前回のバトルであたしが麗華と対決し、そして勝利した時、哲兄と志穂ちゃん、健人先輩も勝利して勝ち進んだ。 健人先輩は2勝して既にベスト8に名乗り出ていた。 そういう人は他に4人いる。真っ白な仮面をつけていて、声からして性別は男の人らしいヒート選手、 バレリーナの衣装を纏っている沙織選手、木刀を片手に空手家の胴着を着込んだ秀二選手、ポケモンリーグ公認帽子を 深くかぶったあたしと同じくらいの背丈の少年の天知選手の4人。それぞれが強い部類にいる人たちだった。 そして健人先輩が5人目。 後はあたしと哲兄と志穂ちゃんのバトルによって残りの3人が決まる。 そして、あたしのベスト8に向かうためのバトルが近づいていた。 それと同時に、あたしにとってのかけがえのない出会いも。 57.運命の出会い?蓮華の妹登場! 美香:「次で蓮華が勝てば、ベスト8に進出するのよね。」 菜々美:「そうね、健人も進出したし、哲也先輩と志穂ちゃんは相手のレベルと比べると勝ってるから、どうせ 進出は決まったようなものだし。」 普通なら、勝負は時の運的な発言をあたしたちはするのだけど、今回哲兄と志穂ちゃんの相手は、あたしたちが見る限りでも、 低い。いや、哲兄たちが強すぎるから、哲兄たちの相手になった人たちの戦略では勝ち進めないだけなのだが。 まあ、そんなわけであたしの試合の方を大事にしないといけないのだ。 ただ…、一つ問題が発生していた。 律子:「次の相手は誰なの?」 蓮華:「それがね、今さっき見たんだけど、つながらなかったのよ。」 パソコンで次のあたしの相手、鈴香選手のデータにつなぐことが全くできなかったのだ。 律子:「おかしいわね、リーグ公認のデータにプロテクタは少しもかかってないのよ。かけることにも難しいくらいだし。 かけるとしたらパスワードは10個取り除かなきゃいけないし。しかも、それぞれのパスワードはリーグ職員10人が知ってるだけで、 あたしでさえも知らないのに。」 蓮華:「でも、実際にかかってるのよね。」 プロテクタがかかっているためにつながらない。その状態が続いているのだ。 でも、誰がどうしてそんなことをするのだろうか? 美香:「もしかしたら、鈴香選手がかけたんじゃない?」 菜々美:「聞いてみたほうが良さそうかもね。今から行きましょ。」 美香と菜々美ちゃんはそう言って鈴香選手に会いに行った。でも、彼女はいなかったらしい。 あたしはしょうがなく、相手がどういうポケモンを使うのか分からないまま、でも何となく何かを感じながら、 ポケモンを決めていった。 律子:「蓮華?どうかしたの?」 蓮華:「ええ。」 あたしは決めていきながら、鈴香選手のことを思い浮かべた。 一瞬だけ、見かけたことはあるけど、次に会えばしっかりと分かると思う。 ナナ:「データにプロテクタがかかったって?」 あたしは蓮華たちのコテージを出た後、リーグ本部に一度寄り、その後でナナに会った。 でもナナも知らなかったらしく、ナナもすごく驚いていた。 ただ一つ言えば、パスワードの一つはナナが持ってる。 律子:「ええ。職員の話だとかけれたのはどうやら鈴香選手らしいけど、鈴香選手自身もかけれた理由が分からないって 話したそうよ。」 でも、職員の人もその時の記憶が数分前のことなのに、ものすごくおぼろげだったので、少し気になったけど。 ナナ:「そう、それで、データの方は?」 律子:「無理。休暇を取ってる職員もいるから、プロテクタを取り除くのは無理みたい。 今回は蓮華にとって一番厄介なバトルになるんじゃないかしら。とにかく相手の情報が分からないのよ。」 あたしが集めた情報でも、彼女のポケモンは60体くらいいるらしい。 なのに、今までのバトルは一匹だけ、バクオングだけで勝ち抜いてきたという強物。 蓮華もバクオング対策しかできないのだ。このままだと対策で出したポケモンを倒されて終わるに過ぎないかもしれない。 その割にナナは結構澄ましていた。 何故か聞くと、 ナナ:「だって、あたしのところから蓮華ちゃんは旅立ったのよ。少しは試練があってもいいんじゃないかしら? それによって蓮華ちゃんが成長するかもしれないし。」 と言っていた。 あたしはそれを聞くしかないようだ。 そしてもう一つ、蓮華が何かを感じているということ。これも気になるな。 その頃。 話題に上っている鈴香選手は、リーグ会場近くの小高い丘の上にいた。 そこには、彼女以外にもう一人。仮面の選手のヒート選手もいた。 ヒート:「えっ?プロテクタをかけたのか?」 鈴香:「ええ。だって、あたし、少しは蓮華がどんな風に出るか見てみたかったし。」 ヒート:「おいおい、そんなことしたら、相手が怒るぞ。いいのか?」 鈴香:「いいの。どうせあたしと蓮華は………だし。ヒートもそうでしょ?」 ヒート:「ああ。俺が仮面をつけているのは、あいつらと面識があるからだしな。」 志穂:「あたしにはバレバレだけどね。」 突如、彼らの前には志穂が現れていた。そして同時に動揺するヒート。 ヒート:「げっ!志穂!」 志穂:「呼び捨てとは失礼ね。***、あなたもこっちの世界に来てたとはね。哲也に会うため?」 ヒート:「まあな。それよりも、ベスト8進出おめでとう。」 鈴香:「おめでとうございます。」 志穂:「二人ともありがとう。…鈴香ちゃん、名乗り出るなら早目がいいわよ。蓮華のためにも。」 志穂はそう言うと帰っていった。 ヒート:「だそうだよ。」 鈴香:「そうだなぁ。バトルのときに話してみるわ。それにしても驚くかもしれないね。」 ヒート:「当たり前だ。驚くに決まってるだろ?腹違いの妹が現れればな。」 次の日。 あたしと菜々美ちゃんと律子の3人は、いつものように観客席にいた。 ついさっき哲也先輩がピジョットで圧勝し、ベスト8の7人目になったばかり。 次の試合で蓮華ちゃんか鈴香選手が勝利して、ベスト8が決まるのだ。今日に限って、そんな大事な試合だけど、 応援はあたしたちだけだった。 涼治君はボランティア活動(仕事)、志穂ちゃんは巫女仕事、ナナちゃんも仕事が入ったらしい。 でも、みんな蓮華が勝つって信じてるから応援に来ないだけかもしれないけど。 律子:「この試合が運の分かれ目らしいわよ、ナナちゃんが言うには。」 菜々美:「確かに運の分かれ目ね。」 美香:「でも、蓮華の運はいいはずだよ。今日の占いはとってもいい事が起きるって出てたから。」 出かける前に占いをしたのだ。内容は、 「あなたにとって、今日はとってもいい日になるでしょう。 そして、あなたは思いがけない出会いをすることになるでしょう。」 というものだった。思いがけない出会いが気になるところだけど、いい事が起きるということなんだとあたしは思う。 そんな時、蓮華がフィールドに出てくるのが見えた。 初めはまさかと思ってた。 でも、鈴香選手と会った時、あたしはすぐに感じた。 蓮華:「あなたが鈴香選手?」 鈴香:「ええ。初めまして。」 初めましてって言うけど、実際はそうじゃないって。一度も会ったことはないけど、あたしは近くにいるだけで すぐに感じた。 蓮華:「プロテクタをかけたのは、どうしてか説明してくれない?」 聞いたとして、正しく答えるわけではないと思ったけど。 鈴香:「え、あれは偶然ですけど…」 やっぱりそうだった。偶然という名の嘘。 蓮華:「嘘ばっかり。今分かったわよ。あなたもあたしと同じ、妖怪の血を受け継いでる能力者でしょ?」 実際はそれだけじゃないけど、まずは先制パンチから。 鈴香選手から感じる波動は、あたしの能力の波動から感じるものと同じもの。 その共通点は、妖怪の血を受け継いだものから発せられる波動であるということ。 その血を受け継いでるものは、自分と同じもののことは出会うことですぐに察知できるのだ。 鈴香:「何だ、ばれちゃいました?そうですよ。あたしも現実世界から来たんです。 お仲間ですね。」 鈴香選手はそう言うけれど、あたしは分かってる。それだけじゃないのよね。 蓮華:「仲間じゃなくて、あなたはあたしの妹でしょ?」 菜々美:「嘘…」 哲也:「マジかよ…」 蓮華と鈴香選手が何かを話していたから、あたしと、蓮華の試合を見に来た哲也先輩は、能力によって 会話を盗み聞きし、そしてこれを聞いた。 菜々美:「鈴香選手が…蓮華の妹!?」 美香:「えぇ〜!」 律子:「嘘…」 あたしは彼女から、もう一つの波動を感じた。 それはあたしの父親、草鬼の半妖怪の持つ波動。草鬼の遺伝子を受け継いだ人間はこの世にただ一人しかいなく、 すでに亡くなっているが、その遺伝子を持っていたのは、他ならぬあたしの父親だった。 その父親の波動を感じた。 だからあたしは全部を感じ、理解できた。 鈴香:「分かったんだね。お姉ちゃん。」 蓮華:「ええ。あなたと会ってよ〜く分かったわ。でも、お父さんがあたしのお母さん以外に、もう一人お母さんを 作っていたなんて、思わなかったわ。」 どっちかが愛人の子供じゃないかって言う、そういう説があるかもしれないけど。 あたしは鈴香から感じる波動を感じ、そういう考えがないことはすぐに分かった。敵対心や、憎悪の表れはなかったから、 あたしに対して、あたしを愛人の子供と決め付けようと思っていないことは分かった。 鈴香:「えへへ、お姉ちゃん、愛人の子供を決めるとしたら、それはあたしの方だから。」 蓮華:「えっ?」 鈴香:「一瞬気になったでしょ?あたしが生まれたのは、お姉ちゃんが生まれた後だから。 それと、お姉ちゃんがクォーターなのに対して、あたしはハーフだからね。」 鈴香はあたしの目の前で姿を変えた。彼女の両手が翼に変わり、足が鳥の足になったのだ。 鈴香:「あたしのお母さんも既に亡くなってるけどね。あたしのお母さんは妖鳥セイレーン。そしてあたしは 音の能力者よ。」 蓮華:「音…。それでパートナーがバクオングなのね。」 鈴香:「そういうこと。せっかく会えたけど、ベスト8に進むのはあたしです。負けないから。」 蓮華:「あたしもよ。負けないわ。」 あたしはいきなり腹違いの妹に出会った。そして今からバトルが始まる。 鈴香も勝たなきゃいけない理由があるみたいだけど、今は聞くつもりはない。 姉妹対決が終わってから、予想はついてるけど、聞くつもりだ。 志穂:「ようやく姉妹の再会ね。」 菜々美:「あ、志穂ちゃん!もしかして知ってたの?」 突然やってきた志穂ちゃんの言い方は、明らかに知ってましたというのを物語っていた。 志穂:「ええ。」 美香:「ひど〜い、教えてくれてもよかったじゃない!」 律子:「まぁ、こういう状況にするために教えなかったみたいだけど?」 律子ちゃんの言うとおりだろうな、多分。 志穂ちゃんもいい人だから、何かのイベントは残しておかなきゃいけないって思ってる節があるし。 それにしても、まさかあたしと同じ力の人がいたとはね。 志穂:「実際そうよ。…そろそろバトルも始まるわ。哲也やあたしとバトルをしようと思ってる蓮華か、 悠也とバトルをしようと思ってる鈴香、どっちが勝てるかのバトルよ。しっかり見なきゃね。」 志穂ちゃんはそう言うと、席に着いた。 でも、志穂ちゃんは爆弾発現を言ってました。 それは能力者のあたしたちも知ってる、もう一つの家庭内事情のキーワードでした。 ただ、それは別の時に話すことになると思う。なぜなら、すらっと言ったせいか、あたし以外の誰も、 その言葉に気がついてなかったのです。悠也という言葉に。 フィールドは通常のバトルフィールドだった。 審判:「これより、グロウタウン出身蓮華選手と、レインタウン出身鈴香選手の試合を開始します! 使用ポケモンは3体、ポケモンの交代は認めます。ただし、3体目での自爆行為は禁止とし、行った場合は 失格とみなします。それでは、試合開始!」 審判が旗を振り上げたと同時に、あたしと鈴香は同時にボールを投げた。 蓮華:「お願いね、ぴぴ!」 鈴香:「負けないでよ、バルーン!」 あたしのポケモンはノーマルタイプ、人形ポケモンのピッピのぴぴ、鈴香のポケモンはノーマルタイプ、風船ポケモンのプリンだった。 どちらも性別は♀。特性は異性をメロメロにするメロメロボディだ。♀同士なので、特性は関係ないけど。 鈴香:「バルーン、先手必勝よ、歌って眠らせて!」 蓮華:「それはさせないわよ!ぴぴ、神秘の守りで特殊効果を防いで!そしてコスモパワーを発動して!」 プリン(バルーンというニックネームらしい)は気持ちよく歌っていた。 でも、神秘の守りによってぴぴが眠ることはない。プリンが気持ちよく歌い続けていたので、あたしはコスモパワーも 発動させた。 「コスモパワー」は防御力と特殊防御力を一段階上げる技だ。プリンは打撃系の技を多く覚え、ピッピはどちらかといえば補助効果系 の技を多く覚える。バトルで攻めることに対して有利な方はどちらかといえばプリンだ。 けれど、それを覆すとしたら、ぴぴの補助効果技だと思う。 鈴香:「バルーン、歌うのはやめて攻撃するわよ!ハイパーボイスよ!」 プリンは歌うのをやめさせられて一瞬ガッカリした表情を示したが、すぐに大きな口を開けて、先ほどの美声とは全く程遠い 強烈な声を叫び始めた。ぴぴはこの声に驚き、そして耳を塞いで悶え始めた。 蓮華:「ぴぴ!?」 鈴香:「防御力を上げたとしても、バルーンの声には勝てないようね。バルーン、丸くなって捨て身タックルよ!」 防御も何もない状態になったぴぴにはさらに、プリンの捨て身タックルが向かってきた。 蓮華:「ぴぴ!しっかりして!」 あたしはぴぴに向かって叫ぶけど、ぴぴはそのまま捨て身タックルを受け、吹っ飛ばされていた。 が、吹っ飛ばされた瞬間、ぴぴはむくっと起き上がり、素早いスピードでプリンに一発強烈な体当たりを叩き込んでいた。 蓮華&鈴香:「えっ!?」 あたしも鈴香も、この状況には驚いていた。でも、すぐにぴぴはあたしの方をチラッと振り向いた。 そして、空を指差した後、グッドサインを出した。 蓮華:「ぴぴ…、分かったわよ。ぴぴ、月の光よ!」 さっきのぴぴの行動は自らによるものだったらしい。 どうやら一時期あたしの声も聞こえないくらい、耳がキーンとしたらしく、指示が聞こえないために、自分で動いたというわけだ。 さっきのはぴぴの「カウンター」で、捨て身タックルで受けたダメージを倍返しに返したらしい。 そして今、ぴぴには月の光が降り注ぎ、ぴぴは優雅に舞うようにして復活した。 捨て身タックルで受けた傷も綺麗に消えている。 鈴香:「そん…、バルーン、物真似よ!」 「物真似」は、相手が直前に行った技を真似して使用する事ができる技だった。直前に月の光を使ったためか、 プリンも月の光で復活を遂げていた。 鈴香:「そのまま往復ビンタよ!」 元気になったプリンは、すぐにぴぴに向かって攻撃を仕掛けてきた。 蓮華:「見切って避けて!そしてコメットパンチよ!」 ぴぴは見切る攻撃でそれをかわし、まっすぐにコメットパンチを打ち出した。 鈴香:「メガトンパンチでコメットパンチを押し返すのよ!」 プリンは咄嗟にメガトンパンチを放ってきた。コメットパンチとメガトンパンチでは威力はコメットパンチの方が強い。 でも、今回はぴぴの攻撃力が弱いからか、押し、押し返しでそのまま攻撃は相殺されてしまった。 しかも、最後の相殺で押し返されてしまい、ぴぴは地面に転がり、プリンは真上にジャンプしていた。 鈴香:「そのままメガトンキックよ!」 蓮華:「ぴぴ!えっと…そうだ、フラッシュよ!」 メガトンキックで向かってくるプリンだったが、ぴぴはフラッシュを放った。 それによって体制を崩すプリン、メガトンキックを放つ状態でもなくなっていた。 鈴香:「バルーン、目を瞑ったままハイパーボイスよ!」 鈴香はやられてもめげず、攻撃は続いていた。でも、あたしも負けない。 蓮華:「ぴぴ、相手が打撃ならこっちは特殊攻撃、吹雪よ!」 ぴぴはプリンに向かって一直線に吹雪を放った。一瞬ハイパーボイスによって攻撃は相殺されるかと思ったが、 吹雪攻撃はそのまま少し形を崩れながらもプリンを包み込み、そのままプリンを氷漬けにしていた。 プリンの持ち物は左手に巻いていたシルフのスカーフなので、氷を溶かされる心配はない。 よって。 審判:「プリン戦闘不能!ピッピの勝利!」 あたしはまず一勝した。 志穂:「一勝ね。妥当な線だけど。」 美香:「えっ?どうして?不利じゃなかったの?」 志穂:「不利?違うわよ。プリンとピッピの能力値を比べるとね、プリンはHPが高いのに対して、ピッピは防御と特殊防御の 値が高いのよ。だから、蓮華ちゃんがコスモパワーを指示した時点で有利なのは蓮華ちゃんだったのよ。 ただ、プリンの物真似とハイパーボイスによって、ちょっと蓮華ちゃんは混乱した節があるわね。 だから、もう少し早く特殊攻撃を使っていれば、勝てたはずよ。」 菜々美:「なるほどね。」 多分、混乱したんじゃなくて、蓮華ちゃん自身がやっぱり内心は妹の出現にオロオロしてるんだと思うけど。 鈴香:「さっきはやられたけど、次は負けないから。」 蓮華:「それはこっちのセリフよ。そのまま押し切るから。」 あたしたちは思いっきり火花を飛ばしてます。ていうか、飛ばしたのは鈴香から。 プリンもぴぴも、すでにあたしたちはボールに戻していた。 3対3の真っ向勝負だからだ。 鈴香:「押し切りすぎて倒れちゃうことを願ってるわ。行ってきて!パイロ!」 蓮華:「お願いね、ネギ!」 続いてのバトル、お互い同時にポケモンを出した。 だから、相手があれだから、とか、そういうことは全く考えていない。簡単に言えば、直感による戦法だった。 あたしが出したのはノーマル・飛行タイプポケモン、カモネギのネギで、対する鈴香のポケモンはイーブイを炎の石で進化させた ポケモン、炎タイプのブースター(ニックネームはパイロ)だった。 鈴香:「パイロ、火炎放射で丸焼きにしてあげて!」 蓮華:「ネギ、高速移動で避けるのよ!」 初めから、炎技を使ってくる鈴香。あたしはただ、ひがめを出さなくて正解だと思った。 ブースターの特性はもらい火。炎技を受けると、炎攻撃のパワーをパワーアップさせられるものだった。 ネギの特性は鋭い目だから、ブースターの砂かけなどには効果ないだろう。 鈴香:「パイロ、カモネギを睨みつけるのよ!そして電光石火!」 蓮華:「ネギ、ブースターに風起こしよ!」 鈴香のブースターがネギを睨んだけど、ネギは全くの無視を決め込み、電光石火をするっとかわして風起こしを行っていた。 ネギは以前、涼治に貸していた際にスペース団のポケモンとして動いていたので、それなりの場を踏んでいるせいか、 ポケモンに睨まれても、アーボックの蛇睨みを受けても、全く動じないのだ。 そして風起こしにより、ブースターは大きく飛ばされて落下した。 鈴香:「睨みつける攻撃を無視するなんて…」 蓮華:「あたしのネギはそれなりの場を踏んでるのよ。」 鈴香:「単に神経が図太いだけで、素行が悪いだけじゃないの?パイロ、スモッグでカモネギを包み込むのよ!」 ブースターはドガースが放出するあの毒ガスのスモッグを吐く事ができるのだ。 蓮華:「ネギ、葱の舞よ!」 あたしは大体、スモッグを使われた理由を察したので、すぐにネギのお得意のオリジナル技を使わせた。 鈴香は、スモッグでネギを包み込み、炎攻撃で引火させて大爆発を起こし、ネギを倒そうとしているのだ。 葱の舞は、カモネギの持つ葱をバトンのように振り回しながら羽を動かし、スモッグ系の煙攻撃や、粉系の攻撃を 自分の周囲に生み出した風で横に反らせるというものだった。 鈴香:「そんな!…パイロ、火炎車よ!」 鈴香はついに吹っ切れたのか、火炎車を使ってきた。 炎に纏われて向かってくるブースター。 蓮華:「ネギ、ここで終わらせるよ。切り裂く攻撃よ!」 ネギはふっとブースターを見つめ、持っているネギを構え、そして火炎車のブースターに一直線の横線を引くようにして ネギを振った。すると、炎が上半分が消滅するかのように消え、そしてブースターは倒れた。 鈴香:「えっ!?パイロ!?」 審判:「ブースター戦闘不能!カモネギの勝利!」 あたしは簡単に2戦目を終えた。 これはどう考えても、ネギの場踏みが多かった事によるものだと、あたしは思う。 経験の違いだね、強いて言えば。 涼治:「さすがは俺の鍛えたカモネギだな。」 哲也:「お前が鍛えて、蓮華が育てたから、蓮華が鍛えたポケモンだろ?お前、何嬉しがってんだ?」 涼治:「え、その…、いや…」 哲也:「俺は決めたからな。お前を認めないって。」 涼治:「そんなの哲也先輩の勝手ですよ。俺と蓮華は付き合い続けます!」 哲也:「できるといいな。」 蓮華ちゃんの勝利後、あたしたちの隣では彼氏と恋人の兄の熾烈な笑顔トークが行われていた。 志穂ちゃんは呆れ顔で、美香は面白がって、律子ちゃんとナナも面白がって見ていた。 さっき、バトルの途中からナナと涼治君も見に来たのだ。 志穂:「アレはどうでもいいとして、蓮華ちゃんとカモネギのコンビプレー、見事だったわね。」 菜々美:「そうね。でも、最後に何か嫌な予感がするのよね。」 志穂:「嫌な予感?」 菜々美:「ええ。さっきから敵意を抱いた音の波動を感じるの。」 その波動の持ち主が、実は最後の鈴香のポケモンだったわけでした。 鈴香:「これ以上負けたら悠兄と戦えないし、プライドが立たない!」 蓮華:「まだまだ子供ね。怒りが溜まるとそれだけ指示ができなくなるわよ。」 鈴香:「蓮華だって子供じゃない!年下だからって色々言わないでよ、オバサン!」 蓮華:「オバサン?誰がよ!まだ2つしか違わないじゃない!ガキは黙ってろ!」 初めはあたしも鈴香も友好ムードだった。でも、バトルが続くにつれ、鈴香が切れてあたしにガンを飛ばした事がきっかけになり、 あたしたちははじめての姉妹喧嘩を始めてました。 でも、悪いのは向こうだし。よくも人のこと、オバサンって言ってくれるじゃない。 鈴香:「ガキ?当たり前のことを言って何になるのよ。そんなことしか言えないなんて、頭のボキャブラリー、 全くないほど知能低いんじゃない?」 蓮華:「それはこっちのセリフよ!プライド優先する前にしっかり戦ったらどう?」 鈴香:「うるさい!さっきのカモネギの変な技使わなきゃ、勝てなかったの?ダサい!」 蓮華:「はぁ?ネギのことまで馬鹿にして!許さないんだから!」 鈴香:「こっちこそ!」 この時あたしたちは、全く気づかなかったけど、すでにもう一つの姿を出し始めてました。 あたしは蝶の羽と光と植物を纏う装束に、鈴香は鳥の足、セイレーンの翼、水色系統の装束に、変わっていた。 でも、全くあたしたちは気づかなかった。 そしてボールを互いに構えていて、同時にポケモンを放っていた。 鈴香:「ボイス!やっちゃえ!」 蓮華:「キレイハナ、ここは何をやってもいいわよ!」 互いのパートナーが、フィールドに躍り出たのでした。 あたしのパートナーは純粋草タイプ、フラワーポケモンのキレイハナで、鈴香のパートナーは騒音ポケモンのノーマルタイプ、 バクオングだった。大きさはバクオングが1.5メートルに対し、キレイハナは40センチ。 鈴香:「バクオング、ハイパーボイスよ!」 さっきのプリンとは大違いの強力なハイパーボイスがキレイハナを襲う。 でも。 蓮華:「キレイハナ、蔓の鞭でジャンプよ!そして種マシンガンを音を出す穴に突っ込んで!」 キレイハナ:「了解!いっけぇ〜!」 キレイハナにはハイパーボイスが簡単に届くわけではなかった。種マシンガンは、正確にバクオングの音を出す器官のうち、 2つの穴に大量に打ち込まれた。 鈴香:「それならバクオング、嫌な音と超音波を大放出してやるのよ!」 蓮華:「神秘の守りよ!」 あたしは怒ってはいる。でも、鈴香みたいに指示は駄々草にはならない。 逆に、神秘の守りによって超音波を防ぎ、嫌な音もかわすことができた。 鈴香:「それなら、火炎放射よ!そんな雑草なんか、燃やしちゃうのよ!いい具合に枯れてそうだからよく燃えるんじゃない?」 プッチン! 綺麗な音が、鈴香の言葉の直後、響き渡った。 観客にもうっすらとその音は聞こえるほどだった。 音の出所といえば、キレイハナである。 キレイハナ:「何ですって?雑草?枯れてる?」 キレイハナに言ってはいけない言葉を続けて鈴香が吐いたのだ。さすがのあたしも、怒りが冷めてしまった。キレイハナを戻そうかと思えば、 キレイハナ:「蓮華、この失礼なチビガキに一発やってやんなきゃ気がすまないの。戻さないで。」 あたしでも、この一睨みにはぎょっとしてしまい、戻すボールを下げた。 鈴香:「あれれ?その雑草が何を怒ってるの?小さいくせにあたしをチビって言うし、あんたの方が小さくてしょぼくれてて、 枯れてて、雑草で、汚いゴミじゃないの!邪魔よ!」 チ〜ン! 再び、今度ははっきりと会場に響き渡った。さすがにこの音を聞き、鈴香もあれっと気がついていた。 何かが起きる、そんな表情をしていた。 そしてバクオングもきょとんとしている。何かが起きる。 それは会場中も感じていたわけで、そしてそれは起きた。 突然、強力な日本晴れが辺りを照らし、そして地面からは大量の大木がにょきっと生え、同時に地面から生えてきた 蔓の鞭がバクオングを締め上げて持ち上げ、さらに花びらや葉っぱが辺りを舞いまくり、極め付けにはキレイハナが ソーラービームを乱射した。 ようするに、キレイハナバージョンの「暴れる攻撃」が発動したのだった。 そして、キレイハナが倒れた直後、フィールドにはバクオングが倒れていた。 辺りを見回してみれば、哲兄や菜々美ちゃんたちがシールドを張ってくれたおかげなのか、観客や審判には影響はなく、 審判:「バクオング戦闘不能!よってこの勝負、グロウタウン出身蓮華選手の勝利!」 あたしは最後のベスト8に名乗りを上げたのでした。 この後、あたしは失神した鈴香を保健棟に運び、目を覚ますのを待つことにした。 鈴香とは、仲直りをしなきゃいけないから。だって、せっかく会えた、あたしの妹だから。 早く目を覚まさないかな? 志穂:「蓮華ちゃんが勝ったわね。次の勝負はこれを見る限り、あなただけど…どうするつもりなの?悠也。」 悠也:「別に。俺は蓮華ちゃんを倒して、哲也と戦うよ。あいつが強くなったかを確かめたいからな。」 志穂:「蓮華ちゃんと鈴香ちゃんが姉妹であると同時に、哲也の兄であるあなたがヒートとして試合に出ているのよね。」 菜々美:「なんだ、やっぱり悠也だったの。」 志穂:「菜々美ちゃん、気づいてたのね。」 菜々美:「唯一よ。菜々美ちゃんがさらっと言った言葉に悠也の名前があったのは、あたししか気づいてないもの。」 悠也:「そうか。まあ、俺は哲也とバトルしたいだけさ。」 志穂:「蓮華ちゃんには言わない方が良さそうね。」 悠也:「そうだな。蓮華は俺の妹でもあるわけだしな。」 菜々美:「本当の妹じゃないでしょ、全く。それにしても、悠也がいるってことは、やっぱりこれから先も、 少し荒れるわね。」 あたしは強くそう思った。 これからベスト8が始まるけど、少し穏やかにいってほしいな。