その時、俺の物語は始まった。 どこまでも続く大空のような雰囲気を持つ人。 空に対する『嫌い』という感情を『好き』に変えてくれた人。 つまり・・・空みたいな彼女のことを、好きになってしまったと言うことだろう。 その時を境に、俺の恋に対する恐怖心も、少しずつ薄れて行った。 そして・・・ ザ・ラブストーリー 二章『空の交響曲』 俺は、再びこの町に足を踏み入れた。 ヒワマキシティ・・・俺を変えてくれた人がいる町。 時間は、太陽を見る限りは、大体お昼頃だろう。 そして、俺はすぐに彼女を見つけた・・・ 「あれ・・・ナギ?」 「え・・・ライマさん・・・?」 視線が交わる。ちょっと照れ臭い。 「・・・覚えててくれたんだ。」 「ええ。だって、私のお陰で空を好きになってくれた、初めての人だから・・・」 「初めて・・・って、分かるの?」 「何となくね。大体、空が嫌いな人なんて、そんなにいないし、そんな人は、大抵ここで行き詰ってるわ。」 「それもそうだね。ところで、どうしてこんな所に?ジムは?」 「ジムは、今日は休み。だから、ちょっと散歩してたの。」 「そうなんだ・・・じゃ、じゃあさ・・・」 「何?」 「その・・・一緒に、お昼でも食べない?」 「え・・・は、はい・・・」 自分にしては、よく言えた方だろう。自己採点なら、まあ80点って所だ。スイキの基準だと、50点にも満たないだろうけど。 そんな事を考えてしまう辺り、やっぱり俺も、大恋愛の末結ばれたラブラブな両親の息子だなー、と思う。 そんなこんなで、前にここに来たときに食事をした店に入る。穴場中の穴場だから、客は少ない。 「こんな店があったのね・・・」 「え?知らなかったの?」 「ええ。ずっとこの町にいたのにね・・・」 「まあ、俺だって見つけたのは本当に偶然だったから。あの時は、道に迷っちゃってさ・・・」 「そうなんだ・・・」 とりあえず、ペスカトーレを注文することにした。彼女も同じものを選んだのにはさすがに驚いたが・・・ 「同じだね・・・ははは・・・」 「そうね・・・クスッ・・・」 「そう言えば、あれから何か変わった事あった?」 「ええ。この間、凄く強いトレーナーの女の子が来たの。凄いチームワークで、久しぶりにいいバトルができたわ。特に、チルタリスとフライゴンの空中戦は、思わず叫んじゃう程だったわ。」 「そうなんだ・・・俺も戦ってみたくなったよ。」 「戦って大丈夫?簡単に負けちゃったりしない?」 「大丈夫だよ。俺もあの時からずっと強くなってるから・・・多分だけど。」 「クスッ・・・ライマさんの方は、何かあった?」 「俺?うーん・・・あ、俺さ、弟が2人と妹が1人いて、皆トレーナーなんだけど、皆凄いんだよ。上の弟のスイキはジョウトでリーグ制覇しちゃったし、下の方のソウトは病気持ちなのに1人でカントー一周しちゃうし、末っ子のチサネなんてトレーナーになって一年でジョウトのリーグ本選を三回連続ストレート勝ちしちゃったんだ。本当に、いつ追い抜かれるか気が気じゃなくて・・・」 「凄いのね・・・いつかここにも挑戦にくるのかしらね。」 「そういえば、ソウトは今フエンにいるんだ。病気持ちだから、温泉療法を試すんだってさ。」 「大変なのね・・・そういえば、遅くなっちゃったけど、おめでとう。」 「え?」 「ホウエンリーグ優勝。テレビで見てたけど、やっぱりライマさんも凄いトレーナーなんですね。」 「そう?ははっ、ちょっと照れるな。」 「クスッ・・・」 俺達は、日が暮れて暗くなるまでヒワマキの町を2人で歩いて回った。 そして、2人で夜の公園のベンチに並んで座った。 「すっかり暗くなっちゃったね・・・」 「そうね・・・」 「あ・・・」 「どうしたの?・・・あ、雪・・・」 「もう冬だからね・・・でも、綺麗だな・・・」 「ええ・・・綺麗ね・・・」 「・・・君も綺麗だよ・・・」 「え・・・?」 「・・・えっと、その・・・」 「好きだよ、ナギ・・・」 「え・・・ライマさん・・・?」 「空をまた好きになれた、あの時から、ずっと・・・でも、俺には勇気が無かった・・・」 「・・・」 「怖かったんだ・・・ずっと前から、恋をすることが・・・でも、君と会ってから、それも少しずつ無くなっていった。」 「・・・」 「嫌いだったものが好きになれた。怖かったものが、怖くなくなった。全部君のお陰だよ。」 「ライマさん・・・」 「俺は・・・空みたいに優しくて、そして、俺の心にもう一度光を戻してくれた君が・・・好きなんだ・・・」 「ライマさん・・・ううん、ライマ・・・」 「ナギ・・・」 降りしきる雪の中、季節外れの花が咲いた・・・ fin・・・ 筆者の戯言 雰囲気ぶち壊しを少しでも遅らせるために、間を空けてみました。 まずはライマ編、終了しました。 実はこれ、好みのカップル像を次から次へと出しまくるようなシリーズだったりします。 男の子の心の弱い部分を、さりげない優しさで支えてくれる女の子・・・凄いツボなんです。が、そういう男は、いざとなればこんな大胆な(臭い)セリフをかっこよく決めて女を落とします。 え?一回会った後、こんなに間が開いてて告白してOKってのが不自然?そんな事ありません。何せ、俺の持っているとあるゲームでは、初めて会った時は助けただけでろくに会話もせず、次会ったときにちょっと会話しただけであっという間にラブラブなんていうとんでもないカップルが登場するんですから。それに比べたら全然インパクト無いですよ。 さて、次回は次男のスイキが主役です。どんな事になるんでしょうか? それでは、次も頑張りますので、よろしくお願いします!