第59話 大どんでん返し!まさかのダブルバトル 菜々美:「大丈夫なの?」 健人:「任せろ。俺ならあいつには勝てる自信がある。」 菜々美:「そうだよね?」 ついさっき、志穂ちゃんが雨降り小僧の天知に勝利した。 そして次は、あたしの彼氏である健人が、悠也とバトルをするとき。 あたしはなんだか心配だった。というのも、悠也は妙に哲也先輩に牙を向いているから。 実を言えば、悠也は子供っぽいところがあるのが理由で、本当は哲也先輩よりも2つ上なのに、 あたしたちは呼び捨てで呼んでいるんだけど、ここに来る前にすれ違った時も、意味深な表情を見せたのだ。 それがどうも気にかかる。 何かの策を練ってあるのかもしれない。 でも。 健人:「俺が負けると考えるのはやめろよ。俺は絶対に勝つ自信があるからな。お前もそう願ってくれれば、俺は安心だからな。」 あたしは健人にそう言われた。 確かにそうだよね。応援しなきゃいけない人間が、こんなことで不安になってたらいけないもんね。 というわけで、あたしはトレーナーが立つお立ち台の後ろにある応援席で、マリルリやバタフリーと一緒に 応援をすることに決め込んでいた。サポーターでもあるのよね。 菜々美:「頑張ってね。」 健人:「ああ。」 菜々美が後ろで俺を見守っていることは、俺にとってホッとすることだった。 あいつは悠也が俺に宣戦布告をしたときからずっと不安げにしていた。だから、俺は菜々美の方が試合よりも心配だった。 けれど、あいつは俺の言葉で立ち直り、今に至っている。 だから、俺も気持ちを引き締めて試合に望もうと思う。 悠也:「君には負けないよ。俺は俺なりのバトルをするまでさ。」 悠也はヒートという名前で、再び仮面をかぶり、姿を現していた。 彼はこのリーグ戦では哲也とバトルをするときになるまでは仮面を被り続けるだろう。 しかし、悠也が哲也と戦うには、二人とも決勝に出ないといけないが、それはまず無理だろうな。 健人:「俺はお前に負ける気はない。俺の力をお前によく教えてやる。」 悠也:「そうか。でも、そう言ってられるのも時間の問題だからな。」 悠也は自信たっぷりに言っていた。 これは厄介な試合になりそうだ。 もうすぐで試合が始まる。あたしは次の哲兄の試合が始まったら、控え室に行くことになる。 でも、それまでの間は健人先輩を応援するって決めていた。 蓮華:「ヒート選手って強いのかなぁ?」 律子:「強いんじゃないかしら?確か、哲也先輩と同じくらい、スピード技に決め込む人だったわよ。」 蓮華:「でも、健人先輩なら大丈夫だよね。ねぇ、美香?」 美香:「…」 蓮華:「美香?」 美香:「えっ?あ…ごめん。何?」 律子:「美香、どうかしたの?ボーっとしたり、落ち着きがなかったり。どこかおかしいの?」 美香:「そんなことはないよ。」 美香はそう言っていたけど、さっきから妙に様子がおかしかった。 後で問い詰めてやらなきゃ。 蓮華と律子は知らないのよね。 あたしも菜々美がさっき教えてくれたから知ってることだけど。 実は、ついさっき菜々美がメールで教えてくれたのだ。 ヒート選手の正体が悠也さんであることを。 蓮華が正体を知ったらどう思うのだろうか。それと同時に、あたしの初恋の人である悠也さんのバトル。 そう考えるとついポッとなっちゃうのよね。 そして試合の時間がやってきた。 ルーレットの結果、先ほどの試合に引き続き、岩のフィールドに決まった。 審判:「これより、トキワシティ出身健人選手と、ヨシノシティ出身ヒート選手の試合を開始します。 ルールはダブルバトル制度に基づき、使用ポケモンは3体、ポケモンの交代は自由とします。 相手のポケモンのうち、2体を倒したトレーナーが勝利となります。 また、ダブルバトルということで、自爆・大爆発の禁止事項は今回からは施行されませんのでご注意ください。 それでは、試合開始!」 悠也:「行ってこい!チャーレム、カブトプス!」 健人:「まずはお前たちに任せるからな!サイドン、それにヘルガー!」 悠也のポケモンは格闘とエスパーという相反する属性を持つ瞑想ポケモンのチャーレムと、同じく水と岩という属性を持つ 化石ポケモンのカブトプスだった。 それに対し、俺は炎と悪の属性を持つヘルガーと、岩と地面の属性を持つサイドン。 相性的に言えば、俺のほうが不利かもしれないが、考え方に寄れば、悠也が不利であることも間違いない。 ここは試合の進め方で決まるだろうな。 悠也:「チャーレム、心の目でサイドンを見ろ!カブトプスは剣の舞だ!」 健人:「ヘルガー、チャーレムに鬼火だ!サイドンはカブトプスに電撃波だ!」 チャーレムが行っているのは次のターンに使う攻撃、多分命中率の低い蹴り技だろう、を必ず当てるための技で、 「心の目」や「ロックオン」などの技は、必ず相手に攻撃を当てたい時に使う技だ。 これを行うことで、相手には確実に攻撃を与えられるというわけだ。 そしてカブトプスは、防御力の低いヘルガーに物理攻撃を行うつもりだろうか。剣の舞で攻撃力を上げていた。 それに対し、俺は攻撃力と素早さを落とす目的で、その場から動かないチャーレムに鬼火を、そして水タイプでもある カブトプスに電撃波を放たせた。 鬼火は当たらなくても、電撃波は確実にカブトプスに攻撃できる。 しかし。 悠也はそれを上回る作戦で決め込んでいた。 悠也:「電撃波か。カブトプス、堪え続けろよ!まだ策はあるからな!チャーレム、サイドンを飛び越えてヘルガーにメガトンパンチだ!」 健人:「何!?サイドン、ヘルガーを守れ!」 悠也:「カブトプス、高速移動でサイドンをかく乱するんだ!」 てっきりチャーレムは跳び膝蹴りなどでサイドンに攻撃をすると思っていた。 しかし、心の目はヘルガーにも使っていたらしく、ヘルガーに向かってメガトンパンチを使おうとしていた。 そのため、近くにいるサイドンにその攻撃を防がせようと考えたが、素早さのあるカブトプスが、サイドンの周囲を回り、 サイドンをかく乱し始めたのだ。 そのため、ヘルガーはメガトンパンチで吹っ飛ばされ、サイドンも高速移動で足止めされてしまったわけだ。 鬼火もかわされてしまっていた。 健人:「くっ、こうなったらヘルガー、カブトプスにソーラービームだ!サイドンはヘルガーを援護して ロックブラストだ!」 このままだったら悠也のペースで取られてしまう。 そう感じた俺は、カブトプスをまず倒すために、ヘルガーにソーラービームを発射できる態勢をとらせ、 その間、サイドンに相手に周囲の岩を投げつける技「ロックブラスト」で、チャーレムとカブトプスから、 ヘルガーを守ろうとした。 しかし。 悠也:「ふっ、健人、考えが甘いよ。チャーレム、ヨガのポーズで上昇しろ!カブトプス、地震だ!」 健人:「何!?」 攻撃力を上げる「ヨガのポーズ」の体制でチャーレムが宙を浮き、その隙にカブトプスが地震を発動させたのだ。 岩タイプのサイドンと、炎タイプのしかもダメージを受けた直後のヘルガーに、この攻撃は強力なものだった。 ヘルガーはその場で力尽きてしまった。 健人:「ヘルガー!」 審判:「ヘルガー、戦闘不能!」 悠也:「どうだ?筋肉馬鹿は頭まで固いらしいな。」 健人:「うるさい!ヘルガー、戻れ!エビワラー、頼むぞ!」 俺は、相棒でありパートナーであるエビワラーを出した。 菜々美:「健人…頑張って!」 あたしはさっきまでの威勢のいい応援はできず、ただ祈っているしかできなかった。 マリルリとバタフリーも意気消沈している。 健人は自分を見失いかけているかもしれない。 普段は冷静なのに、今日に限っては悠也の嘲笑うような挑発にも乗っている。 この状態だったら…嫌!考えたくない! 菜々美:「健人、冷静になって!」 あたしはそう叫ぶしかなかった。 健人:「菜々美…。」 俺は菜々美の叫びで不意に我に返った。つい、あいつの挑発に乗ってしまったようだ。 このままじゃ、いけないな。 悠也:「どうした?気持ちがこっちに向いてないようだな?」 健人:「そんなことはないぞ。」 悠也:「どうだかな?カブトプス、エビワラーにマッドショットだ!チャーレムはサイドンに冷凍パンチで攻めろ!」 健人:「エビワラー、高速移動で見切れ!そしてカブトプスに連続パンチだ!サイドン、チャーレムを尻尾でなぎ払え!」 カブトプスが泥などの塊を放って素早さを下げる「マッドショット」をエビワラーに投げつけてきたが、エビワラーは 高速移動で交わし、投げつけられるマッドショットを見切った。そしてカブトプスの胸のうちに入り、連続パンチ攻撃を始めた。 カブトプスは岩タイプだが、エビワラーの高速連続パンチだ。 岩を砕く勢いに、カブトプスが我慢できるわけがない。カブトプスは防戦一方になりつつあった。 そしてサイドンも、ヨガのポーズを終え、急降下するように向かってきたチャーレムを、尻尾を振る攻撃でなぎ払った。 悠也:「考えたな。だったら、カブトプス、連続切りで迎え撃ってやれ!チャーレムはサイコキネシスでサイドンを 持ち上げるんだ!そしてエビワラーに投げつけてやれ!」 健人:「何だって!エビワラー、カブトプスから離れろ!」 しかし、エビワラーはカブトプスの連続切りを連続パンチで相殺しながらかわし続けることに精一杯だった。 そうこうするうちに、サイドンはサイコキネシスで持ち上げられ始めていた。 サイドンは重さが120キロの巨体であるにも拘らず。 そして、今にもサイドンは投げ飛ばされそうだった。こうなれば、手は一つ。 健人:「サイドン、吠えろ!」 サイドンは思いっきり吠えた。それが、カブトプスかチャーレム、どちらに効力を見せるか分からないが。 そして戻ったのはカブトプスだった。代わりに出てきたのはゲンガーだったが、その直後、エビワラーが崩れ落ちた。 健人&菜々美:「!?」 健人:「エビワラー!どうしたんだ!」 悠也:「健人、残念だったね。君はサイドンの方に気を取られすぎて、気づかなかったのかもね。」 審判:「エビワラー、戦闘不能!よってこの勝負、ヨシノシティ出身ヒート選手の勝利!」 俺は、何が起きたか分からないまま、悠也に敗れた。 しかも、サイドンはそのままエビワラーに投げ飛ばされてしまったのだった。 これは試合中の不可抗力だったため、失格になることはなかったが、エビワラーはサイドンの落下もあり、大怪我を負って ポケモンセンターに直ちに運び込まれたのだった。 あたしたちはこの様子を見て、唖然としていた。 蓮華:「健人先輩が負けるなんて…」 律子:「すごすぎるよ、あの選手。」 美香:「一体、何が起きたのかしら…。」 志穂:「メガドレインよ。」 気づけば、あたしたちのそばには志穂ちゃんが座っていた。 蓮華:「メガドレイン?」 志穂:「ええ。カブトプスは様々な多彩な技が使えるの。その中の一つが、相手の体力を吸収するメガドレイン。 蓮華ちゃんなら、これくらい知ってるでしょ?」 蓮華:「うん。メガドレインは草タイプの技だもん。そういうことなのね。」 あたしは、エビワラーが崩れ落ちた理由が分かった。 連続パンチを受けている時、連続切りで応戦している時に、カブトプスはメガドレインでじわじわと、エビワラーの体力を 吸収していたのだ。 健人先輩の岩をも砕く連続パンチを受けて、それでも立っていられたのは、カブトプスがメガドレインで体力を回復していたから だったようだ。あの時吠える攻撃でポケモンを変えなくても、すでに勝負は決まっていたことになる。 志穂:「まさか健人が負けるとは思わなかったわ。蓮華ちゃん、彼の次の相手はあたしだけど、あたしは蓮華ちゃんと バトルをしたいから。彼には勝つつもりだから。 決勝戦で会いましょうね。」 蓮華:「ええ。」 その後、あたしは控え室に、美香たちは菜々美が心配になり、ポケモンセンターに向かうのでした。 美香:「菜々美、大丈夫?」 律子:「健人先輩とエビワラーは?」 あたしと美香は、ポケモンセンターに入ってすぐに菜々美ちゃんを見つけた。 菜々美:「健人は今奥に入って、エビワラーの治療が終わるのを待ってるわ。心配してきてくれたんでしょ? ありがとう。」 美香:「だって、あたしたち友達じゃない。」 律子:「そうだよ。それにしても、強かったね、相手、悠也さんだっけ?」 あたしもついさっき、ヒート選手の正体を知った。あたしは能力者のことはよく分からないけど、人間限界に立たされれば、 何でも出来るって事なのかな? 菜々美:「うん。まさか、メガドレインを使うとは思わなかった。あたしも予想してなかったし、指示が遅れたり、 自分を見失ったりしたことで、健人も結構落ち込んでるの。だから、後はあたしに任せて。」 美香:「分かった。菜々美が泣いてるかと思ったけど、そうじゃないみたいだし。」 律子:「見た感じ、わざと泣かないようにしているわけでもないからね。」 菜々美:「うん。それじゃ、哲也先輩を応援してあげて。」 美香:「分かった。またみんなの試合が終わってから駆けつけるね。」 律子:「それじゃ。」 菜々美:「ええ。」 美香と律子は戻った。 菜々美:「わざと泣かない…か。二人とも、あたしが女優志望のこと、忘れてるのかな?」 あたしは二人がいなくなってから、泣いていた。 涙が止まるはずもなく、健人が治療室の前で泣きながら項垂れているのと時同じくして、あたしも泣き続けていた。 菜々美:「こんなに悲しいのは久しぶりかも。健人…ごめんね。応援がたりなくて…」 あたしはその後でテレビを見て駆けつけたなずなちゃんと晃正、氷雨さんが来るまでずっと泣き続けていたのでした。 そしてこの時、既に次の試合の準備は行われていた。 もうすぐで俺の試合が始まる。 さっきの試合はまさかとは思ったけど、意外な試合展開に流石に俺は驚かされた。 玲奈:「健人が負けるとは、悠也は本格的に哲也と勝負がしたいようね。」 哲也:「そうだな。あいつが負けたとなると、俺も気を引き締めないといけないな。」 俺の相手は格闘家と思われるトレーナーの秀二。しかし、俺のポケモンにピジョットがいるから、それなりの策を取ってくるかもしれない。 しかし、それを俺は返り討ちにしてやる勢いで行く。 玲奈:「次の試合、大丈夫なの?」 健人のサポーターに菜々美ちゃんがついたように、俺のところにも玲奈が駆けつけてくれたのだ。 哲也:「ああ。」 玲奈:「それじゃ、あたしも応援してるからね。」 哲也:「玲奈の応援なら、百人力だな。」 玲奈はバスケ部の勝利の女神だったから、俺を応援する事が勝負を決めるかもしれない。 哲也:「しっかり応援してくれよ。」 玲奈:「分かってるよ。」 そして俺たちはバトルフィールドに向かった。 相手の秀二という選手は柔道着を着て、黒帯を締め、赤い鉢巻を巻いた、典型的な格闘家の少年だった。 秀二:「お前が哲也選手か?」 哲也:「ああ。」 秀二:「お前の友人は負けたようだな。」 哲也:「らしいな。しかし、俺は負けないぞ。負ける気はない。」 秀二:「女に応援されてチャラチャラしてる奴が、そんなことを言えるのかな? 俺は真に強い男になるためにこのステージに立った。そして優勝するために、お前を打ち砕く!」 哲也:「望むところだ!」 玲奈:「哲也は根が純粋だからなぁ。大丈夫かなぁ?」 哲也は能力者のうちでは蓮華ちゃんと同格の男の中では最強の力の持ち主。女では蓮華ちゃんだ。 それでも、実際は平和主義で戦いを好まず、戦いを嫌う。 ポケモンバトルは別かもしれないけど、能力者同士の争いを好まないから、悠也の挑戦状も受け流していたけれど。 嫌な予感がする。 哲也は相手の強力な敵意の念に負けることもある。 ポーカーフェイスだから、意外とそれは分からないし、強がっている時もある。 だから、あたしは哲也が心配になってきた。哲也、頑張って! あたしはアゲハント、シェルダー、パールルたち、そしてジュペッタと一緒に応援しているよ! バトルフィールドはルーレットによって、公式フィールドに決まった。 審判:「これより、マサラタウン出身哲也選手と、タンバシティ出身秀二選手の試合を開始します。 ルールはダブルバトル制度に基づき、使用ポケモンは3体、ポケモンの交代は自由とします。 相手のポケモンのうち、2体を倒したトレーナーが勝利となります。 また、ダブルバトルということで、自爆・大爆発の禁止事項は今回からは施行されませんのでご注意ください。 それでは、試合開始!」 哲也:「行け!ピジョット、ナッシー!」 秀二:「負けるなよ!ブーバー、そしてジュプトル!」 秀二のポケモンは、格闘タイプで来るという予想に反して、炎タイプで「炎の体」という特性を持つブーバーと、 キモリの進化形の草タイプ、森トカゲポケモンのジュプトルを出してきた。 対する俺のポケモンはノーマル・飛行タイプの、俺の相棒のピジョットと、そして今回から出したのは、 相手がてっきり格闘タイプで来ると見込んで選出した草・エスパータイプのナッシーだった。 秀二:「ジュプトル、ピジョットに種マシンガンで応戦しろ!ブーバーはナッシーを火炎放射で焼き尽くせ!」 哲也:「だったらナッシー、ジュプトルの動きをサイコキネシスで封じるんだ!そしてピジョット、火炎放射を 風起こしで吹き飛ばしてやれ!」 ジュプトルが先陣を切って種マシンガンをピジョットに向かって放ってきた。草タイプの技なので、ピジョットには 効果が薄いわけだが、それでも地上から、無防備な体に攻撃を受けてはたまらず、俺はピジョットを下降させた。 そしてナッシーに向かってくる火炎放射を押し返すように吹き飛ばさせた。 このくらいのことは言わなくても、シンクロ率の高い俺とピジョットなら可能なのだ。 そして同時に、ジュプトルはサイコキネシスで動きを封じられていた。 ブーバーの炎は戻ってくるということで、ジュプトルは帰って来た火炎放射をもろに受けていた。 秀二:「ジュプトル!?」 ジュプトルは足にやけどを受けたようだ。足を押さえている。 哲也:「今だ!ナッシー、卵爆弾だ!ピジョットはブーバーに泥かけだ!」 秀二:「なっ、ブーバー、リフレクタだ!ジュプトルを援護しろ!」 ブーバーの特性「炎の体」は自分に打撃攻撃を行った相手に火傷を負わせる特性だから、ブーバーに触れなければ 火傷になることはない。しかも、今ジュプトルが火傷状態なので、それを援護する状態にブーバーはなりつつあった。 だから、攻撃あるのみということで、ブーバーのリフレクタに阻まれはしたが、ジュプトルは卵爆弾を受け、倒れた。 審判:「ジュプトル、戦闘不能!」 秀二:「くそっ、ジュプトル戻れ!そして、行ってこい!ツボツボ!」 秀二の最後のポケモンは、はっこうポケモンで、長期戦に強い岩・虫タイプのツボツボだった。 哲也:「ナッシー、ツボツボに宿り木の種だ!」 俺は長期戦に耐えるために宿り木の種を放たせた。 が。 秀二:「ツボツボ、高速スピンだ!」 宿り木の種は高速スピンに弾かれてしまった。 秀二:「残念だったな。俺のツボツボは、そんなチンケな技で倒れないぞ。」 哲也:「何!」 秀二:「俺の戦略を見せてやるぜ!ブーバー、煙幕をフィールド中に覆うんだ!」 ブーバーが煙幕を噴出し、フィールドは一瞬で煙幕に包まれていた。 哲也:「ピジョット、煙幕から外に出るんだ!」 ピジョットは煙幕から出たが、ナッシーとブーバー、ツボツボは煙幕の中にいた。 哲也:「一体何のつもりなんだ?ここは風起こしで…」 秀二:「ブーバー、回転をしながら火炎放射だ!ツボツボは炎を受けないように殻に篭れ!」 秀二が指示した直後、煙幕の中からは炎の竜巻が出現していた。 ブーバーが回転しながら火炎放射を放つことで、炎の竜巻が出来上がっていたのだ。 哲也:「くっ、ピジョット、吹き飛ばし攻撃で炎を吹き飛ばすんだ!」 ピジョットは煙幕と一緒に、炎を吹き飛ばした。煙幕も晴れ、ようやく試合ができると思ったが…。 哲也:「あっ!そういうことだったのか。」 秀二:「やっと気づいたな。」 フィールドではナッシーが火傷を負った状態で倒れていた。 つまり、炎の竜巻がピジョットを襲ったので、ピジョットは吹き飛ばしたわけだが、竜巻はピジョットの位置よりも下にあったのだ。 そして、その竜巻を吹き飛ばすとすれば、どうなっても自分が下に向けて吹き飛ばすことになる。 よって、煙幕で動きの取れない状態のナッシーに炎が向かうということだった。 ちなみに、ツボツボは岩の殻に篭ったことで難を逃れたし、ブーバーは炎タイプなので、効果がなかったのだ。 審判:「ナッシー、戦闘不能!」 哲也:「ナッシー、悪い、お前のことを気づけなかった。戻れ、ナッシー!」 秀二:「さて、次はどうするんだ?」 哲也:「ブーバーが一番の敵だな。ここは、カメックス、頼むぞ!」 俺は炎タイプのブーバー対策として、水タイプのカメックスを出した。 ツボツボも岩タイプでもあるので、カメックスの攻撃は効果的である。 秀二:「カメックスか。なるほどな。ブーバー、だったらカメックスにどくどく攻撃だ!」 哲也:「カメックス、神秘の守りでどくどくを防ぐんだ!」 秀二:「かかったな、ツボツボ、アンコールだ!」 哲也:「し、しまった!」 俺はまた、秀二の罠にはまった。 カメックスにハイドロカノンを撃たせて、一気に片をつけようと思っていた矢先、ブーバーがどくどくをカメックスに向かって 吐いたので、俺は神秘の守りを指示した。しかし、それをツボツボが「アンコール」してしまい、カメックスは5ターンくらいの間、 ずっと意味のない神秘の守りをし続けることになった。 秀二:「今だ!ブーバー、背後に回ってカメックスに雷パンチだ!」 正面を神秘の守りで守っていても、カメックスの背後はがら空きのため、苦手なタイプの技である雷パンチを、カメックスは受けてしまった。 でも、ブーバーがいない隙に、俺はツボツボを狙うことにした。 哲也:「カメックス、頑張って雷パンチから耐えろよ!ピジョット、ツボツボにゴッドバードだ!」 カメックスが必死な顔で俺にうなずいたのを確認し、俺はピジョットに指示を出した。 が、ゴッドバードがツボツボに当たる直前だった。 秀二:「ツボツボ、殻に篭れ!そしてブーバーはカメックスを踏み台にしてピジョットに飛び乗るんだ!」 哲也:「何!?」 ピジョットの攻撃は、殻に篭られたことで無残にも防がれてしまった。 そのうえ、ブーバーがカメックスの頭を踏み台にしてピジョットに飛び移ったのだ! 哲也:「ピジョット、振り落とすんだ!」 俺は叫ぶが、ピジョットはブーバーに羽交い絞めにされ、動きが取れない状態で浮いていた。 しかも、ブーバーの「炎の体」によってやけども負っている。 秀二:「残念だったな。ブーバー、ピジョットの首の付け根に、最大パワーで雷パンチだ!」 ブーバーの攻撃は至近距離でピジョットに炸裂した。 そして、ピジョットは落下し、倒れてしまった。しかも、カメックスも踏み台にされた時のショックなどもあり、 同時に倒れてしまったのだ。 哲也:「ピジョット!カメックス!」 審判:「ピジョット、カメックス、戦闘不能!よってこの勝負、タンバシティ出身秀二選手の勝利!」 俺はこの言葉を聞くと同時に、意識を失った。 志穂:「大どんでん返しね。」 蓮華:「哲兄が負けたなんて…」 あたしと志穂ちゃんと、涼治と翼先輩は一緒に控え室でその様子を見ていた。 哲兄が倒れてすぐ、翼先輩と涼治は哲兄のところに向かった。 志穂:「厄介なことになったわね。」 蓮華:「うん。…あたしたちが、二人とも決勝戦に進出しないとヤバイね。」 志穂:「そうね。蓮華ちゃん、涼治がサポートに立てなくなったけど、大丈夫?」 蓮華:「う〜ん…ちょっと心配だなぁ。」 なずな:「だったら、蓮華のサポートはあたしがしてあげるわ。」 突如、なずながテレポートしてきた。 なずな:「いいでしょ?」 蓮華:「…、あ、うん、いいよ。なずな、頼むね。みんなと一緒に応援してね。」 あたしは今回の試合に出ないメンバーの何人かの入ったボールをなずなに託した。 なずな:「了解。」 志穂:「それじゃ、あたしは観客席に行くわ。そこで応援しているから。」 蓮華:「ええ。」 その頃、ポケモンセンターに哲兄とそのポケモンたちが運び込まれた。 健人:「哲也が!?」 菜々美:「嘘…哲也先輩まで負けるなんて…」 そしてそこで、健人先輩と菜々美ちゃんも事態を聞き、あたしたちがヤバイ状況に追い込まれていることを察したのだった。 でも、あたしは負けちゃった健人先輩や、哲兄のためにも、この勝負に勝つよ。 頑張ろうね、よま、ひがめ、ダネッチ!