53.スピード対決!蓮華の試合 はぁ、緊張しかけてたけど、取れたみたいだ。 ついさっき健人先輩がいきなり来たかと思えば、いきなり菜々美ちゃんとの交際を教えられるとは思ってもみなかった。 でも、驚いたおかげで緊張が取れたみたいだった。 キレイハナ:「どう?蓮華、行ける?」 蓮華:「ばっちりよ。」 キレイハナ:「よかった、それじゃ、特別枠を蹴散らしてやりましょ。」 蓮華:「了解。」 その後。 あたしは途中で審判と夕香さんと合流してフィールドに向かった。 夕香:「緊張していないようね。」 蓮華:「当たり前よ。緊張してたらポケモンたちに悪いわ。」 あたしは冷静に言った。が。 夕香:「そう、助かったわ。緊張してる子が相手だと、こちらは楽しめませんから。私を楽しませるように負けてくれるといいですけど。」 単刀直入に宣戦布告をしてきた。 キレイハナ:「あんた、喧嘩売ってるの?」 ここで切れたらいけないと思っていたけど、キレイハナがぷっつり来た様だった。 夕香:「あら?綺麗なのに口が悪いポケモンですわね。美しさが台無しですわ。 あなた、お下品なポケモンを持っていらっしゃるのね。」 蓮華:「下品?これがキレイハナの良さなの。あなたには理解できないかもしれないけどね。 まぁ、上流階級にあたしたちの暮らしのよさを理解できるか聞いても、あなたはどんなに頭がよくても一生無理ね。」 夕香:「理解したいとも思いませんわ。」 あたしはこの後、審判に注意されるまで夕香と言い合いを続けていた。 その頃。 イワヤマトンネル付近のポケモンセンターでは、涼治が仕事の合間を縫ってテレビ中継を見ていた。 ポケモンリーグ開催中は、全国のポケモンセンターがこの様子を伝えているのだ。 ジョーイ:「涼治君、少しは落ち着いたらどうかしら?」 涼治:「すいません。ちょっと蓮華が心配なので。」 ジョーイ:「そう、蓮華ちゃんのバトルの間は仕事の手を休めていていいわよ。」 涼治:「ありがとうございます。蓮華のバトルが終わったら、すぐに仕事に戻ります。」 ジョーイ:「あら?他のバトルはいいの?あなたはポケモンドクターの道に進むのは聞いているけれど、トレーナーでも あるのよ。レベルの高いトレーナーのバトルを見るのも大切じゃないかしら?」 涼治:「いえ、蓮華の後のバトルは、蓮華よりもレベルが下だろうし、俺にとっては蓮華のバトル以外は見る価値がないので。」 そう言って、涼治は蓮華のバトルを見に行った。 これをあの人(哲也)が聞いたらどうなっていたかは、神のみぞ知る。 そしてまた、その頃。 ナナ:「哲也君、どうかした?」 ナナは哲也が突然パンフレットを握りつぶしたのを見て聞いた。 哲也:「いや、何か誰かが俺の悪口を言ったような気がしたからさ。」 ナナ:「気のせいじゃないかしら?」 律子:「意外にそうじゃないかもよ。」 菜々美:「言えてるわね。涼治君たちの誰かがぼそっと言ったのかも。」 美香:「もしかしたら翼先輩かも。」 的を得たわけではなかったが、涼治の言った悪口は、しっかり彼に怒りを与えていた。 哲也:「後で聞いてみるとするかな。」 美香:「あ〜あ、涼治君か翼先輩の運命決まったね。」 菜々美:「志穂ちゃんもいたら笑ってたかもね。」 志穂は蓮華のバトルが終わった後、1試合をあけてバトルを控えているらしい。 そのために気持ちを集中しに行っていた。すでに蓮華は勝つと、志穂は思っているらしい。 律子:「うふふ、どうなるか楽しみね。それよりも、蓮華ちゃんのバトルも楽しみだけど。」 蓮華と夕香は今、バトルフィールドのトレーナーの位置に立っていた。 律子:「蓮華ちゃんが勝つか、夕香ちゃんが勝つか、ね。」 自分の親友と、自分の選んだ特別枠トレーナーが戦うため、律子は妙な気分になっていたのだ。 そして試合は始まった。 バトルフィールドは今回はルーレットで普通の公式フィールドに決まっていた。 審判:「これより、エンジュシティ出身夕香選手と、グロウタウン出身蓮華選手の試合を開始します。 使用ポケモンは3体、ポケモンの交代は可能です。ただし、3体目のポケモンでの自爆行為は禁止とし、 禁止行為を行った選手は失格となります。」 夕香:「オホホホ、あなたの顔が敗北に染まるのを望み、私のポケモンが優雅に勝つ姿が目に浮かびますわ。」 蓮華:「あたしはそんな言葉に乗ることはないわよ。たとえキレイハナが乗っても、あたしはあなたを倒すんだから!」 観客席からは、あたしの名前を呼ぶ「蓮華コール」が聞こえる傍ら、夕香のための特別応援団がその応援を打ち消す勢いで 応援をしていた。夕香への応援は、とっても派手で、金持ちのお嬢様のためっていうのが分かりやすくて、その目に見とれてしまう 観客も多いだろう。 審判:「それでは、試合開始!」 夕香:「行きなさい!私の愛馬、ギャロップ!」 蓮華:「ギャロップで来たのね、だったら、お願いね、フィル!」 夕香が出したのは炎タイプで、金色の炎を放つ、火の馬のポケモン、ギャロップだった。 データに寄れば、彼女はこのギャロップで10人のトレーナーを水タイプでさえも、一撃で倒してきたという。 ポニータ族には技マシンによってあの技が覚えられるため、岩や水タイプを出すのは危険と考え、対するあたしのポケモンとして、 エスパータイプのエーフィこと、フィルを選んだ。 夕香:「あらあら、そのようなポケモンで私のギャロップに追いつくのかしら?ギャロップ、高速移動で背後に回り、炎の渦ですわ!」 ギャロップはフィルの背後を回ろうとする。 蓮華:「それなら、フィル、背後に向かって砂かけよ!」 フィルは後ろ足を使って、背後に砂を掛け捲った。すると、炎の渦を出そうにも砂煙に対し、ギャロップは少し後ず去っていた。 蓮華:「今よ!サイケ光線!」 フィルは額の赤いコアからサイケ光線を放った。が、それはギャロップがフィルをまたぐように跳び、避けてしまった。 夕香:「うふふ、私の愛馬はそれくらいではめげませんわ。ギャロップ、飛び跳ねる攻撃から、踏みつける攻撃です!」 ギャロップは高く跳び、そしてフィルに向かって落下してきた。 蓮華:「リフレクタで堪えるのよ!」 しかし、飛び跳ねる攻撃の落下スピードがついた状態での、前両足での踏みつける攻撃は瓦割りに等しい威力があった。 リフレクタは皹と同時に割れ、踏みつける攻撃はフィルに思いっきり当たってしまった。 蓮華:「フィル!」 夕香:「落下のスピードを生かした攻撃の味はいかがですの?ギャロップは、そのまま乱れ突きですわ!」 ギャロップの角がフィルに襲い掛かる。 蓮華:「フィル、シャドーボールよ!」 夕香:「させませんわ、ギャロップ、二度蹴りで遠くに蹴り放ちなさい!」 フィルはすぐに体制を整えたが、ギャロップの素早い動きによる二度蹴りが、フィルを遠くに蹴り飛ばしていた。 フィールドに落下し、動くにも、動けない状態のフィル。 夕香:「残念ですわ。あなたは強いとお聞きしていましたけど、やはり階級の違いはバトルにも現れているようですわ。 このまま私の圧勝ですわね。ギャロップ、日本晴れから大文字よ!」 夕香は、炎の大技で勝負を決めようとした。でも、しめたと思った。 蓮華:「フィル、自己暗示よ!そして電光石火で避けて!」 大文字は放たれた。 誰もがフィルを倒すと思ったが、突如先ほどのダメージを受けて倒れていたフィルが、猛スピードで大文字を避け、 ギャロップに横から体当たりをしていたのだ。 夕香:「まぁ!何事ですの!」 蓮華:「残念でした。フィルの自己暗示で、ギャロップの高速移動で得たスピードと同じ状態にさせてもらったのよ。 フィル、そのまま朝の日差しよ!願い事も忘れないで!」 夕香:「はっ、やってしまいましたわ。敵に塩を送ってしまうとは…」 夕香は失敗を悟っていた。 なぜなら、日本晴れの状態で朝の日差しを行えば、通常の2倍、体力を回復できるのだ。 これが瀕死ギリギリだとしても、2倍効果で元の体力にだって戻る場合もある。 しかも、目の前のフィルの素早さは、今の自分のギャロップと同じなのだ。 夕香:「やってくれましたわね。でも、ギャロップの奥の手はありますわ!ソーラービームです!」 ポニータ族は技マシンにより、アイアンテールとソーラービームを覚えられるのだ。 蓮華:「サイケ光線よ!」 ソーラービームはサイケ光線とぶつかり合う。しかし、日本晴れ効果によってソーラービームの威力は増していた。 夕香:「そのまま押し切るのですわ!」 蓮華:「だったら、フィル、サイケ光線をやめてシャドーボールよ!」 サイケ光線が止まり、ソーラービームはフィルを倒そうとするが、打ち出されたシャドーボールがそれを相殺していた。 爆煙が舞う。 夕香:「ギャロップ、炎の渦で爆煙を吹き飛ばすのです!」 ギャロップは炎の渦を放った。その直後、フィルがギャロップに飛び掛っていた。 蓮華:「フィル、ギャロップに噛み付くのよ!」 蓮華はシャドーボールとの相殺で爆発が起きた時、フィルにギャロップの背中に飛び乗るように指示を出したのだ。 たとえギャロップでも、相手が背中に乗っていては技の出しようがないのだ。 そしてフィルは、ギャロップの首筋を噛み付いた。 夕香:「ギャロップ!早くエーフィを体から落とすのです!」 しかし、ギャロップは痛みによってその指示を聞くに聞けなかった。 蓮華:「フィル、続いて泥棒よ!そして離れて!」 フィルは、ギャロップが首につけていた木の実を盗んだ。 夕香:「もう、怒りましたわよ!ギャロップ、どくどくですわ!どくどくで、エーフィを倒すのです!」 エーフィは毒を受けた。でも、突如光り輝き、盗んだ木の実がそれを治していた。 夕香は忘れていたのだ。自分が持たせていたのが、ラムの実、つまり、状態以上を全て治せる木の実だったことを。 夕香:「私とした事が…でも、これ以上の勝手はさせませんわ!ギャロップ、火炎車で突進ですわ!」 ギャロップはフィルに向かって、炎を纏い、突進してきた。 蓮華:「光の壁で受け止めて!そしてスピードスターよ!」 フィルは光の壁で突進を受け止めた。そして、至近距離でスピードスターを放つ。 威力の小さいこの攻撃が、何故か大きなダメージを与えていた。 夕香:「どうしてですの?なぜ、エーフィが突然強くなったのです!」 蓮華:「うふふ、初めに持っていたのがチイラの実だったからよ。」 チイラの実とは、幻島という、滅多に現れない、幻と思える島に生えている、HPは少なくなると攻撃力をアップさせる 木の実のことだった。 蓮華:「このバトルの前に、友達から貰っていたのよ。」 夕香:「そんな…ギャロップ!押しかえ…ギャロップ!?」 ギャロップは突如、その場に崩れ落ちた。 顔は青く、息苦しいようだった。 蓮華:「フィルの特性はシンクロよ。あなたに猛毒状態にされたけど、その状態にギャロップもなっていたの。 どうやらあなたは、それを我を忘れたことで気づき損ねたようね。」 審判:「ギャロップ、戦闘不能!エーフィの勝利!」 夕香はギャロップに駆け寄っていった。 律子:「まずは一勝ね。」 蓮華の一勝と同時に、蓮華コールは高まっていた。 その蓮華コールの発信地である哲也は、気持ちが高まっているらしくさらに応援を高めているようだ。 律子、ナナ、菜々美、美香の4人はそれを避けるように(さすがに引いたので)、こっそりと離れた場所に移動していた。 この姿を哲也のファンクラブのメンバーが見れば、多分ファンクラブをやめるだろう。 (ファンクラブの会員No.1は玲奈=哲也の彼女、だったりするが) 美香:「一時はやばいかと思ったけど。」 ナナ:「エーフィの技と特性が功を成したわね。」 菜々美:「律子、セレビィを瀕死近くに追い込んだのはギャロップだったの?」 律子:「いいえ。ギャロップは早々とセレビィが倒したわ。セレビィを倒しかけたのは虫ポケモンよ。」 夕香:「ギャロップ、戻りなさい。よくも私のかわいい愛馬に毒を盛らせたわね。」 蓮華:「あなたがフィルの特性を知らずに毒毒を放ったからでしょ?勝手に決め付けないでくれない?」 夕香:「勝手に言ってなさい。次の私のポケモン、かわいいミンミン君があなたを倒してあげるわ。 行きなさい!テッカニン!」 律子:「あの子よ!セレビィを瀕死に追い込んだのは!」 ナナ:「飛行・虫タイプで、しかも特性によって毎ターン、自分の素早さを上げられるポケモンね!」 夕香:「この子のおかげで特別枠には入れたようなもの。あなたもこの子のスピードで一瞬で倒してあげるわ!」 蓮華:「分が悪いわね。フィル、戻って!」 自己暗示があっても、少しずつスピードが上がるテッカニンに追いつくのは大変だし、テッカニンは虫タイプ。 エスパータイプのフィルには天敵だ。ここは倒されるわけにはいかない。 だったら次はこの子だ! 蓮華:「スピードに対抗するとしたらきっぴーだけど、きっぴーは今回は出さないわよ。 あたしの2番手はこの子、ひがめ、お願いね!」 あたしの2番手は炎タイプのコータスこと、ひがめ。 夕香:「そんな素早くないポケモンがテッカニンに攻撃できるかしら?テッカニン、高速移動よ! そして影分身、剣の舞よ!」 夕香のテッカニンは、素早さと攻撃力をあげ、回避率を上げていた。 蓮華:「ひがめ、こっちはのろいよ!」 「のろい」とはゴーストポケモンとそれ以外で技の効果が違う。 ゴーストポケモンの場合は相手に自分のHP半分と引き換えに呪いをかけることができるが、他のポケモンは、素早さを下げる代わりに、 攻撃力と防御力を上げる事ができた。 夕香:「鈍い攻撃ですのね、そのポケモンにふさわしい言葉ですわ。テッカニン、乱れ引っ掻きですわ!」 蓮華:「ひがめ、鉄壁よ!」 テッカニンはひがめの甲羅に何度も鋭いツメを立てたが、ひがめは甲羅のおかげでその攻撃を防いでいた。 夕香:「それでしたら嫌な音で甲羅の中から本体を引きずり出してあげるのです!」 嫌な音は会場中を響き渡った。 律子:「地獄でしょうね、他の人は。」 ナナ:「菜々美ちゃんがいて助かったわ。」 美香:「菜々美だけだよ。防音の特性を持つ人間は。」 菜々美:「それ…ほめてるの?」 会場の中で嫌な音を防げていたのは、音属性を持ち、唯一嫌な音をバリアで遮断できた菜々美と、 その周辺にいる3人だけだった。 さすがの嫌な音に、ひがめも外に出てきてしまった。 夕香:「今ですわ!切り裂く攻撃です!…どうしてこの音が嫌なのかしら?」 多分慣れてしまっているだろう、夕香は、全く平気な状態でテッカニンに指示を出した。 そしてテッカニンはひがめに向かって思いっきり近づいていた。 夕香:「これで終わりよ。」 蓮華:「そんなことはないわ!ひがめ、スモッグよ!」 ひがめは体中から毒を含んだ煙を放出した。 夕香:「何ですって!テッカニン、引き返すのです!」 しかし、テッカニンはスモッグに巻き込まれ、出てきたときはヨロヨロとしていた。 どうやら毒状態になったらしい。 テッカニンは木の実を持っているようだが、それはラムの実ではないらしい。毒状態を回復する傾向がないのだ。 夕香:「1度ならず、2度も私のポケモンに毒を盛るとは!テッカニン、シャドーボールです!」 テッカニンはシャドーボールをひがめに放った。 蓮華:「ひがめ、火炎放射よ!」 シャドーボールは火炎放射によってとめられ、押し合いが始まっていた。 夕香:「テッカニン、そのまま破壊光線です!」 シャドーボールに破壊光線が混ざり、火炎放射を押し返していた。 そしてひがめは破壊光線を受けて吹っ飛んでしまった。 夕香:「そのままさらにソーラービームでおしまいね!」 テッカニンのソーラービームが放たれた。 でも、ひがめはしっかりとまだ立っていた。そしてあの木の実を食べた。 なずなちゃんが届けてくれた木の実を。 さっきもあの木の実に救われたのだ。 始まる前の時だった。 〜回想〜 蓮華:「何を持たせよう…特別枠を相手に何も持たずに行くのは不利よ。」 キレイハナ:「誰を出すかも、そして作戦も決めたけど、それでも持ち物が悪いと失敗するものね。」 あたしとキレイハナは持ち物の中から何を持たせるかで悩んでいた。 そんな時だった。 ??:「何を悩んでいるの?」 声がしたと同時に、あたしの前にはなずなちゃんが立っていた。 蓮華:「なずなちゃん!」 なずな:「ヤッホ〜、多分持たせるもので悩んでないかなとか思ってたんだけど、どう?」 蓮華:「当たってる。」 なずな:「そうでしょ?だから、これを届けに来たの。今回のバトルでしか使えないけど、使ってみて。」 なずなちゃんが差し出したのは3種類の木の実だった。 蓮華:「これは?」 なずな:「フジ老人がスペース団を倒してくれたりして、シオンを救ってくれたお礼だって。 チイラ、スター、サンの3種類の木の実よ。フジ老人の育ててるものなんだけどね、滅多に手に入らないらしいよ。 これを使ってみてね。」 なずなちゃんはそういい残すと帰っていった。 テレポート能力、あると便利だね。 〜回想終了〜 蓮華:「ひがめ、オーバーヒートよ!」 ひがめはソーラービームに向かってオーバーヒートを放った。 夕香:「すでにボロボロになってしまった状態のあなたののろまさんが勝てるはず…何ですの!」 夕香は驚いていた。あたしも驚いた。 ひがめが持っていたのはスターの実。それはHPが少なくなった時に何かの能力が一つ、ぐ〜んとあがる効果を示すのだ。 そして今回は特殊攻撃能力が上がっていた。 そのため、ひがめの最大パワーのオーバーヒートがソーラービームを貫き、射程範囲にいたテッカニンを包み込んでいた。 そして、テッカニンはもろ炎技を浴びて倒れた。 審判:「テッカニン、戦闘不能!コータスの勝利!」 あたしは2勝した。 律子:「蓮華ちゃんが2勝だ!イェ〜イ!」 4人は哲也から離れた場所で喜び合っていた。 ナナ:「テッカニンを倒すとはね。」 菜々美:「破壊光線を受けて倒れなかったことが助かった理由ね。」 美香:「確かにそうね。シャドーボールを含んだ破壊光線だもの。嫌な音を受けたとはいえ、鉄壁と「鈍い」の効果が 出てくれたようね。」 律子:「このままだったら行くかも。」 あたしがひがめと喜び、みんなが喜んでくれている時、夕香はといえば、鬼の形相であたしを睨みつけていた。 毒を受けていた上、炎を浴びせたことでテッカニンの羽が灰になってしまったらしい。 でも、そういうのもポケモンセンターに行って看病すれば治るらしいけど。 と、いきなり澄ました表情に戻っていた。 夕香:「こうなってしまっては、私のプライドも立ちませんわ!次の勝負を放棄して、私に勝利をお譲りなさい! そうすれば、あなたは今後、仕事に出てもリストラされる心配もございませんわよ。私のお父様の会社は大きいですから。」 どうやら物で釣る様子だ。 蓮華:「残念ね。あたしは別世界に帰るためにリーグに出てるの。この世界で生まれ育ったわけじゃないわ。」 すると。 夕香:「まぁ!そうでしたの?あらら、野蛮な方だと思っていましたら、別世界は野蛮な人が多いですわね。」 蓮華:「何ですって?」 夕香:「ありのままですわ。私のかわいいポケモンたちを残酷きまわりない方法で倒しているのですから。 でも、それも終わりですわ。バンギラス、行くのですわ!」 そっちの方が野蛮な気がするんだけど。あたしはそう思ったけど、あえて言葉に出さなかった。 でも、はっきり今、あたしはそう思った。 蓮華:「悪いけど、もう遊んでる暇はないから。お嬢様の特権を出されても、あたしはあなたに屈しないわ。 敗北したあとに通り魔に注意した方がいいわよ。あたしか、もしくはあたしと一緒に別世界から来たみんなの誰かが、 あなたを狙うわよ。」 蓮華はバンギラスを出して高笑いをしている夕香に、冷めた目で言った。 夕香:「何ですの?負けるからってそのようなことを言うのですの?」 蓮華:「いいえ、負けないわ。それよりも、圧勝よ。キレイハナ、行って。」 キレイハナ:「了解!」 ず〜〜〜〜っと怒りを我慢し続けていたキレイハナの番がついに来た。 夕香:「あら、野蛮なポケモンですわね。バンギラス、火炎放射ですわ。」 蓮華:「神秘の守りよ!」 キレイハナ:「そんな攻撃、通じないわよ!」 キレイハナは神秘の守りを纏ってまま、バンギラスに向かって走っていた。 夕香:「それでは破壊光線ですわよ!」 しかし、バンギラスが破壊光線を放とうとしたとき、彼らの目の前にキレイハナはいなかった。 夕香:「あらっ?どこに隠れましたの?もしや、ボールに戻したのですね!卑怯ですわ!」 キレイハナ:「誰が?誰が戻されたですって?」 キレイハナは戻っていない。 気づいていなかっただけよ。 蓮華:「うふふ、今のこの状態がわかるかしら?」 夕香:「なっ!?私の真似をするなどと…暑いですわね。…日本晴れ!?」 夕香は驚いたようだ。 実は、怒りに任せてひがめが日本晴れにして戻ったのにも気づかなかったらしい。 自分が強いと、そしてプライドだとか、そういうもののためにやっているから、ちょっとした変化に気づかなくなるのよ。 蓮華:「そういうことよ。日本晴れでキレイハナは素早さがいつもの2倍。 そして同時にキレイハナは上よ!」 夕香:「上ですって!」 夕香が上を見上げた時、キレイハナの準備は整っていた。 キレイハナは、ソーラービームを真下に放ち、宙に思いっきり飛び上がっていたのだ。 蓮華:「気合パンチよ!」 キレイハナ:「うりゃあ〜!」 キレイハナは気合パンチをバンギラスにぶちかました。 岩・悪タイプのバンギラスに対して格闘技であり、威力の高い気合パンチは4倍効果のものだった。 夕香:「バンギラス、シャドーボールです!」 蓮華:「ソーラービームよ!」 夕香:「ならば、破壊光線です!」 蓮華:「蔓の鞭でジャンプして回避して!」 キレイハナとバンギラスの接戦は続いていた。でも、どう転がっても勝機を見せているのはキレイハナだった。 次第に蓮華コールとキレイハナコール(ナナたちが始めた)が会場を包み、夕香と夕香応援団は飲み込まれていた。 夕香:「何でですの…こんな野蛮なものに庶民は好むのですか?バンギラス、破壊光線です!」 夕香は動揺していて、破壊光線を連続で放てないことを忘れ、反動で撃つ事ができない状態のバンギラスに指示を出し、 そして失敗に気づいた。 夕香:「はっ…、ならば目覚…」 蓮華:「今よ!キレイハナ、リーフブレード!」 キレイハナのリーフブレードがバンギラスを一刀両断した。 そしてバンギラスはキレイハナと威嚇しあったけど、バンギラスはついに倒れた。 夕香:「バンギラス!?立ちなさい!立つのです!私はこんなところで負けるわけには行きません!」 しかし、バンギラスは立つ事がなく、瀕死が確認され、 審判:「バンギラス戦闘不能!よってこの勝負、グロウタウン出身、蓮華選手の勝利!」 と、審判は宣言していた。 律子:「やった〜!」 ナナ:「蓮華ちゃんが勝った!」 美香:「最高ね!」 菜々美:「このまま頑張ってよ!」 哲也:「蓮華!最高だぞ!」 会場や各地では、蓮華の仲間が大きな歓声を上げて喜んでいた。 志穂:「この歓声…。どうやら、蓮華ちゃんが勝ったみたいね。予想通りだわ。」 涼治:「蓮華…おめでとう!」 そして蓮華&キレイハナコールは会場を大きく包み込んでいた。 夕香:「悔しいですけど負けを認めますわ。庶民の力がこれほどまでのものとは思いませんでした。」 蓮華:「分かったみたいね。あたしたちはいつも、あなたみたいに人を見下すことはないの。」 夕香:「私は少し、人との付き合いを勉強する必要があるようですわ。 これも経験ですわ。」 夕香は優雅な姿の凛々しいポニータを出し、日傘を出して去っていった。 最後までお嬢様だった。 律子:「夕香ちゃんが負けたし、今年の特別枠、運悪く不作になりそうね。」 ナナ:「そうね。」 美香:「次は志穂ちゃんか。」 菜々美:「志穂ちゃんの試合まで、蓮華のところに行ってよ!」 4人は控え室に向かい、数時間後、控え室はキレイハナと蓮華たちの声が響き渡るのだった。