ハナダシティから南下した辺りにはヤマブキシティがある。そこはハイテク技術の発展によって生まれたシルフカンパニーがあり、 ほとんどのポケモン製品はそこから開発されていた。そんなヤマブキシティには二つのジムがある。 一つはポケモンリーグ公認のエスパータイプのトレーナーが集うヤマブキジム。そしてもう一つは非公認で、ヤマブキジムとは仲が悪い 格闘タイプのトレーナーが集う格闘道場であった。ジムリーダーのナツメと道場主のリキヤは険悪ではなかったが、ジム同士の仲の悪さは 伝統的だったため、ジムトレーナーたちは顔を合わせるごとに喧嘩をしてばかりいた。 喧嘩といってもただの喧嘩ではない。エスパータイプのポケモンと格闘タイプのポケモン同士も派手なバトルを繰り返すのだ。 ナツメとリキヤも何度か止めに入るものの、それでもその仲たがいのバトルは続いていた。そしてそのバトルにより、多数の野生のポケモンたちも 被害に遭っていた。 そしてある日のことだった。 15.襲撃ポケモン!蓮華の秘密 一人のトレーナーがヤマブキシティの近くを通りかかったとき、複数の野生ポケモンたちに襲われ、重傷を負う事件が発生していた。 目撃者の話によると、彼らはひどい傷や怪我を負った状態でトレーナーを襲っていたという。襲われたトレーナーは目撃者のガーディの吠える攻撃によって 偶然救われたに過ぎず、その話は旅をするトレーナーたちを震撼させていた。 どこで襲われるかさえも分からないほど、ポケモンたちは気配を消しているようだった。そのせいか、被害はドンドン数を増すようになっていた。 そしてまた、一人のトレーナーが襲われた。 ??:「相変わらず人間は自分たちの行った愚かな事によって、関係ない人間を不幸に巻き込むのが好きなようね。」 ??:「それを言われると確かにそうとしか言えません。でも、私はそれを防ごうと努力しました。…結局、未来を変えることはできませんでしたけど。」 そんな様子を眺める二人の女性がいた。一人は水色の髪をした色白の女性、もう一人は長い黒髪の目がきりりとした女性。 そして二人は一瞬のうちに姿を消した。まるでさっきまでそこにいなかったように。 蓮華&キレイハナ&来美「「「野性ポケモン襲撃事件!?」」」 ニャース:「そうにゃ。ヤマブキシティ周辺でそういう事件が相次いでいるのにゃ。だからハナダもいつ襲われるか判らないのにゃ。」 カスミさんがマサラに向かった数日後、あたしと来美ちゃんとキレイハナはオーキド研究所に連絡を入れた。 哲兄に報告するつもりだったし、カスミさんのことも聞くつもりだったからだ。しかし、ニャースの一言によってあたしたちは 逆に質問せざるを得なくなっていた。 キレイハナ:「物騒な話ね。原因は何よ。」 蓮華:「スペース団の仕業?」 ニャース:「そうじゃないのにゃ。ヤマブキシティにはリーグ公認のジムと非公認の道場があって、その二つのジムの勢力がいがみ合ってるのにゃ。 ジムリーダーと道場主はそれを止めようとしてるのにゃ。でも、それでもその勢力争いが収まらない上に、野生のポケモンが次々に被害に遭ったのにゃ。」 来美:「もしかして襲撃するポケモンたちって、その被害に遭ったポケモンたちなの?」 ニャース:「そうらしいにゃ、博士のところにナツメから連絡があったのにゃ。」 蓮華:「ナツメ?」 来美:「あ、あたし会ったことあるよ。ヤマブキジムのジムリーダーでしょ。」 ニャース:「そうにゃ。ナツメが最近この世界に迷い込んだ人と対策を取ろうとした矢先に起きてしまったそうにゃ。」 来美:「最近…?」 蓮華:「迷い込んだ?」 ニャース:「そうにゃ。蓮華ちゃんたちがこの世界に来る時、多少の時間のずれが生じているのにゃ。 それでつい数日前に来たらしいにゃ。」 海ちゃんと来美ちゃんから聞いた話では久美ちゃんとなずなと氷雨さんくらいしか知らないけど、久美ちゃん以外にも何人かいる可能性は高い。 蓮華:「こっちに来たのって、どんな人?あたしたちと同じくらい?」 ニャース:「それがにゃ…」 どうやらナツメさんが教えてくれなかったらしい。 来美:「それで、それを言うってことはあたしたちも気をつけろってことでしょ?」 ニャース:「そうにゃ。それじゃ、何かあったら連絡するにゃ。」 今日はニャースのほうから切れた。 来美:「ちょっと物騒なことね。蓮華ちゃん、今日の予定は?」 蓮華:「う〜ん、散歩しようかと思ってたの。でも今日は街中でショッピングに変更するわ。」 あたしはせっかくの機会だったので、ハナダの色んなところを回る予定だった。でも、今日は町の外には行くべきじゃないようだ。 来美:「そう、あたしはジムにいるから、何かあったら教えて。」 蓮華:「了解。」 キレイハナ:「蓮華、買いすぎだよ。」 蓮華:「だっておいしそうなもの多いじゃない。キレイハナこそ、アクセサリーに目が行き過ぎ!」 キレイハナ:「だってしょうがないよ。」 あれから3,4時間後、あたしたちがショッピングを終えて戻ると、ポケモンセンターは慌しい状態だった。 蓮華:「ねえ、何かあったの?」 前回のスペース団襲撃で親しくなったトレーナーの一人に聞いてみた。 トレーナー:「ああ、ジムが襲われたらしい。そこにいた臨時のジムリーダーが追い払ったらしいけど、 ついにこの街にも襲撃ポケモンが来…あれ?」 トレーナーが目をそらした時、すでに蓮華の姿はなかった。トレーナーの目にはキレイハナが走っていく姿が見えただけ。 あたしがハナダジムに着いてみると、穴だらけの地面と、無残に壊されたジュゴンの看板が目に付いた。 蓮華:「ひどい…」 その時、あたしは何かの視線を感じた。 蓮華:「誰?」 すると少し離れた場所には真っ白な体のすらっとした体型のポケモンがいた。そしてそのポケモンは悲しそうな表情をしながら、 あたしを見て、そして走り去った。 蓮華:「待って!あなたがやったの?違うの?」 あたしが追いかけようとしたら、そのポケモンは攻撃を飛ばし、あたしがそれを防いだ時にはいなくなっていた。 蓮華:「今のは一体…。」 そこにキレイハナがやってきた。 キレイハナ:「どうかした?」 蓮華:「別に。来美ちゃんは大丈夫かな?」 キレイハナ:「う〜ん…、入ってみようよ。」 あたしたちが入ると、そこにはメモがあった。来美ちゃんからだった。 ”多分ここに来るだろうから一言。あたしは能力で襲ってきたブーバーたちを全部倒したよ。大方ほとんどの襲撃軍団は倒したはずだから。 でも、腕に火傷作っちゃったから、ちょっと病院に行きます。心配しなくてもいいから。 by来美 あ、最後にもう一つ。見る限り、彼らのボスだと思えるポケモンは出てなかったから気をつけてね。” キレイハナ:「無事みたいね。」 蓮華:「うん。でも、ボスかぁ。」 来美ちゃんは現実世界では水泳部だけど、他のスポーツでは司令塔になれるくらいそういうことへの観察力がある。 だから確かなことだろう。 ガサッ!背後で茂みから音がした。 振り向くと、出てきたのは顔に傷を負ったバクオングとタネボー、ラッタだった。 バクオング:「バ〜グ〜オ〜ン!」 蓮華:「襲撃ポケモンね。」 キレイハナ:「うん。しかもこいつがボスみたいだよ。」 と、バクオングが息を吸い込み始めた。 キレイハナ:「蓮華、バクオングが攻撃をするようよ。」 蓮華:「分かった。あたしの力を貸すから、神秘の守りをして!」 あたしたちは身構えた。が、バクオングのハイパーボイス、タネボーの種マシンガン、ラッタの破壊光線がキレイハナの神秘の守りの、 あたしの力の上乗せを破り、あたしたちはジムの壁に叩きつけられた。 蓮華:「強い…」 キレイハナ:「これは…憎しみの力…。ポケモンの人を憎む心が力として表れてるわ。あたしたちだけじゃ無理かも。」 あたしたちが起き上がると、ラッタが襲い掛かってきた。 蓮華:「キレイハナ、ラッタを任せるわ。」 キレイハナ:「了解!蓮華はどうするの。」 キレイハナがリーフブレードを使いながら聞く。 蓮華:「あたしはバクオングをおとなしくさせる。そして、タネボーを説得してみる。」 キレイハナ:「分かった。」 ラッタが必殺前歯でキレイハナに噛み付こうとし、キレイハナは蔓の鞭と爆裂パンチで対抗している。 あたしはバクオングとタネボーの前に立った。 蓮華:「あなたたちがひどい目にあったから、だからこれをやりたい、復讐したい気持ちは分かるよ。 でも、だからといって、関係ないトレーナーや街の人たちを襲うのはお門違いよ。それでも復讐するつもり?」 あたしが言い放つと、地割れ攻撃が返ってきた。説得は無理なら、ゲットしておとなしくさせるほうがいいかもしれない。 蓮華:「ロコン、炎の渦よ!」 あたしはロコンを出した。炎の渦で動きを封じる方法に出て、ゲットすればいい。でも、バクオングは水の波動でそれを消してしまった。 蓮華:「ロコンじゃ駄目みたい…だったら…」 ??:「待って!攻撃はしないで!」 突然の声に、そして聞き覚えのあるその声に、あたしはギャラドスのボールに伸ばした手を止めた。 ??:「その子達はそれでゲットしても心を開かないわよ。」 それなら…。 蓮華:「キレイハナ、ラッタを眠らせて!みんなも!」 キレイハナ:「う、うん。」 キレイハナはラッタを眠らせた。タネボーとバクオングには避けられたけど。 蓮華:「傷つけていたら、攻撃したら駄目。だったらこの子達の怪我を治してあげたほうがいいと思うの。」 あたしは攻撃されてもかまわないと思ってバクオングに近づいた。その時だった。 バクオングとタネボーに網がかかり、上に引っ張られた。 蓮華:「何?一体何なの?」 エレク:「何!?一体何なの!?と言われたら。」 フレイ:「答えてあげるが大事なこと。」 エレク:「宇宙の神秘を守るため」 フレイ:「宇宙の汚れを浄化するため」 エレク:「愛とナチュラルな悪を貫く」 フレイ:「究極のスペシャルな敵役」 エレク:「エレク」 フレイ:「フレイ」 エレク:「天の川を駆け巡るスペース団の二人には」 フレイ:「イエロー&レッド、最高の夜明けが待ってるぜ!」 エレク:「決まったぜ!」 スペース団がロケット型の気球で真上にいた。 蓮華:「スペース団!やめて!その子達を返して!」 フレイ:「残念でした。この子達の力は強力なものよ。あたしたちがもらってスペース団のポケモンとして役立ってもらうの。」 エレク:「ついでにそこのキレイハナとラッタも貰っていくぞ。」 キレイハナ:「きゃあ!」 キレイハナたちまで網に攫われた。 蓮華:「よくもやったわね!」 フレイ:「追わせないわよ、炎の爆弾!」 エレク:「電撃の波動だ!」 あたしがボールに手を伸ばそうとしたら、フレイとエレクの攻撃が飛び、あたしはボールの入ったポーチを取り落としてしまった。 しかも攻撃をすることでバクオングたちに当たる可能性もある。 キレイハナ:「こうなったらリーフブレードで!…切れない!」 エレク:「その網はスペース団の特性網だ。ポケモンのどの攻撃でも切れないぞ。」 フレイ:「それじゃ、運が悪かったとでも思うのね。」 気球が飛んでいってしまいそうになる。あたしも追いかけるけど追いつけない。 フレイ:「成功、成功。これで最近の失敗は帳消しね。」 エレク:「そうだな。キレイハナも手に入れたし。こいつらを手玉に取れるとは思わなかったよな。」 ??:「そうはさせないわ。」 気球の上の二人は驚いた。気球の上には誰もいないはずなのだ。 ??:「せっかくいいところだったのに。やっぱり人間というものは勝手よ。己の欲望のためにポケモンを盗むなんて許せない。」 声が聞こえなくなったと同時に、フレイたちは寒さを感じ始めていた。そして突如出現した吹雪によって気球が凍ってしまい、 墜落を余儀なくされていた。 フレイ&エレク:「最悪エンド!」 あたしは気球が墜落するのを見たので、急いでその場に向かった。すると墜落のショックで網が破れていた。 フレイ:「よくもやってくれたわね。」 エレク:「こいつら共々、お前を再び倒してやる!」 二人は墜落の原因をあたしのせいだと思っているようだ。あたしは草の力しかないのに。気球は氷付け、だったら多分。 あたしは手助けしてくれた人が誰か、もう分かっていた。 蓮華:「それはこっちのセリフだから。あなたたちをここから追い払ってあげる。」 あたしはようやくギャラドスを出した。 フレイ:「なっ…」 エレク:「ギャラドスだと!?」 蓮華:「そういうことよ、ギャラドス、ハイドロポンプ!」 ギャラドスのハイドロポンプはスペース団をしっかり吹っ飛ばしていった。 バクオング:「バ〜ク〜!」 スペース団が吹っ飛ばされた直後、突然バクオングに襲われた。彼にとってはすでに人間全員が敵なので、あたしがスペース団をふっ飛ばしても助けたように見えなかったらしい。 バクオングは「暴れる」状態だった。ギャラドスがとっさにあたしを守ったけど、至近距離での破壊光線はまだレベルの低いギャラドスを一撃でのしてしまうほどだった。 蓮華:「ギャラドス!よくも…よくもやったわね!もう、こうするしかない。」 あたしは力を全快にした。 キレイハナ:「う〜ん。」 気球から落ちて気を失っていたあたしが目を覚ました時、近くにはラッタとタネボーがいた。バクオングや蓮華、スペース団の姿はない。 キレイハナ:「みんなは?」 あたしが聞くと、ラッタもタネボーも首を振った。どうやらこの2匹は、落下の衝撃がなかったからか(あたしとバクオングがクッションになった)、蓮華がスペース団を追い払ったか を見ているため、戦う気がなくなったらしい。 キレイハナ:「二人はこれからどうするの?」 あたしは聞いた。するとラッタは群れの元に帰ると言った。でも、タネボーは何も言わずに残った。 キレイハナ:「しょうがないなぁ。ちょっとごめんね。」 あたしはタネボーに手をかざした。 あたしには実はある能力があった。蓮華と一緒にいたことで草ポケモンの記憶を読むことができるらしかった。 ただしそれは読もうと思って手を触れない限り、全くできない。普段手を握ったり、触れ合ったりでは起こらない、いい能力だった。 ”タネボーはサファリゾーンで暮らすおとなしいポケモンだった。でも、サファリゾーンで何かが起き、その時にケンタロスに跳ね飛ばされて 外に出てしまった。そんな時、ポケモン禁猟区にいた密猟者によって捕まった。しかし種マシンガンを偶然習得したことから脱出に成功し、 その時にヤマブキシティの近くに来た。そこで格闘ポケモンとエスパーポケモンに襲われ、攻撃を受けた。 その時バクオングに助けられ、ハナダシティを襲った。” 蓮華:「この子、一人ぼっちだったみたい。」 キレイハナ:「そうかぁ。それじゃ、襲撃ポケモンが仲間だったんだね。」 あたしたちは正義と平和のため(?)に助けたつもりだった。でも、結果的にはタネボーの仲間を失わせてしまったのだ。 タネボー:「タネ…」 あたしが記憶を読んだことに気づいたらしかった。 キレイハナ:「寂しそうな顔しないでよ。あたしが友達になるよ。」 タネボー:「タネ?」 キレイハナ:「あたしたちと一緒に行こうよ。旅をして行こう。あたし以外にもみんな、歓迎してくれるよ。 あたしも含めて数名は、突然生まれさせられたようなものだから、今の蓮華のポケモンが、あたしの唯一の仲間のようなものだし。」 タネボーは誘いを受け入れてくれた。 それにしても蓮華はどこに行ったのよ。そう思った時、近くで派手な音がした。 キレイハナ:「行ってみよう。」 タネボー:「タネ。」 あたしたちが行くと、そこにはバクオングと何かが格闘している姿があった。緑色の体で枝や葉が生えてる部分もある。 顔は恐ろしい形相で、そのうえ角があった。 タネボー:「タネ…」 キレイハナ:「何よ、あいつは。…あれ、分かる。鬼!?」 あたしの中のデータの一つが出現し、アレの正体を教えてくれた。あれは現実世界では鬼と呼ばれている妖怪で、恐ろしく強暴だという。 キレイハナ:「鬼がどうしてここに…。蓮華はどこ?」 ??:「アレが蓮華ちゃんよ。」 突如、声と共に吹雪があたしとタネボーを襲い、きれいな女の人が現れた。 キレイハナ:「誰?」 ??:「あたしは氷雨。蓮華ちゃんとは親しい仲よ。その両親とも。」 キレイハナ:「氷雨さん、アレが蓮華ってどういうこと?蓮華は鬼だったの?人間じゃないの?」 氷雨:「人間よ。ただ、出生に原因があるの。だから、ごくまれにあの姿になるの。それを抑えるのがあたしの役目。」 氷雨さんが手をかざすと、吹雪がバクオングと鬼を包み、二匹は氷漬になった。 バクオングはそこにまた突然現れた、今度はケーシィが一緒なのでテレポートだろうけど、髪の長い女の人と共に消えた。 キレイハナ:「ねえ、あなたも能力者なの?それにあのバクオングをどうするの?」 氷雨:「あのバクオングは彼女に任せるわ。彼女なら、あのバクオングを助けることができるから。彼女には慈しみの心があるから。 そしてあたしは蓮華ちゃんを何とかしなきゃね。」 氷雨さんが再び手をかざすと、鬼の姿は蓮華の姿に戻っていた。 氷雨:「蓮華ちゃんが能力の使い方を本格的に覚えないと、いつまたあの姿になるか、分からないわね。 じゃないとまた、妖気を吸い取らなきゃいけなくなる。」 氷雨さんはそう言うと、蓮華の氷を溶かし、どこかに行こうとした。 キレイハナ:「ちょっと待って。あなたは何者なのよ。」 あたしはまだ、答えを聞いていない。 氷雨:「あたしは…あたしの正体は…雪女。今はそれだけしか言えない。でも、蓮華ちゃんは正真正銘の人間。それだけは確かなことよ。」 氷雨さんはそういうと、また吹雪と共に消えた。 数時間後、蓮華は起きた。でも、何が起きたか、全く覚えていないらしい。 ヤマブキのジムリーダーに助けられたとだけ、教えておいたけど。そして、タネボーが仲間になったことも。 蓮華:「キレイハナ、あたしさ、おかしくなかった?」 ポケモンセンターに帰った直後、蓮華に聞かれた。 キレイハナ:「そんなことなかったと思うけど?」 蓮華:「ううん、言って。どうせ鬼になったんでしょ?」 キレイハナ:「えっ…」 蓮華:「やっぱりね。いつかはばれると思ったのよ。あたし、鬼になる時があるの。」 蓮華が言うには、わざと覚えていない振りをしていたらしい。あたしの様子を伺っていたようだ。 キレイハナ:「言うわよ。あたし、氷雨さんって人に会った。」 蓮華:「だろうね。それじゃ教えておくわ。あたしの両親は母親が人間で、父親が人間と妖怪の間に生まれた者なの。 父は草の能力を持つ草鬼という妖怪の血を引く人間。母は舞さんの親友で京都で舞妓をしていた草の能力者。 その間に生まれたのがあたしなの。氷雨さんと舞さんが教えてくれたわ。あたしは父の遺伝子を多く受け継いだことから、 怒りが頂点に達し、草の能力を最大限に上げると鬼の姿に変わってしまうの。氷雨さんがこれまでに何度か妖気を吸ってくれたから助かっているけど、 鬼になってしまうのはあたしが力を抑えられていないからなの。」 蓮華がここまで話すとは思わなかった。あたしはそこまで聞くつもりじゃなかったから。 キレイハナ:「それでどうすればいいの?」 蓮華:「鬼じゃない、別の生物になる訓練をすればいいみたいなのよ。」 キレイハナ:「どういうこと?」 蓮華:「あたしはよく知らないんだけど、あたしが草鬼の姿になった時、それは真の姿じゃなくて、普通の鬼を植物と同化させた想像の姿に過ぎないらしいの。 だから、真の姿になる前に別の姿になれるようにすれば意識もあるし、力もコントロールできるんだって。」 その日の夜、あたしと蓮華はそれで、蓮華の別の姿になる特訓で徹夜してしまった。 でも、蓮華の力がコントロールできると思う。