蓮華:「ヒンバス、水の波動!トサキント、滝登りよ!」 ヒンバスとトサキントの攻撃がピジョンとキバニアを押し流した。 トレーナー:「うわぁ、負けたよ。お姉さん、強いや。」 セキチクでのジム戦から2日後。あたしたちは一時的にクチバシティに向かっていた。 今はクチバからちょっと西に離れた場所で、あたしはダブルバトルを行っていた。 あたしが厄介だと思って行きで通らなかった遠回りルート、そこを通っていたのだが、そこはトレーナーの数が多いのだ。 持っているみんなをフルに使って圧勝しながら進むあたしとキレイハナ。クチバシティに向かうのには訳があった。 2日前。ちょうど美香が知らせに来た時のこと。 35.ポケモンの怒り!能力者の叫び! 〜2日前〜 美香:「スペース団がヤマブキシティを占拠したの!」 美香がそれを言った時、あたしたちは驚き、言葉も出なかった。 アンズ:「それはどういうことでござるか?」 美香:「言ったとおりよ。ヤマブキにいた氷雨さんが教えてくれたの。でも、今はヤマブキの回線はすべてつながらないの。 どうやら、前々からシルフカンパニーをこっそり乗っ取っていたそうよ。そしてつい1時間前、ヤマブキシティに多数のスペース団員が入ったって。 中にいたトレーナーたちも全て捕まったらしいの。唯一、氷雨さんがいたことでヤマブキジムと格闘道場に結界を張って、数名の人たちと レジスタンスを組んでるそうよ。」 アンズ:「分かったでござる。」 美香:「知らせれてよかったわ。今他の街にも海ちゃんや菜々美たちが向かってる。」 美香が言い切ったときだった。ジムトレーナーたちが突然騒ぎ出したのだ。 アンズ:「何でござるか?」 アンズに連れられて建物の中に入ったあたしたちが見たのは、テレビに映るスペース団の姿。そして。 リースイ:「私はスペース団ボスの秘書、リースイ。今からこれを見ている全てのものに教える。 ヤマブキシティはスペース団が乗っ取りましたわ。そして2週間後より、他の町への攻撃を開始いたします。 ジムリーダーの方々、すでに私たちがセキエイからヤマブキに移ったポケモン協会とポケモン警察を我が手におさめたことを忘れずに頂きたい。 我々の配下になると決めたらすぐ連絡していただきたい。2週間後、全ての答えを待つ。 そしてもう一つ。もしそれを拒否するならば、スペース団による災害を振りまくとしよう。」 そして画面が消えた。 アンズ:「カントウ内の中枢地区がヤマブキシティでござる。ポケモンテレビ局も彼らの手に落ちたということでござろう。 しかし、拙者は彼らの手に落ちたりはせぬ。最後まで戦う予定でござる。」 ??:「それはあたしたちも同じよ。」 アンズの言葉と共に、突然海ちゃんと来美ちゃんが現れた。海ちゃんの式神のテレポートできたんだと思う。 来美:「私が臨時で勤めているハナダシティもスペース団の手には落ちないということになりました。 菜々美ちゃんからの連絡ですでに全ての街がそう決めたそうです。2週間後、ジムリーダーと能力者をタマムシに集結させ、 その時に一斉攻撃を行うことに決まりました。」 海:「あたしたちはその連絡としてきました。蓮華ちゃん、それまでに戦力を整えておいて。何か、すごく嫌な予感がするから。」 蓮華:「う、うん。」 来美:「それじゃ、2週間後にタマムシで。」 そう言うと、今度は美香も連れて帰っていった。 海ちゃんの予感は当たる。それを防ぐためにも、あたしは戦力アップも含め、セキチクからクチバに向かった。 海ちゃんが言うには、トキワに向かい、そしてマサラからグレンに行くようにと言っていた。 キレイハナ:「蓮華、大丈夫?」 蓮華:「ええ、みんなは?」 キレイハナ:「みんなも十分休んだよ。」 クチバのポケモンセンターでの休息。ただ、あたしは気になることがあった。 なずなちゃん、涼治、玲奈先輩、希ちゃんの4人が行方不明らしいから。それで妙に落ち着けなくなっていた。 美咲:「蓮華、大丈夫だよ。あの4人は4人とも強いメンバーでしょ?」 蓮華:「そうだけど…。」 美咲:「落ち込まないで。蓮華は明るくなきゃ。クチバまでだって必死で来て疲れたでしょ?少しは休むことも考えてよ。 蓮華が倒れちゃったら、どうするの?」 美咲は久々の対面を果たした後、ずっとあたしを励ましてくれた。 あたしはそれからちょっと休んで、すぐにディグダの穴を抜けに向かった。 普段ならトレーナーにバトルを仕掛ける彼らも、あたしにはそれを仕掛けてこない。あたしが前にここのディグダを 助けたことを分かっているからだ。 ディグダの穴からトキワに戻ったあたしたちは、再びポケモンセンターで休憩した。 ジョーイさんは出かけていていなかったけど、ハピナスたちがあたしを歓迎してくれていた。 キレイハナ:「ここに来ると何かが起きるのかなぁ?」 蓮華:「分からないけど、海ちゃんの式の中に、未来予測が可能な子がいるの。その子が何かを見たんだと思う。 だとしたら、あたしはトキワにいるべきだと思う。」 キレイハナ:「まぁ、当分いても大丈夫じゃない?ここが満室になっても、あたしたちの部屋は使えるから。」 今ここにいるハピナスは、あたしがここで美咲ちゃんたちに襲われたときに勤めていたラッキーたちだった。 あれから少しして進化したらしい。あたしたちのことも覚えていて、すごく歓迎してくれたのだ。 蓮華:「でも、甘えてばかりいられないでしょ?ちょっと散歩でもしようよ。」 あたしは散歩に出た。キレイハナはボールの中で休んでいる。 あんなスペース団のニュースがあったけど、妙にどの町も平和だった。 あたしもそれのおかげでちょっと落ち着きが取り戻せていた。多分、ジムリーダーが影響を与えているからかもしれない。 そういえば、ここの街のジムリーダーって誰なんだろう。 あたしが前に来た時はジムは8番目と聞いていたから、通り過ぎたのよね。 と、あたしの前にニドラン♂がやってきた。前にも見たことがある。ここに来た時に。 でも、キレイハナのボールを投げちゃって、ゲットできなかった子だった。 あたしに向かってきて、そして足に擦り寄っていた。 蓮華:「もしかして、ゲットしてほしいの?」 ニドラン:「ニド!」 ニドランはうなずいた。 蓮華:「あたし、でも前にゲットしようとして別のもの投げつけちゃったよ。でもいいの?」 確認を2,3度した後、どういうわけか、あたしが忘れられなかったのか、ニドラン♂はあたしにゲットしてほしそうだった。 だから、あたしはネストボールで彼をゲットした。 蓮華:「命名、ニド君ね。」 と、その時町の中心の方が騒がしくなった。何かが起きた。そんな気がした。 あたしが町の中心の公園に行ってみると、そこはたくさんの人だかりができていて、みんな、木刀や鉄パイプ、網、ロープなどを 手に持っていた。しかも、公園にいた子供連れの人や、女性はどんどん外に逃げていっている。 あたしは何が起きているかを近くに人に聞いてみた。 町の人:「えっ?何が起きたのかって?ああ、あんた、ここの街のやつじゃないな。実はな、ここ最近カントウで災難と不幸を運ぶポケモンがうろついていてな、 一昨日からこのあたりをうろつく様になったのさ。だから不幸を撒き散らされる前にジョーイさんのいない間に処分してやろうと思ってな。 いいな、オフレコだぞ。」 不幸と災難を運ぶポケモン?…もしかして! あたしは街の人たちをかきわけ、中心に入った。すると、そこには両足が罠にはまり、そのうえポケモンの嫌いな樹液で作られた特性の網に絡め取られてもがいてる、 アブソルがそこにいた。 アブソルの頭の黒い部分に傷があった。だから、彼がよく、あたしの前に現れていたアブソルだと、すぐに分かった。 ”アブソルは災難をキャッチできるポケモンで、昔は災難が起きるたびにアブソルが見かけられたため、災いポケモンと呼ばれた。” それが理由で偏見があるとは聞いていたが、ここでそれを見ることになるとは思わなかった。 蓮華:「どうしてこんなことを…」 町の人A:「あれっ?まだいたのか。お譲ちゃん、悪いけどそこ、どいてくれないか。そいつを処分してしまいたいからさ。」 B:「そうそう、災いポケモンは存在してなくていいのさ。あの、何て言ったかな。炎を操るお化け女みたいにさ。」 蓮華:「お化け女?」 C:「ああ、前にこの町にいたのさ。かわいい顔してる割に炎を目の前で操って、火事にでも起こされたらやばかったよな。」 A:「だから追い出したのさ。その時にその女のポケモンが死んじまったけど、化け物はいなくていいのさ。 いたら俺たちの平和な生活がやばくなるからな。」 間違いない。美咲ちゃんのことだ。美咲ちゃんが前に教えてくれた時の人たち。ヒトカゲの命を奪った人たち…。 A:「さ、そこをどい…」 あたしはアブソルに向かってラブラブボールを投げた。彼があたしに捕まってくれるか分からないけど、彼はあたしのことを知っているから。 あたしは彼のことをよく分かってるから。ゲットできるはず。そして、アブソルは普通にラブラブボールに収まった。 A:「おい!何をするんだ!」 蓮華:「ポケモンだって生きてるのよ!災いポケモンって言う名前と、偽りの噂を信じてポケモンを傷つけて、それで許されると思ってるの?」 あたしは彼らに言い放った。でも、彼らはアブソルのボールを奪い取ろうとしていた。 B:「化け物はいなくていいんだ!」 C:「他の街のトレーナーが、この町の事で口を出すのはやめてほしい。さぁ、そのボールをよこせ!」 蓮華:「嫌!絶対、誰にも渡さない。ゲットできた以上、この子はソルルはあたしのポケモンなの!」 アブソルだからソルル。あたしがつけた、彼の名前。 彼を彼らに渡すわけには行かなかった。彼は災害をキャッチしていて走り回っていただけだから。 そして、偽りの噂で傷つき、仲間がいない彼には、今はあたしがいるから。そしてみんながいるから。 蓮華:「絶対、大丈夫だから。」 あたしはボールの中のアブソルに向かって言った。でも、今度はあたしが虎ばさみにかかってしまった。 蓮華:「いたっ!」 A:「さあ、早く渡せよ。」 あたしはすでに街の人たちに囲まれていた。 キレイハナ:「渡す必要なんてないよ。」 その時、キレイハナが飛び出した。 A:「ポケモンが喋った!」 C:「化け物だ!」 キレイハナ:「失礼ね!変な薬品をかぶっちゃったせいで喋れるようになっただけよ!何も知らないで…」 B:「うるせえ!このポケモンも処分だ!」 彼らはキレイハナに向かって松明を投げてきた。 ”トキワの人は頭が頑固で、噂を信じやすく、能力者を化け物と思ってる” 前に美咲ちゃんが言っていた。だから、普通じゃないことは全て化け物のせいだと言う。でも、それはおかしい! 蓮華:「キレイハナ!」 あたしはキレイハナを助けるために、手からソーラー弾を放った。力を使ったのは久々だった。 そしてキレイハナは助かったけど、案の定、あたしにも捕獲し、処分しようとする方向が向いたのは言うまでもない。 A:「おかしいと思えば、お前も化け物だったのか!普通の奴だって顔しやがって!」 蓮華:「普通じゃないってどういうことよ!ちょっと違うことで、多少大きく違っても、あたしたちは生きてるの。 こうして生まれてきてるの!あんたたちには分からないような苦労もして、今を生きてんのよ!それを普通じゃないの人ことで片付けて、 あんたたちはその人やポケモンの全てを否定し続けてるのよ!美咲ちゃんだって思いっきり傷ついたのよ! あんたたちには、人間的感情がないわけ?偽りの噂を信じて、残虐なことをしながら普通に生活しているあんたたちの方が、絶対に普通じゃないわよ!」 あたしは言ってやった。ソルルや、キレイハナや、美咲ちゃんの分も含めて。 A:「か、勝手なことを言うな!おい、こいつらを早く処分…」 彼らはあたしの言葉に少し動かされかけたらしかった。でも、自分たちの行動が正しいと言う方向に向けようとして、再び向かってこようとしていた。 でも、そんな彼らは突然の地震と、立ちはだかるニドキング、ニドクイン、サイドンの姿に圧倒されていた。 そして。 ??:「トキワの市民たちよ、よく聞くがいい。この少女の言い分が正しいと言うことを。」 謎の渋い、黒い服を着こなした男性がやってきていった。 ??:「元々トキワにはポケモンと心を通わし、ポケモンを癒す力が伝えられていた。元々、この世界にも能力者というものは存在していたのだ。 そして、多くの歴代のトレーナーの中にも、その力を持ったトキワのトレーナーの名が連なっている。そして彼らはみな、最後にはこのトキワシティに戻り、 子孫を残している。私もその一人だ。しかし、そのことが徐々に噂に変わり、廃れ、力を持たないものになった時、この力も忌み嫌われた力に変わった。 お前たちの先祖が、ポケモンたちと通わした絆が廃れたということだ。 そして今、それを続けようとしているのもお前たちだ!お前たちは災いと称されたポケモンやその少女を処分することで、ポケモンたちとの絆を徐々になくして しまおうとしているのだ。現に、年が連なるにつれ、この街からは野生のポケモンの姿が消えていっている。 お前たちが起こした行動を、ポケモンが感じ取り、危機感を持ち、トキワから離れているためだ! ポケモンたちは人間よりも数倍頭がよく、自分の周囲で何が起きているかを感じ取ることができるのだ。」 彼の熱弁に、彼らは固まっていた。いや、圧倒されていたと言う言葉の方が正しいと思う。実は、さっきからポケモンセンターのジョーイさんや、ジュンサーさん たちが近くに来ているのだけど、町の人たちは気づいていない。 ??:「もう一度聞く!お前たちはポケモンが見ている前で、幼い子供たちも暮らしているこの街の中で、再びポケモンとの絆を失わせ、 ポケモンをこの街から消し去ろうとすることと同じ行動を行おうというのか!」 彼の言葉に、ついに町の人たちはその場に持っていた武器を落とした。 ようやく、トキワの頭の固い人たちが、考えを改め始めようとしていたのだった。 数時間後、あたしとソルルとキレイハナは、ジョーイさんとハピナスたちに治療してもらった。 足の怪我はヒーリングで多少治したけど、意外にも傷が深かったので、消毒などをお願いした。でも、ヒーリングと治療により、すぐに歩けるようになったけど。 そしてソルルはあたしに完全に心を開いていた。キレイハナにも。そしてジョーイさんにも。 キレイハナ:「蓮華のことが気に入ったから、蓮華にいつまでもついていくって!」 キレイハナがソルルの気持ちを熱弁し、蹴られてたけど。 ジョーイ:「それにしてもあなたもすごいわね。町の人たちの考えを根本から揺るがすなんて。」 蓮華:「だって、すごく怒りが高まったんだもの。あたしたちのことを否定されたことも含めて。でも、さっきの人のおかげで助かったかも。 あの人は一体…?」 ジョーイ:「ああ、彼はサカキさんと言って、この街のジムリーダーよ。元はロケット団のボスだったけど、改心してジムリーダーをしているの。」 蓮華&キレイハナ&ソルル:「ロケット団のボス!?(ソル!?)」 あたしたちは驚いた。でも、何となく分かる気もした。 ジョーイ:「彼もトキワの出身で、改心してジムリーダーを再び始めてからも、このことは気になっていたの。 私やジュンサーさんも気づいていたけど、町の人たちはなかなか分かっていなくて。でも、ようやく分かる日が来たのね。」 ジョーイさんはホッとしているようだった。 あたしは後で、彼に会いに行くことにした。 トキワジムはすごくかっこいい造りの建物だった。 ちなみに、さっき街を歩いた時、実は妙に視線を感じた。でも、この街はようやく変わるようになると、あたしは思う。 町の人たちの何人かは逮捕されて刑を受けることにはなりそうだけど、大丈夫だと思う。 蓮華:「さてと。ごめんくださ〜い!」 あたしがジムに入ると、誰かがやってくるような音がした。 ??:「お待ちしてました、蓮華先輩。」 蓮華:「えっ?」 そして入り口に来たのは…半人半馬のケンタウロスこと、あたしの中学の後輩(正式には涼治の後輩)の晃正くんだった。 晃正:「師匠がお待ちです。」 蓮華:「師匠?」 晃正:「はい、俺は地面の能力者。師匠は地面のエキスパートですから。」 そしてあたしは豪華そうな部屋に入った。 サカキ:「君の事はニャースやナナからも聞いている。凄腕のトレーナーだと。」 蓮華:「そんなことないですよ。あたしはキレイハナたちの助けがあるからやってこれてるんです。」 サカキ:「そうか。しかし、さっきのことも含め、君にはポケモンを癒すトキワの力に似たものを感じる。 それは君の能力ではなく、君自身がポケモンを信じ、ポケモンと共に過ごし、彼らのことを考えているからだろう。 彼らのことを信頼しているからこそ、彼らが君のそばに寄ってくるのだ。君は、今以上にこれからも強くなるだろうな。 その時は、ジム戦で手合わせをしたい。この事件が収まり次第、ジム戦に来てくれ。」 彼はあたしにそう言った。 さすが、善悪両方の場を経験し、トキワの力を持っているだけある。 蓮華:「あの、最後に知りたいんですが、スペース団はどうしてできたんですか?」 あたしは聞いてみた。 サカキ:「君が聞くとは予想していたから答えよう。 彼らは実際はロケット団よりも残虐な行為も行い、何かを行うために伝説のポケモンたちにも手を出そうとしている。 それが何故かは分からない。しかし、私でさえ正体が分からないスペース団のボスとあの秘書は、只者でないことは確かだ。」 サカキさんはそういうと奥の部屋に入っていった。 あたしは晃正君に見送られて、ポケモンセンターに戻った。 キレイハナ:「蓮華、お帰り。でも、もう出発するよ。」 あたしが戻ると、キレイハナとソルルがあたしの荷物を持って待っていた。 蓮華:「えっ?」 キレイハナ:「ソルルがマサラの方角で何かが起きているのを感じたの。」 ソルル:「ソルル。」 蓮華:「分かった。すぐに行きましょ。」 あたしたちはマサラタウンに向かった。