52.エビワラーの闘志!健人の試合 ついにトーナメント戦が始まる。 蓮華、志穂ちゃん、哲也先輩、健人先輩の4人が、最後に残った35人の中にいる。 4人のうち誰かが優勝しない限り、あたしたちは元の世界に帰ることはできない。 一度は帰ることはできた。でも、あたしたちはまた再びこの地に戻り、そしてここまでやってきた。 今のあたしができるのは、菜々美ちゃんや翼先輩と一緒に蓮華を応援することだけ。 でも、応援する事が蓮華たちにとって、いい頑張りになるからいいんだけどね。 トーナメント戦は一つのバトルフィールドで行われるため、毎日数試合、連続して行われる。 今までは各地で、色んなフィールドごとのステージで行われていたけど、今回は様々なフィールドにもなり、 また、普通の公式通常フィールドにもなる、このポケモンリーグ2次試合体育館で行われる。 初めの試合は健人先輩の試合から。そして、蓮華の試合はその次だから、今は控え室に待機している。 志穂ちゃんと哲也先輩の試合は午後からの予定だったりするので、今はあたしと菜々美、律子、ナナちゃんと一緒に 観客席にいた。 ナナ:「ついに第一試合か。」 律子:「初めから知り合いのバトルとはね。」 哲也:「健人の対戦相手ってどんな奴だ?」 志穂:「確か、氷を中心にする相手だったはずよ。」 菜々美:「あ、その試合見たよ。氷系のポケモンを中心にして、素早いバトルだった気がする。」 美香:「でも、健人先輩のポケモンは主にエビワラーを中心にしてるよ。大丈夫じゃないかな。」 律子:「どうかしらね?氷ポケモンにはエスパーもいるのよ。」 志穂:「ルージュラとムチュールね。」 哲也:「エスパー相手に格闘タイプでぶつかる可能性があったとしても、結果的に負けてはどうにもならないからな。 しかし、あいつはかなり強いだろ?これくらいのことでは負けないだろうな。そうでなければ楽しくない。」 ナナ:「そうね。最終的にはまず、8人に残らなきゃ。」 律子:「あたしのセレビィが全員を帰せたらいいけど、蓮華ちゃんたちは蓮華ちゃんたちをこっちの世界に運んだ、 唯一のセレビィを呼ぶための優勝時の景品を貰わない限り、帰ることは無理なのよね。」 美香:「でも、それが頭にあるから、死ぬ気で頑張ると思うよ。先輩も志穂ちゃんもね?」 志穂:「当たり前よ。」 哲也:「初戦で負ける気はない。」 ナナ:「はぁ、だといいけど。」 志穂:「あら?その根拠は?」 ナナ:「あたしのバルビーに対してかすりだけでも入れれたトレーナーが相手よ。だから心配なのよね。」 律子:「それを言えば、あたしもこの次の試合が心配なのよ。 夕香ちゃんはセレビィ相手にポケモン3体も使って敗れたけど、ほとんど接戦だったし。 それに、ドガースで美しさコンテストを優勝した腕前のコーディネーターでもあるわ。」 美香&菜々美:「マジ!?」 律子:「大マジ。夕香ちゃんはほとんどポケモンを持っていないのは、美香も菜々美も知ってるでしょ?」 美香:「ええ。」 菜々美:「蓮華ちゃんに教えてもらったけど。」 律子:「お嬢様ていうか、美香と同じでお金持ちのご令嬢なのよ、夕香ちゃんは。 夕香ちゃんは、ポケモンに対してこれだっていう直感を持っているの。このポケモンを育てるべきだっていう。 そう感じたポケモンを外見にとらわれずにゲットして育てて、そしてあの位置まで上り詰めた、ある意味マスター級なのよ。」 志穂:「美香ちゃんとは大違いね。」 菜々美:「親の期待に捕らわれてるかの違いでしょ?」 美香:「うるさいわね。あたしの親が嫌いなだけよ。どうせ、あの子は元々センスがいいんでしょ?」 律子:「美香、怒らないでよ。人それぞれ。話を戻すわね、夕香ちゃんはドガースを育てに育て上げてきたから、 ドガースから甘い香りを出すことさえもできるのよ。」 哲也:「甘い香りをドガースが…」 ナナ:「確かにマスタークラスね。律子が見込んだだけのことはあるわ。」 律子:「でしょ?だから、蓮華ちゃんがどんなバトルをするかも気になるし、それと同時に蓮華ちゃんとバトルをすることに決まったのが 心配なのよね。」 そこへ、始まりを知らすメロディが会場を響き渡った。そして、審判員と、健人、そして一人の女性が出てくる姿が見えた。 ナナ:「始まるわ。」 律子:「どうなるかしらね。」 俺はこの世界に来て、それなりに色々なことに関わり、そして今に至る。 それまでに様々な経験もした。スペース団との戦いでは、重傷を負ってしまい、ほとんど俺は何もできずにいた。 しかし、その無念を晴らし、俺はポケモンたちとここまでやってきた。 次は8人に残るためにも、哲也と必ず勝負するためにも、このバトルを勝ち上がっていってみせる! 初戦のフィールドは、ここに来る前にルーレットで岩のフィールドに決まっていた。 ??:「あら、あなたがあたしの相手なのね。」 俺の相手の女性は、毛皮のコートを着て、黒い手袋をはめたエレガントな衣装の女性だった。 健人:「ええ。俺は健人。主にポケモンブリーダーをしながら、修行と鍛錬、そしてトラブルバスターをしてきました。 そして、最後に元の世界に戻るためにも、ここは勝ちあがっていきます。」 ??:「そう、あなた、別世界から来たのね。でも、あたしは負ける気はしないわ。 我が師匠、ヤナギ先生も見ているこの場で、むざむざとあなたに倒れる気はないから。」 女性がびしっと、そしてきりっとした声でそう宣言していた。 律子:「あ…、あの人、チョウジシティのジムリーダーのヤナギさんの一番弟子じゃない。」 ナナ:「あらら、確かにそうね。」 志穂:「ジムリーダーの弟子?」 ナナ:「ええ。ジョウトにいる氷のジムリーダー、沈黙のヤナギの弟子とは、健人君もはじめっから厄介な相手に 当たったものね。」 その頃。 あるジムで、一人の雪女が変に燃えていた。 氷雨:「健人君の相手、ヤナギ様の弟子かぁ。」 雪女であり、氷タイプを好む氷雨にとって、氷のトレーナー、カントウ四天王のカンナやホウエン四天王のプリム、 チョウジジムリーダーのヤナギは憧れの対象なのだ。 氷雨は、冬ソナのヨン様ファンなみに熱烈なファンだった。 ナツメ:「応援はどうするの?」 氷雨:「もっちろん、ヤナギ様の弟子に決まってるじゃない!」 ナツメ:「…おいおい。」 この状態をみんなには見せられないと、ナツメは心に強く思っていた。 審判:「ただ今より、チョウジシティ出身リュウカ選手と、トキワシティ出身健人選手の試合を開始します。 使用ポケモンは3体、ポケモンの交代は自由となります。しかし、自分のポケモンが3体目の際には自爆などの行為は 禁止とします。それでは、試合開始!」 俺の試合は始まった。 健人:「行け!エビワラー!」 リュウカ:「行くのよ、マルノーム!」 初めの相手は毒タイプの大型の、毒袋ポケモン、マルノームだ。 俺がエビワラーを中心にバトルをすることを読んで、毒タイプを出してきたに違いない。 リュウカ:「うふふ、迷っているようね。マルノーム、毒ガスよ!」 健人:「エビワラー、勝機はどんな場合にもある!相手が攻撃の効果のない相手だとしてもだ! ここは神秘の守りで様子を見るぞ!」 毒ガスを受けないためにも、神秘の守りを使った。マルノームは瓦割ができないから、ここで大打撃を受ける心配もなかった。 リュウカ:「神秘の守りね。それならこれよ!電撃波!」 必ず当たる電撃の攻撃は徐々に落雷を起こしながらエビワラーに向かってきた。 健人:「エビワラー、急いで周囲の岩柱をマッハパンチで壊せ!そして岩なだれだ!」 マッハパンチで次々に岩柱を倒壊させていく。そして、思いっきりパンチを地面に叩きつけた時、 柱が倒壊してできた岩が宙に浮かび、電撃の塊にぶつかり、大きく弾けとんでいった。 そして何とか相殺したが、その間にマルノームは次の手に出ていた。 リュウカ:「見逃したようね、マルノーム、吐き出す攻撃よ!」 突如、強力なエネルギーの塊が、エビワラーに向かって放たれた。 健人:「見切れ!」 エビワラーは攻撃を見切った。そのおかげでエビワラーは助かったが、その攻撃は俺に向かって突進していた。 ナナ:「ヤバイ!」 律子:「そう?」 ナナ:「だって3回も蓄えた攻撃よ。」 菜々美:「多分、健人なら大丈夫よ。」 律子:「そうね。」 ナナ:「えっ?」 俺は一時、爆発に巻き込まれたような気がした。気づけば、上半身は裸体になっていた。 どうやら、俺は力でその攻撃をガードしきったようだ。 しかし、審判も、相手も、相手のポケモンも、観客たちも、その様子を唖然として見ていた。 多分、普通に見ているのはあいつらくらいだろうな。エビワラーは寝そべっているし。 健人:「どうしたんだ?」 リュウカ:「あなた…人間なの?」 健人:「ああ。俺は能力者だからな。自分の体を限界まで高めて自己防衛能力を上げたから助かったようなものだ。」 リュウカ:「能力者…聞いたことあるけど、すごいものなのね。」 それから数分後、試合は再び始まった。 目のやり場に困るらしく、菜々美が俺のところに上着を持ってくるほどだった。 審判:「それでは、試合再開!」 リュウカ:「あの攻撃を避けたとはね。でも、これで終わりよ!あたしがマルノームを特訓させて開発した技、 ポイズンボールよ!」 マルノームは、丸く球体の、黒や茶色などの澱みを纏った攻撃が放たれた。正体が分からない限り、 この攻撃を受けるわけにも行かない。 健人:「守る攻撃だ!」 透明なシールドがポイズンボールを防ぐ。 リュウカ:「連続して守る攻撃は使えないわよ。連続でポイズンボールよ!」 健人:「エビワラー、高速移動で避けろ!」 エビワラーは攻撃を高速移動を使用しながら避け続けた。その間に確かめたが、どうやらポイズンボールの正体は、 電撃波の電撃、ヘドロ攻撃・ヘドロ爆弾のヘドロ、泥かけの泥が混ざり合い、そして何かの白い煙、多分、欠伸だと思われるものが 含まれているようだ。 ラムのみを持たせた状態のエビワラーだが、あれを受ければ毒と眠りを同時に受けてしまうだろう。 しかし、マルノームは真上に口を開けた状態であれを放出し続けている。 このままだとやばいな。 健人:「エビワラー、影分身だ!そして、あれを行くぞ。」 高速移動の状態で影分身を使用するエビワラーは、無数のエビワラーがマルノームの周囲を縦横無尽に走り回っているように見えた。 リュウカ:「何をする気かしら?マルノーム、蓄えるのよ!」 攻撃を受けても回復しようとしているのか、マルノームは蓄え始めた。 でも、蓄えてもどうにもならないだろう。 健人:「俺のエビワラーの最大の攻撃を教えてやるよ。エビワラー、アトミックパンチだ!」 エビワラーは冷凍、炎、雷、爆裂、マッハ、メガトン、連続、気合の8種類のパンチの威力を融合させた、強力なパンチを マルノームに叩き付けた。 すると、マルノームは体を痙攣させたかと思うと、その場に崩れ落ちるようにしぼんでいった。 審判:「マルノーム、戦闘不能!エビワラーの勝利!」 リュウカ:「マルノーム!戻るのよ!」 リュウカは驚いてマルノームをボールに戻した。 リュウカ:「なかなかすごい攻撃ね。マルノームを倒すなんて。」 健人:「それで倒れなければこちらが負けていたさ。この攻撃は威力が大きすぎる。 だから、その反動で1ターン分動けないからな。しかし、エビワラーはまだまだ一度もダメージを受けていない。 この状態で行くぞ。」 俺とエビワラーのやる気に、彼女はたじろいでいた。 リュウカ:「強いわね。でも、次はこうはいかないから!ニューラ、行きなさい!」 リュウカの2番手はニューラだった。 審判:「試合開始!」 健人:「エビワラー、マッハパンチだ!」 リュウカ:「猫騙しよ!」 ニューラは目の前に現れたエビワラーの眼前で大きく手を叩いた。 その瞬間、驚きと共にエビワラーは怯んでしまった。相手の第一手を封じ、隙を作るのが猫騙しという技の恐ろしさ。 俺は迂闊だった。 リュウカ:「今よ、ブレイククロー!」 ニューラの鋭いツメがアッパーを食らわすようにエビワラーに叩き込まれた。仰け反るエビワラー。 健人:「エビワラー、連続パンチで軽いジョブを撃つんだ!体制を整えろ!」 リュウカ:「させないわ。高速移動で背後に回り、切り裂くのよ!」 体制が整っていないエビワラーは、パンチをはずしてしまい、背中を大きくニューラに切り裂かれた。 リュウカ:「これで最後よ!再びブレイククロー!」 エビワラーは前後に大きな傷を作り、傷の痛みにうめいている状態だった。 でも、まだ戦う闘志を残しているはずだ。あいつはまだ。 そうでなければ、格闘ポケモンの名が廃る。 健人:「エビワラー、カウンターだ!」 エビワラーは、ブレイククローを左パンチで受け止め、右手から強力な一発をニューラの顔面に叩き込んだ。 相手の攻撃の威力やスピードを受け止め、受け流しつつ、それ以上の攻撃を相手に叩きつける、これがエビワラーのカウンターだった。 リュウカ:「ニューラ!…よくもあたしのかわいいニューラちゃんに傷を付けてくれたわね! ニューラちゃん、乱れ引っ掻きよ!」 健人:「見切ってかわせ!そして、炎のパンチだ!」 炎のパンチは、ニューラの滅茶苦茶な攻撃をかわしつつ、再び顔面に叩き込まれて倒れた。 しかし、その時ニューラの鋭いツメは、俺のエビワラーの効き手である右手に刺さってしまったが。 健人:「エビワラー!」 審判:「ニューラ、戦闘不能!エビワラーの勝利!」 エビワラーの手からはおびただしい血が流れていた。 彼女もニューラに駆け寄っていたので、俺も審判の許可を得て、エビワラーに駆け寄った。 健人:「エビワラー、しっかりしろ!」 俺は持っていた包帯をエビワラーに巻く。 健人:「次は戻れよな。この手でお前に戦わせて、明日のバトルでも影響が出たら大変だからな。」 が、エビワラーは俺を睨みつけていた。 その目は、まだ出たいということを語っている目だった。 健人:「お前…分かったよ。しかし、次の試合ではお前が出る事ができるようになるかどうか、それは分からない。 それでもいいな?」 そう言うと、エビワラーは強く喜んでいた。 俺は応急処置として、しっかり包帯を巻いてやった。 哲也:「エビワラーで行くようだな。」 菜々美:「えっ?」 美香:「だって、エビワラーの怪我、酷いんだよ。」 哲也:「だが、健人はエビワラーで行くようだ。あいつらしいし、エビワラーがやる気だからな。」 志穂:「…風の力で会話を盗み聞きしたのね。」 美香:「嘘、…最悪。」 哲也:「別にいいだろ。こんなこと、俺だって滅多にしないことだ。」 ナナ:「親友を思う気持ちから、もしエビワラーを戻そうとしたら暴言でも叫んでやるつもりだったのかしら?」 哲也:「それは…」 律子:「表情からしてそれっぽいみたいね。」 菜々美:「ふぅ〜ん。さすがは健人の親友の哲也先輩だ。」 美香:「ねえ、さっきから菜々美、先輩のこと、呼び捨てじゃない?」 菜々美:「呼び捨てだよ。」 律子:「どうして?」 菜々美:「だって、付き合ってるもん。昨日から。」 5人:「え〜!?」 菜々美:「いいじゃない、驚きすぎよ。…あ、始まるよ!」 さっき観客席から聞き覚えのある声が聞こえた。叫んでいたようだ。 多分、あいつらだな。俺と菜々美の関係を、菜々美がばらしたんだろう。どうせこのバトルが終わったら言うつもりだったが。 まあいいか、バトル終了後に一人の後輩を驚かしてやるとするか。 と、そこにリュウカが戻ってきた。 リュウカ:「あなたにマルノームとニューラちゃんを倒されるとは思ってなかったわ。 でも、その使えない右手で、あなたたちをどのように戦うのかしらね?」 健人:「エビワラーはやる気だ。こいつの闘志の炎を消すわけには行かなかったからな。」 リュウカ:「そう。教えてくれないのね。でもいいわ、ここであなたは終わりだから。 行くのよ、シザリガー!」 リュウカの最後のポケモン、それはヘイガニの進化系で、ならずものポケモンのシザリガーだった。 タイプは水と悪。わざわざ悪タイプという、格闘タイプの天敵を出したのは、エビワラーが得意のパンチを放てなくなったから。 そういうことのようだ。 俺のエビワラーは連続パンチの時以外は、ほとんど左手ではパンチを打たないからな。 しかも、地震や岩なだれを起こすために使うパンチも右手だ。 ほとんど攻撃の手を立たれた状態、と、彼女は読んでいるのかもしれない。 審判:「試合開始!」 始まりと同時に、シザリガーは襲ってきた。 リュウカ:「エビワラーの右手を挟むのよ!そしてクラブハンマーよ!」 シザリガーは右手を挟もうとしていた。その左手の鋏を左手のジョブで防ぐが、クラブハンマーはアッパーを食らわすように エビワラーを攻撃した。 エビワラーは何とか着地するが、ぎこちないようだ。しょうがないな、それは。すべてが右手を中心に動いているのだから。 でも、このままじゃいけない。 健人:「エビワラー、影分身、そして高速移動だ!」 リュウカ:「それで避けているのかしら?シザリガー、剣の舞、そして、岩石封じよ!」 シザリガーは攻撃力を高め、岩石封じを行った。 エビワラーの足元からは、岩の柱が現れ、行く手を阻もうとしていた。でも、エビワラーがここで負けるわけには行かない。 健人:「エビワラー、岩を踏み台に飛ぶんだ!」 リュウカ:「あらあら、パンチが使えない状態で、何をする気かしら?シザリガー、バブル光線で打ち落とすのよ!」 岩石封じで出現する岩柱を踏み台に、駆け上がるようにしてシザリガーに向かって飛ぶエビワラー。 そこにむかってバブル光線で攻撃するシザリガー。しかし、それは光の壁によって防がれていた。 そして。 健人:「エビワラー、とび膝蹴りだ!」 エビワラーのキックが、シザリガーを大きく蹴り飛ばした。 突然の蹴り攻撃にたじろぐシザリガー。リュウカも、まさかキックが来るとは思っていなかったらしく、唖然としている。 俺はパンチだけのエビワラーにやばさを感じ、一応キックの方も特訓させておいたのだ。 実験対象は俺。俺は闘力のパワーを開放しながら、向かってくるエビワラーのキックを払い続け、俺が受け止めるのがやっとだという位に なるまでの訓練を積ませておいたのだ。 健人:「エビワラー、最後に決めるぞ。ビルドアップからメガトンキックだ!」 リュウカ:「何ですって!?シザリガー、起きて!破壊光線よ!」 リュウカは倒れているシザリガーに呼びかけ、破壊光線を打たせようとした。 しかし、破壊光線発動の直前、メガトンキックがシザリガーの腹部に大きく当たり、シザリガーは方向外れの場所に 破壊光線を放ってしまうほどだった。 そしてシザリガーは倒れた。 審判:「…シ、シザリガー戦闘不能!よってこの勝負、健人選手の勝利!」 審判はシザリガーの倒れるのを見ていたが、さすがに破壊光線が放たれた方向も見ていたので、叫ぶのが遅れたようだ。 健人:「リュウカさん、強かったですね。しかし、俺のエビワラーの力、侮ってましたね。 エビワラー、戻れ。ポケモンセンターに急ぐからな。」 俺は呆然としている彼女に軽く声をかけ、エビワラーをボールに戻して走り出した。 勝負は決まったからな。 あ、それともう一つ、やらないとな。 俺は控え室の一室に入った。そこにはキレイハナと蓮華がいた。 蓮華:「あれっ?先輩、どうしたんですか?」 キレイハナ:「さっきまで試合だったみたいだけど。」 健人:「ああ、エビワラーで勝ってきたところだ。お前たちも頑張れよ、最後の8人に残り、お前たちと戦いたいからな。」 蓮華&キレイハナ:「はい!」 二人は元気よく、俺に返していた。 健人:「次の試合、頑張れよな。俺の彼女も心配してるからさ。」 蓮華:「彼女?先輩、彼女いなかったはずだけど…。」 健人:「ああ、昨日から付き合いだしたんだ、菜々美と。それじゃあな。」 俺はそう言って控え室を出た。 数秒を置いて、蓮華の控え室からは驚きの声が上がっていた。 それにしても、破壊光線が当たった場所、どこだったのかな。 俺は今になってそれをふと思った。 律子:「ふぅ〜、一時はどうなるかと思ったわ。」 哲也:「まさか、ここに飛んでくるとはな。」 その破壊光線は、哲也たちのいる観客席に飛んできていた。 菜々美:「あたしたちが能力者だったからよかったけど…」 志穂:「普通の観客だったら死んでるわね。」 美香:「そうそう。」 破壊光線は、哲也、志穂、菜々美、美香の攻撃によって相殺されていた。 そのうえ。 ナナ:「バリちゃんの力、久々に見たけど前より強くなってたわ。」 ナナのバリヤードのバリアと、律子のセレビィの光の壁も、放たれていたのだった。 ナナ:「それにしても、次は蓮華ちゃんの試合ね。」 律子:「先輩も勝てたし、蓮華ちゃんにも勝ってほしいな。あたしが見つけた特別枠の芽もつぶしたくなかったけど、 今はしょうがないわ。」 美香:「蓮華…」 菜々美:「蓮華ちゃん、絶対に勝ってね。」 哲也:「あいつなら、大丈夫さ。」 志穂:「あたしもそう思うわ。」 彼らがそう願った時、試合開始のメロディが流れ始め、蓮華と夕香がフィールドに向かうのが見えていた。 その頃。 氷雨:「あ〜あ、ヤナギ様の弟子、倒されちゃった。でも、弱かったなぁ。 あれじゃ、ヤナギ様がかわいそうよ。健人君、おめでとう〜!」 氷雨はヤマブキジムで健人の勝利を喜んでいた。 その様子を呆れて見ているのはナツメとなずなだった。 ナツメ:「全く、さっきまでヤナギ様熱だったのが、こうもよくコロコロ変われるわね。」 なずな:「氷雨さんの裏の顔、こんな感じだったんだぁ。」 なずなは不思議なものを見たような表情をしていた。 ナツメ:「それより、蓮華ちゃんに渡せた?」 なずな:「ええ、さっき行ってきました。蓮華の勝利のために、フジ老人がくれた特別なアレを。 アレが効果を成してくれれば、蓮華は勝利する確率がドンドン上がっていきます。」 ナツメ:「そう。…始まるわね。」 健人の試合が終わり、ヤマブキジムだけでなく、タマムシジムやトキワジム、ハナダジム、クチバジムや、 グレンのポケモン研究所、セキチクジム、オーキド研究所、岩山トンネル付近のポケモンセンターでも、 蓮華の勝利を願う、彼女の仲間たちが、蓮華の勝利を願っているのだった。 そして今、蓮華の2次試合の、初試合が始まる。