40.リースイの策略 ヤマブキシティのシルフカンパニー、今はスペース団の新本拠地だが、そこの一室ではリースイがダークからの 報告を受けていた。 リースイ:「そう、レジスタンスの邪魔が入ったの。」 ダーク:「申し訳ありません。しかし、今ならレジスタンスに押し入ることも可能ですが…」 リースイ:「黙りなさい。そのようなことをしなくても、能力者たちは再び襲ってくるわ。 その時にはあたしが奥の手を出すつもりよ。」 リースイはモニターを操作しながら、様々な街の様子を映し出していた。 リースイ:「ジムのないシオンを除き、研究所のあるマサラとジムのあるそれぞれの街は未だに降参する様子がないようね。 スペース団のほうが劣勢になり始めている地区もあるわ。その辺りはどうなっているの?」 ダーク:「はっ、ジムリーダーが負傷したクチバとニビにまず総攻撃をかけ、シオン、ニビ、クチバを第2の本拠地とし、 そして他の街に攻撃を向ける予定で…」 リースイ:「黙りなさい。」 ダークの自信を持った言葉をリースイが黙らせた。 リースイ:「甘いわね。マサラはどうなの?あそこは研究所があるだけよ。」 ダーク:「それが…研究所のポケモンたちがやけにしつこく攻撃をするために、なかなかこちら側からの攻撃が…」 リースイ:「なるほどね。ポケモンマスターのポケモンが多くいるだけのことはあるわ。それならグレンはどうなの? 島を取り囲み、火山を刺激し、必要な人間たちを捕らえる方向でいたはずよ。」 ダーク:「そちらも苦戦しているようです。なにやら能力者の力が強いらしく、グレンに向かった船が全て沈没し、 向かったスペース団員は全て捕らえられたらしく…」 リースイ:「ハァ…、情けないわね。それならグレンには少数で大型船を引き連れていかせなさい。 そして、遠距離からの砲弾攻撃を続けながら島を包囲。彼らを外部から遮断してやるのよ。」 と、リースイは天井に近くのナイフを投げつけた。 リースイ:「さっきから何者かしら。話を聞いていたようだけど。」 美咲:「ばれちゃったか。さすがは秘書兼最高幹部のリースイね。」 ダーク:「お前は裏切り者のフレイ!よくもおめおめとこの場に出てこれたな。」 ダークは美咲を掴もうとしたが、ダークの手は美咲の体をすり抜けていた。 美咲:「甘いわ。」 リースイ:「どうやら実体は別のところにいるようね。」 美咲:「ご名答。話は聞かせてもらったわ。この情報をみんなに知らせるつもりよ。」 美咲の姿は消えた。 リースイ:「炎の能力者が作った陽炎による立体映像か。ふざけたことを…ダーク、このビルの監視システムはどうなっているのだ! 簡単に侵入者を入れて平気な顔をしているではない!」 ダーク:「申し訳ありません。今一度、シオンに放った団員を一部残し、ヤマブキに戻す予定です。」 リースイ:「分かった。それとあなたの作った四天王。簡単に洗脳は解けるわけないでしょうね?」 ダーク:「それは大丈夫であります。今までの記憶を消し、偽りの記憶をしっかり植え込みましたが故、彼らは元には戻りません。」 リースイ:「そう。…そろそろかしらね。」 リースイが不意に顔を上げたとき、外の方では騒がしい音が聞こえてきていた。 この数時間前。 蓮華:「あれっ?あたし…」 あたしは目を覚ますと、どこかのジムの中にいた。 蓮華:「ここは…、あたし、確か…」 ダーク四天王が涼治やなずなちゃんたちだった。そして涼治となずなちゃんがキスをして…。 蓮華:「嫌だよ!そんな、これは夢だよ!夢!あたし、そんなことは考えたくない!どうして…」 あたしはこれが夢だと思い込みたかった。どうしてこんな…こんな事が起きるのか。 いつも一緒にいた友達が…、信じてた仲間が…、大好きな彼が…、優しい先輩が…、あたしたちを敵として襲い掛かってくるなんて。 キレイハナ:「蓮華、夢じゃないよ。これが現実。」 キレイハナが部屋に入ってきた。多分、あたしの叫ぶ声を聞いたからだと思う。 蓮華:「キレイハナ…」 キレイハナ:「あたしたちはこれに向き合わなきゃいけないの。あたしたちが逃げちゃったら、誰がみんなを元に戻すの?」 蓮華:「だって…涼治を傷付けたくないよ…」 蓮華がベッドに潜ってしまうと、さすがのキレイハナも切れた。そして。 キレイハナ:「蓮華。戦うことで得られるものはないよ。でも、戦うことでできる事が一つあるの。それは、鎖によって 本当の心を封じられ、無理やり操られ、別の記憶を植えつけられている人たちを救い、この戦いを集結させること。 そして、昔の因縁やつらい過去によって傷ついている人を癒すこと。蓮華ちゃんの植物の力によるオーラは癒す事ができるんだよ!」 と、思いっきり叫んでいた。 蓮華:「…あたしの力が?」 キレイハナ:「うん。みんなが蓮華に懐いた理由。前にサカキさんも言ってたじゃん。蓮華の力はトキワの癒しの力に似ているって。 それとほとんど同じなの。そして、あたしたちが元気でやってこれたのも、つらい過去を持ってる子達が頑張ってこれたのもみんな、 蓮華と一緒にいたことで心が落ち着いたからなの。」 蓮華:「あたしの…力が…」 氷雨:「そうよ。」 氷雨さんが姿を現した。 氷雨:「あなたの力には花が人を魅了する力がさらに進化して、人を癒す力に変わり、あなたに備わっているの。 あなたがヒーリング能力を持っていることも、それが関係しているのよ。あなたなら、みんなを戻す事ができるかもしれない。 だから、今は戦いの時よ。」 蓮華:「…分かった。」 あたしは決心した。 この力が戦いだけに使われるのではなくて、みんなを癒し、元に戻す力でもあるなら、あたしは力を使い果たしてでも、 みんなを元に戻すために、そして平和のために戦う! あたしは部屋を出てみんなのところに行くと、そこには美咲ちゃん、海ちゃん、志穂ちゃん、ナナ以外のみんなの姿があった。 どこかを怪我したりしている人も多い。 美香:「蓮華、落ち着いたんだね。」 蓮華:「うん、心配かけてごめんね。」 あたしが言うと、 久美:「心配かけてるのは蓮華ちゃんだけじゃないから。四天王の正体を知って、衝撃を受け、そして傷ついたのは、 あたしたちも同じだから。」 久美ちゃんが言った。話を聞くと、翼先輩や哲兄も、健人先輩も美香も、彼らに出会ったらしい。 美香:「強すぎるよ。あたしたちの能力でさえも全く効き目なし。」 翼:「俺や哲也の力もポケモンも一撃で倒されたからな。しかし、ここに留まるわけには行かないぞ。」 と、ナツメさんが入ってきた。 ナツメ:「そうね。あたしは元々未来が分かったけど、この戦いはそろそろここを出て戦わないといけないことしか見えない。 あなたたち能力者は未来をどれだけにも変える事ができるから。だからあたしが読めるのはここまで。 そろそろ氷雨の結界とあたしのバリアが限界をきたし始めてもいるわ。他の街もかなりの被害を受けている。」 氷雨:「志穂ちゃんや海ちゃんたちも動いているのよ。今こそ決戦の時。みんな、行くわよ。」 あたしたちはまだ怪我の治っていない健人先輩と久美ちゃんをここに残し、再び外に出た。 氷雨:「まずは本拠地の中に入ることが先決よ。」 あたしたちは本拠地周辺のスペース団たちと戦いを挑み、そして隙ができたとき、あたしがまず中に飛び込んだ。 リースイ:「どうやら鼠がもぐりこんだみたいね。」 ダーク:「くそぉ…!ダーク四天王は何をやっているんだ!」 リースイ:「ダーク、うるさいわよ。彼らは今、あたしの指示で出撃を待っているところよ。 でも、今は出さないわ。」 ダーク:「なぜですか?」 リースイ:「出さなくても、あたしが手を下すからよ。」 蓮華:「ソルル、リュウ、アゲハ、たねね、ドラちゃん、ニド君、ぴぴ、サゴッピ、きっぴー、サン、そしてキレイハナ!出てきて!」 中はスペース団員だらけだった。 ここはもう総力戦。出したら危ないゴンやコイッチ以外のみんなを一気に出して、攻撃を開始していたのだ。 団員A:「ラッタ、そいつらに必殺前歯だ!」 団員B:「ズバットの超音波を受けてみろ!」 団員C:「ドガース、毒ガスだ!」 はぐれ研究員:「私のポリゴンに勝てますかな?」 火事場泥棒:「せっかくの仕事場だ!ポニータ、そいつらに火傷をさせてやれ!」 サイキッカー:「俺の新たな力の研究のための場所だ!ユンゲラー、行け!」 暴走族:「てめえら調子こいてんなよ!ベトベトン、夜露死苦!」 スペース団は団員だけがトレーナーじゃない。色々なトレーナーがいて、あたしたちに向かって襲い掛かっていた。 蓮華:「あたしたちは負けないわよ!一斉射撃!」 ソルルのカマイタチやリュウの竜の息吹が筆頭に、水鉄砲や毒針や、様々な攻撃が敵の攻撃を打ち落としながら向かっていった。 あたしたちは一気にみんなで倒しながら、上の階に向かっていた。 キレイハナ:「どうやら各地に向かっている団員もいたりするし、外の方に出ているからか、襲ってくるトレーナーや団員の数は 少ないわね。」 蓮華:「本当ね。」 あたしは何人かをボールに戻し、ソルル、リュウ、サン、きっぴーだけを残した。 すると、どこかの部屋から物音がした。 蓮華:「誰?」 あたしが入っていくと、そこには弱弱しい研究員の姿があった。 キレイハナ:「スペース団員じゃなさそうね。」 蓮華:「あなたは誰なの?」 研究員:「私はシルフカンパニーでポケモンの研究をしているものだ。ここには監視カメラがなかったから、今までここに隠れていられたのだ。 しかし、つい先ほどから見つかってしまい、これをどこかに隠すために動いているのだ。」 研究員はポケモンの卵を出した。 蓮華:「卵?」 研究員:「私の持つブラッキーとブースターの遺伝子から作ったイーブイの卵だ。こいつをイーブイに孵し、この建物のどこかにある、 イーブイ専用のためにできた、他のものから見ればガラクタに近い機械に生まれたイーブイを入れれば、そのイーブイは ブラッキーとブースターが覚えていた技を使えるようになるのだが、それももはや不可能のようだ。」 と、遠くから「見つけたぞ」という声が聞こえてきた。 研究員:「見つかってしまったようだ。私はもう捕まるだろうが、君たちなら、この卵を安全な場所に送る事ができるだろう。 君たちに頼みたい!この卵を2階上の転送システムに入れて安全だと思われる場所に送ってくれ。」 そういうと、研究員は近くにおいてあったモップを横に持って、走ってきた団員にタックルをくらわした。 蓮華:「分かりました!みんな、行くよ!サン、砂嵐!」 研究員の力では団員を一時的でしか押さえ込めない。だからサンの砂嵐を背後に放っておいた。 2階上の大きな部屋には転送システムが置いてあった。 でも、そこにはダイヤの姿があった。 ダイヤ:「あら?やられたと思っていた子が舞い戻ったようね。しかもその手にあるのは卵じゃない。 死にたくなければ、私にその卵を渡していただけないかしら?」 蓮華:「あなたになんか、絶対に渡すわけないじゃない!」 ダイヤ:「あら、そう。ならば、ゲンガー!グラエナ!相手をして上げなさい!」 ダイヤの影からゲンガーが、そして背後からグラエナが現れた。 ダイヤ:「ゲンガー、ナイトヘッドよ!そしてグラエナ、シャドーボールよ!」 蓮華:「ソルル、騙まし討ち!キレイハナ、ソーラービームよ!サン、リュウ、きっぴー、ダイヤを抑えて!」 ソルルがゲンガーに向かい、ゲンガーに突進を食らわした。キレイハナはソーラービームでシャドーボールを相殺しながら、 爆裂パンチと気合パンチをぶちかましていた。 そしてきっぴーが火炎放射を、リュウが電磁波を、サンが泥かけを行い、ダイヤを転送システムに近づけないようにしていた。 ダイヤ:「くっ、私の電磁攻撃を食らいなさい!」 ダイヤはやはり玲奈先輩の攻撃技が使えるらしい。玲奈先輩の攻撃は電磁波を基にした光線や塊を放つ。でも。 サンがその攻撃を全て、泥や砂で打ち落とし、リュウときっぴーがその隙を狙って攻撃を続けていた。 蓮華:「ここに卵を置けばいいのね。えっと、転送先は…待てよ。もしかして…」 あたしはこんな時に何かを思い出そうとしていた。 まあ、今のあたしたちは優勢だったからいいけど。 あたしのイーブイ、どこかから送られてきたのよね。そして、そのイーブイはあたしのオーラのようなものの残り香を持っていた。 あたしがイーブイを送らなきゃ、それがついていることはないし…多分、フィル(エーフィ)は今、あたしが送るから手に入れたのかも…。 キレイハナ:「蓮華!危ない!」 あたしがはっとすると、システムにダイヤの攻撃が当たった。システムが煙を出し始めている。 ダイヤが自由になってると思えば、ジュペッタがリュウと、ダーテングがきっぴーとサンと戦っていた。 ダイヤ:「早くその卵を渡しなさい!」 蓮華:「嫌!あたしの中に眠っている力よ、この卵を安全に送り届けて!」 あたしはシステムに力を送った。すると、モニターが過去の時間を示し、卵が送られていった。それと共に、その機械は爆発を起こし、 ダイヤはその爆風に巻き込まれていた。 あたしはあたしを守るように飛び出したパルの殻がシールドのようになって、システムの残骸から守ってくれた。 パールル:「パルル、パル!」 キレイハナ:「てやぁ!蓮華、しっかりしてくれなきゃ困る、だって!」 キレイハナがグラエナを気合パンチで沈めてから言った。 ソルルもゲンガーをついに倒し、きっぴーの火炎放射とサンの毒針がダーテングを倒し、ジュペッタはリュウの電磁砲でその場に落下していた。 ダイヤ:「くっ、あたしのポケモンが敗れるとは…」 蓮華:「当たり前よ、心が通じていないポケモンたちよりも、心を通じているあたしとポケモンたちの方が強いんだから!」 ダイヤ:「そんなはずはない!あたしのポケモンは…」 突然ダイヤが頭を抱え始めた。そしてダイヤからは黒いオーラが上り始めている。 ダイヤ:「あたしは…あたしは…一体!!」 キレイハナ:「どうやら本当のポケモンとの記憶が浮き上り始めたのね。それで洗脳が解け始めたようね。」 蓮華:「ダークがどんなに手を込んで洗脳したとしても、最終的には簡単なことで解けちゃうのよ。」 あたしは手をかざし、光をダイヤに向かって放った。 蓮華:「植物のオーラよ、邪悪な力を癒し、光の力に変え、洗脳されし、閉じ込められた彼女の記憶を…」 ??:「させるか!」 蓮華:「きゃあ!」 あたしが力を放っていたところに、強力な電撃が飛んできた。そしてダイヤには再び、真っ黒な力が注がれていく。 蓮華:「ダーク!」 ダーク:「もう少しで元に戻ってしまうところだった。草使い、よくもやってくれたな。 そこの部屋でリースイ様がお待ちだ。攻撃を受けたくなければ入れ!」 あたしは起き上がったダイヤとダークの攻撃を受けるわけには行かず、みんなと中に入った。 部屋に入ると、リースイが布が覆った何かと一緒にいた。 リースイ:「うふふ、よく来たわね。これを見なさい。」 蓮華&ポケモン:「!?」 リースイが布を取ると、そこには哲兄、翼先輩、美香、海ちゃん、菜々美ちゃん、そして久美ちゃんの姿があった。 みんな縛られて気を失っていた。 リースイ:「ようやく捕まえられたのはこいつらだけだけど、まあいいか。あなたたちがいると邪魔なの。」 リースイは何かの機械を作動させた。すると、突然あたしの持つボールが全部宙に浮き始めていた。 蓮華:「何をするの!」 リースイ:「こうするのよ。」 リースイが機械を作動させると、ボールはすべて、電撃と共に消えてしまった。 リースイ:「あなたたちは強すぎるわ。このまま行けば、私たちスペース団は危うくなる。特にあなた。 あなたとポケモンは最も強い。だからあなたのポケモンは世界各地に飛ばさせてもらったわ。この状態で、 傷ついたその子達だけであたしに勝てるかしら? まぁ、無理でしょうけど。」 突然、あたしとキレイハナたちの間に透明な壁が落ちてきた。それはあたしと哲兄たちを取り囲んでいる。 キレイハナ:「蓮華!」 ソルル:「ソル!」 きっぴー:「コ〜ン!」 パル:「パルパル!」 リュウ:「リュ〜!」 サン:「サ〜ン!」 リースイ:「叫んだって無駄よ。もう、あなたたちは、彼女たちには会えないわ。」 蓮華:「何をするのよ!」 リースイ:「あたしは能力者たちの力を結集させ、一度だけ使えるこの機械も作ったわ。あなたたちを 元の世界に戻してあげるわ。この世界にいてほしくないから。サヨウナラ!」 突如、あたしたちのいる空間を電気がたくさん流れ始めた。そしてあたしたちは光に包まれ、そして気を失った。 蓮華:「ん…」 あたしが目を覚ました時、あたしはどこかの原っぱに寝ていた。近くには哲兄たちの姿もあった。 縄はあたしがほどいておいたからもう解けているけど。 蓮華:「ここは…。本当に元の世界に戻ってきちゃったの?」 あたしは近くの茂みを抜けた。 すると。 見たことのある、あたしが育った街が丘の向こうに見えていた。