ホントならこんなはずじゃなかったのに…。 本当だったら今頃、あたしたちは楽しんでいたはずなのに…。 それは今は全くできなくなっていた。 なずな:「美香、落ち着けないのは分かってるけど、落ち着いたほうがいいよ。」 美香:「う、うん、そうなんだけどね。」 今、海の上では翼先輩や蓮華が必死になって涼治君を探してる。 あたしだけ助かっても意味がないっていうのに、あたしは足を怪我しちゃったから安静にしなきゃいけなくて、 本当だったら現実世界で旅行に行くはずだったなずなが、わざわざここに来て、あたしと一緒にいてくれていた。 なずな:「美香の気持ちは分からないわけじゃないよ。でも、落ち着かなきゃ駄目。」 美香:「うん。」 なずなは何回も言い続けてくれている。 だって、あたしも出て行きたい衝動を我慢しているくらいだから。あたしだって、涼治君を探したいよ。 涼治君、あたしの言った「化け物」って言葉に反応したみたいだし、原因はあたしにあるのに…。 お願い、無事でいて! 第2章 3.過去との決別 「何であんたが生まれてきたのよ!あたしの人生を返しなさいよ!この化け物!」 「あたしの目の前からさっさと姿を消しなさい!」 はっとして目が覚めた。 夢だったか…。 どうして今頃になってあんな夢を見たんだろう…。 ふと時計を見上げると、何と10時を針が指していた。 昨日、遅くまでポケモン医療と現代医療についての勉強をしていたせいか、寝るのが遅くなってしまった。 そのせいで約束の9時をすっかり寝過ごしてしまったらしい。 涼治:「ヤバイ!」 俺は急いで支度をして家を飛び出した。 涼治の母:「涼治、忘れ物はないの?」 が、2階から母さんの声がした。 涼治:「えっ?大丈夫だよ、俺はそんなに子供じゃないからさ。」 涼治の母:「そう、旅行、楽しんできなさいよ。」 涼治:「分かってるって!」 俺はいつまでも子供じゃないんだ。でも、優しいだけマシかな。あの人とは違うから…。 それより急がないとな。 今日はせっかくのダブルデートを含めたアサギ旅行の日なんだ。 あれは数日前のことだった。 涼治:「ダブル旅行?」 美香:「うん、どう?行かない?」 蓮華:「行こう!絶対行こう!」 蓮華と美香に呼び出されたかと思えば、いきなりこう言われたのだ。 「次の部活休みを利用してダブルデートをかねたアサギ旅行をしないか」と。 俺の所属しているバスケ部は、最近蓮華が他のクラスの亜紀と行ったバトルでの、亜紀の卑怯な行為のせいで体育館や部室が破壊され、 部室にあったものがほとんど使えなくなり、本当なら参加するはずの練習試合も出れそうになくなった。 だから今回は残念だけど出ない方向で夏の地区大会に望む事になった。 それで部活休みが夏休み始まってすぐにあるわけだけど…。 涼治:「でもさ、次の休みは自己練習をしようと思ってたんだけど…」 蓮華:「え〜、せっかくの旅行なのに…」 美香:「もう、涼治君、最近蓮華とデートしてないじゃない。それに、翼先輩も同行するからバスケについて、色々教わればいいじゃない。」 結局俺は二人に丸め込まれ、何故かこの話を聞きつけていた晃正と尊に、 晃正:「先輩は遠慮なく行って来てください。」 尊:「部活の方は俺たちで頑張ってますから。それに、涼治先輩は受験生でもありますから、今のうちに休みを満喫してきてください。」 と言われてしまい、行かないとは言えない状態になってしまったのだ。 でも、それにも拘らず俺は、蓮華の家に9時に、という約束を破ってしまった。 蓮華と美香はともかく、翼先輩を怒らせたらヤバイ。きっと荷物持ち決定だ。 そう思いながら急いで蓮華の家に来たのだが、様子がおかしい。 蓮華や美香の声が聞こえないし、翼先輩の力も感じない。 翼先輩の力は水翼という水と風を融合させた力らしいから、冷風使いの俺は翼先輩の存在を感じれるはずが、家にはいないようだ。 約束の時間を間違えたかな? そう思いながらインターホンを鳴らすと、ガッカリした状態の美香が出てきた。 涼治:「…悪い、遅くなった。」 俺は一応言ったが、でも美香は、 美香:「別に、怒ってないわよ。…入ったら?」 と、かなりガッカリしたように言った。 涼治:「なぁ、どうしたんだ?」 ちょっとしてから俺も中に入り、訪ねてみた。 すると。 美香:「あのさ、今日の旅行、延期みたいよ。」 涼治:「え?」 流石に戸惑うしかなかった。 どうやら、蓮華は突然鈴香の祖父に呼ばれたらしく、出かける羽目になったらしい。 鈴香の祖父は一応蓮華の血のつながってない祖父なんだけど、向こうはセイレーンの一族で孫は鈴香のみらしく、一応血がつながってないものの、 鈴香の義理の姉が蓮華と言う事で、鈴香の祖父は蓮華の祖父にもなったらしい。 蓮華にも鈴香にも溺愛しているらしく、蓮華は断るわけにはいかなかったと言う。 そして、同時に翼先輩は家の都合というか、親の主催したパーティに参加する羽目になったという。 翼先輩と美香は親が大会社の社長をしているのだ。突然パーティに連れ出される事も少なくないらしい。 というわけで、お互いのデート相手がいなくなったから、俺たちは旅行を延期される羽目になったのだ。 美香:「一応さ、2泊3日の予定でしょ?明日行って、1泊2日にしようかと思ってるんだけど…」 涼治:「でもなぁ、俺の家、今日の午後から明後日の午後まで誰もいなくなるんだよな…」 だから旅行に行けるわけなんだけど…。 美香:「ああ、聞いてるよ。涼治君の両親の10回目の結婚記念日だったわよね?」 涼治:「うん…。」 だから邪魔するわけには行かない。 美香:「…行く?」 涼治:「えっ?」 美香:「もうこうなったらさ、あたしたちだけで先に行かない?どうせお互い、恋人は別にいるんだから。 先に旅行に行ったって、恋が芽生えるわけでもないでしょ?」 涼治:「…ま、まあな。」 そんなわけで、俺たちはゲートを潜った。 お互い、恋人に手紙を書き残して。 それにしても…蓮華の家はものすごく無用心だよな、俺たちに家の留守を頼むなんて…。 そして俺たちはナナからケーシィを借り、テレポートでアサギシティに行った。 止まる場所はアサギのホテルで、一応部屋は別々に取った。 ??:「アサギに旅行に来た能力者さんって、あなたたちのことですか?」 と、そこにやってきたのは俺たちより年下っぽい子だった。 美香:「あなたは?」 ??:「申し遅れました。あたしはアサギジムトレーナーのコナツといいます。ジムリーダーのミカンさんから よろしくと言われてきました。旅行中、もし気が向いたらジム戦をやりませんか?というお誘いなので。 それでは。」 そう言うと、コナツちゃんは帰っていった。 涼治:「ジム戦か。…俺はパスかな。」 美香:「あたしも。蓮華がやりたいって言うかもね。」 涼治:「そうだな。」 それからしばらくして、俺たちは暇が続き、暇つぶしにボートに乗る事にした。 別に、恋人なわけじゃないけど…どうやら旗から見ると俺たちは恋人そのものに見えるらしい。 色々と冷やかされてしまった。 美香:「全く、別にこんなゴムボートじゃなくても、水上スキーとか頼めばよかったんじゃない?」 涼治:「けどさ、それは蓮華たちと合流してからの方が楽しいだろ?」 美香:「それは…そうだけど…って、ちょっと、ボート、流されてない?」 涼治:「えっ?あっ!」 気づいた時には、ボートはどこかの海流に乗ってしまったらしい。さっきボートを借りたときにも散々言われたにも拘らず。 そして、運の悪さは続くものだった。 俺たちに向かって、俺たちを飲み込むほど大きな津波が迫ってきていた。 美香:「きゃあ〜!」 涼治:「任せろ!俺の力で…」 美香:「お願い、こんな化け物みたいな津波、何とかして!」 涼治:「え…」 俺は「化け物」という言葉に、無意識に反応していた。 そして力が出ずにいて…、俺たちは津波に飲み込まれていた。 美香:「…あれっ?ここは?」 あたしが気づいた時、あたしのホテルの一室にいた。 なずな:「気がついた?」 美香:「なずな?どうしてここに?」 なずな:「美香と涼治君が野生のホエルオーの「蓄える」と「吐き出す」でできた海流と津波に巻き込まれてから行方不明になったって、 ジムリーダーのミカンさんからナナちゃんに連絡が入ったのよ。それを聞いて、蓮華も翼先輩も予定を繰り上げて、あたしや律子、海ちゃんと一緒に ここに来たの。そうしたら、美香が近くの岩場で倒れてたって聞いて、それでここに運んだの。」 そうだったんだ…、悪い事をしちゃったな。 そう思い、立とうとした時、あたしは足に激痛を感じた。 なずな:「無理に動いちゃ駄目。美香は岩に足を挟んでたんだもの。波の威力によって、美香の足が尋常じゃない力で岩場に挟まれちゃったみたい。 あたしの能力がなかったら、岩を少しずつ切り崩す以外に美香を助ける方法はなかったくらいよ。」 美香:「ごめんね、心配かけて。…涼治君は?」 あたしが聞くと、なずなはまだ行方不明だと教えてくれた。 そして、今に至る。 涼治君は…今どこにいるんだろう?蓮華や翼先輩や、律子や海ちゃんも探してるって言うけど…。 涼治:「ん?うぅ…」 頭が朦朧とする。俺は…津波に巻き込まれて…助かったのか? ??:「ねえねえ、起きたみたいだよ。」 ??:「そう、早く目を覚まさせて追い出しましょ。」 ??:「どうでもいいけどさ、めんどくさくないか?」 誰かがいるみたいだ。俺の近くに3人くらい。 涼治:「ん…、ここは?」 何とか起き上がると、自分のそばには同じくらいの年の女子が二人、男子が一人いた。 ??:「ここ?無人島…かな。大丈夫?あなたはこの島に打ち上げられたの。」 教えてくれたのは儚げな表情の少女だった。 涼治:「そうか…、津波に巻き込まれてそれから…」 ??:「津波?そんなものなかったわよ。確か…ホエルオーのくしゃみよ。最近ホエルオーとホエルコの大群がアサギのほうに行ったから。 そんな事も知らなかったの?馬鹿みたい。」 今度言ったのは、かなり強気な感じの少女だった。 涼治:「そうか。助けてくれてありがとう。礼を言うよ。」 ??:「別に聞く気はない。さっさとここから出てけば。」 最後のはかなりおとなしそうな少年だった。俺の事を煙たそうに見ていた。 しかし。 ??:「ちょっと、気がついたばかりなんだよ!ルリもエイクもすぐに追い出しちゃ駄目だよ。」 儚げな少女は俺の前に立ちはだかって言っていた。 すると、他の二人はあきらめたようにその場を去っていった。 ??:「ごめんね、ここ、あたしたちだけの島だから、二人とも他人がいてほしくないみたい。 でも、少しくらいはあなたが調子を取り戻すまで、ここにいればいいよ。」 涼治:「ありがとう。…俺は涼治。君は?」 ??:「あたしはアリサ。よろしく。」 俺はアリサにこの島を案内してもらうことにした。 俺が流れ着いてから、ずっと看病してくれたのも彼女らしい。 アリサ:「もう大丈夫?」 涼治:「あ、ああ、一応。」 アリサ:「よかったぁ。」 アリサは俺が大丈夫だというと、すごくホッとした表情をしていた。 なんか、蓮華とは違うタイプの好みの対象だなぁ。 この島はアサギの海図には載っていない、小さな島の一つらしい。 ただ、数人の男女で住むには十分な大きさらしいが。 そして、この島には結構野生の南国ポケモンが多いようだった。 涼治:「君たちはさ、どうしてこの島で暮らしてるんだ?」 アリサ:「それはこの島が…これを聞いたら数日後には出てってね。」 涼治:「えっ?」 アリサ:「この島にいていいのは、同じ境遇のものだけ。あなたはどうせあたしたちとは違うだろうし、それに帰ってきてほしいって 思ってる人がいるはずだもの。」 どうやら、アリサたちは訳ありらしい。俺が質問すると、俺が聞くと思っていたのか、ため息をついていた。 アリサ:「この島はあたしたち3人は捨て島と呼んでいるの。」 涼治:「捨て島?」 アリサ:「ええ、この島に住んでるあたしも、エイクも、ルリも、親に捨てられてるから。海に捨てられたり、わざわざ適当な島としてこの島を 選んだりしてね。そして流れ着いたのはあたしたち3人。」 涼治:「…」 俺は、返す言葉がなかった。 アリサ:「分かったでしょ?あなたはあたしたちと違…」 涼治:「違わないよ。」 アリサ:「えっ?」 違わない。 違うわけがない。 俺も同じだから。 俺も…親に捨てられた過去があるから。 涼治:「違わないよ。俺も同じだから。もう少し、ここにいてもいいかな?」 アリサ:「…そうなの。でも、あなたはその様子だと、今は待ってる人がいるはず。だから、もう少しだけよ。」 何となくだったけど、俺はこの島にもう少しいたほうがいいと感じた。 だから、俺は残る事を決めた。 ??:「あなたもあたしたちと同じだって?」 ふと気がつくと、ルリがいた。 ルリ:「でも、あたしはあなたを認めない。あなたとあたしたちはまだまだ違うもの。」 と言って、彼女は手を地面にかざした。 すると、手からは炎が出ていた。 ルリ:「ねっ?分かったでしょ?あたしたちは人とは違うの。だから…」 涼治:「…違わない。ここにもいたんだな、多分、同じだ。捨てられた理由も。」 俺はその炎を冷風で消した。それを見て、ルリは驚いたような顔をしていた。 ルリ:「今の…あなたが?」 涼治:「ああ、教えてやるよ。俺の彼女もまだ知らないんだ、詳しい事は。俺の今の親しか知らないし、誰にも話してない事だけどさ。」 俺は本当なら哲也先輩みたいに背中に羽根があった。 それはまだ2,3歳の時で、力のコントロールができなかったため、羽は年中出ているままだった。 それが元で、俺の実の父さんと母さんは、喧嘩して、離婚した。 「どうして普通の人からこんな化け物が生まれてくるのよ!」 俺はいつもそう言われ、喧嘩の時は俺がいても物を投げ合っていた。俺に当たっても知らん顔だった。 普通、能力者には氷雨さんみたいな人がいるはずだったけど、それは俺がその町にいたときはいなかったのだ。 能力者自体、その町にはいなかったから、俺は化け物扱いだった。 結局、実の父さんは失踪し、母さんは俺の面倒を見る羽目になったらしい。 でも、母さんは俺が生まれる前は父さんとラブラブだったらしく、俺が生まれた事でこじれたと、俺が生まれなかったら、 幸せな生活ができたはずだと、俺は化け物で疫病神だと言われ続けた。 翼は成長するにつれて大きくなり、母さんは化け物を見せびらかすような事で評判を落としたくないと言い、 俺は家の中のすごく狭い部屋に監禁され続けた。 今でも狭くて真っ暗な部屋に入ると恐怖で怯えてしまうし、化け物という言葉に無意識に反応してしまう。 それはこの時の事が原因だと思う。 そして7歳の時だった。 小学校にも通わせてもらえず、俺はいつも冷水に放り込まれたり、暴行を加えられたりしていた。 食べ物だってろくに貰えず、腐ったものを投げつけられる始末。 なのに、能力者だからか、体が丈夫であり、それで死んだりすることがなかった。 それを母さんは、翼が栄養分だと思ったらしい。 俺はどうやって手に入れたのか知らないが、母さんに液体窒素をかけられ、翼を粉々に壊され、そのまま雪山に取り残されたのだ。 俺は、この時に捨てられたのだった。 でも、そんな事を俺は知らず、翼がなくなったことによる痛みに耐えながら、歩き続け、雪山を散歩中の氷雨さんに助けられたのだった。 ルリ:「ふぅ〜ん、それで施設に預けられて、今の両親に引き取られたのね?力が冷風なのは、冷たいところに放置させられ続けたからか。」 涼治:「ああ、俺の今の両親はさ、母さんが子供を産めない体だったんだ。それで、俺が引き取られた。」 俺は保育園とかには行ってなかったし、小学校も3年から入学しているんだ。 でも、それは必死に勉強した結果だ。 母さんと父さんが切り盛りしている、小さな病院の跡を継ぐために。 ルリ:「そう。それじゃ、早く帰るべきよ。ここにはいるべきじゃない。」 涼治:「だけどさ、俺が捨てられたのは真夏に大雪が降った普通じゃありえない日。今日なんだ、それ。 だから、今日はここにいてもいいか?」 ルリ:「どうして?」 涼治:「な、何となくかな?俺、能力者の仲間はいるけどさ、同じ境遇の仲間に会ったのは初めてだからさ。」 アリサ:「ルリ、いいんじゃない?あたしはいいよ。」 ルリ:「アリサ、そんなこと言ったって…」 その時だった。 エイク:「ルリ、アリサ、大変だ!変な奴らが来た!」 エイクが大慌てで走ってきたのは。 俺も一緒になって海岸に行ってみたら、そこには大型船があり、怪しげな白装束の奴らが島に入ってきていた。 ルリ:「ちょっと!あんたたち、何者よ!」 と、その中の一人がルリの声で俺たちに気づき、リーダー格そうな男がやってきた。 ??:「君たちが能力者かい?」 ルリ:「だったら何よ。」 ??:「我々と一緒に来てもらおうか。」 男たちは強引そうだった。 だから俺は冷風でけん制してやった。 涼治:「何者か分かんない奴らに、勝手に指示されるのは嫌いなんだ。」 ??:「風使いだと?そんな奴、いたとは聞いてないな。まあいいだろう。私たちはフーディン教のものだ。」 アリサ:「フーディン教ですって!?」 男が正体を明かした時、突然アリサが驚きの声を上げた。 男:「知ってるのか?」 アリサ:「知ってるも何も、あたしの家はフーディン教の信者よ。でも、あたしの氷の力を知ると、氷タイプは家にいたらいけないって言って、 それであたしはここに捨てられたのよ!あたしを捨てた人たちが、今度は一緒に来いですって?行くわけないじゃない!」 男:「それならば、強引に連れて行く。俺たちはお前たちの能力をフーディン様に移したいと思ってるのでね。」 よく分からないが、どうやらポケモンの世界にも、宗教団体はいるらしい。 そしてその一つのフーディン教が、俺たちの能力を奪い、フーディンに与えようとしているようだ。 それは勝手に喋るこいつらによれば、宗派の勢力を広げるためらしい。 そんなことはさせるもんか! 涼治:「勝手な事は言わせない!俺は、俺の仲間を守る!ライボルト、ガラガラ、行くんだ!」 俺はポケモンを出して対抗しようとした。。 しかし。 男:「ふっ、それがどうした?ユンゲラー、ケーシィ、サイコウェーブとサイケ光線!」 彼らはたくさんのユンゲラーやケーシィを出し、俺に攻撃してきた。 流石にこれだけの数は、相手にできなかった。 でも、ガラガラの砂嵐、ライボルトの電磁波、そして俺の冷風は彼らに対抗し続けた。 アリサ:「涼治君、どうしてよ!あなたは元々関係ないのに!」 ルリ:「そうよ!あんたはこの島とは無関係!」 エイク:「お前が俺たちを守る義務なんてないだろ!」 涼治:「あるよ。俺は守りたいんだよ。俺と同じように生まれ、同じような目に遭ってきて、でも、俺とは違ってるけどさ、 それぞれ自分の力で生きてきたみんなが、勝手に知らない奴らの手で人生を決められていくのが。 俺は過去とは決別できてない。でも、俺は、この力があることは誇りなんだ!これでみんなが守れるんだから。」 俺は力を出し続けた。 でも、10体のユンゲラーのサイケ光線を受け続けているのは長く続かなかった。 男:「ほぉ〜、そこまでの力ならこの薬で十分に別の化け物として俺たちの組織の用心棒になってもらいたいものだね。」 俺は、奴の言葉で無意識に力を止めてしまっていた。 そして攻撃を受けてしまった。 男:「どうやら、化け物という言葉が弱点のようだな。しかし、この薬は君を強くするよ。俺たちと行かないか?」 俺はサイケ光線の副作用「混乱」によって、頭が朦朧とし、男の誘いの声が、肯定された、俺への呼び声に聞こえていた。 涼治:「強くなれるなら…」 俺は男の手をとりそうになっていた。 アリサ:「駄目!」 でも俺は、アリサの声で目を覚ましていた。 アリサ:「駄目だよ。あたしは決めたもん。あたしは一人で生きていく事になっても、捨てられた過去を振り返らないって。 あたしたちを守るんでしょ?最後まで信念を持ちなさいよ!そんな言葉で惑わされるほど、涼治君の信念って、軽いものだったの?」 涼治:「それは…」 ルリ:「確かにそうよね。軽いとしか思えない。あたしも一人で生きていくって決めた時、振り返らない事にしたわ。 それがあたしを強く支えてくれた。これからもよ。今はこの3人で行くけどね。」 エイク:「俺たちは、勝手な奴らに振り回される人生を送る気はない!この水の力は、俺の誇りだ!」 アリサ:「涼治、あなたにはあたしたちにはいないけど、待っててくれる人がいるんでしょ?その人たちは、あなたを受け入れてるんでしょ? だったら、過去を振り返っては駄目よ。決別して、強くならなきゃ!あたしたちにそれを今、教えてくれたばかりじゃないの!」 俺は、この島に残っていなきゃいけなかった理由が、今分かった気がした。 俺はこの島で3人に会い、俺も3人も、何か、それぞれの影響を受けていたのかもしれない。 と、気づくと俺たちは、奴らに囲まれていた。 男:「青春はそこまでだ。どう叫んだとしても、君たちの運命は変えられなかったのだからな。おとなしく、一緒に来てもらおうか。」 奴らは、ジリジリと俺たちに近づいてきていた。 ここまでか…、そう思ったときだった。 アリサ:「あたしはどうなっても、あんたたちの思うようにはならないんだから!あたしは、あたしは氷の能力者として生きていくもん!」 アリサの叫びと共に。 ??:「ようやくか、遅かったけど、ようやくのようだな。」 そういう声が島中を響いていた。 男:「誰だ!」 男たちが辺りを見回しているが、誰も出てこない。 その代わりに、俺たちには変化が訪れていた。 俺たち4人と俺のポケモンの周囲の様子が変わり始めたのだ。 ルリ:「一体、何よ…」 そして男たちが慌てた顔を見えたのが最後だった。光と共に俺たちはいつの間にか、アサギシティの海岸にいた。 ルリ:「ここは…?」 アリサ:「アサギ…シティよね…?」 エイク:「一体何が起きたんだ?」 俺たちは何が起きたのか分からなかったが、俺たちの前に、誰かがやってきた。 ??:「ようやく見つけたわよ。」 ルリ:「誰?」 ??:「あたし?あたしはあなたたちを導くものよ。そこの風使い君なら分かるでしょ?」 いきなり問いかけられて、俺は戸惑った。 でも、導くものとしたら一つしかない。 涼治:「もしかして、能力者を導く使命を授かった妖怪ですか?」 アリサ:「妖怪?」 ??:「ええ、あたしは皿数え。この世界の能力者のうち、ジョウト地方を受け持っているのがあたしよ。 あなたたちが自分が今後、能力者としてどうするかを決めるまでは手を出さない事に決めていて、ずっと見守っていたの。 でも、あんな事が起きて、アリサちゃんがさっき叫んだでしょ?それで、もういいかなっと思ってね。」 目の前の女性は、下半身がお皿が積みあがった状態の姿に変わっていた。 これが本体だな。 皿数え:「あなたたちはこれからあたしが面倒を見るわ。能力者としてのレベルはそこそこあるけど、自分の今後を道を決めるまでは。 あなたたち能力者はこの世界では勘違いされる事も多いけど、そこにいる涼治君の彼女である子は草の力を癒しの力にして、 つらい思いをしたポケモンを救っていた。そんなことができるように、あなたたちをこれからあたしが見守り続けるためにも、 あたしはあなたたちの面倒を見ていきたいの。勝手な事だけど、駄目かしら?」 多分彼女の使命だから、ここで3人が断っても、3人はさっきの奴らよりも厄介な人に捕まった事になるだろうな。 が、3人はそれを受け入れていた。 ルリ:「あんたのことはよく知らない。でも、あんたを信じてみたいかなって思うな。」 エイク:「ああ、あんたの目は、そこの涼治の目にそっくりだ。こいつが教えてくれたみたいに、あんたも教えてくれそうだからな。」 二人はそう言っていた。 そして、皿数えは3人をアサギの街にある、彼女の経営しているレストランに連れて行くと言っていた。 当分はそこで働きながらだという。 でも、3人は嬉しそうだった。 自分たちの生きる道がいきなり突然決まったにもかかわらず、3人は喜んでいた。 それは、多分、俺の新しい両親が決まった時の喜びと同じだろうな。 そして、別れのときが来た。 俺は皿数えから、ホテルにみんながいる事を教えられたのだ。 俺が3人と別れて歩き出すと、アリサが追いかけてきた。 アリサ:「待って。」 涼治:「どうしたんだよ。」 アリサ:「ありがとう。」 涼治:「えっ?」 アリサ:「あたし、あなたのおかげでこれからも頑張っていけそうだし、あなたがあたしと会った事があたしのこれからを変えてくれたと思うの。 あなたに会えてよかった。だから…」 アリサは俺にキスをしていた。 涼治:「…!!!」 アリサ:「またどこかで会うことになると思うけどね。それじゃ!…恋人がいなかったら、付き合いたかったな。」 アリサは走っていった。 俺は彼女が見えなくなるまで、その場を離れる事ができなかった。 数時間後、俺は蓮華たちと再会した。 蓮華は泣きながら喜んでいて、美香は泣きながら謝ってきて、そして翼先輩におもいっきり叱られた。 そんな時だった。 蓮華:「涼治?背中…羽があるよ。」 涼治:「えっ?」 俺は背中に手を向けた。 すると、昔粉々に砕け散ったはずだった、能力でできた白い翼が背中についていた。 涼治:「これって…」 氷雨:「何があったか知らないけど、どうやら過去との決別ができたのね。」 気づくと氷雨さんの姿があった。 様子からして、俺のことを聞いて駆けつけたんだと思う。 氷雨:「何があったのかは、いつか話してくれればいいわ。でも、あなたが過去との決別を果たせてよかったわ。」 蓮華:「過去?涼治、何があったの?」 氷雨さんの言葉に蓮華は反応している。 蓮華:「涼治、話してくれるよね?」 涼治:「…いつかな。いつかきっと、話してやるよ。」 いつか話す。 冷風使いから、風使いとしてようやく復帰した俺は決めた。 いつか話すから、それまで待っていてくれよ、蓮華。    《おまけ》 数日後。 俺たちは再び、ダブル旅行をした。 その時に寄ったレストランで、3人と再会した。 どうやらウェイターとウェイトレスをしているらしい。 大変そうだけど、島で見た表情とは違って明るかった。 蓮華の姿を見て、ルリとエイクは俺に目で合図をしていたが、アリサだけは違った。 あれは嫉妬かな。 蓮華の姿を見て、ちょっとムカッとしているのが分かった。 美香:「あれっ?涼治君、知り合いでもいたの?」 涼治:「いや、別に。」 蓮華:「涼治?隠さないでね。今話さなくてもいいけどね。すいません、注文お願いします!」 蓮華はそう言ってウェイトレスを呼んだ。 すると来たのはアリサだった。 俺は冷や冷やものだった。 しかも。 アリサ:「それでは注文の品をお持ちします、涼治君と皆様、ごゆっくりお過ごしくださいね!」 アリサは普通に俺の名前を呼んで、その場を後にした。 そして、会話は普通に途絶えていた。 蓮華:「…涼治?」 涼治:「…」 蓮華:「今の人、知り合いなの?妙に親しげだったよね?あたしの知らない間に、何があったの?」 蓮華の声はかなり低く、翼先輩と美香はすでに、別のテーブルに移っていた。 涼治:「あのさ、落ち着いてくれよ。」 蓮華:「落ち着いてるよ。話してね。」 目だけが笑っていない笑顔で、蓮華は俺に問いかけていた。 チラッとルリたちを見ると、エイクの口がご愁傷様と動いていた。 数時間後、島でのことを話し、アリサたちのことを打ち明けたが、この旅行が終わるまで、蓮華の機嫌は収まらず、 俺は散々使い走りにされるのだった。 でも、キスのことは言えない、いや、言わなかった。 あれは言うべきじゃないな。俺の思い出だから。 俺が過去との決別ができた、本当の理由かもしれないから。