ついさっき哲也さんとすれ違った。蓮華も哲也さんも気がついてなかったけど、言わなくてよかったと思う。 ナゾノクサ:「蓮華、これからまずはトキワシティに行くの?」 蓮華:「うん。トキワシティを通って森を抜けて、ジムのあるニビシティに行くのよ。」 ナゾノクサ:「ジムか。でもさ、蓮華もあたしたちも、まだ一回もバトルしてないよ。未経験。それでどうやってバトルするの?」 あたしは思ったことを言った。 蓮華:「えっ?バトル…?……」 蓮華は…蒼白になった。 そして。 バタッ! 倒れた…って、ちょっと! 3.バトル未経験 ナゾノクサ:「蓮華!しっかりしてよ、どうしてそんなことで倒れなきゃいけないの!」 あたしの方が幸先不安だよ。そんな時だった。 ??「バリバリ?(どうしたんだ?)」 ナゾノクサ:「えっ?」 あたしの目の前には箒を持ったバリヤードがいた。聞いている割には、あたしの今の状況が分かってるみたいだけど。 ナゾノクサ:「あたしの…パートナーが倒れたの。」 バリヤード:「バリリ(やっぱりそうか)。バリ、バリバリバ(じゃあ、家に入れるよ)。」 ナゾノクサ:「いいの?」 バリヤード:「バリ(いいよ)。」 バリヤードは蓮華を家に入れてくれた。その直後、あたしはピジョットに乗った少年がマサラを飛び去るのが見えた。 多分あれは哲也さんだろう。入るとバリヤードのトレーナーと思える女の人が蓮華を介抱してくれた。 ナゾノクサ:「あ、ありがとうございます。」 女の人:「…あぁ、いいえ。困ったときはお互い様じゃない。」 あたしが代わりにお礼を言うと、女の人は一瞬間をおいて答えてくれた。 バリヤード:「バリ?バリバリバ?(あれっ?そういえば君喋れるの?)」 ナゾノクサ:「うん。あたしは喋れるよ。」 バリヤードは今の今まで気づいてなかったみたいだけど。 数時間後、蓮華が目を覚ました。 蓮華:「あれっ?ここは?」 女の人:「気がついたみたいね。」 ナゾノクサ:「蓮華、倒れちゃったんだよ。」 あたしと女の人、ハナコさんと言うらしい、が言うと、蓮華は寝ぼけ顔から正気に返った。 蓮華:「あ、ありがとうございます。見ず知らずのあたしなんかを。」 ハナコ:「いいのよ。困ったときはお互い様って言うじゃない。」 女の人は笑って言った。あたしたちは少し休み、再び旅に出ることにした。 蓮華:「お世話になりました。」 ナゾノクサ:「蓮華がお世話かけました。」 蓮華:「ちょっと、ナゾちゃん!」 ハナコ:「いいのよ。…あなたたち、旅に出るのは初めてなの?」 蓮華:「はい。」 蓮華は何故か緊張してるみたいだった。 ハナコ:「私の息子も旅に出ているのよ。」 蓮華:「そうなんですか。…あたし、バトルしたことなくて、今持ってるみんなもナゾちゃんもあたしも、バトル未経験なんです。 だからどうしようか考えてたら訳分かんなくなっちゃって。どうすればいいか、分かりませんか?」 蓮華は多分、この人がバリヤードのトレーナーだと思ったから聞いたみたいだ。でも、実際は違ったのよね。 バリヤードがこの人に懐いているだけ。バリヤードがこの人を好きだから、ここにいるということだけ。 でも、この人、ハナコさんがバリヤードのトレーナーのようなもんだ。 でも、ハナコさんは言った。 ハナコ:「トレーナーがポケモンを信じれば、バトルではうまくいくはずよ。お互いを信じて、落ち着いて行えばいいのよ。 それから、あなたのポケモンが何を覚えているか、それを確認してからにしなさい。」 蓮華:「はい!」 蓮華はそれを聞いて、やっといつもの笑顔に戻っていた。そしてあたしたちは旅立ったわけだったけど…。 ニャース:「出戻りするトレーナーは初めてだにゃ。」 ナゾノクサ:「しょうがないじゃない。もう夕暮れだし、ハナコさんの家に泊まるわけにはいかないし。」 蓮華:「ちょうどここはバトルフィールドも客室もあるでしょ?」 あたしとナゾちゃんはあれからすぐにUターンしてオーキド研究所に戻った。だって夕暮れだったし、トキワシティには一日はかかるなら、 夜で歩くよりは、と思ったからだ。 ニャース:「まあ、確かにそうだにゃ。…哲也さんも旅立ったし、いいと思うけどにゃ。」 そう言って、ニャースは入れてくれた。ケンジさんも一応歓迎してくれた。 それからしばらくして夕食を食べ、あたしとナゾちゃんはバトルフィールドに行った。 ニャース:「何をするにゃ?」 蓮華:「ちょっとみんながどんな技が使えるかを調べてみようと思って。」 ニャース:「図鑑を見ればすぐ分かるけどにゃ。」 蓮華:「そうだけど、その辺で技を放つわけには行かないし。出てきて、ロコン、サンド、サニーゴ、メリープ、ミニリュウ!」 ロコン:「コ〜ン!」 サンド:「サン!」 サニーゴ:「サニ!」 メリープ:「メ〜!」 ミニリュウ:「ミリュ!」 ナゾノクサ:「そしてあたしだね。」 蓮華:「うん。ナゾちゃんも行って。」 ナゾノクサ:「イェイ!」 あたしのポケモン6体がフィールドに出た。すると、何故か反対側にはニャースと6匹のポケモンがいた。 眠たそうなヒノアラシ、踊ってるワニノコ、真面目そうなヨルノズク、元気そうなゴマゾウ、突進してきそうなケンタロス、 そしてどう見ても紅一点そうで、妙にナゾちゃんを敵視しているベイリーフ。ナゾちゃん、対抗しなくてもいいよ。 蓮華:「ニャース、何するつもり?」 ニャース:「やるにゃら実戦が一番にゃ。ここにいるポケモンたちに初心者の相手を頼んだにゃ。」 やるしかない。あたしは腹をくくった。 蓮華:「まずはロコン、お願い!」 ロコン:「コ〜ン。」 ニャース:「こっちはベイリーフにゃ。」 ベイリーフ:「ベ〜イ!」 あたしは図鑑を見た。でも、どうしてナゾちゃんが怒らせたポケモンを使ってくるかな? 蓮華:「ロコンの技は…ロコン、火炎放射!」 ニャース:「ベイリーフ、光の壁だにゃ!」 火炎放射は光の壁で防がれてしまった。 ベイリーフ:「続いてのしかかりにゃ!」 ロコンは間一髪避けたけど、あと少しで潰されてた。 蓮華:「あ〜!ロコン、電光石火でかわして、スピードスター!」 ニャース:「リフレクタにゃ。」 今度も防がれた。次は…。 ニャース:「ベイリーフ、甘い香りにゃ。」 ベイリーフ:「ベ〜〜イ♪」 ベイリーフの葉っぱから出た靄みたいなのがロコンの動きをゆっくりにしていた。 蓮華:「どうなってるの?」 ナゾノクサ:「蓮華、甘い香りはポケモンの回避率を下げるのよ。」 蓮華:「そ、そんな〜!?」 あたしはどうすればいいか分からなかった。ナゾちゃんがアドバイスしてくれるけど、あたしはよく分からない。 ロコン:「コ〜ン?」 ニャース:「ベイリーフ、蔓の鞭で止めにゃ!」 ベイリーフ:「ベ〜イ!」 蓮華:「あぁ!」 ロコンは倒された。あたしはロコンをボールに戻した。もう一度ロコンの技を確かめた。 蓮華:「ロコンの技:火炎放射、火の粉、炎の渦、電光石火、スピードスター、鬼火…こんなにあったんだぁ。」 あたしは慌てていたことを反省した。 蓮華:「ニャース、バトルはやめる。あたし、図鑑でもう少し勉強しておく。」 ニャース:「そうしたほうがよさそうにゃ。」 蓮華:「戻って、みんな!」 あたしはボールにみんなを戻した。それから図鑑でみんなの技とその効果を確認し、それから寝た。 ナゾノクサ:「ニャース、お疲れ様。」 ニャース:「そっちもお疲れにゃ。大変そうだにゃ、何も知らずに旅する気満々のトレーナーのパートナーは。」 ナゾノクサ:「そうなのよ。バトル未経験って教えたことで倒れられちゃうし、あたしたちの天敵になる炎ポケモン使って、 草ポケモンに負けちゃうし。」 ニャース:「まぁ、今が駄目でもそういうトレーナーほど成長するほうだにゃ。ジャリボーイもそうだったかにゃ。」 ナゾノクサ:「…ジャリボーイ?」 ニャース:「あぁ、ハナコさんの息子でにゃーをここで働けるようにしてくれたトレーナーにゃ。にゃーたちがロケット団にいたときは そうやって呼んでいたにゃ。ついでに言えば、さっきのポケモンはぜ〜んぶジャリボーイのにゃ。」 ナゾノクサ:「ふぅ〜ん。砂利男(ジャリボーイ)ねぇ(どうりで強いわけじゃん)。…それじゃ、あたしも寝ようかな。」 ニャース:「また明日にゃ。」 ナゾノクサ:「ええ。また明日。」 次の日。あたしは再びニャースにバトルを申し込もうとした。が、ニャースがいない。 蓮華:「ナゾちゃん。」 ナゾノクサ:「どうかしたの?」 蓮華:「ニャースは?」 ナゾノクサ:「博士の研究に猫の手が必要になったみたい。忙しいから、あたしたちも旅に出よう。」 蓮華:「うん。分かった。」 あたしは結局バトルできずにナゾちゃんたちと旅に出た。やっと。 でもさ、ナゾちゃん、ベイリーフに喧嘩売ってから出かけるのはやめようよ。 フシギダネが間を取ってくれなかったら攻撃受けてたよ。