雅紀の家を出てすぐ、あたしはキレイハナと一緒に岬まで向かった。 今日はまだ、雅紀(ポケモン体)がうろついてると思ってなのか、カップルはほとんどいない。 絶好のチャンスだった。 蓮華:「カップルの横で何か、釣りはできないよね。」 キレイハナ:「ポケモンを釣った時のバトルも邪魔だもんね。」 せっかく雅紀から釣竿を貰ったのだ。使ってみたいし、ポケモンも少しは増やしたほうがいい。 というわけで、釣りを始めた。 17.釣れたのは意外な強敵? 蓮華:「何が釣れるのかな?」 キレイハナ:「いい釣竿だから、確か…トサキントやメノクラゲが釣れるみたいだよ。」 図鑑を見ていたキレイハナが言った。でも、何分経っても釣れず、餌も減っていない。ポロックに付け替えても同じだった。 蓮華:「釣れないね。」 キレイハナ:「そだね。」 あれから一時間経ったというのに、まだ一行に釣れる気配もない。そんな時、壊れた看板を見つけた。 蓮華:「こんなもの、あったんだね。」 キレイハナ:「うん。しかも…まだ新しいよ。無理やり壊したみたい。」 その看板は穴だらけでしかも湿って水カビも発生していた。そのうえ、溶けた部分もある。 キレイハナ:「ポケモンの仕業のようね。多分、つつく、水鉄砲、溶解液だと思う。」 蓮華:「つつくってことは水辺だからトサキント、溶解液はメノクラゲってこと?」 キレイハナ:「うん。しかもこの看板、まだ読める。危険!って。」 その時だった。あたしの釣竿がいきなり海まで引っ張り込まれるくらいにしなったのだ。 蓮華:「引いてる!引っ張って!」 キレイハナ:「うん!」 あたしたちは二人で引っ張った。あたしの力にキレイハナのビルドアップでアップした力も加わり、ようやく釣り上げることに成功した。 元々ぼろ、いい、すごいの3種類の釣竿はトレーナーがポケモンを釣りやすいようにできているので、最終的には釣れるのだけど。 ??:「トッサキ〜ン♪」 釣れたのはトサキントだった。しかも大きさは一回り、二回りほど大きい。アズマオウを一回り小さくした感じだったのだ。 蓮華:「大きい…」 キレイハナ:「後はバトルね。あたしが行くよ。」 蓮華:「いいよぉ、キレイハナ、蔓の鞭で捕まえて!」 キレイハナ:「了解!任せてv」 あたしたちは釣り上げて何を釣ったかを知った時から気楽だった。相手は陸上では行動できず、ほとんど陸上のバトルには向かないトサキント だったからでもある。でも、そんなあたしたちの考えは間違っていた。 トサキント:「トサ!」 トサキントは思いっきり跳ねたかと思うと、地面に向かって水を吐き、その水の威力で宙を舞ったのだ。そのため、蔓の鞭はかわされることになった。 キレイハナ:「嘘でしょ!」 蓮華:「このトサキントは他のトサキントとは全く違うわね。だったら、タネマシンガンで打ち落として!」 キレイハナはタネマシンガンを発射させた。しかし、それは超音波によって拡散してしまううえ、トサキントの跳ねて宙を舞う行動は続いていた。 蓮華:「図鑑で見る限り、あれはトサキントの滝登りに似てる。でも、滝登りは水を吐き、その水の勢いで相手に突進する技。水を纏う事から水の技になっているけど、 これは別。水鉄砲の勢いで宙を舞っているみたい。」 キレイハナ:「それならトサキントよりも上に行けば…」 蓮華:「それだとあの角の餌食になるわ。キレイハナ、絶対に当たる技、マジカルリーフとスピードスターで打ち落とすのよ。 超音波にはハイパーボイスなら拡散されずに押し返すことも突き破ることもできるはずよ。」 キレイハナ:「分かった、マジカルリーフよ!」 キレイハナはマジカルリーフを放ち、続けてスピードスターを放った。そのうえ、さらに葉っぱカッターとタネマシンガンを放っている。 トサキントはマジカルリーフを超音波によって打ち落とし、当たる勢いさえも落とし、スピードスターを守る攻撃で守った。しかし、適当な感覚で放った葉っぱカッターは トサキントに当たり、続けて種マシンガンが当たった。そのため、トサキントは水鉄砲を吹くタイミングを失い、地面に叩きつけられるように落下した。 トサキント:「トサ!ト〜サ〜キ〜ン!」 だが、まだまだ戦う気でいるようだ。この分だとゲットは難しい。 蓮華:「キレイハナ、眠り粉よ。眠らせてゲットするわ。」 キレイハナ:「分かったわ。」 キレイハナは眠り粉を出した。トサキントはそれをかわしたり、攻撃技で拡散させようとしたが、それを蔓の鞭で阻まれ、眠りに落ちていった。 こうしてあたしはトサキントをゲットした。 キレイハナ:「はぁ、疲れた。」 蓮華:「確かにね。角を使った技が出なかったから助かったわ。キレイハナのリフレクタや神秘の守りを使ったとしても、角技と滝登りの突進が来ていたら、 押されたことは間違いないわね。」 それにしても、とあたしは思った。あんな技の使い方、そして陸上でも戦う方法を水ポケモンが身につけること自体、普通では考えられない。 もしかしたらこの子もかと、あたしは思った。 そんな時だった。 ??:「メノノ?」 あたしたちはトサキントを釣ってから釣竿をそのままにしていたことをすっかり忘れていた。 どうやら釣竿にかかっていたらしいが、あたしもキレイハナもトサキントにかかりきりでそのままだったらしい。 そのせいか、釣竿を海に引きずり込み、不思議に思って出てきたようだ。メノクラゲだった。 キレイハナ:「この子、どうやらバトルしたいみたいよ。」 キレイハナは一時的に近寄って話してから、あたしに言った。 キレイハナ:「どうやらこの辺が閑散としていたのは雅紀のせいだけじゃないみたい。さっき捕まえたトサキントとこの子も、やっぱりあたしたちと同じみたいよ。」 同じ=別の世界から来たということだ。 キレイハナ:「自分たちはよそ者だからここに住むべきじゃないって確信して過ごしていたみたい。それで自分たちを捕まえることが可能なトレーナーを 探していたみたいよ。それでここにいるカップルに水鉄砲や泡攻撃をして気を引いていたみたい。でも、運悪く逆に雅紀の件もあってカップルたちは離れていった。 あの看板はこの子達が攻撃するから危険だって意味だったみたい。」 蓮華:「それじゃ、バトルで勝ってゲットすればいいのね。」 キレイハナ:「そういうこと。あたしはさっきやったから他の子にしてね。」 蓮華:「分かってるわ。メリープ、お願い!」 メリープ:「メ〜イ!」 メノクラゲはメリープが出たことで近づいてきたが、妙に余裕の表情だった。 蓮華:「メリープ、電気ショックよ!」 メリープ:「メ〜イ!」 しかし、メリープの電気ショックを受けても、メノクラゲは倒れなかった。逆に何も受けなかったような状態で、泡攻撃を放ってきた。 電磁波でそれを拡散させたけど、溶解液や電磁波だけじゃなく、冷凍ビームやスパーク攻撃まで放ってきた。 蓮華:「キレイハナたちと同じように作られただけあるわね。普通覚えないはずのスパークまで覚えてる。」 キレイハナ:「この分だとメリープに長期戦は不可能ね。どうするの?」 あたしはメリープを戻そうと思った。でも、メリープは闘志の炎を燃やしている。ここで戻しちゃいけない! 蓮華:「メリープ、綿胞子よ!」 メノクラゲの特性はクリアボディ。能力を下げる技は受けないから鳴き声は通用しないけど、綿胞子が少しでも体に付着することが狙いだった。 蓮華:「そのままメノクラゲに最大パワーで雷よ!」 メリープは雷をメノクラゲに放った。これもメノクラゲにはなぜか効いていない。でも、付着した綿胞子が雷によって燃え始め、それによってメノクラゲは ダメージを受けていた。 蓮華:「今がチャンスね。メリープ、電光石火で近づいて、アイアンテールよ!」 あたしは以前特訓させたことで岩対策にアイアンテールを覚えさせておいたのだ。それが功を成し、メノクラゲは尻尾によるアイアンテールをまともに受けていた。 水で湿っていた体が綿によって水を吸われ、雷によって乾いていたこともあり、元々水辺のポケモンのため、体内の水分が少なくなっていたことがメノクラゲの状態を 下降に導かせたようだ。こうしてメノクラゲも捕まえることができた。その時だった。 蓮華&キレイハナ:「あぁっ!」 メリープが光りだしたのだ。進化だった。メリープはモココに進化した。 蓮華:「モココ、これからもよろしくね。」 モココ:「モコ!」 帰りにあたしたちは再び雅紀の家を寄った。すると。 雅紀:「大丈夫や、腕のあるトレーナーがトサキントとメノクラゲを捕まえてるはずやで安心せいっちゅうに。」 雅紀の家からはこういう声が聞こえていた。 雅紀:「わいがポケモンになっとったのも悪いっちゅうが、もう何も起きへんからええやろ?」 キレイハナ:「どうやらあたしたち、彼にいっぱい食わされたみたいね。」 蓮華:「自分がポケモンを捕まえられないから釣竿渡してあたしたちに何とかさせようって言う魂胆だったみたいね。」 あたしたちは思いっきりムカついた。しかし、中に入ったとしても雅紀には口では通用しないだろう。 イーブイや釣竿を貰った身である。逆に恩を仇で返す結果にされたわけだけど、向かうに仇で返されたと言われそうだ。 蓮華:「そうだ、この子を使おうかな。」 あたしはオニドリルのボールを出した。 結果的にはあたしは野性に戻すつもりだったのだ。 調達していた技マシンを2,3個、この子に使ってから、あたしは目の前に出した。 蓮華:「あなたは自然の中で住むのが一番だと思うから、逃がすわね。」 すると、オニドリルは何かを言った。 キレイハナ:「蓮華の元で頑張りたいけど、本当は野生で暮らしたいみたいよ。ありがとうって。」 蓮華:「どういたしまして。その代わり、最後のお願いよ。ちょっとこの中で暴れてきて。十分暴れ終わったら、野生に戻ってね。」 あたしはそう言うと、オニドリルと別れた。 あたしたちがそこを離れてすぐ、爆音と共に雅紀の叫び声と、オニドリルの鳴き声が聞こえていた。 キレイハナ:「ちょっといい気味ね。でも、何を覚えさせたの?」 蓮華:「ナナにもらった古い技マシンのカマイタチと破壊光線、あと、トライアタック。」 キレイハナ:「うわぁ。ちょっともったいなくない?」 蓮華:「い・い・の。」 あたしは確かにもったいないが、いいことをしたような気にもなった。 あたしたちがポケモンセンターに帰ってから、ニュースでは野生のオニドリルが雅紀を襲ったニュースがテレビで流れていた。 どうやら雅紀の灯台は外見は普通だが、内部は悲惨なほどに壊された状態だった。地下室のポケモンセンター直通の管理システムと発電機のみが助かっていただけで、 雅紀の実験機器はすべてお陀仏したらしい。 蓮華:「あ、そうだ。メノクラゲ、出てきて。」 あたしはメノクラゲを出して言った。 蓮華:「あたしのポケモンはギャラドス以外はニックネームつけてないの。でも、あなたにはつけるね。」 メノクラゲ:「メノ?」 蓮華:「何となくだけど、付けたくなったの。あなたはこれから「メノノ」よ。よろしくね、メノノ。」 メノノ:「メノメノ!」 さてと、ハナダシティには十分いたし、明日からは旅を再会しないとね。次の目的地はクチバシティ。 そこには3番目のジムがあるから。次も頑張らなきゃ。でも、新しい仲間たちがいるから、絶対大丈夫よね! あたしは心にそう思った。 蓮華がそう思った時、ハナダシティの人々は真っ白な体に鋭い目をしたポケモンが町を離れていくのを見たのだった。