ナゾノクサ:「ねえ蓮華。」 蓮華:「ん?何、ナゾちゃん。」 ナゾノクサ:「山を下っていけばよかったのよね。」 蓮華:「うん。」 ナゾノクサ:「でも、あたしたち登ってるよね。」 蓮華:「うん。」 ナゾノクサ:「迷ったね。」 蓮華:「そうだね。」 2.対面だにゃ グロウタウンを出てから3日。あたしとナゾノクサは山を登っていた。ナナちゃんは山を下ればいいって言ってたけど、気づいたら登っていた。 蓮華:「いつ迷ったのかな?」 ナゾノクサ:「さあ。あたしもよく覚えてない。」 この世界に来て、旅に出た初めはずっと周りが珍しくて、ちょくちょく寄り道をしながらしていた。 山を下って、森を抜けて、川を渡って、滝を見て、そして今は山を登っている。多分、そのときに道を外したと思う。 蓮華::「地図くらい貰えばよかったね。」 ナゾノクサ:「確かに。でも、ナナちゃんはあたしたちが迷わないと思ったんじゃない?」 蓮華:「そうだけど、あたしもナゾちゃんもこの辺の地理、全く詳しくないこと、忘れてたよね。」 ナゾノクサ:「本当だ。…あっ!町が見えるよ。」 蓮華:「えっ?あ〜。よかったぁ。」 あたしとナゾちゃんは3日彷徨って、ようやく町に着いたようです。何か、とっても真っ白な家が多い、田舎を思わすような町でした。平和を感じます。 ナゾノクサ:「これがワカバタウンかな?」 蓮華:「ナゾちゃん、近くのポケモンに聞いてくれない?あたしも聞いてみるから。」 ナゾノクサ:「了解。」 それからしばらくして、あたしたちは合流した。 蓮華:「ここ、マサラタウンだって。」 ナゾノクサ:「らしいね。ワカバタウン通り越してきてるって、あたしの仲間が言ってたよ。」 あたしたちはため息をついた。 ナゾノクサ:「どうする?」 蓮華:「う〜ん…、あ、でもマサラタウンにはオーキド博士がいるはずだよ。あたし、ゲームでやったから覚えてる。」 ナゾノクサ:「それじゃ、そこに行こうよ。…ねえ、ゲームでやったなら多少の地理、分かると思うけど。」 蓮華:「…」 あたしは答えたくなくてそのまま歩き出した。 ナゾノクサ:「ちょっとぉ!答えてよ。」 ナゾちゃんはそう言いながら結局何も聞かずについてきてくれた。だって言いたくないよ。ゲームはやったけど、他のゲームに目移りして序盤しか進んでないんだもの。 そんなこんなで時間が経ち…。 蓮華:「着いたね。」 ナゾノクサ:「うん。蓮華、あたし当分は話さないから、話振らないでね。」 蓮華:「分かった。珍しがられて色々聞かれると厄介だしね。」 あたしはナゾちゃんとそんな会話をしながらインターホンを押した。すると、誰かがやってくるような音がして ??:「何の用にゃ?」 と、ドアが開いた。でも、言葉から分かるとおり、顔を出したのはニャースだった。しかも、喋ってる! 蓮華:「…あ、あの、あたし、道に迷っちゃって。」 ニャース:「道を聞きに来たのにゃ?」 蓮華:「そうじゃなくて、オーキド博士に会える?」 ニャース:「そうだにゃぁ、今は取り込んでる最中にゃから…、博士にどんな用にゃ?」 蓮華:「道を間違えてこっちに来ちゃったし、話を聞いてもらえないかと思って。」 あたしはさすがに、目の前のニャースと会話していることで気が動転していた。だからなかなか自分が別世界から来たことを切り出せない。 ニャースも忙しいのか、話をさっさとやめようとしたりするせいか、話は進んでいなかった。ああ言えばこう言う、呉越同舟のような感じになっていた。 でも、その時間はすぐに破られた。 ナゾノクサ:「いい加減にして!何、変な対話してるのよ。蓮華も言いたいことや言うことははっきり言いなさい!」 ナゾちゃんが切れたみたい。 ニャース:「にゃ〜、にゃ〜の他にも言葉を話すポケモンがいたんにゃにゃ〜。」 ナゾノクサ:「生まれつきよ。…じゃなくて、ニャース、あたしと蓮華は別世界から来たの。この意味分かる?」 ニャース:「にゃ〜…にゃ!?別世界ということは…、もしかしてあんた、蓮華ちゃんかにゃ?」 蓮華:「え、そうだけど。」 ニャース「そうかにゃ。上がるにゃ。ちょうど探してたところにゃ。」 いきなり話が見えなくなっていた。あたしとナゾちゃんはニャースにせかされるように家に、研究所に上げられた。そしてリビングらしき部屋に通され、お茶を貰っていた。 蓮華:「ナゾちゃん、どういうことかな?」 ナゾノクサ:「さあ。でも、ナナが博士に連絡入れてたのかもしれないよ。それか、哲兄がここで助けられたんだし、蓮華の話を聞いていてもおかしくないし。」 蓮華:「あ、そういえばそうだったね。哲兄があたしのこと、博士に話しててもおかしくないね。」 そこへさっきのニャースが戻ってきた。 ニャース:「よかったにゃ。ワカバタウンになかなか別世界から来た女の子がこにゃいって連絡が入ったから、探そうとしてたところだったにゃ。」 蓮華:「連絡って、ナナちゃんが?」 ニャース:「そうだにゃ。」 蓮華:「ふ〜ん。…あなたはどうして喋れるの?ナゾちゃんは薬品浴びちゃって喋れるようになっちゃったみたいだけど。」 あたしはナゾちゃんのことを普通に喋り、足を踏まれた。 ニャース:「にゃーのことにゃ?にゃーは覚えたにゃ。自分で自力で頑張って、夜も寝ないで徹夜して、必死で覚えたにゃ。 そのせいで猫に小判を覚えれにゃくにゃったけどにゃ。」 どこかで聞いた話だと思った。何かどこかで聞いたことがあるような…。 それを聞こうかと思ったとき、アニメやゲームでおなじみのオーキド博士が入ってきた。 オーキド博士:「君が蓮華君かい?」 蓮華:「はい。」 オーキド博士:「そして君が言葉を話せるナゾノクサかい?」 ナゾノクサ:「ええ。」 オーキド博士:「そうかい、そうかい。ようこそ、ポケモンの世界へ、そして我がオーキド研究所へ。ワカバタウンに行けなかった代わりに、ここで旅に必要なマップやポケギアを渡すことになっておる。 心配しなくてもいいぞ。それじゃ、ニャース、後のことは頼んだぞ。わしは研究の途中じゃからな。」 オーキド博士との対面は呆気なかった。 その後、あたしはニャースが運んできたタウンマップやポケナビ、ポケモン図鑑をもらった。 蓮華:「ニャース、オーキド博士はどうして忙しいの?」 ニャース:「にゃんでも、最近ににゃってあんたや哲也さんみたいに別世界から来る人が増えたのにゃ。それに伴って他とは違う性質のポケモンたちも別世界からやってきたのにゃ。 それらのことを論文にまとめたりしなきゃいけにゃくにゃったのにゃ。」 ナゾノクサ:「それってあたしのこと?」 ニャース:「そうにゃ。」 きっと別世界から来たっていうのはナゾちゃんが自覚してるとおり、あの研究所の爆発に伴ってこの世界にやってきた作られた子達のことだと思う。 でも、それをニャースに話す気はない。そんなことよりも気になる言葉をニャースが言ったから。 蓮華:「ねえ、今哲也さんって言ったよね。哲兄のこと、何か知ってるの?」 ニャース:「にゃ?哲也さんのことかにゃ?」 蓮華:「そうよ、ここから旅立ったんでしょ?」 あたしが聞きたいのは哲兄のこと。だって、心配だもん。 ニャース:「そうにゃ。哲也さんなら元気だにゃ。ポケモン図鑑を集めるのだってうまくやってるにゃ。とってもいい人だにゃ。」 蓮華:「そっかぁ。元気なんだ。」 ニャース:「哲也さんのこと、どうして知りたいのにゃ?」 ナゾノクサ:「蓮華は哲也さんの義理の妹だからよ。時間がずれてこっちの世界に来ちゃったから。」 ニャース:「そうなのにゃ。…哲也さんは今、カントウリーグのバッジを集めに行ったからにゃ。1年後、ポケモンリーグが行われるのにゃ。 条件はカントウかジョウトのバッジを8個集めたものだけというルールにゃ。多分、ナナから聞いてるはずにゃけど、あんたたちが元の世界に帰るには、 セレビィの力が必要にゃ。」 蓮華:「うん。聞いてるよ。」 ニャース:「それをゲットするために旅に出てるのにゃ。」 そんな時、電話が鳴った。ニャースが出ると、聞き覚えのある声が聞こえた。 ??:「ニャースか。元気そうだな。ポケモンの交換を頼みたいんだけど、いいか?」 ニャース:「いいにゃ。…哲也、お前に来客が来たにゃ。今代わるにゃ。」 ニャースが戻ってきた。あたしは夢じゃないかと思いたかった。哲兄からだから。 ニャース:「話は聞こえたはずにゃ。代わるにゃ。」 蓮華:「うん!」 あたしがテレビ電話の前に出ると、哲兄は驚いていた。 蓮華:「哲兄。」 哲也:「蓮華!お前、無事だったんだな。」 蓮華:「うん。あたし、最近この世界に来たの。哲兄とは時間ずれちゃったみたい。」 哲也:「そうか。お前が無事で本当によかったよ。」 蓮華:「ありがとう、哲兄。」 ナゾノクサ:「ふぅ。久々の対面ね。」 ニャース「お前はいいのにゃ?」 ナゾノクサ「ええ。ちょっと羨ましいけどね。あたしはあんまり面識ないからさ。」 あたしはちょっと蓮華のことが妬けた。羨ましいなって思って。でも。 哲也:「どうしてお前はそんなに分からず屋なんだ!」 蓮華:「哲兄が全くあたしのことを理解してないだけじゃない!」 哲也:「お前が分からず屋なんだ!全く、この世界に来たからって浮かれすぎなんだよ。少しは頭を冷やしたらどうだ?」 蓮華:「…哲兄、いい加減にしてよ。あたしのことをうるさく言いすぎ!そんなんだから彼女に逃げられるんじゃないの?」 哲也:「何!お前こそ、その妙な性格を直せよな!彼氏を作る前から逃げられるのがオチだ!それにまだ逃げられてない!」 蓮華:「もういい!哲兄の馬鹿!一生、会いたくない!」 気づけば電話の会話が口喧嘩になっていて、蓮華は勝手に電話を切っていた。 ニャース:「にゃ〜!何するにゃ!」 蓮華:「いいの!もういいの。会いたくなくなった。あんなのの顔なんか、絶対見たくない!」 蓮華はそう言い切って泣いていた。さっきまで会いたがっていたのに、今ではあんなの扱いとは、哲也さん、何言ったのよ。 しばらくしてニャースが男の人を呼んできて、蓮華を来客用の部屋に連れて行った。その人はバンダナをつけた若い人で、ニャースに「ケンジ」と呼ばれていた。 ニャース:「お前も部屋に行くかにゃ?」 ナゾノクサ:「ううん。蓮華を一人にしてあげる。あたしも慰めようがなさそうだし、一人のほうがいいよ。…ねえ、また電話鳴ってるよ。」 あたしはこの電話が誰か、大体予想できていた。 ニャース:「そうにゃ。はいはい…。あぁ、哲也さん、ポケモンの交換にゃね。」 やっぱり。案の定だと思った。目的前に蓮華に勝手に切られたものね。 ニャース:「でも、にゃんで喧嘩するにゃ?」 あたしはニャースの背後からこっそり話を聞くことにした。 哲也:「あいつは俺と同じで変わった能力がある。それをスペース団に知られたら厄介だからな。それを知っていて誰があいつを旅に出せるかよ。 あいつのことだ、どこで間違って使うかも分からない。」 ナゾノクサ:「力って?」 ニャース:「にゃ!?びっくりしたにゃ。」 哲也:「お前、確か蓮華の…。」 ナゾノクサ:「ええ。あたしは蓮華のナゾノクサよ。力って何?」 あたしは電話を切るところに足を近づけながら聞いた。 ナゾノクサ:「喋らなかったらまた切っちゃうから。」 哲也:「お、おい!」 ニャース:「何するにゃ!」 ナゾノクサ:「うん?」 あたしがニャースを睨みつけるとニャースは押し黙った。それにしてもあたしが喋るのを見て驚かないようなところを見ると、蓮華が喋ったのね。 哲也:「…俺が教えたって言うなよ。」 ナゾノクサ:「ええ。」 哲也:「あいつは植物を操る力があるんだ。」 ナゾノクサ:「…嘘。」 ありえないよ、そんなこと。 哲也:「嘘じゃない。あいつにはそういう力がある。でも、滅多には使わない。その力を利用されたら厄介なことになる。だから旅に出るなって言ったんだ。」 ナゾノクサ:「本当?」 ニャース:「本当にゃ。哲也さんにも違う能力があるにゃ。だから哲也さんの言ってることは正しいにゃ。」 一応理解した。 ナゾノクサ:「それじゃ、そう言ったら蓮華が反発したのね?」 哲也:「ああ。」 ナゾノクサ:「蓮華を旅立たせることに関しては?」 哲也:「悪いけど全くない。」 ナゾノクサ:「そう。あぁ!ちょっとつまずいちゃった!」 あたしは納得できたから、すぐにわざとこけた振りをして電話を切った。 ニャース:「にゃ〜!!!何するにゃ!」 ナゾノクサ:「うるさいわね!あたしの聞きたいことは大体分かったから、い・い・の。」 ニャース:「そうじゃないにゃ。また電話切ったにゃ。」 ナゾノクサ:「いいじゃない、減るもんじゃないし。…ニャース、スペース団って何?」 ニャース:「…電話代だって高いにゃ…」 ニャースはまだ後を引いてたけど、あたしとしてはスペース団の事が聞きたい。 ニャース:「にゃー、明日、蓮華ちゃんも一緒にいるときに話すにゃ。」 ニャースはさすがにあたしの相手をするのが嫌になったらしく、その場を離れていった。あたしは蓮華のところに戻った。 そして、気づいたらそのまま寝てた。 次の日。あたしが起きるといつの間にか、隣にはナゾちゃんがいた。 部屋を出ると、朝食が準備してあった。ニャースに聞いてみると、オーキド博士とあたしを部屋に案内してくれた人は研究に没頭しているらしい。 ナゾノクサ:「蓮華、もう大丈夫?」 蓮華:「うん。あたし、決めたもの。あたし、誰にどう言われようと、絶対に旅に出る!」 ナゾノクサ:「そう。よかった。」 蓮華:「何が?」 ナゾノクサ:「いつもの蓮華に戻ったから。」 ナゾちゃんはあたしを心配してくれていたみたいで、あたしはすごく嬉しかった。 そこへニャースがやってきた。 ニャース:「元気そうだにゃ。」 蓮華:「ええ。」 ナゾノクサ:「ニャース、何か用?」 ニャース:「用があるから来たのにゃ。今日哲也さんが戻ってくるそうだにゃ。会いたくにゃいにゃら今のうちに旅立つにゃ。」 ニャースは気を利かせてくれているみたいだった。確かにあたしと哲兄の口喧嘩を見れば…。 蓮華:「分かった。食べたらすぐに準備するね。」 あたしはさっさと食べて準備をしに行った。 ニャース:「元気になって何よりだにゃ。」 ナゾノクサ:「同感。…ニャース、蓮華いないけど、スペース団について教えてくれない?」 ニャース:「いいにゃよ。」 蓮華には後で教えておこう。そう思ってスペース団について聞くことにした。 ニャース:「元々カントウやジョウトにはロケット団という組織が暗躍していたのにゃ。でも5年前にロケット団はボスの解散宣言によって解散されたのにゃ。 でも、去年ごろからロケット団の残党で悪を捨てきれないものたちがスペース団と名前を変えて復活したのにゃ。」 ナゾノクサ:「ふぅ〜ん。でも、ニャース、ちょっと詳しそうなんだけど。」 ニャース:「当たり前にゃ。にゃーは元々ロケット団のポケモンにゃ。」 ナゾノクサ:「…マジ?」 ニャース:「マジにゃ。」 意外だった。結構すごいニャースだったのね。…猫に小判が覚えれないのに、どんなことしてたのかな。 ナゾノクサ:「でも、そんな悪の組織にいたあなたが、どうしてここにいるの?」 ニャース:「それはだにゃ、にゃーはロケット団に所属していた二人の男女と一緒に行動していたのにゃ。その二人も今は結婚してラブラブにゃ。 その二人とにゃーは、このマサラ出身のピカチュウを連れた少年を追い続けてたにゃ。そのピカチュウがすごく強かったからにゃ。」 ナゾノクサ:「ふぅ〜ん。ねえ、その少年がロケット団の解散と関係してるの?」 ニャース:「そうにゃ。ボスとその少年が戦って、ボスが負けたのにゃ。それでボスは決めたのにゃ。解散すると。」 ナゾノクサ:「へぇ〜。」 ニャース:「そいで、にゃーたちはボスの言葉に従ってロケット団を辞めたのにゃ。そしたらそいつがにゃーをここで働けるようにしてくれたにゃ。」 ナゾノクサ:「そうだったの。それでその彼は?」 ニャース:「今はポケモンマスターになってどこかを旅してるはずだにゃ。」 そこに蓮華が戻ってきた。 ナゾノクサ:「準備はいいの?」 蓮華:「うん。それじゃ、ナゾちゃん、行くよ。ニャース、またね。」 ナゾノクサ:「ニャース、また話そうね。バイバイ。」 ニャース:「頑張るにゃよ。」 あたしと蓮華はニャースに見送られてマサラを旅立った。 ちょうど同じとき、蓮華とナゾノクサが研究所から少し離れた小さな売店に入った直後、一匹のピジョットに乗った少年がオーキド研究所にやってきた。 ニャース:「にゃー、哲也さん、お帰りにゃ。」 哲也:「よっ、ニャース。蓮華は?」 ニャース:「ちょうど旅立ったにゃ。」 哲也:「…はっ?」 少年、哲也は穏やかな表情から一変、険しい表情に変わった。 哲也:「おい、!どうして止めなかったんだ!俺がここに来ること自体知ってただろ?」 ニャース:「無理にゃ。すでに決心してるトレーナーにやめろとは言えないにゃ。」 ニャースは言い切った。少年は浮かない不機嫌な表情に変わった。 哲也:「蓮華の奴…」 ニャース:「心配することはないと思うにゃ。あの子はちょっと変わってるけど、ナゾノクサがしっかりした性格にゃ。あいつに任せておけば大丈夫にゃ。」 哲也:「…」 ニャース:「哲也、蓮華ちゃんを信じるにゃ。」 哲也:「あいつと何年暮らしたと思ってるんだ、信じられるか!」 哲也はニャースを無視して研究所を飛び出した。 しかし、運命の悪戯とはこういうことを引き起こしていた。哲也は売店に蓮華がいることを気づかずに通り過ぎ、 戻ってくるときはそれぞれが建物の陰になってお互いの存在を隠してしまっていた。 ニャース:「にゃー、哲也さんも大変にゃ。」 そんな様子、運命の悪戯の様子を眺め、あえて哲也に教えてないニャースは蓮華のいた部屋で手紙を見つけた。 ニャース:「にゃ?蓮華ちゃんの手紙にゃ。…哲也さん宛てにゃ。にゃににゃに…。」 ”哲兄へ 何を言っても無駄だからね。あたしは旅に出るって決めたの。あたしのことを信じてくれたナゾちゃんたちと、 自分なりに強くなってくるって決めたの。哲兄があたしを哲兄の力で元の世界に送ってくれようとしているのは知ってる。 ずっと一緒に暮らしてたから、それくらい分かるから。血がつながってなくてもあたしを妹として見てくれる哲兄だから。 でも、それじゃ駄目なの。あたしはあたしの力で生きなきゃいけないことがいつかある。それが今なの。 だからごめんね。あたしは行くよ。どこかで会って止めても無駄だからね。それじゃ、ポケモンリーグで会おうね。 大好きな哲兄の最愛の妹より” ニャース:「にゃー、蓮華ちゃんも結構しっかりしてるにゃね。どこかのシスコンとは違うにゃ。」 ニャースは再び窓の外を見て、建物の影でお互いが知らずにすれ違っている様子を見て、そして呆れていた。 ニャース:「にゃにやってんだにゃ。」 ??:「全くだ。」