蓮華たちの第2ステージ初戦が終わった。 全員勝ったし、しかも蓮華と志穂ちゃん、哲也先輩は特別枠の選手を撃破して次の試合に勝ち登ったから すごいと思う。あそこまでものすごい試合を見ることになるとは思わなかったし。 ベスト8に上るには、特別枠とバトルをした蓮華たち3人は、後2回勝たなければいけない。 でも、多分、大丈夫だと思う。 ベスト8に蓮華たちが上る頃には、このリーグ会場に、現実世界から来たあたしたち全員が集まることにもなっている。 そしてその直後が、もしかしたら現実世界に帰るときかもしれないし。 でも、今は、あたしたちは応援する事が最優先。みんな、頑張って!       by美香 56.因縁バトル!絆は卑怯さよりも強い 美香:「次の相手を確かめた?」 蓮華:「ううん、まだ。今やるわね。」 バトルも終わり、集まっていたあたしたちはそれぞれ別れた。 ベスト8になるまでは適当に応援し合えばいいだろうということになり、一旦解散したのだ。 でも、みんなこのポケモンリーグ会場のどこかにいるだろうし、コテージを借りてるはずだし、 それに、応援する時には合流するだろうから、試合があっても応援しないということはない。 それに、あたしも含め、何人かはポケモンバトルの勉強にもなるために試合を観戦するのだ。 そして、今、ようやくコテージに戻ってきたあたしは、明日の対戦相手を確かめようとしていて、そして手が止まった。 蓮華:「…嘘。」 美香:「蓮華?」 菜々美:「蓮華ちゃん?どうかしたの?」 どうかした。だって、驚いたから。まさかっていうか、こんなこともあるんだ。 美香:「次の相手がどうかし………うわぁ、この人化粧濃いよ。これで20歳なの?」 菜々美:「あたしたちより美貌は劣るわね。相手は大人のお姉さんということ、名前は麗華…」 キレイハナ:「何ですって!?」 キレイハナが驚いて飛び出した。 突然出てきたことに菜々美ちゃんたちも驚いてるけど、あたしはそれよりももっと驚いてる。 そしてそれはキレイハナも同じことなのだ。多分、バッジ集めじゃない人のための予選で勝ちあがったのだろう。 よく見ると、明日が初戦だから、だからあたしは見かけなかったのだろう。 それにしても迂闊だった。もう少し早く気づいておけばよかった。 キレイハナ:「蓮華、麗華って…」 蓮華:「ええ。性格の曲がった元タマムシのジムトレーナーのあいつよ。」 キレイハナ:「やっぱり…。」 あたしとキレイハナはタマムシジムに行った時、当時まだビードルだったはりくんが虫除けスプレーで駆除されそうになる 現場に居合わせ、あたしは咄嗟にボールを投げてビードルを助けた。 その時、駆除を邪魔されたことを怒り、蛾や蜂ポケモンを差別する、性格の曲がったジムトレーナーに会った。 そしてあたしに対し、キレイハナに対しの暴言を吐き、ポケモンバトルをすることになりバトルをした。 しかし、彼女は自分のポケモンに対しても暴言を吐き、トレーナーとしてふさわしくない行動をし続けたため、 タマムシジムのジムリーダーのエリカさんがジムから追い出したほどだった。 それが、今回のあたしの相手の麗華だった。 あたしとの因縁対決いや、彼女にとってはリベンジバトルということだろう。 美香:「蓮華、どういうことか話してくれない?」 菜々美:「二人だけで何をこそこそ話してるのよ。」 美香と菜々美ちゃんは、あたしとキレイハナの様子がただ事じゃないと感じたのか、真剣な表情で聞いてきた。 だから、あたしはタマムシでのあのことを話して上げた。 菜々美:「タマムシジムの?…あぁ、あたしも会った。あの人かぁ。」 菜々美ちゃんにとっても嫌な人なのか、心底嫌そうな表情をしていた。 美香:「菜々美ちゃん?」 菜々美:「あ、ゴメンね。ちょっとさ、あたしの美貌に嫉妬したのか、タマムシシティに滞在した時嫌がらせを受けたのよ。 モンスターボール隠されたり、あたしの持ち物をゴミ捨て場に捨てたり。食事してたら変な音を感じたから部屋に戻ったら、 ちょうどあたしの借りた部屋にゴミを撒き散らす現場でね。あたし、つい力使って部屋壊しちゃったのよ。」 なんちゅう嫌がらせだろうか。でも、あの女ならありうるかも。 エリカさんに対しても同じ位置にいるような感じで話し、散々反論や罵倒をするくらいだから。 蓮華:「ひど〜い。」 美香:「菜々美ちゃん、大変だったね。」 菜々美:「うん。でも、確かあの女は影で仇名がついてたはずよ。確か…」 菜々美ちゃんがそれを思い出す前に、誰かがやってきた。 ??:「通称プライドの塊よ、あの女は。」 やってきたのは律子だった。 律子:「あたしも会った事があるのよ。ナナと一緒にタマムシジムに行った時に。」 菜々美:「何かされた?」 律子:「ええ。セレビィのボールを取られそうになったわ。あたしはナナから彼女のことを聞いていたから、 ロゼリアとセレビィのボールは自分で隠し持ってて、逆にベトベトンの入ったボールを置いておいたから。」 律子も結構やると思った。ていうか、ベトベトンって…。 律子:「ナナから聞いてここに来たの。どうやら、エリカさんは知らないようよ。 彼女は全くジムに戻ってきてないらしいし。多分、蓮華を倒すために裏工作をしたのかもしれない。 だから、気をつけて。」 蓮華:「ええ。分かってるわ。それじゃ、ポケモンを決めておかなきゃね。」 あたしはポケモン決めを専念することにした。しかし、既に彼女の裏工作が始まっていたとは、さすがのあたしたちも 全く気づいていなかった。 そして、その裏工作が発覚したのは試合開始10分前という、変更ができない状態になってからだった。 その時になって、さすがの蓮華もキレイハナも顔面蒼白という感じだったが、何とか自信を持って歩いていった。 でも、さすがにぎこちなくて、菜々美ちゃんがサポートを申し出て許可され、一緒について行ったほどだった。 ナナ:「蓮華ちゃんの相手が麗華かぁ。麗華が炎や飛行タイプで行くのに対して、蓮華が草ポケモンで行くのは 不利じゃないかしら?」 観客席には既にナナちゃんがいて、蓮華の選んだポケモンを知ったのか、こう言っていた。 でも。 律子:「そうでしょ?でも、違うのよ。」 ナナ:「違う?」 美香:「蓮華はこの3匹は今回選んでいないのよ。ドラちゃんやアクアを選んでたのに、既に昨日からこのメンバーを出すって 登録されてたらしいの。」 ナナ:「麗華の妨害工作ね。あいつ…そろそろあたしも我慢の限界ね。」 ポケモンマスターをやってるナナちゃんも、実は色々と麗華にありえない噂を広められた事があるらしい。 ナナ:「今の特権利用して、何とかしてやろうかしら?」 律子:「やっちゃったほうがいいと思うよ。」 美香:「同感。」 蓮華が今回登録したことになっているのは、トロピウス、キマワリ、コノハナ。そして補欠としての4番目はトサキントだった。 これで砂漠のフィールドが出たら、蓮華はかなり不利だ。 どうなるか、あたしたちは心配になってきた。 涼治:「蓮華が妨害工作にやられたって?」 なずな:「うん。美香ちゃんがポケギアで知らせてくれたの。」 涼治:「酷い奴もいるんだな。あ、どうぞ、こちらをお使いください。」 涼治君はイワヤマトンネルのジョーイさんの紹介で、一時的にリーグ会場のポケモンセンターのサポート員として 働いている。あたしもフジ老人の勧めでボランティアをしていた。 そんな時に美香ちゃんから電話が入り、このことを知ったのだ。 多分蓮華ちゃんは元気がない気がして、あたしはそれで涼治君がいけないかを聞きに来た。 でも、涼治君は忙しくて無理っぽかった。これが美香ちゃんだったら無理やり引っ張っていくだろうけど。 涼治:「ここに来たのは俺を呼びにきたってことか?」 なずな:「ええ、そういうことよ。でも、無理だよね?」 涼治:「悪い。で、その麗華ってのはどんな奴だ?」 なずな:「ええとね、この人よ。」 あたしはポケギアから転送してもらった画像を見せた。 涼治:「へぇ〜、化粧濃いな。」 なずな:「でしょ。それじゃ、あたしは行くね。」 涼治:「ああ。」 あたしは急いで応援席に向かった。それにしても意外だったのは、蓮華ちゃんの彼氏である涼治君を麗華がマークしてなかったこと。 てっきり何かしらの妨害工作で涼治君に接近してくると思ってたけど、あたしの考え違いだったかな? あれっ?でも、あたし…麗華って名前、言ったっけ…? ナナ:「もうすぐでバトル開始ね。」 律子:「どうなるのかしら?ナナのポリゴンのおかげでフィールドを砂漠にする麗華の策略は打ち砕いたけど…。」 ナナのポリゴンがポケモンリーグ協会のHPに入り込み、ルーレットに仕組まれていたあるはずのないシステム機能、 多分麗華の仕業、を壊したのだ。壊さなかったらそのまま砂漠のフィールドに無理やり決定されられていたところだった。 ナナ:「一応砂漠と岩のフィールドにはならないようにしたけどね。」 律子:「協会に関わってるあたしたちが私的行為をすること自体もヤバイけどね。でも、しょうがないよね?」 ナナ:「そうね。」 そんなとき、美香ちゃんとなずなちゃんが戻ってきた。 美香:「麗華の様子を見てきたけど、別にスペース団と関わってる様子はなかったわよ。」 美香には前回の哲也先輩のこともあり、もしかして裏にスペース団の残党が関わってるんじゃないかと思い、 偵察に行ってもらったのだ。なずなちゃんには涼治君を呼んでもらえたらいいかと思ったけど…、いないところを見ると、 無理だったようだと思われる。 なずな:「あたしのほうは駄目。涼治君、忙しそうだったもの。美香だったら強引に連れて行きそうだけど…」 美香:「当たり前じゃない。蓮華のピンチなのに。」 なずな:「でも、仕事を無断で中断して応援に来る人の応援は、蓮華は嬉しくないはずだもの。後、気になる点が一つ。」 ナナ:「何?」 なずな:「涼治君が麗華の名前を知ってたわ。」 律子:「嘘…ありえないわ。ポケモンセンター履歴を見る限り、麗華は一度もイワヤマトンネルに行ってないわ。」 あたしもちょっと私的行為をしていたわけだ。 ナナ:「だとしたら、嫌な予感がするんだけど…」 美香:「蓮華は大丈夫かな?菜々美ちゃんがついてるはずだけど。」 なずな:「麗華って、菜々美ちゃんにも嫌がらせをしてたんでしょ?逆に喧嘩に発展しなきゃいいけど…。」 あたしたちは不安を抱えたまま、蓮華を待つことになった。 そこへ…。 涼治:「あのさ、実は…。」 キレイハナ:「蓮華、大丈夫だよ。あたしたちを信じて。」 まさかここまで妨害工作をしてくるとは思わなかった。でも、今蓮華とみんなが持ってる持ち物を結集したから、 多少の作戦は使えるようになってるはずだけど。 菜々美:「そうね。あたしたちの力を結集したし、蓮華ちゃんは苦手なタイプにも普通にバトルをするのが取り柄じゃないの。」 蓮華:「そうだけど、さすがにあそこまでやられたのが久々だったからちょっとね。」 蓮華も能力のことでいじめられた経験があるらしい。すべて突っぱねたとは言ってたけど、そういう過去が色々と、 今回の妨害工作と似ていて、ショックだったんじゃないかな? 蓮華:「でも、あたしが頑張らなきゃね。トロ、なっぴ、ぎょぴ、たねねと一緒に。 あたしが頑張らなきゃ、みんなが頑張れないし。」 志穂:「そうね。」 あたしの次に試合がある志穂ちゃんがやってきた。 志穂:「相手が優位に立っているときだけど、卑怯な優位はすぐに落ちるわ。それに、バトルが終わってからの仕返しくらい、 やってもいいんじゃないかしら?」 キレイハナ:「それって、蓮華が勝つことを前提に言ってるの?」 志穂:「ええ。蓮華ちゃんが勝つのは当然だと思うから言ってるのよ。頑張ってね。」 蓮華:「はい!」 そしてあたしはフィールドにやってきた。サポート員として、菜々美ちゃんがあたしについてくれている。 麗華:「お久しぶりですわ。私のささやかな抵抗は、いかがですの?そちらの整形した方も。」 菜々美:「何ですって?」 蓮華:「まあまあ、…戸惑ったわよ。でも、それでもあたしは負けないわ。」 麗華:「威勢がいいですわね。でも、私には弟ができましたの。今回のことは、私のかわいい弟がやってくれたことですわ。 怒るのでしたら、その弟に言ってくれませんの?」 蓮華:「弟?」 麗華:「ええ、この子ですわ。」 麗華は写真を取り出した。その写真に写っていたのは…。 美香&律子:「何考えてるのよ!この大馬鹿野郎!」 なずな:「さすがにあたしも呆れたわ。」 涼治:「ゴメン。」 ナナ:「まさか麗華の裏工作に加担していたのが、涼治君だったとはね。騙されて、だけど。」 あたしが呆れるのも、美香ちゃんや律子ちゃんが怒るのも当然。 実は昨日、ポケモンの回復をしたときに会ったらしい。 その時に強引な色気にやられたのがきっかけで、頭がぼーっとした状態で作業に付き合わされたらしい。 そのうえ、まさか飲酒までさせられてたとは、医者志望が情けない。 あたしの一年の恋も冷めてしまった。 美香:「ゴメンで済まされては何もいらないよ!」 律子:「全く、蓮華ちゃんと遠距離だからって、少しは自重してもいいんじゃないの?」 ナナ:「それくらいにしておいたら?」 涼治:「本当に悪かったと思ってるよ。俺の失敗のせいだから。」 ナナ:「そうじゃないわよ。昨日、誰かのせいで疲れきった状態で作業に当たってたでしょ? 涼治君を疲れさせた人にも責任はあるってことよ。でもまずは、蓮華ちゃんを応援しましょ。」 なずな:「あ、あたし、ちょっと行くところあるから行ってくるね。」 ナナ:「どこに?」 なずな:「もし麗華が勝ったとしても、それを打ち消す事ができる方法が一つあるわ。元々、最終的には これって蓮華の不戦勝でしょ?」 麗華の妨害は全て明るみになるように分かっているから、それを協会の人に教えれば、蓮華の不戦勝は確実なのだ。 ナナ:「ええ。一応蓮華の不戦勝だけどね。…なるほどね。行ってきて!」 なずな:「了解!」 あの人を、あたしは呼びに行った。 蓮華:「涼治が…弟?」 麗華:「ええ、昨日色々な作業で私に尽くしてくれましたの。あなたの彼氏のようですが、あなたのことはき…」 突然麗華の声が途絶えた。 観客の声や、美香達の応援の声は聞こえるのに、麗華の声だけは全く聞こえない。 菜々美:「蓮華ちゃん、麗華は涼治君を操ったみたいよ。麗華の言葉に騙されちゃ駄目。 だから聞く必要のないことは聞くべきじゃないと思って、あたしがあいつの声を封印したの。 バトル直前には術を解くけど、今のあいつは自分の声が誰の耳にも届いていないことは、全く気づいていないわよ。」 菜々美ちゃんの防音の力によるものだった。さっき言われた事が頭に来たようだ。 あたしが美香達の方を見ると、涼治があたしを応援するのが見えた。 菜々美:「必死で謝っているのがさっき聞こえたわよ。後で色々と話したらいいんじゃない?」 蓮華:「そうだね。」 と、審判が動き出した。そして麗華も、自分の声が出ていないことにようやく戸惑っていた。 菜々美:「防音封じ術の解除っと。」 麗華:「…何ですの!?」 声が戻ると同時に騒がしくなる麗華。 蓮華:「戻さなくてもよかったと思うけど…。」 あたしはさすがにそう思った。 フィールドは草のフィールドに決まった。 決まった瞬間、麗華は驚いて抗議をしていたが、審判に無視されていた。当たり前である。 「何で砂漠のフィールドにならないのか」 なんて抗議がとりあげられるわけがないからだ。 審判:「これより、タマムシシティ出身麗華選手と、グロウタウン出身蓮華選手の試合を開始します。 使用ポケモンは3体。ポケモンの交代は自由とします。ただし、3体目のポケモンによる自爆行為は失格とみなします。」 麗華:「よくも声を封じてくれましたわね!先ほどの仕返しも兼ねてですわ!私の美に劣らない、美しき1番目のポケモン、 キュウコン、任せましたわ!」 麗華の最初のポケモンは炎タイプ、狐ポケモンのキュウコンだった。 蓮華:「あたしのポケモンはこの子よ!トロピウスのトロ!お願い!」 麗華:「草ポケモンで私のキュウコンに勝てるでしょうか?キュウコン、火炎放射ですわ!」 蓮華:「神秘の守りよ!そしてツバメ返し!」 火炎放射を防いで、ツバメ返しで確実にダメージを与えた。 麗華:「それでは、神秘の守りを封印ですわ!」 「封印」とは、自分と覚えているのが同じ技を使えなくできる技だった。神秘の守りをキュウコンも覚えているのか、 トロの神秘の守りは封じられてしまった。それだけではなかった。 図鑑で確かめた結果、影分身とのしかかり、守る攻撃も封印されていた。 麗華:「オ〜ホホホ、もうあなたのポケモンは防御は不可能ですわ。キュウコン、スピードスター、そして鬼火ですわ!」 蓮華:「種マシンガンよ!」 スピードスターと鬼火を、種マシンガンで相殺する。火傷状態になっては、不利になるのはこっちだもの。 麗華:「それならば、キュウコン、大文字ですわ!」 キュウコンは9つの尻尾からの炎を結集させて大きな大の字の炎を作り上げ、強大な炎を放ってきた。 麗華:「大文字を避けられるのかしら?」 蓮華:「うぅ…、あ、堪えるのよ!」 咄嗟にあたしは堪えさせることにした。持たせていたラムの実のおかげで、火傷状態になっても助かった。 麗華:「うふふ、その状態でどのような反撃が出れるのかしら?次が最後ですわ。 キュウコン、特大の力を見せて差し上げなさい!日本晴れですわ!」 フィールド上を日本晴れの光が包み込んだ。でも、これってある意味ラッキーかも。 蓮華:「トロ、光合成よ!」 麗華:「あ、しまったですわ!」 麗華が驚いても既に遅く、光合成でトロの体力は回復していた。それに、トロは特性が「葉緑素」。 日本晴れの状態だと、素早さが2倍になるのだ。 蓮華:「残念でした。たとえ相手が炎タイプでも、もうこっちのものよ!トロ、カマイタチよ!」 トロの周囲を空気の渦が回り始めた。 麗華:「守る攻撃で防ぐのですわ!」 麗華は守る攻撃を使った。でも、守る攻撃は連続で使えたとしても3回が最高の限度。 それ以上、守り続けることはできないし、一度守る攻撃を使った後、すぐにできないこともある。 そしてカマイタチ攻撃は、1ターンはタメで、2ターン目が攻撃だった。 麗華:「攻撃をしないようですわね。不発でしたの?キュウコン、火炎放射ですわ!」 どうやら麗華は2ターン目で攻撃が来ることを知らなかったらしい。忘れているだけかもしれないけど。 蓮華:「トロ、カマイタチよ!」 麗華:「なっ、卑怯ですわ!フェイントですのね!」 蓮華:「違うわよ。1ターン目で集中して空気の渦で力を溜めていたのよ。カマイタチは2ターン目で攻撃するの。」 麗華:「そんなの卑怯ですわ!」 どうやら知らなかったらしい。でも、相変わらずだなぁ。 カマイタチは火炎放射を切り裂き、そのままキュウコンを切り裂いた。 麗華:「キュウコン!しっかりするのですわ!草タイプに負けて何になるのです!熱風ですわ!」 キュウコンは何とか立ち上がり、熱風を放った。炎タイプの技だから、日本晴れで強くなっている。 でも、カマイタチが急所に当たったからか、その攻撃は弱弱しそうな気がした。 蓮華:「トロ、熱風を風起こしで吹き飛ばすのよ!そして泥かけよ!」 麗華:「そんなこと、できるはずないですわ!」 しかし、トロの吹き飛ばしは成功した。熱風も軽々吹き飛ばされ、同時に泥かけも成功していた。 泥がかかり、美しさが脆く崩れ、汚れてしまうキュウコン。 それを見た麗華の怒りは最頂点のようだ。 麗華:「ポケモンを汚す行為は失格ですわ!」 蓮華:「そんな規則はないわよ。」 麗華:「私が今考えましたの。」 自分が法律、それ当然の性格だったわね。でも、あの様子ならいけるわね。 蓮華:「トロ、キュウコンに葉っぱカッターよ!」 麗華:「キュウコン、火炎放射で焼き尽くすのですわ!」 葉っぱカッターは火炎放射で焼き尽くされた。でも、それが狙いだった。 キュウコンを地面に落ち着かせておく事が。 麗華:「次は私の番ですわ!キュウコン、もう一度火炎放射ですわ!」 蓮華:「させないわ、トロ、地震よ!」 日本晴れ効果のおかげで、トロの素早さの方が高かった。それにより、トロの攻撃が先に決まり、火炎放射を吐く前に キュウコンは地震のダメージを受けた。 そしてついに倒れた。ダメージの蓄積から言えば、キュウコンの方が大きいのだ。 審判:「キュウコン戦闘不能!トロピウスの勝利!」 麗華:「そんなのありえませんわ!失格ですわ!卑怯な戦法ですわ!」 麗華はその後、審判に注意されるまで、傷ついたキュウコンを戻す事がなかった。本当に相変わらずなのね。 なずな:「…というわけです。来てもらえますか?」 ??:「ええ。あのバトルの仕方を見る限り、私が行って差し上げるのがよろしいでしょうね。」 なずな:「お願いします。」 麗華:「卑怯な方は次で終わりにして差し上げますわ!」 蓮華:「卑怯じゃないのに…。」 麗華:「言い訳なら止したほうがよろしくてよ。私の2番目のポケモンは、逞しさをモチーフにし、 同時に美しさを極めたポケモン、ユレイドルですわ!」 麗華の2番手は、岩・草タイプのいわつぼポケモンユレイドルだった。 すごく厄介な相手だと、あたしは聞いた事があった。 蓮華:「岩タイプに飛行タイプは不利ね。トロ、戻って!行くのよ、たねね!」 あたしはコノハナのたねねで勝負に出ることにした。 キマワリのなっぴでもいいかと思ったけど、格闘タイプの技も使えるたねねなら、岩タイプに有利かもしれないからだった。 麗華:「ユレイドル、あのポケモンを倒す前にやりますわよ!根を張り、砂嵐を起こすのです! そしてバリアを張るのですわ!」 根を張る攻撃は、地面に根を張ることで体力を地中の栄養を吸って回復する攻撃、そして砂嵐は岩・地面・鋼タイプ以外の ポケモンに砂嵐のダメージを毎ターン与える技だった。そしてバリアは防御力を上げる技。 元々岩タイプだけど、格闘タイプの技が当たれば厄介だからなのだろう。 ここは草のフィールドだ。草が茂っている分、ここの土には栄養が多く、回復は可能なのだ。 しかも、ユレイドルの特性は「吸盤」というものだから、吠える攻撃や吹き飛ばし攻撃は全く通用しない。 蓮華:「たねね、日本晴れよ!」 あたしは砂嵐だけでも何とかすることにした。たねねはタネボーの時に日本晴れを覚えていたのだ。 麗華:「日本晴れですの?でも、この技が使えますわね。ユレイドル、ソーラービームを連続で放つのですわ!」 日本晴れの状態だと、ソーラービームは溜めなくても発射できるのだ。 たねねはこの攻撃で、避けるのに精一杯の状態だった。 蓮華:「だったら、たねね、我慢するのよ!」 麗華:「悪あがきですわ。」 蓮華:「そうかしら?」 たねねは我慢をし始めた。ソーラービームは何度も命中していた。 同じ草タイプだから、多少ダメージは少ないけど、そろそろやばいと思ったときだった。 光が消えたのだ。日本晴れの効果が終わったようだった。 蓮華:「今よ、我慢をといて!」 たねねが我慢していた分の攻撃が2倍になって、ユレイドルを襲った。 でも、ユレイドルにはあまり効果がなかったように見えた。表情も初めから変わっていなかったし。 バリアの影響かな。 麗華:「ユレイドル、溶解液を吹きかけてあげなさい!」 蓮華:「電光石火で避けて!瓦割よ!」 バリアがあるから攻撃は効いていないと思い、あたしは瓦割を使わせた。 瓦割りはリフレクタと光の壁の防御を壊すこともでき、その場合は同時に多大なダメージを与える事ができるのだ。 バリアは壊せないって効いてるけど、多分、たねねならできるはず。 そう思って正解だった。 たねねの瓦割がバリアを壊し、同時にユレイドルの首元に大きな皹を作り上げたのだ。 麗華:「ユレイドル!?許しませんわよ!ユレイドル、岩なだれでコノハナを攻撃なさい!」 ユレイドルは地面に向かって何かの攻撃をし、それによってできた岩がなだれのようにたねねに襲い掛かった。 麗華:「続けて地震ですわ!」 地震によって、地面も安定していないため、たねねは岩なだれを容易に避けられず、岩に埋まってしまった。 蓮華:「たねね!?」 岩は微動だにしなく、たねねは出てこない。 麗華:「審判さん、どうやらコノハナは敗れたようですわ。早く私の勝利にしてくれませんこと?」 審判:「あ、コノハナ戦闘不…いや、試合続行!」 審判が言ってる途中で岩が揺れだした。 麗華:「何ですの?一体…」 蓮華:「ようやくか。持たせて正解だったかも。」 突如、岩が風に吹き上げられるように宙に打ち上げられていた。 そしてそれと同時にたねねが、新しい姿で出てきた。 麗華:「進化ですって!?どうしてですの!」 菜々美:「うふふ、蓮華ちゃんに持たせるように言っておいて正解だったわね。」 あたしは菜々美ちゃんに言われて、たねねの首に、リーフの石を入れた袋を提げさせたのだ。 何かあったらこれを使うようにも言ってあった。 そしてたねねは、コノハナからダーテングに進化していた。 蓮華:「ダーテング、邪ポケモン。木枯らしに乗ってやってくる森の神様と呼ばれているポケモンで、 密林の中に暮らすといわれている、か。でも、強そうでいいわね。たねね、このまま頑張ってね!」 あたしが言うと、たねねは怖そうな表情から、優しそうな表情に変わっていた。 麗華:「進化などありえませんわ!」 蓮華:「うるさいわね!あたしたちにした最低行為をしてるあんたの方が卑怯よ!ダーテング、神通力でユレイドルを 持ち上げて!ツバメ返しで根を切るのよ!」 たねねの神通力がユレイドルの特性を無視して大きく持ち上げ、根が見えたところでツバメ返しが根を切り去った。 一瞬の出来事だった。 麗華:「根を張る攻撃が打ち砕かれた!?こうなったら原始の力ですわ!」 蓮華:「シャドーボールよ!」 原始の力が放たれたが、シャドーボールがそれを突きぬけ、ユレイドルを跳ね飛ばした。 麗華:「くぅ〜…ユレイドル、何をやってるのですか!立ちなさい!」 蓮華:「呆れた、たねね、神通力で止めを刺してあげて。」 たねねの神通力が大きくユレイドルを持ち上げ、そしてフィールドに落とした。 すると、ユレイドルはフィールドに体が半分埋まり、動かなかった。 審判:「ユレイドル戦闘不能!ダーテングの勝利!」 蓮華:「ダーテング、ご苦労様。」 美香:「2勝だね。」 律子:「でも、今のバトルは本当ならもう途中で勝負がついていたのよね。」 ナナ:「そうね。」 美香:「どういうこと?」 ナナ:「リリーラ、ユレイドルは表情が分かりにくいから、全く疲れていなかったり、実はすごく疲れたりしていても、 それが分かりにくいポケモンなのよ。すでに解き放たれた我慢や瓦割を受けた時に、根を張る攻撃で体力は回復できていたけど、 疲れてもいたのよ。 だから、あそこまでできたのはいい方だと思うわ。」 律子:「そうね。多分麗華はそれに気づいていなかったのね。リリーラからゲットしていれば分かるようなものだけど、 偶然ユレイドルをゲットして、そこから育てたとしたらその場合はかなり表情を読み取るのは難しいわ。」 美香:「それじゃ、麗華って実際強そうに見えて、弱いわけ?」 ナナ:「そういうわけじゃないわ。あいつは別の地方の大会で優勝したこともあるし、ようは、プライドが高くなりすぎて、 落ちぶれただけよ。」 美香:「なるほどね。」 ユレイドルが落下したことで穴が出来たり、根を張る攻撃が行われたことで、草のフィールドは枯れ果てて、 不毛な大地の状態になっていた。岩なだれや地震も行われたから。 そのため、フィールドチェンジが行われた。 今回は何と、水のフィールドになった。ルーレットは岩のフィールドになりそうだったような気がするけど…。 もしかして…。 実際、あたしの予想は当たっていた。 ナナ:「今の…律子?」 律子:「そうだよ。」 美香:「やったのね。」 律子:「当たり前よ。ちょっといじったからね。」 ナナ:「まあいいか。」 麗華:「何故ですの!?水のフィールドにはならないように操作したはずなのに…」 蓮華:「へぇ〜、卑怯な手を使ったのね。」 麗華:「あら?私何かを言いまして?まあ、いいですわ。私の3番目のポケモン、行くのです!オニドリル!」 麗華の最後のポケモンはオニスズメから進化した、ノーマル・飛行タイプのオニドリルだった。 蓮華:「なっぴ、ごめんね。ここはぎょぴちゃんに頼むわね。」 あたしはなっぴにボール越しに言うと、なっぴのボールは同意したという感じで揺れた。 蓮華:「行くよ、ぎょぴちゃん!この勝負を決めるわよ!」 あたしの3番目のポケモンはトサキントのぎょぴちゃん。 ぎゃぴちゃんは勢いよくプールに飛び込んでいった。 麗華:「これは不利じゃない。どうしてなのよ!どうして裏目に…、もういいわ、オニドリル、プールに破壊光線よ!」 蓮華:「ぎゃぴちゃん、高速移動で避けて!」 破壊光線はプールに放たれた。プールの一部がモーゼが湖を割ったような感じで割れ、大きく波立った。 ぎゃぴちゃんもその衝撃を受けたように思われた。 でも、何とか泳いでるようだった。 蓮華:「ぎょぴちゃん、オニドリルに向かって滝登りよ!そして冷凍ビーム!」 勝負は簡単に決まった。 あたしが見るからに、麗華は水のフィールドになったのが分かると勝負を捨てたように見えた。 どうしてか図鑑を見ると…。それは納得のいくものだった。 ぎょぴちゃんが遠距離からでも攻撃できる特殊な技を覚えているのに対し、オニドリルが覚える技、覚えられる技は ほとんどが直接攻撃のもので、相手に近づかなければいけないものだった。 でも、水の中にいるぎょぴちゃんにはそれはかなり難しいのだ。 というわけで。 審判:「オニドリル戦闘不能!よってこの勝負、グロウタウン出身蓮華選手の勝利!」 あたしは麗華の卑怯な戦略を乗り越え、みんなの助けを借りて、勝利した。 ふと相手のほうを見ると、既に麗華の姿はなかった。 麗華:「何故ですの!私が勝てるはずでしたのに…」 ??:「あなたはプライドを優先にしているからですわ。そのプライドを捨て、再び新しく生まれ変わるのですわ。」 控え室で崩れ落ちる麗華の前に突如、光と共に誰かが現れた。 麗しい香水の匂い、綺麗な和服と花が似合う女性の姿が。 麗華:「エリカ様…」 エリカ:「うふふ、最後の試合で負けが分かったのならば、それを認めてもよろしかったのですわ。 ポケモンバトルはお互いが楽しくなければ成立しませんわ。あなたはもう少し、勉強するのがよろしくてよ。 私が力になりますわ。」 麗華:「…はい。」 ナナ:「そう、エリカのおかげで何とかなったのね。」 なずな:「ええ。」 あたしは麗華を何とかするためにタマムシジムからエリカさんを呼んできたのだ。 ナナ:「まあ、麗華も蓮華に二度やられたことだし、きっと心を入れ替えるんじゃないかしら?」 なずな:「そうだね。自分のした策略で逆にやられたこともあるし。…美香ちゃんたちは?」 ナナ:「美香ちゃんと律子は菜々美ちゃんと合流して志穂ちゃんの控え室に行ったわ。」 なずな:「そう、蓮華ちゃんは?」 ナナ:「涼治君のところ。今頃は多分…」 なずな:「あぁ。なるほどね。」 ナナ:「…妬かないの?」 なずな:「全然。冷めちゃったもの。」 あんな姿を見たんだもの。冷めちゃうよ。冷めない蓮華ちゃんとお幸せに。 蓮華:「涼治。」 涼治:「…ゴメン。」 蓮華:「別にいいよ。涼治、今日は一緒にいようね。」 涼治:「ああ。」 蓮華と涼治は少し離れたところにある公園で、久々のデートをしていた。 そしてそれを影から見ている姿が4つ。 美香:「ねえ、あの二人、結構いいんじゃない?」 律子:「蓮華って意外と怒らないのよね。」 キレイハナ:「涼治君に迷惑かけたこともあるからじゃないかなぁ?」 菜々美:「でも、あの二人が別れる事はない気がするな。」 美香:「そうね。」 律子:「あの二人、それにしてはラブラブからは程遠くない?」 美香:「確かに。どうしてかしら?」 キレイハナ:「蓮華は蓮華で素直になれないんだよ。それに、涼治君も失敗を許してもらったばかりで都合のいい態度は 取れないんじゃないの?」 菜々美:「そうかもね。あたしも健人のところに行くね。」 律子:「お幸せに。」 美香:「あ、あたしもちょっと…(翼先輩のところに行こうかな。)」 数分後、蓮華と涼治もいなくなり、律子とキレイハナが残った。 律子:「行っちゃったね。」 キレイハナ:「志穂ちゃんの応援に行こうよ。」 律子:「そうね。」 蓮華といい、みんなといい、恋愛もいいけどさ、次の試合も頑張ってほしいな。 あたしも、恋がしてみたい。                     by キレイハナ