55.飛翔!哲也と相棒のファイトバトル 〜回想〜 哲也:「すぐ脱出するぞ!蓮華!」 俺がこう言った直後だった。 突然爆発が起きて、気づいた時俺は、二つの卵と一羽のポッポと一緒に草原にいた。 哲也:「どこなんだ?ここは。俺は…そうだ!蓮華!ガーディ!」 ポケモンたちを救出するために研究所に忍び込んで、そして背中を銃で撃たれかけ、罠に落ちた。 でも何とか蓮華やガーディたちと合流して、脱出しようとしたその時、爆発が起きて…。 しかし、誰もいない草原の中、俺といるのは大きな卵とポッポだけだった。 哲也:「蓮華も、ガーディも…。みんな…消えちまったのかよ。 残ったのはお前だけなのか?ポッポ。」 ポッポ:「クルックゥ。」 哲也:「お前と俺だけなのか…。」 ??:「いいえ、消えてないわ。あなたは今来たんですね。」 哲也:「誰だ!」 突然声が聞こえてきた。 ??:「うふふ、その様子じゃ元気はあるようですね。」 哲也:「誰なんだ!答えてくれよ!」 ??:「ここで答える必要はありません。」 少女の声だった。そしてその声が軽く拒否した時だった。突如、俺は睡魔に襲われ、その場で気を失っていた。 そして、気づいた時、俺はどこかの家の部屋で、ベッドの中で寝ていた。 哲也:「ここは…。」 ??:「おお、やっと気がついたかね。」 部屋に初老の白衣を着た男性が入ってきた。 哲也:「あなたは…?俺、どうしてここに…」 ??:「君はわしの家の前に倒れていたのじゃ。何があったのか知らないが、どこから来たのじゃ?」 その人はオーキド博士だった。そして俺は、ここがポケモン世界であることを知ると同時に、 今までいた世界から飛ばされてきてしまったことを知った。また、俺以外にもそういう人はいるということも。 俺はオーキド博士に家の前に倒れていたところを助けられ、そしてここで寝ていたらしい。 俺のそばには、ガーディとポッポ、そしてニドラン♂がいて、卵のカケラが落ちていたらしい。 多分、初めに目が覚めたときに卵になっていたのがガーディとニドラン♂のものだったようだ。 爆発でこっちに来た時に、その爆発をもろに受け、ガーディとニドランは卵になったんだと思う。 ポッポが卵にならなかったのは、俺の風の力=飛行の力を受けたからだと、俺は思う。 オーキド博士:「せっかくの機会じゃろうし、ここはトレーナーとして旅立つのはどうじゃろうか? 多分、旅をしていく中で、君の探している妹さんにも会えるじゃろう。」 そして俺は、オーキド博士の助言を受け、1週間かけて、ポケモンの知識やバトルセンスを身につけた。 元々物覚えがいいから、十分に知識を身につけることもできた。 ニャース:「かなりの腕前だにゃ。それじゃ、頑張るにゃ。」 ケンジ:「君なら3ヶ月もあればバッジをゲットできるはずだよ。」 と、研究所にいた喋るニャースやポケモンウォッチャーのケンジさんは言っていた。 そして俺は旅に出て、そして色々と経験して、こっちに俺と同じように飛ばされてきた親友や後輩に出会い、 そしてバッジもゲットし、スペース団とも戦い、そんな時に蓮華と、再び再会した。 初めは旅を反対した俺だったけど、だんだん蓮華を認められるようになっていた。 俺自身、色々と蓮華に会ってから挫折を感じるようになっていた。いや、挫折を受けることは多々あった。 蓮華にも涼治にも負けるし、操られたトロピウスにも負けた。 多分、特に蓮華の力は、能力という力も、ポケモンバトルなどの力でも、すべてが負けているのかもしれない。 そう感じる事が多かった。 でも、それを無理やり乗り切って、そしてやっていた。 けれど、スペース団との最大決戦の時、俺は玲奈に惨敗した。 それで、初めはあきらめていて、現実世界に戻らされた時も、このままこっちにいて、玲奈とは別世界の人間だと、 自分でそう意識させて、舞さんのために現実世界に残ろうとしたりもした。 でも、現実世界に戻った俺を再び、こっちに連れてきてくれたのも蓮華だった。 そして俺は、玲奈と再び対峙して、そして操られていた彼女を元に戻せた。 それから俺は修行を続け、玲奈に励まされ、翼やニャースの力を借りて、この場に再びやってきた。 翼:「哲也、お前は心が弱いんだろうな。でも、哲也はペースで行けば大丈夫だと思うぜ。」 玲奈:「哲也、あたしは哲也を信じるよ。だから、頑張ってね。応援にはいけないけど、あたしは哲也を応援しているわ。」 〜回想終了〜 ??:「また今までのことを感じていたのか?」 ふと昔を思い出すように過去を思い返していたところ、俺はボールから飛び出した彼に声をかけられた。 俺と一緒にここまでやってきた仲間であり、大事な相棒である彼に。 哲也:「ん?ああ、ここまでやってきたからな。 志穂も健人も蓮華も勝ち上がった。後は俺が勝ちあがる番だ。それに、ベスト8に俺たち4人は必ず残るはずだからな。」 ??:「そうだな。しかし、奴は桁外れの能力らしいぞ。」 哲也:「かもしれない。でも、俺とお前たちでなら、何とかなるよ。そのための修行だっただろ?」 ??:「そうだな。お前らしく行けよ。本心が純真純情のお前はペースを崩されれば、そのまま壊される。」 哲也:「分かったよ。気をつける。」 俺は、彼をボールに戻し、フィールドに向かった。 哲兄がそんなことをしていた頃、あたしたちは観客席の一角にいた。 試合前、あたしたちは哲兄の応援のために観客席を一つ陣取っていた。 律子:「次の試合で哲也先輩が勝ち抜ければ、ベスト8は決まったようなものね。 あたしが導いた甲斐もあったわ。」 蓮華:「哲兄を導いたってどういうこと?」 律子:「だって、今は開発でなくなっちゃったタマムシシティの森の中の唯一の原っぱで寝ていた哲也先輩を、 オーキド博士の下に送ったのはあたしだもの。」 ナナ:「そうだったの。でも、あたしのところやトキワシティでもよかったじゃない。」 律子:「ううん、セレビィが導いたの。あたしのセレビィは空間と時間、両方を操る事ができるわ。 かつてこのセレビィは、子供時代のオーキド博士をポケモンマスターのサトシさんのところに送った経験があるのよ。 だから、オーキド博士に思い入れがあるのよ。…その時の色々なことでね。」 蓮華:「ふぅ〜ん。」 律子のセレビィって、色んな経験をしてるのね。 そんな時、志穂ちゃんと健人先輩が来て、それから空から火の鳥が現れた。 志穂:「おまたせ。ポケモンをセンターに預けてきたわ。」 美香:「そう。先輩、エビワラーは大丈夫なの?」 健人:「ああ。もう十分大丈夫だ。血が出た割には結構傷は浅かったからな。」 と、火の鳥が…美咲ちゃんが何人かを連れたって舞い降りてきた。 美咲:「おまたせ!朱雀の半妖怪の美咲、ここに登場よ!」 なずな:「あたしのテレポートで来てもよかったんだけどね。蓮華ちゃん、あの木の実、活用してもらえてよかったわ。」 蓮華:「うん、すごく助かったよ。」 氷雨:「あ〜、熱かったわ。さすがに朱雀の血を引くだけあるわね、美咲ちゃんの炎。」 美咲:「当たり前でしょ。今日は氷雨さんを乗せたから力を弱めていたのよね。」 美咲はつい最近、ようやく自分の力に目覚めた。 今までの力とは比べ物にならない、強力な力。それは、朱雀の炎使いの力。 これはまた今度話すことで置いといて。 翼:「それにしても、広いところだな。」 美香:「翼先輩!」 涼治:「俺も来てよかったんですね。」 蓮華:「涼治、来たのね。」 ついあたしたちは赤くなってしまった。 翼先輩と涼治は来る予定ではなかったのだ。それぞれ、研究所とポケモンセンターにいたのだが、 美咲たちが気を利かせたらしい。 ニャース:「にゃ〜も来れるとは思わなかったにゃ。」 キレイハナ:「ニャース、あなたも来たのね。」 ニャース:「そうにゃ。これで話せるポケモンは3匹になったにゃ。喋れるポケモン同士、応援しあえるときがにゃ。」 蓮華:「それ…どういうこと?」 菜々美:「喋れるのは、あなたたちだけじゃなかったの?」 ニャース:「違うにゃ。実はもう一匹いるにゃ。」 蓮華:「えっ?」 あたしたちは突然のニャースの言葉に驚いた。 律子:「ええ、いるわね。」 美香:「律子?何か知ってるの?」 蓮華:「知ってるなら律子、教えてよ。」 律子:「だめ。お楽しみは取っておくものよ。」 そんなとき、哲兄がフィールドにやってくるのが見えた。 あたしと、美香、律子、菜々美、ナナ、ニャース、氷雨さん、志穂ちゃん、健人先輩、美咲ちゃん、なずなちゃん、 涼治、翼先輩、そしてキレイハナの14人で観客席の一つを陣取って、哲兄を応援するよ。 一箇所から、異様な能力が感じられた。 蓮華たちだと思う。 明らかに会場内で一箇所だけ、とんでもなく強い能力の波動を感じたのだ。 応援に来るのは嬉しいけどな。 雷司:「お前が哲也か。」 そんな時に俺の前にやってきたのは、対戦相手の雷司だった。 哲也:「ああ。」 雷司:「そっか。見た感じは普通のようだけど、お前、本当は怖いんじゃないか?負けるのが。」 哲也:「まさか。俺はお前に勝つ。決まってるだろ?」 雷司:「ふっ、それはないな。お前は弱い。あのパソコンのデータを読む限り、お前は俺には勝てない。 そろそろ逃げた方がいいんじゃないか?」 雷司は俺に揺さぶりをかけていた。俺はこういうのは結構苦手なのだ。 多分、前に俺と戦った相手から聞いたのかもしれない。予選の時はポーカーフェイスでやっていたけど、 実際は緊張が止まらなかった。今だってそうだ。 でも、みんなからの応援が自分を保たせてくれていた。 哲也:「俺は逃げない。お前にも勝つ。逃げるわけないだろ。」 俺はクールに言い切ってやった。 雷司:「そうか。でもさ、俺の女に手を出した奴が言えるのか?」 哲也:「え…?」 雷司:「玲奈は俺の女だ。あいつはこっちの世界に来てからずっと、俺と恋人だった。 そしてお前に対しては遊びだった。その証拠に、お前には全く連絡がないだろ?それは玲奈がお前を捨てたからなのさ。 俺が捨てさせたというべきかな。」 哲也:「そ、そんなことは…」 雷司:「馬鹿な奴だな、お前は。」 そんなはずはない…。玲奈と俺は…。 律子:「あれっ?哲也先輩の様子がおかしくない?」 氷雨:「本当ね。顔が青いわよ。」 翼:「緊張してもポーカーフェイスで隠しとおせる哲也がどうかしたのかな?」 観客席にいるあたしたちでも、哲兄の様子はよく分かった。でも、出てきたときと、対戦相手と別れた後では 全く足取りが違っていた。 ナナ:「おかしいわ。」 蓮華:「そうだよね、哲兄の様子…」 ナナ:「ううん、違うの。雷司の様子がおかしいわ。」 氷雨:「どういうこと?」 ナナ:「あいつは元気が取りえのパワータイプ男よ。ある意味、バトルセンスを持った体力馬鹿。 それが全然そんな感じじゃないの。まるで別人みたい。」 あたしたちは二人の様子がおかしいと感じていた。 菜々美:「多分、別人なのかも。ていうか、哲也先輩が危ないよ。氷雨さん、一時、バトルを中断させて。」 氷雨:「どういうこと?」 律子:「菜々美ちゃん?」 志穂:「音を聞き取る能力で何かを聞いたの?」 菜々美:「ええ。」 菜々美ちゃんの能力には、遠くの会話を聞き取る力があった。 美香:「何を聞いたの?」 菜々美:「雷司っていう奴が、哲也先輩に玲奈先輩は自分の彼女で、玲奈先輩は哲也先輩を捨てたって言ったの。」 志穂:「ありえない。」 翼:「そんなはずはないぞ。」 菜々美:「でも、現に言ってた。ただ、雷司って奴の声、どことなく棒読みだった。 これは何かあるよ。だから氷雨さん、お願い。」 ナナ:「あたしも許可するわ。」 氷雨:「分かった。」 それから数秒後のことだった。 明らかに観客から見ても、哲兄がうなだれている状態の中、バトルが始まろうとした時だった。 猛吹雪が突然起きて、バトルは中断になった。 その間、なずなが玲奈先輩を呼びに走り、翼先輩たちは哲兄を元気づけに行った。 そしてあたしと律子、菜々美ちゃんはといえば、雷司の元に向かった。 律子:「ここよ。」 菜々美:「中に誰かがいるわ。雷司って奴以外の声が聞こえる。」 あたしたちはドアに耳を近づけた。すると…。 ”??:「くそっ、もう少しで強豪の一人を倒せ、心が弱くなったところをスペース団に引き込めたというのに。」 ??:「しょうがないことだ。吹雪で中断されてしまったのだから。」 ??:「しかし、このままもう少しこいつに催眠をかけておけば、そしてあの女の催眠が続いていれば大丈夫だろうな。」” 律子:「スペース団だって。」 菜々美:「残党でしょ。」 蓮華:「哲兄を引き込んで、あたしたちに復讐する気かも。特にあたしに恨みが大きいはずだし。」 あたしたちはみんなに知らせた。 と、そこになずなが、玲奈先輩を連れて戻ってきた。 なずな:「玲奈先輩、催眠術にかかっていたみたいよ。」 蓮華:「らしいね。今それにあたしたちもたどり着いたところよ。」 玲奈:「哲也を倒すためですって?」 蓮華:「ええ。」 ナナ:「残党がまだうろついてたとはね。しかもあたしの権力が及ぶところにいたとは。」 志穂:「大会が大きいから、どこかの隙間から鼠が入ってもおかしくないわ。」 健人:「しかし、このままだと危ないな。玲奈、哲也のところに行ってくれよ。」 玲奈:「分かってるわ。」 健人先輩たちが玲奈先輩を案内していくと、あたしたちは再び彼の部屋に行った。 すると、ちょうど出てくるスペース団に出会った。 団員A:「お、お前らは!?」 団員B:「しまった!見つかってしまった!」 菜々美:「こいつら…馬鹿?」 全員:「そうかもね(な)。」 この後のことを簡単に説明すると、団員は捕まえてちょっとボコしてから警察に引き渡した。 哲兄は玲奈先輩のおかげでようやく落ち着いたし、雷司はナナと律子がこのことを説明しに行った。 そして、2時間後。 氷雨さんが降らせ過ぎた雪をようやく溶かし終え、リーグ戦は再開されることになった。 雷司:「さっきは悪かったな。」 哲也:「いや、別にもう気にしていない。」 雷司:「そうか。でも、俺が勝つのは見えてきている。絶対に負けないからな。」 哲也:「それはこっちの言うセリフさ。」 さっきは操られていたこいつの言葉に動揺されたが、今は玲奈もいる。 絶対大丈夫だという自信が、今は俺にはあった。 今回はルーレットで、フィールドは岩のフィールドになった。 審判:「これより、キキョウシティ出身雷司選手と、マサラタウン出身哲也選手の試合を開始します。 使用ポケモンは3体、ポケモンの交代は自由とします。ただし、3匹目のポケモンによる自爆行為は失格とします。 それでは、試合開始!」 雷司:「行け!エアームド!」 哲也:「ピジョット、お前の力を見せてやれ!」 雷司の一番手は飛行・鋼タイプ、鎧鳥ポケモンのエアームドだった。 そして俺は相棒であるノーマル・飛行タイプのピジョット。相性からすれば、不利なのは俺だった。 雷司:「ピジョットか。しかし、俺の師匠、飛行ジムリーダーのハヤトさんのピジョットにも勝ったエアームドに、 お前のピジョットが勝てるわけがないな。」 哲也:「それは違う。鋼の力にも打ち勝つ自身のある俺のピジョットをなめてもらっては困る。」 雷司:「そうか。でも、言葉だけなら何とでも言える。エアームド、翼で打つ攻撃だ!鋼の鋭さを見せてやれ!」 哲也:「ピジョット、こっちは鋼の翼だ!」 エアームドの翼で打つ攻撃と、ピジョットの鋼の翼がぶつかり合った。 大きな火花が散りながら、ピジョットもエアームドもお互い弾き返されていた。 観客や雷司の驚きはすごいものだった。 鋼タイプの力がノーマルタイプと互角だったからだった。 雷司:「言うだけあるようだな。」 哲也:「当たり前だ。」 ピジョットは過酷な特訓をしたのだ。トロピウスに負けた悔しさや、操られた玲奈のジュペッタに遊ばれた悔しさをバネにして。 あれは、俺が止めても続けていたくらいだった。 哲也:「続けて高速移動、そして影分身だ!」 雷司:「悪いけど、俺もおなじことをさせてもらうぞ!」 エアームドとピジョットは高速移動と影分身を行い、お互いけん制しあっていた。 多分、見慣れてる俺たちには相手の動きが分かったけど、観客にはどう見えていたのか。 雷司:「エアームド、砂嵐を起こせ!そして砂嵐の中から連続でエアカッターだ!」 砂嵐がおき、ピジョットにはエアカッターが外れることなく向かってきた。 エアカッターは急所に当たりやすい上、エアームドの特性は「鋭い目」、命中率が下がる攻撃は通用しない。 だけど、俺にも手はある。 哲也:「ピジョット、風起こしで砂嵐を吹き上げろ!吹き飛ばしでエアームドを砂嵐の風に包み込むんだ!」 鋼タイプだから砂嵐は全く効果がない。 でも、さすがに命中力が下がらなくても、砂嵐が風で圧縮されているのだ。 さすがに濃い状態の砂嵐の中から、ピジョットを探すことはほとんど無理に等しい。が、エアームドはドリルくちばしで それを突きぬけ、今度はスピードスターを向けてきた。 雷司:「スピードスターの後、再びエアカッターだ!」 哲也:「ピジョット、鋼の翼で打ち返すんだ!そして目覚めるパワーだ!」 ピジョットの目覚めるパワーは水タイプ。だからエアームドにはあまり効果ないが、スピードスターやエアカッターを 相殺させるのにはちょうどよかった。 雷司:「くそっ、ならばエアームド、急降下しろ!そして岩なだれを起こせ!」 今までは全くフィールドと関係ないバトルが繰り返されていた。しかし、今回、ついにエアームドの奥の手が 出てきたようだ。 エアームドは羽やくちばしで岩を崩し、貫き、崩れ去った岩が、岩なだれが起き、エアームドの翼が起こす風が 岩をピジョットに向かって巻き上げていた。 雷司:「その膨大な量の岩なだれは守る攻撃でも防ぎきれないだろうな。」 哲也:「そんなことはない!ピジョット、最終奥義、鋼ドリルの舞いだ!」 ピジョットと俺が必死で訓練した大技だ。 鋼の翼を纏い、体を回転させ、そしてドリルくちばしを行う状態で岩なだれにピジョットが突っ込んだ。 ピジョットはそのまま、岩を弾き、貫き返し、岩なだれを粉砕した。 雷司:「何!?」 哲也:「そのまま騙まし討ちだ!そしてツバメ返し!」 ピジョットは岩なだれを破られたことに驚くエアームドの少ない隙を見て、騙まし討ちで攻撃し、さらにツバメ返しで 攻撃した。数少ない、微量の攻撃も、塵も積もれば山となる。 雷司:「その攻撃でもエアームドは倒れないぞ!金属音、そして捨て身タックルだ!」 金属音は嫌な音と同様の効果を持つ。そして防御力が少なくなった状態から捨て身タックルのため、ピジョットに突っ込んできた。 でも、ピジョットには初めから金属音を聞いていなかった。 そして優々とその攻撃を避けていた。 雷司:「ピジョットが避けた!?守る攻撃か。」 哲也:「ああ。ピジョット、雨乞いをしろ!」 雷司:「エアームドに雨乞いをして意味があるのか?ピジョットの羽毛に水がしみこんで体が重くなるだけだぞ。」 雷司も観客も、そう思っているようだ。 でも、俺には考えがある。 哲也:「ピジョット、風起こしだ!」 風起こしが、雨乞いの雨を吹き飛ばし、エアームドに打ちつけていた。 雷司:「エアームド、そんな攻撃に目を向けるな!ゴッドバードだ!」 ついに強力な攻撃がピジョットに向かってきた。 哲也:「ピジョット、オウム返しだ!そしてカウンターで攻めろ!」 ゴッドバード同士がぶつかり、さらにカウンターがエアームドにぶつかった。 カウンターは受けたダメージの倍を相手に返す技。 オウム返しはゴッドバードを受けない限り使えないため、エアームドの攻撃を受けたピジョットはよろめいたが、 オウム返しとカウンターが交互にぶつかり、さらにエアームドの方がよろめいていた。 哲也:「これで決めるぞ。目覚めるパワーだ!」 目覚めるパワーは水の力。そして、雨乞いでパワーの上がった目覚めるパワーはエアームドを跳ね飛ばした。 雷司:「くっ、目覚めるパワーが水タイプだったのか。エアームド、頑張るんだ!」 しかし、エアームドは飛んでいる状態がやっとだった。そして、 哲也:「止めだ!ピジョット、翼で打て!」 ピジョット:「理解した!」 ピジョットがエアームドを翼で撃ち、エアームドは落下した。 審判:「エアームド、戦闘不能!ピジョットの勝利!」 俺はエアームドを撃破した。それにしても…。 哲也:「ピジョット、お前喋ってもよかったのか?」 ピジョット:「ああ。もう隠す必要もあるまい。お前の勝利を分かち合うにはこの方が楽だ。」 俺のピジョットは今の姿に進化してから喋れるようになっていた。 多分、蓮華のキレイハナと同じ原理だと思う。 なぜなら、こいつがナゾノクサの次に生まれたらしいから。 だからなのか、ポッポとナゾノクサは喋る事ができるらしい。 いや、研究所で生まれたポケモンは、全員喋る事ができるかもしれない。喋る事ができる可能性を持つ遺伝子が、 組み込まれているのかもしれない。 蓮華:「ピジョットが喋れたのね。」 律子:「ええ。あたしとニャースくらいよ、聞いた事があるのは。」 ニャース:「にゃーは前々から知ってたにゃ。」 律子:「あたしは最近、偶然聞いちゃったのよ。」 今、観客ほぼ全員はピジョットが喋ったことに驚きながら、観戦していた。 キレイハナ:「そういえば、あたしの次に生まれたのって、ポッポだったわ。その次がイーブイ5匹。 その後に、一度研究が3週間くらい途絶えたのよね。もしかしたら、あのポッポが哲也さんのピジョットで、 イーブイ5匹のうち、3匹はルーク、リースイ、ダークなのかもしれない。」 蓮華:「そうかもね。リースイやルーク、そんなこと言ってたし。でも、残り2匹のイーブイは? 志穂ちゃんの?」 志穂:「いいえ。あたしのイーブイはジョーイさんに貰ったわ。それに、そのイーブイはジョーイさんのエーフィが 産んだ卵から生まれたものだし。」 どうやら、喋れる(可能性のある)ポケモンは、残り2匹いるらしい。 あたしのフィルはヤマブキで遺伝子操作で生まれた子だから違うし。 雷司:「そのピジョット、喋れたのか。」 哲也:「ああ。俺の大事な相棒さ。」 ピジョット:「さよう。俺と哲也は大事な相棒の関係さ。」 雷司:「そうか。でも、俺のエアームドを倒したくらいで勝ち誇るなよ。」 哲也:「分かってるさ。」 雷司:「それじゃ、俺の2番手、マタドガス、行ってこい!」 雷司の2番手は毒タイプの毒ガスポケモンマタドガスだった。 ピジョット:「哲也、お前は俺とウィンディ、カメックス、そしてニドキングをよく使う。 それを読まれたようだ。」 哲也:「そのようだな。ピジョット、もう少し頼む。」 ピジョット:「理解した。」 哲也:「俺はまだこいつと行く。」 雷司:「そうか。マタドガス、鬼火だ!」 マタドガスは鬼火を放ってきた。あれを受ければ火傷状態になってしまう。 でも、あれの命中率は75%。それに、今は雨乞い状態だった。 しかし、鬼火は水を受けても消えていない。 雷司:「残念だけど、俺のマタドガスの鬼火はガスでできている。ガスが燃えた状態の炎を水で簡単に消せるわけがないんだな。」 哲也:「だったらピジョット、急降下しろ!」 雷司:「マタドガス、鬼火を続けろ!ピジョットを追うんだ!」 鬼火は続けて放たれ、ピジョットを追ってきた。 先ほどの鬼火はかわされた直後に雨でようやく消えていたが。 地面に近づいたとき、鬼火はまだ多く残っていた。そして、マタドガスも地面の近くにいた。 マタドガスの特性は「浮遊」だが、地面に近ければ特性が通用しない。 哲也:「ピジョット、泥かけで鬼火を消せ!そして風起こしで泥をマタドガスに浴びせるんだ!」 いわゆる、通称「泥かけ」という技だ。命中率を下げる効果を与えると同時に、毒タイプにダメージを与えることのできる 地面タイプの技だった。 マタドガスは泥をかけられて苦しそうだった。 雷司:「マタドガス!地面すれすれだから泥が効いたのか。だったら、スモッグだ!」 ピジョットに向かってスモッグが放出された。 そしてピジョットがスモッグに包まれようとした時、 雷司:「マタドガス、スモッグに火炎放射だ!」 マタドガスは火炎放射を放ってきた。 哲也:「ピジョット、スモッグを吹き飛ばせ!」 俺はこうなることを予想していた。だから、ギリギリまで待っていた。 ピジョットはスモッグを吹き飛ばし、そしてマタドガスは自分のスモッグの爆発に巻き込まれた。 哲也:「よし!」 雷司:「どうかな?」 俺はガッツポーズを仕掛けたが、雷司が妙な笑みを浮かべ、不意にピジョットを見た。 すると。 ピジョットは突然、驚愕の表情を浮かべたかと思うと、その場に落下した。 哲也:「これは道連れか。ピジョット!」 俺はピジョットに駆け寄った。 ピジョット:「やられたようだ。悪い、少し休ませてくれ。」 ピジョットは苦しそうに倒れた。ピジョット、悪い。道連れに気づかなかった。 いや、マタドガスが道連れを使えることを忘れていた。ごめん。 ナナ:「道連れか。」 律子:「道連れね。」 志穂:「マタドガスだから、爆発の最後かと思ったけど、道連れとはね。」 健人:「哲也は相棒を一時的に失った。これが精神的にどうくるかな?」 蓮華:「大丈夫かなぁ?哲兄。」 雷司:「相棒を失った感じはどうだ?」 哲也:「正直、結構来てる。」 雷司:「そうか。じゃ、そのまま精神的にまいってくれたら嬉しいな。行け、ギャラドス!」 雷司の3番目は飛行・水タイプの凶悪ポケモンギャラドスだった。 確かに精神的にも来てるな。ピジョットが倒されたのは玲奈の時、涼治の時、そしてトロピウスのときだけ。 でも、3つとも俺は自信を失いかけた。 けれども、もう自信を喪失したままではいられない。ここで倒れたら、今までのピジョットの頑張りが失われてしまう。 ここはやり遂げてみせる! 哲也:「相性は関係ない。行くぞ、ウィンディ!」 俺の2番手は炎タイプの伝説ポケモンウィンディ。炎と水は相性が悪いけど、相手の攻撃力を下げる特性の威嚇を持ち合った同士。 強さも半端じゃないはずだ。 ピジョットよりも前から、俺と友情を分かち合った仲でもある。だから、ウィンディならやってくれると思った。 相棒であるピジョット。友情の仲間であるウィンディ。共に頑張ってきた仲間であるニドキング。そして初めて出会い、 ここまで共に頑張ってきたパートナーであるカメックス。この4匹が最も俺と長い間、一緒にやってきた仲間だから。 雷司:「炎タイプのウィンディを出してくるとはな。でも、俺のギャラドスは強い!ギャラドス、ウィンディにハイドロポンプだ!」 哲也:「高速移動で避けるんだ!そして神速だ!」 ギャラドスよりもウィンディの方が素早さがある。 ハイドロポンプを余裕で避け、そして神速でギャラドスを攻撃した。 雷司:「それならギャラドス、地震だ!」 ギャラドスは大きな体を揺すって地面を揺らし、地震を起こしてウィンディの高速移動を止めた。 地震が起きてしまえば、炎タイプであるウィンディはそのダメージを受け、動きを止めてしまうからだった。 雷司:「今だ!ギャラドス、ハイドロポンプだ!」 哲也:「ウィンディ、竜の怒りだ!」 ギャラドスのハイドロポンプが、ウィンディの竜の怒りとぶつかり合った。 そしてそれらは爆発して相殺し合い、再びギャラドスとウィンディのにらみ合いが始まっていた。 この後、竜巻と炎の渦が、10万ボルトと火炎放射が相殺しあっていた。 力は互角なのだ。 雷司:「ここまでやられるとは思わなかったぜ。ギャラドス、こうなったら竜の舞を見せてやれ!」 ギャラドスは攻撃力と素早さを上げる竜の舞を踊り始めた。 哲也:「ウィンディ、こっちも行くぞ!遠吠え、そしてビルドアップだ!」 遠吠えは攻撃力を、ビルドアップは攻撃力と防御力を上げる技だった。 雷司:「次で勝負は決まりだな。」 哲也:「ああ。」 すでに神速と地震でそれぞれに強大なダメージを受けている。だから、次の攻撃が勝敗を決める。 雷司&哲也:「破壊光線だ!」 ウィンディとギャラドスがそれぞれ、思いっきり破壊光線をぶちかました。 そしてそれぞれがそれを出し続け、破壊光線は球体となって大きくなり、ついに大爆発を起こした。 爆風が吹き荒れ、なかなかフィールドの状態がわからない。 ようやく爆煙が消えたとき、その場にはギャラドスとウィンディが倒れていた。 審判:「ギャラドス、ウィンディ、両者共に戦闘不能!よってこの勝負、マサラタウン出身哲也選手の勝利!」 俺は3番手のカメックスを残した状態で勝ち上がった。 雷司:「ギャラドス、戻れ。…すごい奴と戦えてよかったよ。」 哲也:「戻れ、ウィンディ。…俺も同じだ。」 雷司:「またいつか戦おうぜ。それから、絶対に優勝しろよ。」 哲也:「分かってるって。ありがとう。またな。」 律子:「ということで、4人とも初戦勝ちぬけね。」 ナナ:「おめでとう!」 律子とナナは哲兄が勝ったのを見届けるとあたしたちの方を向き直っていった。 蓮華:「ありがとう。でも、ここからがまだ勝負だって。」 志穂:「そうね。あたしたち4人全員が、ベスト8に残るためにも。」 健人:「互いに頑張りあおうな。」 こうして第2ステージのあたしたちの初戦は終わった。 後はみんなで頑張っていくだけ、あたしももっと頑張らなきゃ! 「オマケ」 哲兄があたしの試合のときに覚えた怒りを作ったのは涼治だったらしく、それを知った哲兄は、今度ばかりは涼治に対して切れました。 現在、外でバスケ部の緊急スパルタ特訓と称して、涼治をいじめてます。 あたしはさすがに手が出せない、いや、氷雨さんでさえも、涼治と哲兄のそばには寄る事ができません。 しょうがないんだけどね。