聞き慣れたメロディが耳に入ってくる。 俺のポケギアの着信音(TSUNAMI)だ。 相手は・・・あれ?ライマ兄?珍しいな・・・ ま、どーせ例の事ソウトの奴に話したから頭にきてるんだろ。軽くあしらってやるか。 「もしもーし、こちらスイキ。どーした、ライマ兄?」 「スイキ・・・今どこ?」 「アサギの湖。勿論、釣り中だ。で、用は?」 「お前さ・・・今まで散々俺をからかってきたけど・・・そういう事を言うからには勿論彼女はいるんだろうな?」 「は?いや、そっちは別にまだ・・・」 「・・・勝った。」 「・・・何が?」 「・・・昨日、某人物に告白してOK貰った。」 「ふーん・・・って・・・」 何ーーーーーーーーーーー!? 信じられん!あの恋愛恐怖症にまで陥っていた兄が!?俺より先に!!? ・・・正直、悔しい。 ピッ! 「おーい、スイキどうした・・・って、切っちゃってるし・・・」 ・・・滅茶苦茶悔しい・・・ ザ・ラブストーリー 三章『水の円舞曲』 悔しさを紛らわすため、俺は釣りに興じる。趣味の1つだ。 一応、水系使いの達人としてそれなりに実力はある。それこそ、ジョウトリーグを制覇するぐらいの。 ただ、ライマ兄は既にカントーとホウエンの2つを制覇済みだ。 それに兄は電気系メインの構成・・・はっきり言って、ケンカになったら勝ち目は殆ど無い。 絶対に勝てる自信のあった色恋沙汰でもこの有様だ・・・ と、そんな事を考えていたら、突然とんでもない引きが! 「来た!よっしゃ、こいつを吊り上げて憂鬱ともおさらばだぜ!」 そして、思いっきり釣竿を引っ張ると、そこには特大のコイキング(推定約2.5m)が! 「しゃーーー!」 が・・・ 「・・・え?」 少々強く引きすぎたようで、釣り上げた勢い+はねる発動でとんでもなく高く跳ね上がったコイキングは・・・俺の真上!? 「やべっ、逃げろっ!」 そして・・・ ドシーン! 「あ、危ねえ・・・」 約1m先に物凄い音を立てて着地するコイキング。 「ふぅ・・・!?」 ・・・じたばた発動。 「どわーーーーーーーーっ!?」 おもいっきりぶっ飛ばされる俺! 「何でこうなるんだよーーーー!」 「何だかんだと聞かれたら・・・」 「答えてあげるが世の情け・・・」 ん?こ、この台詞はまさか・・・ 正面方向になにやら高速でぶっ飛んでくる物体を発見! 「世界の破壊を防ぐため・・・」 「世界の平和を守るため・・・」 「愛と真実の悪を貫く!」 「ラブリー・チャーミーな敵役!」 「ムサシ!」 「コジロウ!」 「銀河を駆けるロケット団の2人には!」 「ホワイトホール白い明日が待ってるぜ!」 「にゃーんてニャ!」 「ソーナンス!」 「お、お前らはいつぞやの・・・アホ団!」 「ちっがーう!ロケット団だー!」 「って、そんな事言ってる場合じゃニャー!」 「ぶつかるー!」 でも、何でこいつらがここに?いや、どうせいつものあいつの10万ボルトだろうが・・・ って、このままでは本当にぶつかってしまう!かくなる上は、最終手段! 「ピジョット、頼むぜ!」 俺達兄弟は、専門タイプ3体、非専門タイプ3体のチームを構成している。ってなわけで、俺はこうする。華麗にピジョットにまたがり、ロケ団を回避する俺! 「ふぅ、助かっ・・・」 「ってないんだなー、これが。」 「え?」 「ピジョット、吹き飛ばし♪」 「ピジョーット!」 やっぱりこういう奴は一発ふっ飛ばさないと気がすまない。 そして・・・ 「やな感じーーーー!」 いつもの台詞と共に、見事に☆になるロケット団。 「やーれやれ。とりあえず、街に戻るとするか。」 釣りをする気は失せたし、ストレスはさっきので発散したしな。 アサギシティ・・・ 実は、末っ子のチサネが生まれたばかりの頃、父の長期出張に我侭を言ってついてきた俺は、ここで暮らしたことがある。5年位かな。 理由と言えば、そうだな・・・今までの暮らしに飽きてしまったわけだ。 そして、ここで俺はとある子と友達になったわけだが・・・ ジョウトリーグ出場のためにここに立ち寄ったとき、その子と思いもよらない場所で再会した。 そう、IN THE アサギジム! で、やっぱり俺はそこに向かっていた・・・ そして、ジムの前まで来た時・・・中から人が出てきた。 「あれ?ミカン!ミカンじゃないか!」 「え?あ、スイキ君!」 「どうしたんだ?今頃ジムから出て来て・・・」 「あ、今日は本当は休みなんだけど、ちょっとポケモン達の健康診断があって・・・」 「で、昼過ぎの今になって健康診断も終わり、ポケモンセンターから一旦戻って、色々準備をして出かける所に俺が偶然鉢合わせたってわけか。でも・・・」 「でも?」 「先に準備してから健康診断に行っても良かったんじゃ・・・」 ・・・・・・・・・ 「・・・あれ?」 「そ、それは、その・・・」 「・・・『うっかり忘れてた』、だろ。昔の癖、まだ抜けてないんだな。」 「・・・ええ・・・」 「そして、そのせいでいじめの対象となり、よく泣かされてた。で、『泣き虫ミカン』がすっかり定着してしまった、と。」 「ちょ、ちょっと・・・」 「で、いつも泣き付かれるのは俺。そして、いじめっ子連中をやっつけるのも俺だった。この前ジムに挑戦したら、ジムリーダーの名前がミカンで『まさか』って思ったし・・・」 「もう、スイキ君の意地悪・・・」 「って、話されるのそんなに嫌だった!?」 「うん・・・」 「・・・昔もこうだったよな・・・俺が失言して、お前がぐずりだす。そして俺は慌てる・・・昔の癖が抜けてないのは俺も同じか・・・ははっ・・・」 「そうね・・・クスッ・・・」 「あ、今笑った!?ちょっと待てよ!さっきまで泣きそうだったくせに!!」 「あ・・・」 「・・・ま、いっか。っと、話を最初に戻して、今から出かけるんだろ?」 「ええ。」 「んー・・・俺も一緒でいいかな?」 「え・・・ええ、いいわよ。」 「じゃ、行こうか。」 俺の物語は、動き出していた・・・ 続く・・・ 筆者のぼやき 予想以上に長くなりましたとさ。 分かると思いますが、ロマンスっぽいライマ編とはうってかわってギャグ路線です。 まあ、ギャグの前振りが少々長すぎましたが。 さて、後半戦。スイキの災難はさらに続く。果たして、どうなってしまうのか!乞うご期待!