数日前にハナダシティに着いたあたしは新種のポケモンを巡る騒動に巻き込まれた。それにはスペース団さえも絡み、 一時はキレイハナさえも間違われるくらいだった。しかしそんな時にやってきたスペース団に手も足も出ないあたしたちを救ったのは、 あたしの親友の海ちゃんだった。海ちゃんのポケモンと式神の力によってスペース団は最新型戦車を壊され撃退された。 どうやらあの爆発の後にやってきたという海ちゃん。海ちゃんは他になずなと氷雨さんとも来たらしく、次の日にはハナダを旅立っていった。 そしてあたしはひとまず、ジム戦を終わらせようと思っていた。ジム戦を終えた後に、ゴールデンブリッジや灯台を見に行こうと思っていた。 14.アクアバトル! 蓮華:「この町の状態からして、水の町というだけにハナダジムは水タイプのポケモンのジムだと思うの。」 キレイハナ:「そうかもね。だったらあたしやメリープの力で十分じゃない?ハネッコも結構育ってるでしょ?」 蓮華:「うん。でも、油断は禁物。前回のニビジムではキレイハナがいなかったら負けてたよ。」 イシツブテが火炎放射を放ったことでナゾノクサだったキレイハナは負けそうになったのだ。 蓮華:「あの時は太陽の石を偶然見つけたから進化して助かったけど、今回はそういうわけにはいかないと思うのよ。」 キレイハナ:「なるほどね。でも、セオリーどおりにあたしは使ってよ。」 蓮華:「うん。」 そんなことを喋りながらあたしたちは地図で示されたハナダジムへとやってきた。が、あったのはジュゴンの大きな看板が乗った水族館だった。 蓮華:「ここみたい。」 キレイハナ:「地図ではここなのよね。だったらそうでしょ。」 と、あたしはポスターを見つけた。 蓮華:「あ、やっぱりジムみたい。”水タイプの集まる水の楽園ハナダジム水族館、現在美少女人魚2人組の水中バレーショーを開催中”だって。」 キレイハナ:「水中バレー?…なるほどね、ハナダジムの副業っていうことね。」 あたしたちは中に入った。そして会場のほうに行くと、そこには人魚の姿をした二人が水ポケモンと戯れていた。 蓮華&キレイハナ:「うわぁ〜!すごい!」 あたしたちはその様子に思わず見とれていた。人魚を演じている二人がキレイであることはまだしも、泳ぎ方から演技まですべてが本物そっくりに見え、 しかもすごくかっこよかったし、魅力的だったのだ。 キレイハナ:「多分、あの一緒にいるポケモンたちがバトルの相手だと思うよ。」 蓮華:「そうだね。あっ!サニーゴもギャラドスもいる!…あれっ?」 あたしはふとステージ脇を見て目が点になった。それはキレイハナも同じだった。 あたしたちが見たのは浮き輪に乗って遊ぶコダックと、手拍子しかしていないニョロトノの姿だった。 キレイハナ:「泳げないのかな?」 蓮華:「じゃないかなぁ。だから浮き輪なんだよ。」 そんなことを考えているうちにショーは終わった。あたしたちは控え室のほうに行き、バトルを申し込むことにした。 ??:「今日はうまくいったわね。」 ??:「そうですね。明日はアクロバットに挑戦してみませんか?あたしの水芸も出してみたいし。」 ??:「それもいいんじゃない?世界の美少女とアクアガールの競演なのよ。」 控え室からは先ほど人魚をやっていたと思われる人の声が聞こえた。あたしはそれを聞いてまた再び、あれっと思っていた。まさかとは思うけど…。 キレイハナ:「蓮華、どうかした?」 蓮華:「あ、別に。すいません、ジム戦に来たんですけど入ってもいいですか?」 あたしがドア越しに言うと、声は止み、 ??:「どうぞ。」 という声が戻ってきた。 蓮華:「失礼します、グロウタウンの蓮華と言います。ジム戦を…来美ちゃん!?」 ??:「嘘、蓮華ちゃん…。」 あたしはさっきのまさかが当たったと思った。あたしの目の前にいた、片方の人魚は現実世界のあたしのお姉さん的存在の来美ちゃんだったのだ。 年齢は哲兄の一つ上で、あたしとは3つ離れていた。 ??:「何だ、来美の探してた子だったの?」 そう言ったのはオレンジの髪が肩ほどまである人だった。あたしともそう離れていないはず。 来美:「ええ。」 ??:「そう。よかったじゃない、見つかって。」 そう言うと、その人は部屋から出た。 ??:「あたしはちょっと外にいるわね。十分話したら、ジム戦をやりましょ。」 その人の後をいつの間にかキレイハナもついていき、あたしと来美ちゃんがその場に残った。 あたしはひとまず、これまでの経緯を話した。 蓮華:「…みたいな感じで、あたしはそれでセレビィを捕まえるために、リーグでベスト3に入るためにジムを回っているの。」 来美:「そう。あたしは爆発事件の次の日にも何人かが姿を消したことを聞いたの。それで舞さんに事情を話して、蓮華ちゃんと哲也、それに久美ちゃんを 探し出してくるからって説得して出てきたの。」 久美ちゃんというのはあたしと住んでる4人のうち、最後の一人だ。まさか久美ちゃんまでが、とは思ったけど。 蓮華:「でも、よく舞さんを説得できたね。半狂乱になってなかった?」 来美:「なりかけたけど、双葉さんが尋ねてきてくれて何とか落ち着いたわよ。」 双葉さんとは舞さんの親友で舞さんよりすごく年上なのに、全然若い女性(別次元の人)だ。 来美:「双葉さんの協力を得て、氷雨さんたちまでいなくなったことを聞いて、あたしも行くべきかも知れないって 舞さんが言ったの。だからあの跡地に行ってみたら、丸い穴が開いてて、それを潜ったらこの世界に来ていたの。」 蓮華:「ふぅ〜ん。でも、ポケモンはどうしたの?」 来美:「あたしは一匹も持っていなかったのよ。でも、偶然友達になったパウワウと一緒に歩いてて、ここに辿り着いたの。 訳を話したら、ここで働きながら探せばいいって言ってくれて。」 蓮華:「それで人魚の水中バレーをやっていたのね。」 来美:「ええ。」 来美ちゃんは別世界から来たことをすぐに理解できた、ある意味稀な人物だろう。海ちゃんでさえも一時は混乱したらしいから。 そしてハナダジムに着き、ハナダジムのジムリーダーのおかげでここにいるというわけで、それにしても来美ちゃんらしい場所に たどり着けたんだなぁと、あたしは思った。なぜなら…。 しばらく話した後、あたしはジムリーダーのところに行った。キレイハナはいつの間に戻ってきたのかドアのところにいた。 キレイハナ:「話は終わった?」 蓮華:「うん。」 キレイハナ:「それにしても多いね。まさか蓮華の家にいた人が舞さん以外全員来るなんて。」 蓮華:「う〜ん。…話聞いてたでしょ?」 キレイハナ:「ちょっとだけよ。あ、ニャースに連絡しておいたから。」 蓮華:「へ?」 キレイハナ:「だから、海ちゃんと来美さんのこと。他にも何人か来てるらしいってことよ。教えておいたほうがいいでしょ?」 蓮華:「確かに。」 こういうことに関しては、キレイハナはあたしよりも行動力があるのでちょっとすごいと思った。 ??:「話し終えたようね。」 蓮華:「はい。あたしは一応グロウタウン出身の蓮華です。よろしくお願いします。」 ??:「グロウタウン…、ナナの…、なるほどね。あなたがナナの言ってた子ね。それにしてもあそこかぁ。懐かしいなぁ。」 どうやらナナと知り合いらしい。しかもナナが言ってたということはすでにあたしのことを知ってるわけか。 蓮華:「行ったことあるんですか?」 ??:「ええ。あたしはマサラ出身のトレーナーとニビジムリーダーのタケシと一緒に旅をしていた時があったから。 だからその時にグロウタウンにも通ったのよ。」 キレイハナ:「そしてそのマサラのトレーナーと結ばれて、遠距離恋愛が進んでるんですよね?」 ??:「ええ。…って、どうして知ってるのよ!」 キレイハナに驚かないのはナナから聞いているからだと思う。でも、あたしも知らないことをどうして知ってるのかな。 それはすぐ、キレイハナが種を明かした。 キレイハナ:「さっきオーキド研究所に電話したらニャースが教えてくれたの。ジャリボーイとジャリガールの純粋な付き合いだって。 告白は相手のほうからでラブラブボールを貰って告白されたとか。」 キレイハナが喋ったことであたしも相手が誰か分かった。ハナコさんの息子さんでベイリーフたちのトレーナーだと。 そしてジムリーダーは顔を真っ赤にしていた。が、否定はしなかった。 ??:「ニャースも口が軽いようね。今度会ったら何をしようか。…さて、ジム戦を始めるわよ。 あたしはハナダジムジムリーダー、世界の美少女、おてんば人魚のカスミよ。使用ポケモンは3体。挑戦者のみがポケモンの交代を自由とするわ。」 カスミさんが話しながら何かのスイッチを押した。するとプールには丸い円柱型の土台が4個出てきた。 カスミ:「このプールと丸い土台をうまく利用してバトルをすること。それじゃ、行くわよ!」 ジム戦が始まった。 カスミ:「まずはこの子から!行け、マーイ、ステディ!」 カスミさんの最初のポケモンは星型ポケモンのヒトデマンだった。 ヒトデマン:「ヘア!」 蓮華:「あたしはこの子で行く!お願いね、メリープ!」 メリープ:「メ〜!」 あたしは水ポケモンの弱点タイプである電気タイプのメリープを、セオリーどおりに出した。 蓮華:「メリープ、ヒトデマンに電気ショックよ!」 メリープ:「メ〜イ!」 電気技で速攻!のつもりだった。 カスミ:「やっぱり電気技で来るのね、それなら受け止めるわよ。ヒトデマン、高速スピン!」 ヒトデマン:「シャア!」 メリープの電気ショックにヒトデマンは飛び込み、メリープを跳ね飛ばした。 蓮華:「そんな、メリープ!」 カスミ:「残念だったわね。ヒトデマンの特性の自然回復があるから多少の麻痺をしても平気なの。」 そしてメリープが土台の端で体制を整えている間、ヒトデマンは自己再生で回復していた。 カスミ:「ヒトデマン、水鉄砲!」 蓮華:「メリープ、電磁波!」 水鉄砲を電磁波で相殺する。が、ヒトデマンはその直後に水に飛び込み、出てきた瞬間、ヒトデマンのスピードスターをメリープに放っていた。 蓮華:「メリープ、戻って。」 あたしはさすがに危険を感じてメリープを戻した。 蓮華:「メリープの電気技を使用しても自己再生と自然回復を利用して直接攻撃が来るなら、今のメリープの技では無理ね。 だとしたら…。」 まだ初めだが、カスミさんが次に何を出すか分からない以上、苦手なタイプを出せばニビジムの時と同じことになる。 でも、今はこの方法じゃないとヒトデマンには勝てない。 蓮華:「ルナトーン、お願い!」 ルナトーン:「ルナ〜。」 あたしは水タイプの攻撃に弱い岩タイプのポケモン、ルナトーンを出した。 カスミ:「岩タイプをあえて出すって言うの?」 キレイハナ:「蓮華、それじゃニビジムの二の舞だよ。」 蓮華:「分かってる。でも、ヒトデマンを倒すにはルナトーンでしかできない!」 ルナトーンは特性「浮遊」のおかげで水の上でも攻撃が可能だった。 カスミ:「そう、でも簡単には倒されないわよ。ヒトデマン、水の波動よ!」 ヒトデマン:「シャア!」 蓮華:「ルナトーン、念力で水の波動を押し返すのよ!」 ルナトーンは念力を使ってヒトデマンの攻撃を自分にぶつかる直前に曲げ、ヒトデマンに返していた。 ヒトデマンは水の攻撃には効果ないはずだったが、妙に様子がおかしくなっていた。 カスミ:「ヒトデマン、スピードスターよ!」 が、カスミさんの指示も聞かず、土台に落下してばかりいた。 カスミ:「これは混乱…水の波動を受けた相手が何割かの確率でなる状態…。」 蓮華:「なるほどね。だったらそのまま押し切るわよ。ルナトーン、岩石封じ!」 ルナトーンが輝いた時、土台が揺れ、落下した直後のヒトデマンの四方を岩の柱が出て、ヒトデマンを岩の中に閉じ込めた。 蓮華:「サイコキネシス!」 ルナトーン:「ル〜ナ〜!」 ヒトデマンは動きが封じられたまま、サイコキネシスの直撃を受け、体のコアが点滅を始めていた。 カスミ:「ヒトデマンが苦悶の表情を浮かべてる…、戻って、ヒトデマン!」 カスミさんにはそう見えるらしい。一応、ヒトデマンを倒せたらしかった。 カスミ:「なかなかやるわね。さすが、ナナやタケシが言ってただけあるわ。でも、ルナトーンは次で戦闘不能にしてあげる。」 蓮華:「そう言われてもあたしはさせません!」 カスミ:「そうかしら?あたしが水タイプだけを使うとでも思った?行くのよ、マーイ、ラブリングステディ!」 次に出てきたのは飛行・虫タイプのアメモースだった。 カスミ:「アメモース、銀色の風よ!」 蓮華:「ルナトーン、リフレクタで防いで!」 カスミさんが次で倒すといった理由はすぐに理解できた。エスパータイプは虫タイプの攻撃に弱いのだ。 カスミ:「それなら泡攻撃よ!」 アメモースの出した泡がルナトーンを取り囲んだ。そして、 カスミ:「冷凍ビームよ!」 アメモースは冷凍ビームで泡を凍らせていた。ルナトーンの上下左右どこを見回しても凍った泡が浮いていた。 蓮華:「これは一体何なのよ。ルナトーン、サイケ光線で弾き返して!」 ルナトーン:「ルナ!」 しかし、あたしがこれが罠だと気づいたのは、攻撃を放たせてからだった。サイケ光線は凍った泡が鏡の役割を果たして様々な方向に反射し、 すべてがルナトーンに戻ってきた。ルナトーンはとっさに光の壁を作るが、背後や真下からの攻撃には無防備だったため、攻撃を受けてしまっていた。 蓮華:「ルナトーン!」 カスミ:「どうかしら、泡を凍らせた鏡は。そっちからの攻撃は一部でもその泡に反射されてあなたのポケモンに返ってくるの。 そのうえ、こっちの攻撃も同じようにどこから来るか分からなくなってるわよ。」 蓮華:「それなら泡を押しのけて逃げるのよ!」 ルナトーンは2,3個の泡にぶつかりながらその場から遠ざかろうとした。しかしぶつかったことで割れた泡はルナトーンを濡らし、ルナトーンの表情が ゆがんだ。 カスミ:「たとえ凍ってあってもその泡は割れやすいから、逃げることも無駄よ。アメモース、冷凍ビーム!」 冷凍ビームは反射によってルナトーンの真上から来た。 蓮華:「目覚めるパワーを自分の周囲に取り巻くのよ!」 ルナトーンの目覚めるパワーが冷凍ビームと当たり、何とか相殺できたけど、これを続けるわけにも行かなかった。 カスミ:「目覚めるパワーで防いだのね。でも、次はそうは行かないわよ。アメモース、雨乞いよ。」 アメモースの雨乞いにより、ジムの中だけど雨が降ってきた。岩タイプのポケモンには雨であっても攻撃に近い。 しかし、凍った泡のせいでボールに戻すことさえもできなくなっていた。 カスミ:「さて、これで終わりよ。アメモース、ハイドロポンプ!」 ルナトーンは反射を繰り返してすべての方向から向かってきた水の攻撃によってプールに落下した。 蓮華:「ルナトーン…戻って。ありがとう。」 カスミ:「うふふ、次はどの子で行くつもりなのかしら?」 さっきのハイドロポンプの威力によって、あの反射のための泡はフィールドの至る所に散らばっていた。 そのため、メリープの攻撃さえも反射する可能性があった。 蓮華:「…メリープの電気技では反射されるわね。ルナトーンも倒されたし。準備いい?」 キレイハナ:「もちろん。」 あたしは最終兵器を投入した。 キレイハナ:「負けないんだから!あ、カスミに一つ聞きたいんだけど。」 カスミ:「何?」 キレイハナ:「虫、嫌いじゃなかったの?」 キレイハナが言うには、カスミさんは大の虫嫌いらしい。またニャースから聞いたのね。でも、そうならアメモースを持ってることが 不思議に思えた。 カスミ:「嫌いよ。でも、この子は別よ。サトシがくれたポケモンだし、元々進化する前は水ポケモンだったから。 だから、好きな人から貰ったポケモンを嫌いになるわけないの。それにそれだけ心を込めて育てたこの子を倒せるの?」 キレイハナ:「倒すよ。蓮華!」 蓮華:「ええ、キレイハナ、種マシンガン!」 キレイハナの種マシンガンはアメモースを狙わなかった。周囲の泡を狙ったのだ。特殊攻撃を反射できても、直接的飛び道具には 弱いと踏んだ作戦だった。 カスミ:「それなら、アメモース、風起こしと銀色の風よ、銀色の台風!」 飛行と虫のコンボ攻撃だった。両方の攻撃にキレイハナは弱い。でも。 蓮華:「蔓の鞭でジャンプ!そしてアメモースに往復ビンタよ!」 キレイハナ:「了解!」 キレイハナはイワークと戦った時のようにして蔓の鞭の反動を利用してジャンプし、銀色の台風をかわした。 そしてそのまま攻撃を出した直後のアメモースの前に行き、往復ビンタを食らわしていた。 蓮華:「とどめの一発、メガトンパンチ!」 キレイハナのメガトンパンチは往復ビンタの直後に思い切りアメモースに当たり、アメモースは土台に叩きつけられた。 カスミ:「アメモース!」 アメモースは戦闘不能になっていた。 カスミ:「戻って、アメモース。よく頑張ったわね。」 キレイハナ:「やったね、蓮華。」 蓮華:「ええ。このまま次も行っちゃうよ。」 キレイハナ:「任せてよ、あたし、今十分波に乗れてるから。」 あたしたちがそう言っていると、カスミさんが準備を終えた。 カスミ:「あのアメモースを倒すとは思わなかったわ。あなたの前にここに来た哲也と志穂もアメモースには一度敗れてるのに。 久々にこの子に勝てる子が出てくるとはね。」 どうやら哲兄も志穂ちゃんもセオリーどおりの電気タイプを使用した時にアメモースの凍った泡によって攻撃を戻されて倒されたらしい。 カスミ:「でも、この子にはあなたのキレイハナでもメリープでも負けることになるわ。 行くのよ、マーイ、ブランニュウステディ!」 出てきたのはギャラドスだった。 キレイハナ:「でかい!」 カスミ:「あたしは元々、虫タイプとギャラドスは苦手だったの。でも、この子とアメタマに出会ったことで、その二つを克服したのよ。 ギャラドス、火炎放射!」 蓮華:「キレイハナ、神秘の守りよ!」 火炎放射は神秘の守りで防ぐことができたが、ギャラドスはその後に波乗りや、雷を使い、一気に畳み掛けてきていた。 高速移動で逃げ続け、光の壁や神秘の守りで防ぎ続けるキレイハナはついにこうつぶやいていた。 キレイハナ:「これじゃあ、あたしでも勝てない。」 蓮華:「キレイハナ…、何かいい技はないの?」 あたしはチラッと図鑑を見て探した。 蓮華:「これね。キレイハナ、ギャラドスにウインクして!」 キレイハナ:「えっ?あ、そうだ!パッチン!」 キレイハナがギャラドスにウインクした直後、ギャラドスの目はハートになっていた。 カスミ:「ギャラドス!?これはメロメロね。」 蓮華:「ええ、この状態でギャラドスを倒すのは不可能だけど、力を削ぐ位なら可能だもの。キレイハナ、十分甘えて、嘘泣きして、 そして天使のキッスよ!」 甘えることで攻撃力を、嘘泣きをすることで特殊攻撃に対する防御力を下げたのだ。そして天使のキッスで混乱させると、その頃には さすがのギャラドスも、メロメロ状態からは開放されていた。しかし、半分混乱している状態のようだった。 カスミ:「こうなったら、ギャラドス、竜巻よ!」 ギャラドスは半分混乱した状態で竜巻を起こした。その威力は半端じゃなくプールの水を根こそぎ使っての水竜巻だった。 カスミ:「この中に入ったら、さすがのキレイハナも負けでしょうね。」 蓮華:「それがそうじゃないのよね。キレイハナ、バトンタッチ!」 カスミ:「何ですって!?そんな技まで覚えているなんて…。」 さすがにこれにはカスミさんも慌てた。現在キレイハナがバトンタッチできる相手はメリープのみなのだ。 そしてメリープが出てきた。 蓮華:「さっきの分、ここで返すわよ。メリープ、充電して竜巻に飛び込んで!10万ボルトよ。」 メリープは充電によって電気を大量に体に込め、ジャンプと同時に竜巻に吸い寄せられていった。 そしてカスミさんが竜巻を辞めさせようとした直後、竜巻は小さな閃光と一瞬電気の走った後を残して大爆発に包まれた。 そしてそこには十分まだ元気なメリープと、力尽きたギャラドスがいた。 カスミ:「まさか、ギャラドスが倒されるとは思わなかったわ。おめでとう、あなたはこのブルーバッジを受け取るのに ふさわしい相手よ。」 あたしはカスミさんから祝福を受け、ブルーバッジを貰った。 来美:「蓮華ちゃん、おめでとう!」 キレイハナ:「蓮華、よくやったよ。頑張った!」 蓮華:「うん!」 あたしはハナダジムを攻略した。 それを尻目にカスミは控え室に戻っていた。 カスミ:「負けちゃった。アメモースとギャラドスのコンビに勝てる子が実在したこともすごいけど、あの子は本当にナナの言うとおり、 すごい子だったなぁ。」 あたしもあいつの影響を受けてるけど、あの子のとんでもない行動に出るところもあいつに似てる。 でも、あいつは最近、全く連絡をしてこなくなった。かれこれ2ヶ月も。あいつはもう、あたしのことを忘れちゃったのかな? そう考えかけた時、近くの電話が鳴った。 カスミ:「もしもし?」 向こうのテレビの状態が相手が砂嵐が走って誰かが分からない。 ??:「カスミか?」 カスミ:「サトシなの?」 サトシ:「ああ。元気そう…じゃないな。」 カスミ:「うん。サトシに貰ったアメタマ、アメモースに進化したんだけど、ジム戦で負けちゃったの。 トゲピーももういないし、励ましてくれる人もいないし…」 サトシ:「カ、カスミ?」 カスミ:「今まですごく淋しかったのよ。いつも連絡をくれたのにいきなり全然連絡をよこさないし。心配だったんだから。 サトシがあたしのこと、忘れちゃったんじゃないかって。あたし、すごくつらかったのに。」 あたしは今まで溜めてた気持ちを思い切り吐き出していた。全部言い終えて、ちょっと肩の荷が下りた、そんな感じがしたときだった。 サトシ:「ごめん。」 サトシは電話を切らずにずっと、あたしの話を聞いてくれていた。そして。 サトシ:「また、一緒に旅しないか?」 カスミ:「え?」 サトシ:「今まで一緒だったユウキもハルカもポケモントレーナーとして、コーディネーターとして十分成長したからさ。 もう、俺がいなくても大丈夫なんだ。だから、今度は俺と二人で旅しようぜ。」 カスミ:「サトシ…。」 ??:「ピ〜カ〜ピ〜!!」 サトシ:「あ、悪い、悪い。ピカチュウも一緒だけどな。」 ピカチュウ:「ピッカ!」 あたしはそれでもよかった。サトシが誘ってくれたことが、すごく嬉しかった。 サトシ:「俺、今マサラタウンにいるからさ。待ってるぜ。」 カスミ:「うん!明日、マサラタウンに行くから。」 あたしが電話を切ると、来美が入ってきた。 カスミ:「あのね、ジムのことだけど…」 来美:「大丈夫です。カスミとお姉さんたちの大事なジムは当分、あたしが守ります。お姉さんたちも3週間後には帰ってくるそうなので。」 来美は途中から聞いていたようだった。そしてあたしが頼もうとしていたジムの留守番と、ジムリーダーの代わりを引き受けてくれた。 次の日、あたしはサニーゴ、コダック、ニョロトノ、ギャラドス、アメモース、ヒトデマンと共にマサラタウンに向けて出発した。 ジムの管理はジョーイさんに、ジムの安全はジュンサーさんに任せ、旅先のお姉ちゃんにも一応話しておいた。 アヤメ:「また旅ですって!」 ボタン:「もう、あんたは留守番なのよ。旅はもう終わったでしょ?」 アヤメ姉さんとボタン姉さんは怒ってたけど、 サクラ:「サトシ君との旅でしょ?カスミ、あたしは今までカスミに色々と押し付けすぎたと思ったの。 あなたがアクアマスターを目指しているから旅をしていたってことも、サトシ君の事もちゃんと分かってるわ。 これからは、あなたの好きにしていいわよ。その方が、あなたのためにもなるんだから。」 サクラ姉さんだけは違っていた。あたしにジムを押し付けて旅行に行っていたこと、一時は帰ってきたからあたしもホウエン地方に行けたけど、 それでもまた旅行に行くためにあたしにジムを押し付けたことに、罪悪感を感じていたらしい。 さすが長女は考え方が違うって、今になって思った。そしていつの間にか、サトシのことが好きなことも見透かされていたとは。 でも、サクラ姉さんの口添えもあって、あたしはサトシと旅に出ることができる!それがすごく幸せだった。 その頃。 サトシ:「遅いなぁ。あいつ、何やってるんだよ。」 サトシはオーキド研究所でぐるぐる回りながらカスミの到着を待っていた。 ニャース:「さっき来美ちゃんが連絡があって出発したばかりだにゃ。まだ来るわけないにゃ。」 ケンジ:「相変わらず、サトシは落ち着きがないな。」 哲也:「サトシらしいな、そういうところは。」 翼:「確かにそうだな。」 サトシの様子を見てニャースとケンジはポケモンマスターになっても昔と今で性格は変わってないと呆れ、 出会ってすぐにバトルを挑まれ、時間を置かせたらしつこく言われた哲也と翼は面白がって笑っていた。哲也も翼も、サトシとはすでに親友ほどの付き合いになっていた。 それはサトシの人付き合いのうまさが精を出したからだった。 サトシ:「しょうがないだろ、これを早く見せたいからさ。」 サトシの手の中にはポケモンの卵があった。それは青と赤の三角の模様がついたちょっと卵色の卵だった。 サトシ:「せっかくセーラ姫が届けてくれたんだぜ。あいつの喜ぶ顔が目に浮かぶんだ。」 それから数時間後、外から自転車の音がして、二人の物語が、再び幕を開けた。