双子島。主に野生の水ポケモンやズバットが多く生息している、地下がつながっていることと、よく似ていることから 双子のようだということで双子島と呼ばれているこの島。 そこには数ヶ月前から、多くのトレーナーが訪れるようになっていた。 双子島は水ポケモンを求めるトレーナーと、釣り人が訪れるか、セキチクからグレン島に向かおうとするトレーナーたちだけが 訪れるだけの場所だったのだが。 そして。 短パン小僧:「くそぉ!また駄目だ!」 電気屋のおっさん:「どうして電気タイプが…」 ボーイスカウト:「草ポケモンも元気がないぞ!」 虫取り少年:「またあいつにやられたのかよぉ…」 トレーナーたちは何かと戦い、そして敗れて去っていく。そういう状況がずっと続いていた。 そんなある日。一人の少女が、多くの水ポケモンとキレイハナを連れて島に訪れていた。 38.トレーナー泣かせの鉄壁貝 蓮華:「ふぅ〜、ようやくついたわ。」 キレイハナ:「本当ね。でも、何もなくてよかったわ。」 スペース団に襲われるかと思い、水ポケモンを全部出しておいたけど、何もなくてよかった。 蓮華:「みんな戻ってね。ご苦労様。」 あたしはみんなをボールに戻した。すると、近くの岩場から視線を感じた。 蓮華:「誰?」 振り返ると、出てきたのはパールルだった。 キレイハナ:「あ、パールルだ。珍しいわね。」 蓮華:「本当だぁ。ちょうどダイブボールもあるし、ゲットしようかな。」 あたしがそんなことを言った時だった。 ??:「やめておけよ、簡単にそう言って、泣きを見るのはお前だからな。」 突然声がして、麦藁帽子を深くかぶった青年が近くの洞窟のあるがけの上に立っていた。 タンクトップにジーンズ姿の真っ黒に日に焼けた人だった。 ??:「なめてかかるとやられるぞ。」 蓮華:「そうかしら?こっちには最強のキレイハナもいるのよ。」 キレイハナ:「そうよ。やってみなきゃわからないでしょ?」 あたしはキレイハナをパールルに向かわせた。すると、 パールル:「パル?パルパル!」 パールルは戦闘態勢に入ったようだった。 キレイハナ:「やる気ね。」 蓮華:「キレイハナ、先手必勝のマジカルリーフよ!」 しかし、キレイハナの攻撃はパールルの殻が鉄壁のように全てを弾いてしまった。葉っぱカッターやタネマシンガン、 ソーラービームでさえも。そして。 パールル:「パルパル(水の波動)!」 パールルの攻撃を食らって逆にキレイハナが倒れてしまった。 蓮華:「嘘…」 キレイハナ:「蓮華、あいつ強いよ。なめてかかると本当に痛い目に遭うよ。」 ??:「だから言っただろ。俺の言葉も聞かずに勝手なことをするからだ。お前たちは、あいつがなんと呼ばれているか、知らないのか?」 青年は上から降りてきた。 ??:「そいつは”トレーナー泣かせの鉄壁貝”と呼ばれているのさ。今までたくさんのトレーナーがここを訪れた。 しかし、草タイプも電気タイプも氷タイプでさえも、こいつの鉄壁な守りに弾かれた。そしてどれだけレベルが高いというトレーナーも、 そいつをゲットする事ができなかったからな。お前がどれだけ強くなったとしても、そいつに勝つ事は難しいだろうな。」 蓮華:「トレーナー泣かせ…。あれっ?あの、もしかして、海斗先輩ですか?」 あたしはすっかり忘れてた。元々この島は無人で、今いる人と言ったら、双子島に住むようになったという海斗先輩だけだった。 海斗:「ようやく思い出したか。」 帽子を取った青年は、やっぱり先輩だった。 海斗先輩は清香先輩の彼氏で、水泳部のエース。家は水族館をしている。 あたしとキレイハナは休息も兼ねて、海斗先輩の仮住まいに案内してもらった。そこは手作りの釣りの道具がたくさん置かれたログハウスだった。 中はベッドや多少の家財道具も置いてあった。 海斗:「元々ここに住んでいた人がいたらしくてな。今はグレン島の人が所有しているが、俺が許可を貰って借りているのさ。」 蓮華:「そうですか。先輩、先輩はあのパールルをゲットしないんですか?」 キレイハナ:「そういえば、何ヶ月もここにいるならゲットしててもおかしくないのに。」 海斗:「悪いが、俺はしていない。それに、俺はあいつに助けられたからな。」 海斗先輩はこっちの世界に来たときのことを話してくれた。 海斗:「俺の手元にはメノクラゲ、アメタマ、ワニノコ、パウワウがいた。しかし、俺が投げ出されたのは海のど真ん中で、しかも渦が多く、 流れの速い場所でな。こいつらでも俺と一緒に流れを乗り切るのは不可能な場所だった。」 蓮華:「海の能力者でも?」 海斗:「ああ。」 キレイハナ:「海の能力者?」 蓮華:「うん。海斗先輩は海を操る能力があるの。どういう能力かの説明は難しいけど…あ、どうぞ、続けてください。」 あたしは話を折っちゃったので、少し海斗先輩から不機嫌さが感じられた。 海斗:「俺の能力では渦を消すことと流れを緩めることで精一杯だったのさ。しかし力を使いすぎたせいで流されてしまい、偶然会ったあのパールルが、 俺をグレン島まで運んでくれたのさ。そのおかげで俺たちは助かったわけだ。 命の恩人をゲットするわけには行かないからな。それでここで見守っているのさ。」 海斗先輩がこの島に残り続けているのは、パールルを見守るためだったらしい。 蓮華:「誰かがゲットをするまでですか?」 海斗:「そうだな。しかし、ゲットできる奴はいるかな。」 海斗先輩が言うには、時には砂浜の砂が多い場所で電気タイプを、間欠泉が出やすい場所で草タイプを、自然の力を借りて撃破しているほど、 パールルは頭もいいらしい。 蓮華:「あたしが今度こそゲットしますよ。」 海斗:「どうだろうな。」 海斗先輩はできるわけないだろうという顔で笑っていた。やってやる!そう思ったときだった。 妙に外が騒がしかった。 あたしが外に出ると、パールルが変なロボットに追われていた。 海斗:「何だ?あれは。」 するとロボットは止まり、そして。 キレイハナ:「あ…」 蓮華:「もしかしてこれって…」 あたしたちがそう思ったときだった。いつもの曲が流れ出していた。 マユミ:「なんだかんだと聞かれたって」 エイジ:「答えるか否かはわれらの勝手」 マユミ:「世界の破滅を防ぐため」 エイジ:「宇宙の輝き護るため」 マユミ:「愛と勇気の悪を貫く」 エイジ:「ラブリークールな敵役」 マユミ:「マユミ」 エイジ:「エイジ」 マユミ:「この宇宙にきらめくスペース団の二人には」 エイジ:「ミントブルー、清き青の明日が待っている」 マユミ:「なーんてね」 ロボットから出てきたのはマユミとエイジだった。 マユミ:「あらあら、そこにいるのはまたあんたなのね!」 エイジ:「見知らぬ男もいるようだが、邪魔な手立てはやめてもらおうか。俺たちはこのトレーナー泣かせのパールルに用があるからな。 こいつをゲットしてスペース団のポケモンにすれば、スペース団の勢力が上がるからな。」 海斗:「やめろ!無理やりのゲットでパールルがお前たちに力を貸すわけがない!」 エイジ:「うるせえな。」 マユミ:「でも、いい男(ハート)」 蓮華:「残念でした。オバサンには悪いけど海斗先輩にはオバサンなんかよりもず〜っと若い彼女がいるんだ・か・ら!」 海斗:「ああ。俺は悪いオバンには興味ないし。」 すると、オバサンの連発と彼女もちと言うことでマユミの表情が一変した。 マユミ:「なんですって!もう怒ったわよ、ミサイル発射!」 ロボットがミサイルを吐き出し、海斗先輩の仮住まいが一瞬で灰に変わった。 海斗:「お前!何てことをするんだ!俺の家をよくも!」 マユミ:「オ〜ホッホホ、あたくしのかわいい下僕になれないことがいけないのよ。今から土下座してくれたら、 あたしのかわいいペットとして…」 海斗:「ふざけるな!誰がお前のような婆あと一緒になるか!」 海斗先輩はついにオバサンを通り越して婆あと言った。すると、再びミサイルが飛んできていた。 しかし。 パールル:「パルパル!」 パールルが飛ばした水の波動がミサイルを弾き、ミサイルはロボットに向かっていった。 ズド〜ンと共に、ロボットは壊れた。でも、スペース団の二人はいた。 マユミ:「あ〜あ、ロボットが壊れちゃったじゃない!」 エイジ:「残念だが、俺たちはそのパールルをゲットしない限り、この場に残るのさ。行ってこい、ハガネール、メタグロス!」 マユミ:「ウィンディ、キュウコン、お行きなさい!」 彼らはポケモンを出して襲い掛かってきた。 海斗:「ドククラゲ、オーダイル、行ってこい!」 蓮華:「ソルル、トロ、迎え撃って!」 あたしたちもこれに応じた。 エイジ:「マユミ、作戦Bの実行だ!メタグロス、サイコキネシスでアブソル以外を宙に浮かせ!」 マユミ:「ウィンディ、キュウコン、アブソルに炎の渦よ!」 エスパー技が効かないアブソルを倒し、サイコキネシスで身動きができないメンバーを一気に叩くつもりらしかった。 しかし。 パールル:「パルパルパルゥ〜!」 パールルの殻で挟む攻撃がウィンディの足を挟み、ウィンディが痛みと共に炎をメタグロスに吐き出したことで、作戦はつぶれた。 エイジ:「メ、メタグロスが!?おい、マユミ、何やってんだ。作戦が台無しだろうが!」 マユミ:「ぅるさいわね!あんたの作戦が悪いんでしょ!」 彼らは作戦がつぶれたために喧嘩を始めた。 海斗:「あいつら、戦う気がないのか?オーダイル、ハガネールにクロスチョップだ。ドククラゲはキュウコンにハイドロポンプだ!」 マユミ&エイジ:「何ぃ!?」 彼らは突然ポケモンが負けたことで驚いていた。 マユミ:「あ〜!!ポケモンたちがぁ…」 エイジ:「よし、こうなったらこれを押そう。」 彼らが取り出した機械。すると、突然爆発した。 マユミ:「何よこれぇ〜!!」 エイジ:「どうやら失敗した場合は爆発することになっていたらしいな。それにしてもまだいいな。あの男のデータが取れた。」 マユミ:「もう!どうしてあなたはそんなに冷静なのよ!やなかんじよ!」 マユミはいつもの飛ばされ口上とは別の、ついに落ちぶれたのか、あの3人の言葉を口に出していた。 エイジ:「やな気持ちのほうがマシだろうな。」 こんなことをエイジが言ったことは誰も知らないのだが。どっちもマシではないだろう。 蓮華:「海斗先輩、これからどうするんですか?」 ログハウスは無残な状態だった。 海斗:「俺か?清香のところに行くよ。桜笠、お前はあいつを連れて行ってやってくれ。」 先輩はパールルを指差していった。 海斗:「俺もここに留まることはできないしな。もうすぐで最終決戦があるがな。」 蓮華:「でも、パールルの意思は…」 と、パールルが近づいてきた。 キレイハナが少し喋った。すると。 キレイハナ:「あのね、パールルは海斗さんか蓮華のどっちかにゲットされるならいいみたいよ。」 パールルは今まで、強いトレーナーを探していたらしい。強いトレーナーにならゲットしてもらってもいいらしいから。 そして海斗先輩に出会った。でも、先輩は自分を見守るだけで、ゲットする気がないことに気づき、ちょっと残念だった。 しかし、その海斗先輩よりも強いことが、持っているポケモンで分かる人物が現れた。 それがあたしらしかった。ソルルとトロを見て、キレイハナを見て、あたしのレベルを直感したらしい。 パールル:「パルル、パルパル!」 キレイハナ:「あなたについていけば、あたしの力がしっかり引き出せそうだから一緒に行かせてよね、だって。どうする?」 蓮華:「何かムカつく言い方ね。でも、最後かな。これがあたしのゲットの。パールルだから、パル!どう?」 パールル:「パルパル。」 キレイハナ:「趣味はよさそうね。だから一緒に行ってあげるわ、だって。確かにムカつくわね。ちょっと!あたしと蓮華怒らせたら、 ここの仲間全員があんたを襲うわよ!」 キレイハナは喧嘩を売り、パルにあしらわれていた。とんでもない性格の仲間が最後にできたような気がした。 海斗:「はははは、桜笠、頑張れよ。」 海斗先輩はあたしのことを見て、再び笑っていた。 この先輩も硬派なんだか、そうじゃないのだか…来美ちゃんの追っかけを一時やってたくらいだし、実際の性格は…だろうなぁ。 そんなわけで、あたしはパールルをゲットした。 パルはリュウ(ハクリュウ)とソルル、サン(サンド)に色々と教えられているらしい。 そして数日間が過ぎた。 あたしはタマムシに向かっている。最終決戦をスペース団とするために。 まさかそこで、悲しい再会を果たすことになるなんて、全く予測していなかったけど。