戦わなきゃ解決できないのかな? 今この場所で、色んな場所で、みんなが平和のために戦ってる。 それを終わらせるには、やっぱり戦うしかないのかな? あたしみたいな、傍観者が言えるセリフじゃないけど、ナナ姉がその知り合いの仲間と戦ってる。 でも、それは平和のための戦いと思っていいの? それとも、自分たちのため? それが分からないから、あたしは旅に出て、ずっと帰らなくて、実はこっそり帰ってきてて、この様子を見てた。 そして知ってる。 スペース団の目的を調べたから。 きっかけは、ほんの小さなことに過ぎないけど、それがかえって大きなことに変わる。 そのせいで、今までも戦いが続いてきている。 でも、戦わない人もいるよ、あたしみたいに。 みんなはバトルが終わった時に、何を思うのかな?それは誰も分からないよね、今は。 ただ、これだけは思うの。 スペース団を解散させるには、ナナ姉の友達のあの人が、心から癒せばいいって事。 だいぶ昔、その力でホウエンの3匹の戦いが、さらに海の神、時の神、3つの島の守り神、不死の神、3つの彫像、 さらに、不死の神を守る3匹の守護さえも巻き込んだ争いが起きたらしい。 でも、その力を押さえる事ができたのは、3つの力だという。 それらは心を癒す事のできる力だったという。 そんな伝説が残っているのは、海を遥かに越えた陸地にあり、そこのさらに山奥の村の古文書に書かれていた。 倒すんじゃなくて、戦う、と。 そしてその伝承に基づき、ファーストポケモンの3つの属性が定められたと。 攻撃する事も可能であるが、心を癒すことができるという、3つの力。 今のところ、あの村に偶然訪れ、そしてあの古文書を解読できたのはあたしだけ。 なぜなら、あの村には3人しか人がいない。それも、古文書を伝え続けるために人の形を持ったポケモンしか。 彼らは、あまり遠くない未来に起こると予言されていることを人々に知らせるために、いつかここを訪れるだろうと言う、 あたし以外の誰かを待っているらしい。 その誰かがそれを解読した時、その争いごとを癒す事で終わらせる事ができるらしいから。  by ?? 第66話 洗脳を解き放て!催眠兄弟の罠 スペース団本部の一室ではベイルと名乗る少年が操る哲也と涼治にエリカとカツラは苦戦していた。 サカキはボムを追いかけていってしまい、彼らしか部屋にはいない。 ベイル:「どうしました?ポケモンを出す余裕もないようですね?」 哲也(スラッシュ)と涼治(ドルク)の風攻撃がエリカたちを寄せ付けず、その間にベイルのポケモン、ハッサムが エリカとカツラに攻撃を仕掛けているのだ。 エリカ:「ポケモンで人を傷付ける事は危険な行為ですわ。」 カツラ:「しかもわしらに出す暇も与えないようだな。その余裕で言っておるのか?」 ベイル:「当たり前さ。こんな楽しい事はないからね。」 ベイルが右手を動かすと、涼治がカツラに襲い掛かり、左手を動かすと哲也がエリカに襲い掛かる。 その間にようやくハッサムの攻撃が止まった。 カツラ:「ここはやるしかないようだな。ウィンデB、神速だ!」 エリカ:「そうですわね。ラフレシア、捨て身タックルです!」 ウィンディが涼治を、ラフレシアが哲也を跳ね飛ばした。 かと思えば、ウィンディは凍りつき、ラフレシアは傷だらけで倒れた。 カツラ:「何!」 ドルク:「俺のデリバードの吹雪さ。気づかなかったのか?」 エリカ:「ラフレシア!?」 スラッシュ:「俺のストライクの切れ味はどうだ。お前たちは弱い。ジムリーダーといっても、所詮はこんなものだろうな。」 エリカ:「いいえ、そこまで弱くはありませんわ。私たちが簡単に負けることはありませんから。 私たちのポケモンを一撃で倒したからといって、なめてもらっては困ります。」 ドルク:「それはどうかな?デリバード、吹雪でやっちまえ!」 ベイルによって操られ、豹変した哲也と涼治、そしてベイルの攻撃は休むことなく再び二人に襲い掛かってきた。 が。 吹雪が一瞬で蒸発していた。 ドルク:「何だと!?」 カツラ:「私が炎のエキスパートである事を忘れてもらっては困りますね、ウィンディ、熱風です!」 いつの間にか、凍っていたはずのウィンディが立ち上がっていて、熱風を吐いていたのだ。 ハッサムとストライクを巻き込み、熱い炎の風が吹雪を蒸発させ、そのまま彼らに攻撃していた。 流石に虫タイプ、鋼タイプ、氷タイプに炎攻撃は効果抜群だったらしい。 スラッシュ:「くそっ、どうして凍らせたはずのポケモンが動いた!」 エリカ:「うふふ、ウィンディの火炎車は氷状態を溶かす事ができる技ですわ。そして、日本晴れを使った事で 私のラフレシアも光合成とアロマテラピーで復活させていただきました。 ラフレシア、花びらの舞ですわ!」 彼らの視点がカツラとウィンディに集中していたため、エリカも行動に出ていた。 ラフレシアの飛ばした花びらは、哲也と涼治を覆い、二人の動きを一時的に封じていた。 スラッシュ:「こんなもの、俺の疾風で切り刻…何!?手が動かない…」 エリカ:「残念でした。ウツボット、モンジャラ、そのまま締め上げなさい!」 エリカは彼らの能力を前回のヤマブキ戦後にナツメから聞いていた。 というより、能力者全員の能力は、前回の戦い後にジムリーダーたちに細かく伝えられたらしい。 再び敵となってしまった時の対処のために。 そして、それを知るエリカはモンジャラの絡みつく攻撃、ウツボットの蔓の鞭、ラフレシアの花びらの舞で 二人の動きを拘束したのだ。 ベイル:「せっかくの操り人形をよくも!お前ら生かしておかないぞ!」 カツラ:「ふん、他人を操る事でしか自分を強く見せられない者にわしらが倒させると思ってるのか。」 エリカ:「なぜあなたはそのように他人を操りなさるのですか?」 ベイル:「別に。俺と兄貴は催眠術の腕に変われてこの組織に入っただけさ。他人が俺たちの奴隷になるのは 楽しい事以外のものじゃないだろ?」 ベイルは面白がって言った。 彼は、他人を操る事が快感であるらしく、それを知り、エリカとカツラは怒りが増していた。 エリカ:「他人を操る事でしか満足できないのは悲しい事ですわ。」 カツラ:「残念だが、お前さんの言う事は道理にかなう者ではない。ウィンディ!」 ベイル:「やる気か?デリバード、ストライク、元気の塊で蘇れ!」 ベイルは倒れているポケモンに元気の塊を投げつけ、彼らを復活させていた。どうやらこのポケモンたちは ベイルのポケモンだったらしい。 エリカ:「2体ですのね、仕方ありませんわ。ダーテング、出てきなさい。」 ウィンディとダーテングが、デリバードとストライクに対峙した。 ベイル:「デリバード、吹雪!ストライク、目覚めるパワーだ!」 再び、吹雪と目覚めるパワーが放たれようとした。 しかし。 エリカ:「同じ手は通用しませんわ。ダーテング、デリバードに猫騙しですわ!」 ダーテングの猫騙しによって、デリバードは吹雪を出す瞬間に驚いて怯んだ。 カツラ:「今だ、ウィンディ、熱風だ!」 目覚めるパワーは炎と草のポケモンに効果抜群の技ではなかったらしく、攻撃を受けてもあまりダメージを受けなかった。 そして熱風が再びデリバードとストライクを包み込み、ポケモンたちは再び倒された。 ベイル:「そんな!?でも、俺を倒してもそこの奴らは元には戻らないぞ!まだまだドリーム様の悪夢の影響を受けてるからな。 どうせ、ドリーム様でも悪夢の覚まし方は知らないから別に俺には関係な…ぐおっ!」 ベイルはウィンディに跳ね飛ばされ、壁に叩きつけられて気を失った。 カツラ:「お前の戯言に長々と付き合う気は全くない。エリカ君、わしは他のジムリーダーたちのところに向かう。」 エリカ:「そうしてくださるといいですわ。私はこの方々をラフレシアたち全員の力で拘束させていただきます。 そうでなければ、再び仲間同士の同士討ちにもなりかねません。後は頼みました。」 カツラ:「ああ。」 そしてエリカとカツラはその場で別れた。 エリカ:「それにしても、哲也さんと涼治さんが敵になるとは思いませんでしたわ。しかも涼治さんは2度目。 スペース団の力も恐ろしいものですわ。」 ??:「何が恐ろしいんですか?」 エリカ:「はっ!敵ですの?」 エリカが突然部屋に入ってきた団員にボールを向けると、入ってきた団員は慌てていた。 団員:「違います、あたしは敵じゃないですよ、エリカさん。」 エリカ:「はい?」 団員は否定した後、部屋の四隅に向かって、手から何かを放っていた。 エリカ:「その様子…能力者の方ですわね。」 団員:「はい。セキチクでアンズさんの手伝いをしてる浅香です。」 エリカは帽子と仮面を取った少女に見覚えがあった。 エリカがセキチクのサファリにすむ草ポケモンの生育を見に来た時に、案内を買って出た少女だったのだ。 エリカ:「あなたは…セキチクで待機しているはずではなかったのですか?」 浅香:「そうだったんですけど、実はセキチクが落とされちゃいまして。あたしと晃正君、能力者であることを理由に 捕虜に取られたんですけど、ついさっきカツラさんに助けてもらっったんです。」 セキチクが落とされた。 とんでもないニュースを聞き、エリカは驚いた。 しかし、それと同時にカツラの行動のおかげで新たな救援が生まれたらしい。 エリカ:「それで、あなたは先ほど何を?」 浅香:「あ、あたしの能力、はっきりしてないから言ってなかったんですけど、視線を感じ取れるんです。」 浅香は光を操る能力者だが、自分たちを監視する小型カメラの場所も察する事ができたため、ここに来る間も通路のカメラを 壊し続けてきたらしい。 浅香:「何か、色んなところからあたしたちを監視しているみたいですよ。ここに来るまでに100個くらいありましたから。」 エリカ:「そうですか。それで私たちの行動が筒抜けでしたのね。」 浅香:「そういえば、そこにいるのって先輩たちですか?」 エリカ:「ええ。」 エリカは二人が操られた事を教えた。 浅香:「…あたしが、お力になりますね。」 エリカ:「えっ?」 浅香:「あたしの力で、二人の悪夢を消滅させてみます。あたしの力は光だから、人を光に導く力だから可能だと想います。 でも、時間がかかると思うので、入ってくる団員の処理、お願いしますね。」 浅香は二人の頭に手をかざし、目を瞑った。それと同時に二人に光が放たれ、二人がいきなり苦しみだし、黒っぽい煙が 二人から浮き上がっていた。 浅香:「これが悪夢の塊です。」 エリカ:「そうですのね。ありがとうございますわ。私ひとりではどうしようかと思っていたので。」 そんな時、ドアの向こうから団員たちの叫ぶ声がした。 来る、と思ったエリカはラフレシアとウツボット、ダーテングにソーラービームの準備を指示し、それを迎え撃とうと待つのだった。 その頃。 同じように操られる健人(ゴードス)と美咲(フレア)、そして二人を操る幹部候補生、実はベイルの兄であるバイツが、 なずな、律子、海と戦っていた。 初めは近くで戦っていた3組だったが、次第にバラバラに、1対1のバトルを始めていた。 なずな:「ムウマ、シャドーボールよ!」 バイツ:「残念だけど、ヤミラミは悪とゴーストの属性。ゴーストタイプの技は通用しないよ。ヤミラミ、見破る攻撃だ!」 あたしは健人先輩と美咲ちゃんを元に戻すためにも、操っている張本人のバイツに戦いを挑んだ。 今、律子と海も二人と戦ってる。 ただ、多分こいつを倒しても、悪夢に魅せられた二人が元に戻るわけじゃないけど、蓮華か、セキチクにいる浅香ちゃんと 合流できれば癒しの力や光の力で悪夢の力を打ち消せるはずなのだ。 だから、あたしもやれるだけのことはする。 でも、あたしのムウマの攻撃は、ヤミラミには全く効かず、逆に見破られてノーマルタイプからの攻撃も受ける状態に、 ムウマがなってしまった。 バイツ:「どうしてそんなに怒ってるんだ?俺は操り人形で遊んでるだけだぜ。お前も俺の操り人形にしてやるよ。」 なずな:「あたしが?」 バイツ:「一度はスペース団のエアって名乗ってただろ?」 確かに、操られてた頃にはそういうことがあった。 でも、そういうことはもう嫌。操られていた時に、自分も他人も傷つく事をやってしまっていたから。 なずな:「あたしは人が傷つくような事はもう嫌なの。悪いけど、あなたを倒すから! ムウマ、黒い霧を放ってから電撃波よ!」 ヤミラミに対してはゴーストタイプの技は通用しないし、サイコキネシスも効果ない。 でも、あたしのムウマは電気技を覚えてるから。あと、黒い霧は一度姿をくらましたかったから使用した。 ヤミラミはシャドーボールでそれを相殺したけど、続いて10万ボルトと雷を放ち続けた。 でも。 バイツ:「それならヤミラミ、月の光で復活してサイコキネシスだ!」 バイツのヤミラミはそれを軽くかわし続け、ムウマをサイコキネシスで一蹴した。 バイツ:「これで打つ手無しだろ?君のポケモンは後はジュペッタとメタモン。でも、変身す…ヤミラミ?」 なずな:「うふふ、黒い霧を放った理由、教えてあげるわ。ムウマに使わせたくなかったけどね。」 バイツ:「なるほどな。滅びの歌か。それにそのムウマ、スペース団員に支給される遺伝子操作で黒い霧を覚えさせた ムウマだな?」 なずな:「ええ、そうよ。それに滅びの歌もそう。でも、これであなたはポケモンを持ってないでしょ?」 バイツ:「ああ、そうだな。」 バイツは自分のあたしに対する打つ手がなくなったようなのに、全く平気な様子でいた。 と思えば、あたしに突然襲い掛かってきた。 なずな:「きゃっ!」 バイツ:「お前も催眠で俺の奴隷にしてやるよ。そうすればエアに戻って楽しい生活できるぜ。」 なずな:「嫌!必殺、気功水流波!」 あたしは咄嗟に、手から空気の塊に空気中の水蒸気を集めて纏わせた砲弾を放った。 バイツ:「うがぁ!」 バイツは綺麗に放物線を描くように飛び、地面に落下した。 なずな:「ふぅ、これで大丈…嘘!」 バイツ:「残念。俺さ、君が好きになったみたいだよ。」 バイツは服に防弾チョッキを着ていたらしく、あたしの攻撃のダメージをあまり受けなかったらしい。 そして、様子を見るために近づいたあたしの手を掴んだのだ。 なずな:「嫌!放してよ!」 バイツ:「嫌だ。放さない!」 スポン! と、あたしの腕が抜けた。 バイツ:「何!?腕が…」 バイツはあたしの腕を見て驚いていた、ら、突然その腕が伸びて、バイツを締め上げていた。 バイツ:「こ、これは…メタモン!?」 なずな:「痴漢撃退対策よ。メタモン、そのまま締め上げて!人を操るような最低な人に教えてあげて!」 バイツ:「くそ…、がはっ、…」 メタモンが強く締め上げた事で、ようやくバイツは倒れた。 ジュペッタに調べてもらったところ、しっかり気を失ったらしい。気持ちいい寝息を立てたので、ムカついたので、 ジュペッタに悪夢を指示しておいた。 みんなの味わってる行為を自分にも受けるといいわ。自業自得よ。 あっ!それより、律子と海に加勢しなきゃ! フレア:「うふふ、あたしの炎から逃げられると思ったのかしら?」 あたしはこの世界に来て間もない。というより、気になって戻ってみれば、何と大バトルの戦場に来ちゃった訳だし。 まさかこんな事態になっているとはね。 蓮華や志穂ちゃんたちがリーグ優勝、準優勝を果たしたのは聞いた。 それはすごいと思ってるよ。でも、今はその話を聞いているヒマはないし。 せっかく味方に戻った美咲ちゃんが、洗脳によってフレイからフレアに改名して襲ってきたし。 でも、あたしは負けない。 キングドラとカポエラーを美香から返してもらったから。 そしてあたしは固まってバトルをしていたら危ないと思ったから、プータルに乗って少し離れた場所までやってきた。 でも、気づけばあたしは美咲ちゃんの放った炎に囲まれていた。 フレア:「うふふ、逃げられないと知って、黙っているの?コータス、ラッタ、行きなさい!」 海:「黙ったままじゃないわ。カポエラー、キングドラ、迎え撃つわよ!」 (この時知らなかったことだけど、どうやらなずなちゃんと戦ってるバイツと、別の場所でエリカさんたちが戦ったベイルの兄弟が みんなを操ってるらしいけど、人間しか操れないベイルと違い、バイツは人間とポケモンの両方を操れるらしい。 後々になって氷雨さんがこっそり教えてくれた事です。) カポエラーの特性が威嚇なので、獰猛なラッタもやる気マンマンのコータスもどうやらぎょっとして尻込みを始めていた。 フレア:「威嚇ですのね。でも攻撃力と関係のない技もありますわ!ラッタ、カポエラーに怒りの前歯ですわ! コータス、熱風を浴びせておやりなさい!」 怒りの前歯は相手のHPを半分にしてしまう技、そして熱風は2体のポケモンに同時にダメージが与えられる技。 でも、簡単には受けないから。 海:「キングドラ、雨乞いから水の波動よ!カポエラーは見切ってメガトンキック!」 ラッタが飛びかかってきたところをカポエラーは見切り、そのままラッタの懐に潜り込み、腹部にメガトンキックを ぶちかました。そしてそのまま見切りの効果で熱風もかわしていた。 キングドラは雨乞いによって炎技の熱風の威力を半減させ、水の波動で熱風を突き抜き、そのままコータスに水の波動で攻撃を与えた。 ラッタもコータスもその一撃ですぐに倒れてしまっていた。 海:「急所に当たったようね。もう終わりかしら?」 フレア:「…まだまだよ!ブラッキー!」 フレアはブラッキーを放ってきた。 美咲ちゃんのポケモンはこの子で最後だからもう後がない。そのせいでやぶれかぶれなのだろう。 フレア:「ブラッキー、電光石火よ!」 海:「カポエラー、心の目、そしてトリプルキック!」 ブラッキーの電光石火は怒り任せなのが目に見えていたせいか、とてもかわしやすかった。 そして命中力の悪い技を相手に放つために精神を統一させる技、心の目で身を引き締めたカポエラーは トリプルキックを3発ともブラッキーに当て、ブラッキーを倒すのだった。 フレア:「そんな…でも、私の炎からは逃れられませんわ!炎の竜よ、あの少女を焼き尽くしなさい!」 ポケモンは倒した。 けれど、操られた状態の美咲ちゃんが正気に返るわけではないらしい。 あたしに向かって炎を放ってきたので、プータルで上空に逃げるしかなかった。 フレア:「待ちなさい!」 すると、美咲ちゃんは姿を変え、朱雀に似た、炎の鳥の姿になって追いかけてきた。 フレア:「逃しませんわ!炎よ、あの小娘を焼き尽くすのですわ!」 海:「プータル、頑張って逃げて!」 さすがに飛行系の式はプータルしか持っていない。大体が陸上か、海上の式しかいないのだ。 今度作っておこうかな…今逃げ切れたら。 フレア:「それそれ!私のポケモンを倒した罰ですわ!」 プータルにも炎は放たれ、傷ついたプータルはそのまま落下してしまい、あたしもついに追い詰められていた。 亀甲壁はさっき健人先輩の馬鹿力に壊されたままだし、水系の式でも今の美咲ちゃんを覚ますのは不可能に近いだろう。 出したところで蒸発させられる気がする。 だから、あたしにはもう打つ手がなかった。 海:「もう駄目なの?あたし、逃げられないの?」 ??:「それはないわよ、行くのよ、マ〜イ、ステディ!」 突然上空から声がして、ギャラドスが火の鳥の美咲ちゃんにハイドロポンプを浴びせかけていた。 フレア:「きゃ〜!炎が消える…私の炎が…」 さすがに水タイプの強力な技を受けたため、美咲ちゃんは火の鳥から元の姿になって倒れこんでいた。 その体からは黒い蒸気、多分悪夢のオーラが登り出ていた。 海:「一体誰が…カスミさん!」 あたしが空を見上げると、そこにはオオスバメに乗ったカスミさんがいた。 カスミ:「海ちゃんだったわね。大丈夫だった?」 海:「ええ、助かりました。」 カスミ:「この子、改心したはずじゃなかったの?一体、何があったの?」 海:「あ、それは…」 あたしはカスミさんにことのあらましを教えた。 カスミ:「そう、それじゃ早く他の子のところに行きましょう。他のみんなにも大変な事は起きているのでしょう?」 カスミさんはどうやらとってもやる気らしかった。 あたしは助かったと同時に、とっても頼もしい人が駆けつけてくれた気がした。 それと、このオオスバメはサトシさんのポケモンらしい。 ということは、さらに頼もしい人がいるってこと。 この戦い、どうやら早く終わるかもしれない。 二つの戦いが終了を遂げた頃、あたしはまだ戦っていた。 ゴードス:「ふん、逃げてばかりでは終わらないぞ!」 あたしは能力者ではなく、一人のポケモントレーナーに過ぎない。 それに対し、相手はエビワラーとサイドン、カビゴン、カイロスを放って、しかも猛スピードで追いかけてくる健人先輩。 あたしは引き受けて戦っていたのはよかったけど、それはセレビィが元気だった時だった。 セレビィもロゼリアも、初めは頼もしく戦ってくれたけど、健人先輩の闘力パワーによってパワーアップしているせいで、 健人先輩のポケモンたちはなかなかダメージを受けず、逆にセレビィとロゼリアは回復技も使えずに倒されてしまった。 そしてあたしは何とか逃げ続けていた。 かばんの中にある食べ残しや、木の実、煙玉、エネコの尻尾、ピッピ人形を駆使してポケモンたちの気を反らしたり、 混乱させたりし続けて。 食べ残しはカビゴンの気を反らし、尻尾や人形は別の方向に投げて、木の実は健人先輩のポケモンの性格と違う物を口に投げ入れて 混乱させて…。そして今、最後の煙玉を使い果たしてしまった。 律子:「ハァ、ハァ、もう駄目、あっ!」 あたしは木の根に足を引っ掛けて転んでしまった。 ゴードス:「ようやく追い詰めたぞ。お前を倒してやる。そうすれば俺はさらに強くなれる。」 律子:「そんなことないです。先輩は元々強い人です、洗脳に負けるような人じゃないはず。 いくら先輩が両親の事故死の現場を見たからって、それで自分を追い詰め続けたからって、何も変わるわけじゃないです。 ご両親が復活するわけでもないんですよ!だから自分を取り戻…うぅ!」 あたしは必死に叫んだけど、健人先輩には届かず、逆に締め上げられて、近くの木に叩きつけられてしまった。 ゴードス:「言いたいことはそれだけか。この屑が。俺の両親のことだって?俺はずっと一人さ。 そしてこれからもな。お前が何を知っているか知らないが、俺のことにとやかく口を出させるわけには行かない。 カビゴン、のしかかりだ!」 叩きつけられた痛みと、締め上げられた事による喉の痛みがあって、あたしは体を起き上がらせる事ができない。 そんな時に、あたしに向かってカビゴンが迫ってきていた。 もう駄目。あたしの力じゃ、これ以上は…。 そう思ったときだった。 ??:「バシャーモ、けたぐりよ!」 どこかで聞いたことのある声がして、あたしの目の前でカビゴンがバシャーモに蹴り上げられていた。 「けたぐり」は体重の重いポケモンに対して大ダメージを与える事ができる格闘技。 そのため、カビゴンはひどく顔をしかめながら、突然現れたバシャーモを見ていた。 ゴードス:「誰だ!何者だ!」 ??:「僕が何者かを言う前に、自分のポケモンを確かめた方がいいと思うよ。」 今度は聞き覚えのない少年の声がした。 ゴードス:「何!?…何だと、カイロスとサイドンが倒されているではないか!」 あたしは逃げていて知らなかったが、いつの間にかカイロスは丸焦げになり、サイドンは体中に花びらを纏わりつかせ、力尽きていた。 ??:「僕のロゼリアの花びらの舞はどうやらサイドンには効果的だったようだね。」 ??:「あたしのバシャーモのけたぐりも効果を見せたようだし。」 ゴードス:「くっ、何者だ!卑怯だぞ、姿を見せろ!」 ??:「それだったら、一人に対して4匹のポケモンで攻撃している方がおかしいと思うよ。 でも、もうそのエビワラーも戦えないよ。ぼくのサーナイトのサイコキネシスを受けたからね。」 また、今度はさっきの声よりは幼い感じの声がして、エビワラーが倒れていた。 健人先輩はポケモンたちの前にいて、ポケモンたちがやられるのに気づいていなかったらしい。 ゴードス:「ならばこうするしかない!闘力の威力を見よ!」 健人先輩は既にあたしを眼中に入れていなく、ポケモンを倒されたと知ると、いきなり地面に拳を叩き付けた。 すると、一斉に地面が割れ、地面から上空に向かって土砂や岩が吹き上がっていた。 ??:「きゃあ!」 ??:「これが能力者の力なんだぁ。初めて受けるよ。」 ??:「感心している場合じゃない。このままではピジョットが持たない。飛び降りるぞ。」 ??:「分かったわ、マサト。」 マサト:「うん!」 どうやら攻撃を受けたのか、ようやくあたしの前に、3人が姿を見せた。 そしてあたしはようやく誰か分かった。 律子:「ハルカちゃんとマサト君だったのね。あなたは?」 あたしはナナと一緒にセンリさんを訪ねた事があるので、二人のことは知っていた。 まさか助けに来てくれたとは思ってなかったけど。 そして知らない少年が一人いたので、ついあたしは聞いていた。 すると。 すっと目の前に出されたのは赤いバラの花。 律子:「えっ?」 ??:「僕の名前はシュウ。コーディネーターをしている者さ。お嬢さん、こんごともよろしく。」 あたしはさすがに何も言えなかった。 が、そこに罵声が飛んできた。 健人先輩が無視されていきなりラブシーンめいたものを見せられたので怒ったのだ。 ゴードス:「お前ら!俺を無視するんじゃない!もう一度行くぞ!」 しかし。 シュウ:「どうやらせっかくの出会いを無視するようだね。アメモース、バブル光線で頭を冷やしてやれ!」 ハルカ:「エネコ、吹雪よ!」 マサト:「アメタマ、水の波動だ!」 健人先輩には水と氷の技が放たれ、健人先輩はそのまま凍った。 最後はあっけなかった。 ハルカ:「ところで律子、あなたがここにいるなんて思わなかったけど、何があったの?」 マサト:「僕達、スペース団が暴れてて、ジムリーダーたちが最終決戦を始めたって聞いたから救援に来たんだけど、 何があったのかはあまり知らないんだ。」 シュウ:「知っている事があれば、できるだけ教えてくれないかな?」 戦いが終わると、あたしは3人から訪ねられた。 そこへ。 海:「律子!」 なずな:「大丈夫だった?」 海となずなが、カスミさんを連れてやってきた。 どうやら向こうも終わったようだ。美咲ちゃんを連れているということは、もう大丈夫なのかな? ともかく、人質に数人は助け出したわけだし、あたしたちは健人先輩を元に戻して、美咲ちゃんが目覚めたら 行動に出なきゃ。ここには新たな救援に、仲間の復活で戦力がアップしてるんだし。 というより、あたしたち3人が元々戦えるメンバーじゃないからだけどね。 でも、これなら何とかなるのかもしれない。 その頃。 律子たちの様子はひびが入ってしまったが何とか映像を送り続けている監視カメラによって、ブライトの秘書の下に届いていた。 秘書:「ブライト様、洗脳操り兄弟のバイツとベイルが敗れ、捕らえていたセキチクの能力者二人と操り人形になっていた 能力者が助け出されてしまいました。」 ブライト:「何!」 秘書:「しかも、ホウエン地方から数名のポケモントレーナーたちが救援に現れたとの報告もあります。 いかが致しましょうか?」 ブライト:「くそっ、せっかくの作戦が奴らまで来てしまってはぶち壊しだ。しょうがない。 そこの男を使うか。」 ワタル:「俺のことか?俺はお前らなんかの言う事は聞かないぞ。」 ブライト:「ふっ、誰がお前と言った。お前なんかを使っても意味がない。お前はいい人質になるからな。 シルバス、そこのドラゴン使いは牢獄ナンバーA−123に入れておけ。」 シルバス(秘書):「はい。」 ワタルは首筋にスタンガンを突きつけられて気を失い、秘書のシルバスにどこかに連れて行かれていった。 それと共に、ブライトの前には黒装束に身を包んだ男の姿があった。 ??:「およびでございますか?」 ブライト:「ああ。お前に頼みたい事がある。この近くにポケモントレーナーがいる。そのトレーナーを倒してきてほしい。 できるな、キョウ?」 キョウ:「さようでございます、ブライト様。」