「ようこそ第一回クリエイターカップへ。まずトレーナーカードをお借りいたします。」 俺と姉貴は、受付の男の淡々とした指示に従ってカードを渡す。 それにしても、この大会の主催者は何者なのだろうか。11人が予選を通過し、50万円を受け 取るから、まず予選で550万も使っている。更に優勝者にはそれ以上の賞金を渡さなけれ ばならない。こんなに賞金が高い大会は聞いたことが無い。 そんな事を考えているうちに、受付の男が俺たちのトレーナーカードと何やらバーコード のついたカードを持って戻ってきた。 「お 待たせしました。カードをお返しします。それと、これは会場内専用のクレジットカー ドです。会場内の商品これで購入できます。最初から一万円が入っていま すが、換金も入金 もできます。このカードは会場に入る際のパスポートにもなりますなお、配布予定の昼食は 無料ですのでこのカードを使う必要はありません。」 ほほう。これはまた随分と手が込んでいるな。このシステムはシンオウリーグでも聞いたこ とが無いぞ。どうやら主催者はかなりの発想力と金と暇を持て余しているらしい。 「う〜ん、さっきの受付の人、合格点には程遠いわね。」 「もう知らない男を採点するのやめてくれよ。コガネとかコトブキとか恥ずかしくて行け ねえじゃねぇか。」 俺の姉貴、円月鈴蘭(スズラン)には、始めて見た男性を採点する癖(趣味なのか?)がある。 「ところで今何時?」 「・・・・・切り替え早いな。えっと、今は5時半だな。」 大会が始まるのは大体7時半。色々と手続きがあるので早く来るべきなのだが、どうやら早 過ぎたらしい。 「じゃあ私は寝るわね。7時15分になったら起こして。」 「遅すぎないか?そんな時間まで寝てたら大会に遅れるぞ?」 「私は低体温なのよ。」 「低血圧だろ?」 「・・・・・・・・・・・・・・・zzz」 「あっコラ、寝るな姉貴!・・・・・・・・・・・・・・・・・ダメだ、全然起きねぇ。しょうがない、出てこい ころろ!」 俺は姉貴のバッグに入っていたボールを一つ取り出し、中からエネコロロを出す。 「ころろ、姉貴の荷物を頼む。あと、7時15分・・・・・・この携帯のアラームがなったら姉貴を 起こしてくれ。」 さすがに姉貴のポケモンなだけあって、飲み込みが早い。一度ため息をついたが、承諾して くれた。 30分後 「ん?あれは・・・・・・おーいシュウヤー!!!!!!!!!!!!!」 身長180cmぐらいの背が高く、痩せていて眼鏡を掛けた男、姉貴の大学の後輩、シュウヤが いた。 「おっ、ザクロ。君もこの大会に参加しに来たのかい?」 「おう、まあせいぜい俺とあたらないことを祈るんだな。」 「ははは、そうだね。・・・・・・・・・・・・・・・・・ねえ、ところでスズランさんは?」 「姉貴?ああ、今寝てるよ。7時15分になったらころろが起こすから。」 シュウヤは姉貴に好意を抱いている。俺は、小さい頃からポケモンに勤しんでいた反動で恋 とか愛とかそういう概念が無いのだが。 「うん、わかった。僕も一眠りするかな。じゃあまた後でね。」 欠伸をしながらシュウヤは去っていった。 「さて、準備運動でもするかな。」 俺は手持ちのボールを五つ全て放り投げた。 ポン ポン ポン ポン ポン よし、始めるか!!