アブソルがセキチクシティを通り過ぎて数時間後、一匹のポケモンが何かを持ってどこかの家から出てきた。 偶然にも人の姿がなかったために、誰一人その姿を見ることはなかった。 もし一人でもいたら、そのポケモンが「泥棒」を行ったことがわかっただろうから。 何せ、そのポケモンが舌で加え、そして口の中に入れたのが金ぴかな、純金でできた金の入れ歯だったからだ。 そしてそのポケモンは姿を消し、そのまた数時間後、その家は大騒ぎになったのだった。 33.サファリパーク事件 ??:「わひほひへはほはえはひふへへふへはふは?」 蓮華:「???…何ですか?」 あたしとキレイハナは面食らっていた。ポケモンセンターを出てすぐに、近くの家から出てきた人に拝み倒されてたのだ。 妙に老けた、しかもヤドンそっくりな顔の人に。 キレイハナ:「うふふ、この人すごくヤドンの顔みたい。」 さすがに笑いが止まらない様子のキレイハナ。 蓮華:「そうね。でも、言ってることもヤドンみたい。」 ??:「そりゃそうよ、この人の入れ歯がないからなんだもの。」 蓮華:「えっ?あぁ!」 あたしの言葉に返したのは、久々に出会った知り合いだった。 ??:「蓮華先輩、お久しぶりです。お元気そうで何よりです。」 知り合いというか、あたしの後輩で、あたしと同じ属性の力を持った子、浅香ちゃんだった。 蓮華:「どうしてここにいるの?」 浅香:「蓮華先輩たちを追いかけて、晃正君や清香先輩と一緒に来ちゃったんです。あたしはここにたどり着いて、 今はセキチクシティに住んでるんです。」 あたしはまさかとは思ってたけど、どうやらまだまだあたしの知り合いが何人か来ているらしい。 でも、チアの後輩が来てるなんてね。 浅香:「蓮華先輩のことはタマムシの合コン(顔見せ会のこと)で知ってたので、会えて嬉しいです。」 あたしと浅香ちゃんは懐かしさのあまり、話に夢中になりかけていた。 が、あたしたちの話に水をさしたのは、キレイハナだった。あたしと浅香ちゃんが再会に夢中になっているためか、 無視されていると感じた園長さんがキレイハナに拝み倒しているからだった。 キレイハナ:「いい加減に感動の再会はやめてね。この人何とかして!」 血管がないキレイハナの血管が浮き上がったようなキレ方に、さすがにあたしたちもまずいと感じた。 浅香:「紹介するわね、この人はこのセキチクシティにあるサファリゾーンの園長さんです。でも、入れ歯がないと 全然喋れないんです。」 蓮華:「入れ歯?」 浅香:「そうなんですよ。しかも金の入れ歯なんです。どうしてなくしたかって言うと、何だかカクレオンがもってっちゃった みたいなんです。」 浅香ちゃんの話に寄れば、サファリのカクレオンがちょくちょく金の入れ歯を持っていってしまうらしく、誰かにそのカクレオンを ゲットしてもらいたいと頼んでいるらしい。が、なかなかそのカクレオンは姿を見せない上、普通のサファリボールではゲットできないらしい。 浅香:「どうやら数年前まで使ってたサファリボールじゃないとゲットできないらしいんですよ。 あれっ?蓮華先輩、それ、どうして持ってるんですか?」 浅香ちゃんが指差したのは、あたしの持ってたサファリ3つのことだ。 浅香:「ちょうどいいですね、蓮華先輩。今から行ってきてくれませんか?」 そして…。 キレイハナ:「結局事件めいたことに巻き込まれちゃったわね。」 蓮華:「そうだね。」 あたしはどうなってもカクレオンをゲットしなきゃいけないわけで…、何か不安な感じがした。 そして、あたしはキレイハナと一緒にサファリゾーンに入った。決まりのために園長の許可のあるキレイハナ以外のポケモンは置いていかなきゃ いけなかったけど。本当ならキレイハナを特別許可で入れることもやっちゃいけないらしかったけど。 が。 あたしが入って数分後。 浅香:「あ、そういえばサファリゾーンの中でも一つやばい事があったんだ。…蓮華先輩、ご愁傷様です。 でも、ポケモンを持って入ったから大丈夫ですよね。」 何てことを言ってたらしい。全く…。 蓮華:「あ!あそこにカイロスとヘラクロスがいるよ!」 キレイハナ:「あそこにはオドシシにオタチ、それに…うわぁ、ラフレシアの大群がいるよ!」 あたしたちは初めは中のポケモンを見て回ることに徹していた。キレイハナは自分と同じキレイハナがいないことには 残念がっていたけど、ラフレシアやクサイハナを見つけて喜んでいるようだった。 普段のサファリなら500歩歩けばつけている万歩計が終了を教え、係員のオニドリルが飛んでくるようになってるけど、 今回は園長のお墨付きという特典のおかげで何歩歩いていても大丈夫なのだ。 蓮華:「うわぁ!ハクリュウもいるよ、あっちにはミニリュウも!」 入ってから30分が経過した時、あたしはまだ飽きてなかったけど、キレイハナは飽き始めていたらしく、 キレイハナ:「うん、ねえねえ蓮華、あたしたちさ、入れ歯探しに来たでしょ。カクレオンも見つけないといけないんじゃない?」 と言った。 蓮華:「そうだよね。でも、もう少し見ててもいいんじゃない?」 あたしがそう言ってキレイハナをせかした、そんな時だった。 あたしたちは砂煙を伴って向かってくる何かの大群を見つけた。 砂煙のせいで何かよく分からない。だから急いで図鑑を探してみた。すると。 蓮華:「えっと、図鑑、図鑑…あった。えっとぉ、ケ、ケンタロス!?」 キレイハナ:「嘘…」 あたしたちに向かってやってきたのはケンタロスの大群だった。しかも、あたしたちに向かって普通に襲ってくる感じでやってきていた。 キレイハナ:「やばいよ、やばいよぉ〜!!」 蓮華:「逃げるしかないけど…もう、水に飛び込め!って、ちょっ…あぁ!」 あたしたちは一緒に、近くの池の中に飛び込んだ。 ケンタロスは行ってしまったけど、あたしは水に飛び込んだ拍子に、持っていた図鑑を落としてしまった。潜っていこうにも、深そうなので 息が続かないと思う。 キレイハナ:「図鑑、落ちちゃったね。どうする?」 蓮華:「う〜ん、どうしよう…。」 あたしたちは池のそばに上がった。と、今度は突然ニューラが襲い掛かってきた。 蓮華&キレイハナ:「きゃあ〜!」 あたしたちは突然の奇襲に成す術がない。が、そんなあたしたちの前に出て、ニューラの鋭いつめを防いだのは、 一匹のヒンバスだった。ヒンバスが光の壁を張って、あたしたちを守っていたのだ。 蓮華:「ヒンバス…あぁ!あたしの図鑑!」 キレイハナ:「ヒンバスが人前に出てくるとは、珍しいことね。しかも助かっちゃったね。これがヒンバスの光の壁かぁ…。」 ニューラはヒンバスの思わぬ防御と、キレイハナが放ったマジカルリーフに退散していった。 あたしは図鑑が見つかったことと、助かったことでホッとしていた。 ヒンバス:「ヒン、ヒンバ!」 キレイハナ:「え?そうなの。分かった。」 ふとホッとしていたら、ヒンバスがキレイハナに何かを話していた。 蓮華:「何だって?」 キレイハナ:「あのね、ヒンバスはトレーナーにゲットされるために待ってたみたいなの。でも、最近このサファリでは、 突然ポケモンがトレーナーに対して攻撃をするようになったの。だから、自分をゲットしてくれる人が来るのを待ってたんだって。 蓮華、ゲットしてあげない?」 あたしは助けてくれた恩もあり、ヒンバスをゲットした。いつかこの子が、ミロカロスに進化したい!と思うまでは、このままの姿でいてもいいし。 数時間後。今度あたしたちが入ったのは森の中だった。 キレイハナ:「蓮華、あそこに行ったよ!」 蓮華:「ええ、ヒンバス、あそこ一帯に冷凍ビーム!キレイハナはマジカルリーフで牽制して!」 あたしがやっているのは、カクレオン捕獲である。 偶然にもカクレオンを草むらで見つけたあたしたちは、新たに仲間になったヒンバスの協力も得て、カクレオンを森の中に追い詰めたのだ。 元々森の中にも生息するカクレオンだけど、ヒンバスの冷凍ビームが一時的にカクレオンを逃がさない空間を作っている。 だからあたしたちは氷が解けないようにしながらずっと、カクレオンを追っていたのだ。 カクレオン:「ゲコ、ゲコンコ!」 カクレオンは口の中に入れ歯を入れているからか、舌を使った攻撃はしてこないが、なかなか素早く、そのうえ姿を消すために簡単には捕まえられなかった。 そのうえ、乱れ引っ掻きやサイケ光線、原始の力など、攻撃は多種多様持ち合わせていたのだ。 キレイハナ:「あ、今度はこっちね!必殺、種マシンガンよ!」 そしてもう一つ困ったのは、カクレオンの特性だった。 「変色」といって、技を受けるとその技のタイプになるというもの。カクレオンがノーマルタイプなので、そういうことが可能らしい。 ヒンバスの水・氷技、キレイハナのノーマル・草・毒・格闘技で何とかやってきてるけど、カクレオンはすぐに隠れてしまい、 本当に厄介なのだった。水属性を当てた後の草攻撃は何回か決まっているけど…。 でもようやく、あたしはカクレオンのギザギザにボールを当てたので、カクレオンをゲットすることができた。 ポケモンゲットには一応コツもあり、滅多に姿を見せないような野性ポケモンをゲットするには、彼らの体のある部分にボールを命中させなければいけないのだ。 そしてカクレオンをゲットするには、彼らの体の模様であり、透明になってもその部分だけは姿が残ってしまうギザギザの部分を当てればよかったのだ。 キレイハナ:「ふぅ、ようやくだね。」 蓮華:「うん、あたしも疲れちゃった。ヒンバス、ご苦労様!それから、カクレオン出てきて。」 あたしがボールからカクレオンを出した。一応金の入れ歯を返してもらわなきゃいけなかったのだ。 カクレオン:「ゲコ、ゲコンコ!」 すると、カクレオンは意外なことを教えてくれた。 キレイハナ:「まさかあたしの同類が、ここの状況をおかしな状態にしていたのね。」 蓮華:「催眠術が使えるポケモンのせいで、ポケモンが人を襲ってたのよね。」 カクレオンが教えてくれたのはこのことだった。 あたしは事件を見過ごせなくなっていたので、残り一つのボールでその催眠術を使う意外なポケモンをゲットすることに決めていた。 キレイハナ:「来たわ。」 再びケンタロスの大群がやってくるのが見えた。彼らの先頭にいるケンタロスの体に乗っているのが、このサファリ事件の黒幕のようなものである。 でもあの子が悪いわけではない。あの子は催眠術を覚えないのに覚えてしまったのだ。そして大きい瞳で池に映った自分をじっと見て、いつの間にか催眠術に かかってしまっていた。 蓮華:「キレイハナ、花びらの舞でケンタロスたちを惑わせて。彼らの体制を崩すのよ!」 キレイハナ:「了解!」 キレイハナはいつも以上の力で花びらの舞を踊った。それによって現れた花びらはケンタロスたちにも降り注いだ。 蓮華:「甘い香りと眠り粉もまいて!」 キレイハナ:「分かったわ!」 花びらによって動きが収まった彼らに甘い香り、そして眠り粉が降り注ぎ、次第に形態が崩れていくケンタロスたち。 そしてついに、リーダー格のケンタロス以外はその場に眠り込んでいた。 蓮華:「今よ、キレイハナ、ケンタロスの足に蔓のムチ!そしてケンタロスを吹っ飛ばして!」 キレイハナは蔓のムチでケンタロスを高く飛ばした。すると、ケンタロスの体からは何かが勢いよく落ちた。 蓮華:「やっぱり!ヒマナッツだったのね。行くのよ、カクレオン!騙まし討ちよ!」 ケンタロスの方をキレイハナに任せたあたしは、カクレオンでヒマナッツに対抗した。騙まし討ちや舌でなめる攻撃でヒマナッツを追い詰めるけど、 なかなか奴は捕まらない。というのも、ヒマナッツは光合成をしているからだった。 蓮華:「そうだ!カクレオン、サイケ光線よ!」 カクレオンがサイケ光線を放つと、ヒマナッツはふらふらし始めた。混乱したのだ。それを狙って、あたしはボールを投げ、ヒマナッツをゲットした。 そして、太陽の石でヒマナッツを進化させた。キレイハナが言うには、ヒマナッツは覚えない技を覚えてしまったけど、それを消すには進化して別の 技を覚えさせておけばいいということだった。 そしてあたしは、新しい仲間とキレイハナと一緒に、サファリゾーンから出た。 蓮華:「はい、金の入れ歯です。」 あたしはサファリから戻った後、すぐに園長の家に行き、金の入れ歯を渡した。 園長:「ああ、ようやく普通に喋ることができる。ありがとう、蓮華ちゃん。君にはお礼としてこれを上げよう。」 園長はそう言って、2つの秘伝マシン(怪力と波乗り)と安らぎの鈴をくれた。 園長:「君ならどんなポケモンでも寄ってくるだろう。そして様々な過去を持つポケモンにも。きっとそういうポケモンと君は、 どこかで結ばれているのかもしれない。そんな君にはこの鈴がぴったりだと思うよ。」 蓮華:「はい!」 安らぎの鈴が似合う子が、いつか出てくるといいかもしれないな。 あたしが家を出ると、外には浅香ちゃんがいた。 浅香:「すごいですね、事件解決なんて。」 蓮華:「ううん、すごくないよ。あたしは指示を出しただけで、実際にはポケモンたちがやってくれたんだもの。」 浅香:「でもすごいですよ。蓮華先輩、明日はジム戦ですか?」 蓮華:「ええ、それがどうかしたの?」 浅香:「はい、ジムでお待ちしてます。」 と浅香の姿が消えた。後には彼女の服がついた植木があった。 浅香は自分の姿の被写体を植物で作り、それを本物に見えるようにできるのだ。いっぱい食わされたようだ。でも、 浅香は何かを隠しているようだった。多分、ジムトレーナーをしているからだろうけど。 明日のジム戦は気合を入れなきゃね!