第58話 波乱後のバトル!巫女VS妖怪 ついにベスト8が決定した。 蓮華ちゃんや健人先輩、哲也先輩、志穂ちゃんもランクインしていて、かなりすごい8人だと聞いている。 ナナ:「すでにトーナメントも決定していることだし、後は2人に残るまでの2試合ね。」 律子:「ダブルバトルだったっけ?」 ナナ:「ええ。数年前からダブルバトルが施行されて、去年からダブルバトルを行っているわ。 これによって8人が2人になるまで、ポケモン3対3のダブルバトルを行うの。 今までのバトルと違ってダブルバトルであるし、そのうえ、ポケモンの組み合わせや相手の出方なども考えなきゃ いけないでしょ?だから、明日はその考える試行錯誤の時間として取られていて、明後日から試合が開始されるのよ。 そして、2対2になった時はフルバトル6対6よ。」 元々はベスト8になった時点からフルバトルなんだけど、ダブルバトルが取り入れられてから、こうなったらしい。 あたしのお兄ちゃんはフルバトルで勝ち抜いた口だけどね。 律子:「でも、この対戦相手で決定なの?くじ引きじゃなくて。」 ナナ:「ええ。元々、その組み合わせは第2ステージになったときから決まってるもの。 それにこれの変更もパスワードの嵐だから、やろうとしても無理なのよね。」 あたし自身、前々からこの世界に来ているとはいえ、ポケモンリーグをずっと観戦しているわけじゃないから、 ベスト8の試合を見ることも初めてだった。だから、ある意味すごく楽しみだった。 そんな時だった。 突如室内のパソコン中からエラー音が鳴り響いたのだ。 ナナ:「何!一体…!?」 律子:「また何かあったの?」 あたしとナナがいるのは、リーグの職員たちもいるセキュリティセンターの一室だ。 あたしたちがいる理由は監視である。強いて言えば、見回りかな。何か起きたらいけないから、時間を大幅に利用して あたしとナナが要所要所、各所を見回っているのだ。 そして今、事件は起きた。 ナナ:「何が起きているの?」 職員:「どこかからこのトレーナーとトーナメント戦のデータフォルダに対して侵入した者がいるようです。」 ナナ:「大変じゃない!何とかしなさいよ!」 職員:「それが無理なんです。パスワードを入れようにも、パスワード画面になった時点でフリーズしてしまううえ、 パスワードやウイルスソフトが全く通じずに、全てすりぬけるようにデータに侵入されてしまうんです。 我々の手でもこれでは全く歯が立ちません!」 結局、明後日になるまで対戦相手が分からないように、設定が成されてしまった。対戦相手を変えられるだけで住んでよかったものはよかったけど、 あたしたちは、今後どうなるかがとても心配だった。 その頃。 来美:「これでよかったの?本当に。」 菜々美:「ええ。こうしないと厄介なことになるから。」 あたしは来美ちゃんとハナダジムの一室にいた。 実はセキュリティーにハッキングをして設定を書き換えたのは、あたしたちだった。 はっきり言えば、ハッキングしたのは来美ちゃんで、指示したのはあたしだった。 菜々美:「だって、血縁問題をこんなところに持ち出したら、真面目にリーグに出場している人たちに迷惑でしょ?」 来美:「確かにね。まさか悠也が出てたなんて、あたしも知らなかったわ。」 菜々美:「今知ってるのはあたしと志穂ちゃんだけよ。それにしても、難しい問題よね。風使いの一族は。」 来美:「そうね。」 あたしは、普段は人前では来美ちゃんのことは先輩とつけてるけど、二人だけのときはちゃん付けで、タメ口だった。 なぜ、来美ちゃんにハッキングをしてもらったのか、という理由はちょっと難しい。 でも、ここで説明しておけば、哲也先輩と悠也は従兄弟。そして二人とも、同じ風の能力者の一族の血を引き継いでいた。 ただ、哲也先輩の場合は親が事故で亡くなってしまったから、風の能力者の後継者争いで立場が弱くなり、しかも、 元々哲也先輩の両親が、哲也先輩を後継者にしようと思わなかったこともあり、哲也先輩を施設に預けちゃったのだ。 簡単に言えば、能力未開発の子供をこのまま育てるわけには行かないと言う理由の「破談」だったらしい。 それを見つけて保護したのが、能力者ではないけど、それぞれの事情に通じている、それぞれの親と知り合いの舞さんだった。 それで終わりかと思ってたんだけど、まだ続きがあった。 どうやら、風の能力者の後継者になるだけのレベルが悠也にはなく、逆に哲也先輩の力の方が強いらしい。 そんなわけで、悠也は哲也先輩を何かで倒せたならば、後継者になれるらしいのだ。 実力が認められれば、後継者なのだという。 哲也先輩はこのことを知ってるけど、全くそういう後継者争いとかには興味がないので、悠也の挑戦状も叩き落としてるんだけど。 こういうことをあたしや志穂ちゃんが知ってるのは、氷雨さんが教えてくれたからだった。 最も、これを知らないのは、この事実を知る前に悠也に会って、仲良くなった上に懐いちゃった蓮華ちゃんくらいだ。 悠也もそれを承知の上で、仮面をかぶり、別人として蓮華ちゃんを倒し、哲也先輩を倒そうという考えだと思う。 悠也は蓮華ちゃんが好きだから、悲しませたくない思いはあるみたいなのだ。 後、来美ちゃんがハッキングできたのは、水の能力を活用したからだった。 パソコンなどの電脳世界に意識として入り込み、水のようにデータの中に流れ込んで、データを書き換える、水の能力を 使ってもらったのだ。あまりいいこととは言えないので、来美ちゃん自身も滅多にやらないことだった。 来美:「これで、蓮華ちゃんと悠也が戦うことはないわけね?」 菜々美:「さぁ。悠也と哲也先輩と蓮華ちゃんをバラけたけど、実際は設定を混乱させただけだから、対戦相手が 入れ替わることにしかならないかもしれない。でも、悠也と哲也先輩は、決勝に出れなきゃ戦えないようにしたんだから、 大丈夫だと思うよ。」 来美:「そう思っておくわ。…あら、挑戦者が来る時間だわ。これくらいでいいかしら?」 菜々美:「ええ。ありがとう、来美ちゃん。」 来美:「蓮華ちゃんたちによろしくね。」 あたしはハナダジムを後にした。明後日が見ものだな、多分。 だが、予想より早く、対戦相手は発表された。書き換えられた対戦相手であり、元には戻せなかったらしい。 蓮華:「あたしの対戦相手は…沙織さんって人みたいね。」 ??:「そのようね、蓮華さん。」 あたしはナナから聞いて、対戦相手の変更を見に来た。すると、あたしはヒートと言う人とは戦わず、 沙織という人と対戦することになっていた。 その時にあたしの前に来たのは、その本人の沙織さんだった。 沙織:「これまでのあなたのバトルは面白かったわ。でも、対戦することになって面白いとは言ってられないものよ。 あたしは全力であなたとバトルをするつもりだから。」 蓮華:「あたしだって負けないよ。」 沙織:「言葉では何度でも言えますわ。けれど、世界一のポケモンプリマダンサーを目指すあたしの力を 見くびらない方がよろしくてよ。それでは、明日会いましょうね。」 沙織さんは優雅に去っていった。 綺麗な人が優雅に去ると花が見えるらしいけど、沙織さんの場合は雪の結晶が見えた気がした。 美香:「蓮華、作戦を立てないとね。」 律子:「そうね、あの人は確か、対戦相手のポケモンをみんな、氷タイプでさえも凍らせたほどよ。」 蓮華:「うん、今すぐやろう。」 哲也:「対戦相手が変わるとはな。一体何が起きたんだ?」 朝連絡を貰い、会場に来てみればこんな状況だった。野次馬も多い。分かるわけないけど、つい隣の健人に聞いてしまった。 健人:「さあな。俺の相手は…ヒートって奴か。お前の相手は誰だ?」 哲也:「俺か?俺は…ああ、秀二って奴とだ。ってことは、志穂はあいつと当たったってことだな」 健人:「そうだな。しかし、ポケモン協会もいい加減なもんだな。」 哲也:「ああ、いきなり対戦相手を変えるとはな。」 俺たちはその後、すぐに帰ろうと思った。 が。 健人:「喧嘩らしいな。」 哲也:「しかも、この声は聞き覚えがあるな。」 俺たちは、リーグの職員に詰め寄っているヒート選手を見かけた。 対戦相手を変えられて、怒っているようだ。 ヒート:「俺はどうしてあいつとは、決勝に行かないとバトルできないんだ!初めの相手をぶったおして、2度目のあいつと戦うはずだったんだぞ!」 職員:「しかし、これに関しましては私どもも予測してませんでしたので…」 ヒート:「だから何がどうしてこんなことになったんだ!」 ナナ:「ハッキングよ。セキュリティーにハッキングされて、対戦相手が変えられたの。 セキュリティを頑丈にしたのにこの状態よ。それでも、対戦相手が変わってもリーグは続くわ。何か不手際でもあるの? 今の対戦相手や前の対戦相手に失礼とは思わない?」 ヒート:「うるせえ!」 志穂:「火雷砲。」 突如、ヒート選手は吹っ飛んだ。もう少しでナナに掴みかかろうとしていたところだった。 そして、ヒート選手の仮面が取れた。 哲也:「…お前か。」 健人:「やっぱりな。」 志穂:「悠也、蓮華ちゃんがいたら、この状況、どう思ったかしら?ハッキングしたのは誰か、大体予想できてるけど、 はっきり言って、家の問題をリーグの対戦に持ってくるのは、あたしたちにも、他のトレーナーにも迷惑なの。 それが判らないようじゃ、まだまだ後継者にはなれないんじゃないの!」 志穂の声は最後になるほど、荒れていた。 悠也:「…悪かったよ。」 悠也はそういい残すと、俺にガンを飛ばし、 悠也:「悪いけど、筋肉馬鹿は潰す。覚えとけよ。」 と健人に言って、その場を去った。 健人:「馬鹿らしい奴だな。お前も大変だな。」 哲也:「ああ。」 今の騒ぎは既にナナと志穂が終止を打たせていた。 ナナ:「みんな、大変ね。」 志穂:「そうなのよね…ナナちゃん、」 ナナ:「何?」 志穂:「多分、ハッキングしたの、菜々美ちゃんと来美ちゃんよ。」 菜々美:「ご名答。」 今度は菜々美がやってきた。 健人:「おい。」 菜々美:「健人、黙っててごめんね。ナナちゃんも大変だったでしょ?でも、こうするしかなかったの。 分かってくれない?」 ナナ:「…今回だけよ。ハッキングのことは言っちゃったけど、警察に届けてないから。」 菜々美:「ありがとう。」 そんな感じのが続き、ようやく数時間後、俺たちも帰路についた。 それにしても、ダブルバトルか。どうなるんだろうな。 美香:「沙織選手のポケモンは主に氷タイプね。」 律子:「氷タイプに向かってくる炎や岩には水タイプを使ってるし、初めから厄介な相手になったわね。」 蓮華:「でも、ダブルバトルだから、今までの作戦を使ってくるとは思えないよ。ここはあたしが決めてもいい?」 律子:「ええ、ていうか、最後は蓮華ちゃんが決めてるじゃない。」 蓮華:「そうだね。」 ダブルバトルは2体のポケモンを使う。そして、それぞれの技との組み合わせで味方を強くしたり、フィールドや天候を 活用したり、1対1とは全然違うバトルが楽しめる。 だから、2体を決めても、相性が悪いとバトルでは活用できない。 毒タイプと地面タイプを使ったとしても、地面タイプが地震を使えば、味方の毒タイプが倒れてしまうように。 まあ、今の事例には例外もあるけど。 他に、炎タイプ同士を使って特性のもらい火を活用したり、色々な戦法がある。 あ、待てよ…確か、沙織さんのポケモンって…。 あたしはパソコンで色々と探した。 そして。 蓮華:「う〜ん、沙織さんが何を考えてるか分からないけど、もしかしたらってことを考えると、この子を使う方がいいのかも。 でもなぁ…。」 キレイハナ:「蓮華、どうしたの?」 ソルル:「ソル?」 だねっち:「ダネダネ♪」 蓮華:「あのさ、これを見てくれない?」 あたしはちょうど遊んでいた3人に聞いてみた。そろそろかな、だねっちもバトルに出す時期かも。 まともに使ったことないのよね。でも、使い道はあるし…、そうだ! キレイハナ:「あ、蓮華、あたしたちはこの子を使うこと、賛成だからね。」 蓮華:「うん。分かった。」 あたしは沙織に対してのポケモンを決めた。 次の日。 志穂:「バトルはどうやらあたしからみたいね。蓮華ちゃんたちはどうするの?」 蓮華:「あたしたちはいつものところで見てることにするよ。哲兄や健人先輩、菜々美ちゃんや涼治やナナは別行動だから、 一緒に見てられる律子と美香だけだけどね。志穂ちゃんはどう?ダブルバトルの準備は。」 志穂:「大丈夫よ。」 蓮華:「あたしも準備は完了よ。でも、選んだ子達がどういう結果を生むかが心配だからね…」 志穂:「その様子だと、バトルに滅多に出さない子を使うつもり?大丈夫なの?」 蓮華:「一応ね。でも、多分大丈夫。」 あたしは元気に言ったけど、志穂ちゃんは心配そうだった。 そしてそれは、観客席で合流した美香と律子も同じだったようだ。 美香:「ふぅ〜ん、それはあたしたちも心配ね。」 律子:「確かにそうよね。蓮華に任せた手前、反論できるわけじゃないけど、大丈夫なの?」 蓮華:「ひどい!二人とも信じてないわけ?大丈夫よ。」 あたしがそう言った時、志穂ちゃんが出てくるのが見えた。 美香:「あれっ?」 蓮華:「あ、あの子って…。」 あたしの選んだこの子達なら、絶対大丈夫だと思う。 ダークとのバトルでも、このコンビで勝てたし、その二人にこの子をプラスしたとしても、バトルの流れはあたしに向くはず。 けれど、問題なのは相手のこと。 パソコンで調べたとしても、得意なのはダブルバトルとしか書いてなかった。 ポケモンも多種多様様々。でも、よく使うポケモンを見えたから、それで作戦を立てる事ができた。 だからこの3人を使うわけだけど、一体どうなることか。 そしてあたしは呼ばれるままに、バトルフィールドに向かった。 天知:「久しぶりだね、火雷の巫女さん、いや、志穂。」 志穂:「えっ?」 そんな時だった。突然、相手の選手、天知選手がこんなことを言ったのだ。 でもあたしは、どうして彼がそんなことを言うのか、よく分からなかった。 天知選手はあたしよりも年下らしい外見で、半そで短パンの短パン小僧のようで、帽子を深くかぶっているからか、 表情が分からない。 でも、あたしのことを火雷の巫女ということは…彼は人間じゃない。 志穂:「何者?」 バトルの時、あたしは巫女装束姿なわけで、鬼火があたしの周囲を飛び交い始めていた。 あたしの正体が能力者と知っている審判員は、見てみぬ振りをしている。 天知:「嫌だなぁ、俺のことを忘れちゃうなんて。この外見でわかるよな?」 志穂:「…その言い方、火雷の巫女とあたしを呼ぶこと、短パン、そして外見は子供…、もしかして…、 雨降り小僧?」 天知:「ビンゴ!大的中!やっぱり分かるんだな、志穂は。」 あたしは脳裏に浮かんだ言葉から、一人の妖怪の姿を思い浮かべ、その名を口にしたところ、どうやら当たったらしい。 志穂:「あなたもこっちの世界にいたとはね。道理で現実世界であなたを見かけなくなったと思ったわ。」 天知:「双葉と大河について来たのさ。こっちの世界は自然が多くて妖怪にとって住みやすい世界だからな。」 志穂:「そう。それで、優勝したらどうするつもり?」 天知:「決めてないな、それは。でもさ、友達のポケモンたちと絆を深めたバトルをするのって、楽しいじゃん。」 志穂:「あなたらしいわね。」 そんな言葉の返し合いをしているうちに、バトルフィールドにたどり着いた。 今回のバトルフィールドは岩のフィールドだった。この場合、あたしのポケモンたちは少し不利かもしれないが。 天知:「見た感じ、蓮華や哲也や健人、悠也もいるじゃん。あいつらともバトルしたいからさ、 志穂にはここで倒れてもらうね。」 志穂:「そんなわけには行かないわ。あなたたちみたいに、異世界を飛び越える能力がないあたしたちには、 ここで優勝しないと元の世界には帰れないの。だから、障害になるあなたには負けないわよ!」 そして試合のときになった。 天知はこの時には帽子を取っていて、今まで(どうやら予選の時から今に至るまでずっと、帽子をかぶっていて顔が分からなかったらしい) 知られていなかった顔が分かったらしく、テレビが彼をクローズアップされたらしい。 その時のあたしの知り合いたちの驚きっぷりはなかったような気がする。 気がするから、驚いたかどうかは知らないけど。 観客席で。 蓮華:「やっぱり雨降り小僧だったんだぁ。」 律子:「雨降り小僧?」 美香:「うん、志穂ちゃんの神社周辺にだけ、雨を降らせて悪戯していた、いたずらっこの妖怪。 志穂ちゃんの火雷砲を食らって吹っ飛ばされて以来、志穂ちゃんを慕ってる妖怪なのよね。」 蓮華:「まさか、こっちの世界に来ていたとはね。」 リーグ会場近くの公園で。 哲也:「やっぱりあいつだったか。そんな妖気をプンプンさせていたし、まぁ、志穂の敵じゃないな。」 玲奈:「志穂ちゃんに心変わり?」 哲也:「んなわけないだろ。俺が心変わりするわけないじゃないか。」 玲奈:「そうよね。それにしても、雨降り小僧がいたなんて。」 控え室で。 菜々美:「あれっ?天知の事がテレビに出てるよ。」 健人:「そうだな。表情を今まで隠していたもんな。」 菜々美:「試合、気になる?志穂ちゃんの後でしょ?」 健人:「ああ。でも、俺はお前がここにいることでリラックスできてるし、志穂は志穂で、天知より強いだろ? だから俺は、別に気にしない。」 菜々美:「ふぅ〜ん、健人らしいね。」 ヤマブキジムで。 氷雨:「あらら、雨小僧の奴までこっちにいたのね。」 晃正:「らしいっすね。あ、これ、サカキさんからの言伝です。」 氷雨:「ありがと、ナツメに渡しておくわ。」 なずな:「それにしても、試合の相手が妖怪と、その妖怪を一時は除霊しようとした相手とは意外ですね。 結果は目に見えすぎてるけど。」 氷雨:「そうね。それだけは言えてるわね。」 海斗:「こんちはっす!」 清香:「どうかしたんですか?賑やかですよ。」 氷雨:「あ、いらっしゃい!どうかし…あ、そうか。カツラさんからの言伝のお使いね?」 清香:「ええ。ナツメさんは?」 なずな:「ジムリーダーの仕事と称して恋人のところらしいです。」 海斗:「恋人か。意外と真面目かと思えば、ちゃっかりしてるんだな、あの人も。」 ハナダジムで。 来美:「あら?天知君じゃない。ふぅ〜ん、リーグに出てたのね。」 セキチクシティで。 楓:「あ、天知の奴だ。いいなぁ、志穂ちゃんとバトルなんて。あたしも出たかったなぁ。」 ポケモンセンターリーグ会場で。 涼治:「何か気配がするとは思ったんだよなぁ。」 翼:「やっぱり涼治もか。」 涼治:「先輩もですか?」 翼:「ああ、何かいるなって感じだったんだ。」 ナナ:「いるって何が?」 翼:「ああ、あの天知って奴、志穂に片思いしてる妖怪なんだ。」 ナナ:「へぇ〜。」 志穂と天知は知らないが、それぞれ色々な場所で、こんな会話がされていたのだった。 審判:「これより、トキワシティ出身志穂選手と、ヤマブキシティ出身天知選手の試合を開始します! 今回からバトルはダブルバトルになり、使用ポケモンは3体。そのうち、相手のポケモン2体を倒した側が 勝利となります。また、今回からダブルバトルということで、自爆、大爆発による失格事項はありませんので ご注意ください。それでは、試合開始!」 志穂:「お願いね、ウィンディ、メガニウム!」 天知:「行け!ハガネール、プテラ!」 あたしは日本晴れペアの炎タイプのウィンディと、草タイプのメガニウムを、天知は鋼・地面タイプの鉄蛇ポケモンハガネールと、 岩・飛行タイプの翼竜ポケモン、プテラを繰り出してきた。 フィールドが岩であるだけに、ハガネールとプテラには絶好のステージかもしれない。 それに、地面と飛行が一緒と言うことは、考えられるのは一つ。地震攻撃がある。 でも、あたしはウィンディにオボンの実、メガニウムに奇跡の種を持たせたし、ウィンディの特性「威嚇」が、 攻撃力の高い2匹のポケモンの攻撃力を下げていることだろう。 天知:「俺のほうが有利みたいだね。」 志穂:「そうかしら?最後に泣きを見るのはあなただから。」 天知:「口では好きなことは言えるんだよ、志穂。それじゃ、ハガネール、砂嵐!プテラは上昇するんだ!」 フィールド上をハガネールの起こした砂嵐が覆った。そして、プテラが上空に上がった。 志穂:「これじゃ、何も見えない!」 天知:「そういうことさ。ハガネール、穴を掘って潜れ!プテラ、真下に向かって超音波だ!」 ハガネールは地面に戻ったらしい。音でそう感じた。 そして、それを感じたのか、プテラが真下に向かって、真下にいるウィンディとメガニウムに向かって、 超音波を放出していた。 上空から超音波を放つことで、フィールド付近で相手に放つよりも効果的に、かつ、相手全員に超音波を放てるのだ。 しかも、岩のフィールドの岩は今までのバトルも見てきた限り、硬化しているが、特殊攻撃には脆いのだ。 ということは、フィールドの岩は崩れると言うことで、メガニウムたちに攻撃が当たっていることになる。 志穂:「ウィンディ!メガニウム!」 砂嵐のせいでよく見えない上に、声も超音波で遮られていた。でも、あたしは意識を集中させた。 あたしは炎の力を持っている。だから、ウィンディの声は感じられる。 天知:「これくらいで倒れたかな?まあ、混乱はしているよね?だから、すぐに二人とも倒してあげるよ。 ハガネール、地震だ!」 天知が叫んだ。でも、既にあたしは行動に移していた。 志穂:”ウィンディ、神速で砂嵐から飛び出るのよ。そして、メガニウムに地震を起こさせて!” あたしは超音波であたしの声が遮られた状態にされていることを察していたので、意識を集中し、ウィンディの心に叫んだのだ。 ちょっとずるいかもしれないことだけど、これはあたしだからできるわけじゃなく、あたしがポケモンと特訓してできるように なったことだった。 そして、その行動の方が功を成していた。 ウィンディが砂嵐の中を飛び出してきたのだ。 天知:「何!?」 その直後、フィールドを地震が起こった。 天知:「何だ、驚くことはないか。プテラ、無防備なウィンディに突進だ!」 志穂:「メガニウム、日本晴れで砂嵐を消して!プテラに蔓の鞭よ!」 あたしはその地震が、メガニウムの起こしたことだと信じて指示を出した。 プテラは急降下するようにウィンディに向かってくる。神速で飛び出したウィンディには、そのままフィールドに 足を下ろすことしかできない。そして、そのまま突進を受けてしまった。 志穂:「ウィンディ!」 その時、砂嵐が消滅するように掻き消え、フィールドを日本晴れが覆い始めていた。 天知:「砂嵐が!?ハガネール、どうしたんだ!」 砂嵐が消えたフィールドでは、フラフラになったハガネールと、蔓の鞭がプテラに届かなかったものの、光合成で 回復しているメガニウムの姿があった。 天知:「さっきの地震はハガネールの攻撃じゃなかったのか!?」 志穂:「残念でした、メガニウムの攻撃よ。ウィンディ、ハガネールに火炎放射よ!そしてメガニウム、 プテラにソーラービームよ!」 天知:「くそっ、ハガネール、火炎放射を龍の息吹で押し返せ!プテラは高速移動でソーラービームを避けろ! そしてカマイタチだ!」 ウィンディの火炎放射とハガネールの龍の息吹がぶつかり合う中、メガニウムのソーラービームはプテラを追っていた。 しかし、素早さの高いプテラにはソーラービームは当たりにくい。 そのうち、プテラの周囲を空気の渦が回り始めた。 カマイタチは命中率が悪いものの、急所に当たりやすい技なのだ。 そのうちに、ハガネールの龍の息吹が火炎放射に貫かれ、火炎放射がハガネールを包み込んだ。 直後、カマイタチ攻撃は、ウィンディとメガニウムを襲っていた。 志穂:「メガニウム、リフレクタよ!」 打撃攻撃技を半減させる防御シールド技のリフレクタで、メガニウムはカマイタチの攻撃を受けたが、光合成をしたこともあり、 ダメージはあまり受けていなかった。 しかし、ハガネールが倒れた直後、ウィンディもカマイタチが急所に当たってしまったらしく、その場に倒れてしまった。 志穂:「ウィンディ!」 天知:「ハガネール!」 審判:「ウィンディ、ハガネール、共に戦闘不能!」 あたしたちはお互いに痛みわけしていた。 志穂:「やるわね。」 天知:「志穂こそ。でも、俺は負けないよ。行くんだ、オーダイル!」 志穂:「ゲンガー、お・ね・が・い・ね(ハート)!」 あたしは、あたしに恋して近寄ってきたために、あまりバトルに出す気がなかったものの、結構強く育った、 ゴーストタイプのポケモン、ゲンガーをだした。しかも、頑張って色っぽい声を出してまで。 そして対する天知は、ワニノコの最終進化形の水タイプポケモン、オーダイルを出していた。 志穂:「ゲンガー、プテラに電磁波よ!メガニウムは地震よ!」 ゲンガーの特性が浮遊なので、メガニウムの地震をゲンガーが受けることはない。 天知:「プテラ、電磁波を超音波で相殺しろ!オーダイルは雨乞いだ!そしてハイドロポンプだ!」 電磁波はプテラの超音波の方が威力があり、綺麗に相殺されてしまった。地震も、オーダイルにはあまり効果がなかった。 でも、あたしはもしやと思って指示を出しただけで、実はこれを待っていたのだった。 「雨乞い」の指示を。 フィールドはみるみるうちに、雨雲が覆い、雨が降り始めていた。 雨乞いによって、オーダイルは水の攻撃の威力を上げられる。でも、雨乞いによって嬉しいことはもう一つ、 あるのよね。 志穂:「天知、残念でしたって言うわね。」 天知:「えっ、志穂?」 志穂:「うふふ、ゲンガー、プテラに雷よ!メガニウム、オーダイルの口に蔓の鞭!」 天知:「な、何!?」 雷は威力は高いけど、命中率が低めの技。でも、雨乞いを行うことで、雷を確実に相手に当てられるようになるのだ。 あたしは、もし天知が雨乞いを使わなかったら、プテラには10万ボルトを放たせる予定だった。 そしてオーダイルは蔓の鞭を、ハイドロポンプを発射する寸前の口に巻きつかせた。 雷はまともにプテラに命中し、オーダイルも放つはずで止められた水を吐き出す行き場をなくし、口と同時に体が水で膨らみ始めていた。 落下してくるプテラ。 天知:「プテラ、しっかりしろ!もう一度羽ばたくんだ!」 すると、天知の声と同時に、プテラは再び上昇し始めていた。 志穂:「できるかしら?メガニウム、縛ってるそれをプテラに投げ飛ばして!」 メガニウムはプテラに向かってオーダイルを振り回し、投げ飛ばした。 上昇してはいるものの、雷によって体が痺れているのか動きの鈍いプテラに、水を多く溜め込み、撒き散らしているオーダイルは まともに命中した。 そして落下した。 審判:「プテラ、オーダイル、戦闘不能!よってこの勝負、トキワシティ出身志穂選手の勝利!」 というわけで、あたしは難なく勝利した。 試合終了後、志穂は天知に呼びかけられた。 天知:「志穂、強かったよ。」 志穂:「どうもありがとう。でも、天知も強かったわよ。またバトルしましょうね。」 天知:「いいぜ。でも、その後に少しは俺に付き合ってくれよ。」 志穂:「え?」 天知:「え、じゃないよ。俺と結ばれれば、志穂は水の力も得られるぜ。どうだ?熱い関係を一つ。」 ぷっつん! この音は小さかったので、会場には響かなかった。 が、音はしなくても、志穂が切れたことを十分に見せるように、鬼火やお札が彼女の周りを飛びはじめた。 そして。 志穂:「天知の馬鹿!」 志穂の火雷砲が、前よりも強力な状態で天知に命中するのだった。 美香:「さすがと言うだけあるね。…まさか火雷砲がまた出るとは思わなかったけど。」 律子:「そうね。…志穂ちゃんの独占試合って感じだったわ。」 二人は火雷砲に唖然としながら、そう言っていた。 蓮華:「さすがだよね。あたしも見習わなきゃね。」 あたしは強くそう思った。ポケモンは違うにしても、あたしの選んだポケモンは、志穂ちゃんが使ったポケモンと同じ 属性なのだから。 次は健人先輩の試合。どうなるのかな?とっても楽しみだ。 あと、菜々美ちゃんはここには来ない。 実はサポーターとして、健人先輩のそばにいることにしたらしいから。 あたしの試合も気になるけど、今後もすごく気になるな。