド達「!?」
サトシ「ポケモンを使っちゃダメだぁ!!! さもないと出場失格となっちまう
    ぞぉ!!!」
ソラオ「…そ、そうだった…。」
ブルー「でもサトシはどうなるの!?」
サトシ「俺は大丈夫だ! まだ登れる! だからそこで待ってろ!!」
そしてサトシは再び登り始めた。
ブルー「サトシ…。」
レッド「無茶すんなよぉ!!」
サトシ「分かってらぁ!!」
ダン「……………。」
そんなダンは、嬉しそうにサトシを見詰めていた。

―高山半分―

その間、サトシ達とダンは山の半分に辿り着き、しばらく休憩していた。 さすがに山を
登り続けていたせいか、疲労になっていた。

サトシ「はぁ…疲れた…。」
シュウ「まさかこんなに高かったなんて…。」
マロン「…見た目通り苦労するわね…。」
グリーン「…これもトレーナーになる試練の一つだ。 苦労するのも当然だ。」
シゲル「その前になぜ兄ちゃんだけ疲れてねぇんだぁ!?」
ダン「いやぁ〜、空気は美味いし景色も最高だし、やっぱ山っていいよなぁ〜!」
そう言いながら、ダンは元気そうに景色を見ていた。
アキラ「って言うかあんたまでも元気かい!?」
ヒロシ「けど、何だか寒くなってない…?」
カツコ「そうねぇ…あれから高く上ってるから、温度が低くなってるんだわ…。」
サトシ「おい、シャワーズ、ピカチュウ、大丈夫か?」
シャワーズ「僕は寒さには平気だけど、ピカチュウはどうなのか…。」
ピカチュウ「ピ、ピカァ…。」
サトシ「あ、そうか…。」
その後、サトシは上着を脱ぎ、それをピカチュウに包み、抱き上げた。
サトシ「ほら、これなら寒くないだろ?」
ピカチュウ「ピカピ…?」
シャワーズ「でもサトシは大丈夫なの?」
サトシ「大丈夫だよ、これも一応トレーナーの試練だから、寒さには堪えないとね!」

その間、シュウもジャケットを脱ぎ、それをピカチュウに包み、抱き上げた。
シュウ「サトシの言う通りだな。 ピカチュウ、これなら寒くはねぇだろ?」
ピカチュウ
2『ありがとう、シュウ! けどシュウは大丈夫なの?』
シュウ「平気さ! これぐらい風邪はひきやしねぇよ!」
ピカチュウ
2『そうだね! 「バカは風邪をひかない」ってのもあるしね!』
シュウ「………てめぇ、ケンカ売ってんのか…?」
久々のピカチュウの毒舌で怒るシュウ。
ピカチュウ
2『あ………ご、ごめん、つい…。』

ヒロシも同じく、上着を脱いで、レオンにそれを包み、抱き上げた。
ヒロシ「これなら寒くないよね、レオン?」
レオン「ピッカァ!」

ブルー「…あたしも何だか寒くなって来たぁ…。 やっぱ念に上着持って来れれば
    よかったぁ…。」
そんなブルーは腕を組みながら、寒さに震えていた。
しかし、その後何かがブルーの肩に被った。 何か、暖かい物が。
ブルー「!」
レッド「これなら寒くねぇだろ?」
そう、ブルーの肩に被ったのは、レッドの上着だった。
ブルー「い、いいの…?」
レッド「いいって! 風邪ひいちまうと後が大変になるからな! 俺は平気だから、心配
    するな!」
そんなブルーは、少し顔を赤く染め始めた。
ブルー「…あ、ありがとう…。」
その後、ブルーはハッと我を戻し、レッドから振り向いた。
ブルー(な、何やってんの、あたしったら!? レッドに赤くなってどうすんのよぉ!? 
    サトシに似てるからってぇ…!)
レッド「?」

シゲル「けど兄ちゃんはいいよな、そのマント暖かそうで…。」
そう、グリーンはこう見てもカントーから出る時からずーっとマントを着ていた。
グリーン「…お前だって長袖で十分暖かいだろ。」
シゲル「それとこれとは別だ。」
イエロー「ックシュン!!」
その後、イエローは寒さでくしゃみをした。 そしてイエローは腕を組みながら、寒さに
震えていた。
グリーン「!」
イエロー「うぅ…ホントに寒いですねぇ…。 風邪ひきそうですねぇ…。」
シゲル「…けどその格好だと暖かくねぇか?」
イエロー「そうでもありませんよぉ? 暖かそうに見えますけど、本当はそうでも
     ないんですから…。 でも、このままだと風邪ひいてしまいますねぇ…。 
     風邪ひいたら出場出来ませんし…。」
グリーン「……………。」
その後、グリーンはマントを脱ぎ、それをイエローに被らせた。
イエロー「!」
グリーン「着けておけ。 それなら、寒くならないだろ。」
イエロー「グリーンさん…。」
シゲル「ああ、兄ちゃんずるい!! 俺にも着させてくれよぉ!!」
グリーン「何言ってんだ? これも試練の一つだ。 我慢しろ。」
シゲル「そんなぁ…。(涙)」
その後、イエローは頬を赤く染めた。
イエロー「…あ、ありがとうございます。」
グリーン「………フン。」

カツコ「…あたしも何だか寒くなって来たわぁ…。 でもポケモンを使っちゃダメだし…。」
その間、アキラはリュックに何かを探していた。 そして探しの途中、リュックから
寝袋が出てきた。
アキラ「あったあった! 寝袋見つけたぜ!」
カツコ「…何するの、アキラ? まさか冬眠?」
アキラ「する訳ねぇだろ!? お前に貸すんだよ。」
カツコ「え?」
アキラ「寒いんだろ? これを毛布代わりにするといいぜ。 これ、結構暖かいから、
    とてもいいぜ!」
カツコ「アキラ………。」
アキラは寝袋をカツコに渡し、カツコはそれを受け取った。 そしてカツコは、思わず
頬を赤く染めながらアキラに見上げた。
カツコ「…あ、ありがとう。」
アキラ「いいってもんよ!」

カオルコ「私も寒くなってきましたわ…。 どうしましょう…体を暖める物を持って
     おりませんのに…。」
サイゾウ「……………。」
その後サイゾウはカオルコの隣に座った。
カオルコ「!」
サイゾウ「これなら寒くないでござるか?」
カオルコ「さ、サイゾウさん…?」
サイゾウ「拙者は大丈夫でござる。 寒さには慣れてるでござるから、気にしないで
     ござるよ!」
そんなカオルコは、思わず頬を赤く染めた。
カオルコ「…あ、ありがとうございます…。」

スイート「うぅ…南国なのにこんな寒い所もあったなんて知らなかった…。 やっぱり
     ジャケットとか何か持ってくべきだったわ…。 さ、寒い…。」
その間、ソラオはリュックに何かを探していた。 その後、彼はリュックから毛布を取り
出した。
ソラオ「あったあった! 念のために持って来た毛布があった!」
スイート「ソラオもいいわね、こう言う準備していて…。」
ソラオ「何言ってるんだい?」
その後、ソラオは毛布で自分とスイートにかけた。
スイート「え?」
そしてソラオは、スイートの隣に座った。
ソラオ「こうすれば、余計寒くはないだろ?」
スイート「そ、ソラオ…?」
ソラオ「これは自分のための物じゃないんだ。 君や他のみんなが使うための物さ。 
    でも、これで体が暖まるだろ?」
その後、スイートの頬は赤く染まった。
スイート「…あ、ありがとう…。」
その間ウミオは、二人を見ながら拗ねていた。
ウミオ「ケッ、いい気になってよぉ…。」
ソラオ「何拗ねてんだよ、ウミオ? お前も入れよ!」
ウミオ「いや、俺はいいや。 寒さには慣れてるかんな。」

マロン「あ〜あ、アーモンドも連れて来れれば、あたしを激しく暖めてくれるのに…。」
シゲル「無理言うな。 あいつ挑戦者じゃないし、いくらお前がそう望んでもこう言うの
    には無理だ。」
マロン「何よそれ!?」

サトシ「ピカチュウ、暖かいか?」
ピカチュウ「ピッカァ!」
シャワーズ「ダンさんは大丈夫なんですか?」
ダン「いや、僕はいいよ。 気にしないで。」
サトシ「そうですか…?」
ダン「……………。」
その間のダンは、サトシに見詰め続けた。
サトシ「?」
ダン「…やっぱり、似てるな。」
サトシ「え?」
ダン「君、確か名前は勇崎 智だったよね?」
サトシ「え? え、ええ、そうだけど…。」
ダン「で、君が兄の勇崎 レッドだったよね?」
ダンはレッドにそう言った。
レッド「え? あ、ああ…。」
ダン「そうか…通りで似てるな、君らの父、ツネカズさんと。」
サトシ達「!?」
サトシ「お、俺の父さん!? ダンさん、俺の父さんの事知ってるんですか!?」
ダン「もちろんさ! 昔一度ここに来た事があるからね!」
サトシ「何だって!?」
レッド「ちょ、ちょっと待ってよ!! どうして俺達の父さんの事知ってんだ!?」

ダン「…あれは十四年前の話さ。 僕はよくこの島で修行していた時、彼と会ったんだ。 
   ツネカズさんは当時ポケモンマスターを目指していて、オレンジ諸島に出張して
   いたんだ。 そこで僕は彼に挑み、自分の力がどれほどの物なのか試してみたんだ。 
   結果、彼の方が強かったけどね。 けど、ツネカズさんは僕にこう言ったんだ。 
   「ポケモンに大きな信頼、友情と愛情を与えれば、ポケモンは強くなる。 その
   正しい心をお互い繋ぎ合わせば、お互いも強くなる。」って。 そこで僕は彼を憧れ
   始め、強いポケモントレーナーになろうと決心したんだ。 彼は僕にとっては唯一
   憧れのトレーナー。 彼のおかげで、僕に勇気を与えてくれたんだ。」
サトシ「そうなんだ…。」
レッド「けど父さんがまさかオレンジ諸島に行ってたなんて、知らなかったなぁ…。」
ダン「その当時、君達がまだ生まれていなかったんだろうね。 ツネカズさんは、僕に
   よく電話して来たよ。 あれからどうしてるかとか、色々ね。 他にも、彼の
   結婚や、彼の子供まで僕に教えてくれたんだ。 それが、君達の事だよ。」
シャワーズ「それでサトシやレッドの事を知ってたんだね!」
ダン「しかし驚いたよ。 君がツネカズの息子だけじゃなく、まさかカントーリーグの
   優勝者に怪人セフィロスを倒した救世主だったなんて、ホントに知らなかったよ。」
サトシ「え…? じゃあ、やっぱり気付いてたんですか?」
ダン「ああ…。 けど、気付かなかったのは、ツネカズさんの葬式だった。 まさか彼が
   事故で亡くなったなんて、ニュースを見るまでは信じられなかったよ。 まさか
   僕の憧れが死んでしまったなんてね…。」
サトシ「ダンさん………。 あ、あの、ダンさん、一つ教えたい事があるんですど…。」
ダン「ん?」
サトシ「…俺の父さんは、一体どんな人だったんですか?」
ダン「え?」
レッド「サトシ?」
サトシ「俺、父さんが死んでからまだ三歳で、よく父さんの事を覚えていないんです。 
    レッド兄さんや母さんや他の親戚の人からではよく教えてくれたんですけど、
    まだ分からない点が多いんです。 ですから、教えてください。 父さんは、
    どう言う人だったのか…。」
ダン「……………。」
そんなダンは、サトシに優しく笑んだ。
ダン「…彼は立派なトレーナーだったよ。 とても優しくて、とても強くて、誰よりも
   ナンバーワンになるほどすごい人だった。 ジムリーダー、いや、四天王よりかな? 
   とても正しい道に歩いていて、正しい心まで持っていて、他にも何でも知っていて、
   とてもすごい人だったよ。 まあ、彼は誰でも憧れる天才だった。 史上最強と
   でも言えるけどね。 まあ、簡単で言うと、彼は世界一最高のトレーナーだよ!」
サトシ「ダンさん…。」
その後、ダンは話を終わりにし、立ち上がった。
ダン「さて、そろそろ登山続行だ! 他のみんなも山頂で待ってるはずだ。 いつまで
   待たせるとヤバイからな! さ、行くとするか、サトシ君?」
サトシ「…はい!」

―山頂―

ここはネーブルジムの山頂。 ロープウェイもあり、小屋もある。 サトシ達はようやく
この山の頂点まで辿り着いた。

サトシ「はぁ…はぁ…や、やっと着いた…。」
シゲル「やっとゴールに着いたぜ…。」
ブルー「な、長かったわね…意外と…。」

カスミ「サトシぃいいい! ダンさぁあああん!!!」
その時、毛布をかけたカスミ達が来た。
サトシ「あ、カスミ! みんな!」
フウコ「みんな大丈夫そうね!」
ドリオ「ったく、遅いじゃねぇかよ! 寒くて溜まんなかったぞぉ!」
サトシ「へへ、悪ぃ悪ぃ。」
アーモンド「マロン、山登りは大丈夫だったか?」
マロン「うん、大丈夫大丈夫!」
ココナッツ「まあ、マロンの事だから当然大丈夫だろうねぇ。」
マロン「何ですってぇ!?」
ウォール「まあまあ、落ち着いて落ち着いて…。」
ダン「けどご苦労だったな、サトシ君。 合格だよ!」
サトシ達「へ?」
ユキミ「選ばれし挑戦者、ジムリーダーの発言により、見事に合格しました!」
サトシ達「は?」
突然混乱するサトシ達。
サトシ「…どう言う意味?」
カスミ「まだ分からないの? ダンさんは挑戦者の不利をして、サトシ達の腕を試してた
    のよ!」
サトシ達「!?」
シュウ「って、ちょっと待て!! って事は…!?」
ダン「そう。 僕がこのネーブルジムのジムリーダー、サザンクロスの東の星、
   冬山 弾(ふゆやま だん)だ! よろしく!」
サトシ達「えぇええええええええええええええ!!!???」

何とダンの正体はジムリーダーだった! 果たしてサトシ達は彼とどんな戦いに入る
のか? この話の後編は、次回まで!

続く。

ソニックの後書き:
このまま続けると長くなるので、前編後編にしました。 今回はやけにカップリングが
暴れてますな〜♪ サトカスにレブルにグリイエにソラスイ(ソラオ
×スイート)…
しかも何と新たにアキカツ(アキラ
×カツコ)にサイカオ(サイゾウ×カオルコ)までも
追加! ヘッヘッヘ、俺ってどうかしてる〜♪(壊) さて、次回は当然ヘボくなるかも
知れませんが、気にせず期待を♪(嫌)