審判:「ガルーラ、ゴローニャ、戦闘不能!よってこの勝負、ジムリーダー、ナナの勝利!」 今日で10人目。 久々に挑戦者がこぞってやってくるとは思わなかったけど、まだまだあたしのレベルには達してないかな。 あたしと、パートナーのバルビーとイルミーには勝てなかったみたいだし。 でも、本当に久しぶりかな。 このグロウタウンにトレーナーがやってきて、そしてあたしに挑戦に来るなんて。 聞くところによると、カントウ、ジョウト、ホウエン以外の地方のリーグが終わったから、そこの出場者たちが あたしの話を聞いてやってきたらしい。でも、はっきり言って弱かった。 バルビーとイルミーを出したからって炎タイプや飛行タイプを出してきて、バルビーの電撃攻撃や、イルミーの水攻撃で 倒れていくなんて、相手を侮りすぎだったから。 それにしても、今日は平和だなぁ。 あたしがそう思っていたときでした。 明らかに蓮華ちゃんたちとは違う足音がゲートを通って、どこかに行くのを感じました。 あたしが目の前にいたけど、その少年はあたしに気づかず、いや、気づけずに出て行った。 ゲートをこっそり開ける音がした時点で、あたしは彼があたしに気づけないようにしておいて、正解だったでしょう。 でも、彼は一体何者か、この時はまだあたしは分からなかった。 ただ、ジム戦で疲れているところを突かれるのが嫌だからって、彼をこのまま外に出した事は、あたしは失敗だとは感じていた。 また何か、この世界で事件が起きようとしている、…のかもしれない。 第2章 5.ナナの秘密!能力者の逃走 ??:「プラントマスターとファイアーアーチェリー!」 あたしと美香が下校中、校門を通ったら、こういう呼び方をする人があたしたちを待っていた。 こんな呼び方をする人は、あたしの知り合いには一人しかいない。 ていうか、今の今まで校門に男子が群がってると思ったら、案の定だった。 蓮華:「プラウマ、久しぶりね。」 美香:「あたしたちに何の用かしら?」 あたし達が返した相手、それは校門にもたれかかっている、金髪でキャミソール姿の色白美人は、あたしたちが気づいたと知ると、 すぐに近づいてきた。そして軽いキスがあった。 彼女はあたしたち能力者の知り合いで、アメリカの人間と妖怪が政府や民衆にばれないようにして作り上げた、表向きは私立学校、 裏は能力者を保護する施設である、組織に属している、雷使いのプラウマだった。年はあたしたちと同じなのに、ものすごくセクシーなのよ。 一度、アメリカで事件を起こした妖怪を追いかけて、プラウマと数人の能力者たちが来た事があり、その時にあたしたちは知り合ったのだ。 「プラントマスター」とは植物使い、「ファイアーアーチェリー」とは炎の矢を操る者を意味して、彼女があたしたちにつけた呼び名だった。 プラウマ:「二人にお願いがあってさ、ちょっとこっちに来たんだ。力を貸してくれないか?」 プラウマは日系アメリカ人だが、見た目は外人そのもの。 でも、ものすごく頭がいいので、日本語も英語も、他の国の言葉もペラペラだった。 ただ、喋り方は男っぽいけど。 美香:「また変な妖怪がこっちに来たの?」 プラウマ:「いんや。そっちの方が全然マシさ。」 蓮華:「マシ?」 あの妖怪は吸血鬼で、しかも女で、哲兄が襲われるわ、彼女の持ってた薬のせいで氷雨さんが暴走したって言うのに、 そっちの方がマシって何よ。あたしはプラウマを親友と思ってるけど、プラウマは厄介な事件やイベントを持って日本に来る事が多いので、 あたしとしては素直に喜べない節があった。 蓮華:「それの方がマシって、もっと厄介なわけ?」 プラウマ:「ああ。ストール、覚えてるか?」 蓮華:「ストール?」 あたしは記憶の底をさらってみた。 そういえばいたわよね。プラウマと一緒にあの時日本に来た少年で…、ちょっと待てよ。 蓮華:「ストールって…確か能力…」 プラウマ:「ああ。思い出したか。あいつがちょっと組織でトラブルを起こした。…いや、否は組織側にある。 組織の上層部もそれを認めてくれたが、あいつは組織も学校も破壊尽くしてしまった。それであいつを追っている。」 そういうことか。 あたしははっきり線をつなげる事ができた。 ようするに、繊細なストールが組織側の問題で心に傷負って、組織内で暴れて日本に来たから、捕まえてほしい。 こういうことだね。 あたしがそのまま聞いてみると、プラウマは首を縦に振った。 美香:「蓮華、それならあたしはみんなに知らせてくるよ。その方がいいでしょ?」 プラウマ:「そうしてくれるとありがたい。人手がほしいところだ。組織と学校の修理で出払っていて、日本に知り合いのいるあたしくらいしか ここには来れなかった。」 美香:「分かったわ。」 美香が翼をつけて知らせに行くと、あたしは一旦プラウマを家に連れて帰る事にした。その方が断然いいだろうから。 プラウマ:「また面倒をかけてしまったな。」 蓮華:「いつものことよ。…プラウマ、ストールが日本に来たのはどうして?」 プラウマ:「多分、蓮華を頼っての事だと思った。」 蓮華:「確かに、あなたとストールの親友的存在はあたしくらいよね。でも、あたしも他のみんなも、今日は何も感じなかったわよ。 あなたが校門に来たときに感じたくらいだし。」 プラウマ:「だとしたら、蓮華の家だ。ストールも蓮華の家にゲートがあることを知ってるだろ?」 蓮華:「そうね、手紙にも書いたし…」 あたしはプラウマを連れて家に戻った。 すると家の前からパトカーが2台、帰っていくのを見た。 蓮華:「舞さん?何があったの?」 あたしが驚いて駆け寄ると、舞さんはホッとした声で言った。 舞:「実はね、さっき空き巣に入られたのよ。でも、何も盗まれてなかったから安心して。」 何も盗まない空き巣…。あたしはちょっと気になったけど、プラウマを紹介して家の中に入った。 すると、普段ならまだ帰ってないはずの哲兄たちが片付けている姿を見た。どうやらあたしにも連絡しようと思っているところだったらしい。 哲也:「あ、蓮華、帰って…きたのか…」 哲兄がプラウマの姿を見てぎょっとしていた。 あの時は散々だったもんね。 久美:「哲也、どうかし…プラウマ!?」 来美:「えっ?あら?」 久美ちゃんと来美ちゃんも気づき、久美ちゃんは苦笑いをしていた。 実際、この町に住む能力者メンバーのうち、プラウマを心から歓迎するのはあたしを除けば来美ちゃんと希ちゃんくらいだ。 あ、後美香と海ちゃんもだけど。 哲兄や久美ちゃんは、プラウマが厄介ごとを持ってきたから空き巣に入られたと直感したようだった。多分、来美ちゃんも感じてるだろう。 実際、それは当たっていた。 どうやら空き巣に入ったのはストールらしい。 久美:「全く、ゲートを探すためだからって部屋の中をあらすなんて。」 哲也:「はぁ、結局隠してたゲームや漫画、全部舞さんにばれたもんな。」 来美:「まさか哲也がAVを部屋に隠してたとはね。」 哲也:「そ、それは!」 蓮華:「スト〜ップ!今はストールの事が問題だよ。どうする?美香にみんなに知らせるように頼んだけどさ、それだけじゃ始まらないでしょ?」 明らかにゲートを潜っていったようなのだ。こうなると、ポケモン世界に行くしかない。 プラウマも一緒に行けるんだけど…プラウマがさっきまで言い忘れてた事があって、さらに厄介だとあたしたちは思った。 プラウマ:「実は今日の夕方までに捕まえられなかったら、ストール討伐隊がストールを捕まえて当分、特別観察所に入れておくって言ったんだ。 だからそろそろ、ストールが追われることになるんだよ。その前に助けたいんだが、頼めないか?」 プラウマたちの所属している組織では、逃げて3日以内に戻らなかったら、討伐隊に追われ、運が悪い時は能力を消されてしまうほどだ。 あたしたちがそれを知ってるのは、組織のボスが氷雨さんの親友だからだった。 プラウマ:「なっ?いいだろ?あたしもポケモンで加勢するよ。」 プラウマはそう言ったが、彼女のポケモンは闇商売で騙されて買ったコイキングだけ…。 哲也:「しょうがないな。俺たちも協力するよ。」 久美:「でも、これ以上は嫌だからね。」 プラウマ:「分かってる。ウィンドもビリリもあたしのこと好きじゃないことも分かってる。だからこれが一生に一度のお願いだ!」 どうやら気づいてたっぽく、はっきりそう言って、二人に土下座したのだった。 こうまでされれば仕方ないものだけど、そんな時にあたしたちのいる部屋に何かが飛び込んできた。 気づいた時には遅く、飛び込んできたものが噴出した煙、催涙弾によって、あたしたちは意識を失ってしまうのだった。 既に彼らは近くまで来ていたのだった。 ストール討伐隊が。 そんなことが現実世界で起きているとは露知らず、ナナは律子からストールの事を聞いていた。 律子自身も能力者じゃないだけに、彼のことは知らないのだが、蓮華の家の前にリムジンが3台止まり、迷彩服の男が出てきたものだから、 セレビィに頼んで急いでやってきたらしい。 ナナ:「そう、それじゃ、あの少年がそのストールって言う子なのね。」 律子:「うん。能力がとんでもなく厄介らしいのよ。詳しく知らないけどね。」 ナナ:「そうなの。…律子!」 律子:「えっ?あっ!」 あたしたちはその時、ゲートのドアが無理やり開かれようとしている音を聞いた。 どうやら中に入ってこようとしている者がいるらしい。多分、律子の言う迷彩の人たちなんだろう。 ナナ:「あのゲートには邪な考えのものは通れないし、そういう人がゲートを開けても入れないようになってるわ。 さっきの少年には否がないわけだから入れたのかもしれないわね。」 律子:「でも、このままじゃ開かれちゃうよ。」 ナナ:「…そうだ!セレビィにドアを外させて。」 律子:「えぇ!?…なるほどね。」 あのドアは壁についている事でゲートを作っているけど、実はドアを外してしまうと、ただのドアでしかなくなるのだ。 律子のセレビィがドアを外すと、ドアをこじ開けようとする音は綺麗になくなった。 律子:「でもさ、美香が言ってたけど、空間を行き来する力を持つ能力者もあっちにはいるらしいのよ。」 ナナ:「ということは、一時的に過ぎないわけね。でも、その間にあの少年をあたし達が見つけましょ。」 あたしは律子に知らされてからすぐ、全国のジムリーダーに今の事実を教えたのだ。 ただし、能力が分からないし、その少年はまだ荒れているかもしれないため、むやみに近づかず、情報を自分のところに送るようにとだけ、 知らせていた。 そんな時、電話が鳴った。 電話の相手は何とサカキさんからだった。 律子:「サカキさんからなんて珍しいわね。」 ナナ:「そうね。見つけたの?」 サカキ:「いや。しかし事件は起きた。」 事件を聞き、あたしたちは顔を見合わせた。よりによって、こんな時に!? ナナ:「どんな事件?」 サカキ:「トキワの森で虫ポケモンに以上が起きた。虫属性の技が使えず、混乱して次々にポケモンがポケモンセンターに運ばれてきているんだ。」 律子:「虫属性の技が使えない!?」 ナナ:「確かに一大事ね。律子、あたし、ちょっと行ってくるわ。留守番をお願い。」 律子:「うん、分かった。」 ナナ:「サカキさん、ここはあたしに任せてね。」 サカキ:「そういうのならトキワの民衆の動揺は俺が抑えておこう。この借りは今度、本当の姿を見せるって事でいいか?」 ナナ:「えぇ〜、…それって高くつくけど…まぁ、いいよ。分かった。」 あたしは律子に留守を任せ、トキワの森に向かった。 ポケモンたちが自分の属性である技を使えなくなること。 それはとっても苦しいとしか言い切れない、強烈な苦しみに等しいと思う。 特に、トキワの森にいる虫ポケモンが使えなくなる技は「糸を吐く」攻撃。それができなくなる場合、彼らは成長、すなわち進化ができなくなるのだ。 そうなると、ポケモンの体自体にも影響が出るのかもしれない。 そのためにバタバタと虫ポケモンが倒れたのだろう。虫ポケモンがいなくなれば、この森のバランスは崩れ、この森はなくなってしまうだろう。 虫ポケモンがいなくなれば、それを餌としている飛行ポケモンだっていなくなるのだから。 そして逆に、虫ポケモンを天敵とする草タイプが異常発生してしまうとも考えられない。 ここは何とかしなきゃね。 あたしは厳重禁止地域に指定されたトキワの森を歩き回った。 今、この森の中にいるのはあたしだけだった。 でも、あたしは誰かがいるのを感じた。 それは小さな土手の近くでの事だった。 ナナ:「誰?」 ??:「あれっ?気づかれちゃったのか。悪いけどさ、出口知らないか?迷っちゃったんだ。」 ナナ:「その前に、あなたの正体を教えてくれないかしら?」 ??:「正体、だって?」 あたしが尋ねると、彼の眉間が引きつり、目があたしを貫くように見ていた。 ??:「正体、何て聞くとはな。俺の追っ手がもう来たのか。」 ナナ:「追っ手?違うわ。あなたが律子から聞いた少年である事は知ってる。でも、あたしがここに来たのは、トキワの森の虫たちが どうして虫属性の技を使えないようになったのか?ということよ。 このままだったら、この森は消滅に等しい形でなくなてしまうわ。自然界のバランスが崩れる事になるから。 その理由を知っているんだったら早く教えて。」 あたしが言うと、彼は「参ったなぁ」と言う様に頭を掻きつつ、あたしの方を向いた。 ??:「悪い。ちょっとさ、気が立っててやっただけなんだ。俺、聞いてると思うけどストール。」 ナナ:「そう、聞いてるわ。あたしはナナ。このポケモン世界では、ポケモンマスターよ。」 ストール:「マジかよ!すげえじゃん。」 ナナ:「そうでもないよ。…あなたの力は何?」 あたしは本題を出した。 あたしに心を開いたっぽいので、今なら話してくれそうだ。 ストール:「俺の力?俺は「盗」の属性を持つ能力者なんだ。すなわち、人の持っている運動や文化的なものなどの能力や、蓮華たちの持っているような能力、 そしてポケモンたちの持つ属性を盗む事ができるんだ。さっきはつい腹いせでやっちゃった事なんだ。すぐ戻すよ。」 人の力を奪う事のできる能力か…。 あたしは、彼があっけらかんに言ったのでちょっと驚いてしまった。 こういう能力って、厄介だし疑われやすいと思うから。 でも、今の彼はそんな感じに見えない。 と、彼が戻した直後、ポケモンセンターで虫ポケモンが進化し続ける現象が起きたと、連絡が入った。 そしてあたしたちの前にもポケモンが出るようになっていた。 ストール:「あのさ、俺の力を珍しがらないんだな。」 ナナ:「どうして?」 ストール:「だってさ、俺のいた組織はさ、最悪なんだ。何かがなくなるとすぐに俺のせいになるし、この能力を知ると、 親友だった奴らはみんな離れていくし。蓮華とプラウマだけだよ。それと君くらいだ。俺の能力を見ても、全然そのままでいてくれたのは。」 ナナ:「それはね…」 あたしが答えようと思ったときだった。 目の前にゲートが開き、迷彩の男たちが入ってきたのは。 そしてリーダー格そうな人があたしを見て言った。 リーダー:「どうやら部外者がいるようだな。悪いが、そこの盗人を捕獲したい。そこをどけ。」 ナナ:「嫌だと言ったら?」 リーダー:「実力行使に出るまでだ。構えろ!」 迷彩の男たちは律子から聞いた男たちだろう。 ストールの言った、追っ手という言葉でもあると思う。それにしても、空間を行き来する能力者とは厄介ね。 あたしとストールは背後が土手のため、後には逃げられず、前には変わった形の銃を構えた男が6人もいる。 ストール:「ナナ、君は逃げろよ。君は関係ないしさ、それにあいつら、部外者がいてもお構い無しに撃ってくるよ。」 リーダー:「その通りさ。さあ、そこをどけ!」 あたしは決めた。 こうなったら、もうやるっきゃないね。 ナナ:「嫌よ。」 リーダー:「ならば、撃て!」 あたしたちに向かって、何と小型ミサイルが放たれていた。どうりで大きな銃と思ったわけだ。 ストール:「ナナ!」 ストールは心配してる。 でも。 あたしは大丈夫だよ。 リーダー:「やったか。我々に口答えするから…何!?」 彼らは驚いていた。 強力なミサイルを撃ち込んだというのに、目の前にはナナとストールが平然と立っていたからだ。 ストール:「こ、これって一体…」 ナナ:「うふふ。あたしに対して攻撃しようなんて100万年早いよ。」 ストール:「えっ?もしかして、これって…ナナがやったのか?」 ストールは驚いていた。 そう、ミサイルは当たったよ、壁に。そしてあたしたちは無事だった。 それはね、あたしも能力者なんだ、隠してたけど。 リーダー:「なるほど、君はシールド・マスターか。」 ナナ:「ご名答。あたしは防御の能力者。あなたたちがあたしたちに攻撃を加えようとしても、どうしようとしても、 あなたたちはあたしに近づけない。あたしとストールの周囲には頑丈な結界が張り巡らされてるから。」 ストール:「ナナ…」 ナナ:「隠しててごめんね。でも、これは秘密にしてたから。」 ストール:「いや、そんな…」 ナナ:「そう、怒ってないのね。それじゃ、秘術、結界術、結界を広げ、6人の男を結界に入れ、彼らを元の世界に返せ。」 あたしは十字を切った。 すると、男たちが結界の中に入ってすぐ、だんだん色が薄くなり、そして、この世界から、元の世界に送り出されていた。 ストール:「今のは?」 ナナ:「あたしが知ってる数少ない結界の能力の一つ。他の世界から来た者をその世界に送り返す力よ。」 ストール:「すごい!でも、俺…どうしようなぁ。帰らなきゃいけないし…」 ストールは淋しそうに、そして嫌だけど行かなきゃ行けないという表情で言った。 ナナ:「それはないよ。」 ストール:「どういうことだ?」 ナナ:「実はね…」 数時間後。 蓮華:「律子、ナナは?」 あたしたちはプラウマと一緒にポケモン世界にやってきていた。 催涙弾を討伐隊の奴らが投げ込んだせいで、あたしたちは眠らされていた。 でも、彼らは律子がドアを外したから入れず、あたしたちを起こす事もできず、空間能力でポケモン世界に行ったと、偵察していた美香が教えてくれた。 だからあたしたちはドアに念を送り、律子のセレビィに気づかせてこうやって入ってきた。 なのに、こういうときに力になってくれそうなナナがいなかった。 律子:「ちょっとトキワの森に行ったのよ。もうすぐ帰ってくると思うよ、事件は終わったみたいだから。」 と、そこに誰かがやってきた。 教会のシスターの姿をしたお姉さんだった。 ??:「あなたたち、ストールさんをご存知の方ですか?」 お姉さんは悲しそうな表情をしていた。 蓮華:「そうですけど…、あなたは?」 ??:「私はポケモン協会に属しています、トキワ教会のシスター、ルナというものです。」 哲也:「ルナさん、ですか。俺たちにストールの事で何のようですか?」 ルナ:「実は、ストールさんなんですが…」 あたしたちは衝撃の事をルナさんから聞いた。 ストールはトキワ教会に住む子供たちと遊んでいる最中に、討伐隊に襲われ、子供をかばって崖から落ち、亡くなったらしい。 あたしたちも、律子も、プラウマも、何も言うことができなかった。 ルナ:「討伐隊の方々はお帰りいただきましたわ。後の処理は私どもにお任せください。彼は天に召されるでしょうから。」 あたしたちは何も言えず、ルナさんが、ナナとも会って、ここに行くように頼まれたから来たと聞き、ナナによろしく伝えるように言ってから、 家に帰った。 プラウマ:「蓮華とみんな、こんなことになってごめん。あたし、もうちょっと組織をいい場所になるように頑張ってくるよ。」 蓮華:「う、うん。」 プラウマはすごく悲しそうに帰っていった。 でも、来美ちゃんだけが、どうも腑に落ちない顔をしていた。 どうしたのかな? …プラウマはこの後数週間後に大きなイベントのような行動を起こし、組織内の能力者が討伐隊に遭うような制度を廃止し、 自由を求めるための運動をし、自由を勝ち取ったそうです。 最終的には組織のボスに、氷雨さんの口添えもあったらしいけど。 ナナ:「ふぅ〜、みんな帰ったわよ。ドアも外したし、出てきたら?」 ストール:「全く、ナナはどういう能力者なんだ?シールドマスターだけじゃないんだな。」 ストールは、さっきのあたしと違い、とんでもなく背が伸び、シスター服の似合うお姉さんの姿になったあたしを見て、 あきれたような声を出していた。 ストール:「しかも俺が死んだ事にしやがって、ばれたらどうするつもりだったんだよ。」 ナナ:「大丈夫よ。その時はその時よ。組織に戻ってプラウマちゃんたちの口から事実が漏れたら厄介だったんだもの。」 実は、さっきまで蓮華のところにいて話をしていたシスターの正体、それはあたし、ナナでした。 あたしには3つの能力がある。 蓮華たちとは違い、3つの能力を使いこなせる能力者なのだ。 その能力とは、年齢を変え、その年齢の姿に変わる能力、シールドなどの防御に関する能力、そして記憶の書き換え能力だった。 討伐隊の記憶も、結界に入れた時に書き換えたのだ。 さっき、蓮華ちゃんたちに喋ったように。 あたしの能力を知ってるのは、各地のジムリーダーと、ポケモン教会の会長、それに四天王のみんなくらいだ。 後、もう一人、厄介な太ったおじさんもいるけど。 あたしはあまりこの能力を使わないようにしている。それは、別に意味はないけど。 ただし、その代わり、能力者の気持ちもしっかり分かる。 だから、蓮華ちゃんたちのこともしっかり理解できたのだ。蓮華ちゃんは能力のことをあたしに言ってないのに、スルーして知っていた。 それに気づいてない。いつか気づくと思ったけど、忘れてる。 でも、それでもいいのだ。 あたしは、いつか話すつもりだったから。 でもその前に、ストールには話した。 何故かって言うと、追われてるから。追われる経験を持つと言う事は、後々も厄介な事に巻き込まれるから。 だったら、あたしが助けようと思ったのだ。 ちょうど彼はポケモンをまだ持っていないらしいし、この能力は自分の意思でコントロールできるらしい。 だからあたしは、彼をトレーナーとして旅立たせようと考えたのだ。 ストール:「ナナ、俺、頑張ってくるよ。」 ナナ:「ええ。」 ストール:「でもいつかさ、本当のことを蓮華たちに話せよ。黙ったままだったら、蓮華たちが本気で怒るぞ。」 ナナ:「分かったわ。」 それからしばらくして、ストールはファーストポケモンとしてワニノコを持ち、旅立っていった。 サカキ:「そういうことだったのか。」 ナナ:「ええ。」 あたしは数日後、サカキさんの家で、本来の姿、20歳の姿をサカキさんに見せていた。 あたしは幼い頃、両親を失う事故を起こした時、4年間眠りについていた。 そして目覚めてから、あたしは3つの能力に目覚めたのだ。 だから、実年齢は20だけど、普段は16歳の姿でいるのだった。 4年間、姿が変わらずに体が眠り、そしてそのままあたしが成長しているために。 サカキ:「それで、その少年は元気なのか?」 ナナ:「ええ、昨日電話があったわ。ホウエンの旅を楽しんでるそうよ。」 今のところ、蓮華たちがアクアカップに出たりするらしいから、ストールに合わせるのはまずい。 だから、あたしはホウエンに旅立たせたのでした。 サカキ:「そうか。強くなったら、お前ともバトルすることにもなるだろうな。」 ナナ:「そうなる事を願うわ。」 そう言ってから、あたしは普段の姿に戻った。 ナナ:「これくらいでいいでしょ?」 サカキ:「ああ。…なぁ、ナナシマに不穏な動きがあるらしいぞ。」 ナナ:「そう、分かったわ。そろそろ、また騒がしくなるかもしれないわね。」 最近起きている事件、それと多分つながってるわね。 また、大事件が起きそうだ。