??:「何!奴らが我々の目的に勘付いただと!?」 ??:「申し訳ありません。2の島で技伝え人を排除しようとしたのですが、2の島に元団員のユウがいたために 我々の配下の作戦が潰されてしまい…」 ??:「もうよい。…奴ら目、これ以上我々を邪魔するならば…」 スペース団本拠地の奥深く、地下深くではカエデたちを仕切っていた幹部がボスと思える人物に状況報告を行っていた。 ??:「??様、奴らは3の島に行った模様です。ここは我々…」 ??:「何!3の島だと!…そうか、今回お前たちは手を出さなくてもよい。ここはこのわしが直々に作戦を行う事にする。」 スペース団のボスは立ち上がり、そして数人の手下を引き連れて動き出していた。 ??:「あの者たちに地獄を見せてやるとしよう。」 ナナシマ編 4.恐怖!?3の島からの襲撃 あたしたちは2の島でユウに別れを告げ、3の島に向かっていた。 伝説の邪悪な「デオキシス」の復活を阻止するために、光を纏う神器であるこのカケラを全て集め、現実世界に持ち帰って 封印してしまうために。 今回のあたしたちの最大の目的が、2の島にてこう決まったのだ。 初めはスペース団を壊滅させる事、ナナシマ列島から追い出すことが目的だったけど、それはカケラを集めきってからの 目的になりそうだ。 蓮華:「でもさ、あたし達が何気に見つけたりしてるこのカケラがすごいものだったなんてね。」 涼治:「物も人も見かけによらないってことだな。」 美香:「ホントだよねぇ〜。」 あたしたちは、あたしのギャラドスのコイッチに乗り、ナナシマ列島を移動する事に決めた。 蓮華:「早く残り5つの島でカケラを見つけちゃわないとね。」 美香:「でもさぁ、スペース団は7の島にいるんだよ。もしかしたら既に7の島では見つけちゃってるんじゃない?」 涼治:「その可能性はなくもないな。だが、俺たちのカケラもそろえないとデオキシスは復活できない。 だから、このカケラを狙ってるはずだ。いつか罠でも仕掛けてやればいいだろうな。その前に律子の奴と合流できればもっと 可能だろうけどさ。」 あたしたちもそう思った。 この世界の住人のうち、あのゲートを通れるのはナナとポケモンだけであり、セレビィによって空間を行き来できるのは 律子くらいなのだ。 律子があたしたちと合流できれば、このスペース団の計画は簡単なのだろうが、今回はナナと通信ができない状態だ。 あたしたちは7の島でしか、ナナや律子、美咲と合流できないかもしれない。 それ以前に、部活の忙しい律子がこっちに来るかが問題だけど(多分来ない)。 と、遠くの方角に島が見えてきた。 美香:「あれね。」 蓮華:「かもね。」 涼治:「多分な。」 あたしたちの目の前には大きな森や桟橋がかかり、綺麗な山並みの見える少し大きめの島、3の島にたどり着いた。 自然が一杯の南国の楽園という感じだった。 観光客の姿もかなり見える。アレだけ警告されていても、自分たちに害が出ていないからか、足止めされている腹いせか、 韓国客が海岸などでリゾートを満喫しているのも見え、警戒態勢の状況は島それぞれ各々なんだなと思うのでした。 美香:「多分、他の1や2の島も普段はこんな感じなんじゃない?」 涼治:「だろうな。この風景が見えるだけ、この島はマシってところだな。」 蓮華:「そうだよね。でも、いつかここにもスペース団が来るかもしれないし、この人たちを守るためにもあたしたちが 頑張らなきゃね。」 でも、そんな平和はやっぱり壊されてしまうものだと何となく悟っちゃう事件が起きた。 平和を思った矢先だった。 けたたましい爆音と共に海岸に10台ほどのバイクが突っ込み、観光客が逃げ回る騒ぎが起きたのだ。 ビーチは排気ガスとドガースたちが溢れ、パラソルや椅子が転がり、浮き輪や砂の城が踏み潰され、 泳いでいた人たちにもメノクラゲやハリーセンが襲い掛かっている。 そして、数台のバイクは子供らしき人影の周囲を走り回っていた。 美香:「な、何よ、あれ!」 涼治:「ひでえな。」 蓮華:「ちっちゃい子も一杯いるのに…コイッチ、海岸に向かって!」 あたしたちは本当なら港に行っているはずだった。 港からポケモンセンターに行くつもりだったけど、暴走族の群れを放置していくのはできなかった。 そしてコイッチも状況を見てビーチに突っ込んでくれた。 すると。 暴走族A:「ナンダテメエラヨウシャシナイゾ」 暴走族B:「オマエタチモシニタイノカ」 スキンヘッド:「ココハオレタチガハカイスル」 暴走族たちから罵声が飛ぶかと思っていたけれど、それとは逆に棒読みの罵声というか、叫びが聞こえ、 暴走族たちが襲い掛かってきた。 涼治:「カメール、渦潮でポケモンの動きを止めるんだ!」 蓮華:「コイッチ、突進よ!」 コイッチがそのまま突進して襲い掛かる暴走族たちをなぎ払い、暴走族たちのポケモンは涼治のカメールが起こした 渦潮にドンドン巻き込まれていく。 でも、それだけじゃ足りない。 蓮華:「ルナ、フィル、チリリ!一斉にサイコキネシスで毒タイプのポケモンを一掃して!」 あたしの持ってるエスパータイプ、ルナトーンのルナ、エーフィのフィル、チリーンのチリリがサイコキネシスを発動して 飛びまわりながら毒を撒き散らすドガース、マタドガスや、ベトベターを一掃していく。 暴走族たちも、勝手に出てきたキレイハナの蔓の鞭や、あたしたちの攻撃でドンドン倒れていった。 元は人間なので、武器を奪って動きを止めれば十分に倒せちゃうのだ。 スキンヘッド:「ヨクモジャマシテクレタナ!」 すると暴走族たちの中からリーダー格と思われるスキンヘッドがポケモンを投入してきた。 すでに暴走族と彼らのポケモンたちはあたし達が倒し、観光客の人たちもあたしたちが助け終えていて、 残っているのはスキンヘッドだけだったのだ。 出てきたのはカイリキー一体だった。 ただ、そいつは無防備なあたしの背後に出していたのだ。 スキンヘッド:「ソコノジャマナヤツヲタオセ」 カイリキーはあたしが振り返った時には、あたしに飛びかかっていた。 涼治:「させるか!カメール、水鉄砲だ!」 カイリキーの一発があたしに当たる数センチ手前で、カメールの水鉄砲はカイリキーを吹っ飛ばした。 涼治:「蓮華、大丈夫か?」 蓮華:「…う、うん、何とか。」 涼治:「そうか、よかった。…さて、カメール、そのハゲごと吹雪だ!」 スキンヘッドは吹っ飛ばされてぶつかってきたカイリキーごと、氷漬になった。 カメールの力だけじゃなくて、涼治の力も感じたけど、ここは触れないようにしよう。 そして。 あたしたちが倒し終えた時、ようやくポケモン警察が駆けつけたのでした。 そんなあたしたちの姿を見ている人物がいた。 ??:「やはりあいつらだったか。…しかし、これはまだ序の口だ。あいつらにはこれから地獄を味わってもらうのだからな。 スリーパー、ゲンガー、作戦を実行するのだ。」 その人物は蓮華たちの様子を眺めたあと、ポケモンをそっと町に放していた。 しかし、騒ぎのため、それに気づいたものはまったくいなかったのだった。 あたしたちは暴走族をやっつけて観光客を助けた事で表彰された。 でも、ジュンサーさんが言うには、彼らは操られていたらしく、気づいたときにはビーチを襲った事を聞いて驚いていたらしい。 ジュンサーさんは嘘をついているとしか思えないと言っていた。 でも、確かに操られていたんじゃないかな。 あたしたちにはそういう結論が出ていた。 涼治:「あの喋り方は普通じゃないしな。」 美香:「棒読みで叫ぶ状態だもんね。普通じゃないのは当たり前だけど。」 蓮華:「うん、でもさ、どうして暴走族を使ってビーチを襲ったのかな?」 涼治:「さあな。それが分かれば苦労しないよ。」 美香:「苦労しない、か。確かにそうかもね。」 操られていたという事は、操っていた奴がいるわけだけど、暴走族を使ってビーチを襲う事に何の意味があるのか、 あたしには見当もつかず、無言の状態が続いていた。 ただ、さっき涼治が助けてくれた時の映像が頭の中を飛びまわっていたけど。 そんな時、ポケモンセンターに汚れた服の男性が入ってきた。 そしてジョーイさんに何かを話しているが、ジョーイさんが断っているのが見えた。 あたしは興味本位でそこにいってみた。 蓮華:「あの、どうしたんですか?」 男の人:「ああ、君でもいいんだ。手伝ってくれないか?」 蓮華:「…へ?」 あたしが答えに迷っていると、ジョーイさんが教えてくれた。 ジョーイ:「あのね、この人はこの島に数日前から来ているトレジャーハンターさんなのよ。でもこの人のポケモンが トンネル掘りの最中に落盤事故で入院してしまって、ノコッチとしか動けない状態なのよ。 だから人手がほしいって、毎日ここに通っているの。 でも、トンネル掘りをしたいって人もいないし、ポケモンもなかなか回復しなくてね、私も困っていたのよ。」 男の人:「そういうわけなんだ。どうだい?うまくいったら、そこの海岸で拾ったものだが、これをあげるよ。 アクセサリーに加工できるはずだよ。」 男の人はそれでも迷っている(当たり前)あたしに対し、何かを取り出した。 それを見て、あたしは目を大きく見開いていた。 それは、あたしたちが探しているガラスのカケラだったのだ。 蓮華:「それ…あたし、探してるんです。あの…」 涼治:「待てよ、蓮華の代わりに俺が手伝うよ。おじさん、いいだろ?」 あたしが手伝うといおうとした時、いつの間にか背後にいた涼治が申し出ていた。 男の人:「ああ、やっぱり女の子に力仕事は悪いからな。頼むよ。」 涼治:「任せろって!蓮華、美香、少しの間待っててくれよ。」 涼治はそういい残すと、ポケモン3匹を連れて男の人と一緒に出かけていった。 ジョーイ:「あなたたち、1と2の島のジョーイから事情は聞いているわ。でも、彼はすぐ戻ってくるから大丈夫よ。」 美香:「どういうことですか?」 ジョーイ:「あのね、トンネルはほとんど掘れていているらしいのよ。だから今日頑張れば貫通するところまでにいるのよ。 少しの間、待っているのもなんだし、3の島の中を散歩してきたらどうかしら?」 あたしたちはそうすることにした。 涼治がいない状態で他の島に行くわけにもいかず、あたしたちは街に繰り出した。 さすが、観光客が来るだけあってお土産ショップが立ち並んでいるし、水着も一杯置いてあった。 美香:「ホントならショッピングに明け暮れたいよね。」 蓮華:「でも今はね、あたしたち、何のために来てるかって言えばスペース団退治だし…」 それに涼治が一人で頑張ってる時に、あたしたちが遊んでましたっていうのは何か…悪い気がした。 これが玲奈先輩や清香先輩だったら、男が自分のために働いてる時でも楽しむだけ楽しまなきゃ駄目だって言いそうだけど、 あたしたちはそこまで熟年したカップルじゃないから無理だ。 美香:「そういえば、翼先輩どうしてるんだろ…」 蓮華:「最近会ってないんだっけ?」 美香:「うん、勉強が忙しいからって聞くけど、実際は夏休みに予定してる勉強を早く済ませてフィールドワークに行きたいんだって。」 蓮華:「フィールドワーク?」 美香:「うん。試合もなくて、勉強も終わった時に、夏休みを生かしてこっちでポケモンウォッチャーとしての自分を高めたいって 言ってたの。あたしとのデートは?って聞いたらさ、すっかり忘れてるみたいだし。」 蓮華:「ふぅ〜ん、大変だね。」 美香:「まあね。でも、蓮華もこの戦いが終わったら、当分は会えないんでしょ?」 蓮華:「そうだよぉ〜、だって部活とか色々あるみたいだもん。」 この分だと夏休み中旬ごろに予定しているアクアカップへの参加はあたし以外は誰が行けることになるのやら。 そんな時だった。 綺麗な音色の笛の音が街中を響き渡ったのだ。 この笛の音にはショッピングを楽しんでいた人たちも聞き入ってしまい、あたしたちもほんのりいい気分になっていた。 でも、笛の音が聞こえなくなった時、事件は起きていた。 美香:「どうしたんだろうね?あれ。」 蓮華:「うん…、行ってみる?」 あたしたちは笛の音が聞こえなくなってからもこのあたりを歩いてたんだけど、子供の声がたくさん聞こえてた場所が きんきん声の嵐になっていたのだ。 そして知った。 何と、5〜7歳くらいの子供が一斉に姿を消したのだと。 しかも、監視カメラの映像に寄れば笛を吹いていたのはスリーパーで、子供たちはそのスリーパーの後について 木の実の森の方角に歩いていったらしい。 美香:「まるでハーメルンの笛吹きね。」 蓮華:「うん。でも、子供たちを勝手に連れて行くって言うのは変だよね。」 美香:「確かに。だってここはポケモンも人も楽しく過ごしてる楽園だもの。」 あたしたちは騒ぎを横目に見ながら木の実の森に向かうことにした。 美香:「涼治には連絡するの?」 蓮華:「えっ?あ…、今回はいいよ。涼治にはカケラをゲットしてきてもらわなきゃいけないし。」 美香:「…そうだね。蓮華が言うならそれでいいか。」 絆橋と呼ばれる桟橋を渡っていくと、大きな森、木の実の森といって様々な木の実が落ちている事が有名な観光スポットの森 が見えてきた。 でも。 美香:「ねえ、あれ!」 蓮華:「スペース団!?」 あたしたちは森が見えてすぐに木陰に身を潜めた。 森の入り口に立っているのは二人の団員だったのだ。 銀色のメッシュを入れた髪に、白地に緑のスペース団マークをあしらった制服の男性と、青のメッシュを入れた髪に、 白地に紫のマークをあしらった制服の男性がいたのだ。顔つきは妙に似ていた。 美香:「あの二人、見覚えある?」 蓮華:「全然。」 あたしたちはどうしようか迷った。 でも、森に向かった。 すると案の定。 ??:「待て。」 ??:「ここは誰も通さない。」 口上はないから安心したけど、この二人はあたしたちの前に立ちふさがっていた。 美香:「あなたたちは何者?」 蓮華:「その様子からすると、幹部候補生だった人たちなのは一目瞭然!何者なの?」 あたし達がそれぞれ言うと、二人は名乗りを上げた。 ??:「我は操り兄弟の兄、闇に潜める真の光を極める闇の戦士、バイツ。」 ??:「そして俺は操り兄弟の弟にして、吹き荒れる風の守護神、ベイル。」 バイツ:「我らの力でお前たちを」 ベイル:「考えられぬ恐怖へと導く。」 やっぱり口上なのかな? ふとそんな気がしたけど、それはシカト。ここはバトルしかないみたいだ。 美香:「子供たちを攫ったのはあなたたちなの?」 バイツ:「俺たちではないが、俺たちによるものだ。」 蓮華:「要するにスペース団の仕業なのね。」 ベイル:「おいおい、君たち、そんな簡単に言えるようなことではないよ。」 蓮華:「うるさいわね!子供たちを返しなさい!」 あたしたちはボールを構えた。 ベイル:「兄さん、どうやらバトルがしたいらしいよ。」 バイツ:「馬鹿なやつらだ。俺たち兄弟の力、よく見るがいい!」 ベイル:「行くんだ!デリバード!」 バイツ:「ヤミラミ、行ってこい!」 ベイルが出したのは飛行・氷タイプのデリバード、バイツが出したのはゴースト・悪タイプのヤミラミだった。 蓮華:「美香、あたしたちも行くよ!」 美香:「ええ、リザード、ここはお願いね!」 蓮華:「あたしはフィル、あなたで行くよ!」 炎タイプのリザードと、エスパータイプのエーフィことフィルで行く事に決めた。 ベイル:「なるほどね。…デリバード、凍える風でやつらの動きを封じるんだ!」 バイツ:「ヤミラミ、凍える風がやつらを包んだ直後にシャドーボールだ!」 凍える風はポケモンを包み込んで寒さで素早さを下げる攻撃。そこにシャドーボールが打ち込まれれば、ポケモンたちは とてつもない攻撃を受けることになる。 けれど、そんな事に引っかかるあたしたちじゃない。 美香:「リザード、まっすぐに火炎放射よ!」 凍える風が包んだ直後、リザードは凍える風のベールを突き破る火炎放射を放った。 それはシャドーボールとぶつかり相殺するが、その時の爆風が辺りを包んだ。 ベイル:「デリバード、爆風にまぎれて吹雪だ!」 バイツ:「ヤミラミ、神秘の守りで防いでおけ!」 爆風の中、あたしたちに向かって吹雪が向かってきた。 吹雪はダブルバトルではポケモン2体に対して放たれる。ていうか、氷タイプの攻撃は2体同時にダメージを与えるものが多かった。 美香:「リザード、炎の渦を自分に行って!」 蓮華:「フィル、神秘の守りよ!」 あたしたちはポケモンの状態がよく分からないけど、それぞれの指示で吹雪を逃れた。 だが、爆煙はなかなか消えない。 唯一の救いは、あたしたちの声に反応してポケモンが戻ってきている事だった。 バイツ&ベイルからは攻撃が続いているけど、たびたび神秘の守りや火炎放射がそれらから防いでくれていた。 でも、それも長く続けるわけには行かない。 蓮華:「あ、ここは…美香、ゴニョゴニョ…」 美香:「了解。」 あたしたちは作戦に動いた。 ふっ、あの方からこの二人のことはよく聞いていたが、流石にヘルガーのスモッグが混ざったこの煙の中では動けまい。 それに我が弟の容赦のない攻撃が空から続いているのだ。 この状態で長くい続けるのは無理だろうな。 バイツ:「ベイル、そろそろ最終攻撃に入るぞ。」 ベイル:「分かったよ。兄さんはあのエーフィを頼むよ。」 バイツ:「ああ、そのつもりだ。ヤミラミならエーフィなど一ひねりだ。お前の方は天敵の炎だ。気をつけろよ。」 と、ベイルの返答の前に煙の中から見当外れの火炎放射が飛び出していた。 そして俺の近くからはポケモンの気配を感じた。 ベイル:「兄さん、ここで決めようぜ。」 バイツ:「ああ。」 俺たちはそれぞれポケモンの攻撃を放ち、相手に向かった。 ベイル:「ぐあぁっ!」 そこにベイルの苦しむ叫び声が聞こえた。 バイツ:「ベイル!何があった!」 しかし、そんな俺たちの前に飛び込み、ヤミラミに攻撃をしてきたのは、何故かベイルが向かったはずのリザードだった…。 蓮華:「結構早く片付いたわね。」 美香:「本当よね。」 あたしたちの前には体の至る所が凍傷になっているベイルと真っ黒焦げのデリバード、同じく焦げ目と煙を立ち上らせているバイツと、 体中を傷だらけにしたリザードの姿があった。 ベイル:「どうしてだ…」 バイツ:「いつの間に…ポケモンを入れ替えた…」 蓮華:「入れ替えていないわ。あなたたちが引っかかっただけよ。」 ここでキーポイントになったのはあたしのフィルだった。 前のヤマブキの戦いの時、フィルはシルフカンパニーでの遺伝子組み換えで生まれたイーブイであり、ある装置に入れれば 火炎放射などの覚えないはずの技も覚えられる事が判明した。 そしてキレイハナたちが、あたしのいない間にその措置を終わらせてくれたので、フィルは火炎放射やミラーコートなどを 覚えられていたのだ。ただ、珍しがられるのを望まないフィルなので、ポケモンリーグではそれらの攻撃はさせなかった。 でも、今はそういうわけには行かなかったのだ。 フィルも自分から望んでだったみたいだけど。 ベイルが吹雪を放ちながら突っ込んできたところを、フィルがミラーコートで跳ね返し、デリバードに乗っていたベイルは吹雪を まともに浴びて落下。そして火炎放射がベイル落下の拍子に動きを止めたデリバードを包み込んだのだ。 そしてバイツの場合は見破る攻撃でゴーストタイプにも攻撃が当てられるようになったリザードが乱れ引っ掻きと切り裂く攻撃を食らわしたのだ。 スモッグが逆に相手に気づかない副作用を作ってくれたのも功を成してしまったらしい。 不利と感じたバイツがヘルガーを戻した時には背後にリザードがいて、バイツを炎の渦で包み込んだのだった。 美香:「あなたたちの煙で相手をくらます行為が逆にあたしたちを勝利に導いたのよ。」 蓮華:「残念だったわね。」 バイツ:「くっ、ここはこのまま下がらせてもらう。」 ベイル:「しかし、俺たちはまたお前たちを倒す。」 あたし達が種明かしをすると、自分たちが不利なのを悟ってか、ケーシィを取り出しテレポートで消えてしまった。 でも消えた直後、あたしたちは思わぬ攻撃を受けた。 ものすごい衝撃波が、あたしたちとリザード、フィルを弾き飛ばしたのだ。 しかも、リザードとフィルを一発で戦闘不能にするくらいの衝撃波を。 美香:「う…、この攻撃は一体…」 蓮華:「森の中から、だよ。」 と、それは、スリーパーは姿を現した。 美香:「今のはサイコキネシスかしら?」 蓮華:「分からない。でも、ここはやるしかない!ポチ、ソルル、お願い!」 あたしはエスパーの攻撃が効かない悪タイプのポチとソルルを出した。 美香:「蓮華、あたしは援護するよ。エイパム!」 美香はノーマルタイプのエイパムであたしの後から援護射撃をするようだ。 と、スリーパーが動いた。 両手から強大な波動の塊をつくり、前に突き出した。 直後、先ほどと同じ衝撃波が襲い掛かってきた。 ポチやソルルも流石に押されてしまうほどの。 蓮華:「うぅ…」 美香:「流石の悪タイプでも、かなりやられるみたいね。」 美香のエイパムが光の壁を使っていた事であたし達が飛ばされたり、ソルルたちが跳ね飛ばされる事はなかった。 でも、ソルルとポチも、エイパムもかなり疲労感を漂わせていた。 蓮華:「これだと他の子でも元も子もないし…そうだ!」 あたしはこっそり二つのボールを地面に放っておいた。 美香:「今のは?」 蓮華:「見てれば分かるわ。美香、援護射撃お願い!」 美香:「了解、エイパム、スピードスターよ!」 蓮華:「ポチ、シャドーボールよ!ソルルはカマイタチ!」 スピードスターがスリーパーを攻撃した直後、ポチとソルルの得意な攻撃がスリーパーを襲った。 しかし、スリーパーは動じずに再びあの攻撃に移ろうとしていた。 でも、続けてその攻撃はさせない。 蓮華:「今よ!よま、鬼火!」 突如スリーパーの目の前に現れたサマヨールのよまは、至近距離からスリーパーの両手に鬼火を放っていた。 両手が火傷状態になり、スリーパーは思うように腕が動かせない様子だった。 先ほどの攻撃も思うように行かないらしい。 蓮華:「続いてシャドーパンチよ!」 よまのシャドーパンチはスリーパーの顔面を殴打し、スリーパーも流石に後ろに退いた。 その瞬間、スリーパーの両足が地面にはまっていた。 美香:「あれは?」 蓮華:「えへへ、ちょっとね。ディグ、砂地獄ありがとう!」 スリーパーが足をとられたのは、ディグダのディグが砂地獄を行ったのだ。 砂地獄は相手を地面に捕らえて動きを封じる技だった。 両手両足がふさがれ、流石に体の自由を奪われたスリーパーにはもう、反撃のチャンスは皆無だった。 そして、ソルル、よま、エイパム、ポチ、ディグの攻撃が一気にぶつかり、スリーパーは耐え切れずに倒れた。 でも。 消えてしまったのだった。 テレポートではなく、本当に目の前で。 美香:「どういうことだろう…」 蓮華:「さあ?でも、もしかしたら他のポケモンがなずなみたいなテレポート能力を持っていたのかも。」 美香:「なるほどね。…子供たちを助けましょ。」 あたしたちはそれからしばらくして、子供たちを救って街に送り届けた。 数時間後。 お礼の言葉や賞賛で疲れたあたしたちは、ジョーイさんからジュースのサービスを受けていた。 ジョーイ:「お疲れ様。これを飲んで。子供たちを救ってくれたお礼よ。」 ジョーイさんがくれたジュースは変わった味がした。 でも。 ジョーイ:「おいしかったかしら?眠り薬の入ったジュースは。」 いつのも優しい声が言ったのは、あたしたちを驚かせる一言だった。 あたしたちはどういうことかを聞こうとしたけど、よく効く薬だったのか、あたしたちはそのまま眠りについてしまった。 それからまた数時間後。 別の場所でも事件が起きていた。 男の人:「君のおかげでトンネルが貫通できたよ。ありがとう。」 トンネル堀りの手伝いがようやく終わり、俺はあのカケラをもらう事ができた。 ガラガラやカメールもライボルトも疲れ切っていて、俺は早くポケモンセンターに戻ろうと思っていた。 が。 男の人:「な、何だこいつは!」 突然響いたおじさんの声で振り返ると、ゲンガーがおじさんと、おじさんのノコッチに怪しげな煙を放っていたところだった。 涼治:「おじさん!」 俺は駆け寄ろうとした。 でも、駆け寄ろうとする前におじさんは、俺に向かってきたのだ。 男の人:「うるせえ!」 さっきの温和なおじさんと違い、罵声と共に俺は鳩尾を殴られていた。 涼治:「がはっ!おじ…さん…?」 男の人:「お前が憎い。トンネル掘りを遅らせたのもお前だ。お前を殺す。」 明らかに棒読みで、操られていると悟ったけど、疲れていたところを殴られたショックで体が思うように動かない。 男の人:「聞いてるのか?おい!」 おじさんは俺の襟首を掴み、地面に叩きつけていた。 俺は何とか立ち上がり、力を使おうとした。 でも、目の前にやって来たノコッチと眼があった瞬間、立ち上がろうとする無防備な体制で、体が動かなくなっていた。 涼治:”これは…ポケモンの蛇睨み…体が…動かない…!” 俺は動けないまま、おじさんからのキックを受け続け、蛇睨みの金縛りが解けたときには動く体力も全て失った後だった。 そんな俺の目の前にやってきたのは、見覚えのある幹部候補生だった。 涼治:「…ベイ…ル」 ベイル:「覚えてくれていたようだね。まあ、いいよ。君の恋人にやられた分、君をここに閉じ込めてやる。」 涼治:「な…」 ベイル:「君も残念だったね。恋人に会えないまま過ごすのだから。…これは貰っていくよ。」 ベイルは俺のわき腹を5回ぐらい蹴ると、俺の持っていたガラスのカケラを取り、姿を消した。 直後、目の前の入り口が崩れ落ち、背後の入り口も崩れる音がして、俺は閉じ込められた事を悟った。 けれど、既に意識も朦朧としていて、俺は立ち上がろうとする力さえも、残っていなかった。 何時間が経ったのだろうか…。 あたしが目を覚ますと、あたしは一人で椅子に座った状態で拘束されていた。 そばに蓮華の姿は見えず、あたしの荷物は近くに見えたけど、ガラスのカケラが見当たらない。 美香:「盗まれた…?でも、どうして…。」 バイツ:「どうしてって?それは元々罠だったからさ。」 突然あたしの目の前にバイツが現れた。 さっき焦げ目を作ってやったのに、その跡は全く残っていない。 バイツ:「残念だったね。悪いけど、俺たちのさっきの姿は俺たちのボスが作った分身さ。俺たちには全くダメージがないわけ。」 美香:「そんな…」 バイツ:「君たちは俺たちスペース団が罠に作り変えた3の島に、自分からやってきてくれたのさ。 まぁ、罠が出来上がったのはついさっきだけどね。」 美香:「どういうことよ!」 バイツ:「こういうことさ!」 バイツが壁のスイッチを押すと、目の前にスクリーンが現れ、映像を映し出していた。 それはあの男の人が涼治を殴り倒し、ベイルがカケラを奪って、涼治をトンネルの中に閉じ込める映像だった。 そしてもう一つは…。 美香:「れ、蓮華!?」 蓮華が街の人たちに追われ、物を投げつけられながら逃げ回る映像だった。 バイツ:「平和ボケした奴らが多い子の町は、俺たち洗脳兄弟が街中の奴らを洗脳するくらい楽勝なこと。 それに、あの方のスリーパーとゲンガーが手伝ってくれたおかげで罠作りはうまくいったよ。」 美香:「子供を誘拐したのは、初めからあたしたちを街から引き離すためだったのね!」 バイツ:「ああ。それとトンネル掘りを妨害したのも俺たちだ。多分、あのカケラを貰うためにお前たちが手伝いにいくかも しれなかったからな。さて、君には俺の足になってもらおうかな。」 バイツはあたしに顔を近づけていた。 美香:「ちょっ、何よ!」 あたしは力を使おうとした。でも、体中の力が抜けていて、動く事もできない。 逆に、何故かバイツの顔を見ると、無性にドキドキしていて止まらなかった。 バイツ:「あははは、君の飲んだドリンクにはね、睡眠薬の他にもう一つ、薬が入っていたのさ。」 美香:「何ですって!?」 バイツ:「媚薬、しいて言えば、惚れ薬だな。君は俺の事を意識してしまい、味方と判断してしまい、動けないんだ。 さてと、今のうちに証拠でも残してやろうかな。」 美香:「…な、やめて!」 キレイハナ:「ふぅ〜。」 蓮華:「やっと撒いたね。」 あたしとキレイハナはようやく腰を下ろしていた。 もう走り回ったせいで足がガクガクしていて止まらない。 眠りから覚めたと思えば、近くにいた町の人たちが一斉に襲い掛かってきたのだ。 キレイハナが飛び出して蔓の鞭で一掃してくれたから助かったけど、街に出れば、ドンドン襲い掛かってくる人は増えている。 操られているっていうのは見てすぐに分かったけど、あたしは何にも打つ手がなくて、キレイハナと一緒にようやく桟橋の下に逃げてきたばかりだった。 ここも安心できるわけじゃないけど、あたしの結界が張ってある以上、当分は見つかっても何とかなるだろう。 キレイハナ:「あたしたちもボールの中から見てたけど、いきなり眠り粉だったから…」 どうやらあたし達が眠らされた直後、ポケモンたちもボール越しに眠り粉を使われたらしかった。 キレイハナ:「しかも…カケラを取られちゃったね。」 あたし達がバラバラに分けて持っていたカケラが、荷物の中から消えていたのだ。 多分、スペース団の仕業だろう。 もしかすると、誘拐事件もやつらの仕業だったんじゃないかな。 あたしたちを街から引き離すための。 だとしたら理解できる。 キレイハナ:「蓮華、これから…蓮華!」 キレイハナが叫んだ。 あたしはキレイハナの示す方向を見てぎょっとした。 気づけば、結界はたくさんの人に囲まれ、憎悪の表情をした人たちが取り巻いていたのだ。 あたしに対し、憎悪と敵意を剥き出しにしている彼らに、あたしは心底恐怖を感じた。 この結界は後数分しか持たない。 どうしよう…。 何かが崩れ落ちる音がトンネルに響いた。 そして見えてくる光…。 俺はまだ起き上がれずにいて、誰が俺のところに来たのか分からなかった。 またやられるのか…。 そんな事も頭に浮かび、俺は力を体に込めようとしたけど、まだ体に力が戻っていない。 しかし。 近づいてきた足音は俺を通り過ぎていた。 そして、俺の後方にある場所が崩れ落ちる音がしたのだ。 ??:「あ〜あ、派手にやられたわね。全く、やつらも本腰を上げたのかしら?」 俺はふと顔を上げた。 すると、そこには絶世の美女と言わんばかりの人が立っていた。 ??:「あ、見られちゃった。涼治君、もう少し眠っていてね。」 目の前にナゾノクサが現れたところまでは覚えている。 俺はそれから眠り粉で眠っていたらしく、覚えていない。 ナナ:「あ〜あ、この姿、見られちゃったわ。」 絶世の美女の正体はナナだった。 カンナ:「うふふ、相変わらずなのね。まだ正体は隠しておくつもりなのかしら?」 その後ろにはカンナの姿があった。 ジョーイさんがゲンガーに襲われた瞬間、危険信号を4の島に送り、操られた直後に間違いと3の島のジョーイさんは 言ったのだが、不安を感じた4の島のジョーイさんは、4の島で偵察状況を話していたナナたちとカンナに知らせ、4の島に 集まっていた6人が駆けつけたのだ。 ナナ:「ええ。美咲たちと律子たちは大丈夫かな?」 カンナ:「大丈夫じゃないの?信じてあげたら?」 カンナはそばにいるパルシェンを撫でながら言った。 ナナ:「そうですね…。」 ナナはそう言うと、足元で今度は氷漬になっているベイルから、カケラを取り返していた。 目の前にバイツがいて、あたしは顔を寄せ付けられていた。 あと少しでキスしてしまう! あたしの一生の不覚!一生の恥!汚点中の汚点! そう思ったときだった。 赤く燃え盛るものが部屋の中に飛び込んできたのだ。 バイツ:「何!?」 バイツは思わず仰け反った。 その拍子にガラスのカケラを落としていて、それを拾おうとしていたが今度は黄色く弾ける様な物がそれを掠め取っていた。 バイツ:「おい、それを返せ!」 ??:「返すわけないだろ!ライボルト、10万ボルトだ!」 ??:「同じく、コータス、オーバーヒートよ!」 10万ボルトとオーバーヒートがバイツを直撃し、バイツは思わず倒れていた。 美香:「…すごい!」 と、炎と電撃の塊があたしに近づいてきた。 あたしは一瞬びくっとしたけど、すぐ正体に気づいた。 美香:「美咲と拓也かぁ。驚いたじゃん!でも、助けてくれてありがとう。」 美咲:「どういたしまして。」 炎の塊の正体は、火の鳥に姿を変える事ができる炎の能力者の美咲ちゃん。 拓也:「心配になって駆けつけてみれば、お前らもまだまだだったんだな。」 電撃の塊は、雷の虎に姿を変える事ができる雷の能力者、拓也。 二人は元スペース団員で、今はクチバの大好きクラブで働いているあたしたちの仲間だ。 美咲:「ナナたちも来てるわ。今、蓮華と涼治君を助けに行ってるから。」 美香:「よかったぁ。…それ、どうする?」 あたしはふと、足元に倒れている馬鹿が気になった。 拓也:「ああ、どっかに捨てるさ。」 拓也の言葉は容赦ないけど、あたしは海の中に放り込んじゃってもいいかなってこの時は思った。 だって、あたしの唇を奪ってもいいのは、翼先輩だけだもん。 ??:「癒しの鈴よ!」 あたしとキレイハナが憎悪の視線に恐怖を感じていた時、聞き覚えのある声がして、癒しの鈴が鳴り響いていた。 すると、人々の表情が和らぎ、それと同時にその場に倒れていた。 ??:「蓮華、大丈夫だった?」 やってきたのは律子だった。後ろにはヒカリの姿もある。 蓮華:「律子にヒカリ、ありがとう!」 キレイハナ:「助かったよ。あたし、ここまで恐怖を感じたのは初めてよ。」 あたしとキレイハナは二人に礼を言った。 ヒカリ:「そんなことないわよ。それより、そこに隠れてる奴、出てきたら?」 ヒカリは森の入り口に向かって声をかけた。 すると、仮面を被った男性が姿を現していた。その横にはゲンガーとスリーパーの姿もある。 ヒカリ:「みんな気をつけて。今回のスペース団を操っている陰の人物はこいつよ!」 蓮華:「こいつが…」 あたしたち4人はついにスペース団のボスと対峙していた。 ??:「どうやら、元団員しかも元幹部クラスのものには気配を消しても無駄なようですね。」 ヒカリ:「当たり前よ。さっきもセレビィに攻撃をしようとしていたわね。あたしが邪魔したけど。」 ??:「ふっ、しかし、私はもうお前たちを倒す準備はできてますからね。」 律子:「それより、正体を言ったらどう?」 目の前の仮面の男性はあたしたちに余裕な態度で接してきていた。 あたしたちは動くに動けない。 と。 それを破ったのはキレイハナだった。 キレイハナ:「…待って。洗脳兄弟に、操られた人々…。スリーパーにゲンガー、…あなた、ドリームね。」 あたしたちは驚きで言葉も上げなかった。 しかし。 ??:「気づかれましたか。その通り。私ですよ、みなさん。」 仮面を外した男性の正体は、確かにドリームだった。 ドリーム。 その名前は忘れない。 スペース団の幹部の中で、唯一あの最終決戦で逃げ延びた人物だったから。 まさか、ボスだったとはね。 ドリーム:「まぁ、今回はそのポケモンに免じて、場を退けるとしましょうか。私としても、正体を見破られた以上、 唯一戦った草使いの少女に技は知られてますしね。しかし、次に会うときはあなた方の最後ですよ。では。」 ドリームは、キレイハナに正体を見破られた事で姿を消した。 そして、3の島はセレビィの癒しの鈴と、あたしの潜在能力を一気に放ったことで何とか元に戻す事ができた。 でも、あたしも美香も涼治も、肉体的、精神的な怪我でその日はずっと休む事になってしまった。 それが二日間も続いたし。 ただ、いいこともあった。 律子:「これを持って帰ればいいのね?」 律子が来てくれた事で、あたし達が持っていても狙われるだけのガラスのカケラを現実世界に持っていってもらったのだ。 ヒカリとカンナさんは4の島で待っていると言っていたし、美咲や拓也も他の島で待機しているらしい。 これからはもっと気を引き締めないといけないと、あたしは強く思いもした。 ナナ:「それにしても、ドリームが犯人だったとはね。」 律子からの報告は流石のあたしでも驚かせた。 でも、彼なら納得がいく。 これまでの妖怪たちに変な助言をしていたのも彼だろう、と。 律子:「ここはやっぱり、救援を頼むべき?」 ナナ:「お願い。」 あたしは律子に頼んだ。 あいつが黒幕である以上、あたしたち少数では勝てる相手ではないと感じたのだ。 ここは志穂ちゃんや氷雨さんたちの力がどうしても借りたかった。 律子:「分かったわ。非常召集を使ってみる。あと、蓮華と美香がやられたこともさりげなく話してみるわ。」 そうすれば男も何人か協力してくれるはずだから。 律子がそう言おうとしたのがすぐ分かった。 ナナ:「それじゃ、お願いね。」 律子が帰ると、あたしも準備をすることにした。 この際だ。 能力の事も話す時かもしれない。 そう思ったりもした。 『おまけ』 律子:「というわけだから、力を貸してくれない?」 あたしは部活に参加して浅香ちゃんと晃正君を呼び出した。 浅香ちゃんは蓮華の危機を知り、すぐに了承してくれた。 でも。 晃正:「でも…俺は…」 やっぱりバスケ部の誓い(3年が決めたあの殴りのルール)があるため、晃正君は了承できないようだ。 しかもここ、バスケ部の休みの時間で、堂々とあたしが浅香ちゃんを連れて入ってきたわけだし。 律子:「大丈夫よ。哲也先輩と翼先輩の許可を得たし、反論があったら上からの圧力をかけてもらうことにしたから。」 あたしがさらっと言うと、顔色が変わったのはレギュラーの皆さん方。 そのうちの一人、博也が駆け寄ってきた。 博也:「なぁ、お前何する気だ?」 律子:「安心して。涼治君の事は任せるわ。でも、この後輩に関してはお咎め無しってことにしてほしいだけよ。 これは緊急事態なの。能力者の力がどうしても必要になっちゃたから。涼治君は自分で休む分、ペナルティを受けるって 言ったんでしょ?だから涼治君へのペナルティはご自由にどうぞ。でも、この子へのペナルティはやめてね。」 あたしの笑ってない笑顔に、流石のポーカーフェイスの博也君も顔を強張らせていた。 よろしい、よろしい。 さてと、これから氷雨さんや志穂ちゃんにも声をかけなきゃ! 帰り際、ふと思い立った事を一つ、バスケ部に叫んでおいた。 律子:「もしかしたら涼治君、後二日延長するかもしれないけど、その時はペナルティ、増やしてもいいわよ。」 博也:「どうしてだ?」 律子:「どうしてって?だって、涼治君、弱いもん。」 あたしはこう言うだけにして、その場を後にした。 涼治君はナナの真の姿を見て心を落ち着かせたけど、まだまだあたしもみんなも中学生だから、大人の力には弱いよ。 でも、セレビィの見せてくれた映像を見る限りじゃ、一方的にやられる弱い姿にしか見えなかった。 だから、もっと強くなってもらわなきゃ、あたしの親友がきけんになっちゃうもの。 それにしても、あたしもナナのアレには驚かされたのよね。 蓮華たちが驚くのはいつかしら?