スペース団が再び現れた。ルークが解散を宣言し、リースイは消滅し、ダークもブラッキーに戻ったというのに、 まだまだ残党が残っていたなんて思わなかった。 しかも、3幹部の一人ドリームと、あたしたちにとって雑魚当然の団員のマユミによって菜々美が重傷を負わされてしまった。 あたしたち能力者は、普通の人間よりも自己防衛能力があるから、能力が体に無意識にシールドを張るんだけど、 今回の場合、菜々美のシールドは意識だけが起きていた状態なので、体が反応しなかったから、体中に火傷を負ってしまったのだ。 今は氷雨さんと玲奈先輩のヒーリング能力で治療が始まっている。 顔の方は口から音波を発したらしく、防ぐことはできたみたい。 それにしても、次は志穂ちゃん、そして次はあたし、そして、決勝戦が待ち構えてるっていうのに、スペース団が現れては、 安心しきれない。このままリーグ中に何も起きなきゃいいけど。 でも、リーグはリーグ。みんなもいるし、あたしは頑張るんだ! by 蓮華 第61話 決勝近し!ダブルバトル最終戦 その頃、その問題のスペース団はどこかの地下奥の部屋にいた。 その場にいたのは、ドリームを含む3幹部と、そして彼らのボスと思われる人物のようだ。 ??:「能力者の一人を倒したか。」 ??:「いや、奴らは多い。しかもこの近辺に全てが集まったらしい。今攻めてはこちらが不利だ。」 ドリーム:「ならば、我々はこのB作戦を使うとしようではないか?」 ??:「それがよいだろうな。3幹部に告げる、ルークの代わりとしてこのスペース団特別部隊を指揮する 俺の指示に最後まで付き合うように。」 3幹部:「承知いたしました。」 再び、何かが行われるようだった。しかし、彼らはその時、部屋の天井裏から何かがこっそりと話を聞いているのに 全く気づいていなかった。 志穂:「次のあたしの相手は悠也ね。」 こんな状態だけど、あたしは数人と一緒に作戦会議を開いていた。 すでにこの会場には能力者が全員集まっているから、みんなで見回りもしている。 みんなは、あたしと蓮華ちゃんが最後の希望だから、あたしと蓮華ちゃんにはあまりヤバイことはさせないようにする 方向みたい。でも、何かあったらあたしたちも動くけどね。 鈴香:「悠兄は哲也さんとバトルできなくなったことに残念がってるよ。」 現在この部屋には、あたし以外に翼と久美ちゃんと鈴香ちゃんがいる。 翼:「だろうな、哲也と決勝で当たる気だったらしいしな。」 鈴香:「うん、でもね、哲也さんが負けたことで、自分の方が上だって言うことを証明できたとも言ってた。」 そういう考えもあるようね。まぁ、哲也と健人は当たった相手が悪かったからなんだけど、悠也は多分、いつか再び 哲也にバトルを挑むだろう。それはいいとして。 志穂:「悠也は哲也とバトルできなくても決勝戦に行こうとすると思う?」 久美:「多分ね。」 鈴香:「悠兄も一応、みんなと同じで現実世界に戻ろうと考えてるし、そのためには自分がみんなを現実世界に導いて、 さらに力を認めさせようとも思ってるだろうし。」 メF「つまり、決勝戦を目指してるって事か。」 鈴香:「うん。」 志穂:「でも、それはさせないわ。あたしは蓮華ちゃんと決勝で戦う約束をしたから。」 久美:「それでこそ志穂ちゃんだ。」 鈴香:「それで、どういうメンバーにするんですか?」 志穂:「悠也は結構いろいろなポケモンを持ってるでしょ?あたしはそれに比べて数体。 それにつけこんでくるかもしれないけど、あたしとしてはそれを振り払うようにメンバーを組むつもりよ。」 鈴香:「さすが志穂さんです。強いだけあるかも。お姉ちゃんはどうするのかな…」 久美:「美香ちゃんと律子ちゃんと一緒に考えてるんじゃないかしら?さっき、一緒にコテージに行くのが 見えたから。」 蓮華ちゃんの相手は自分の兄を破った格闘家の少年トレーナー。 しかも、飛行系への対抗策もあった。蓮華ちゃんがキレイハナをパートナーにしている時点で、秀二選手はブーバーを 再び使うだろう。そう考えて、蓮華ちゃんはどうするのかな。 ??:「あんたたちにこれを渡す。これで作戦を練り、捕獲し、己を高めておくように。」 ??:「えっ!それじゃついに!」 ??:「私たち、頑張ります!ありがとうございます!」 ??:「礼などはいい。それを言う前に、己を鍛えるのだぞ!」 ??:「はい!了解いたしました!」 その頃、蓮華は志穂に考えられてるとは知らず、普通にポケモン決めを行っていた。 蓮華:「菜々美のこともあるけど、それで負けたりしたら菜々美にも志穂ちゃんにも悪いのよね。」 菜々美のお見舞いに行ってみると、健人先輩がいたのだ。 そして、 健人:「お見舞いはいいから決勝戦のためを準備をしっかりしておけ。」 と言われ、追い返された。 菜々美も、あたしの試合の応援をしてくれるくらい、あたしのことを心配してくれてるし、あたしの知らないところで 色々なことに通じているみたい。だから、あたしがここで負けちゃったら、菜々美にも悪いし、約束した志穂ちゃんにも、 ここまで一緒にやってきたポケモンたちにも悪い。 そう考えると、最後は準備せずに入られなかった。 美香:「蓮華らしいよ、そういうところ。」 律子:「言えてるね。誰かのためにって思うところ。あたし、だから蓮華ちゃんが好きだな。」 美香:「あたしも。弱きものを助け、癒す力を持ってる蓮華ちゃんだからかな。」 蓮華:「何それ。それじゃ、あたしは力がなかったらダメダメだってことなの?」 何かそんな感じに聞こえた。 美香:「そうじゃないよ。」 律子:「そうそう、力があってもなくても、蓮華ちゃんは蓮華ちゃんだよ。」 キレイハナ:「蓮華は蓮華だから、能力があってもなくても変わらないってことだよ。」 いつの間にかキレイハナも飛び出していた。 あたしはあたしらしいから、あたしであることには変わらないってことね。 蓮華:「よし!それじゃ、メンバーを決めないとね。相手はジュプトル、ブーバー、ツボツボを使ってた。 でも、格闘家でもある。あたしが草ポケモンであるキレイハナをパートナーにしていることから、ブーバーは使ってくる可能性があるわね。」 キレイハナ:「または、氷ポケモンを使う可能性もあるわよ。」 美香:「蓮華のポケモン、リーグ戦では使ってない子も多いわよ。その子たちも出すんでしょ?」 蓮華:「うん。」 あたしがリーグ戦で使ったのは36匹中、16匹。 そのうち、キレイハナとひがめ君は2度、3度使っている。 でも、決勝で誰を使うか、既に決めている時点で、あたしはそのメンバーを除いた形で編成しないといけない。 相手は格闘ポケモンもいると考え、そのうえ、炎タイプを繰り出す可能性があるとしたら…。 蓮華:「よし、ここはギャンブルに賭けてみる!」 美香&律子&キレイハナ:「えっ?」 蓮華:「この3人に決めたの。どうかしら?」 あたしは可能性にかけて、選び出してみた。 ??:「おまえたちにこれを与える。これにより、お前たちのポケモンをさらに強くしておくのだ。」 ??:「え、めんどくさいなぁ。ゲームしてる方がいい…」 ??:「??、真面目にやらなきゃ駄目だよ、??様大丈夫です。任せてください!」 ??:「…分かった。お前たち、ポケモンを強くして時期を待つのだぞ。」 ??:「はい!」 ??:「…はい(めんどくさいなぁ)。」 そして次の日。 まずは志穂ちゃんがヒート選手と、そして次はあたしが秀二選手と対戦する。 そしてそれぞれの試合で勝った選手が決勝戦に行く。 一体、どうなるのかな。 志穂:「このメンバーで大丈夫かな?」 あたしが控え室に入ると、心配になったのか、既に哲也が待っていた。 哲也:「守備はどうだ?」 志穂:「多分、大丈夫かな。哲也、あなたたちは応援よりも、見回りを優先して。 もしまた彼らが何かを考えているとしたら、早いうちにそれを終わらせなきゃいけないから。」 哲也:「ああ。」 あたしが言うと、哲也は外に出て行った。 でも多分、観客席には何人か、いるだろうな。 昨日菜々美ちゃんもようやく目を覚ましたらしいから、ポケモンセンターの病室から見ているかもしれないし。 ここはこの子達を信じないとね。 火雷の巫女としての、そしてポケモントレーナーとしてのあたしの力を悠也に見せてあげなきゃ! そしてあたしがフィールドに着くと、既に悠也が待っていた。 悠也:「よぉ!」 志穂:「元気そうね。」 悠也:「当たり前だ!俺は哲也との対戦はできなかったが、あいつよりも強い事が証明された。 このままお前も倒して決勝戦で優勝してみせる!」 悠也は自信満々で言った。表情は仮面で分からないけど、声からしてそうだと思う。 志穂:「そんなに簡単に行くかしら?」 悠也:「行くに決まってるだろ。俺は強いからな。」 志穂:「そのセリフは、あたしに勝ってから言ってね。」 そんな中、ルーレットが回り、今回は砂漠のフィールドになった。 そして審判がやってきた。 もうすぐで、試合が始まる。 久美:「そろそろね。」 観客席には、久美と希の電撃ガールズと、鈴香がいた。 蓮華は美香、なずな、律子と共に、次の試合があるので控え室にいる。 それ以外は菜々美の病室と、見回りだったりする。 また、実は未だに唯一、蓮華だけはヒート=悠也と言うことに気づいてもいない。 鈴香でさえも教えていないことだった。 それはともかく。 鈴香:「あ〜あ、悠兄にはこれまでの恩義もあるし、応援する方、迷っちゃうよ。」 希:「そういえば、鈴香ちゃんは悠也と回っていたのよね。」 鈴香:「うん。」 久美:「どちらでも好きな方でいいんじゃない?応援したいほうをすればいいし、どっちを応援してもいいし。」 鈴香:「それじゃそうする!悠也!志穂さん!どっちも頑張ってね!」 希:「…単純ね、昔の蓮華ちゃんみたい。」 久美:「希ちゃん…、でも…言えてる。」 この二人の一言は、運良く音属性だと言うのにも拘らず、応援に夢中だったため、鈴香には聞こえていなかった。 ??:「あいつら、俺たちがこんなこともしてるとも知らずに、今までずっとリーグでバトルしてきてるな。」 ??:「そうね。まぁ、この仕事のほとんどはあんたのデータ収集にかかってるんだから、しっかりやってくれなきゃ困るわよ!」 ??:「ああ。それにしても、日々強くなるガキには困るな。」 ??:「強い?それは違うわ。あの方々の力には、あんなガキは一ひねりに過ぎないものよ。 現にあたしのウィンディに負けたくらいよ。」 ??:「そうだったな。それじゃ、そろそろ始まるし、マユミ、しっかりと解説してくれよ。」 マユミ:「分かったわよ、エイジ!この仕事を成功させて、イケメントレーナーをあたしの奴隷にしなきゃ!」 エイジ:「…おいおい。」 審判:「これより、トキワシティ出身志穂選手と、ヨシノシティ出身ヒート選手の試合を開始します。 ルールはダブルバトル制度に基づき、使用ポケモンは3体、ポケモンの交代は自由とします。 相手のポケモンのうち、2体を倒したトレーナーが勝利となります。 また、ダブルバトルということで、自爆・大爆発の禁止事項は今回からは施行されませんのでご注意ください。 それでは、試合開始!」 志穂:「ベロリンガ、ブラッキー、行くよ!」 悠也:「カブトプス、コモルー、行って来い!」 今回、あたしはベロリンガの柔らかい体で相手の打撃攻撃を防ぐことと、エスパー技を無効化することを考えて、 初めはノーマルタイプのベロリンガと、悪タイプのブラッキーで行くことにした。 対する悠也は、前回健人のエビワラーを追い詰めたカブトプスに続き、ドラゴンタイプの忍耐ポケモン、コモルーを 出してきた。 志穂:「コモルーを出してくるとは思わなかったわ。でもどう来たとしてもあたしは負けないから! ブラッキー、黒い眼差し!ベロリンガ、丸くなる攻撃よ!」 悠也:「ふぅ〜ん、でも、それはどうかな?カブトプス、一気に叩くよ!ブラッキーに切り裂く攻撃だ! そしてコモルーはベロリンガに龍の息吹!」 あたしは一つ作戦を思いついたので、まずブラッキーで足止めをして、ベロリンガにも防御力を上げさせた。 が、悠也からの攻撃は早々と来た。 防御力の弱いブラッキーに、クリティカルヒットの出やすい切り裂く攻撃、そして素早さの襲いベロリンガに 麻痺の可能性のある龍の息吹を放ってきたのだ。 けれど、あたしはすぐに指示を出した。 志穂:「ブラッキー、カブトプスの動きを受け流してアイアンテールよ!そしてベロリンガは影分身でかわして!」 素早い動きをする戦法には弱点が一つあるのだ。 それは、相手のスピードを利用すること。カブトプスは岩タイプの割に素早くて攻撃力の高いポケモン。 相手になると厄介であることは間違いないけど、素早さを利用すれば勝てないわけでもない。 ブラッキーは、向かってくるカブトプスが目の前に来た時にちょっと背後に下がる不利をして、反動で飛び上がり、 切り裂く攻撃をかわし、そのまま片方の鎌に尻尾によるアイアンテールを当てた。 岩タイプに鋼タイプの攻撃は効果抜群なのだ。 また、砂漠の砂地ではあるから反動を付けたジャンプは威力を吸収されやすく見られるが、素早さの高いブラッキーだからこそ、 この動きができたのだった。 また、ベロリンガも影分身で一瞬のうちに真横に動いて龍の息吹を避けた。 悠也:「何!?それなら、コモルー、ベロリンガに捨て身タックルだ!カブトプスはブラッキーにマッドショットだ!」 マッドショットは相手の素早さを下げる技で、砂漠であるこの場ではこの技を使った場合、砂かけ攻撃と同じ効果も 相手に行えるのだ。でも、そんな簡単に受けるわけにも行かない! 志穂:「ブラッキー戻ってムウマ、行って!ベロリンガはコモルーを飛び越して!そして冷凍ビームよ!」 あたしはブラッキーを戻すと同時にムウマを出した。 ムウマの特性「浮遊」なら、マッドショットを受けることはない。 また、あたしのベロリンガは他のベロリンガとは一味違うんだから。ちょっと素早さが高いのよ。 ベロリンガは、捨て身タックルで向かってきたコモルーを、さっきのブラッキーのように受け流すようにして コモルーを跳び箱のように飛び越した。 そしてコモルーがつんのめったところを冷凍ビームで攻撃した。 ベロリンガやカビゴンなどのノーマルタイプは、様々なタイプの技を覚える事ができるから、こういうバトルの時、 結構有利なのだ。 ドラゴンタイプに氷タイプの技は効果抜群であり、コモルーはそのまま倒れた。 悠也:「あぁ!?…くそっ!」 審判:「コモルー、戦闘不能!」 一番厄介かと思えたコモルーを何とか倒したが、問題は悠也のもう一匹だ。 悠也:「コモルーを倒すとは思わなかったな。しかし、これで終わりだ!バグーダ、行け!」 悠也の最後のポケモンは、炎・地面タイプの噴火ポケモンバグーダだった。 志穂:「かなり育てられてるわね、そのバグーダ。」 悠也:「ああ、だからこそ決勝に導いてもらうために選んだんだ!バグーダ、噴火だ!」 「噴火」とは、自分の体力が多いほど、相手に大きなダメージを与える事ができる炎タイプの技。 同じような技に、水タイプの技で「潮吹き」がある。 今のバグーダは出てきたばかりで体力はいっぱい。そして、噴火は相手のポケモン2体に攻撃が可能だった。 志穂:「二人とも、堪えるのよ!」 こればっかりは防ぐこともできず、ベロリンガもムウマも攻撃を受けてしまうから、堪えることで耐えさせるしかない。 ただ、ベロリンガには噴火による攻撃で燃える岩の落下に関しては炎のダメージを受けただけで、打撃のダメージは 弾力の体のおかげでゼロに等しかったけど。 それでも結構二人ともダメージを受けてしまった。 悠也:「このまま押していくぞ!カブトプス、バグーダに乗ってムウマに水鉄砲だ!バグーダは地震だ!」 技を放つポケモンの上に乗れば、受けるダメージを軽くすることは可能なのだ。 バグーダの上に乗ることで、岩タイプのカブトプスが受けるダメージを緩和させるつもりだろう。 しかも、地震でベロリンガ、水鉄砲でムウマを倒すつもりのようだ。 けれど、まだまだあたしの方が一歩上手だった。 志穂:「うふふ、残念でした。ムウマ、10万ボルトよ!ベロリンガはカウンター!」 ムウマの放った10万ボルトはカブトプスが放つ水鉄砲を伝ってカブトプスにぶつかった。 ただし、水鉄砲はムウマも受けてしまったが、ムウマは攻撃を受けなければ10万ボルトをカブトプスに当てられない。 そのため、ムウマは水鉄砲を受けて倒れてしまった。 だが、カブトプスもムウマの10万ボルトを受け、アイアンテールのダメージもあって倒れたようだ。 そして、ベロリンガのカウンターは、バグーダがベロリンガに対して放った地震攻撃を倍にして反射し返し、 バグーダに大ダメージを与えるのだった。 悠也:「カブトプス、立ち上がるんだ!」 悠也は叫んでいる。カブトプスもまだ、微妙に動いている。ムウマも体力がなくなったはずなのに、微妙に動いている。 が、ムウマが倒れたのと同時に、カブトプスも倒れるのだった。 悠也:「何!?これは…」 志穂:「勝負はついてたけど、ムウマの最後の攻撃だったわ。これは道連れよ。」 そして。 審判:「ムウマ、カブトプス、バグーダ、戦闘不能!よってこの勝負、トキワシティ出身志穂選手の勝利!」 あたしは悠也に勝利した。 悠也:「くそ、せっかく勝てると思ったのに…」 志穂:「十分強かったわよ。でも、まだまだね。相手を見くびりすぎてるわよ。 あたしに勝とうと思うんだったら、もう少し奥を読まないとね。あなたのことは、戻った時にあたしから、 長老様に言っておくわ。あなたの言うことよりも、あたしの方が十分信じるでしょうね。」 後継者争いの張本人よりは、火雷の巫女のあたしの方が。 悠也:「そ、それだけはやめてくれよ…」 志穂:「嫌よ。そんなこと言うんだったら、修行しなさいよ。」 悠也:「それよりさ、志穂、いいだろ?長老に掛け合ってくれよな。」 悠也は志穂をくすぐるつもりで小さなつむじ風を吹かせた。 が。 その風は、志穂の袴を大きくめくり上げる結果になっていた。 悠也:「あ…。けっこうかわいいもん、穿いてんだな。」 ぷっつり、ぶちん! 志穂:「悠也!火雷砲MAX!」 鈴香:「あ…。」 久美&希:「志穂ちゃんを怒らせちゃったわね。」 鈴香:「悠兄…馬鹿。」 久美:「志穂ちゃんって、何か最近よく試合後に火雷砲ぶっ放してるわね。」 希:「言えてる。しょうがないよ、志穂ちゃんは普段は冷静だけど、切れると怖いもの。 切れさせてるからいけないのよ。」 そして、この後、蓮華の試合は悠也を火雷砲でぶっ放したために、対戦者席が壊れてしまい、取り替えるのに時間がかかり、 1時間後になるのだった。 ??:「あれが火雷砲と呼ばれる能力か。」 ドリーム:「我らも初めて見るものにございますが、なかなかのものでございます。」 ??:「ああ。しかし、それらよりも勝るこのスペース団にかかれば、奴らなど一握りの砂に過ぎない。 簡単に握りつぶしてくれる!」 そして1時間後。 蓮華:「志穂ちゃんは勝ったし、次はあたしが勝つ番ね。」 何故か知らないけど、志穂ちゃんのマジ切れで火雷砲が発射されて試合開始が1時間遅れた。 その間に、あたしは選んだ3人と綿密に相談もした。 後は、このバトルでそれらがうまくいくかどうかにかかっている。命中率の低い技もあるから、なおさら心配でならない 部分もあるけど、あたしたちはこの子達を信じるって決めてるから頑張る自信があった。 美香:「そうだよ、蓮華が勝たなきゃね。」 律子:「菜々美も応援してくれてるはずだから、蓮華が勝たないと菜々美にもみんなにも悪いよ。」 応援席には電撃ガールズの久美ちゃんたちと鈴香、それに涼治がいるらしいし、美香と律子も応援してくれる。 だからあたしは、みんなの応援にも答えるんだ! 蓮華:「二人ともありがとう。そろそろ行こうかな。始まるし。」 あたしは、予備としてのキレイハナのボールも含めた4つのボールを持ち、フィールドに向かった。 ??:「というわけだ。二人にも力を借りたいと言ってきておる。」 ??:「分かりました。この戦いには僕たちも参加します。世界のためにもポケモンのためにも何とかしなければいけませんね。」 ??:「にゃーも出来る限りの事はするにゃ。あいつらにも教えるつもりにゃ。」 ??:「ああ、そうしてくれるとありがたい。人手は多いほうがいいからな。」 涼治:「よかった!まだ始まってないのか。」 ボランティアの仕事は突然入ってくる。自分もそれを承知でやってるけれど、休憩時間や抜ける時間を決めていても、 突然入ってくることを避けるわけには行かず、そのまま仕事を続けていた。 そしてようやく会場に来てみたが、どうやらまだ試合自体が始まっていなかったらしく、ホッとした。 久美:「あ、涼治君。」 希:「遅いよ!」 涼治:「すいません、仕事が長引いて…」 久美:「言い訳無用!でも、涼治君のやってるボランティアはポケモンセンターのポケモンのケアのことばかりだし、 多少のことはしょうがないもんね。」 一応俺が何をしているか分かっているから、それに哲也先輩と違って確実に認めてくれてるから、光沢先輩はすぐに許してくれた。 その後、どうして試合が始まっていないか聞いてみれば、 希:「試合は志穂ちゃんが悠也にマジ切れ起こしたから、火雷砲で悠也のいた場所の機械壊しちゃって、取替え作業で 試合を遅らせていたのよ。」 ということだった。 涼治:「そうなんですか。星川先輩が勝ったんですね。」 鈴香:「だから、後はお姉ちゃんが勝つだけなのよ。」 いつの間にか、さっきまでいなかったのに蓮華の妹の鈴香が近くに立っていた。 鈴香:「涼治さんも応援してよね、お姉ちゃんのために。」 涼治:「分かってるさ。そのために来たんだ。」 と、蓮華がフィールドに出てくる姿が見えた。蓮華、ガンバレよ! ??:「少し早いけど、作戦を始めるわよ。」 ナナ:「ええ、そうして。」 ??:「まさかこんな事が起きるとは思わなかったが、スペース団の手は着実にカントウを覆い始めている。」 ??:「私たちの町々を守るためには、今動き出さなければいけませんわね。」 ??:「ああ、俺は自分のまいた種から始まったことでもあるこれを、早々と刈り取らなければならない。」 ??:「そう肩に力を入れなさるな。人間誰にでも間違いはある。」 ??:「そうでござる。おぬしは今は正しき道を歩んでおるでござる。」 ナナ:「カスミもサトシ君と一緒にカントウに向かってるらしいわ。まだ後どれくらいかかるか分からないけど。 でも、今動かないと後々が面倒よ。だからみんな、頼んだわよ。」 ??:「Wait!Meを忘れては困る!」 ??:「遅いですわ。」 ??:「集合はとっくの昔にかけたはずよ。」 ??:「Sorry!ジムでのバトルが長引いただけさ。ナナ、何をするか教えてくれ!」 ナナ:「全くもう…説明するわ!」 う〜ん、この感じは…涼治かな。 涼治も応援に来てる。仕事が忙しくて見に来れないのかもって思いかけたけど、やっぱり見に来てくれた。 ここは頑張らないとね。 そして対戦相手の秀二選手と出会った。 秀二:「お前が蓮華か?」 蓮華:「ええ。」 秀二:「そうか。ここまで勝ち抜いてきた奴だ。表情が弱そうでも強いことには変わりないだろうな。」 蓮華:「当たり前じゃない(ちょっとムカつく)!あたしは現実世界に帰るために、そしてみんなの応援に答えるために、 そしてさっき勝った志穂ちゃんと決勝戦で戦うって言う約束を果たすためにバトルをするの。 あなたに勝つためにね。」 秀二:「面白い奴だな。俺は真の強い男に、強いトレーナーになり、心を磨くためにリーグに望んでいる。 このまま俺自身の育成のためにも、お前を倒すからな!」 秀二選手はそう言い放つとすぐに所定の位置に向かったので、あたしも急いでその場に向かった。 それにしても、こういう真面目なトレーナーに当たったのって久々かな(変なトレーナーと当たった回数の方が多いような)? ??:「あれが草使いのトレーナーね。」 ??:「なかなか強いらしいが、どのようなバトルで我らの目を楽しませてくれるだろうか。」 ??:「あいつは癒しの力を持ち、弱きを助けるトレーナーらしいぞ。」 ??:「そうらしいのう。それよりも、早々と爺や若者たちが動き出したらしい。我らも動く時は今のうちのようじゃ。 試合もいいが、今動かねば大変なことになるぞ。」 ??:「そうね。それじゃ、こっそりと始めましょうか。」 ??:「俺はもう少し、あの子のバトルを見ているよ。3人でまず動いてくれ。」 ??:「あら、あなたは動かないの?結局試合が見たいだけじゃないの?」 ??:「いいや、あのポケモンマスターみたいなバトルをするトレーナーに興味があるだけさ。」 ??:「そういうことか。分かった。ならば俺たちは先に行く。お前も早く来いよ。」 ??:「全く、人使いの荒い若造じゃ。」 ??:「おばあちゃん、言いすぎよ。でも、当たってるわね。」 そして試合は始まった。 バトルフィールドはルーレットで公式フィールドに決まった。 審判:「これより、グロウタウン出身蓮華選手と、タンバシティ出身秀二選手の試合を開始します。 ルールはダブルバトル制度に基づき、使用ポケモンは3体、ポケモンの交代は自由とします。 相手のポケモンのうち、2体を倒したトレーナーが勝利となります。 また、ダブルバトルということで、自爆・大爆発の禁止事項は今回からは施行されませんのでご注意ください。 それでは、試合開始!」 秀二:「ここを勝ち進むために行ってこい!ブーバー!カビゴン!」 蓮華:「作戦通りに行くからね!チリリ!リーフィー!」 秀二選手が出したのは、前回に引き続き、炎タイプのブーバーと、そしてノーマルタイプの居眠りポケモン、カビゴンだった。 それに対抗するのは、明らかに大きさに差のあるコンビ。 虫・飛行タイプのバタフリーことリーフィーと、エスパータイプの風鈴ポケモンチリーンことチリリ。 ギャンブルの意味はこういうことだった。 秀二:「俺に勝つって宣言した割に、お前のポケモンは大きさの差があるくらいのそんな奴らなのか? 負けに来てるように見えるぞ。」 蓮華:「そうかもしれないわね。でも、あたしたちには作戦があるから。ここであなたを倒すためのね。」 あたしは強く言い切った。 でも。 既に会場は秀二コール(強い方の味方のような観客たち)が響き渡っていたし、涼治達の場所をチラッと見ると、 流石に応援が止まっていた。 あたしを唯一応援しているのは、サポート席にいる美香と律子くらいだろう。 秀二:「相手がそいつらなら軽く行くぞ!ブーバー、バタフリーに火炎放射だ!カビゴンもバタフリーに欠伸だ!」 どうやら、リーフィーから攻めてくるらしい。 確かにリーフィーの弱点は多いけど、そのことは初めから考えれていた。 蓮華:「リーフィー、銀色の風で火炎放射を吹き飛ばすのよ!チリリ、凍える風でブーバーとカビゴンの素早さを落として!」 リーフィーは欠伸を受けたけど、その手は打ってあるからいい。 その代わり、火炎放射はチリリが吹かせた凍える風で威力を低下させたこともあって、火炎放射よりも威力の低い銀色の風 でも吹き飛ばす事ができた。 と、その時リーフィーが眠り始めてしまった。欠伸の効果が出たのだ。 秀二:「今のうちだ!ブーバー、雷パンチ!」 蓮華:「させないわよ!チリリ、叫んで!」 チリリが強力な声で叫び、ブーバーは攻撃を止め、耳を覆い始めた。それと同時にリーフィーが目を覚ました。 騒ぐ攻撃は騒いで相手にダメージを与える技でもあるけど、眠ってるポケモンを起こす技でもあるのだ。 秀二:「やるな。だったらカビゴン、岩なだれだ!ブーバーは熱風を吹かせろ!」 蓮華:「チリリ、サイコキネシスで岩を止めて!リーフィーはバリアよ!」 秀二:「バリアだって?バタフリーがそれを覚えるわけないだろ!」 でも、覚えてるのよね、あたしのリーフィーは。 「岩なだれ」と「熱風」はダブルバトルでは2体同時にダメージを与える事ができる。 秀二のポケモンは威力の強い技を覚えているポケモンが多い事が分かっていたから、こうなることも予想できていた。 だから、チリリのサイコキネシスで岩をとめ、リーフィーがバリアをした場所に積み上げた。 そこを熱風が吹かせたが、岩とバリアによって、熱風はしっかりと阻まれるのだった。 念のために神秘の守りとリフレクタをそれぞれが行ってもいた。 秀二:「この攻撃が敗れるとはな。一筋縄ではいかない奴らだ。そのバタフリーは、トキワの森のあいつか?」 蓮華:「知ってるの?」 秀二:「ああ。噂で聞いたのさ。バリアの使えるキャタピーがいたが、いつの間にか姿を消したのな。」 蓮華:「ええ、あたしがゲットしたの。バトルではなく、友情ゲットよ。」 秀二:「そうか。強いわけだ。お前に懐いてるから強いようだな。しかし、それでも俺とこいつらのコンビネーションも強いぞ! ブーバー、カビゴンに威張ってやれ!カビゴンは腹太鼓だ!」 威張る攻撃は相手に混乱を与えるものの、攻撃力を3倍にする技、そして腹太鼓は体力を半分にして自分の攻撃力を グ〜ンとアップさせる技だった。 カビゴンの攻撃力を上げる気だ。 蓮華:「それなら、チリリ、自己暗示よ!リーフィー、カビゴンにツバメ返しよ!」 チリリはカビゴンの攻撃力アップと同じ効果を自分にも備わせた。そしてリーフィーは素早さが低いカビゴンの 振り回す手を縫って、ツバメ返しを確実に与えた。 秀二:「だったらブーバー、火炎放射だ!カビゴン、お前は吹雪だ!」 蓮華:「うふふ、そうだといいわね。続いてチリリ、ハイパーボイスよ!リーフィー、サイコキネシスでブーバーをカビゴンに叩きつけて!」 ハイパーボイスによる音の波動がブーバーとカビゴンを襲い、続いて触れると火傷をするブーバーの体が、火炎放射を吐き出す直前で 止められたまま、カビゴンに飛ばされた。リーフィーのサイコキネシスの威力だった。 そして火炎放射はカビゴンに、吹雪はブーバーに向けられた。 ブーバーは氷漬になることはなかったが、体から白い煙を発しながら倒れ、カビゴンはと言えば…。 逆にフラフラ歩きながら胸を叩いていた。 が。 秀二:「くそっ!しかしカビゴンは眠れば回復する!カビゴ…カビゴン!?」 そんな時、秀二が驚いた。それは観客たちも同じだった。 さっきまでゴリラみたいに胸板を叩いていたカビゴンが突如倒れたのだ。 しかも、そばにいるブーバーの真上に。 そして。 審判:「カビゴン、ブーバー、戦闘不能!よってこの勝負、グロウタウン出身蓮華選手の勝利!」 というわけで、あたしが勝利を遂げた。 秀二:「どういうことだ!カビゴンは確実に食べ残しで回復していたはずだ!」 蓮華:「その食べ残しって、これのこと?」 あたしはあたしの元に降りてきたバタフリーが首から提げてる袋を渡した。 実は「泥棒」をバタフリーが使っていたのだ。使ったのはツバメ返しを使ってカビゴンに近づいた時。 蓮華:「この袋小さいから、取られたことに気づかなかったのね。」 それにもう一つ、バタフリーはメガドレインを使い続けていたのだ、カビゴンに対して。 メガドレインでカビゴンの体力を少しずつ奪っていた。 それらのような微々たる攻撃が、カビゴンを倒そうと進んでいたのだった。 秀二:「やられたな。ブーバーも毒を受けてるらしいが、それはいつだ?」 蓮華:「それもツバメ返しで近づいた時よ。本当はカビゴンを毒状態にさせたかったけど、カビゴンは特性の免疫で 毒にならなかったのね。」 秀二:「ああ。毒は難敵だからな。それにしても、お前のポケモンはすごかった。 3匹目は誰だったんだ?」 俺はこいつさ、と言いながら、秀二が出したのはツボツボだった。 秀二:「耐久戦にして着実に勝つつもりだったんだけどな。」 蓮華:「そう、あたしのポケモンはね、アクア、出てきて!」 あたしの3匹目は、実はミロカロスのアクアだった。 蓮華:「チリリとリーフィーのコンビネーションが敗れたときに、アクアを出してブーバーを倒すつもりだったの。 ツボツボも出ると思ってたし、アクアの氷技で倒そうかと思ったけど、カビゴンがブーバーに倒れたっていう奇跡的な 偶然のおかげで助かったわ。」 秀二:「運も実力のうちか。…決勝戦、頑張れよ。」 蓮華:「ありがとう。」 涼治:「強くなったな、蓮華は。」 鈴香:「ブーバーとカビゴンを大きさが明らかに違いすぎるポケモンで倒すんだもん。お姉ちゃんは強いよ。」 久美:「そして決勝が蓮華ちゃんと同じくらい強い志穂ちゃん。そのバトルは6対6のフルバトル。 これはすごいことになるわね。」 希:「どうなっても確実に現実世界に帰れることは決まったけど、気を抜くことはできないわね。」 ??:「草使いの少女が勝ったか。」 ??:「ワタル!カンナがアジトを見つけたらしいぞ!」 ワタル:「ああ、分かった。ナナに知らせてやれ!」 ??:「理解したぞ。お前はカンナと合流してやれよ。」 ワタル:「ああ。」 志穂:「蓮華ちゃんが勝ったのね。」 ついにこの時が来るのか。どうなるのかしら? でも、あたしも蓮華ちゃんも既にメンバーは決まってるから、お互いにそれは分かりきってるから、後はバトルをするだけ。 楽しみね。 蓮華:「志穂ちゃんと戦う約束が果たせるなぁ。」 あたしは美香たちと別れ、ちょっと一人で歩いていた。 そんな時、誰かにぶつかった。 蓮華:「あ、すいません!」 ??:「いや、俺のほうこそぶつかってすまない。怪我はないか?」 あたしがぶつかったのは、ピンクの髪を上げた短髪の青年だった。結構かっこいい。 蓮華:「大丈夫です。」 ??:「そうか。さっきのバトル、よかったぞ。」 蓮華:「あ、ありがとうございます。」 ??:「そのままポケモンを信じ続けてやれよ。それじゃ!」 青年は歩いていった。 蓮華:「涼治もいつか、あんな感じにかっこよくなるといいなぁ。」 ついこんなことを口に出してしまう。 それよりも早く、まずは菜々美ちゃんのところに行かなきゃね。報告してあげないと! お見舞いだって、まだまだしてないんだから。 そういえば、スペース団のこともどうなったのかな? 全部聞いてみようっと。 蓮華がいい気分でそんなことを考えながら歩いていた時、同じ時間に各地で、様々な人物たちが動き始めていた。 決勝と決戦の日は近い。