男:「ここがトキワのポケモンセンターだな。」 女:「ええ。ここには初心者用のポケモンがたくさんいるわ。ここのポケモンを捕まえれば、ボスも大喜びのはずよ。」 5.スペース団登場!? その夜、偶然にも蓮華とナゾノクサたちだけが泊まったトキワシティのポケモンセンターの真上には巨大な気球の姿があった。 もしそれを誰かが見ていれば、数年前のロケット団の奇襲および、センター大爆発のニュースを思い出していただろう。 男:「しかし、お前はよく知ってるな。そういうことは俺たちスペース団にばれないようにポケモン協会が決めていなかったか?」 女:「決まってるかもしれないわね。でも、あたしは知ってるの。」 気球の中の男女は、ポケモンセンターの天井に小型の爆弾を落とし、それと同時に無数のモンスターボールをセンターの周辺にばら撒いた。 男:「これでセンターは俺たちのものだな。」 女:「そうね。たとえポケモン警察であっても、ポケモンに手を出せるはずがないわ。」 数秒後、彼らの笑い声と同時に爆弾が大爆発を起こした。 蓮華:「きゃっ!」 ナゾノクサ:「何!?」 あたしとナゾちゃんは、突然の爆音に驚いて目を覚ました。とってもいい夢を見ていたところだったのに、体全体を揺らすくらいの揺れによって、 叩き起こされていた。でも、起きてすぐに分かった。何かが起きていることが。 蓮華:「ナゾちゃん。」 ナゾノクサ:「やっぱり蓮華も感じるんだね。」 蓮華:「うん。何か起きてるよね。」 ナゾノクサ:「行こうか。」 蓮華:「うん。」 あたしはボールを持ち、ナゾちゃんと部屋を出た。すると、すぐにジョーイさんに出会った。 蓮華:「ジョーイさん、一体何が起きてるの?」 ジョーイ:「スペース団よ。スペース団がポケモンセンターを襲ってきたの。」 スペース団::「ご名答!」 ジョーイさんが教えてくれた直後、あたしたちの前には青地に黄色のSという文字が書かれた衣装を着た男女が現れた。 ジョーイ:「あなたたち、何なのですか!」 スペース団男:「あなたたち、何なのですかと聞かれたら。」 スペース団女「答えてあげるが大事なこと。」 スペース団男:「宇宙の神秘を守るため」 スペース団女:「宇宙の汚れを浄化するため」 スペース団男:「愛とナチュラルな悪を貫く」 スペース団女:「究極のスペシャルな敵役」 スペース団男:「エレク」 スペース団女:「フレイ」 エレク:「天の川を駆け巡るスペース団の二人には」 フレイ:「イエロー&レッド、最高の夜明けが待ってるぜ!」 スペース団と名乗った二人は顔にスカーフを巻いていたので顔は判別できなかった。でも、妙に聞いたことがあるような気がした。 それはともかく。 ナゾノクサ:「変な名乗り方。」 蓮華:「同感。しかも長々と…、聞いてるほうの身にもなれって感じよね!」 あたしたちはただ叫んだ。 フレイ:「うるさい子達ね。悪いけど、あたしたちはここに預けられてるポケモンたちがほしいの。おとなしく渡してくれれば痛い思いはしないわよ。」 ジョーイ:「誰が渡すものですか!ここのポケモンたちにはちゃんとした持ち主がいますし、明後日ここから旅立つ子供にとって、大事なパートナーになる子です。 いくらあなたたちがスペース団であっても、渡すわけには行きません。それに、ここは数年前にロケット団に襲われたことで警備が強化されてます。 すぐに警察の方が駆けつけてくれることになってます。」 ジョーイさんは言い返した。でも、二人は全く動じていなかった。 エレク:「残念だったな。それはとっくの昔から分かってたよ。」 ジョーイ:「何ですって!」 フレイ:「まあ、警察はとうにセンターの周りに来てはいるでしょうけど、入って来れないのよね。この子達の大群がいるから。」 フレイと名乗った人が何かをボールから出した。それは…マグマッグだった。 フレイ:「マグマッグ、溶岩ポケモンよ。外にいるのは無理やり捕まえてきた野生のポケモン。でも、マグマッグが大量にただその場にいるとしたら、どうなるかしら?」 蓮華&ナゾノクサ:「!?」 あたしとナゾちゃんはよく分からなかったけど、ジョーイさんは分かったみたいだった。 フレイ:「どうやらその子たちには分からないようだし、教えてあげるわ。マグマッグ自体が高温を発する生き物なのよ。それが何匹もいて全く動かなかったら?」 あたしはやっと分かった。その場合、周囲の温度は急上昇して、周りの木々が燃え出してしまう。 フレイ:「分かったようね。この辺りは植物も多いし、ちょうど乾燥した時期。燃え広がることに時間は要らないわ。 すでにさっきからマグマッグを捕獲しているようだけど、200匹のマグマッグを数人の警官で捕獲すること自体、 焦る技ね。さて、本題に入るわよ。」 ジョーイ:「さっきから言っていますが、絶対にポケモンは渡しません!」 エレク:「そうか。それならこっちにも考えがある。行け!エレブー!」 フレイ:「行くのよ、コータス。煙幕よ!」 コータスの噴出した煙幕がセンターを包んでいく。あたしはジョーイさんの後をついてポケモンたちのいる場所に向かったけど、スペース団の二人は追ってきていた。 ジョーイ:「蓮華ちゃん、ここを任せてもいいかしら。あたしはラッキーたちとここのポケモンを別のセンターに移すわ。」 蓮華:「分かりました。」 ジョーイ:「ラッキーたち、力を貸してね。」 ラッキー:「ラッキー!」 ジョーイさんはラッキーたちを出して駆け出していき、あたしとナゾちゃんは止まった。 蓮華:「ここは一歩も通さないから。」 あたしはボールに手を伸ばした。でも。 フレイ:「ふぅ〜ん。あなたが相手になるのね。でも、たかが喋れるだけのポケモンとあんたに勝てるのかしら?」 エレク:「無理だろうな。エレブー、破壊光線だ!」 フレイ:「コータス、オーバーヒートよ。」 ポケモンの攻撃のほうが早かった。あたしとナゾちゃんに向かって、技の中では強力に等しい攻撃が向かってきた。 蓮華:「しょうがないや。アレを使うしかない。」 そう思ったあたしは意識を集中させた。そして辺りは爆煙に包まれた。 エレク:「さすがにあのトレーナーも終わりだな。」 フレイ:「ナゾノクサ一匹であたしたちに勝てるわけが…これは…!!」 スペース団は驚いたに違いない。彼らとあたしたちの間には巨大な蔓によってできた壁が通路を塞いでしまっているから。 ナゾノクサ:「蓮華?何をしたの?」 蓮華:「ナゾちゃん、これがあたしの力。ほんの一部でしかないけどね。言ったでしょ、あたしは植物を操るって。」 さっき近くにあった観葉植物に力を込めたのだ。それが一瞬で大きくなって、あたしたちの前に出て、攻撃を受け止めたのだ。 ナゾノクサ:「すごい!」 蓮華:「でも…ばれちゃった。ヤバイよね。」 ナゾノクサ:「かもね。内緒にしておこうよ。みんなには。」 蓮華:「うん。」 でも。少しの一安心は無駄だった。あたしとナゾちゃんはいきなりの爆発に弾き飛ばされていた。 フレイ:「ふぅ〜ん。植物を操る少女と喋れるナゾノクサのコンビね。ボスのお土産にはちょうどいいかも。」 エレク:「だな。」 蓮華:「あたしがやったって知ってる!?それに破れるなんて…。」 能力を知られている上に、あの巨大植物が一気に破られるとは思っていなかったので、あたしは驚いた。しかし、このままじゃいけない。 蓮華:「こうなったら!サニーゴ、サンド、お願い!地震よ!」 サニーゴ:「サニ!」 サンド:「サン!」 エレク:「させるか!エレブー、スピードスター!」 フレイ:「コータス、ヘドロ爆弾!」 今度はあたしの方が早かった。サニーゴとサンドの地震攻撃がエレブーとコータスの体制を崩し、エレブーのスピードスターがコータスに、 コータスのヘドロ爆弾がエレブーに向かって発射されていた。それにより、2体は倒れていた。 エレク:「くそぉ、よくもやってくれたな!」 そこへ外から声が聞こえてきた。 ジュンサー:「スペース団に告ぐ、ここは完全に包囲しました。マグマッグによる火災未遂および、ポケモンセンター襲撃の現行犯で逮捕します。 速やかにここから出てきなさい!」 ジュンサーさんの声だった。 蓮華:「残念だったね。これであなたたちはもう逃げられないよ。」 あたしが言うと、いきなり二人はジャンプした。というか、二人の体が上がっていく。気球が作動したみたいだ。 エレク:「今度はそうはいかないからな!覚えておけよ!」 フレイ:「ボスにあなたたちのことは教えておくよ。あなたを仲間にすれば、スペース団の力はさらに上がるからね。」 奴らが行ってしまう!あたしは捕まえなきゃ、と思った。でも。あたしよりも早く行動に出た者がいた。 ナゾノクサ:「待ちなさい!あたしのことを馬鹿にした罪は重いのよ!」 ナゾちゃんだった。ナゾちゃんの葉っぱカッターが女性のスカーフを破り去っていた。それによってフレイの顔がよく見えたんだけど。 蓮華:「…嘘。」 フレイ:「…うふふ。」 あたしは唖然としてその場に立ち尽くしているしかなかった。ナゾちゃんがあたしを呼んでも、あたしはただただ、驚いているしかなかった。 あたしの脳裏にはフレイの笑った顔が残っていた。 次の日。 あたしとナゾちゃんはポケモンセンターを出発した。あの後、ジュンサーさんたちが駆けつけたことで事態は逃げられてしまったものの、 何とか収まった。マグマッグもホウエン地方のフエンタウンのポケモンセンターに送られ、ポケモンセンターも速やかに修理が行われ、 普段どおりの一日が始まろうとしていた。 ナゾノクサ:「蓮華、そういえば、あの時動いていた監視カメラが、あのフレイって女の顔を映していたはずなのよ。」 蓮華:「…うん。」 ナゾノクサ:「あ、やっぱり。蓮華なんでしょ。証拠品のビデオ、誰も見ていないうちに破壊したの。いい加減に教えて。昨日から、何を隠しているの?」 あたしはずっとナゾちゃんから尋問を受けていた。あえて話さなかったけど、センターも出て、人目も少なくなったので、言うことにした。 蓮華:「ごめんね。人に聞かれちゃまずいのよ。」 ナゾノクサ:「どういうこと?」 蓮華:「あのフレイって言う人、あたしの友達なの。」 ナゾノクサ:「…えぇ〜〜〜〜〜!!!」 ナゾちゃんの叫び声は辺りをこだましていた。 あたしがナゾちゃんに話したのはこういうことだった。 フレイ、いや美咲ちゃんはあたしの友達だった。でも2年前に遊びに行ったテーマーパークのゲームセンター内で火事が発生した。 あたしたちは逃げたけど、美咲ちゃんとは逸れたままで、結局美咲ちゃんは行方不明になっていた。 あ、美香たちにも知らせるべきかもしれないかな?でも、それよりは…。 ナゾノクサ:「ふぅ〜ん。そういうことね。」 ナゾちゃんは納得したみたい。でも、あたしの考えにはまだ気づいていない。だから。 蓮華:「ナゾちゃん、あたし、スペース団を追う。」 あたしは宣言した。 ナゾノクサ:「へ?」 蓮華:「旅をしながら、スペース団を倒して美咲ちゃんを元の世界に連れて帰る。あたし決めた。」 ナゾノクサ:「…」 あたしは決めた。ゲームでは主人公がロケット団の作戦を一個ずつ倒していったはず!それにならってあたしも、スペース団を壊滅にしてやるの。 そうすれば、美咲ちゃんも元の世界に帰れるはずだから。 ナゾノクサ:「不安。」 この時、ナゾノクサの一言は、全くあたしの耳に届いていなかった。