蓮華:「え〜〜〜!嘘っ!」 志穂:「灯台下暗しとはこのことだったのね…」 美香:「律ちゃんのお兄さんがねぇ〜…」 なずな:「意外と言えば意外。」 あたしのリーグ初試合は自分勝手な爆弾犯のトンパのせいで滅茶苦茶にされてしまった。 審判員は二人ともポケモンの攻撃によって倒され、草のフィールドは大爆発でボロボロ。 そしてあたしも人質に取られちゃった時だった。上空に魔方陣が現れ、落下レンガ二つと一緒に降りてきたのは あたしたちの親友の律子だった。 しかも一緒にいたのがセレビィで、セレビィの癒しの鈴は草のフィールドを元通りに直し、怪我人を回復させ、 操られたポケモンを元に戻していた。 トンパが退場し、あたしの勝利になって、ポケモンリーグも予定通り進められることにもなった。 あっという間の出来事だった。 ナナが全て指揮を取ってやってのけてたのだ。 49.水のステージ!魔術師のリベンジ そしてあたしは、美香、志穂ちゃん、なずなちゃんと一緒に律子を問い詰めていた。 聞くところによると、ナナも知ってたらしいし、あたしたちよりも前から知り合いだったらしかった。すると…。 律子:「それは謝るよ、ゴメンね。実は、あたしのお兄ちゃんがこっちでポケモンリーグに出て優勝してて、 ナナちゃんとも互角に戦ったくらいなのよ。5年前に行方不明になったかと思うと、セレビィと一緒に帰って来たし。」 と言ったのだ。 あたしたちは驚愕以上の驚愕を受けた。 説明すると、5年前にも爆発事故が現実世界であったのだ。あたしも何となく覚えてる。確か自動車テロ…。 その時に巻き込まれたのが律子のお兄さんで、高校に行く途中だったらしい。が、焼き焦げたかばんを残して お兄さんは行方不明になり、8ヵ月後にセレビィに伴われて突然帰って来たらしい。 律子:「お兄ちゃんの骨も何も見つからなかったから、葬式は遺体が見つかってからすることにしていたの。 世間では葬式代がもったいないから、とか言われてたんだけどね。親戚もうるさかったけど、あたしはお兄ちゃんが 生きてると思ってたし。」 そしてセレビィと、セレビィの力で現れたナナの説明もあり、律子の家族はお兄さんが体験したことを知ったらしい。 そして、お兄さんはポケモンはナナに預け、セレビィをナナに預けたらしい。 律子:「爆破テロにあったバス、死者はいなかったんだけど、そのバスはお兄ちゃんが入る高校の寮の専用バスだったの。 お兄ちゃんは高校の寮に入らなきゃいけなかったから、だからあたしがセレビィを貰ったの。」 そしてナナと親友になり、実はジムリーダーの何人かとも知り合いだったらしい。 律子:「蓮華の最後のジム戦も見てたのよ。」 どうやら隠し部屋の中で見ていたみたいだし。 律子:「と、こういうわけ。ゴメンね。」 律子は申し訳なさそうな表情をしていた。 蓮華:「…いいよ。」 志穂:「そうね。」 美香:「怒る気なんてないし。」 なずな:「親友だもん。」 律子:「ところで、蓮華の次の試合、そろそろじゃない?」 蓮華:「あ、本当だ…行かなきゃ。」 今日は実は草のフィールドともう一つ、トンパが退場されたことで繰り上がってきた、水のフィールドでのバトルがあったのだ。 あたしは背に声援を受け、水のフィールドの会場に向かった。 ただ、キレイハナを含める何匹かはまだポケモンセンターに治療中だ。 あたしは誰を使おうか…。 水のフィールドは大きなプールに丸くて白い土台が円状に6つ並べられていた。 ハナダジムのフィールドにも似ていた。多分、どっちかが真似してるのだろう。 そして、この会場も結構沸いていた。さっきのあたしのバトルや、予選のあたしのバトルの噂を聞いている人が多いらしく、 それで見に来た人が多いというのを入り口でナナから聞いた。 ナナ:「対戦相手のデータはこれよ。」 あたしはまだ対戦相手自体を知らないし、データさえも見ていなかったので、ナナの行為はありがたかった。 ナナ:「だって、あたしは蓮華に勝ってもらいたいもの。あたしの元から旅立ったのよ、一応蓮華は。」 蓮華:「どうもありがと。で、えっと、相手は…」 あたしの次の相手はコウスケという人だった。 ジャグラー見習いで、この人の師匠がだいぶ前の大会でキングラー一匹に敗れてしまったらしい。 その時の屈辱を晴らすつもりのようだ。持っているポケモンは様々だったため、何を出してくるかは検討つかなかった。 ナナ:「ただ、これだけは言っておくわ。水のフィールドでの最も有利な戦い方、それは、 フィールドをうまく使えるポケモン、フィールドに関係なく戦えるポケモン、そして、あの浮き島をうまく使えるポケモンよ。 この3つを覚えておいて。彼の師匠だった人はそれをうまく活用したわ。最終的に負けたけど。 でも、彼もその戦い方をする可能性があるから。」 蓮華:「分かった。頑張ってみるね。」 そしてあたしは水のフィールドに入ったのでした。 コウスケというトレーナーはパイナップルのふさのような茶色の髪を緑のバンダナで上げた感じの髪形をした青年で、 ナナが言ってたような嫌味な感じはなかった。 さっきナナは師匠のトレーナーがすごい嫌味なプライド人間と言ってたけど、この人はそんな感じじゃなく、全然爽やかな人だった。 そしてあたしの目の前でいきなり目の前にボールを取り出し、ジャグリングを始めていた。 コウスケ:「君との勝負、楽しんでみたいな。」 蓮華:「あたしもです。でも、負けませんから。」 審判:「ただいまより、ウォールタウン出身コウスケ選手と、グロウタウン出身蓮華選手の試合を始めます。 使用ポケモンは3体。ポケモンの交代は認めます。しかし、最後の3体目での自爆行為は失格とみなしますので 気をつけるように。それでは試合開始!」 コウスケ:「それでは、僕の最初のポケモン、ノクタス、ステージオン!」 彼の最初のポケモンはサボネアの進化系で、草・悪タイプのかかしグサポケモンのノクタスだった。 蓮華:「あたしは…メノノ!お願い!」 あたしは水のフィールドらしく、メノノを出した。 水タイプだけど、毒タイプでもあるのだ。草タイプの攻撃の効果を多少薄くすることはできるだろう。 コウスケ:「メノクラゲか…。毒タイプ、そしてヘドロ液の特性、これらがあるからメガドレインは使えないな。 しかし、ノクタス、目覚めるパワーだ!」 蓮華:「メノノ、避けて!」 ノクタスの目覚めるパワーが土台を大きく抉るように、メノノの横を通り過ぎた。 蓮華:「水に飛び込んで攻撃をかわすのよ!」 メノノは水に飛び込んだ。 コウスケ:「水中に逃げても、僕のノクタスの攻撃は逃れられないよ。 ノクタス、ニードルアームを連続で水中に刺し続けるんだ!メノクラゲを水面に誘い出せ!」 ノクタスは手の部分の針を伸ばし、水中に向かって伸ばし続けた。あたしは、メノノにバリアで防ぐように指示を出し続けていたけど、 それでもメノノは水底に向かってくる攻撃を逃れるために水面に上がってきてしまった。 コウスケ:「今だ、ノクタス、種マシンガンだ!」 ノクタスは水面に出てきたメノノに対し、種マシンガンを乱射し始めていた。そして。 コウスケ:「極めつけはこれだ!ノクタス、雷パンチだ!」 蓮華:「えぇ!嘘っ!」 水に向かってノクタスの雷パンチが叩き込まれた。放電する水のフィールド。 そして水中には…あ、でも大丈夫か。メノノには大丈夫なはず。次がチャンスね。 放電が終わった時、水面にメノノが顔を出した。 メノノは水中内で堪えていたようだ。 コウスケ:「何!?僕のノクタスの攻撃を耐えるとは…」 蓮華:「えへへ、あたしのメノノは簡単には倒されないのよ。メノノ、電磁波よ!」 メノノはさっきの攻撃で溜めた電気を電磁波として放出し、ノクタスを麻痺状態にさせていた。 コウスケ:「麻痺…。だったらノクタス、根を張って回復するんだ!そしてミサイル針だ!」 ノクタスは痺れる体を動かしながら根を張り、そしてミサイル針を体中から放出し始めた。 蓮華:「メノノ、神秘の守りよ!そしてヘドロ爆弾!」 神秘の守りがミサイル針を防ぎ、そして針攻撃を飲み込むような形でヘドロ爆弾がノクタスに降りかかった。 ノクタスは毒タイプではないため、毒攻撃には弱く、ヘドロ爆弾を受けてフラフラになっていた。 コウスケ:「ノクタス!」 蓮華:「最後よ。メノノ、居合い切り!」 メノノは水面から飛び出し、ノクタスに対して一刀両断、居合い切りをやった。 これにより、ノクタスはついに倒れた。 審判:「ノクタス戦闘不能!メノクラゲの勝利!」 と、その時だった。メノノの体が強く光り始めたのだ。そして、メノノはドククラゲに進化していた。 ナナ:「あ…」 律子:「これって…」 二人はビデオで見たある状況を思い出していた。そして同時に。 司会:「おおっと、蓮華選手のメノクラゲ、ノクタスに勝利したことで経験値が溜まったのか、ドククラゲに進化しました! 大会中に進化することは非常に珍しく、これは数年前に現在ポケモンマスターのサトシ選手がクラブをキングラーに 進化させたことに次ぐ、2回目の出来事になります。」 司会者(一応存在している)がメノクラゲからドククラゲへの進化を強く熱狂して喋っていた。 蓮華:「サトシ選手?そうなんだぁ…、ナナが言ってたのはサトシさんのことだったのね。」 あたしは驚きを感じた。が、一緒に思い出した。 確か、その時サトシ選手が戦ったのって…。 あたしが思い出したのと同時に、あたしが反対側からものすごい嫉妬の念を感じた。ほぼ、敵意を剥き出されている。 コウスケ:「師匠の恨み…、君にやられたことで再び俺も思い出したぞ。 ハリーセン、進化したてのドククラゲを倒せ!」 コウスケ選手はどうやら、彼の師匠が倒された時から弟子だったらしく、そのことを思い出し、偶然同じ状況になっている あたしをサトシさんの姿と合わせている様だ。 コウスケ:「ハリーセン、高速移動でドククラゲを翻弄するんだ!」 ハリーセンはドククラゲのいる周囲、正確には6つの土台の周囲をすごい勢いで回り始めた。 途中途中、土台によってハリーセンの姿は見えなくなるために厄介だった。 コウスケ:「ハリーセン、背後に回ってミサイル針、そして右方向からはスピードスターだ! 赤い球の辺りを狙え!そこはドククラゲの防御の弱いところだからな!」 一般にメノクラゲやドククラゲの頭の水色っぽい部分、あそこは結構防御力が低いのだ。 特殊防御力は高いんだけど、防御力が弱いところ、そこがメノクラゲやドククラゲの弱点だったりした。 でも、そこを狙うんだったら、どうするかは決めれる。 蓮華:「メノノ、フラッシュよ!」 メノノはハリーセンの存在を背後に感じた時、頭の二つの赤い球から赤い、強烈な光を放出した。 ハリーセンは自ら飛び出した直後、フラッシュを受け、土台に落下していた。 そしてなかなか攻撃に出れずにいる。フラッシュは元々、命中力を下げる技、いわゆる目くらましだが、 メノノが放った攻撃は、普通に光とは別に赤い光だったから、さらに別の効果を生んだのかもしれない。 でもとにかく。 蓮華:「今よ!メノノ、冷凍ビーム!」 ここは攻撃に出るべきだった。 メノノは土台に先に冷凍ビームを当て、そして包み込むようにしてハリーセンを氷状態に変えた。 が、ハリーセンはまだ動こうとしている。 コウスケ:「凍っただけじゃ、ハリーセンは倒れない!ハリーセン、小さくなって脱出するんだ!」 ハリーセンは体を小さくした。そして、フィールドの水を吸って体を元の大きさに戻していた。 さすがは風船ポケモンと言うべきか。 コウスケ:「師匠の屈辱を教えろ!シャドーボール!」 シャドーボールがメノノを迫る。でも。 蓮華:「メノノ、スパークよ!」 メノノは体に電気を纏うような形で電気をフィールド全体に放出した。 メノノはゲットした時からだけど、実験から生まれたからなのか、電気攻撃が全く効かないのだ。 そして、逆に電気攻撃に弱いのがハリーセンだった。 シャドーボールはメノノに当たったものの、スパークの放電で威力はほとんど相殺されており、スパークによって ハリーセンは水の中に沈んでいった。 審判:「ハリーセン戦闘不能!ドククラゲの勝利!」 あたしはメノノと共に、ポケモンを2体撃破した。 コウスケ:「くぅ…、こうなったらお前が頼りだ!エアームド!」 コウスケ選手の最後のポケモンは鎧鳥ポケモンで、飛行・鋼タイプのエアームドだった。 声や表情からして、かなりプッツンした状態のようだ。 さすがにあたしはサトシさんと結構同じ状態になっているわけだから、コウスケ選手が切れるのも分からないわけではなかった。 でも、ここはメノノで行く! 蓮華:「メノノ、このまま行くよ!」 コウスケ:「させるか!エアームド、風起こしでドククラゲを土台に打ち上げてやれ!」 強烈な風はメノノを巻き上げ、吹き飛ばしの威力もあり、メノノは土台に打ち上げられていた。 コウスケ:「続いて。鋼の翼で頭を撃ってやれ!そしてエアカッターだ!」 エアームドの一方的な攻撃は続いた。 あたしはメノノにバリアを指示し、また嫌な音や超音波で攻撃を回避しようとし続けてた。でも、それは長く続くわけじゃない。 次第に劣勢になり始めていた。 メノノが苦悶の表情を出し始めたのだ。 コウスケ:「どうだ、エアームドの力を見くびりすぎたようだな。最後の一撃だ!ドリルくちばしだ!」 エアームドは旋回し始め、急降下をし始めた。そしてくちばしが鋭くメノノに向かってくる。 観客もさすがにかなり騒ぎ始めていた。 あたしが負ける瞬間なのかと見ているのかもしれない。でも、あたしはこの時、観客の声にかき消されながらも、 ある指示を出した。 そしてついに、ドリルくちばしはメノノに突き刺さった。観客は衝撃の瞬間を見て、あたしは青ざめた。 コウスケ:「どうだ!見たか!」 コウスケ選手は初めの爽やかぶりとは打って変わって、もはや残忍な青年だった。 嫉妬の念は本当に恐ろしいのかもしれない。 でも、あたし、負けてないよ。 突如、エアームドのくちばしが放電し始めた。そしてメノノの姿が薄れ始めている。 コウスケ:「何!?」 そして、エアームドは放電すると同時に、氷漬になり、それと同時にメノノの姿が背後から現れた。 蓮華:「あなたのエアームドがドリルくちばしを決める直前に、影分身の指示を出したの。 観客の皆様方の声のおかげで、あなたにもばれずに済んだわけよ。そして、スパークと冷凍ビームの味はどうだった?」 エアームドはスパークを受け、そして冷凍ビームによって倒されていた。 審判:「エアームド、戦闘不能!よって勝者、グロウタウンの蓮華選手!」 蓮華:「ヤッタァ!やったね、メノノ!」 メノノ:「ドック〜!」 あたしとメノノの喜びや、観客の声援とは裏腹に、 コウスケ:「師匠…すいません…、俺…」 コウスケ選手はがっかりした状態でうなだれていた。どうやら負けたショックで元の性格に戻ったようだった。 でも、あたしは全く無視を決め込んでいた。 さっきまで、すごく残忍な感じだったもの。 後は氷のフィールドと、岩のフィールド。あたしは絶対に、二つとも勝ってやるんだから! その時は、36の仲間が全員元気な時に。