僕は、ずっとこの苦しみと共に生きてきた。 チサネが産まれて、母さんが退院するとき、僕は事故にあって、十日間も意識不明の重体が続いていた。 そして、意識を取り戻した後も、その後遺症・・・神経痛と痙攣が続くようになった。 それでも、僕はトレーナーになる道を選んだ。僕の憧れは、障害の一つや二つで冷めるものじゃなかったから。 それから、僕の家族は皆で、僕の障害を治す方法を必死に探してくれた。 そして、やっと見つけたのが、フエンタウンの温泉療法だった・・・ ザ・ラブストーリー 五章『暖の協奏曲』 ライマ兄さんとキンセツシティで別れてから二日・・・ トロピウスの背に跨る僕の視界に、街が見えてきた。 「あそこが、フエンタウンかな・・・トロピウス、ここで降りて。」 ゆっくりと高度を下げる。そして、着地。 「ふぅ・・・トロピウス、お疲れさま。戻っ・・・!?」 全身に激痛が走る。身体も震えだした。これは・・・ 「う・・・あぁ・・・」 駄目だ、動けない・・・こんな時に、野生のポケモンに襲われたら・・・!? 視界の隅に何か見える・・・マグカルゴ!?どうやら野生みたいだ・・・レベルも高そう・・・新しくポケモンを出せるような状態でもないし、今出ているのはトロピウスだけ・・・それに、苦しくて急な指示も出せない・・・ 「う・・・トロピウス・・・お願い・・・」 でも、そんなに長くは持たない。それまでに治まれば良いけど・・・!? ゴォォォォォォォ・・・! トロピウスが火炎放射一発で!?駄目だ、強すぎる・・・ 僕の方を向いた・・・もう、駄目なのかな・・・? !?何かが飛んできた・・・? ゴォォォォォォォ・・・! あれは・・・オーバーヒート!?でも、誰が・・・ 「君、大丈夫っ!?」 声が聞こえる・・・女の子の声かな・・・? 「う・・・あれ・・・」 ?マグカルゴが倒れた!?さっきのオーバーヒートの直撃と、あとは泥掛けが何発か位で・・・? 凄い・・・ ・・・安心したら、気が遠くなってきたな・・・ 「ねえ、ちょっと、しっかりしてっ!」 「う・・・ん・・・」 あれ・・・ここは・・・? そうだ、確か僕は、倒れてるときに野生のポケモンに襲われて、それで・・・ 「あ、気が付いた?良かったー・・・」 女の人?誰だろう・・・?そういえば、誰かに助けてもらったんだっけ・・・この人かな・・・ 「あの・・・もしかして、助けてくれた・・・」 「そうよ。あ、私はアスナ。フエンのジムリーダーなの。よろしくね。」 「そうだったんですか・・・あ、えっと、僕はソウト。一応ポケモントレーナーなんですけど・・・あの、ありがとうございます。」 「どういたしまして。でも・・・本当にトレーナー?」 「え?あ、そうですけど・・・」 ・・・無理ないよね。あんな状態で倒れてるトレーナーなんて・・・ 「・・・やっぱり、おかしいですか?」 「うーん・・・まあ、別に気にする事じゃないと思うけど・・・でも、本当に何で倒れてたの?」 「あ、昔交通事故に遭って、その後遺症なんです。時々、発作的に神経痛と痙攣が・・・倒れるくらいひどい事も時々・・・」 「さっきみたいな事、無かったの?」 「それは、今回が初めてです。毎回倒れるわけじゃないし、それに、強いポケモンに襲われる事もそんなにあるわけじゃ・・・」 「運悪く重なっちゃったって訳ね・・・あ、そうだ、これ・・・」 「あ、僕のトロピウスのボール・・・」 「君が眠ってる間に、治療しておいたわ。」 「そうですか・・・本当に、ありがとうございます。」 「どういたしまして・・・でも、やっぱりポケモントレーナーって、何が起こるか分からないでしょ。そんな身体で・・・どうしてそこまでして?」 「・・・」 僕が倒れたときに助けてくれた人は、皆同じ事を言っていた。「どうしてトレーナーになったんだ?」って・・・ 確かに、こんな身体だけど、でも・・・ 「・・・僕の家族は、皆ポケモントレーナーなんです。父さんや、母さんや、兄さん達、それに妹も、皆そうなんです。だから、僕も同じ道を進むって、決めてたんです。」 「でも、だからって無理してまで・・・」 「それでも、僕はこうしたかったんです。事故に遭う前から、ポケモントレーナーに憧れてたんです。障害の一つや二つで冷めるほどのものじゃないんです。」 「・・・」 「・・・凄いね・・・」 「え・・・?」 え・・・どうして?今までは、誰もそんな事・・・ 「私が君と同じような事になったら、きっと諦めちゃうな。でも、君は・・・」 「・・・」 「本当に、凄いね・・・尊敬しちゃうな・・・」 「アスナさん・・・僕・・・」 嬉しい・・・こんな事、今まで・・・あれ、何だか、涙が・・・ 「え、ちょ、ちょっと、何で泣いてるの!?ねえ!もしかして、何か悪い事・・・」 「違うんです・・・今まで、そんな事言ってくれたのは、家族の皆ぐらいで・・・他の人は、だれも分かってくれなくて・・・だから・・・嬉しくて・・・」 「ソウト君・・・」 やっと・・・分かってくれる人に出逢えたんだ・・・ 続く・・・ 筆者のぼやき 予告通り、シリアス路線を爆進しています。 さて、今までと比べて、少し違う事に気付きませんでしたか? 今までの一人称から、一人称+現在進行系にチェンジしてみました。 皆さんに、ソウト君の気持ちがよく分かるように書いてみたんですが・・・どうでしょうか? さて、後半はどうなるのでしょうか?それでは!