中学3年になって数ヶ月。あたしは離れ離れになっていたポケモンたちとも再会し、それと同時にいつでもポケモン世界に行けるようになった。 それはそれで嬉しかったけど、あたしにはやらなきゃいけない事が一つあった。 第2章 1.学校バトル!強さは見た目より中身 現実世界でも今は普通にポケモンが存在していて、小さなトラブルはいくつかあるけれど、それでも普段の生活が送れていたりする。 ただ、学校や会社で自分が何のポケモンを所持しているかという登録をしなきゃいけない事が義務付けられていた。 いつの間にかなっていたことであたしたちも驚いたけど、トラブルの防止などの役に立っているみたい。 ただ、あたしは全く所持していないし、こっちに戻ってからも一度もゲットしてなかったから、あたしは登録してなかった。 それと、「セレビィ」を持っていることは公開するわけにはいかなかったらしく、律子はロゼリアのみの登録になっている。 あたしはキレイハナたちと再会してから数日後に、学校で登録を済ませた。 知り合いに預けたままだったという嘘の理由で出したけど、全く疑われずに登録されていた。 でも、厄介な事が一つ浮上したけど。 それはあたしが部活を終え、後輩の浅香ちゃんと帰ろうとしたときだった。 ??:「桜笠さん、少々お時間はよろしいかしら?」 あたしと浅香ちゃんは数人の女子と彼らより頭一つ分くらい背が高い女子に取り囲まれていた。 彼女には見覚えがあった。 彼女は確か、プライドが麗華に似ているくらい高いお嬢様少女の亜紀という生徒で、そしてこの学校で一番強いと言う実力の持ち主だった。 強いと言うのはポケモンバトルのことだ。 亜紀:「よろしいのかしら?何も言わないようですけど。」 蓮華:「ええ。何か用なの?」 亜紀:「簡単な事ですわ。あなた、この学校でポケモンバトルが一番強いのは自分だと語っているそうですわね。」 蓮華:「えっ?」 あたしは驚いた。もちろん、そんな事をいった覚えはないけど。 あたしがチラッと浅香ちゃんを見た。噂話と言えば浅香ちゃんだけど…。 浅香:「あ、そういえばそんな噂があったっけ。明らかにあれはデ…」 亜紀:「部外者はお黙りなさい。私は桜笠さんと話しているのですわ。」 亜紀はあたしが他の人と喋る事が気に食わないらしく、浅香ちゃんを一蹴していた。 なるほど、亜紀の取り巻きが何も言わないわけだ。それにしても、そんな噂があるとはね。 亜紀:「あなたが知らないと言う嘘を言うのは仕方がないことですわ。あなたは私よりも強いと思われたいがためにそう言われたようですから。 でも、本当に強いのは私ですわ。それは認めていただけたいものですわ。」 ちょっとカチンときた。 蓮華:「嫌。」 亜紀:「何ですって?」 蓮華:「あたしは自分が強いとは言ってないわ。でも、自分が弱いと認めるのも嫌よ。」 亜紀:「あら?最近ゲットしたばかりの方が、あたしよりも強いとおっしゃるの?」 蓮華:「強いわよ。」 亜紀:「へぇ〜、自信過剰ですわね。まぁ、いいですわ。そんなに言うのでしたら、私とバトルしていただけません? まぁ、結果は目に見えていますけど。」 蓮華:「えぇ、いいわよ。明日の放課後、第2体育館のバトルフィールドでやるの。いい?」 亜紀:「いいですわ。使用ポケモンは4体ですからね。」 あたしは売り言葉に買い言葉と乗じて、亜紀と勝負の約束をしていた。 そして帰り道。 今までずっと黙っていた浅香ちゃんが口を開いた。 浅香:「先輩、いいんですか?」 蓮華:「だって、何か亜紀って麗華に似ていて自信過剰だもの。聞いてるだけにムカッとしちゃって…」 浅香:「確かにプライドの高さは麗華さんそのものですよ。でも、実力は結構ある人ですよ。」 浅香ちゃんは噂好きなので、何か色々と知っているようだった。 浅香:「ただ、先輩たちには劣ります。志穂先輩たちが卒業して行ったから亜紀先輩がその跡を継いだ形なんですが、 実際はあたしや晃正ともバトルしてないくらいだし、下級生は眼中にないみたいなんですよ。」 その後も色々と聞いてみて分かった事だけど、どうやらあたしの持っている絆たちが原因らしかった。 原因といっても、直接的なものじゃないけれど。 キレイハナ:「えっ?すご〜くレアポケモンが多いから、他の生徒に強いって思われたの?」 家に帰ったあたしはその足でポケモン世界に行き、みんなにバトルのことを伝えた。 すると、キレイハナが何かを感じたらしく、しつこく聞いたので、あたしは詳しい事をキレイハナに話していた。 蓮華:「ええ、こっちでは進化の石とかも極稀で発見されているから、それだけ石で進化するポケモンたちもレアだし、 ゲームでもらえるポケモン、出現率が低いポケモンもそうみたい。だからなのか、カビゴンやミロカロスがいる事を知って、 あたしが強いって思った生徒が多いみたい。」 ポケモンはこっちの世界に来て、ボールや傷薬などの回復アイテムもいつの間にかこっちに来てたけど、それ以外のアイテムは ほとんど日本にだけはやって来る事がなかったのだ。それだけ石などは希少価値が高いうえに、ゲットできる確率も少なく、 ネットでのオークションなどに出品されるアイテムには紛い物も多く存在していたくらいだった。 ただ、よく知らないけど外国には本物のそういうアイテムも多く存在しているらしい。 あたしと同じ能力者の知り合いの子が詳しく教えてくれたから事実だろう。 外国は広いから、ゲートも日本よりたくさん開き、それだけ色々なものが流出したに違いない。 また、学校での登録されたポケモンを閲覧するのは自由だから、あたしが誰を持っているかってことは一般の生徒でも知る事ができた。 あたしの場合、進化前だけどピッピのぴぴは人気が高いし、キマワリのなっぴやダーテングのたねねも石で進化するだけあって 珍しいと思われていた。 他にもカビゴン、ミロカロス、ハクリュウ、アブソル、チリーンと、数えたらきりがないくらい、あたしの絆たちは珍しいポケモンばかりだったし。 そして、それによってこういう事が起きたのだ。 キレイハナ:「へぇ〜、それじゃ、あたしもレアなの?」 蓮華:「そうみたい。」 キレイハナ:「ところでさ、どうして晃正君や美香ちゃんたちは彼女よりも強いってことになってないの?」 蓮華:「あぁ、それはね…」 実際に戦っていれば、美香達のほうが強いってことになっているはずだ。 浅香ちゃんも言ってたけど、今校内にいるポケモン世界に行ったメンバー、あたしや浅香ちゃん、美香、晃正君たちの方が 実力は上らしい。ジムリーダーのそばにいたことで浅香ちゃんと晃正君はそういうことを見る目が養われたみたいだけど、 亜紀のレベルっていうのはあたしたち全員と、かなり開いている。 ただ、亜紀には進化前のポケモンたちは弱いという観点があったりしていて、ポケモンの真の強さを知らないらしい。 下級生に眼中がないことも一つの理由だった。多分、鈴香や晃正君とバトルすれば亜紀は負けているはずだから。 でも、亜紀は強いと生徒たちに囁かれていることと、その取り巻き達のガードのせいで、下級生たちがバトルを申し込めないという面もあったのだが。 キレイハナ:「つまりゲームの中で強いと思われているポケモンを持っていない人やそんな感じじゃない人、それから年下は弱いから、 初めから眼中にはなくて、それでバトルしたことないし、戦っても意味がないって思われてるわけなの?」 蓮華:「ええ。大正解よ。美香はエイパム、菜々美はマリルリ、なずなはメタモン、律子はロゼリアがパートナーってことになってるから。 パートナーが弱そうだから強くないだろうって言うのが、亜紀の考えみたい。ただ、美香と菜々美はコンテストのポケモンだからって 断った事も関係してるけど。」 キレイハナ:「ふぅ〜ん(外見で判断してるってわけか)、でも、そう考えるってことは亜紀のポケモンは強いのが多いの?」 蓮華:「ええ、最終進化形ばかりいるみたいよ。」 あたしはそう言うと、ポケモンを選ぶ事にした。 全員持っていっても大変だからだった。 あっちで迷うよりは、誰か10匹とキレイハナを連れて行けばいいだろうと思っていた。 それに誰であっても、みんなが強いから十分戦えるだろうと思った。 その頃。 蓮華とキレイハナが話していた頃。 その話題に上がっていた亜紀は、取り巻きとこんな話をしていた。 亜紀:「うふふ、あんな方など私が一捻りですわ。」 取り巻き1:「しかし亜紀様、桜笠さんはミロカロスやハクリュウをお持ちですわ。」 亜紀:「まあ、あのような方がミロカロスを!それはいけませんわ。ポケモンはその人に似合うものでないといけません。 あのような方にはパートナーのキレイハナも似合いませんけど、パートナーを外させるわけには行きませんけど、ハクリュウなどの 美しいポケモン、カビゴンなどの強いポケモンは他の人に差し上げた方がよろしいと思いますわ。」 取り巻き2:「でも、どうするんですか?明日のバトル。」 亜紀:「簡単な事ですわ。いつものとおり、摩り替えてしまえばよろしいのです。ミロカロスは私が頂きますが、それ以外の彼女に相応しくないポケモンは、 全てあなた方がいつものように、お好きなようにすればいいことですわ。」 取り巻き3:「好きなようにですか?分かりました。それでは…」 おもいっきり怪しい話だったが、しているのが防音設備の行き届いた亜紀の部屋だったため、誰にも知られることはなかった。 次の日。 バスケ部の朝練に来た生徒たちは何かで盛り上がっていた。 いつもだったら気合を入れて練習に打ち込む中心となる人物、主将の涼治がいるはずだったが、彼は海外にいる祖父母の用事によって、 数日、学校を休んでいていなかったのだ。 部員:「なあなあ、知ってるか?」 部員:「ああ、小牧さんの取り巻きオークションだろ?」 部員:「めちゃくちゃ強いポケモンやレアが手に入るらしいぞ。」 部員:「あの人もいい人だよな。最高千円で小牧さんがポケモンを提供してくれるんだ。」 晃正:「なあ、それって何の話だ?」 俺が部活の朝練に行ってみると、同級生や後輩達が何かのチラシを見ながら騒いでるのが見えた。 そういえば前にもやってたよな。俺は聞かなかったけど。 すると、同じクラスの尊(みこと)が教えてくれた。 尊:「よぉ、晃正。そういえばお前は最近まで休んでたもんな。実はな、小牧亜紀って先輩知ってるだろ?」 晃正:「ああ、金持ちのお嬢様だろ(確か今日、蓮華先輩とバトルするんだよな)?」 尊:「その亜紀先輩の取り巻きが、珍しいポケモンをオークションで俺たちにくれるって言うんだ。」 晃正:「オークション?」 詳しく話を聞いてみれば、そのオークションと言うのはポケモンを生徒たちの誰かに差し上げると言うイベントで、その亜紀先輩がおじいさんや父親から もらったポケモンを品物として出品しているらしい。 今までにも何度か行われていて、最後にほしいと言う生徒が複数の時は文句なしのくじ引きで行われたらしい。 尊:「それでさ、今日のポケモンはすごいんだぜ。見てみろよ。」 尊の持っていたチラシを見ると、今日の放課後、蓮華先輩のバトルが始まってから10分後に行われるらしい。 が、ポケモンを見て俺は何か違和感を感じた。 晃正:「カビゴンにエーフィ、チリーンにドククラゲ?」 尊:「だろ?これってすごいじゃん。こんな珍しいポケモンが手に入るイベント、滅多にないよ。晃正も行くだろ?…晃正?」 俺は直感した。 このポケモン、数もメンバーも見るからに蓮華先輩のだ。 晃正:「そのチラシ、ちょっと借りてもいいか?」 尊:「いいけど、お前は行くのか?」 晃正:「悪い、今日はちょっと用事があるんだ。」 尊:「そっかぁ。分かった、それじゃまた今度のイベントな。」 その直後朝練が始まったけど、終わったらすぐ俺は先輩に話に行こうと決めた。 美香:「持ってこないつもりだったのが、結局、全部持ってきたってわけ?」 美香が目を丸くしている。 菜々美:「それにしても蓮華が目を付けられるとはね。」 菜々美はハァとため息をつきながら、腕組みして考えていた。 律子:「あたしたちは眼中になかったから油断してたけど。」 なずな:「蓮華ちゃん、本当に大丈夫?」 みんな一応心配してくれているのだ…これでも。 蓮華:「何とかね。一応ポケモンも決めてきたし、何とかなるって分かってるよ。」 クラスに入るなり、あたしは4人に囲まれたのだ。 どうやら昨夜、浅香ちゃんから知らされたらしい。 ただ、海ちゃんは私立の学校に通ってるからいないのよね。いたらもっと厄介だったかも。 鈴香と浅香ちゃんは下級生だから初めから待ち構えてはいなかったけど、多分今日見に来るだろうな。 美香:「でもさ、菜々美、今日のオフがこんな事になるとはね。」 菜々美:「いいよ、別に。あたし、久々に蓮華のバトルが見れるんだもの。蓮華は強いから大丈夫だよ。」 心配しているつもりらしいけど、実際は4人はバトルがないわけで、ちょっとホッとしているようにも聞こえた。 美香:「あのさ、やりたくないけどさ、あいつがこの学校仕切るようになったらあたしが親に行って何とかするから。」 どうやら亜紀の親の会社は大きいものの、美香の親の会社の傘下らしい。 菜々美:「まぁ、あたしたちを無視しての仕切りは無理だと思うけどね。校内コンテストもあたしたちのほうが上だし。」 菜々美と美香は美人コンテストの1位と2位の常連で、3位の常連は亜紀だったりした。 すると。 なずな:「美香も菜々美も、今回は蓮華だよ。」 楽天的というより、少しずれた事を話し始めた二人になずなが怒った。 律子:「そうよ、蓮華。亜紀はともかく、あの取り巻きには気をつけてね。」 蓮華:「ええ。」 律子となずなは何かを心配しているらしく、美香たちよりもあたしに対して心配そうに言ってくれた。 だから、あたしは気をつけてたつもりだった。 でも、次の時間の体育から戻った時のことだった。 キレイハナ:「蓮華、大変だよ!」 教室に戻ってくるなり、キレイハナがボールから飛び出して叫んだのだ。 クラスメイト:「ポケモンが喋った!?」 キレイハナが喋るのを見るのは他の生徒には初めてのことだったので、教室が一気に騒がしくなったのだ。 実際にあたしがポケモンを持ってきたのは今日と、登録した時の2回だけだったし。 クラスメイト:「あ、あたしにも見せて!」 クラスメイト:「ずるい、あたしも見たい!」 他のクラスの人:「喋ったぞ、それ。もう一回喋らないかな?」 たくさんの人が遠巻きながらこっちに進んできていた。キレイハナがもう一回喋ったら一気に近づいてくるだろうな。 美香:「あらら…」 菜々美:「あたしのデビューの時よりもすごいわね。」 なずな:「ま、分からないでもないけど。」 律子:「これじゃあたしの場合はどうなんだろう(セレビィのこと言えないなぁ)…」 この状況にはさすがに美香たちも驚いていた。ただ、アイドルデビューをした次の日に普通に登校して来た菜々美だけは反応が違っていたけど。 蓮華:「はぁ、キレイハナ、…眠り粉。」 キレイハナ:「(了解!)」 キレイハナはあたしの言葉を聞いて口だけを動かし、そしてクラスメイトたちの前に歩いていった。 そして。 キレイハナの頭の花からみんなに向かって、大量の眠り粉がばら撒かれ、生徒たちは一斉に眠っていた。 でも、これ以上ここでは会話するべきじゃなかった。 だから。 蓮華:「ここではなんだし、屋上に行くわよ。」 あたしたちはそれぞれの力などでさっさと教室を後にし、屋上に出た。 すると、屋上に出るなり、キレイハナはポーチを示して驚愕のことを言った。 キレイハナ:「大変なの、みんなが攫われたの!」 蓮華:「えぇ!?」 律子:「嘘、攫われたって…」 キレイハナ:「本当よ。あたしがボールから飛び出そうとしたけど、何かの粉がかかって、みんな眠っちゃって、気づいた時にはあたしと きっぴーとパルとディグ、ネギ、ぎょぴを除いたメンバーがいなかったの。」 美香:「でも、ボールはあるみたいね。」 菜々美:「ええ、数えて36あるわよ。」 キレイハナ:「でも、中身が違うの。蓮華出してみて。」 蓮華:「う、うん。」 あたしはボールを投げてみんなを出してみた。 すると、出てきたのは複数のキャタピーやトランセル、コイキングばかりだった。一匹だけポッポも混じってたけど。 蓮華:「…本当だ。」 キレイハナ:「でしょ!だからどうするの?みんな、攫われちゃったよ。」 なずな:「待って、もしかしたら…」 蓮華:「なずな?」 なずな:「あのさ、今朝こんなチラシを見つけたのよね。」 なずなは何かのチラシを広げた。 読むこと数秒。 美香:「明らかにこれってさ…」 菜々美:「ここにいない蓮華のポケモンばかりだね。」 なずな:「今までもあったみたいなのよ。だからちょっと気になってたけど…」 律子:「あたしも一応気にかけてたよ。でも、本当に盗んでたんだね。」 美香:「盗んでたって?」 律子:「あのね、3−Bに唯ちゃんって知り合いがいるんだけど、野生のプクリンをゲットして登録したら、 次の日にはボールにはコイキングが入ってたんだって。ポケモンをすりかえられたらしいのよ。でも、誰がやったかも分からなくてさ、 結局泣き寝入りよ。」 なずな:「あ、あたしもその話聞いたよ。」 なずなと律子が気にかけてくれた理由はこれだったわけか。…それにしても! 蓮華:「あいつらぁ…!!」 キレイハナ:「許さない。」 あたしたちが叫んだ時、背後で叫び声に驚いた人がいた。 振り返ってみれば。 晃正:「…あ、一足遅かったみたいですね。」 そこにいつの間にか、晃正君が来た。 美香:「どうしたの?あなたも授業サボり?」 実はもう授業は始まっていた。ついさっきチャイムがなったのだ。 晃正:「いえ、俺もこのチラシを見たので先輩に知らせに来たんですが…」 浅香:「遅すぎたみたいですね。」 鈴香:「あたしのクラスにも出回ってるよ。お姉ちゃんのポケモンでしょ?これ。」 晃正君の背後には鈴香と浅香ちゃんまでがいた。 浅香:「さっき鈴香ちゃんに能力で会話を聞いてもらったら、どうやらアクアだけは自分の物にするみたいですよ。」 鈴香:「お姉ちゃんにはふさわしくないポケモンだからだって。」 鈴香にも菜々美にも、音の能力者には会話を盗み聞きする力があった。こういう時しか使えない事だけど。 美香:「許せないじゃん、それ。」 美香はさっきからかなり怒っていた。あたしも怒ってるけど、美香はそれ以上かな。 菜々美:「でも…蓮華のポケモンよ。よくよく考えれば、バッジ無しの生徒がグリーンバッジを持った蓮華の、レベルの高いポケモンを 持ったとしたら…」 そんな時、菜々美が一番考えたくなかった事を言った。 律子:「暴れるわね。」 なずな:「暴れるわ、確実に。」 キレイハナもだけど、あたしのポケモンのレベルは本当に高い。 ぎょぴやダネッチだって、進化しようとすれば簡単にできるくらいのレベルにいるのだ。 敢えて進化したいときになるまで進化しないようにしてるだけらしいけど。 蓮華:「こんなことになるなんてね。でも、あたしはバトルはするわ。この6人でもどんな強いポケモンが出たって負けないもの。」 キレイハナ:「蓮華…///、照れるよ。」 美香:「それじゃ決まりね。なずなと律子は蓮華のバトルを観戦に行って、亜紀とそのバトルに立ち会う取り巻きの動向を確認して。 あたしたちはオークションを監視して、ポケモンが暴れないようにするの。いい?」 なずな:「いいよ。」 律子:「何かあったら、あたしもセレビィを公開させるわ。」 菜々美:「あたしも今日は仕事入ってないから。」 晃正:「それじゃ、俺は用事がなくなったって言って尊たちといることにするよ。」 浅香:「あたしもクラスのみんなといようかな。」 鈴香:「あたしもそうします。」 やる事が決まり、その後あたしたちはすり替えに使われたキャタピー達を律子に頼んでナナの家の庭に運んでもらった。 でも、ポッポだけはあたしはもらう事にした。 一応パルでバトルをしてゲットした。 肩慣らしにはちょうどよく、37匹目としてポッポをゲットした。 一応学校では生徒にボールを5個ずつ普及しているのだ。 美香:「それにしてもこんな事になるなんてね。…やりたくないけど、しょうがないかな。昨日調べた結果もこうだったし。 まぁ、やるか。」 蓮華たちと別れた直後、美香は携帯を出して独り言をつぶやきながらどこかに電話をかけていた。 美香:「あ、もしもし、お母さん?あのね、うん、珍しいよね、あたしから電話するなんて。…あ、彼氏の事じゃないよ。 あのさ、小牧商事の話。お母さんもさ、言ってたじゃん。そのことなのよ…実はね…」 美香の親は大会社の社長と会長をしている。主に父親が会長だが、元々研究者なだけに父親は開発などのことを社員とやっていて、 母親の方が会社を取り仕切っていた。 でも、お見合い相手の事は今まで父親が言っていて、美香はうるさく思っていたが、翼との中が公認になってからは 親子縁が修復されていた。 そして美香は、亜紀のことと関係しているのか、熱心に電話で語っていた。電話が終わった直後の美香は悪魔の微笑だったが。 そして放課後になった。 あたしはキレイハナたち7人を持ってなずなと律子と第2体育館のバトルフィールド場に行った。 ポケモンが公認され、登録された後に作られた場所で、校内でのポケモンバトルはゲット以外はここで行うように義務付けられているのだ。 そしてあたしがバトルを行うここは、試合などに使われていた。 既に噂を耳にしたためか、たくさんの生徒が見に来ていた。 そして既に、亜紀と取り巻きのうち二人が準備していた。 亜紀:「遅かったですわね。待ちくたびれましたわ。」 蓮華:「しょうがないでしょ、ホームルームが長引いたんだから。」 亜紀:「まぁ、いいですわ。どうなっても私の勝ちは決まったものですし、嫌ならここで謝った方がいいですわよ。」 蓮華:「嫌。バトルをしに来たのよ。謝る気なんてないわ。」 亜紀:「そうですか。それでは始めることにしましょう。」 審判はポケモンバトルクラブ(そういうのができた)の顧問の先生が行うのだ。 その先生は前々から全国大会に出ている(ゲームの大会、ただし弱いけど)らしく、ルールはしっかりと知っているのでここでのズルはないだろう。 あたしたちがバトルを始めようとしていた時、入り口付近にはある動きがあった。 海斗:「おっ、始まるらしいな。」 清香:「久しぶりに来てみたら、蓮華ちゃんのバトルが見れるなんてね。」 先輩二人が学校に遊びに来ていたのだ。 でも、あたしたちはそんな事は知らなかったけど。 ??:「先輩、久しぶりですね。」 ??:「清香先輩も見に来たんですか?」 と、二人に親しげに話す生徒がいた。一人は水泳部の海斗の後輩のヤツデ、もう片方は清香の体操部の後輩の綾香だった。 海斗:「ヤツデか。ああ、桜笠は強いからな。」 ヤツデ:「そうっすか?ポケモンを最近登録したばかりなのに。」 清香:「いいえ、前々から持ってたわよ。でもちょっとしたトラブルで今まで手元にいなかっただけだし。」 綾香:「それじゃ、蓮華ちゃんが強いのは事実なんですか?」 清香:「事実よ。あたしたちより強いし、志穂ちゃん以上ね。」 清香のさらっとした一言は、数秒後、体育館の中に広がっていくのだった。 先生:「今から3−A桜笠蓮華と3−C小牧亜紀による、4対4のポケモンバトルを行う。時間無制限だ。試合開始!」 亜紀:「私の一番手はこの子ですわ。雷を纏う逞しき闘志、ライボルト!」 亜紀が出したのは雷属性のライボルトだった。 蓮華:「それじゃあたしは、パル!頼むわよ!」 あたしが出したのは水タイプのパールルことパル。 すると、会場は失笑が走った。そりゃそうでしょうね。 亜紀:「桜笠さん、勝負をお捨てになったのかしら?電気タイプの水タイプを出すなんて。」 蓮華:「いいえ、これでも全然大真面目よ。」 亜紀:「そうですか。それではさっさと終わらせますわ。ライボルト、電撃波ですわ!」 電気がライボルトから放たれ、まっすぐにパルに向かって落ちていった。 蓮華:「パル、鉄壁よ!」 あたしは動じずにすぐ鉄壁の指示を出した。殻を閉じるパル。 パルは水タイプだけど、電気タイプの攻撃が全く効かないのだ。トレーナー泣かせの鉄壁貝と言われるだけに。 そして電撃波が止んだ。 すると、パルは殻を開いて笑いながら飛び跳ねていた。 亜紀:「な、なんですの!?電気タイプの攻撃が効かないなんて…」 蓮華:「あたしのパルは電気タイプの草タイプの攻撃に対しての防御力をしっかり持ってるのよ。簡単に負けないわ。」 亜紀:「そんなこと、全くありえませんわ。電気タイプに効かない純粋な水タイプなんて、聞いた事がありませんわ。」 蓮華:「あなたが聞いたことないだけでしょ。パル、水の波動よ!」 パルが水の波動をライボルトに打ち出した。真正面から受け、大きく飛ばされるライボルト。 亜紀:「ああ!ライボルト、それなら充電してスパークですわ!」 でも、この後スパークと電磁波、10万ボルトを受けたけど、パルはトレーナー泣かせの鉄壁によって電気技を全て跳ね除けていた。 既になずなと律子、先輩たち以外は唖然としていた。 亜紀:「こうなったらライボルト、電光石火で近づき、パールルの殻をこじ開けて、噛み付く攻撃ですわ!」 来ると思っていたけど、ついに亜紀は接近戦で来た。 そして爪のついた前足を器用に使って殻をこじ開けるライボルト。そして殻の中に顔を入れようとしたときだった。 蓮華:「パル、怪しい光よ!そして水鉄砲!さらに殻で挟め!」 パルは分かったと言うように殻を揺らし、怪しい光でライボルトを混乱させ、水鉄砲で遠ざけた後、頭をおもいっきり 殻で挟んでいた。 殻ではさんだ勢いがすごかったのか、ライボルトはその一撃で倒れていた。 亜紀:「ライボルト!?」 先生:「ライボルト戦闘不能!パールルの勝利!」 あたしは見事久々のバトルを1勝した。 なずな:「流石は蓮華だね。」 律子:「強いのは相変わらずね。」 あたしと律子が叫ぶと、いきなり亜紀の取り巻きが睨みつけてきた。 取り巻き1:「それはないですわ。今のは絶対に偶然が重なっただけです!本当に強いのは亜紀様ですわ。 弱い方は黙ってなさい!」 律子:「何ですって!ロゼリア!」 取り巻き1:「ふん、ガーディ、行きなさい!」 なずな:「全く…ジュペッタ、参戦して!」 取り巻き2:「うふふふ、弱いのにいいのですか?ヤミカラス!」 あたしたちは蓮華たちから離れ、別のフィールドでバトルをすることにした。 亜紀:「こうなったら次は勝ちますわよ!ナッシー、行くのですわ!」 蓮華:「ぎょぴちゃん、行ってきて!」 再び失笑が出た。 ナッシーは草・エスパータイプ。それに対してぎょぴちゃんは水タイプのトサキント。普通のフィールドでは役に立たないと言われることが多い。 亜紀:「またまた…。真面目にやらないのでしたら怒りますわよ!ナッシー、踏みつけなさい!」 蓮華:「ぎょぴちゃん、跳ねて滝登りよ!」 ぎょぴちゃんはおもいっきり跳ねて、踏みつけられる直前に宙に舞った。 亜紀:「空に逃げるなんて…。ナッシー、サイコウェーブで撃ち落しなさい!」 蓮華:「ぎょぴちゃん、水遊びで水をばら撒いて吹雪よ!」 サイコウェーブはぎょぴちゃんを掠めていた。が、ぎょぴちゃんは気にせずに水をばら撒き、吹雪でそれらを氷の粒に変え、 ナッシーに氷をかけた。 草タイプには氷攻撃は難敵のため、ナッシーは嫌がってそこから遠ざかっていた。 亜紀:「ナッシー、怯えずに攻撃するのです!卵爆弾です!」 しかし、氷攻撃を受け、背後に下がるのが精一杯のナッシーは全く亜紀の指示を聞いていなかった。 蓮華:「指示を聞いてない…」 キレイハナ:「というより、無視してるね。」 ボールからはキレイハナの声が聞こえた。 キレイハナ:「多分、ナッシーは人から貰ったポケモンか、借りていたポケモンね。しかもレベルが高い。 だから亜紀の指示をあまり聞かないのよ。」 蓮華:「なるほどね。ぎょぴちゃん、滝登りでナッシーに突っ込んで!そして角ドリルよ!」 ぎょぴちゃんは滝登りを斜めに打ち出して飛び、ナッシーに向かった。 そして角ドリルを前に向けていた。 亜紀:「ナッシー避けなさい!」 が、ナッシーは避けないで角ドリルを受け、一撃必殺で倒れていた。 先生:「ナッシー戦闘不能!トサキントの勝利!」 ヤツデ:「すっげえ!トサキントやパールルが、水タイプが電気タイプや草タイプを倒したぞ!」 綾香:「すごいです。あんな事が起こるなんて。」 清香:「あれが蓮華ちゃんの実力よ。ああ、あれ以上かな。」 海斗:「そうだな。」 ヤツデ:「あれ以上ですか…蓮華先輩がやっぱり一番強いんだなぁ。」 綾香:「そうだよね、多分。能力者としてもあたしたちの大先輩だけど、ここまですごかったんだ…」 取り巻き1:「ガーディ、火炎放射よ!」 取り巻き2:「ヤミカラス、凍える風よ!」 なずなたちのバトルも一方で行われていた。 が。 なずな:「ジュペッタ、サイコキネシスで二つの攻撃を止めて!」 律子:「ロゼリア、花びらの舞よ!」 サイコキネシスが二つの攻撃を捻じ曲げて相殺させ、花びらの舞が相性不利の中、2匹のポケモンを弾き飛ばしていた。 取り巻き2:「草技にヤミカラスが!?それなら騙まし討ちで背後に回ってロゼリアを突付くのよ!」 律子:「ロゼリア、守る攻撃で防いで至近距離からヘドロ爆弾よ!」 取り巻き1:「ガーディ、ジュペッタに噛み付いてやるのよ!」 なずな:「ジュペッタ、影分身でかわしてシャドーボールよ!」 取り巻きたちは花びらの舞に驚きながらも攻撃を繰り広げようとしたが、彼女たちの上を行く素早さと攻撃が行われた。 騙まし討ちは守る防御に阻まれ、顔面にヘドロ爆弾を受けるヤミカラスと、影分身によって噛み付く攻撃を外し、そのまま真横から シャドーボールを受けるガーディ。 一瞬のうちに勝負はつき、なずなと律子が勝利していた。 取り巻き1:「嘘!…こうなったら!」 取り巻き2:「全部出していくよ!一斉に攻撃よ!」 取り巻き二人はポケモンを一斉に出してきた。すでにルールも何もない。 しかし。 ポケモンたちが動き出す間もなかった。 律子のもう一つのポケモンがボール越しに緑の光を出して、それらを押しとどめていたのだ。 取り巻き1:「何?今のは…」 取り巻き2:「あなた…もう一体持っていたの?しかも…何を?」 律子:「それは…言えないから。」 なずな:「言う必要ないよ、律子。ルール無用の人たちに言ってもまた取られるだけよ。」 取り巻き2:「何ですって!失礼な…」 律子:「事実を言っただけ。なずな、行きましょ。」 なずなと律子はそのまま蓮華たちのほうに向かった。 亜紀:「今何か光が見えたみたい…」 蓮華:「律ちゃんだな…」 亜紀:「まぁ、いいわ。でもあたしに偶然続きで勝ったとは言わせないわ。カイリキー、行きなさい!」 今度出てきたのは、4本の腕を持つ格闘タイプのカイリキーだった。 蓮華:「あたしは…きっぴー、行きなさい!」 今度は失笑と言うより、動揺が走った。天敵軍団での勝利に続き、今度は小型ポケモンによる大型進化系とのバトルだった。 亜紀:「もうこれ以上負けるわけには行きませんし、カイリキー、岩石封じで攻めるのです!」 フィールドには無数の岩の柱が立ち上り、きっぴーを取り囲み、押さえ込もうとした。 蓮華:「きっぴー、火炎放射を地面に向かって放って飛んで!」 きっぴーはぎょぴちゃんたち水ポケモンが飛ぶ時に行う要領で、火炎放射で宙に舞ったのだ。 主にカイリキーは接近戦タイプ、反対にきっぴーは遠距離からの攻撃タイプなのだ。 それに反った勢いで、あたしは決めた。 こうなったら接近戦よ。 蓮華:「影分身でカイリキーを霍乱して、騙まし討ちで攻めて!」 亜紀:「だったらカイリキー、見破ってクロスチョップよ!」 見破る攻撃は、ゴーストタイプにノーマルタイプの攻撃を当てられるようにできる効果の他に、相手の回避率を戻す効果があった。 影分身による回避率を上げる効果を。 騙まし討ちで向かったきっぴーはクロスチョップをおもいっきり顔面に受けてしまった。 蓮華:「きっぴー!」 亜紀:「うふふ、それくらいで倒れるわけではないようね。カイリキー、空手チョップよ!そして爆裂パンチで止めを刺しなさい!」 まだ動ける状態だけど、地面に倒れているきっぴーに、カイリキーが飛びかかってきた。 蓮華:「きっぴー、炎の渦よ!」 きっぴーは炎の渦をカイリキーに放つ。が、空手チョップの勢いは炎の渦を切り裂いていた。 しかし、これはフェイク。 きっぴーは電光石火によってカイリキーの背後に飛んでいた。 亜紀:「何ですって!カイリキー、早く地震よ!」 蓮華:「遅いわよ!きっぴー、オーバーヒート!」 きっぴーは振り向きざまのカイリキーに対し、強力なオーバーヒートを放ち、カイリキーに圧勝していた。 先生:「カイリキー戦闘不能!ロコンの勝利!」 ここまで来ると、あたしの方が強いと感じたのか蓮華コールが久々に沸き起こっていた。 というのも、観客の半分以上は亜紀によって倒された生徒ばかり。自分を倒した亜紀が負けているこの姿は見ていて楽しいようだ。 と、気づくとなずなと律子がピースして、あたしに笑いかけていた。 どうやら取り巻きに勝利したらしい。 それもそのはずよね。 律子のロゼリアはセレビィに鍛えられているし、なずなのジュペッタも結構強いから。 取り巻きといえば…亜紀もだけど唖然としていて、何も言えない様だ。 が、ようやく我に帰ったらしい。 亜紀:「このまま負け続きはいけませんわ。最後のこの子であなたのポケモンを4匹とも倒させていただきますわ。 出てきなさい、ボスゴドラ!」 亜紀の最後のポケモンは鋼・岩タイプのボスゴドラのようだ。 蓮華:「あたしはパートナーで行くわ。驚かないでね。」 亜紀:「既に分かっていますけど、何に驚くのでしょうか?」 蓮華:「驚くわよ、キレイハナ、行くよ!」 キレイハナ:「了解!」 花びらの舞と共にキレイハナが舞い降りた。しかも喋ったから会場はさらに驚きと興奮が溢れたのは言うまでもない。 亜紀:「何ですの?喋れるポケモンですって!?」 キレイハナ:「あら?喋ったらいけないの?蓮華、バトルだよね。1分かかるかな?」 蓮華:「かからないわよ、多分。30秒ね。」 あたしたちは普段の調子で行くが、流石に1分、30秒の言葉に亜紀は本調子になったらしい。 亜紀:「私を侮辱するのはいい加減にしてくれません?ボスゴドラ、アイアンテールですわ!」 その頃。 美香:「体育館裏の体操部の部室を貸切にして、こんなことをしていたとはね。」 菜々美:「全くね。あ、美香、海斗先輩と清香先輩も蓮華ちゃんのところにいるそうよ。」 美香:「先輩たちが?そう、了解。」 あたしと美香は今、空にいた。 空から様子を見ることにしたのだ。晃正達下級生トリオは中に行ったけど、さすがにオークションを阻止させるのは無理なようで、今は その様子を見ているしかできないらしい。 そんな時、とんでもない強力な落下音が体育館の方からした。何か、鈍器が落ちたような音が。 美香:「今のは?」 菜々美:「さぁ、蓮華ちゃんたちのバトルの音じゃない?」 二人の言葉は正解だった。 先生:「ボスコドラ戦闘不能!キレイハナの勝利!」 キレイハナ:「よっしゃぁ!」 蓮華:「やったね、キレイハナ!」 今の音の正体、それは…。 アイアンテールを避けたキレイハナのマジカルリーフと花びらの舞と葉っぱカッターのトリプルコンボがボスゴドラがよろめかせた隙に、 蔓の鞭でボスゴドラを持ち上げ、おもいっきり振り回した挙句、縄跳びの要領で地面に叩きつけた音だった。 亜紀:「そんな…攻撃の暇が…ほとんどありませんでしたわ。」 キレイハナ:「当たり前じゃない。ポケモンリーグ優勝者のあたしたちよ。一年間離れ離れだったとはいえ、普通のトレーナーと戦って負けるほど、 落ちぶれてないわ。」 亜紀:「ポケモン…リーグ…?」 蓮華:「ええ、この話は信じられないかもしれないけど、一時期学校を欠席していたあたしたちは、あの研究所に忍び込んで爆発に巻き込まれたとき、 そのショックでポケモンのいる世界に行ったの。あたしの持ってるポケモンたちはその時にゲットしたポケモンよ。」 そう言った直後、体育館の中にいた生徒たちにも動揺が走った。 アニメやゲームの中だけの世界が、本当に存在しているのだろうか?ということを。 亜紀:「ありえませんわ!そんな話を信じる事なんてできません!」 海斗:「それができるんだよな。」 清香:「証人は幾らでもいるわよ。あなたは信じなくても別にいいけどね。」 海斗:「俺たちが言った事は事実だ。信じる信じないは自由だがな。」 蓮華:「先輩…」 海斗先輩と清香先輩も言ったことで、動揺はさらに広がっていた。 亜紀:「ですけど…」 なずな:「返すなら返してくれない?」 律子:「そうね、蓮華ちゃんのポケモンは蓮華ちゃんがグリーンバッジをゲットしてる事もあって、かなりのレベルである事は知れてるわ。 それを、バッジも持っていない普通の生徒が手にすれば、どうなるかくらい分かるわよね?」 亜紀:「な、何の話ですの?」 キレイハナ:「覚えてるわよ。」 既にキレイハナが喋っても驚く生徒はいなかった。 というより、亜紀が何かを隠している。 それを生徒たちも感じたようだった。 キレイハナ:「あの時、蓮華のポーチの中を覗いて、そして眠り粉を入れたのはあなたでしょ? ボール越しにどうやって眠り粉を入れれたか分からないけどさ、あたしの仲間を盗んだのはあなたでしょ?」 と、その時だった。 美香:「やばいよ!もう抑えきれない!」 菜々美:「蓮華たちも早く避難して!」 美香と菜々美が血相を変えて飛び込んできた。 蓮華:「どうしたの?」 美香:「オークションに出されて他の生徒の手に渡った盗まれた蓮華のポケモンたちを、普通の生徒が押さえられるわけがなくて、 命令した途端に大暴れを始めたの。もう、あたしたちの説得にも耳を貸さないで暴れてる状態よ。 浅香ちゃんの結界で押さえ込んでいる間に来たけど…。」 美香の叫ぶような声で亜紀とその取り巻きは蒼くなり、生徒たちは亜紀たちが何をやっていたのかを知ったらしかった。 が、それと共にカマイタチが放たれ、ソルルとコイッチが飛び込んできた。 破壊光線やカマイタチが乱射されるというとんでもない状況に。 すでに浅香の結界は破られ、学校中が蓮華のポケモンの暴れる攻撃でパニックになっていた。 蓮華:「ここは押さえつけるしかないようね。キレイハナ、コイッチに蔓の鞭よ!きっぴー、ソルルにアイアンテールよ!」 キレイハナはすかさずコイッチに大量の蔓の鞭を飛ばし、あたしもそれに続いた。コイッチの暴れる攻撃は抑えきれないとここが破壊されつくしてしまう。 そしてきっぴーにソルルの相手をさせて正気に戻させる事にした。 きっぴーは催眠術に似た特殊能力を持っていて、洗脳されたポケモンたちの目を覚まさせたこともできるくらいだから、ソルルを元に戻す事もできるはずだ。 美香:「キルリア、エイパム、行くよ!」 続いて体育館になだれ込んできた、はり君、アゲハ、リーフィー、ヘラクロたち虫ポケモンをキルリアのサイコキネシスで封じ、エイパムの往復ビンタで 攻撃をする美香。 菜々美:「オドシシ、バタフリー、あたしたちも行くよ!」 ダネッチやワタワタたちのようなあまり攻撃力を持っていないポケモンたちには菜々美が迎え撃っていた。 オドシシの催眠術や、バタフリーの吹き飛ばしによって。 なずな:「ジュペッタ、ムウマ、出てきて!」 なずなもゴーストタイプを駆使してサマヨールのよまやチリーンのチリリ、エーフィのフィルを押しとどめていた。 海斗:「俺たちも行くぞ、オーダイル、ドククラゲを捕まえろ!」 清香:「ええ、トゲチック、ハクリュウに天使のキッスよ!」 先輩たちの協力もあり、事態は早々と収まりそうだ。 ここに鈴香たちの姿はないけど、コイッチを抑えながら美香に聞くと、避難活動を手伝っているらしい。 あたしたちは校内で次々に出てくるあたしのポケモンたちを押さえつけ続けた。 そして新しいモンスターボールでゲットを繰り返していく。 一度ゲットしたみんなだ。あたしたちが押さえつける事で、目が覚めたり暴走を止めたりして、ようやくおとなしくなってくれていた。 わけの分からない状況にもっていかれ、蓮華以外の生徒の者に勝手にされたりして、気が動転していた者が多いのだ。 が、しかし。 そうでないのもいた。 ダーテングとカビゴンが全く関係ない生徒たちに襲い掛かろうとしていたのだ。 二人の場合は特別だった。 たねねは過去の経験があるし、ゴンは睡眠中を起こされたからだった。 でも、それは大丈夫だった。 律子:「みんなに手を出させない!セレビィ、癒しの鈴で目を覚まさせて!」 律子はもう迷っていなく、セレビィを出してカビゴンたちをおとなしくさせていた。 律子:「ロゼリア、そのまま眠り粉を二人に。セレビィは他のポケモンたちにも癒しの鈴をお願い。 これ以上、学校が破壊される事を防がなきゃ。」 律子がセレビィを出した事に驚く生徒は多かった。が、この状況でそれらを聞こうとするものはなく、 律子はいつものように行動する事ができていた。 そしてポケモンたちの大暴れは鎮圧されるのだった。 そして残りは一体。 亜紀が勝手に所有したミロカロスのアクアだけだった。 蓮華が取り返しに行こうとしたその時。 亜紀:「ふぅ、終わりましたのね。全く、自分のポケモンをおとなしくさせられないなんて、トレーナー失格ではないのですか?」 と、亜紀があたしたちの前にやってきた。 蓮華:「それをあなたが言えるの?あたしの最後のポケモン、返して。」 亜紀:「何のことですの?全く身に覚えがありませんわ。」 蓮華:「嘘を言わないで。あたしのアクアを返して。というより、アクア、出てきて。」 あたしが呼ぶと、亜紀のボールからアクアが出てきた。 亜紀:「それは私のミロカロスですわ!勝手に自分のものにしないでくれませんの?」 蓮華:「それはアクアに聞いて!あなたに対してこんなに敵意を向けているのよ。それでもあたしに懐いているこのアクアが あなたのポケモンだって言えるの?」 亜紀:「おだまりなさい!そんなあなたに相応しくないポケモンは…」 蓮華:「黙るのはあんたよ!ポケモンに相応しいとか相応しくないとかはないの!あんたが勝手に決めてるだけじゃない!」 先生や生徒たちはアクアことミロカロスがあたしに擦り寄り、亜紀に敵意を示す事で状況を把握するのだった。 蓮華:「あなたは自分が間違ってると思ってないのね。あたしのポケモンはあたしが好きで、だから一緒にいてくれるし、ゲットもできたの。 それを横から取ったとしても、いいことなんて全くないのよ。この破壊された学校を見ても分からない?」 亜紀:「それは…」 美香:「蓮華、それくらいにしておいたら?」 そこに美香が割り込んできた。 蓮華:「ちょっと美香!」 美香:「蓮華、ここはあたしに任せて。亜紀に言っとくけど、父親の力を借りてこの学校を元に戻そうとしても無駄よ。」 亜紀:「どういう意味ですの?それは。」 美香:「簡単な事よ。あたしが親に頼みたくないけど頼んだから。お母さんもね、最近おかしいと感じてたみたいだし。 傘下の会社の金遣いが妙に荒くなってるって。でも、もうあなたの親の会社には、うちの親は当分お金の支出はしないそうよ。 金遣いが荒くて、傘上の会社にも影響が出てるから、当然よね。あ、この破壊された修理はお母さんが払って直してくれるって。」 美香がそう言うと、亜紀は何がどうなったのか理解し、青ざめてその場を帰ったのだった。 あたしがせっかく説得しようとしていたが、どうやら亜紀の事は同じお嬢様の美香のほうが一枚上手だったようだ。 数分後、たくさんの修理業者とあたしたち能力者の力で学校は明日からも通学が可能な状態になった。 壊されてしまった体操部の部室や体育館はまだかかるらしい。 それと、亜紀は転校した(取り巻きたちはおとなしくなった)。 いや、学校にいられなくなったのだ。 今までのオークションも、実は生徒から盗み出していた事が判明したためだった。 持ち主の元に帰れたポケモンたちは、とっても喜んでいた。 律子も言ってたけど、唯ちゃんはプクリンが帰ってきて喜んでいたらしい。 それから。 あたしへのお咎めはなかった。 ただ、逆に挑戦者の数は増えた。美香や菜々美たちまでが強いって分かり、美香たちもそういう目にあっているらしい。 律子もセレビィを登録していたし。 それから昨日、家の都合で海外に行っていたあたしの彼氏、涼治が帰って来た。 涼治とはいい関係が続いているからいいけど、体育館が使えず、次の試合への練習ができなくなり、試合の参加が難しくなった事には 複雑な表情を浮かべていたけど。 でも、これからはあたしのポケモンとの学校生活がようやく始まるのかもしれない。 このまま、いいことづくしだといいかな。