蓮華:「いよいよだね。」 キレイハナ:「そうね。でも、自信あるんでしょ?」 蓮華:「当たり前よ。早く行きましょ。」 今日はヤマブキシティのジム戦の日。あたしが寝ていた一週間の間に、ヤマブキシティはほとんどの場所が復興・復旧していた。 今日、あたしがジム戦をできるのも、ヤマブキジムが復旧しているからである。それに、あたしはもうゆっくりしている 暇はないのだ。ポケモンリーグカントウ大会は2週間後に迫っているからだった。 そしてあたしとキレイハナは、ヤマブキジムの前までやってきていた。 46.大苦戦!ヤマブキジム 蓮華:「ごめんください!グロウタウンの蓮華です。ジム戦に来ました!」 あたしがそう叫ぶと、急に寒くなってきた。どうやら一番初めに戦うジムトレーナーは…。 氷雨:「待ってたわよ。ナツメとのバトルはあたしたち、ジムトレーナーを倒してからにしなさいね。 使用ポケモンは3体のダブルバトルよ!」 氷雨さんだった。 蓮華:「絶対戦うことになるとは思ってました。でも、あたしも負けませんから!」 氷雨:「やる気ね。いいわよ、まずは…ポワルン!ボスゴドラ!出てらっしゃい!」 氷雨さんが出したのは氷雨さんのパートナーポケモンで、お天気ポケモンのポワルンと、もう一体は見るのが初めての、 あたしのドラちゃんが最終的に進化するとなる姿の鉄鎧ポケモンのボスゴドラだった。 氷雨さんがこの2体をダブルバトルで使うということは、ポワルンの特性「天気屋」と関係しているからだろう。 だとしたら厄介だ。 蓮華:「考えさせられますね…ここは…キレイハナとぺろん!二人とも、頼んだわよ!」 ポワルンが使える天気技は3種類。 炎タイプの攻撃の威力を上げたり、溜めなしのソーラービームを放ったり、草ポケモンの特性「葉緑素」を発動できる「日本晴れ」、 水タイプの攻撃の威力を上げたり、雷を必ず当てる事ができるようになったり、特性「すいすい」を発動できる「雨乞い」、 そして、氷タイプの攻撃の威力を上げたり、氷属性ポケモン以外のタイプにダメージを与える事ができる「あられ」である。 あたしのキレイハナはずるいけど高速移動が使えるから、雨乞いの状態でも早く動くことはできる。それに、ぺろんの特性は「変色」。 その技を受けると、そのタイプになると言うものなので、多少何とかなるかと思う。 氷雨:「考えたわね。でも、これにはどうかしら?ポワルン、雨乞い!ボスゴドラ、地震よ!」 元々宙に浮いているポワルンには地震が通用しないため、キレイハナとぺろんは地震の攻撃を受けてしまった。 そしてぺろんは地面タイプになった。ということは…水攻撃には弱い。 蓮華:「キレイハナ、マジカルリーフでポワルンを攻撃して!ぺろんは身代わりよ!」 マジカルリーフは雨型ポワルンに向かい、ぺろんはHPの4分の1を利用して身代わりを作った。 氷雨:「雨乞いの間はポワルンは水タイプ…でも、この技はずっと使えるのよ!ポワルン、火炎放射! そしてボスゴドラ、カクレオンの身代わりに水の波動よ!」 威力は弱いけど火炎放射はマジカルリーフを焼ききり、ボスゴドラの水の波動は地面タイプになったぺろんを水技で攻撃した。 地面タイプなので、水攻撃に弱く、身代わりは消えた。すると、身代わりが消えると同時に姿を現したぺろんは、ボスゴドラに 強力なエネルギーを秘めた拳を打ち付けていた。 氷雨:「えっ!何!?」 蓮華:「ぺろんの使ったのは気合パンチ。気合パンチは後攻技で、集中してから強力な一撃をぶつける技だけど、 相手の攻撃を受けるとその攻撃はできなくなってしまう技。だから身代わりを使わせ、自分には攻撃が当たらないようにしていたのよ。」 気合パンチは格闘タイプの技でもあり、岩と鋼をタイプに持つボスゴドラには強力な一発だった。 でも、ボスゴドラの特性「頑丈」と氷雨さんが持たせていた「気合の鉢巻」によって、一撃では瀕死状態にはならないようだ。 氷雨:「次はこれよ、日本晴れ!」 日本晴れになり、晴れ型になるポワルン。そして。 氷雨:「ボスゴドラ、火炎放射!ポワルン、ウェザーボールよ!」 蓮華:「キレイハナ、神秘の守り!カクレオン、原始の力よ!」 ボスゴドラの火炎放射はキレイハナを狙っていて、キレイハナは神秘の守りでそれを防いでいた。 そしてポワルンは炎のウェザーボールを放ったが、こちらはぺろんの持つ岩タイプの攻撃技「原始の力」が相殺していた(炎タイプにはなったが)。 氷雨:「相殺したのね。だったら今度はボスゴドラ、アイアンテールよ!ポワルンは大文字!」 蓮華:「キレイハナ、アイアンテールを避けて爆裂パンチ!ぺろんはサイケ光線!」 キレイハナはボスゴドラのアイアンテールを華麗に避け、爆裂パンチをぶつけたが、ぺろんのサイケ光線が大文字攻撃を 分裂させただけだったため、強力な炎の塊をたくさん浴びてしまった。そして、大文字の本体の方もサイケ光線で、一部が飛び散っただけにしか 至らなかったため、攻撃の根本が炎属性になっているぺろんを飲み込んだ。 ただ、キレイハナは火傷状態をラムの実で治し、光合成を行ったから助かったんだけど、ぺろんは戦闘不能になっていた。 そして。 あたしは氷雨さんが相手である事が厄介なのをすっかり忘れていた。それをちょうど今、思い出した。 前に志穂ちゃんが言っていたのだ。 志穂:「あたしがジム戦で一番苦戦したのはヤマブキかな。ナツメさんじゃなくて、ジムトレーナーに強い人がいたのよ。 蓮華ちゃんも知ってる人だけどね。…あの人とバトルするときは、厄介だから気をつけてね。」 せっかくアドバイス(今思い出せば明らかに氷雨さんのことを示してるって分かるけど、言われた時はわからなかった)を すっかり忘れていて、あたしとしてはもうヤバイ状況なのだ。 ぺろんが敗れたとなると次は…そうだ、もうやけだ! 蓮華:「ゴン!行って!」 キレイハナ:「蓮華…荒れてる…」 蓮華:「そう?ゴン、地震よ!」 あたしは速攻でゴンに地震を発動させた。キレイハナには指示を出さなかったけど、キレイハナはすぐに自分自身で行動を始めていた。 ゴンの地震のすごさは並外れていないのだ。キレイハナはゴンが思いっきり飛び上がって、急落下をする直前に蔓のムチでジャンプし、 そしてすぐにゴンの上に飛び乗ったのだ。地震攻撃は、行ったものには効果を示さないからだ。 そして、ボスゴドラはこの攻撃を食らい、ついに倒れた。氷雨さんやあたしでさえ、宙に浮いてそのダメージをかわしたほどなのだ。 地震の強烈さは、実は外で復旧作業を行っている人たちにも、かなり多大な迷惑を与えていたことを記述しておく。 それが何かはあえて言わないが、ヤマブキの一部の復旧作業の終了予定次期が大幅に伸びたことは事実である。 氷雨:「すごい地震ね。でも、この子には効かないわよ。ジュペッタ、出てきて!」 出てきたのは人形ポケモンでゴーストタイプの…どういうわけかあたしには気色悪いようにしか見えないけど、妖怪の氷雨さんにとっては かなり親近感が沸くらしい子だという。 氷雨:「ポワルン、最後は霰よ!ジュペッタ、属性違いでダメージを受けるけど、ちょっと我慢してね。」 氷雨さんはジュペッタにそう言ってから、すぐにあたしたちに向けた攻撃を指示した。 氷雨:「ポワルンはウェザーボールをキレイハナに!そしてジュペッタはカビゴンにスキルワップよ!」 あたしはやられたと思った。この状態になってしまったからには、カビゴンの技が3つ、金縛りや封印にあったのと同じ状態にされたといっても 過言ではないのだ。 「スキルワップ」とは自分と相手の特性を入れ替える事ができる技だった。ジュペッタの特性は不眠、すなわち眠り状態にならないので、 ゴンはもう眠ろうとしても眠れないのだ。そしてゴンの特性は「厚い脂肪」だった。これは炎と凍りタイプの技のダメージを半減させる技だった。 すなわち、霰によるダメージも半減させるのだ。 しかもジュペッタは浮いていて、ポワルンも浮いているので、地面に着地しない限りは地震のダメージを受けないのだ。 ゲームでは地震のダメージを与えることはできるのだけど、実戦では地震攻撃を受けないポケモンは意外に多かった。 飛べるポケモン、浮けるポケモンは、飛んだり浮いたりしていれば地震は受けないのだ。だからゲームではダメージを受けている、 モルフォンやドクケイル、ヘラクロスやヨマワルも同じなのだ。 氷雨:「うふふ、あたしはこれでも蓮華ちゃんの導き者よ。蓮華ちゃんの作戦は読めるわよ。 この状態で勝てなかったら、ナツメにはともかく、今までのバトルも意味がなかったことになるわよ。」 氷雨さんは痛い事も普通に言う。 蓮華:「ん〜…浮いてるってことは地面は効かないけど…あっ!」 ゴンの覚えてる技で、ノーマル技じゃなくて、地面技でもなくて、それでも効果的な技があった。 氷雨:「何かをする気ね。させないわよ!ポワルン、吹雪!ジュペッタ、10万ボルトよ!」 蓮華:「キレイハナ、守る攻撃でゴンをサポートして!ゴン、ジャンプして岩なだれよ!」 キレイハナが吹雪と10万ボルトの融合攻撃を守る攻撃でゴンごと防ぎ、そしてその瞬間、ゴンは思いっきりジャンプし、 そして強烈なパンチを地面にたたきつけた。すると、大量の岩が宙に舞い上がり、浮遊しているポワルンとジュペッタを攻撃した。 現在氷属性のポワルンには、岩タイプの攻撃は弱点だったため、ようやくポワルンはダメージを受けた。そして、ジュペッタも攻撃を受けていた。 氷雨:「岩なだれね。考えたようだけど、ポワルンはまだまだ戦えるわよ。たった今ダメージを受けたばかりだから。」 蓮華:「そうでしょうか?キレイハナ!」 キレイハナ:「了解!」 あたしが呼ぶと、キレイハナは宙に舞い上がった。ゴンの弾力のある体を利用してトランポリンのようにして跳ね上がったのだ。 蓮華:「リーフブレードよ!」 キレイハナはポワルンに落下のスピードを利用したリーフブレードをぶつけた。そして…ポワルンは倒れた。 氷雨:「ポワルン…やられたわ。ポワルンはHPが低いから、ダメージを受けなければ長期戦も可能だったけど。 でも、ジュペッタを忘れてないかしら?鬼火よ!」 キレイハナの背後にはジュペッタが迫っていた。 が、その間にゴンがいきなり飛び込んでいた。あたしの指示もなく。 それは、ゴンがさっきの岩なだれの攻撃の際にキレイハナに助けられたことへの恩返しだった。そして、ゴンは火傷になったけど…。 蓮華:「ゴン、見破って空元気よ!」 あたしはゴンの技を図鑑で確かめ、見破るを覚えていたので空元気を発動させた。 「空元気」は状態異常の状態で技を発動させると、威力が倍になる技なのだ。そしてジュペッタも倒れた。 氷雨:「…負けたわ。ここは通してあげる。でも…次はどうかしらね?」 氷雨さんは負けるとあっさりしていて、あたしに道を譲っていた。でも、ものすごく意味深な表情をしていたのだ。 扉を抜けると、またバトルフィールドがあった。でも、その先には扉があって、ジムリーダーの間と書かれている。 ってことは、あともう一人、誰かと戦うことになるようだ。 と、誰かが突然姿を現した。 蓮華:「…えっ?」 キレイハナ:「えぇ!?」 あたしたちの目の前に現れたのは、あたしだった。 蓮華?:「次の相手はあたしよ。あたしに勝てば、あなたはナツメさんとバトルができるわよ。 ダブルバトルよ!出てきて、ムウマ!」 向こうのあたしはムウマを出した。でも…ダブルバトルって2体じゃ…。 キレイハナ:「…あっ、そうか。なずなちゃんでしょ?」 蓮華:「へ?」 と、向こうのあたしの顔が溶け出し、なずなが姿を現した。メタモンで変装していたようだ。 蓮華:「なずな!」 なずな:「うふふ、ちょっとした冗談よ。それより、あたしのムウマとメタモンに勝てるかな?」 蓮華:「負けないよ!ヒメちゃん!アゲハ!出てきて!」 なずな:「それじゃ、試合開始ね。メタモン、リングマになって!ムウマはアゲハントにシャドーボールよ!」 なずなのメタモンはリングマになった。が、リングマは色違いになっていた。どうやらなずなが見分けるために仕向けたらしい。 そしてアゲハントにはシャドーボールが発射された。 蓮華:「アゲハ、サイコキネシスよ!ヒメちゃんはメタモンに乱れ引っかき!」 アゲハはシャドーボールをサイコキネシスで散らせた。そしてヒメちゃんはリングマ姿のメタモンに乱れ引っ掻きを行おうとしたが。 なずな:「爆裂パンチよ!」 メタモンは乱れ引っかきに爆裂パンチで対抗していた。 なずな:「ムウマ、リングマに呪いよ!そしてメタモン、アゲハントに火炎放射!」 ムウマはHPの半分を使ってヒメちゃんに呪いをかけ、メタモンはアゲハに火炎放射を放った。 しかもそれは、アゲハがちょうどメタモンの真上に来たときだったので、守る攻撃を使おうとしたけど、羽の一部が焦げてしまっていた。 蓮華:「アゲハ!」 なずな:「蓮華、メタモンの変身による弱点を防ごうとしたようだけど、あなたのリングマが火炎放射を覚えてなくても、 あたしのメタモンはそのポケモンが使えるようになる技をすべて、使う事ができるの。だから残念でした。メタモン、 リングマに地割れ攻撃よ!ムウマ、アゲハントに雷よ!」 なずなの攻撃は炸裂し、アゲハとヒメちゃんは倒れた。 なずな:「次は誰を出す?」 蓮華:「…フィル!チリリ!お願い!」 あたしはこの二人に賭ける事にした。 なずな:「両方エスパーなのね。だったらメタモン、リングマのままでいくわよ!ムウマも一緒に騙まし討ちよ!」 エスパータイプが相手と知り、なずなは騙まし討ちを指示した。騙まし討ちは悪タイプの技で、エスパーには効果抜群である。 でも、ふっとチリリとフィルは姿を消していた。 あたしはさっさと指示を出していたのだ。なずなが油断した隙に。 なずな:「何?」 蓮華:「テレポートよ。チリリ、ムウマを驚かせて!フィル、メタモンにサイケ光線よ!」 実はチリリのサイコキネシスで宙に浮いていたわけで、なずなのポケモンの背後部分にテレポートしていたのだ。 すると、メタモンは元の姿に戻り、目を回していた。 なずな:「あらら…。メタモン、戻って!ムウマ、黒い眼差しで滅びの歌よ!」 なずなはメタモンが倒れたために、フィルとチリリが戻れないようにしてムウマに滅びの歌を発動させていた。 なずな:「フラッシュよ!」 そしてムウマはフラッシュと共に姿を消していた。 なずな:「ムウマの場所を探し出して、そしてムウマを倒せたら、ここを通ることを認めさせてあげる。 そっちには2体いるからできるでしょ?」 なずなはあたしを試しているのだった。エアだったときのなずなは操られていたこともあって、ポケモンの動きもぎこちなかったけど、 今はそんな感じではなく、ダブルバトルではかなりの腕前だった。 蓮華:「チリリ、挑発よ!そしてフィル、広範囲にサイコキネシス!」 「挑発」は相手に対し、自分にダメージを与える技しか出させない技だった。そしてチリリに向かってくるムウマ(透明状態)に対し、 フィルがサイコキネシスで待ち構えていた。そのため、ムウマの姿は見えてしまい、ムウマは倒れた。 なずな:「ムウマ…挑発かぁ。そんな技があったんだね。負けちゃった。蓮華、ポケモン戻した方がいいよ。」 あたしはフィルたちを戻し忘れていたので、慌ててボールに戻した。と、なずなの姿は消えていた。 多分、テレポートでどこかに行ったのだろう。そしてあたしは、ようやくナツメさんのいる部屋に入った。 ナツメさんはモンスターボールを念力で浮かせ、ジャグリングみたいにして待っていた。 ナツメ:「来たわね。あなたがここに来ることは予想していたわ。」 キレイハナ:「えっ?蓮華たち能力者の行動はまちまちだから予想できないんじゃ…」 ナツメ:「そうよ。でも、今日はあたしの力が冴えていたの。どうしてか知らないけど、あなたが氷雨となずなちゃんに勝つ映像を 脳裏に浮かべていたのよ。あなたと戦う日が来て嬉しいわ。正々堂々、悔いのないバトルをしましょうね。」 ナツメさんはそう言うと4つのボールを宝箱みたいな箱から取り出した。 ナツメ:「悪タイプを持っているでしょ?その子達の力を当てにしてないわよね?エスパーポケモンの奥の深さを教えてあげるわ。」 ナツメさんはそう言い切って、ボールを投げた。 実を言うと、今回に限って審判がいない。いいのかどうか不思議だけど…。 一匹目のエスパーポケモンは初っ端からすごかった。メタグロスだった。 蓮華:「メタグロスはエスパーと鋼…ソルルとたねねだと無理ね。ここは…賭けてみるか。ひがめくん!」 あたしは鋼に有利な炎タイプのひがめくんを出した。 ナツメ:「コータスの炎でメタグロスが倒れるかしらね?メタグロス、コメットパンチよ!」 蓮華:「ひがめくん、鉄壁!」 ナツメ:「甘いわね。メタグロス、コータスの体を横から叩きなさい!」 メタグロスはひがめくんの甲羅を真横から叩いた。コメットパンチの威力は強く、ひがめくんは回転しながらフィールドの外の壁に激突したほどだった。 でも、ひがめくんは堪えていて助かった。でも、これ以上鉄壁を使うことはヤバイ! 蓮華:「ひがめくん、熱風よ!」 ナツメ:「まだ甘いわよ。メタグロス、熱風発動前にメタルクローよ!」 コータスの前にすぐに現れるメタグロス。でも、あたしはそんなに簡単に攻撃を受けるつもりではない。 蓮華「(かかった!)ひがめくん、煙幕!」 メタグロスが至近距離まで来た時、ひがめくんは体内の煙幕を一気に噴出した。一時的な目くらましだ。 メタグロスもひがめくんも特性により能力を下げる技を受けないから、単なる一しのぎにしかならないが。 ナツメ:「コータスの煙幕が通用するとでも思ったの?メタグロス、サイコキネシスで煙幕を吹き飛ばして!」 メタグロスは煙幕を吹き飛ばした。すると…。 ナツメ:「何ですって!?」 蓮華:「かかったわね、ひがめくん、オーバーヒートよ!」 ひがめくんは煙幕を出してすぐにメタグロスの背後に回っていたのだ。そしてオーバーヒートを放ったのだ。 メタグロスはオーバーヒートを振り返ってすぐにかぶってしまい、動きが一時的に遅くなっていた。 ナツメ:「危ないわね。メタグロス、高速移…」 蓮華:「ひがめくん、行っちゃうよ!岩砕き!」 ひがめくんはオーバーヒートを受けた直後、脆くなっていた部分に岩砕きを受け、大きな皹の入ったメタグロスは動かなくなっていた。 ナツメ:「メタグロス、戦闘不能ね。こうも早く倒されるとは思ってなかったわ。そのコータス、よく育てられてるわね。 あの煙幕が出ていたのは20秒ほど。その間にメタグロスの背後に回ってオーバーヒートの準備をしたってことは、他と比べて 素早さが著しく早いようだし。でも、素早さが高くてもこの子には追いつけないわよ。ネイティオ!」 ナツメさんはネイティオを出してきた。見る限り、普通のネイティオよりも少し大きいようだ(普通のでも1.5メートルだけど)。 ナツメ:「このネイティオは2メートルよ。でも、素早さは結構高いの。」 蓮華:「だったら戻って、ひがめくん!次は…ソルル!お願い!」 あたしが出したのはソルル。ソルルはやる気十分の状態で出てきていて、無表情のネイティオを思いっきり睨んでいた。 ナツメ:「うふふ、ネイティオ、連続でツバメ返しよ!」 蓮華:「ソルル、高速移動で避けてカマイタチ攻撃!」 ツバメ返しは避けられない、絶対に当たる技。それを必死で避け続けるのがソルル。ソルルは結構視力がよく、実際トレーニング中に フィルのスピードスターを全て見切り、デンの電撃波やたねねの騙まし討ちをすべて見切っているのだ。 そして逆に一度だけ飛ばしたカマイタチを正確にネイティオの左翼の付け根に命中させていた。 ナツメ:「ツバメ返しを全て避けるとは思わなかったわ。だったら怪しい光よ!」 蓮華:「ソルル、マジックコート発動!」 マジックコートは怪しい光を跳ね返し、反射し、逆にネイティオが混乱状態に陥った。 でも、ナツメさんは全然安心しきっていた。 ネイティオの特性は「シンクロ」だが、混乱状態は相手にシンクロしないのだから厄介と思うけど。 そう思っていると、ネイティオは持っていたラムの実で混乱状態を回復していた。 ナツメ:「怪しい光にマジックコートを使われることはよくあるから。」 場数を乗り越えているだけある。 ナツメ:「次はこちらから行くわよ!ネイティオ、日本晴れ!そしてソーラービームよ!」 蓮華:「ソルル、高速移動で避けて!」 ソルルは日本晴れコンボを高速移動でギリギリ避けた。ソルルのいた場所は大きく抉られていて、ソルルが逃げなかったら 大やけどを負っていたんじゃないかと言うくらい、地面は湯気を立ちのぼせていた。 ナツメ:「まだまだ行くわよ、黒い霧よ!そして電光石火で突付く攻撃!」 ネイティオはソルルが高速移動を終わらせた直後、黒い霧で視界を塞ぎ、電光石火で背後から回って突付く攻撃を放った。 背後の防御ががら空きだったソルルにはダメージは高かった。 蓮華:「ソルル、切り裂く攻撃よ!」 ダメージを受けながら、ソルルはネイティオの左翼の付け根に攻撃を当てる。ダメージの当たり具合はネイティオのほうが大きい。 ここは後一押しだと思ったときだった。ネイティオの体が光だし、怪我が治り始めたのだ。 蓮華:「これ…願い事ね!」 ナツメ:「そうよ。あなたのアブソルのレベルを知る限り、願い事を使わなければ厄介だもの。睨みつけて!」 ネイティオは攻撃の疲労も強いソルルを思いっきり睨んでいた。ソルルは攻撃の影響もあって疲れているため、睨みつける攻撃でも 後ずさりを始めてしまっていた。 蓮華:「ソルル、影分身よ!そしてバトンタッチよ!」 あたしはこのままソルルを出し続けることは危険と判断し、バトンタッチを使うことにした。 ナツメ:「ネイティオ、バトンタッチしたポケモンにソーラービームよ!」 ナツメさんはソーラービームをすぐに発射させていた。でも、バトンタッチで出てきたのは…。 キレイハナ:「それがソーラービーム?笑わせないで!」 キレイハナなのだ。キレイハナの特大ソーラービームを逆にネイティオにぶつけ、ふらついた瞬間を居合い切りで切り付けた。 それは、回復したとはいえ攻撃を受けたのは左翼の付け根だった。キレイハナはしっかりと見ていたのだ。 そして痛みが残っている部分に居合切りを受けたため、ネイティオは落下していた。 ナツメ:「!?…蓄積した痛みのダメージが出たのね。ネイティオ、サイコキネシスで体を安定させるのよ!」 蓮華:「チャンス!キレイハナ、メガトンパンチでアッパーよ!」 キレイハナ:「了解!」 キレイハナは見事に攻撃を命中させ、ついにネイティオは願い事が発動する前に倒れた。 ナツメ:「ネイティオも戦闘不能…。蓮華ちゃん、残りの2体はダブルバトルをしようと思うんだけど、いいかしら?」 蓮華:「いいですよ。キレイハナ、そしてたねね!お願いね。」 あたしは最後に一匹たねねも出し、ナツメさんの出すのを待った。 ナツメ:「あたしの2体はこの子よ!ルージュラ!モルフォン!」 蓮華:「あ…」 あたしはたねねを出すのはやめておけばよかったと後悔した。相手は…氷・エスパーのルージュラと、毒・虫のモルフォンなのだ。 草タイプの苦手な攻撃を使える二人だ。 ナツメ:「どう?あなたのことを考えて、純粋エスパーポケモンたちを相手にさせるのは危険だと判断していたのよ。 ルージュラは吹雪!モルフォンは銀色の風よ!」 蓮華:「キレイハナは守る攻撃!たねねは見切って!」 守る攻撃、見切る攻撃は連続では使えないけど、いきなりのこれには防御しかなかった。 ナツメ:「だったら、ルージュラ、悪魔のキッスよ!」 蓮華:「げっ!?気色悪いから見ちゃ駄目よ!たねね、神通力!」 ルージュラは投げキッスの体制に入り、あたしは鳥肌が立ったのでたねねに目をつぶらせ、周囲の音を聞きながら神通力を出させた。 ルージュラは♀なので、同じ♀のキレイハナには悪魔のキッスは効かないのだ。 そしてルージュラはあたしの言った言葉に怒りを覚えたらしい。何故かキレイハナに対して連続冷凍パンチを繰り出していた。 ナツメ:「ルージュラ、粉雪!モルフォンはサイケ光線よ!」 ナツメさんはルージュラの行動を見て、キレイハナに狙いを定めたらしかった。でも、今の攻撃はキレイハナのハイパーボイスによって 拡散されていた。こうなったらあたしも攻撃あるのみだ。 蓮華:「キレイハナ、ルージュラに溶解液よ!たねねはモルフォンに岩石封じ!」 たねねは岩石封じでモルフォンに打撃を与えたが、片方では女の戦いが続く結果になった。理由は溶解液の放ち方だった。 キレイハナは唾を吹っかけるようにルージュラの、長い髪の毛に吹っかけたのだ。が、それは彼女の目を含む、額の辺りに当たっていた。 これによって、ルージュラは吹雪とサイコキネシスを放ちながら暴れ始めたのだ。 ナツメ:「ハァ…、蓮華ちゃん、ちょっと火に油を注ぎすぎたようね。」 蓮華:「はい…。」 ルージュラの暴走はたねねとモルフォンに冷凍パンチを打ち付けて一気に沈め、邪魔者を消すと、キレイハナに向けての 攻撃を始めていた。 ナツメ:「こうなったら彼女は戦闘不能になるまで倒れないわよ。」 蓮華:「…キレイハナ、リーフブレードよ!」 ルージュラはキレイハナに連続攻撃をしているので、近距離にいるのだ。だからリーフブレードを使わせ、次は爆裂パンチを放たせた。 それでもルージュラは倒れないようだった。だとしたらこれしかない。 蓮華:「袋叩きよ!」 あたしが叫ぶと…、みんなが出てきてルージュラに一発ずつ、軽めの攻撃を使い、ようやくルージュラも倒れた。 ナツメ:「モルフォン、ルージュラ、戦闘不能。…蓮華ちゃん、あたしの初めの2体、氷雨となずなちゃんのポケモン、 それぞれとのバトル、最後を除くとみんなよくできてたわ。あなたにはこのバッジをあげることができるわ。 ただし、もう最後のような状況をバトルで起こさないようにしないといけないから。」 ルージュラが倒れると同時に、ナツメさんはあたしの近くに来てバッジを渡してくれた。 いつもなら「やったね」というキレイハナも疲れきっていたので、あたしはすぐにポケモンセンターに駆け込むのでした。 そんなわけで…。 美香:「それはそれで…大変だったね。」 偶然ポケモンセンターで美香に会ったあたしは、つい愚痴っていた。 蓮華:「うん。でも、もうみんな元気になってるからいいけど…」 美香:「いいけど?」 蓮華:「キレイハナの美しさのライバルが増えたから…ナツメさんのところにはもういけないかな。」 電話でなずなが言うには、ルージュラの不機嫌さはかなり続き、キレイハナを持つトレーナーがあたしの後に訪れた際は、 かなり惨劇とよぶくらいの攻撃を行いかけたらしい。 美香:「うわぁ…。…蓮華、パートナー間違えたのかもね。」 美香はさすがにあたしに同情的になっていた。が、実はこの時、哲兄とニャースがキレイハナに電話で愚痴られていたのでした。 内容は「自分が失敗すると怒るくせに、普段は蓮華を先導しているのは自分だ」ということだった。 かなり自己主張が強く、哲兄は蓮華の短所を知っているから、妙に意気投合し、ニャースにとっては災難だったらしい。 それはともかく、次はついに最後のジム。トキワジム戦だ。 3日後なのだ。どうなるかが、すごく心配だけど、絶対に頑張ってバッジをゲットするぞ!