キレイハナ:「そう、水のフィールドを突破したの。」 蓮華:「ええ。メノノのおかげでね。」 あたしは試合が終わってすぐに、ポケモンセンターのキレイハナたちのところに行った。 50.憧れ優先試合!そして敗北公認試合 トンパの爆弾騒ぎのせいで怪我をしたキレイハナや、自爆、大爆発に巻き込まれたタマちゃんや、ヒメ、ドラちゃんが ここで治療を受けている。 キレイハナ:「メノノのおかげかぁ。進化したんだって?」 蓮華:「ええ。ドククラゲに進化して、3体も一気に撃破したのよ。みんな強くなったわよね。」 キレイハナ:「そうね。でも、メノノは実力派だし、色んなバトルで勝利してたし。 そろそろ進化しててもおかしくないじゃない。進化の時期が来たってことよ。石で進化するきっぴーたちは これ以上進化するつもりがないらしいから別にして、他にもまだ進化前の子は多いわよ。 試合中に進化する子は、他にもいるかもね。」 キレイハナの言うとおりかもしれない気がした。 キレイハナ自身、ニビジム戦で進化した口なのだ。 後、レベルや経験値で進化する子はサンドのサン、タマザラシのタマちゃん、フシギダネのだねっち、ハクリュウのリュウ、 コドラのドラちゃん、ディグダのディグの6人だった。 サンやリュウはともかく、だねっちやタマちゃんはあまりバトルに出してないから、進化するかは分からない。 でも、あたしにしては、進化してもしなくても、みんなそれなりに強いから全然いいんだけどね。 あたしはもう少し様子見のキレイハナたち4人と、今日戦って十分休養をとるべきのメノノをジョーイさんに預け、 美香と菜々美ちゃんがいるコテージに戻った。 美香:「蓮華、おかえり!」 菜々美:「キレイハナはどうだったの?」 蓮華:「十分元気だった。でも、まだちょっと様子見みたいなの。だから、明日の岩と氷のフィールドには 出れそうにないかな。」 実際、キレイハナやメノノ以外に、ドラちゃんやタマちゃんが出れないのは正直痛かった。 特にタマちゃんと氷のフィールドは、特に相性がいいからだった。 美香:「そっかぁ。でも、蓮華なら大丈夫じゃないかな?あたしの分も、頑張ってね。」 蓮華:「ええ。…って、美香、駄目だったの?」 美香:「えへへ…、あたしも水のフィールドで戦ったけど、エイパムとマリルリがランターンに敗れちゃったのよ。 海ちゃんのキングドラで倒したけど、次に出たのがカイリュウでね、あたしはもうどう足掻いても無理だったのよ。」 美香が戦った相手は、ジョウトのアクアカップで準優勝した経歴の持ち主らしく、水のフィールドをうまく利用したらしい。 美香:「水のフィールドを使い慣れてる人には、さすがにあたしでも無理かな。」 残念かと思えば、美香はさほど残念がっていなかった。 元々、コーディネーター志望のため、ポケモンリーグに出たのは力試しだったのだ。 だから、自分より強いトレーナーと戦った経験は、この先のコンテストで役立つのかもしれない。 そう思っているのだろう。 菜々美:「そういえば、哲也先輩と志穂ちゃんは4つのステージを勝ち抜いたらしいよ。」 蓮華:「そうなんだぁ…。でも、4つのステージのバトルは、あたしの明日の氷のフィールドで全部が終わるし、 あたしも頑張って次のステージバトルに行ける様に頑張らなきゃ。 キレイハナが戦えなきゃ、かわいそうだもの。」 それからあたしは、明日の対戦相手のデータを見ることにした。 蓮華:「明日の相手は…岩のフィールドでマサトシ選手、12歳…年下かぁ。」 あたしがぼやくと、美香と菜々美ちゃんが目撃情報を話してくれた。 美香:「あ、あたし見たよ、この子のバトル。草のフィールドでフシギダネとピカチュウとベトベトンを使ってたわ。 後、氷のフィールドではゼニガメとキングラーとピカチュウを使ってたかな。」 菜々美:「あたしも見たわよ。水のフィールドで、キングラーとゼニガメとピカチュウを使ってたわ。 でも、キングラーで無理に戦おうとして、注意を受けてたのを見かけたかな。何か、キングラー一匹で行きたかったみたい。 それだけ、何かの思い入れがあるのかしら?」 氷や水のフィールドでは同じポケモン。しかも、所持しているポケモン自体も少ないし。 あれっ?でも、このポケモンの種類とか、どこかで見たことある。どこだっけ。 律子:「ポケモンマスターのサトシさんと同じよ。」 そう思ったとき、律子がやってきた。さっきポケモンセンターからの帰りに会い、後でコテージによると言われたのだ。 それにしても、見たことあるわけだ。 蓮華:「あ、律子!来たんだ。」 律子:「ええ。蓮華、美香、菜々美、この子はね、ポケモンマスターのサトシさんに憧れてるのよ。 だからサトシさんがゲットしたポケモンを集めて育てて、この大会に臨んでいるの。それぞれのフィールドで使ったポケモンも、 サトシさんがカントウリーグでベスト16に入ったときに使ったポケモンなのよ。」 蓮華:「ふぅ〜ん。そうだったの。」 美香:「それじゃ、次に岩のフィールドで使うポケモンは…えっと、過去のデータからすると…ゼニガメとフシギダネ、 そしてピカチュウね。」 菜々美:「でも、このデータがあるから、多少、何かの手を打ってくる可能性はない?」 律子:「ないと思うわ。彼はこのパソコンのデータを見たとしても、憧れのサトシさんの使ったポケモンのままで、 挑んでくる可能性が高いわよ。それに、今の蓮華はキレイハナというパートナーがいないわ。 それを突いて来るかも知れないし。蓮華、ここは慎重に決めなきゃ駄目よ。」 蓮華:「了解!」 あたしはすぐにポケモン選びに取り掛かろうとした。 しかし。 菜々美:「ねえ、明日は氷のフィールドもあるでしょ?氷のフィールドで戦う可能性があるのは一人だけだし。 そのトレーナーに対する対抗策を考えておくのも必要じゃない?」 美香:「そうだよね。えっと、相手は…。」 菜々美の言うとおりだとあたしも思い、美香と一緒に画面を覗き込んだ。 蓮華:「相手は21歳のカツジ選手か。主に使ってくるのは炎系と氷系…、まさに、氷のフィールドに合ったトレーナーね。」 律子:「氷のフィールドの下は水だから、氷を溶かされたら水ポケモンが必要になる場合もあるわよ。」 蓮華:「分かった。それじゃ、それも考えたメンバー編成もしておくわ。 ようするに、それぞれのステージで6匹を決めればいいってことだし。」 あたしは再び、ポケモン選びに取り掛かった。ドラちゃんとタマちゃんが駄目だとしても、この子達だったら多分、行ける! 次の日。 あたしは岩のフィールドに向かった。 すでに4ステージの勝ち抜き戦は今日までのため、昨日よりも多くのトレーナーが観戦に来ていた。 そしてあたしの反対側には、マサトシ選手が姿を現した。 今年のポケモンリーグの公認キャップ(売店にあった)をかぶり、サトシさんと同じ衣装に身を包んだ、 めがねの少年だった。 マサトシ:「あなたが蓮華さんですね。」 蓮華:「ええ。」 マサトシ:「あなたのポケモンは入院中ですし、どんなポケモンが来ても、僕のポケモンがあなたを倒しますので、 早めにお引取り願った方がいいですよ。」 蓮華:「ご親切にどうも。でも、あたしはここで倒れる気はないから。」 あたしはマサトシ選手の静かな一言を、軽くなぎ払った。 その様子を観客席から少女4人組が見ていた。 律子:「確かに外見はサトシさんにそっくりね。」 ナナ:「それに、バトルもサトシさんが行ったような感じで戦ってるわよ。」 美香:「でも、蓮華のバトルセンスに敵うのかな?」 菜々美:「さあね。蓮華も色々と考えてたし。あ、始まるよ。」 審判:「それではただいまより、トキワシティ出身マサトシ選手とグロウタウン出身蓮華選手の試合を開始します。 使用ポケモンは3体。ポケモンの交代は自由とします。ただ、3匹目のポケモンによる自爆行為は失格とみなしますので ご注意ください。それでは、試合開始!」 マサトシ:「ピカチュウ、君に決めた!」 マサトシ選手はピカチュウを出した。岩のフィールドで電気タイプを本当に出すとは思わなかった。 蓮華:「あたしはこの子!お願いね、ディグ!」 あたしはディグを出した。地面タイプのモグラポケモン。そして岩のフィールドに適しているのだ。 マサトシ:「ピカチュウ、高速移動で岩を飛び移れ!」 ピカチュウは岩の上を飛び移りながらの移動を始めた。地震は高いところほど強く揺れるけど、岩を瞬間的に飛び移り続ければ、 そのダメージの威力もかなり半減できるのだ。 蓮華:「ディグ、地震よ。」 でも、あたしは地震を使わせた。 マサトシ:「岩を飛び移り続けてるのに、地震が結構効くのかな?お姉さん、頭が悪いんじゃないかな。」 マサトシ選手はそう言っているけど、あたしは考えがあるのだ。 蓮華:「ディグ、次はマグニチュードよ!」 地震でフィールドを揺らし、マグニチュードを使ったとき、その効果は現れた。 フィールド上にある岩が少しずつ、崩れ始めたのだ。そして、ピカチュウは岩が崩れたショックで落下していた。 マサトシ:「ピカチュウ!」 蓮華:「こういうことよ。ディグ、岩なだれ!」 崩れる岩が、ディグの力でピカチュウを襲った。そして、ピカチュウはその向かってくる岩を一気に受け、 倒れた。 マサトシ:「ピカチュウ!?くそぉ、波乗りを使わせればよかった。」 蓮華:「技の出し惜しみが勝負を決めたみたいね。」 審判:「ピカチュウ戦闘不能!ディグダの勝利!」 サトシさんのピカチュウはサトシさんがポケモンマスターになったときに波乗りを覚えていて、また、ホウエン地方で アイアンテールを習得していた。 それをマサトシ選手のピカチュウも覚えていたようだったけど、ディグの地面攻撃を逃れるための岩の飛び移りが、 結果として仇となってしまったのだ。 蓮華:「攻撃をしてこないと、先に攻撃を受けて負けるのがオチよ。」 律子:「サトシさんはスピード系の技でピカチュウを使うから、それを真似したようね。」 ナナ:「でも、すばやさを重視せず、電気タイプには地面タイプっていうセオリーどおりのバトルをした蓮華が勝ったね。」 美香:「技の出し惜しみもあるみたいだし。」 菜々美:「もしかしたら、彼は憧れを優先するバトルをしてるのかもしれないわ。」 マサトシ:「くそぉ…、今度はフシギダネ!君に決めた!」 彼の2番手はフシギダネだった。あたしはディグを戻した。 マサトシ:「あぁ!せっかくピカチュウの分を倒せると思ったのに。」 蓮華:「残念でした。フシギダネの相手を地面系にさせるわけには行かないわ。それくらい分かるでしょ?」 マサトシ選手はあたしがポケモンを代えないと読んでいたのか、ディグを戻すのを見てがっかりしていた。 あたしは天敵に弱点を差し出すような感じのバトルをよくやるけど、あまりバトル経験のないディグを長く出しておくのは 危険だと、すぐに察していた。 蓮華:「フシギダネの相手はこの子よ。甘く見てたら怪我をするから。パル、お願いね!」 あたしが出したのはパールルのパルでした。 突如、草ポケモンに対して、しかも岩のフィールドに似つかわしくない水ポケモンのパールルをあたしが出したため、 とっても驚いているようだった。 マサトシ:「蓮華さん、本当に頭大丈夫ですか?地面系を戻して水系を出してくるなんて。でも、水ポケモンなら 僕の勝利は決まってますね。フシギダネ、蔓のムチだ!」 マサトシ選手は相手が水タイプだからか、元気よく指示を出した。 でも、パルはそんなことじゃ倒れないよ。なんてったって、トレーナー泣かせの鉄壁貝だから。 蓮華:「パル、殻にこもるのよ!」 パルは殻にこもった。そこを蔓のムチが襲うが、パルにダメージはほとんどない。 マサトシ:「それなら、フシギダネ、ソーラービームだ!」 フシギダネはソーラービームのための光を吸収し始めた。この1ターンで、あたしは勝負に出た。 蓮華:「パル、フシギダネの種に冷凍ビームよ!」 マサトシ:「えぇ!?やめろ〜!」 マサトシ選手はあたしの指示を聞き、ぞっとしてあたしに抗議をしようとした。でも、結果はすぐに決まった。 フシギダネの体の核のような部分は、背中の種なのだ。 種が呼吸したり、エネルギーを吸収したりしている部分だった。 だから、そこが凍ってしまったならば、フシギダネは負けたも同然だったのだ。 ソーラービームを溜めていたのだけど、その光もパルの冷凍ビームが相殺してしまっていた。 よって。 審判:「フシギダネ戦闘不能!パールルの勝利!」 マサトシ:「そんな…どうして同じポケモンなのに負けるんだよ!こうなったらゼニガメ!君に決めた!」 マサトシ選手はフシギダネを戻し、ゼニガメを繰り出した。 その時、あたしはフシギダネに一瞬変化があったのを見逃さなかった。 進化の兆しのようなものが一瞬でたけど、すぐに消えたのだ。 でも、ゼニガメはパルに対してすでに身構えているので、あたしはすぐにバトルの方に気を向かせた。 律子:「今の、見た?」 美香:「ええ、はっきりと。」 菜々美:「あれは進化しようとしてたけど、進化キャンセルが起きたのね。」 ナナ:「もしかしたら、彼はサトシ君と同じようなバトルをしたいから、わざとポケモンを進化させてないのかもしれない。 あのポケモンたちを見る限り、自分の意思では進化したいみたいだから。」 律子:「そうね。彼はやっぱり憧れでバトルをしてるってことになるわね。」 マサトシ:「ゼニガメ、パールルにアイアンテールだ!」 ゼニガメの尻尾のアイアンテールがパールルを岩へと撃ち飛ばした。 蓮華:「パル、戻って!」 あたしは岩に当たる前にパルを戻した。だって、ゼニガメに対しての秘策(?)はパルじゃないから。 マサトシ選手が憧れで優先的にバトルをするのならば、この子を出してあげたほうが面白いかもしれない。 蓮華:「ニド君、お願いね!」 あたしが出したのは、ニドリーノのニド君だ。 サトシさんはカントウリーグの時に、ゼニガメでニドリーノを倒している。 だから、もしかしたら同じことを彼も行おうとするのでは。そう踏んでみたのだ。 憧れを優先している彼なら多分行いそうな予感。 律子:「蓮華、冴えてるみたいね。」 ナナ:「確かに。ゼニガメVSニドリーノはサトシ君の時と同じよ。」 マサトシ:「やったぁ!蓮華さん、残念だったね。この勝負、僕が頂いたよ。」 蓮華:「そうかしら?ニド君、突進よ!」 マサトシ:「ゼニガメ、殻にこもれ!」 殻にこもったゼニガメを突進によって遠くに吹っ飛ばすニド君。 ゼニガメはそのまま遠くに転がっていき、ニド君はそれを追いかけていた。そして、ゼニガメは丸く反りたつ岩を転がり、 マサトシ:「今だ!ゼニガメ、ニドリーノに水鉄砲!」 ゼニガメは水鉄砲を発射した。 でも、あたしはわざとこの状態に追い込んだまでのこと。 対策は考えていた。 蓮華:「ニド君、守る攻撃よ!」 マサトシ:「えぇ!?」 ニド君の前には透明なシールドが突然現れ、水鉄砲を弾き返した。 蓮華:「今よ!10万ボルト!」 ニド君に技マシンで覚えさせておいたのだ。10万ボルトは水鉄砲を撃ち終わり、地面に着地した直後のゼニガメに襲い掛かった。 そして、ゼニガメは数歩動こうとしたが、そのままその場に倒れていた。 審判:「ゼニガメ、戦闘不能!ニドリーノの勝利!よって、勝者、グロウタウンの蓮華選手!」 あたしは作戦通りに勝った。 蓮華:「ニド君、パル、ディグ、やったね!」 あたしは3人の有志と一緒に喜んでいた。 マサトシ:「そんなはずない!インチキだ!彼女はインチキをしたんだ!」 そんなあたしに向かって、マサトシ選手は言いがかりを付け始めた。 マサトシ:「サトシさんと同じポケモンで同じように戦ったのに、負けるなんてありえない! 彼女がインチキしたから負けたんだ!絶対僕の勝ちに決まってる!」 そう言って、マサトシ選手はあたしにボールを投げてきた。 出てきたのはリザードンで、あたしを含めて、3人も今はリザードンの威嚇に震えていた。 マサトシ:「リザードン、インチキした彼女に火炎放…」 が、彼の指示は途中で遮られた。というのも、4つの攻撃(マジカルリーフ、水鉄砲、破壊光線、スピードスター)が リザードンを倒し、気づけばあたしの前にはナナ、菜々美ちゃん、律子、美香がいたのだ。 ナナ:「全く、憧れでバトルされたらポケモンが可哀相よ。」 菜々美:「ポケモンは進化を望んでいるって言うのに、ポケモンをわざと進化させずにして、サトシさんと同じようなバトルを しようだなんて、ばっかみたい。」 美香:「あなたは根本的な事が間違ってるのよ。」 律子:「ポケモンを信じ、ポケモンと共に成長し、ポケモンと共にバトルをするのがサトシさんの戦い方よ。 自分の憧れを優先し、ポケモンに自分の考えを押し付け、憧れの人と同じ戦い方で勝利するのが普通だと思う考えは、 はっきりいって間違ってるわよ。」 マサトシ:「そんなことは…」 律子:「ないっていうのかしら?セレビィ、サイコキネシスで彼のボールからポケモンを全部出して!」 セレビィがポケモンを出させ、ナナが彼の図鑑に進化キャンセルのためにボタンに貼り付けてあるテープを剥がした。 マサトシ:「それは!それを剥がしたら進化しちゃうじゃないか!」 ??:「進化するかしないかはポケモンが決めることよ。進化したくてもできないポケモンもいるし、 進化を望まないポケモンもいるの。そういうこと、はっきり考えたらどうなの?」 声と共に、彼の持つポケモン、ゼニガメ、ベイリーフ、ヒノアラシ、ワニノコ、ゼニガメたち(使えばいいのに)が、 一気に進化を始め、すべてが最終進化系になっていた。 そして目の前に現れたのはキレイハナだった。まだ包帯を巻いている。 蓮華:「キレイハナ…病院を抜け出してきたの?」 キレイハナ:「テレビを見てたら落ち着いていられなかったのよ。また戻るけどね。」 蓮華:「早く戻って。次のステージも何とかするから。キレイハナはちゃんと怪我を治してよね。」 キレイハナ:「了解。」 キレイハナはそう言って、ポケモンセンターに戻っていった。あたしもそろそろ、次の最後の試合が残っている。 マサトシ:「僕のポケモンが…」 ナナ:「これが彼らの希望だったのよ。蓮華ちゃん、次の試合に行って。 ここはあたしたちが教育しなおしておくから。」 蓮華:「ええ。それじゃ、お願いね。」 あたしは氷のフィールドに足を急がせた。 氷のフィールドにはすでにトレーナーの姿があった。 優等生(?)見たいな感じのコスチューム…多分、エリートトレーナーと思われた。 が、顔はビジュアル系で、とんがった感じに金髪が立っていた。 カツジ:「やっと来たか。このまま不戦勝になるかと思っていたが。」 蓮華:「ちょっとした修羅場に遭っていただけよ。ここを通過して、優勝まで足を運ぶのがあたしの夢なんだから。 元の世界に帰るために。」 カツジ:「そうか、君は他の世界から来たのか。 でも、俺はリーグチャンピオンになって名を広めたいからな。君はここで退場してもらうよ。」 蓮華:「負けませんからね。」 と、審判がやってきた。 審判:「ただいまより、グロウタウン出身の蓮華選手と、クチバシティ出身のカツジ選手の試合を開始します。 使用ポケモンは3体。ポケモンの交代は自由とします。ただ、3匹目のポケモンによる自爆行為は失格とみなしますので ご注意ください。それでは、試合開始!」 カツジ:「俺の最初のポケモンはこいつだ!ジュゴン、行ってこい!」 蓮華:「ソルル、お願いね!」 あたしはソルルを出し、遠距離からの攻撃を試みることにした。 ジュゴンは大きい上に、攻撃力もある。氷の上では強い部類だ。 ソルルでも勝ち目は少ないかもしれないけど、やるだけのことはある。 カツジ:「悪タイプか。悪いが、ここで倒れてもらうよ。ジュゴン、シグナルビームだ!」 シグナルビームは主にバルビートが覚える虫タイプの光線技だ。 ジュゴンが覚えられるとは聞いていたけど、本当に使えるとは思わなかった。しかも、ここは氷の上だ。 ソルルでも滑ってしまう。でも、避けなきゃいけないわけでもなかった。 蓮華:「ソルル、火炎放射よ!」 技マシンで覚えさせた技だった。ソルルはあのままの技でも十分だったけど、特殊技があったほうがいいと感じ、 ソルルに聞いてみてから決めたのだった。 シグナルビームは火炎放射によって遮断され、その隙にカマイタチを放つソルル。 カツジ:「ならば、ジュゴン、波乗りで氷の上をすべり、アブソルに突進だ!」 波乗りを纏ってジュゴンがソルルに向かってきた。 蓮華:「影分身よ!」 ソルルの姿が3つ、4つに分かれ、ジュゴンは分身をすり抜けて近くの氷にぶつかっていた。 カツジ:「ジュゴン!体制を整えろ!それに雨乞いだ!」 フィールド上を雨雲が包み、雨が降り始めていた。 カツジ:「影分身をしても、本当に水を滴らせているのが本体だ!ジュゴン、そいつに冷凍ビームだ!」 ジュゴンはそれを見極め、冷凍ビームを発射していた。 蓮華:「くっ、ソルル!冷凍ビームを切り裂いて!」 ソルルはすでに剣の舞を終え、瞑想し、マジックコートも自分の前に出していた。 だから冷凍ビームを受けても、氷状態からは防げるかもしれなかった。それにかけて、ソルルに切り裂くの指示を出した。 結果、冷凍ビームを切り裂くと同時に、その衝撃がジュゴンを襲い、ジュゴンはクリティカルヒットを受けて倒れた。 審判:「ジュゴン、戦闘不能!アブソルの勝利!」 会場は優勢だと思われていたジュゴンが倒れたことで、驚きの歓声が包み込んでいた。 カツジ:「何!ジュゴンが倒れただと!?だったら次はピジョット!お前が行け!」 彼はフィールドを滑ったりしない、フィールドに無縁のポケモン、飛行タイプのピジョットを繰り出した。 蓮華:「ピジョットが出てくるとはね。ソルル、戻って!」 相手がピジョットだと、ソルルの現状では無理だ。 蓮華:「この子で行くわよ!ルナ、お願いね!」 あたしが出したのは飛行に対する岩タイプであり、フィールドに関係ない「浮遊」の特性を持つポケモンルナトーンのルナだった。 すでに雨が止んでいるため、微量の雨によるダメージも防げるはずである。 蓮華:「ルナ、サイコウェーブよ!」 カツジ:「ピジョット、高速移動でかわせ!そして風起こしだ!」 ルナのサイコウェーブは高速移動でかわされた。ピジョットの方が素早さが遥かに高いため、ピジョットの動きを止めなきゃいけない。 でも、ルナは風起こしの猛攻に押されてしまっていた。 カツジ:「そのまま吹き飛ばして氷に叩きつけるんだ!」 蓮華:「させません!ルナ、サイコウェーブを下に放って!」 ルナは攻撃をフィールドの氷に向かって放った。攻撃により、フィールド上にある氷に皹が入り、一部が割れ始めたり、 氷の柱が崩れたりしていた。 カツジ:「そんなことをして、自分が落下した時に不利になるだけだぞ!ピジョット、鋼の翼だ!」 ピジョットは鋼の翼でルナにぶつかった。吹き飛ばしが突然止み、体制を整えようとした矢先に攻撃に、 ルナは落下を始めていた。 カツジ:「ピジョット、風起こしで落下のスピードを上げてやるんだ!」 蓮華:「ルナ、サイコキネシスで安定を保つのよ!」 風起こしを受けるが、サイコキネシスによって浮上するルナ。そこへピジョットが向かってきた。 カツジ:「ピジョットの最終必殺技、ゴッドバードを受けてみろ!」 ピジョットはルナに向かってくる。でも、ようやくあたしに運が向いた気がした。 蓮華:「ルナ、今よ!岩なだれよ!」 あたしが氷を壊したのは、岩なだれを行うためだった。 岩ならぬ、氷による岩なだれは、意思を持つかのようにピジョットに向かい、ゴッドバードの体制だったピジョットは、スピードが 落ちないまま、氷の岩なだれに飲み込まれた。 カツジ:「ピジョット!」 ピジョットはそれを乗り越えて出てきたが、すでに戦闘不能状態だった。 氷の冷たさが体を冷やし、ピジョットを倒したのだ。 審判:「ピジョット、戦闘不能!ルナトーンの勝利!」 カツジ:「まさかピジョットが敗れるとは思わなかったな。氷のフィールドも割れてしまったし。 俺の残りのポケモンではお前に勝てそうにないな。」 蓮華:「どういうこと?」 カツジ:「俺の最後のポケモンはウィンディだ。しかし、この状態でウィンディを出せば、お前の方が有利になる。 お前の最後のポケモンは水タイプじゃないのか?」 蓮華:「えっ…う、うん…。」 確かにそうなのだ。しかも、ミロカロスのアクアだった。 ウィンディにはかなり不利である。 カツジ:「だから分かるな。審判、俺は最後のポケモンを水に落とす気はない。ここでバトルを辞退する!」 審判:「分かりました。カツジ選手の辞退により、この勝負、グロウタウンの蓮華選手の勝利! よって、蓮華選手のトーナメント戦進出が決まりました!」 こうして、あたしは氷のフィールドを、苦戦を強いられながら勝ち進んだ。 明日からはトーナメント戦の始まりだ! ナナ:「次からはトーナメントか。」 律子:「誰と当たるかは分からないけど、間違って哲也先輩や志穂ちゃんに当たったら、どうなるのかしらね?」 美香:「でも、蓮華なら勝てるよ。」 菜々美:「そうね。キレイハナも戻ってくるし。あ、でも健人先輩も勝ち抜いてるから…蓮華とあったらどうなるんだろう。 心配だったりもするわね。」 ナナ:「でも、蓮華には勝ってもらわなきゃ。あたしたちが応援してる時点で勝ちだけどね。」 3人:「そうだね!」 その頃、ポケモンリーグ協会に忍び込む影があった。 それが誰も気づかず、たとえ気づいた警備員がいたとしても、彼は全てを眠らせてしまっていた。 彼の目的は何なのか、まだ分からない。