遊覧船沈没から数日が経った。 蓮華と蓮華のポケモン、キレイハナたちの生存は来美の能力で確認されているが、未だに発見できていなかった。 そんなある日、ハナダから西の方角に位置する岩山トンネルの近くのポケモンセンターでのことだった。 24.ラブ×2?蓮華の彼氏登場! ジョーイ:「今日訪れたトレーナーはまだいないから休んでてもいいわよ。」 ??:「でも、いつ来てもいいようにしておいたほうがよくないですか?」 一人の少年がポケモンセンターを手伝っていた。 ジョーイ:「そんなこと言って、また倒れたら大変よ。休憩も必要よ、涼治君。」 涼治:「そうですね。」 そこへ数人のトレーナーが誰かを背負ってやってきた。 ジョーイ:「どうしたの?そんなに慌てて。」 トレーナーA:「大変なんです、この人が海岸に打ち上げられてて…まだ息はあるみたいなんですけど。」 その誰かはずぶ濡れで少しやつれていたが…蓮華だった。 ジョーイ:「まあ、大変!涼治君、それにあなたたちも手伝って。この子を部屋に運ぶわ。」 涼治:「はい!…蓮華。」 涼治は蓮華を見て驚いていた。 ジョーイ:「涼治君の知り合いだったの?」 涼治:「ええ、ちょっと…。」 ジョーイ:「そう、…この子のポケモンは?」 トレーナーB:「モンスターボールがたくさんあって、全部ショルダーの中にありました。多分、この中だと。」 ジョーイ:「そう、一応この子達の診察しないとね。」 ジョーイはトレーナーたちと涼治に蓮華を部屋に運ぶ指示を出し、彼女のための処置をする準備をしながら、 機械にモンスターボールを入れた。 そして数時間後、蓮華は目を覚ました。 ジョーイ:「今日当たりはまだ、休んでいた方がいいわよ。」 自分が助けられたことを聞いてホッとする蓮華。ポケモンの確認もしたが、誰一人欠けていなかった。 ジョーイ:「それじゃ、安静にしてね。」 ジョーイさんが出て行くと、入れ違いに涼治が入っていった。 蓮華:「…嘘。」 起きたばかりだけど、さすがにあたしは驚いた。 涼治:「よぉ!久しぶりだな。」 蓮華:「…久しぶり。ていうか、どうしてここにいるのよ。」 涼治:「いきなりお前らがごっそり消えただろ。調べようと思って研究所跡地に行ったんだ。 そしたらいきなり足元に穴が出来て、気づいたらここにいたのさ。」 あたしとしては…なんだよね。 涼治:「お前に会えてホッとしてるぜ。」 蓮華:「それで、涼治はどうする気なの?セレビィ探す?」 涼治:「いや、それは火雷笠がやってるからいいだろ。」 志穂ちゃんのことだ。 涼治:「だから俺は将来のことも考えてここにジョーイさんの助手をするって決めたのさ。」 涼治は将来、医療関係の仕事に付きたいらしい。だからポケモンセンターで助手をすることはいい経験になるだろう。 どうしてそんなことを知ってるかといえば…それは…秘密。 涼治:「ところで、蓮華は何してるんだ?」 蓮華:「あたし?あたしはトレーナー。クチバの事故知らない?」 涼治:「…あ、あれお前のことだったのか?」 どうやらトレーナーの名前は公開しなかったらしい。まあ、スペース団のブラックリストに載ってそうな以上、 それがいいと判断されたのかもしれない。 涼治:「そうだったのか。知ってたら必死で探したけどな。」 蓮華:「ありがと。あたしも、一応志穂ちゃんや哲兄と一緒でセレビィゲットのためにトレーナーやってるの。」 涼治:「大丈夫か?」 蓮華:「心配しなくてもいいよ。涼治もあたしのこと、やっぱり心配してくれるんだ。」 涼治:「当たり前だろ。」 こんなやり取りだからバレバレだろうけど、実は涼治は彼氏です。 まさかこっちの世界に来るとは思ってなかったので、つい彼氏がほしいと口走っていたわけだけど、いるならいらないかもしれない。 でも、一緒にはいられないけど。 そして次の日、あたしは涼治の熱心な看病のおかげですぐに回復した。 蓮華:「さて、まずは連絡しないと。多分捜索されてそうだから。」 涼治:「そっか。じゃ、そこの電話を使えよ。」 蓮華:「うん。」 蓮華が離れていくと、蓮華のポケモンのキレイハナ(まさか喋れるとは思わなかった)が近づいてきた。 キレイハナ:「蓮華とどういう関係?」 涼治:「昨日も同じことを聞いただろ。」 蓮華の部屋に回復した途端、訪れてきた。そして散々詮索されたんだよな。ある意味、こいつは小姑だ。 でも、哲也先輩よか、マシだった。 キレイハナ:「いいじゃん。蓮華に彼氏がいたとは…今でも信じられない。どういう経緯で付き合うことになったのか、 それはまだ聞いてないのよ。教えてくれてもいいじゃない。」 俺が蓮華の彼氏だと気づいて、最初の質問が「初体験は?」なのだ。そんな神経の奴に教えるのはさすがに嫌だった。 が。 キレイハナ:「哲也君や翼君は知らないようだけど、教えちゃってもいい?」 これは効いた。教えられては困る。蓮華は知らないけど、翼先輩は蓮華に恋している。あの二人を敵に回したら、 身の破滅じゃ終わらない。 涼治:「分かったよ、話せばいいんだろ。」 ”あれは中1の時のことだった。所属しているバスケ部で俺が唯一1年でレギュラーを取った。 それは俺の実力からして当然で、同級生も逆に認めてくれたくらいだった。しかしそれを気に食わない人もいた。 3年の先輩で補欠にさえなれなかったのが3人いて、そのうちの一人の江本って奴が裏ではすごく威張ってて、 しかも家が金持ちだからか、親の特権使ってバスケ部に残留していた。 江本先輩は俺をこっそり体育館裏に呼び出した。 何故か知らないけど、携帯の番号を知られてて、メールで一人で来いという内容だった。 江本先輩の恐ろしさは学年中が知っているから、巻き込むわけには行かずに誰にも言わずにこっそりと体育館裏に行った。 涼治:「何ですか?用って言うのは。」 江本:「決まってるだろ。レギュラーから降りろ。そして部活を辞めればいいんだ。お前のことは前々から気に食わなかった。 そんな奴が俺のバスケ部にのさばられてはたまらないからな。」 実は江本先輩を追い出そうとした人が前にもいたらしい。しかしその時は親の圧力使ってバスケ部を潰そうとまで したらしかった。 涼治:「断るって言ったらどうしますか?」 江本:「簡単なことだ。お前の家に圧力をかけてやる。お前の両親は二人とも俺の親の会社の社員だからな。 リストラ警告をしてやればどうなるかな?または最果てに飛ばしてもらうのもいいな。」 涼治:「そんなことが許されるんですか?」 一応先輩だから敬語。昔教え込まれたことがこんな時にも出るのは癪だった。 江本:「許されるの何も、この学校は俺が親に頼めばどうとでもなるのさ。」 涼治:「それでも俺は辞めません!せっかく取れたレギュラーだし。それにそんな圧力で負ける親でもありません! 失礼します。」 俺はその場を立ち去ろうとした。その時、真上から何かが落ちてきて、俺はそれらに埋まっていた。 それは大きな石がたくさん含まれた土砂だった。遠ざかっていく意識の中で、手に猛烈な痛みを感じた。 そして。 江本:「俺に逆らう奴はこうなるのさ。」 という声を聞いた覚えがあった。” キレイハナ:「うわぁ。超最低な奴じゃん。」 涼治:「ああ。学校中が嫌ってた。」 キレイハナ:「で、その時に援けたのが蓮華だったわけ?」 涼治:「いや、その時俺を助けたのは哲也先輩なんだ。」 ”俺が目を覚ました時、俺はどこか知らない部屋にいた。そして入ってきたのは哲也先輩だった。 哲也:「大丈夫か?」 涼治:「え…はい。あの、俺…」 哲也:「お前が部活を休んだ上、退部届けが届けられた。多分江本の奴が何か仕組んだと思ってさ。 お前を探したら体育館裏にお前の墓っていう標識が立っていたから掘り出したのさ。そしてここに運んだ。」 涼治:「ここは…」 哲也:「俺の家だ。正確には俺の住んでいる施設だけどな。」 その時になって、哲也先輩の境遇を知った。先輩だけが江本先輩に屈しなかったのは、それも理由の一つらしい。 哲也:「当分部活は休んでもいい。ただし、怪我が治ったらまた再開するんだぞ。あいつの圧力に負けるな。 今のレギュラーは俺も含めて全員、あいつの圧力を押しのけて来た奴ばかりだからな。」 哲也先輩はそういって励ましてくれた。その時になって、起き上がろうとしたとき、手に痛みを感じた。 手を見ると何かで切られた痕が残っていた。当分、利き手の右手はほとんど使えないだろう。 あの時の痛みはこれだったのか。 哲也:「その傷はまだ浅い。俺はともかく、翼は通り魔のようにしてやられたことがある。あいつも同じような、 これよりさらに深い傷を負ったけど、復讐には燃えずに立ち上がったからな。」 涼治:「…」 俺は知らなかったことを知る連続で、驚いてばかりだった。そんな時、ドアが開いて、誰かが入ってきた。 それが蓮華だった。正確には深田も一緒だったけど。 深田とは同じクラスだったこともあり、結構親しかった。でも、どうしてここにいるのかは分からなかった。 哲也:「蓮華、どうしたんだ?」 蓮華:「これ、薬。舞さんが持っていってって。」 その時に俺は一目ぼれした。でも後々知ったけど、蓮華は前から俺に惚れていたらしい。” キレイハナ:「それって兄の部活の様子を見に行って…ってこと?」 涼治:「ああ。片思いの相手が家に来たから落ち着けなかったらしい。」 キレイハナ:「蓮華らしいかも。何か気になることがあると、全然落ち着きがないから。」 ”哲也:「ああ、こいつは蓮華。一応、俺の妹だ。」 哲也先輩と同じ境遇ってことが一応の意味だった。でも、俺にはこんな可愛い子が身近にいたことのほうが驚きだったけど。 蓮華:「…どうも。」 涼治:「あぁ。」 美香:「それよりも、江本先輩にやられたんでしょ。圧力には屈しなくていいって言いに来たのよ。もう、あいつの家、 終わったから。」 深田の言葉で一斉に「?」が宙を舞った。 美香:「あたしの家、あいつの親の会社とライバルなのよ。さっき親が教えてくれたんだけど、親の会社の業績が上がって、 前々から企画してた仕事をやるようになったら、それを先にやっていた江本先輩の親の会社よりもいい方向に行ったみたい。 だから先輩の親会社、経営不振でつぶれたのよ、ついさっき。まぁ、前々から気づいていた従業員もほとんど辞めていたらしいし、 気づいてなかったのは先輩だけらしいわよ。つぶれたことで、今まで内密に圧力かけてたことも暴露されたし、もうこれからは 学校も平和なのよ。」 そんな感じで、俺は辞めずに済んだ。でも、哲也先輩の家から帰る途中に江本先輩に襲われた。 俺を陥れようとしたことも明るみになり、警察に補導されかけたのを逃げてきたらしい。俺を襲って補導されるのは、 俺のせいだっていう因縁つきだった。俺は利き腕の怪我と足を強く打っていたことで早く逃げられなかった。 そんな時、助けてくれたのが蓮華だった。蓮華は草の能力で先輩を撃退していた。” キレイハナ:「それってソーラー弾?」 涼治:「ああ。…それが出るって事はもう一度出してるのか?」 キレイハナ:「かなり。前に野武士トレーナーに襲われたときも出したよ。」 涼治:「そっかぁ。あいつも襲われたときは容赦なかったからな。」 ”蓮華:「大丈夫?」 涼治:「ああ。ありがとな。」 蓮華:「別に。危ないと思ったから。」 この時はそれだけで会話も終わった。俺は感謝するしか出来なかったし、蓮華も素っ気無かったからな。 まさか俺のことが好きで、恥ずかしくて会話できないとは思ってもなかったけど。 でも、学校でちょくちょく会う度に気になり始めてきたんだ。それで俺が呼び出すことにした。 そして…。” キレイハナ:「付き合うことになったのね。告白はどっち?」 涼治:「同時だった。俺が言おうとしたんだけど、蓮華も俺と同時に「好き」って告白されたんだ。」 キレイハナ:「へぇ〜。でも、隠れて付き合うのは大変じゃないの?」 涼治:「ああ。中1の時は大変だったな。翼先輩が哲也先輩に蓮華のことを強く語って口聞いてもらえてないのも 見てたから。ばれたら両方を敵に回すってすぐ分かったし。デートのときは深田の協力が必須だったからな。」 キレイハナ:「ふぅ〜ん。で、あなたは能力者なの?」 涼治:「ああ。」 キレイハナ:「やっぱり。蓮華の力を見て驚かなかったのなら、能力者だからじゃないかと思ったのよね。」 ま、能力者同士だから付き合うときにお互いに何か違和感を感じることもなかったんだよな。 まさかそんな馴れ初めが暴露されてるとは知らず、あたしは電話をかけに行っていた。 さすがに哲兄に涼治のことは言えないから、ハナダにかけた。 来美:「はい、ハナダジム…蓮華ちゃん!」 来美ちゃんはやっぱり驚いていた。そして、どういうわけか、多分ハナダジムに詰め掛けていたんだと思うけど、 海ちゃん、美香、菜々美ちゃんと健人先輩が画面に映った。 海:「元気そうね。」 美香:「よかったぁ、心配したよ。」 菜々美:「美咲にも後で連絡するべきだからね。あの子が一番心配してたよ。」 健人:「今いるのはどこだ?俺たちも向かうぞ。」 みんなホッとしたような顔で、あたしに言ってくれる。 蓮華:「ちょっとね。助けてもらった。…涼治に。」 すると一瞬曇るみんなの表情。このメンバーは知っているのよね。知らないのは哲兄と翼先輩くらいかな。 健人先輩にはデート中に見つかったし、海ちゃんと菜々美ちゃんには美香に喋られた。来美ちゃんと久美ちゃんは あたしの日記を読まれたから知られてる。まぁ、あれはあたしが片思いしてた頃だったけど。 来美:「それじゃ、研究所にはあたしが伝えておくわ。哲也には喋ってないけど、ばれるのは時間の問題だから。」 どうやらホウエンのお使いに行っていたからまだ知らないらしい。こっちに戻ってきた時に、翼先輩やニャースが 犠牲になるだろう。 海:「でも、涼治君が来たとはね。」 美香:「気をつけてね。」 菜々美:「翼先輩が気づかないのには笑えるけど。」 蓮華:「分かってるよ。明日からまた旅は始めるから。」 健人:「涼治は一緒じゃないのか?」 蓮華:「涼治、ポケモンセンターで助手をしているの。将来医療関係目指してるし、あたしと旅をして、せっかくの 勉強の機会損ねさせたくないから。」 美香:「蓮華らしいわね。」 そんな感じで電話は終わった。次はクチバにかけた。 そこでは美咲に泣きつかれた。そしてようやく電話を終えたとき、あたしはキレイハナが尋問しているのを見るのでした。 キレイハナ:「いいじゃん、少しくらい聞いただけだよ。」 蓮華:「聞きすぎ。しかも哲兄にばらすなんて脅し、涼治には効きすぎなのよ。あたしたちの中の禁句!」 キレイハナ:「ごめん。でも、あんな馴れ初めがあったのねぇ。」 蓮華:「…はぁ。」 さすがに馴れ初めだけは聞かれたくなかった。 そんな時、突然ポケモンセンターの電気が消えた。それは事件の幕開けだった。 そしてそれを示すようにアブソルが近くを走ったらしい。