ディグダの穴であたしがゲットしたディグダは実は結構すごかった。 キレイハナ:「この子、スピードはあるし、どうして毒々を覚えてるのよ!」 ポケモンセンターのバトルフィールドでキレイハナと戦わせてみたのだ。マジカルリーフを寸止めで避けたり、砂かけを絶妙のタイミングで使ううえ、 岩なだれなどの技も覚えている。 キレイハナ:「ねえ、あんたどうしてそんな技を覚えてるのよ!」 さすがに切れたキレイハナが聞いたところ、ディグダは何かを言った。 キレイハナ:「ふぅ〜ん、そう…」 蓮華:「何だって?」 あたしが聞くと、キレイハナは罰の悪そうな顔をしていた。 キレイハナ:「この子の親、トレーナーらしいのよ。」 どうやらポケモン同士を色々組み合わせて色んなディグダを産ませたらしい。その中で一番を選び、あとをディグダの穴に逃がしたという。 はっきり言って、いらなくなったから捨てたみたいなことなのだ。 蓮華:「そうだったの…。でも、あたしはこの子のこと、全然強いと思うよ。」 キレイハナ:「同感。そうよね、このあたしと互角なんだから。」 あたしたちが言うと、ディグダは嬉しそうだった。 21.友情の大好きクラブ そして次の日。あたしはジムに向かった。昨日崩壊したビルは今再び、土地の持ち主が地盤を固めることから始めている。今度はいつになるのか分からないけど、 多分、だいぶ先になると思う。あそこは海水を含んでしまったから。 と、あたしがジムに近づいたとき、小柄のおじさんがやってきた。 おじさん:「おぉ〜、このキレイハナはとても美しいですね。とってもよく育てられてます。」 そのおじさんは、キレイハナをジロジロ見たかと思うと、なでたり触ったりしていた。 蓮華:「あの…どなたですか?」 さすがにキレイハナの機嫌が悪くなりそうだったので、すかさず聞いてみた。すると。 おじさん:「私はこのクチバシティに本社を置くポケモン大好きクラブの会長タマランゼである。君も一度来てみないか?」 あたしはこのおじさん、タマランゼさんに連れられて小さな建物にやってきた。するとそこは、様々なポケモンを連れた人たちが自分のポケモンの自慢をしながら 会話を楽しんでいた。 マダム:「私のニドリーナちゃん、昨日新しい牙が生えましたのよ。」 ミニスカート:「あたしのパウワウ、角が伸びたんだよ。どう?この凛々しさ!」 短パン小僧:「俺のカイロスの角、すげえだろ?」 あたしから見ると普通以外のものでしかないけど。さすがに口に出すことはできなかった。言ったら建物全体を敵に回す。 それはキレイハナも悟ったようで、あえて喋らないようにしていたが、いろんな人に見られて嫌な感じはしているようだった。 タマランゼ:「さて、君の名前はなんていうのかな?」 蓮華:「あたしは蓮華です。」 タマランゼ:「そうか、では蓮華ちゃん。君にとってポケモンとはどんな関係かな?」 蓮華:「友達以上の関係ですよ。家族みたいな、あたしにとって一番大事な仲間です。」 あたしがはっきり言うと、突然建物の中にいた人たち全員が拍手をしていた。 タマランゼ:「いやはや、最近はそこまで言ってくれるトレーナーの姿は見かけぬ。5年前にここを訪れたトレーナー以来じゃ。」 そう言って、タマランゼさんはあたしに色々なものが入った袋をくれた。 タマランゼ:「今から蓮華ちゃんはこの大好きクラブの会員じゃ。そしていいことを言ってくれた記念を君に贈ろう。」 中には会員書や会員アルバムなどの他に、技マシンや不思議なアメなどの道具が入っていた。 あたしは挨拶をそこそこに、そこを出た。 キレイハナ:「う〜〜ん…はぁ〜、疲れたぁ〜!」 出て少しした直後、キレイハナは思いっきり伸びをした。あたしはチラッとアルバムを見た。 キレイハナ:「何それ…、あれれ?」 あたしもちょっと驚いた。哲兄たちの写真があったのだ。 哲兄、翼先輩、健人先輩、菜々美ちゃん、美香、久美ちゃん、希ちゃん…。 蓮華:「みんな、載ってるんだぁ。」 多分、タマランゼさんはこの町を訪れる人一人一人に声をかけてる気がする。そしていつの間に取ったのか、あたしの写真もあった。 キレイハナ:「あ、蓮華の写真!あ、あたしも写ってる!もう少しちゃんとしてればよかったぁ!」 キレイハナは残念がっていた。あたしが写っていたのは名誉会員のページで、あたしが言った言葉さえも載っていた。 その横に5年前の写真があった。名前は…。 あたしは驚いた。そしてキレイハナが気づく前にアルバムを閉じた。だって写ってたのは美咲ちゃんだったから。 ”名誉会員第87号:トキワシティ出身、美咲。” 写真の美咲ちゃんは確かにあたしが昔最後に会ったときと同じ美咲ちゃんだった。しかも。 ”ポケモンはあたしの大事な友達です。あたしにとってこの子がいなかったら生きていくことはできません!” と、書かれていた。その横にはヒトカゲの姿があった。ヒトカゲ?美咲ちゃんは持っていなかったはずだ。 今の美咲ちゃんはスペース団の幹部で、ポケモンに対しても非道なことを行っている。でも、それを彼らは知らない。 それ以前に、美咲ちゃんが本当にひどい迫害を受け続けていたのか、それが気にかかった。 この時はまだ、そんな感じじゃないはずだ。この言葉は迫害されていることを意味していてもおかしくないけど、それは違うと思うのだ。 あたしは一応、この荷物を置くために、一度ポケモンセンターに戻った。 キレイハナ:「それじゃ、ここで待ってるから。」 蓮華:「うん、分かった!」 あたしはキレイハナを待たせて、今借りている部屋に戻った。荷物を色々と置いていたら、突然窓が開いた。 フレイ:「ヤッホ〜。」 入ってきたのは何と美咲ちゃんだった! あたしが身構えようとしたが、好戦的じゃなかった。いつもは全然好戦的なのに。 フレイ:「あたしのそれ、見られちゃったね。」 蓮華:「やっぱりこれ、美咲ちゃんなの?」 フレイ:「ええ。」 よく見ると、フレイこと美咲ちゃんは私服だった。 フレイ:「あたしね、スペース団やめたの。」 蓮華:「えっ…」 フレイ:「あたしのこと、スペース団の制服を着てても全然、普通に接してくれた人がいたの。だから罪滅ぼしがしたくなったの。」 蓮華:「その人って…もしかしてタマランゼさん?」 美咲:「そう。あたし、昨日ディグダの穴を襲って、蓮華に吹っ飛ばされたでしょ?その時、あたし、大好きクラブの庭に落ちたの。エレクとは違う場所に。」 その時、会員たちに見つかり、攻撃を受けそうになったらしい。しかし、動けない自分を身を挺してかばってくれたのがタマランゼさんだったらしい。 美咲:「あの人ね、名誉会員全員の顔を覚えてるんだって。だから、あたしのことも覚えてたみたい。」 蓮華:「そうなんだぁ」 美咲:「その時あたし、気を失って倒れちゃったの。でも、目が覚めたときタマランゼさんもマダムも、あたしを看病してくれたし、 あたしの喋ってること、全部聞いてくれたんだ。あたしがスペース団に入るきっかけになったことも。」 美咲ちゃんに起きた迫害のこともだろう。あたしはまだ、それに触れられないけど。 美咲:「その時、言ってくれたの。君はまだ戻れるって。居場所ならここにあるからって。あたし、気づいてなかったんだよね。 自分にも居場所があって、スペース団やロケット団に入らなくても、ちゃんと自分がいてもいい場所があったことに。 あたし、当分はクチバに残るの。久美と希も歓迎してくれたし。」 すでに会って来たようだ。 美咲:「さっきクラブに戻ったら、蓮華が来てたって分かって。それでここに来たの。蓮華に会いたかったから。 会って謝りたかったから。」 蓮華:「そんな…いいよ。あたしは気にしてない。あたしが動くよりも早く、美咲ちゃんが気づいてくれたし、分かってくれたから。」 美咲:「ありがとう。蓮華、多分スペース団はあたしを裏切り者として襲ってくる。でも、蓮華も危ないよ。」 突然、真面目な顔になった美咲ちゃんが言った。あたしはそれを聞き返そうとしたが、突然部屋全体が大爆発を起こして…。 キレイハナ:「遅い…全く、何をしてるんだか。」 蓮華がなかなか戻ってこない。何故かは知ってるけど…なぜなら。 久美:「焦らなくても、ジム戦もあたしも逃げないわよ。」 希:「気長に待ったらどうなの?」 ここに、久美と希もいたから。蓮華を訪ねてきたらしい。 聞くところによると、スペース団の美咲がスペース団を辞めたらしいし。 多分、蓮華が遅いのは美咲と喋ってるからだと思うけど、遅すぎるよ! キレイハナ:「喋るならここに来て話せばいいのに。」 久美:「あの二人は親友だったから、あたしたちが間に入れない話もあるんだよ。」 希:「そうそう、だから待ちましょ。」 あたしがいるのはポケモンセンターの喫茶ルーム。あたしはミネラルウォーターも飲み干して暇を持て余していた。 そんな時、ポケモンセンター全体を揺らがす爆発が起きた。あたしたちが向かうと、そこは蓮華が借りてる部屋だった。 キレイハナ:「蓮華!」 あたしが駆け寄ると、そこには気を失っている蓮華と助け起こしている美咲の姿があった。 キレイハナ:「蓮華は?」 美咲:「大丈夫。向かってくる破片、全部あたしが防いだから。ちょっと気を失ってるだけ。」 それを聞いて安心した。と、砂煙が消え、部屋がどんな状態か分かった。蓮華と蓮華の荷物は美咲が助けたようだけど、 部屋そのものの存在がなくなっている状態だった。 そして、巨大なリザードン型のロボットがそこにいた。 久美:「何!これは…」 すると、聞いたことのある声がした。さすがに頭を抑えるあたしと美咲がいる。 ヤマト:「何!これは…と聞かれたら...」 コサブロウ:「答えてあげないの普通だが...」 二人:「まあ特別に答えてやろう!」 ヤマト:「地球の破壊を防ぐため...」 コサブロウ:「地球の平和を守るため...」 ヤマト:「愛と誠実の悪を貫く...」 コサブロウ:「キュートでお茶目な敵役...」 ヤマト:「ヤマト!」 コサブロウ:「コサブロウ!」 ヤマト:「宇宙を駆けるスペース団の二人には...」 コサブロウ:「ショッキングピンク、桃色の明日が待ってるぜ!」 ヤマト「なーんてな!」 ラッタ:「だっちゅーに!」 育て屋事件の奴らだった。 キレイハナ:「また厄介なのが来たわね。」 美咲:「積立金を出してもらえなかったから脱走したって聞いてたけど。」 ヤマト:「うるさいわね、静かにしなさい!裏切り者のフレイ、見つけたわよ!」 美咲:「あたしを連れ戻しに来たの?」 美咲は冷たい声で言い返した。しかし。 ヤマト:「連れもどすですって?そんなことをするわけがないじゃない。あなたを処刑するようにボスに仰せつかったのよ!」 美咲:「!!…そう。でも、あたしはそんなことでは負けないわよ。」 すでに野次馬が多いため、それを聞き、美咲を指差して騒ぐものも出てきていた。 コサブロウ:「スペース団を辞めたとしても、お前は極悪非道を起こしたスペース団の元幹部だ。この町の奴らがそれを知ってお前をどう思うかな?」 さらに騒がしくなり、美咲に石を投げる奴らまで出てきた。 が。 その民衆を叱る者が出てきた。 ??:「こらぁ!女の子に石をぶつけるとは何て酷いことをするんだ!」 タマランゼさんだった。 クチバ市民:「しかしあいつはスペース団だったんだぜ。俺たち散々あいつらにひどい目に遭ったじゃないか!」 タマランゼ:「それは確かじゃ。しかし、あの子は心を入れ替えた。それはわしが保障しておる!あの子はまだ心が死んでおらん!」 タマランゼさんはクチバ市民を言葉で押し負かしていた。しかし、そこにロボットの攻撃が向けられていた。 ヤマト:「そこの爺!そんな演説、うるさくてしょうがないわよ!」 コサブロウ:「裏切り者をかばうなら、お前も死んでもらう。」 リザードンロボットが炎を民衆とタマランゼさんに向かって吐き出した。しかし、その炎は彼らにかかることはなかった。 彼らの目の前には美咲がいたのだ。 ヤマト:「何!」 美咲:「忘れたの?あたしは炎の能力者よ。ヤマトにコサンジ!」 コサブロウ:「コサブロウだ!」 美咲:「どっちも同じよ!…炎よ、我に手を貸したまえ!我に仇する機械を包み込め!」 美咲は炎を操り、逆にリザードンロボに押し返した。その炎は龍のような姿に変わり、リザードンロボを大きく巻きついて、リザードンロボを炎で包み込んだ。 美咲:「あたしに炎は効かないの。それ以前に、あたしの処刑をリザードンでやろうとした罪の方が重いわよ。」 あたしたちも、タマランゼさんたちもその光景を見て圧倒していた。その時ほど、美咲の顔が怖かったことはなかった。 そのうち、リザードンロボの耐熱温度が超えてしまい、ロボットは爆発した。 ヤマト:「悔しい!次こそは絶対!」 コサブロウ:「はぁ、俺たち、何のために来たんだよ。」 二人:「やな気持ちぃ〜!」 二人が行ってしまうと、美咲は淋しそうな顔をした。しかし。 一斉に拍手が起きたのだ。美咲はわけが分からない状態でクチバの人たちやタマランゼさんたちに囲まれていた。 久美:「美咲ちゃんはロケット団から人を守ろうとして能力を使い、そして人間業じゃない炎を操る能力を見て、 逆に化け物扱いされたそうよ。」 希:「恩を仇で返され、それからは迫害を受けたみたい。トキワシティほど、硬い考えにとらわれている人は少なくないわ。 それで美咲ちゃんはロケット団に入ったみたい。信じるものに裏切られたショックから始まり、居場所がなくなったから。」 あたしは後で蓮華に教えておこうと思いながら、美咲に起きたそのことには淋しい思いを感じた。やっぱり、そういう人間もいるんだね。 キレイハナ:「でも、ここでは能力を使ってもみんなを助けても、化け物扱いされないから。美咲はもう大丈夫だね。」 その日、美咲は正式にクチバ市民になった。ポケモン警察は美咲に対してスペース団の内部情報を知る限り聞くことだけで、お咎めは無しになった。 いいことだ。 その夜。 美咲:「蓮華、もう大丈夫?」 蓮華:「うん。…ねえ、一つ聞いていい?」 美咲:「分かってるよ、ヒトカゲのことでしょ?」 蓮華:「うん。…話したくないならいいけど…。」 あたしと美咲ちゃんは一緒の部屋に泊まっていた。美咲の所持ポケモンはコータスだけなのだ。 美咲:「これ。」 美咲はあたしに小さな牙みたいなものがついたネックレスを見せてくれた。 蓮華:「これ…」 美咲:「ヒトカゲの牙。あたしのファーストポケモン、ヒトカゲだったの。でも…」 美咲ちゃんのヒトカゲは美咲ちゃんにとって、心の支えだったらしい。クチバからトキワに行った時、ロケット団に襲われた人を助け、 それによって迫害を受ける羽目になった。そのときに、自分に悪戯をしようとした人は炎使いに水をかけるという極悪的な悪戯をしようとして、 間違って水をヒトカゲにかけてしまったのだ。しかも、それは尻尾に特に命中したらしい。 美咲:「それがショックでヒトカゲは亡くなったの。その時のヒトカゲの残りがこれ。あたしのお守り。」 美咲ちゃんにはそんなことがあったんだ。それはそれは聞いていて、心が痛む話だった。 多分、あたしたちにも起きていてもおかしくなかった話だったから。 美咲:「そんな顔しないで。あたし、それで暴れちゃって、居場所もなくなった。その時スカウトされて、ロケット団に入ったの。 でも、今は居場所もある。あたしは、何もなくしてない。」 蓮華:「美咲ちゃん…」 美咲:「蓮華、これからも頑張りなよ。蓮華は強いんだからね。」 蓮華:「うん!」 その後、美咲ちゃんは再び真面目な顔になった。 美咲:「さっき言いかけたことだけどね、蓮華はスペース団に狙われてるよ。」 蓮華:「どういうこと?」 美咲:「スペース団が以前に手に入れた古文書に、こう書かれていたから。」 ”自然界を操りし者たち現れる時、草の操り人、時を支配するだろう” 美咲:「多分、セレビィのことよ。セレビィは時をわたる草ポケモンだから。」 蓮華:「時を…分かった。気をつけるね。」 あたしたちはそれからもかなり夜更かしをしたために、寝るのはかなり遅くなった。でも、美咲ちゃんが元に戻って嬉しかった。 美咲ちゃんをスペース団から脱退させたいって言う肩の荷が下りたし、 後はあたしの思うままに行くことになるかな。 明日こそ、ジム戦だ!