蓮華:「今日はジム戦だね。」 キレイハナ:「そうだね、相手が電気ならあたしとサンドで楽勝でしょ。ロコンやルナトーンもいるし。」 一昨日、森の枯渇事件を解決し、ヘラクロスとアゲハントを仲間にしたあたしは、能力の使いすぎによって寝込んでいた。 でも、それは昨日までのこと。今あたしはようやく回復してクチバジムに向かっていた。 来美ちゃん情報によると、クチバジムは電気ポケモンのジムらしい。だから対抗手段は地面ポケモンのサンドだ。 岩のルナトーンや草のキレイハナにも電気は効きにくいので、出してみてもいいと思うし、鋼タイプもあるコイルにはロコンが優勢だと思ったのだ。 それにしても、ジム情報を簡単に教えてくれるのってちょっと…だなぁ。 キレイハナ:「蓮華、気にしない、気にしない。ど〜んといってみようよ。」 蓮華:「ま、そうだね。」 あたしは一応キレイハナの一言に従ってジムに向かった。 今回はキレイハナはまだ十分回復できてないため、キレイハナは出番が来るまでボールの中にいることになった。 20.決戦!ディグダの穴 クチバジムはアメリカンの様で、迷彩柄の服を着たお兄様、お姉さま系の人が外にたくさんいた。あたしはその中の一人に声をかけられた。 お姉さま:「あなた、ジム戦?」 蓮華:「そうですけど。」 お姉さま:「ふぅ〜ん、まあ、頑張りなさい。多分マチスと戦う前に出てくることになるわね。」 意味深なことを言われた。あたしが聞き返そうにも、お姉さまはそのまま行ってしまったし。 しょうがなくあたしはジムに入った。 蓮華が入った直後、彼らは白いポケモンが森の方に猛スピードで走っていくのを見かけた。 蓮華:「グロウタウンの蓮華です。ジム戦に来ました。」 あたしが入ると、真っ暗だったジムがぱっと明るくなり、あたしの目の前にはライトを背にした二人組が立っていた。 ??:「そろそろ来ると思ったわよ。」 ??:「悪いけど、マチスには会わせないから。」 あたしにはその二人組に見覚えがあった。特に片方には思いっきり。 ??:「あたしたちに勝てたらここを通してあげる。」 ??:「蓮華ちゃんが実力あることは来美姉や哲也から聞いてるけど、あたしたち電撃シスターズに勝てなきゃ通さないことになってるから。」 あたしの目の前にいたのは黄色と黒をベースにした迷彩柄のキャミソールとスカートのコスチュームに身を包んだ二人の少女だった。 蓮華:「久美ちゃんに希ちゃん…来てたんだ。」 久美:「当たり前よ。」 希:「来美姉が入っていくのが見えたから、慌てて飛び込んだのよ。」 二人の少女の正体はあたしと一緒に住んでる最後の一人の久美ちゃんと、哲兄の同級生の希ちゃんだった。 二人は同じ能力を持つことで交流があるらしく、年齢差のないこともあって仲がいいのだ。 久美:「それで、ルールを説明するわね。ここであたしと希のどっちかと勝負をして、勝てばマチスとジム戦ができるわよ。」 希:「た・だ・し、負けた場合はさようなら。次の日にまた来てくださいってことになるの。」 蓮華:「分かった。じゃ、久美ちゃんとやる。負けないよ。」 久美:「そう。でも、あたしとのバトルはダブルバトルだから。」 希:「まぁ、あたしも久美も今のところ、負けてないのよね。最近マチスと戦ったトレーナーがいないし。」 二人の口調からして、そしてさっき出会ったお姉さまの口調からして、久美ちゃんたちは結構強いことが感じられた。 元々、二人の能力が雷なだけに、この場所が二人のポケモンに何かしらの影響を与えている可能性もなくはなかったけど。 蓮華:「それでもいいよ。あたしは絶対に負けない自信があるから。」 というわけで、あたしはバトルフィールドに案内された。 希:「それではただいまより、クチバのジムトレーナー久美とグロウタウンの蓮華のダブルバトルを開始します。 どちらかのポケモンが1体、戦闘不能になった時点で勝負は決まります。では、バトル開始!」 希ちゃんの審判で試合は始まった。 蓮華:「お願いね、サンド、キレイハナ!」 あたしはいつもどおり、サンドとキレイハナを投入した。 久美:「草タイプと地面タイプで電気を聞きにくくする作戦ね。でも、あたしのポケモン、分かってなかったの?」 久美ちゃんはボールを投げた。その時にあたしは察した。久美ちゃんのポケモンは確か…。 出てきたのはベイリーフとエレブーだった。 久美:「あたしのエレキッドとチコリータが進化したの。小型でこの子達に勝てるのかな?」 蓮華:「勝つ!キレイハナ、ハイパーボイスで足止めよ!」 キレイハナ:「了解!」 キレイハナは向かってこようとした2体に向かって強力な声の波動を発した。そしてその間にサンドがエレブーに向かって泥をかけた。 久美:「泥かけで命中率を下げる気ね。エレブー、リフレクタよ。ベイリーフ、甘い香り!」 久美ちゃんは場を経験しているだけあって、足止めは効かなかったらしい。泥はリフレクタに遮断され、ベイリーフの甘い香りはキレイハナとサンドを 包み込んでいた。すでにここで勝敗は決まった。甘い香りによって回避率が下がり、動きが鈍くなったサンドに対し、ベイリーフの葉っぱカッターは決まった。 希:「サンドが戦闘不能だから、今日のところはさようなら。」 あたしは負けてしまった。 でも、簡単には追い出されないようだ。 久美:「蓮華ちゃんの場合、サンドで電気無効化にしようと思ったみたいね。でも、あたしの場合は対策としてベイリーフがいるの。」 希:「あたしの場合はこの子達だし。」 希ちゃんはあたしにはっきりとポケモンを見せた。 蓮華:「ヌオーとナマズン…」 希:「ええ、草タイプには有利だけど、セオリーどおりに来るトレーナーのポケモンには岩・地面が多いでしょ? だからこの子達が相手でも勝てるのよ。それに、この子もいるし。」 希ちゃんのもう1体はサンダースだった。サンダースはミサイル針を覚えるため、結果的に二人はポケモンの弱点を補っているようだ。 久美:「あたしたちが勝ち続けてる理由は分かったわね?」 蓮華:「うん。でも、どうして手の内を?」 希:「蓮華ちゃんは絶対、この先強くなるもの。だから応援してるし、次はマチスと戦ってほしいかなって思ってるの。」 そんなことを聞いてすぐ、あたしは外に出された。帰るとき、あのお姉さまには「やっぱりね」と言われてしまった。 あたしとキレイハナはポケモンセンターに一度戻ってから、港のへりまでやってきて、そこに腰掛けた。 キレイハナ:「蓮華、どうする?」 蓮華:「どうするって言われても、あたしとしてはもう一度久美ちゃんと戦って勝つ以外にないと思うの。」 自分たちの手の内を明かしたのだ。それで作戦を組んできても、知ってたから勝てただけにしかならない。 蓮華:「あたしは地面タイプを出した状態で、相手が草ポケモンもいるタッグと戦って勝たなきゃいけないのよ。」 キレイハナ:「そうだね、でも、サンドは当分無理っぽいよ。ルナトーンで行くの?」 それが問題だった。サンドは葉っぱカッターを受けた場所がいけなかったようで、さっきポケモンセンターに行ったところ、当分安静にするように 言われてしまったのだ。でも、ルナトーンは地面技が使えないからエレブーに勝つには不安定な上、キレイハナでも守りきれない特性”浮遊”をもつのだ。 蓮華:「ゲットするしかないのかなぁ?」 キレイハナ:「でも、ゲットしたとしても並みのポケモンじゃ歯が立たないのよね。」 久美ちゃんはチコリータを持っていた。それをベイリーフに進化させたということはそれなりの場数を踏んでいる。その分、ゲットした手よりも動きも早いはずだ。 向こうの手の内が明かされた以上、ロコンとミニリュウに頼むことも、ジム戦としては妥当でもプライド的にちょっと…な部分があった。 あたしは青い海の向こうの水平線をじっくり眺めながら、どうしようか考えていた。海を見ていると妙に落ち着く。それはキレイハナも同じようだった。 でも、それでも考えはまとまらなかったのだ。 蓮華たちが考えている頃、森の近くにあるディグダの穴ではとある事件が起きていた。 フレイ:「ディグダがいっぱいね。」 エレク:「ああ、しかしそれも今日までだな。」 ディグダたちも様々なトレーナーを見てきているし、噂も聞いているため、穴に入ってきたのがスペース団と察し、身構えていた。 フレイ:「攻撃する気かしら?でも、そんなことはやめて逃げるべきね。」 エレク:「やめとけよ、それよりも…ゴース、黒い眼差しだ。」 多くのディグダが突如現れたゴースの黒い眼差しのために動けなくなった。そこに何かの機械が作動する音が聞こえ、穴の中に水が流れ込んできた。 ディグダやダグドリオたちは驚いて逃げようとするが、大半が黒い眼差しを受けているために次々に水に沈み、戦闘不能になって浮かび上がってきた。 フレイ:「これでたくさんのディグダをゲットできるわね。」 エレク:「ここは邪魔な存在でもあるしな。ボスの命令だ。ここのディグダを全滅させてやろうぜ。」 二人が穴から出ると、大きなホースが穴に入り、さらに水が入ってきていた。穴はその水、海水でいっぱいになろうとしていた。 ??:「アブ!」 あたしとキレイハナは突如、背後から吠えられて驚いた。振り返ると、そこには何度も目撃した白いポケモンがいた。 キレイハナ:「このポケモンは…アブソル!」 蓮華:「アブソル?」 あたしは図鑑を開いた。 図鑑:「アブソル、災いポケモン。災いや事件を感知する能力を持ち、風を切って行動する。」 と出てきた。どうしてか知らないけど、今日に限ってはあたしたちに何かを訴えかけているようだった。 蓮華:「あたしに何か用なの?」 アブソル:「アブ!」 アブソルは走り出した。ちょくちょく振り向くので、あたしはついていく事にした。 キレイハナ:「あのアブソル、どうしてあたしたちに?」 蓮華:「分からない!でも、アブソルはあたしに何かを感じてるのかもしれない。」 と、アブソルが突如姿を消してしまった。でも、アブソルが伝えたかったことは分かった。 あたしとキレイハナはディグダの穴にホースのようなものが入り、ホースにはポンプがつき、海水を引き上げているようだった。 蓮華:「多分、最近の事件を解決したのがあたしたちだから、それでここに案内したのかもしれない。」 キレイハナ:「それなら、なにかもうちょっとやさしく言えばいいのに。」 そう思った。でも、あの悲しそうな表情は何か別の、言えない事情みたいなものを表している。そんな気がした。 それよりも今は、ディグダの穴に海水を入れている機械を止めなきゃいけなかった。 あたしたちが穴に向かって駆け出すと、一歩手前で炎と雷の攻撃を受けた。これはもしかして…。 あたしはキレイハナと目配せ、 蓮華&キレイハナ:「もう、一体何なのよ!」 と叫んだ。 すると案の定。 エレク:「もう、一体何なのよ!と言われたら。」 フレイ:「答えてあげるが大事なこと。」 あたしはサニーゴとロコン、ピッピとエーフィを出した。 エレク:「宇宙の神秘を守るため」 フレイ:「宇宙の汚れを浄化するため」 サニーゴがトゲキャノンの狙いを定め、キレイハナが光を吸収し始めた。 エレク:「愛とナチュラルな悪を貫く」 フレイ:「究極のスペシャルな敵役」 ピッピが指をふり、ロコンも炎を蓄え始めた。 エレク:「エレク」 フレイ:「フレイ」 エレク:「天の川を駆け巡るスペース団の二人には」 フレイ:「イエロー&レッド、最高の夜明けが待ってるぜ!」 エレク:「決まったぜ!」 蓮華:「一斉攻撃よ!」 フレイ&エレク:「へ?」 ロコンのオーバーヒート、サニーゴのトゲキャノン、キレイハナのソーラービーム、ピッピのサイケ光線、エーフィのサイコキネシスが、 フレイとエレク目掛けて放たれ、二人を思い切り吹っ飛ばした。 フレイ:「何よ!あたしたちの口上中に仕掛けるなんて!」 エレク:「ずるいぞ!それでも正々堂々かよ!」 フレイ:「そうは言ってもこれじゃ無理ね…」 エレク:「そうだな…」 フレイ&エレク:「最悪のバッドエンド!」 二人は星になった。あたしたちは機械を探ると、エネルギーが切れるまで動き続ける機械のようだ。 蓮華:「キレイハナ、エネルギーの部分は?」 キレイハナ:「ちょっと待って…あった!電気カプセルだ!」 蓮華:「分かったわ、出てきて、モココ!」 あたしはモココに頼み、充電された電気を全て吸収してもらうことにした。いわゆる充電だ。充電した分は、あとでこれを壊す時に使ってもらおう。 そこで次に、モココが充電し終えるまでにディグダたちを助けることにした。 あたしたちが入ると、すでに体の半分までが水につかるほど、穴の中は海水でいっぱいだった。そして、ディグダたちは天井にびっしりいて、それでも水面に浮いているディグダもいた。 ディグダたちはあたしが入るなり、砂かけ攻撃をしてきた。どうやらスペース団の攻撃を受けて気が立っていたようだ。でも、そんな攻撃に屈している場合じゃなかった。 蓮華:「トサキント、メノノ、サニーゴ、ミニリュウ、水面のディグダたちを助けて!」 ここは総力戦しかなかった。持っているポケモンたちの力でできるだけ救出するしかなかったのだ。バタフリーやアゲハントにも強力を要請した。 そしてだんだん、ディグダたちも好戦的じゃなくなっていて、あたしたちに協力してくれていた。 と、一匹のディグダが天井から落下して、流されていこうとしていた。他のみんなは精一杯だったので、あたしが向かった。 蓮華:「大丈夫?しっかりして!」 ディグダ:「ディグ?」 ディグダは弱っているようだったけど、あたしが水から泳いで助けてくれたことを嬉しく思っているようだった。 蓮華:「心配しないで、もう大丈夫だから。」 あたしはディグダを元気付け、そして広さを確かめてからギャラドスを出した。 ギャラドス:「ギャ、ギャラ?」 さすがにディグダの穴の中と分かっているために驚いているようだ。 蓮華:「ギャラドス、お願いがあるの。真上に破壊光線を打ち出して!」 あたしにはこの水を何とかするのに考えを持っていた。ギャラドスは一瞬迷いながらも破壊光線を打ち出した。すると、真上に伸びるように穴ができた。 蓮華:「今度はヘラクロス、ルナトーン!お願い!」 あたしはあのポンプのホースをヘラクロスに持ってきてもらい、穴にはめ込ませた。ヘラクロスだけの力だと無理だったので、ルナトーンにも協力してもらった。 そこでようやく水が止まった。あたしはディグダたちとポケモンたちを外に出したあと、ある考えがあり、ポンプを穴に入れた。そしてモココに電気を送らせて、ポンプを動かした。 モココは一気に電気を流したので、強さはさっきのよりもMAXになり、一気に穴の中の水をホースの方に送り込ませた。 水が引いたあとで、あたしはポンプとホースを外に出し、ディグダたちを穴に返した。 蓮華:「みんな、大丈夫だった?」 あたしはディグダたちに聞いてみた。すると、地面が泥状態ではあるが、ディグダ・ダグドリオたちは大丈夫といわんばかりに動き、穴を耕して普通の状態に戻していた。 水に浸かって倒れてしまったディグダたちも、あたしが能力のヒーリングや傷薬、元気の欠片などをフルに使って助けたので、逆に感謝しているとキレイハナが教えてくれた。 そこにさっき助けたディグダがやってきた。 ディグダ:「ディグ!」 ディグダはモンスターボールを転がしてきていた。何かを訴えかけているようで、あたしはそれが何を表しているか、すぐ分かった。 蓮華:「ゲットしてほしいのね?」 ディグダ:「ディグ!」 あたしはディグダをゲットした。それにしても、あたしのポケモンって自分からゲットされに来る子が多い気がする。 友情でゲットするのは嬉しいけど。 後、不思議だったのが一つ。破壊光線で開いた穴が、いつの間にか埋まっていたのだ。どうしたのかな? あたしとキレイハナがクチバシティに戻ると、何か騒がしかった。何が起きたのかと思って、人だかりに行ってみた。 すると、確か大きなビルの建設中だった場所が無残に破壊され、地盤自体も無残に舗装が剥がれた状態になっていた。 そして確かそこの持ち主だと思う人ががっくりと肩を落としていた。 そこに久美ちゃんの姿を見つけ、一応聞いてみた。久美ちゃんのほうもあたしに気づいたようだ。 久美:「蓮華ちゃん、見た?」 蓮華:「うん、何が起きたの?」 久美:「あのね、いきなり建設中のビルが崩れ落ちたらしいの。そして地盤もこの土地の持ち主がしっかりと舗装して、がっしりさせていたのに、 いきなり湧き出した海水があの状態にしてしまったらしいの。」 蓮華:「えっ…」 さすがにあたしは分かった。ビルが崩れたのは、あたしがギャラドスに放たせた破壊光線によるものだ。そして海水を送り込んだことでそれによって不安定になったビルが崩れたのだ。 海水を全て送り終わった後にビルの残骸が穴に落ちて、後はディグダたちの力によって埋まった。そういうことだと思う。 蓮華:「まさかあのビルの真下だったなんて…」 久美:「えっ?」 蓮華:「ううん、何でもないの。」 あたしはディグダを助けるためにしょうがなかったとして、このことを黙っておくことにした。さてと、仕切りなおして明日はもう一度、ジム戦だ! ヒュ〜…ド〜ン! フレイ:「あれっ?ここは…」 ??:「おお!君は!」