蓮華:「ついにここだけになったね。」 キレイハナ:「本当ね。長いような短いような旅だった気がするわね。」 あたしとキレイハナはトキワジムの前にいた。 つい3,4日前にヤマブキジムを攻略したあたしたちは、マサラタウンに戻り、トレーニングを重ねていたのだ。 ナツメさんと氷雨さんに苦戦を強いられたのだから、その状態だとトキワシティでは惨敗しそうな気がした。 だから翼先輩や美香たちを呼んで特訓してもらったのだ。 哲兄と志穂ちゃんはすでにセキエイ高原に向かったそうだし、ポケモンリーグまで後一週間。あたしも急がなきゃいけない! あたしとキレイハナはトキワジムの扉を開けた。 47.トキワジム!最後のバッジ 晃正:「蓮華先輩、お待ちしてました。」 入るとそこにはあたしの後輩で、半人半獣のケンタウロスの晃正君がいた。そしてその先にドアがあるのも見える。 前回などのことを考えると、多分、晃正君が最初の相手だ。 蓮華:「あなたが最初のジムトレーナーなの?」 晃正:「ええ。師匠のところへは簡単には行かせませんから。俺と他に二人、ジムトレーナーというよりは、蓮華先輩を先に行かせない 人がいます。俺たちを倒せたら、師匠の下にいけますから。」 ジムトレーナーと言うより…ということは、なずなちゃんみたいな誰かってことだ。 蓮華:「分かったわ。それでバトル形式は?」 晃正:「使用ポケモンは2体のダブルバトルです。ただし、バトルはこちらで行います。」 あたしは晃正君に案内されて、ある部屋に案内された。そこは大きなプールのあるフィールドだった。 ハナダジムのように、水ポケモンを扱う場合によく使用される、水のバトルフィールドだ。そして、小さな浮き島がいくつか浮いていた。 晃正:「俺ともう一人とは、ここで行います。行け!ジーランス!ヤミカラス!」 晃正君が出したのは、岩・水タイプのジーランスと、飛行・悪タイプのヤミカラスだった。 てっきり地面タイプを出すと思っていたあたしは、ちょっと驚いていた。 晃正:「先輩、俺が地面タイプ以外を出したことに驚いてるみたいですね。」 蓮華:「ええ。」 晃正:「俺は地面タイプ以外の扱いもうまいですから。師匠に色々学びましたからね。俺は強いですよ。」 晃正君はそう言うけど、水タイプと飛行タイプは電気タイプの攻撃に弱い。が、あたしは浮き島の大きさを確かめて、デンリュウは無理と 察した。浮き島に乗れるのは小さなポケモンであり、どうやらあの浮き島は飛行タイプの止まり木がやっとのようだった。 だとしたら、ここは水タイプでいくしかない。または、飛行タイプで。 蓮華:「決めたわ!パル!アゲハ!お願いね!」 あたしが出した二人は、ある意味心もとないかもしれないポケモンだけど、この二人なら勝てると踏んで出していた。 晃正:「…先輩、俺のポケモンを甘く見ないでくださいよ!」 でも、さすがに晃正君にはそれが分からなかったらしくて、あたしがわざと弱い子を出したと思ったらしく、ちょっと怒ったような声を出していた。 蓮華:「あたしは本気よ。」 晃正:「そうですか…それじゃ、バトル開始です!」 晃正君が叫ぶと、すぐにアゲハとヤミカラス、パルとジーランスが対峙しあい、睨みあっていた。 晃正:「ジーランス、原始の力でアゲハントを墜落させるんだ!ヤミカラスは凍える風でアゲハントの素早さを下げろ!」 蓮華:「パル、アゲハをサポートして!アゲハ、日本晴れよ!」 小さな浮き島がただ浮いているだけの状態でなく、ジーランスの原始の力によって浮上し、アゲハントに向かっていた。 そして同時に凍える風が吹き、アゲハの素早さを下げようとする。 でも、パルが滝登りで飛び出し、鉄壁でアゲハをサポートした。パルの鉄壁は多少の岩や鋼の打撃攻撃にも耐えるほどだから、原始の力を まだあと一回は受けられるくらいだと思う。でも、それでパルが倒れては元も子もなく、アゲハは日本晴れを使用したものの、素早さは凍える風で下がっている。 だから、あたしは次の手を早々と使わなければいけなかった。 晃正:「パールルの鉄壁で攻撃を防ぐか…先輩、考えましたね。だったらジーランス、硬くなれ!そしてパールルにロケット頭突き! ヤミカラスはアゲハントを突付け!」 蓮華:「パル、渦潮よ!アゲハはソーラービームを水面に発射して!」 晃正君はパルの存在があることでアゲハを簡単には倒せないと悟ったらしく、ジーランスが硬くなってロケット頭突きを食らわそうとしていた。 鉄壁を使ったとしても、先ほどの原始の力の防いだすぐの攻撃だ。パルに耐えられるかどうかは分からない。 でも、あたしも何もしないわけじゃなくて、すぐに手を打っていた。 パルは渦潮を使用してジーランスの身動きを制限した。渦潮がなくなるまでの数ターン、ジーランスは身動きが取れないし、彼の使える攻撃には 渦潮を打ち破れるものはない。そして渦潮はプールの水面にもできあがっていた。上から見れば、渦潮がどこにできたかは、十分に分かる。 そして、そこに向かってソーラービームが放たれたのだ。渦潮の中心の、ジーランスに向かって。 晃正:「ジーランス!水の波動で押し返せ!ヤミカラス、アゲハントを翼で打つんだ!」 さすがに状況を見て、渦の中心に攻撃を打てば、水を蒸発させてジーランスを攻撃することは理解できる。そのため、晃正君は速攻で指示を出した。 ソーラービームを水の波動で相殺することを狙い、その隙にアゲハをヤミカラスで攻撃しようとしていた。でも、ダブルバトルだから、あたしにはもう一人いるのだ。 蓮華:「パル、滝登り!そしてヤミカラスを殻で挟むのよ!」 パルが水面から飛び出し、ヤミカラスを殻で挟んだ上体でプールに落下した。 晃正:「ヤミカラス、高速移動で飛び上がれ!水中に引き込まれるな!」 アゲハはヤミカラスの攻撃を受けずに、ソーラービームを狙い通りにジーランスに放つ事ができていた。 日本晴れの効果により水の波動の威力は低く、相殺を狙ったようだけどソーラービームは渦の中心を貫き、水の波動を弾いてジーランスに命中した。 同じ時、殻に挟まれた状態で水に引き込まれたヤミカラスはパルの殻を突付いたり、翼で打ったりしてもがいたのだが、結局は息が続かなくなり、 殻が外れた時には戦闘不能状態になっていた。高速移動を使おうにも、殻に挟まれた片翼が思うように動かなかったのも敗因の一つだった。 泳げなく、身動きが取れないポケモンほど、水に引き込まれたら何もできないものだった。 そしてジーランスも、ソーラービームにより沈没していた。 晃正:「ジーランス…ヤミカラス…。…負けました。先輩、強いですね。」 晃正君は呆然としていたけど、顔を引き締めて奥の部屋に入っていった。でも、背中に影を感じた。 やっぱり、負けるとは思ってなかったんだと思う。晃正君は、つらいことがあっても他人にはそういうところを見せない性格だから。 と、ドアが開いた。でも、入ってきたのは晃正君ではなかった。 海斗:「よぉ!双子島以来だな。」 入ってきたのは海斗先輩だった。どうやら二人目の相手は海斗先輩のようだ。 蓮華:「そうですね。次は海斗先輩が相手なんですか?」 海斗:「ああ。一つ言っておくぞ。このトキワジムは地面タイプのジムだが、8番目のジムだ。 だからすべての属性のポケモンが出される場所でもある。だから簡単に勝とうとは考えても無駄だぞ。」 海斗先輩はそう言うと、すぐにポケモンを出した。ドククラゲとアメタマだった。 あたしはパルとアゲハで続けてみようと思っていたけど、アゲハの疲れを見る限り、変えなきゃ無理だと悟った。 それにパルの鉄壁も持つとは限らない。それに、海斗先輩がジムトレーナー代わりに出たとしたら、次に出そうな人は考えがつく。 多分、清香先輩だろう。でも、今はこのバトルのことを考えなきゃ。 海斗:「どうするんだ?誰を出すんだ?」 蓮華:「あたしは…この二人です!アクアとぎょぴちゃん!お願いね!」 ドククラゲにアクア、アメタマにぎょぴちゃんの力を使って対抗した方が良さそうだと思ったのだ。 海斗:「ミロカロスとトサキントか。考えたな。」 蓮華:「ええ。ミロカロスの特性なら、ドククラゲの攻撃を受けても多少の対抗はできるから。それじゃ、行きますか?」 バトルは始まった。 海斗:「ドククラゲ、水の波動をプールの底に放て!アメタマは水中で影分身!」 ドククラゲが底に放つと、水は大きく揺れた。水の波動が底にぶつかったことで反動し、二つの波動がぶつかり合って 大きな振動を起こしたのだ。 そしてその振動と共にアメタマとドククラゲの姿がぶれて見えた。特にアメタマの影分身は大きくぶれ、 水中での影分身は暴きやすい(水中だとぶれやすくて消えやすい)が、逆に分かりにくくなっていた。 アメタマが振動が起きても影分身を続けているせいだった。だったら影分身を止めちゃえばいい。 蓮華:「ぎょぴちゃん、超音波よ!水の振動を落ち着かせるの!そしてアクア、水中に竜巻を起こして!」 ぎょぴちゃんの超音波の振動で水を再び揺らし、そして水の波動で起きた振動を止めてみようとした。 アメタマとドククラゲの妨害を考えて、アクアには水中に横竜巻を放たせ、邪魔を防ぐと同時に影分身も消させていた…が。 海斗:「ドククラゲ、竜巻にハイドロポンプだ。アメタマ、トサキントをシャドーボールで打て!」 竜巻はドククラゲたちを巻き込もうとしたが、ハイドロポンプによって相殺され、超音波を出し終えて隙のあったトサキントには シャドーボールが放たれていた。そしてぎょぴちゃんはその攻撃を背後からまともに受けてしまった! 蓮華:「ぎょぴちゃん!…眠るのよ!アクア、ぎょぴちゃんをサポートして!」 海斗:「させるか!ドククラゲ、アメタマ、ミロカロスにハイドロポンプだ!」 あたしは考えあってぎょぴちゃんを体力回復のためにも眠らせた。そしてアクアにサポートを指示したが、 海斗先輩は眠ってるぎょぴちゃんよりも先に、アクアを倒そうとしていた。けど、あたしのアクアにはもう一つ秘策があった。 蓮華:「アクア、ミラーコートよ!」 特殊攻撃を倍にして返す技「ミラーコート」発動により、2体のポケモンが放ったハイドロポンプは、とてつもない威力に変わり、アメタマを攻撃していた。 海斗:「何!?」 さすがに水タイプポケモンであっても、水タイプの最大技と呼ばれるハイドロポンプの4倍の威力を受ければダメージは大きく、 アメタマはプールの底に落下していた。 蓮華:「アメタマ、戦闘不能ね。ぎょぴちゃん!寝言よ!」 あたしはぎょぴちゃんに思いっきり叫んだ。 「寝言」とは眠った状態のときだけ、自分の使える技をランダムに選び出し、使用する技で、一撃必殺の技でさえも、 命中力が上がって当たりやすくなるとさえ言われていた。あたしはこれに賭けていた。 多分ぎょぴちゃんが使うのは、角系の打撃技だと思ったから。角ドリルを使用することを狙っていた。 が、それは大きく外れたけど、ぎょぴちゃんの放った技は効果があった。 角からビームのような光線を発射していたのだ。 海斗:「あれは…サイケ光線!ドククラゲ、避けろ!」 海斗先輩はすぐに気づいて指示を出した。でも、ドククラゲも先ほどのハイドロポンプの余波を受けているのだ。 水中にいてあれの余波や衝撃波を受けなかったのは、底にいたぎょぴちゃんと技を放ったアクアくらいだろう。 そして、ドククラゲも沈没した。 海斗:「ドククラゲも戦闘不能か。…パールルの時よりは強くなったな。」 蓮華:「ありがとうございます。でも、そんなことないと思うけど…。あたしはポケモンたちみんなに助けられてここまで来られたから。 自分ひとりで強くなったわけじゃないし。」 海斗:「前にも言ってたらしいな。お前らしさは変わっていない。それはいいことだ。次のトレーナーを倒せばサカキと戦える。 頑張れよ。」 海斗先輩はそう言うと、その場を去った。そしてあたしも、海斗先輩に指示された部屋に入った。 そこは、縦長の岩がたくさん所々に置かれ、地面は砂地になっているバトルフィールドだった。主に岩・地面ポケモンに有利とも言われているけど。 と、誰かが入ってきた。 清香:「ヤッホ〜!海斗にも晃正君にも勝ったみたいね。」 案の定、入ってきたトレーナーは予想通り清香先輩だった。 清香:「あたしに勝てばサカキさんとジム戦ができるわよ。それに、ポケモンたちの回復もする事が可能だから。 でも、そう簡単に倒せるあたしじゃないし、それは分かってるでしょ?」 蓮華:「ええ。十分に。」 清香:「そう。それじゃ始めるわよ!あの時からどれくらい強くなっているか、見せてもらうから。 ノクタス!ツボツボ!出てきて!」 清香先輩のポケモンは、サボネアの進化系で悪・草タイプのカカシ草ポケモン「ノクタス」と、虫・岩タイプで実は防御力と特防力が著しく高いポケモン 「ツボツボ」だった。 蓮華:「このフィールドで、ノクタスとツボツボ…今までで最大の強敵かも。」 ノクタスの特性は砂嵐を起こした時に回避率を上げられる「砂がくれ」だ。このフィールドでは絶対に使いそうである。 あたしはゴーグルを準備していた。 蓮華:「ここは…一か八かね、ワタワタ!ニド君!お願い!」 あたしはツボツボにどれだけ対抗できるか分からないけど、この二人を出した。 清香:「ふぅ〜ん、そういうことね。ノクタス、砂嵐よ!」 あたしがポケモンを出すと、すぐにバトルは始まった。 砂隠れ特性のノクタスと岩タイプのツボツボには砂嵐の特殊効果、徐々に来るダメージを受けないが、あたしのポケモンはそれを受けてしまう。 でも、ここはやるだけのことをする! 蓮華:「ワタワタは宿り木の種、ニド君はどくどく攻撃をツボツボに放つのよ!」 (実際バトルチューブでツボツボに苦戦した自分が考えたのはこの方法です。) 清香:「なるほど。でもさせないわよ!ノクタス、ニドリーノに宿り木の種!ツボツボは眠るのよ!」 眠ればどんな攻撃も回復してしまう「眠る」攻撃でツボツボは眠り始めていた。でも、宿り木の効果は続く。 後はワタワタが神秘の守りとギガドレインを使いながらどこまで対抗できるか、である。 ニド君は砂嵐で視界が利かないが、必死で宿り木の種を避けていた。 蓮華:「ニド君、ノクタスに毒針よ!」 清香:「ニードルアームで毒針をなぎ払って!」 あたしはワタワタに耐久戦の指示を送ってあるので、しばらくはニド君のほうを集中することにしていた。 信頼しているからこういうことはできる。でも。 清香:「ツボツボ、穴を掘って潜って!」 ツボツボが穴を掘るを使ったために、さらに場所の特定が難しくなった。 しかも、直後にニド君が穴を掘る攻撃とニードルアームを受けてしまった! 清香:「蓮華ちゃん、残念でした。砂嵐の中での耐久戦はあたしのほうが有利なの。このまま行っても負けるだけよ。 体制を整えてきた方がいいんじゃない?」 確かにそうかと思った。でも、そんな時にあたしは、岩の中にあれを見つけていた。 こんな奇跡がニビの時みたいに起こるとは思わなかったけど。 蓮華:「ニド君、あの岩に角ドリルよ!」 清香:「えっ?何かする気ね、ノクタス、騙まし討ちで阻止して!」 蓮華:「ワタワタ、ノクタスに頭突きよ!」 ニド君にあれを掘り出させるために角ドリルを使わせた。するとやっぱり阻止しようとする清香先輩。 あれが何かは知らないみたいだけど。そして騙まし討ちがニド君を狙った。 でも、近づいてはっきり攻撃をしようとしたことで、ノクタスは姿が分かってしまっていた。 場所の特定ができれば、ワタワタは攻撃が可能であり、思いっきり頭突きを食らわし、毒の粉を振りかけていた。 毒の粉は指示してなかったけど…。 清香:「ノクタス!」 蓮華:「ワタワタ…指示してないのに。…ニド君、見つけれた?」 あたしは呆気に取られながらもニド君を呼ぶと、ニド君はそれを掘り出し、触れていた。 突如、ニド君の姿が光りだした。 清香:「何ですって!?これは…進化!?」 進化である。 あたしが岩の陰に見つけたのは月の石のかけらだった。 ニド君がニドキングに進化するためのアイテム。進化すれば、地面タイプが加わるから、砂嵐の攻撃を受けないのだ。 清香:「そんな事が起きるなんて…、ノクタス、ニドキングに爆裂パンチよ!ツボツボ、ワタッコにヘドロ爆弾!」 清香先輩は進化に驚きながら、攻撃を放っていた。 蓮華:「ニド君、メガホーンで迎え撃つのよ!ワタッコは避けて日本晴れよ!」 これが実は勝負の一つを決めた。 悪と草の両方を持つノクタスは虫タイプの最大必殺技「メガホーン」で倒れ、砂嵐も日本晴れで姿を消していた。 後は、防御力が高すぎるこいつだけだ。 清香:「ノクタス、戻って。…まさかこうなるとは思わなかったわ。でも、あたしはツボツボだけでも蓮華ちゃんには勝てると思うから。 ツボツボ、我慢するのよ!」 ソーラービームが放たれた直後のことだった。ツボツボは我慢を始めたのだ。 そして解き放たれた我慢はワタッコを倒してしまった。 蓮華:「そんな…。ニド君、爆裂パンチよ!」 あたしはワタッコも倒され、ニド君に賭けようと思った。ツボツボはなかなかの強敵だからだ。 そして、その魔の手はまだあった。ニド君が爆裂パンチではなく、メガホーンを使っているのだ。 蓮華:「えっ!?ニド君、メガホーンじゃなくて爆裂パンチだよ!」 清香:「無駄よ、メガホーンをアンコールで連続使用しているのよ。アンコール状態には何を言っても無駄よ。」 「アンコール」とは相手が最後に出した技を3〜6ターン繰り返させる技だった。 でも、清香先輩もあたしも忘れていたことが、再び(絶対ゲームでは起こらないと思うけど)、奇跡を呼んだ。 ツボツボが突如、倒れたのだ。 清香:「えっ?」 蓮華:「あれっ?」 あたしたちが近づいてみると、すっかり忘れてたけど、ワタッコの宿り木の種の効果がずっと続いていたのだ。 清香:「…まさかこんな感じで終わるとは思わなかったわ。でも、奇跡も運もバトルには付物よ。 このドアを潜れば、ジムリーダーと戦えるわよ。頑張ってね。」 清香先輩は応援しながら、あたしをジムリーダーサカキさんの待つ部屋に案内していた。 その頃。 サカキは別室にいた。そこには二人の少女もいた。一人はナナだったが…。 ナナ:「ふぅ〜、ようやく蓮華ちゃんのバトルが始まるわね。」 サカキ:「俺も久々に腕の振るい我意がありそうだ。最近のトレーナーは弱すぎていかん。」 ナナ:「しょうがないよ。旅をすることやポケモンを貰うことを自分勝手に考える人が増えたんだもん。 最近もウツギ博士の研究所にファーストポケモンを貰いに言った子がリザードンやライチュウや、ボーマンダを要求したらしいし。 育てること自体を面倒くさく思ってる子はかなりいるもの。」 サカキ:「そうだな。しかし、あの少女たちは違う。自分のポケモンを一から育て上げ、ここまで来たからな。」 ナナ:「無謀な挑戦はしてないもの。最近来たのよ、まだリーグにも挑戦してないのに、あたしのところに来たトレーナーが。」 ??:「えっ!?」 ナナ:「驚くでしょうね。その子、バッジ8個集めたから、リーグでなくてもあたしに勝てるって思ったみたい。 しっかりとやっておいたから、もう来ないでしょうね。」 サカキ:「ボコボコにしたのか?」 ナナ:「ええ。ちょっとプライドをなくすくらい。・・・それより、蓮華ちゃんたちは本当に頑張ってきたわね。 ??ちゃんは、向こうでも色々と見ているんでしょ?」 ??:「ええ。蓮華ちゃんたちは逆境にめげずに頑張ってるから。あたしが向こうでもしっかり見ているんだもの。 それはあたしもよく分かるよ。でも、あたしがここにいるって知ったらどう思うんだろう。」 ナナ:「驚くかもね。実は蓮華ちゃんたちよりも前からこの世界にちょくちょく来てた人がいたなんて知ったら。」 ??:「だね。」 サカキ:「それでは行ってくるとしよう。二人はここで見ているといい。ここには俺以外は君たち二人しか、入る事ができないからな。」 ナナ:「了解。」 ??:「分かったわ。」 蓮華:「ふぅ〜、ようやくサカキさんとのジム戦だ。」 あたしはドキドキしていた。 キレイハナ:「あんまり緊張しすぎると体に毒だよ。」 ボールの中からはキレイハナや、みんなの声が聞こえる。 キレイハナ以外は鳴き声でしかないけど、心は伝わってくる。みんな、あたしのことを励ましてくれている。 そこへサカキさんが入ってきた。審判は晃正君がやるようだ。 サカキ:「これが最後のジム戦だ。俺に勝てばグリーンバッジをゲットすると共に、ポケモンリーグに出場する事が可能になる。 スペース団を解散させ、7つのジムを攻略し、ポケモンたちとの絆を深めてきた君とのバトル、楽しませてもらうぞ。晃正、始めろ。」 晃正:「はい!ただいまからトキワジム、ジムリーダーサカキとグロウタウンの蓮華の試合を始めます。 使用ポケモンは4体。チャレンジャーのみ、ポケモンの交代が可能となります。それでは、試合開始!」 サカキ:「俺の最初のポケモンはこいつだ!行け!スピアー!」 サカキさんの出したのはあたしのはりくんよりも少し大きいスピアーだった。 サカキ:「俺はこの町の出身だからな、こいつがファーストポケモンなのさ。地面系統の使い手であるが、それ以外のポケモンも強いぞ。」 蓮華:「だったらあたしは…フィル!お願いね!」 あたしはエスパータイプのフィルで対抗することにした。 最近の特訓でスピード技重視系にもなってきているからだ。 サカキ:「スピアー、エーフィにミサイル針だ。」 蓮華:「フィル、電光石火でかわして、影分身よ!そしてサイケ光線!」 スピアーのミサイル針はエスパータイプのフィルにも効果抜群の技。だから電光石火でかわし、影分身で霍乱させて、 サイケ光線を放たせた。しかし。 サカキ:「スピアー、サイケ光線をそのまま受けろ。そしてどれが発射しているかを見極め、ダブルニードルだ!」 スピアーはサイケ光線を受けながら、光線を発射しているフィルの本体に突っ込んできた。 蓮華:「フィル、リフレクタよ!」 避ける間もないから、ここは打撃攻撃を少しでも半減させるためにリフレクタを使わせた。 サカキ:「ならば、瓦割りだ!」 スピアーはダブルニードルを使った直後、瓦割りでリフレクタごとフィルを吹っ飛ばした。 ダブルニードルでもかなりのダメージを受けたのだ。フィルが危ない! サカキ:「どうやら選択を間違ったようだな。スピアー、とどめの居合切りだ!」 スピアーはフィルに向かって迫ってきた。ここは…そうだ! 蓮華:「フィル、フラッシュよ!」 フィルはスピアーが至近距離に入った瞬間を狙い、まともにフラッシュを浴びせた。スピアーはフラッシュを浴びて、 居合切りが全く見当違いの方向に向かう。 蓮華:「今のうちよ、日本晴れから朝の日差し!」 日本晴れで天候を良くし、朝の日差しによってフィルは回復した。 サカキ:「フラッシュか。スピアー、ソーラービームだ!」 蓮華:「フィル、瞑想よ!そしてサイコキネシス!」 フィルは特防が高いので、ソーラービームを受けても簡単には倒れず、瞑想を使ってすぐにサイコキネシスをスピアーに放った。 スピアーは弱点のエスパー攻撃を受けたことでついに倒れた。 先ほどのサイケ光線のダメージも祟ったようだ。 晃正:「スピアー戦闘不能!エーフィの勝利!」 サカキ:「技の出すタイミングは遅いが、なかなかのテクニックは持ち合わせているようだな。 しかし、そのタイミングの遅さ、決断の鈍さは裏目に出るぞ。ダグドリオ!出て来い!」 サカキさんの2番手はあたしのディグの進化系のダグドリオだった。 蓮華:「あたしは決めてるわよ!タマちゃん!お願いね!」 あたしは地面タイプに対抗できる氷タイプのポケモン、タマザラシのタマちゃんを出した。 サカキ:「タマザラシか。・・・ダグトリオ、岩なだれだ!」 蓮華:「自分に岩石封じを使って岩から身を守るのよ!そして粉雪!」 ダグトリオの岩なだれ攻撃にあたしの対抗手段はない。だったら、これしかなかった。 タマちゃんの前後左右から飛び出した岩はタマちゃんの動きを封じ、それと同時に飛んでくる岩とぶつかって相殺した。 氷タイプの弱点の岩攻撃を自分に放ったわけだが、ゴムボールくらい弾力のあるタマちゃんには打撃攻撃は通じないに等しく、 あまりダメージは受けていなかった。そしてダグトリオには粉雪が降りかかった。 サカキ:「くっ、穴を掘って地面に潜れ!」 ダグトリオは地面に潜った。素早さの早いダグトリオの攻撃に追いつくのは難しい。でも、地面に潜ったならこれかな。 蓮華:「うふふ…、タマちゃん、水遊びよ!」 相手は炎タイプではないが、タマちゃんは水遊びを使った。 サカキ:「水遊びだと?何をする気かわからないが、勝負はもう決まる。ダグトリオ、穴を掘る攻撃!そしてトライアタックだ!」 「トライアタック」は炎、雷、氷属性の光線を3つまとめて同時に発射する技。 タマちゃんはそれをまともに受けてしまい、麻痺状態になっってしまった。 サカキ:「水遊びなどを決めるからこうなるのだ。その状態でダグトリオに勝てるというのか?」 どうやらまだばれていないようだった。だからあたしは勝負に出た。 蓮華:「ええ、勝てるわよ!タマザラシ、吹雪よ!」 サカキ:「ダグトリオ、地面に潜…何!?」 あたしがさっきまでやっていたのは、フィールド上に水をいっぱい撒くことだった。 そして水は地面にしみこんだ。そこに吹雪が起きれば、地面は凍ってしまう。そして、ダグトリオのいる地面も凍り、 ダグトリオは身動きが取れなくなっていた。地面にもぐれたとしても、水をいっぱい含み、凍った地面の中に居続けることは ダグトリオにはできない。形勢逆転だった。 サカキ:「そういうことだったか。意外なことをやる子だな。前にジョウトリーグでフィールドを溶岩状態にしたあいつに 似ているな。戻れ、ダグトリオ。晃正、俺のダグトリオは戦意喪失にしておけ。」 晃正:「え…、しかしまだ…。」 サカキ:「晃正!俺の言う事が聞けないのか?ポケモンのトレーナーがそう決めたことだ。 現にダグトリオをあの状態で出しておいたとしても、日本晴れを使ったとしても勝てる可能性は少ない! お前はまだ知識がしっかり身についてないようだな。ジム戦終了後はみっちりと教えてやる。」 晃正:「は、はい…。ダグトリオ、戦意喪失により戦闘不能!タマザラシの勝利!」 今、何となくだけど師弟関係の内情が見えた気がした。スパルタに近いことでもされているのかもしれない。 大変そうだ。 まぁ、あたしは関係ないけど。勝利2つ目。 サカキ:「見せるほどのものでもないが、見苦しいものを見せたな。」 蓮華:「いえ、別に。」 サカキ:「こいつの先ほどのバトルにも油断が大きく見られたし、君とのバトルが終わったあとはしっかりしごかなければいけないと 思っているところだ。俺は俺の最終進化系のポケモンに対して君が進化してないポケモンを出したとしても油断はしない。 バトルの行方は最後までわからないからな。こいつはそれを理解できていないから、まだ半人前に近いところにしかいない。 君のようなトレーナーになるのはまだまだ先だろうな。 だが、君たちが元の世界に戻るまでには、もう少しまともな奴にするつもりだ。実際、人間としても妖怪としても、晃正は未熟だからな。 分かってるか?晃正!」 晃正:「…えっ?あっ!はい!」 どうやらぼんやりしていたらしい。根は真面目な努力家なんだけど、抜けてる時があるんだよね、晃正君は。 そして今、あたしの目の前だけど、再び晃正君は怒鳴られていた。 蓮華:「みんな大変だね。」 数分後。再びバトルは開始された。 サカキ:「3番目はこいつだ!ペルシアン、行け!」 サカキさんが出したのはペルシアンだった。多分、ニャースがライバル視していたポケモンだと思う。 蓮華:「あたしはソルル!頼んだわよ!」 あたしが対抗して出したのはソルルだ。というより、ソルルとキレイハナはジム戦に必ず出すと決めていたからこうなっていた。 サカキ:「ペルシアン、嫌な音だ!そして切り裂く攻撃だ!」 蓮華:「ソルル、集中するのよ!剣の舞!そしてカマイタチよ!」 ペルシアンが地面をつめで引っかき、強烈な不協和音を出した。ソルルはそれに耐え、剣の舞を行い、 切り裂く攻撃を行うために向かってくるペルシアンにカマイタチを3つ放った。 素早さのあるペルシアンはそれを避けるが、3つもあるために、全てを避けることはできなかった。 サカキ:「ならばペルシアン、いちゃもんをつけてやれ!」 いちゃもんを使われると、カマイタチは次の攻撃の時には出せない。 サカキ:「そして挑発をしろ。」 蓮華:「ヤバイ!ソルル、マジックコート発動よ!」 ここで挑発を出されたら攻撃しかできなくなる。そう思い、マジックコートが発動され、それに反射され、 ペルシアンは自分を自分で挑発していた。 サカキ:「くっ…、ペルシアン、今度は10万ボルトだ!」 蓮華:「ソルル、影分身でかわして!切り裂く攻撃よ!」 10万ボルトは分身に当たり、切り裂く攻撃が逆にペルシアンを切り付けた。さすがのペルシアンもフラフラだった。 サカキ:「ちょっと熱くなりすぎたな。熱くなりすぎはバトルでは失敗の元のようだ。戻れ、ペルシアン!」 サカキさんは晃正君を怒ったときの怒りの熱が冷めてなかったらしく、そのままバトルを行ったために熱くなりすぎて、 ソルルの攻撃を逆に受けたらしい。 ペルシアンも戦意喪失で戻されていた。 晃正:「ペルシアン、戦意喪失…師匠、いいんですか?」 サカキ:「ああ。彼女も彼女のポケモンも、お前よりもよく育てられているからな。 お前には納得できないかもしれないが、彼女は十分に戦えているし、このまま戦ってもペルシアンは十分に力を出せない。 だから戻したのさ。さっきも言ったが少しは理解できないものなのか?」 晃正:「すいません。」 サカキ:「蓮華君。」 蓮華:「はい。」 サカキ:「君は久々に楽しいバトルを見せてくれた。後はこいつが残っているが、多分、君が勝つことになると思う。 しかし、俺は正々堂々とぶつかるからな。楽しいバトルを見せてくれ。サイドン!出て来い!」 サカキさんの最後のポケモンはサイドンだった。あたしのポケモンはこの子しかなくて、 蓮華:「キレイハナ、最後だよ!頑張るよ!」 キレイハナ:「了解!」 キレイハナとサイドンのバトルが行われた。これに関しては書かないけど、あたしもキレイハナも、サカキさんもサイドンも、 十分に楽しめ、いいバトルだったといえるバトルができたことは言っておきます。 そしてあたしが勝利しました。サイドンもメガホーンや火炎放射なども使うので、キレイハナもHPが残り1に近いところで終わってました。 晃正:「サイドン戦闘不能!キレイハナの勝利!よってこの勝負、グロウタウンの蓮華の勝ち!」 あたしはこうしてジム戦を勝利した。 サカキ:「君とのバトルはいいものだった。この調子でポケモンたちとの絆を深め、リーグ戦でも頑張ってほしいところだ。」 蓮華:「はい!ありがとうございます。あたしも楽しかったです。」 そしてあたしはバッジを貰い、ポケモンセンターに手続きに行った。 (ジムを出てすぐに、晃正君らしき声の、とてつもない悲鳴を聞いた。多分、説教とみっちり教育の嵐が起きているんだと思う。) あたしは明日には出発して、数日後にはポケモンリーグだ! ジム戦終了後3時間後。 ??:「それじゃ、あたしは一旦あっちの世界に帰るね。」 ナナ:「了解。またポケモンリーグの時に来るといいよ。」 ??:「分かってるよ。その予定だから。」 サカキ:「また遊びに来るといい。」 ??:「はい、ありがとうございます。晃正君のこと、よろしくお願いしますね。根は真面目な努力家だから。」 サカキ:「ああ。今日は説教をするだけで疲れきって倒れているが、あいつも影では頑張っているからな。 ただ、自覚が少ないからああやって他人の目の前で言わなければ、あいつ自身は焦って理解しようともしない。 教えるのもかなり大変だ。」 ??:「うふふ…、そうでしょうね。それじゃ、一度帰ります。タイム、出てきて!ロゼリア、帰るよ。」 ナナ:「バイバイ!??ちゃん!」 ??:「バイバイ!ナナちゃん。」 そんな中、トキワシティに一匹のポケモンが舞い降り、気まぐれに光線を放って消えた。 蓮華:「ん?今の光は一体…?」 その光線を受けたのは蓮華だったが、蓮華が受ける前に蓮華をかばったものがいた。 ニドキングのニド君だった。 だが。 蓮華:「ニ、ニド君?」 キレイハナ:「嘘…、こんなことって…。」 あたしもキレイハナも、ニド君も驚いていた。 目の前でニド君はニドリーノに「退化」していたのだ。 キレイハナ:「戻っちゃった…」 蓮華:「こんなことってあるの?」 キレイハナ:「分かんないよ、誰の仕業か分からないけど、いつかまた、月の石を手に入れて 進化すればいいだけじゃない?」 蓮華:「…そうかもね。ニド君、また頑張ろうね。」 あたしは一番驚いているニド君を優しく撫でかけながら言うのでした。