蓮華ちゃんが4つのステージを勝ち抜いた。いろいろあったけど、あたしが認めただけあり、初めて会ったときよりも 成長していた。ポケモンたちもみんな強くなってる。あたしと互角にはまだ至ってないけど、それなりに強くなったことは言える。 次からは公式バトルフィールドでの3対3のバトルや6対6のフルバトルが待ち受けているし、まだ出てきていないメンバーも、 蓮華は出してくるに違いない。 あたしはそれを見届けないと。そんな時、警備員とガーディ5匹を倒して侵入してくる何かを見かけた。 51.嵐の前の静けさ!マスタークラスの力 ナナ:「誰?」 すると、その何か、一人の少年は止まった。あたしと同じくらいの年頃だ。 確か、この少年以外にも侵入した人物がいるって聞いてるし。 ポケモン協会の特別公認理事を務める、一応ポケモンマスターでもあり、マスタージムリーダーでもあるあたしには、 ポケモンリーグでの様々な規則を守らせたり、ポケモンと人との交流を深めさせたり、間違いを悔やませたりする使命がある。 いや、あたしがそう決めているだけのことだけど。 一応、公認の特別理事なのよね。もう一人はセレビィ使いの律子ちゃんくらいかな。 少年:「俺は一志。ポケモンリーグに出たくて来たけど、誰も入らせてくれないからな。そしたら、こいつらを倒して侵入していった奴がいたし。 俺も真似して入ろうとして、そしてあんたに出会っただけだ。なぁ、俺もリーグに参加させてくれないか?」 どうやら、予選に間に合わなかったトレーナーのようだった。でも、一応確認しなきゃ。 ナナ:「予選には出なかったの?」 一志:「予選?いや。俺、昨日この辺にようやく着いたんだよな。」 ナナ:「そう。…それじゃ、力試しにするわ。あたしはナナ。一応ここの理事もしてるの。 まだ、特別理事の特別枠のトレーナー、あたしの分が決まってないのよ。もし、あたしのポケモンに一撃でも当てられたら、 あなたを認めてあげるわ。」 特別理事のあたしと律子ちゃんには、次から始まるトーナメント戦での特別枠トレーナーを決めなければならない仕事が一つあった。 律子ちゃんはそのトレーナーを見つけ、そのトレーナーの登録もしているけど、あたしはまだ全くしていない。 初めは蓮華ちゃんにしようかと思ったけど、蓮華ちゃんには4つのステージに出てほしかったし。 だから、あたしは蓮華ちゃんにも、志穂ちゃんにもなってもらわなかった。 ナナ:「一撃当てられたら、特別枠のトレーナーにしてあげるわよ。出てきて、バルビー。」 あたしのパートナーポケモンはバルビートとイルミーゼ。蛍ポケモンを自在に操るマスタートレーナーのジムがある町だから、 だからあたしのいる町は、蛍のほのかな明かりを示すグロウタウンと呼ばれている。 一志:「そんなチンケなポケモンでいいのか?俺のはすごいぞ!出てこいよ!リザードン!」 一志君のポケモンはリザードンだった。 一志:「そんなの一撃だからな!火炎放射だ!」 ナナ:「バルビー、影分身。そして光の壁!」 火炎放射は影分身でかわされ、光の壁が残りの火炎放射を防いだ。 一志:「だったらスピードスターだ!これは絶対当たる技だ!簡単だよ、こんなことは。」 ナナ:「そう?フラッシュ、高速移動!」 辺りを光が瞬いた。と同時に、何かに攻撃が当たった声がした。 一志:「ほら簡…!?リザードンに当たっただと!?」 ナナ:「うふふ、フラッシュで目くらましを行った後、バルビーは高速移動でリザードンの真正面に回り、辺り瞬間に避けた。 そして、攻撃はリザードンに当たったの。それに、守る攻撃も行っていたから、まだまだバルビーには攻撃は当たってないわよ。」 一志:「それなら…」 ナナ:「攻撃されるのを待ってるだけじゃないから。バルビー、怪しい光よ!そして泥かけ、どくどく!」 なめてもらっちゃ困るのよね。バルビーは怪しい光でリザードンを混乱させ、泥を顔にぶっ掛け、そして毒毒を浴びせた。 それが一瞬で決まるのは、経験とランクの違いにあるわね。 一志:「リザードン!?くそっ、リザードン、持ってるラムの実で…何!?ラムの実がない!」 ナナ:「残念でした。泥棒させていただきました。」 首に木の実をかけているのが初めからわかっていたから、だからあたしは泥棒を発動させた。 元々、あたしはバルビーに何も持たせず、逆に泥棒を最初に使わせている。影分身を使ったときに泥棒を使っていたのだ。 混乱し、視界が泥で効かなくなり、そして毒の状態のリザードンは攻撃を当てれずにいた。 一志:「くそぉ!こうなったら、オーバーヒートだ!」 リザードンはオーバーヒートを放った。混乱していたため、首を回しながら放っていて、バルビーの逃げ道はない。 でも。 ナナ:「雨乞い。そして…、水の波動よ。」 バルビーは雨を降らし、オーバーヒートの威力を下げ、さらに地面から噴水のように水の波動を出現させてオーバーヒートを 手前で防ぎきっていた。雨も降ってきて、さらにリザードンには苦しいバトルだった。 一志:「あ〜!?こうなったら…くそぉ、どうしたらいいんだよ!」 ナナ:「あ〜あ、あたしに出会った事が失敗だったわね。あたしはゲンジジムのナナ。 ポケモンマスターでもあるのよ。リーグ戦を目指すトレーナーたちが簡単に勝てるわけないじゃない。 リザードンが可哀相だし、最後にしてあげるわ。蛍火、そして、雷よ。」 蛍火は特殊攻撃力を2段階上げる技。そして雨乞い中の雷は必ず当たるのだ。 雷はリザードンに落雷した。 が、リザードンは最後に火の粉を放っていた。それはとってもとっても小さいことだったけど、小さな火の粉が、 バルビーの羽に小さな焦げ目を作っていた。 リザードンと一志の執念だということが、あたしには感じられた。その直後、リザードンは倒れ、一志君も引き締まっていた 緊張の糸がぷっつりと切れ、その場に倒れていた。 ナナ:「あらあら、まぁ、認めてあげてもいいかな。バルビーに一撃入れたことだし。 あの状態で一撃を入れるとは、律子ちゃんのお兄さん以来のことね。」 彼でも、バルビーに一撃を入れれたのはポケモン4匹を倒された後だったけど。 それだけ、あたしのポケモンたちはみんな強いのだ。 あたしは、ケンタロスとサーナイトを出し、一志君とリザードンをポケモンセンターまで送り、特別枠の登録をしてあげた。 彼は誰と戦うか分からないけど、それなりにいい試合にしてほしいな。 その頃、蓮華たちはコテージにいた。 そして律子から、特別枠の話を聞いていた。 律子:「…というわけなのよ。だから、決勝に進む人たちはトーナメントでもしかしたら、その人と戦うことになるかもしれないし。 結局は運任せだけどね。あの子は強いから。蓮華が当たるとちょっと困るかな。」 キレイハナ:「そんなに強いの?」 律子:「ええ。あたしのセレビィに戦いを挑んだのよ。結果は向こうが負けたけど、セレビィに互角に強さで立ち向かったから。 だから、あたしは認めたの。セレビィは兄貴から譲り受けたものだけど、あたしもバトルはできるし、セレビィはナナちゃんにも 特訓されてるからね。かなり強いわよ。」 蓮華:「嘘…、ヤバイよ、それじゃ。」 美香:「まぁ、しょうがないよ。律子もナナも、仕事でやったことだし。」 菜々美:「でも、今のところ4つのステージを勝ち抜いた方々はみんな、かなりの強さと言われてる人たちが多いわよ。 結果はまだやってみなきゃ分からないわよ。 それに、フシギダネやコータス、ハクリュウさえもまだ出してないのよ、蓮華は。 それなりにみんな強くなってるはずだし、蓮華なら大丈夫だと思うけど?」 蓮華:「そう?」 律子:「確かに言えないことはないわね。蓮華ちゃんは友情ゲットが多い割に、珍しいかつ強いポケモンを持ってるし。 フルバトルに出れば、今まで出せていたトサキントたちでは歯が立たないようなポケモンも出てくるわ。 カビゴンやミロカロス、ハクリュウの力もかなり必要になるだろうし。ポケモンのメンツから行けば、蓮華は有利な部類にいるわね。」 蓮華:「言われてみるとそうかも。それに、あたしにはキレイハナがいるから。」 キレイハナ:「そうだよ。あたしもいるし。毒にも強く、技は多彩。」 この後も彼女たちは談話に花を咲かせていた。 トーナメント戦、誰に当たるかが決まるのは次の日だから、それまではリラックスをしたりして、バトルの疲れを取る事が優先的な、 状況だった。 その頃。再び今度はポケモンリーグ本部の特別室での出来事だった。 誰かが侵入し、コンピュータに細工を施そうとしていた。 ナナ:「誰かしら。今日はこれで二人目よ。あなたもリーグ戦に出たいから、侵入したの?」 あたしはムウマとゲンガー、ヤミラミとホーホーとミズゴロウの助けを借りて、怪しい人物を探していたのだ。 これ以上、侵入者を出しちゃいけないから。 ??:「ああ、そうだぜ。出たいからやってんだ。悪いか?」 ナナ:「予選はどうしたの?」 ??:「寝過ごした。ちょっと時間に遅れたくらいで俺よりもバトルセンスのない奴が不戦勝しやがったんだ! 俺は絶対にそれが認められねえよ!」 ナナ:「そう、…だったら、あたしのバルビーに一撃を入れてくれないかしら?」 少年は、あたしの言葉に不思議そうな顔をしていた。 ??:「どういう意味だ?」 ナナ:「簡単なことよ。あたしのこと、知ってる?」 ??:「ああ。マスタージムをしているポケモンマスターの蛍使いのナナだろ?」 あたしはそれなりに有名なのだ。さっきの子は知らなかったみたいだけど。 ナナ:「ええ。あたしはここで理事をしているの。急に特別枠に入れたい子が増えたって言えば、何とかなるわ。 あたしが特別枠の子を決めたのはついさっきだし、その入力が正式に終わるのは2時間後。それまでに一人増えても、 あたしの口添えがあれば通るわよ。やる?」 ??:「やるに決まってるだろ。で、どこでバトルをするんだ?」 少年はやる気マンマンだったので、あたしは地下にある練習用のフィールドに案内した。 ナナ:「あなた、名前は?」 ??:「俺か?俺は雷司。俺のポケモンはこいつだ!」 雷司君が出したのは、エアームドだった。あたしはさっきのバトルを終え、回復も終わっているバルビーだ。 ナナ:「一撃でも、かすめれても、OKよ。」 雷司:「分かったぜ!」 この後、戦いは1時間も続いた。常に飛んでいるうえ、鋼タイプであり、特性が「鋭い目」のため、どくどくや泥かけは使えないし、 フラッシュもあまり効果がないのだ。でも、攻撃にも一度も触れられていない。 耐久戦状態だった。 が、ついに彼のエアームドのスピードスターが、バルビーを一瞬掠めたのをあたしは見逃さなかった。 そして、彼もまた、あたしが特別枠に任命した。 律子が認めた子も含め、あたしたちに勝負で立ち向かえる子が3人も入ったのだ。 明日のトーナメント発表が楽しみだ。 そして次の日になった。 あたしたちが会場に着いてみると、すでに多くのトレーナーがいた。 そして画面にはトーナメント表が出始めていた。 勝ち抜いてきたトレーナーは32人。そして特別枠は急遽増えて3人になっていた。 3組分だけ、余分に一度多くバトルをしなければならないトレーナーができてしまうのだ。 元々は2組分だけだったけど。 と、離れたところには哲兄や健人先輩、志穂ちゃんたちの姿も見られた。 みんなトレーナー名が出るのを心待ちにしていた。 そして、トーナメントが発表された。 ナナ:「一時はどうなることかと思ったわ。」 律子:「そうね。侵入者を捕まえたって聞いたけど、強いトレーナーで、どうしても出たい願望があったから、 コンピューターをいじって入ろうとしたのよね。」 ナナ:「ええ。でも、あたしのバルビーに一撃を入れれたのは彼で3人目よ。そんなトレーナーを入れない手はないわよ。」 律子:「そうね。でも、特別枠と、哲也先輩、志穂ちゃん、蓮華ちゃんがそれぞれ一発目から当たるとは思わなかったわ。 しかも、蓮華ちゃんと志穂ちゃん、哲也先輩と健人先輩は同じブロック。決勝に行くためには、どちらかが勝つしかないもの。 これは面白いことになったわよ。」 ナナ:「確かにこれは面白いわ。久々にいいバトルが見られるといいわね。」 ナナが捕まえた少年2人とバトルをするのは哲也先輩と志穂ちゃん。 そして、あたしが当たってほしくないと思っていた組み合わせが実現していた。あたしが認めた子、夕香ちゃんと、蓮華のバトルが。 一体どうなるのかしらね。 最終的に8人に絞られるまでは3対3のバトルが続く。 それまでにどういうバトルが繰り広げられるか分からないけど、どちらにも勝ってもらいたいな。 美香:「対戦相手の夕香さんは律子が特別枠にした子だね。」 菜々美:「まさか冗談が実現するとは思わなかったわ。」 キレイハナ:「多分、律子ちゃん自身もそう思ったんじゃないかしら?」 蓮華:「多分ね。でも、ここを勝っても、志穂ちゃんと戦わなきゃいけないとはね。」 志穂:「あたしも驚いたわ。このまま行くと、他の人にとっては2回戦、あたしたちにとっては3回戦目でバトルすることになりそうよ。 お互い、手持ちのポケモンのことは知ってるし、特にあたしの場合は少ないからバレバレでしょ? しっかり作戦を考えるつもりよ。3回戦目で会いましょうね。」 志穂ちゃんはそう言って、あたしたちのところから離れた。 会場にいるのはあたしたちくらいで、他のトレーナーはすでに明日から始まるバトルの準備に入っている。 美香:「そろそろ、あたしたちも行かない?」 菜々美:「そうね。蓮華の準備の手伝いがあるし。」 そんな時だった。 ??:「あなたが蓮華さんですのね?」 京都が似合いそうな着物姿の、あたしたちの少し年上そうな少女がやってきた。 蓮華:「あなたが夕香さんなの?」 ??:「ええ。はじめまして。明日のバトル、楽しみにしていますわ。」 蓮華:「あたしも。絶対に負けないから。」 夕香:「威勢がいいですわね。でも、最後に勝つのは私ですから。」 夕香さんはギャロップを出し、それに乗って去っていった。 キレイハナ:「あのギャロップ、毛並みもいいし、かなり手厚く育てられてるわね。」 蓮華:「うん。あたしも頑張らなきゃ。」 彼女は自信たっぷりの状態だった。すでに勝利が見えているみたい。 でも、あたしは負けない。絶対に勝つ!