クチバシティ。そこは港町として有名な場所で、豪華客船サントアンヌ号が定着する町としても有名だった。 また、近くにはディグダの穴や様々なポケモンが生息する森、そして3番目のジム、クチバジムもあり、多くのトレーナーが訪れていた。 そんなある日のことだった。それは町の住民が風と共に走るポケモンらしき生物の姿を見た直後のこと。 突然、クチバ近辺の森の木々に異変が現れていた。 19.森の枯渇 ブリードタウンの育て屋事件を解決したあたしは志穂ちゃんと別れ、再び旅を続けていた。ヤマブキシティにはまだ用がないので、 地下通路を通ってクチバ方面に向かった。地下通路は動く床もあるので、疲れることなくクチバ方面に向かうことができた。 キレイハナ:「カモネギが仲間に入ったし、あたしたちの弱点もそれぞれ補えてきたね。」 蓮華:「うん。でも、自分の弱点の炎に対しても普通に攻撃できるキレイハナを除けば、まだまだ厄介な点が多いわよ。」 キレイハナ:「確かにそうね。悪タイプが出た場合、効果がある格闘タイプはいないし、バタフリーの銀色の風に頼るしかないものね。」 蓮華:「それに、あたしたちのパーティは水と草のポケモンが多いでしょ。だからできれば全属性が集まればいいと思うの。」 あたしの持ってるポケモンの中で一番強いのはギャラドスとキレイハナだ。でもまだ対戦したことのない氷タイプに対しては二人とも苦戦するかもしれない。 いつかカイリュウに進化するであろうミニリュウでさえも氷に弱いのだ。 キレイハナ:「氷にはロコン、電気にはサンドが相手になるといってもね。頼りすぎもよくないわよね。」 と、ロコンとサンドのボールが揺れた。任せろといっているらしいけど…。 蓮華:「そうね。分かった、あたしも少しずつ気をつけるわ。任せるつもりだけど、それで疲れさせすぎはよくないでしょ。」 そんな時、出口に近づいたのが分かった。外から光が見えていた。 キレイハナ:「クチバシティまで後少しだね。」 蓮華:「港町かぁ。潮のいい香りがするかも。」 そんなことを考えながら、あたしたちは外に出た。そして。 蓮華:「…えっ?」 キレイハナ:「嘘…。」 あたしたちが外に出た時に見たのは、枯れ木の林が続く通り道だった。荒れ放題になった場所に今にも倒れそうな枯れ木が立っているだけの不毛の地で、 ポケモンは一匹も住んでいない状態だった。 あたしが一本の枯れ木を調べてみると、生命エネルギーをほとんど感じないのだ。そんな悲惨な状態にあたしたちの後から来たトレーナーたちも顔をしかめていた。 それでも一応、あたしたちはクチバシティに向かうのでした。何が起きているかを知るためにも。 ニャース:「植物が枯れる現象にゃ?」 翼:「それでクチバはどういう状態なんだ?」 あたしとキレイハナはジョーイさんから聞いたことを知るためにオーキド研究所に電話をした。どうやらこの現象は数日前に起きたことで、 まだ博士さえも知らないことらしいのだ。 蓮華:「クチバの人たちは不安な気持ちでいっぱいらしいの。」 キレイハナ:「クチバジムがポケモンセンター、警察と協力して調べてはいるけど、まだまだ理由はつかめていないらしくて。」 蓮華:「こっちに来て見れば、このままここに暮らしていて大丈夫なの?っていう感じの空気が漂っているのは確かね。」 あたしたちは聞いたことと感じたことをそのまま話した。 翼:「そうか、分かった。健人達にも知らせておくよ。」 蓮華:「お願いします。哲兄は?」 翼:「博士のお使いで今はホウエン地方にいるよ。リーグまでまだまだ先だからな。いい暇つぶしになるだろ。」 ポケモンリーグはまだだいぶ先で、あたしがゆっくり旅をしても間に合うらしいのだ。ゆっくり過ぎても駄目だけど。 蓮華:「そうなんだぁ。…あ、ニャース、この事件ってポケモンの仕業?それともスペース団?」 ニャース:「う〜ん…、森がなくなってしまえば木材などもなくなるにゃ。そうなると経済危機になるからスペース団には絶好の機会にもなるにゃ。 でも、それを行った時点でやばい方向にも移るにゃ。だからスペース団はそれをすることはないはずにゃ。ロケット団も昔、同じ事を起こそうとして これを予測して企画流れにしたにゃ。」 キレイハナ:「ということはポケモンが原因かぁ。」 ニャース:「残念にゃけど、そうなるにゃ。」 その後少し話して、あたしたちは電話を切った。 キレイハナ:「ポケモンが原因かぁ、やるせないなぁ。」 蓮華:「そうね。でも、どうしてポケモンが森を破壊するのかしら?破壊したらそのポケモンだって住む場所がなくなるはずなのに。」 キレイハナ:「それを調べるっきゃないでしょ。」 蓮華:「そうだね。」 あたしたちはポケモンセンターを出て、まだ森が残っている場所に向かうことにした。森が残っている場所にはたくさんのポケモンたちもいたが、何かにおびえている様子が多く見られた。 蓮華:「何か、平和って感じじゃないね。」 キレイハナ:「そうね、聞いてみる。」 キレイハナは茂みに隠れているナゾノクサの集団のところに向かった。そして数分後、キレイハナは戻ってきた。 キレイハナ:「大変なことが分かったの。」 蓮華:「何?」 キレイハナ:「どうやらここにいきなり姿を現したポケモンらしいの?」 蓮華:「突然?…それって!」 キレイハナ:「うん、あたしたちと同じってこと。でも、はじめは平和に暮らしていたそうよ。それがここに来た人間に液体をかけられてから豹変して森を破壊するようになったそうなの。」 蓮華:「そうなの。それで、そのポケモンは?」 あたしがそれを聞いたときだった。あたしたちは森の入り口の方で何かの鳴き声を聞いた。それがものすごく助けを求めている声だった。 蓮華:「行くよ!」 キレイハナ:「ええ。」 あたしたちが駆けていくと、そこには川べりまで追い込まれたケムッソがいた。そしてそのケムッソを追い詰めているポケモンは…。 キレイハナ:「こいつよ、こいつが森を破壊したそうよ。」 蓮華:「このポケモン…ヘラクロスじゃない!」 カブトムシ姿をしたポケモン、ヘラクロスは森の樹液を食料としている温厚な性格のポケモンのはずだ。それが目の前でケムッソを睨みつけ、激しい形相で川に落とそうとしていた。 蓮華:「やめなさい!」 あたしが叫んだが、それよりも早くヘラクロスはケムッソを川に蹴り落としていた。 キレイハナ:「何てことをするのよ!蓮華、ケムッソをお願い!」 蓮華:「分かった!」 あたしは流れていくケムッソを助けるために追いかけることにした。そしてキレイハナはリーフブレード2当流でヘラクロスに向かっていった。 川は枯れ木になった部分があることで雨が降っても大地に溜まらない。そのためか、水は川に多く流れ込むために川は急流になっていたのだ。 ケムッソはそのためにあたしでも追いつけないほどの場所にいた。 蓮華:「トサキント、サニーゴ、ケムッソを助けて!」 だからあたしは、ポケモンにお願いすることにした。トサキントたちはその流れに乗ってケムッソを助け出した。 持っていた傷薬や回復の薬などであたしはケムッソを助けた。と、今度はキレイハナの悲鳴が聞こえた。 あたしはトサキントをボールに戻し、さっきの場所に戻った。すると、そこにはボロボロになったキレイハナがいた。 そしてヘラクロスの横には一人のトレーナーがいた。 ??:「君がキレイハナのトレーナーか。そんなケムッソのためなんかでよく草タイプにここを任せられたね。」 そのトレーナーは鋭い目であたしをけなすように見て、そしておかしそうに笑っていた。 蓮華:「あなた、ヘラクロスのトレーナーなの?」 ??:「トレーナー?まさか。こいつは俺の道具さ。」 蓮華:「道具?どういうこと?」 ??:「ポケモンというのは俺に操られるためにあり、俺の道具になるためにいるのさ。だから俺が操ってやったのさ。 俺の嫌いなこの町を壊滅させるためにな。」 ??:「そのくらいにしたら?」 そのトレーナーが言い放つと、誰かが止めるように入ってきた。それは…。 蓮華:「美咲ちゃん!?ってことはあなたはスペース団なのね。」 ??:「ああ、そうだよ、草能力のお嬢さん。俺はダーク。闇能力の能力者だ。俺を馬鹿にしたこの町の住人に復讐するためにやってるのさ。」 フレイ:「あたしもダークも、そしてエレクも、この世界では異端者扱いされたこと、志穂から聞いたでしょ?そういうことよ。」 ダーク:「それを聞いても邪魔をしようってのか?」 フレイ:「それだったらここであたしたちが倒してあげるわ。そしてダークの力であなたもスペース団に入れてあげる。 操り人形としてね。」 二人はこの世界であたしたちと違って、能力を忌み嫌われ、異端者扱いでずっと嫌な思いをしてきている。そのために、その復讐をするために、スペース団に入った。 二人の気持ちは分からなくない。あたしだって元々いた現実世界で初めはいじめられていたりもした。でも、それを乗り越えたから今があるのだ。 蓮華:「二人に言うわ。あたしは、あたしは何があっても信念は変えない!だからここであなたたちを倒す!」 あたしは強く言い放った。するとボールからイーブイが飛び出し、ケムッソも前に出てきた。 フレイ:「そう、それなら終わったというくらいに潰してあげる、コータス!」 ダーク:「結局俺たちの気持ちが分かってないようだな。ヘラクロス、行け!」 コータスとヘラクロスが襲い掛かってきた。あたしはイーブイとケムッソで行くことにした。 フレイ:「コータス、一発で終わらせるわよ、オーバーヒート!」 ダーク:「ヘラクロス、その邪魔な虫を踏み潰してやれ!」 イーブイにはオーバーヒートが放たれ、ケムッソにはヘラクロスが近づいてきた。でも、ここでやられはしない! あたしはこの子達を信じる!ケムッソだってあたしがまだゲットしてないけど、あたしに加勢してくれたから。 蓮華:「イーブイ、守るのよ!ケムッソ、毒針で立ち向かって!」 イーブイは守る攻撃で炎の攻撃を防ぎ、無傷でその場に残った。そしてケムッソはヘラクロスに至近距離で毒針を打った。 ダーク:「そんな針がこの硬い体のヘラクロスに通用するか!」 蓮華:「するわ!ケムッソ!」 ケムッソ:「ケム!」 ケムッソは何度も打ち続け、そしてヘラクロスはケムッソを踏み潰す直前、苦悶の表情を浮かべて倒れた。 フレイ:「ケムッソに気を取られすぎじゃないの?コータス、火炎放射よ!」 蓮華:「イーブイ、見切って泥かけ攻撃よ!」 イーブイは火炎放射を見切り、見事に避けてコータスの顔に泥をぶっ掛けた。コータスは地面タイプの攻撃を受け、そのうえ視界が効きにくくなっていた。 フレイ:「どうしてこんなポケモンに!」 ダーク:「くそ、どうしてだ!」 ヘラクロスはほぼ戦闘不能に近く、コータスも動きが鈍くなっていた。 蓮華:「ケムッソはヘラクロスの甲羅の覆われていない部分を攻撃していたのよ。その部分に何発も毒針が当たっていたの。 頑丈な体つきのヘラクロスでも何度も毒針を受ければ立っていられなくなるわよ。」 ダーク:「くそぉ!それなら直接攻撃に出るまでだ!」 ダークはあたしに向かって何かを放とうと、手をかざした。しかし、無数の何かが飛んできてダークは手を下ろした。 ダーク:「誰だ!」 フレイ:「何者!」 と、出てきたのはキレイハナだった。しかもボロボロじゃない。 キレイハナ:「ざんねんでした。あたしのこと、忘れてたのね。」 蓮華:「キレイハナ!どういうこと?」 キレイハナ:「みんなが助けに来てくれたのよ。」 キレイハナが示す場所にはナゾノクサの集団がいた。ゲットされていようとも、喋れようとも、キレイハナは同じ進化系に属する仲間だと救援に来たらしい。 キレイハナ:「そのおかげで光合成で復活よ。それ、あたしの攻撃よ、日本晴れ!」 キレイハナは日本晴れで暗くなり始めた森を照らし出した。すると。 イーブイ:「イ〜ブイ!ブイ!」 ケムッソ:「ケム〜!」 ケムッソとイーブイが光り始めた。進化だった。 フレイ&ダーク:「何!?」 キレイハナ:「蓮華、あなたを信じて立ち向かった、それでこの二人は進化ができるの。あなたにイーブイは十分懐いているし、ケムッソもヘラクロスに勝つことで 自分に自信をつけたから。自分は弱くないことを証明できたから!」 イーブイはキレイハナの日本晴れの光を十分に吸収し、パープル色の姿をしたポケモン「エーフィ」に、ケムッソはさらに2段進化をして、 アゲハ蝶の姿をしたポケモン「アゲハント」に進化を遂げた。 フレイ:「2段進化ですって!コータス、オーバーヒートよ!」 ダーク:「ふん、そんなことで倒せるか!ヘラクロス、やれ!」 フレイとダークは進化を目の当たりにしても、まだ向かってきた。コータスは泥が乾いたことで視界が分かるようになったらしい。 ヘラクロスの場合は操られて無理やりのようだ。もう、こんなひどいバトルはさせない!させたくない! キレイハナ:「蓮華、行くよ。」 蓮華:「ええ、エーフィ、コータスの頭をサイコキネシスで無理やり甲羅に押し込んで!」 エーフィ:「エフィ〜!」 フレイ:「ちょ、ちょっと、何するのよ!」 コータスはオーバーヒートを放とうとした直前に甲羅に押し込まれ、甲羅から炎を噴出した。自分に対しての攻撃になっていたのだ。 蓮華:「アゲハント、ヘラクロスに風起こしよ!」 アゲハント:「アゲ!」 ダーク:「ヘラクロスにそんな攻撃が通じるか!」 風起こしはヘラクロスにダメージを与えているが、それでもヘラクロスは向かってくる。でも、あたしの狙いは別にあった。それは…。 キレイハナ:「さっきのお返しよ!必殺、粉地獄!」 キレイハナはアゲハントの風に向かって口から無数の粉を吹いた。それは風に流され、ヘラクロスだけでなく、ダークやフレイにも降りかかった。 ダーク:「ぐぁ!何だ、これは…苦しい!体が動かない!」 フレイ:「眠くなってくる…」 キレイハナが吹いたのは眠り、痺れ、毒の3種類の粉だ。あたしの狙いは元々そこだった。風によって彼らに粉が流れ、それによって粉の効果で 相手を倒したのだ。キレイハナが毒を溜められる能力を持っていたからこそ、それができたのだ。 キレイハナ:「さっきのお返しよ。蓮華、後はどうぞ。」 蓮華:「ええ。」 あたしが指示を出そうとすると、フレイが言った。 フレイ:「あなたがあたしたちにどんなに立ち向かっても、最後にはあなたに泣きを見せてあげるわ。」 蓮華:「それはないわね。それに、あたしは分かった。あなたたちは逃げたから。それを教えてあげる。 エーフィ、サイコキネシス、アゲハント、銀色の風、キレイハナ、ソーラービームよ!」 3つの攻撃はフレイ、ダーク、そしてコータスを星にした。 そしてあたしは、ヘラクロスにボールを投げた。 キレイハナ:「れ、蓮華!?」 アゲハント:「アゲ?!」 蓮華:「この子は操られてこんな酷いことをしてしまった。でも、それを挽回するためにあたしと一緒に旅をしてもらいたいの。 それに、この子もあたしたちと同じように別世界から飛ばされてきたのよ。行く場所がないでしょ?」 あたしはヘラクロスをゲットした。そしてアゲハントも。 アゲハントは不満そうだったが、キレイハナにも諭され、それを認めてくれた。 アゲハントにとって、一度は自分を殺そうとした相手のようなものだけど、ヘラクロスは自分の意思とは別で無理やりやらされたことだ。 でも、してしまったことには変わりない。だから、それをしてしまった分の償いをしなければいけない。でも、ここにいることはできない。 操られたとはいえ、ここに住むポケモンたちにひどいことをしてしまったから。 だからあたしが居場所を作った。そのことをアゲハントにゆっくり話したのだ。アゲハントだって、心では分かっていたようで、 でも、納得しにくかったのだ。でも、やっぱり分かってくれたのは、アゲハントのやさしさのおかげだろう。 蓮華:「さてと、最終段階をやらなきゃね。」 次の日、あたしとあたしの持っている全ポケモンは、一日中寝込むことになった。 キレイハナ:「疲れたね。」 蓮華:「うん。…ごめんね、みんなの力も借りちゃって。」 キレイハナ:「しょうがないよ。」 そして街には、クチバシティには変化が訪れていた。森が、枯れて荒れていた全ての森が復活を遂げたから。 新聞には「クチバの奇跡」と書かれていたらしい。 氷雨:「蓮華ちゃん、やりすぎね。」 その新聞はクチバからヤマブキにも届いていた。 ナツメ:「どういうこと?」 氷雨:「分かってるでしょ?」 ナツメ:「ええ、でも、あなたの口から聞かせてくれない?」 氷雨:「分かったわ。この森の復活は、植物能力者の蓮華ちゃんが植物の力を木々や大地におくることで成し遂げられたことよ。」 ナツメ:「そう。」 氷雨:「ただ、この規模だと…今頃は寝込んでるわね。」