氷雨:「ナナシマ列島で蓮華ちゃんたちが?」 志穂:「どうして連絡をくれなかったの?あたしも氷雨さんもすぐに協力できたのに。」 あたしは昨日、セレビィの力を借りてこっちに戻ってからすぐに、氷雨さんと志穂ちゃんに連絡を取った。 スペース団との戦いは蓮華たちやナナとなら何とかなるって思っていたけど、どうやらそれは無理だと分かったし、 そのうえ向こうのボスは何と、前の戦いでは幹部だった催眠・洗脳を得意とするドリームだった。 あたしとナナ、カンナさんとヒカリ、美咲ちゃんと拓也が参戦しなければ、3人ともドリームの島全体の罠にかかって 倒されていたところだったのだ。3人の力だけじゃ勝てないって言うのが分かったあたしたちは、みんなを非常招集すると決めた。 アイドルの菜々美や、家族旅行中のなずなを呼ぶのは無理だけど、近くにいるメンバーなら声をかけてそろえることは可能だった。 そして、ナナが最も参戦してほしいと望んでいる二人が修行や里帰りから戻ってきたので訳を話したところ、第一声がこれだったのだ。 律子:「まさか相手がここまで強大とは、ナナもあたしも思わなかったんです。予想以上でした。」 志穂:「そう、それでそのカケラが鍵を握っているというのね?」 あたしが二人に押されながらも弁明すると、志穂ちゃんはその弁明を無視してガラスのカケラを示した。 氷雨:「伝説のデオキシスを封印するために使用した光を纏う物を意味するガラスのカケラ…。 ポケモンのゲームの攻略本では、確かデオキシスをゲットするためにはオーロラのチケットが必要で、誕生の島に行かなきゃ いけないらしいわ。多分、ゲーム上ではチケットとして配布されているオーロラのチケットと同じ役割をしているんじゃない?」 志穂:「そう簡単だといいんだけど…。」 あたしたちの世界ではポケモンは実在する様になったものの、元々はゲームのキャラクターだから、向こうの世界はゲームやアニメと 同じような、現実に存在する世界。 でも、こっちでゲームの設定として表れているものがそのまま存在している部分もある。 もしかしたら氷雨さんの言っている「オーロラのチケット」がポケモン世界の光を纏う物であるガラスのカケラなのかもしれない。 だとしても、これはスペース団の手には渡せられない。 何とかして、メンバーを招集できてから、みんなでこのカケラの残りを探したりしなきゃ。 氷雨:「ただ、問題は集めてからよね。」 律子:「そうなんですよね…。」 志穂:「このカケラ、カケラの状態では封印する事が不可能みたいだもんね。」 氷雨さんと志穂ちゃんが試みた封印が、実は簡単に破られちゃったんです。 だから、カケラは全部集めなきゃいけないんです、何としてでも。 ナナシマ編 5.4の島!決戦十秒前 蓮華:「そろそろ4の島だね。」 涼治:「ふぅ、ようやくだな。」 美香:「2日ぶりの旅だったけどね。」 俺たち3人は数日前に3の島を訪れたとき、油断しすぎてスペース団の大掛かりな罠にはまってしまった。 蓮華や美香は多少の擦り傷や貧血で助かったけど、俺は体中に暴行を加えられたせいで、一日半を絶対安静にさせられてしまった。 本当なら一週間くらい安静にしてなきゃいけないのが出てこれるのは、能力者の自己治癒能力のおかげだけど。 蓮華:「4の島にはヒカリがいるし、4の島に集結して決戦に控えようってことになってるから。」 美香:「翼先輩たちも来るらしいよ。」 涼治:「らしいな。律子が非常召集をかけたんだろ?ドリームが相手になった時点で厄介だって分かったからな。」 あいつの催眠術には俺や哲也先輩たちも悲惨なくらいやられた。 しかもその後に仲間の敵になる状態まで洗脳されたし。 今回もそうなったらヤバイけどな。 美香:「あ、見えたよ!」 そんな時に岩山のような山がそびえる島が見えてきた。 氷タイプのポケモンが多く生息する「いてだきの洞窟」があり、四天王のカンナさんが出身であるのが4の島。 だが、実はこの4の島が、最初にスペース団員を確認した場所でもあるらしい。 蓮華:「確か、ヒカリが港で待ってるはずだよ。」 美香:「へぇ〜、あれっ?でも港には二人くらいいるよ。誰かなぁ?」 蓮華:「ヒカリの友達かなぁ?」 そんな時、ふっと何かを感じた。 ここでも何か起きるような、そんな気がした。 風が教えてくれたのかもしれないけど。 ヒカリ:「ヤッホ〜、4の島へようこそ!」 あたしたちが到着し、港に降りると、ヒカリとボーイッシュな容姿の子が立っていた。 ヒカリ:「紹介するね。あたしの親友のライ。」 ライ:「ハァーイ。アタイの名前はライだよ。よろしくな。」 どうやら女の子のようだった。 ただ、何か落ち着いてる感じじゃなく、体のどこかを動かしてなきゃ気がすまなさそうな感じだった。 短気なのかな? だったら話しかけないと怒りそうだなぁ。 美香:「あたしは美香。よろしくね。」 蓮華:「あたしは蓮華。はじめまして。」 涼治:「俺は涼治。よろしくな。」 でも、挨拶無しって言うのも悪いから、あたしたちも簡単な自己紹介をした。 美香:「そういえば、カンナさんは?」 あたしが尋ねてみると、 ヒカリ:「ちょっと出かけてるよ。まだナナたちも来てないし、…そうだ、島の中を案内するよ。」 と返ってきた。あたしは休みたかったんだけど…、 ライ:「そうだな、おい、ついてきな!」 ヒカリとライがさっさと歩き出したので、あたしたちは休む間もなく歩き出した。 美香:「何か強引…」 蓮華:「でも、親切心からなんだよ。断れないよね。」 涼治:「そうだな。休むのは後だ。行くぞ。」 と。 ライ:「お〜い、早く来いよ!」 ライが振り返ってせかしていた。怒らせちゃヤバそうだ。あたしたちは後を急いだ。 ヒカリ:「あそこがポケモンセンターで、あっちの道がいてだき洞窟に続くための湖の近くに続くの。」 ライ:「あれが育て屋だぜ。ちょっと今ポケモン預けてんのさ。…そうだ!」 同じところを散々歩き回った気がしたんだけど…。 そう思ったとき、あたしたちは突然ライの発声にドキッとした。 美香:「何?」 ライ:「あんた達3人はさ、バトル強いんだろ?アタイと勝負しようぜ!」 ライはヒカリから聞いたのだろうか? あたしが目を向けると、何も言わずに頷いた。どうやらヒカリから聞いてるらしい。 美香:「それで、誰とバトルをするの?」 この中で強い順番を決めるとなると、一番は蓮華、次が涼治君、最後があたしかな。 でも、ヒカリから聞いてるとしたら蓮華とバトルをするのかも。 しかし。 ライ:「そうだな…、そこの少年!」 涼治:「俺っ?」 ライ:「少年なんてあんたしかいないだろ。あんただよ。さっさとポケモン出しな!バトルするよ!」 ライが勝負の相手で選んだのは、涼治だった。 涼治は最初、戸惑っている様子だったけど、 ライ:「聞こえないのかい?ポケモンを出しなって、言ってるんだよ!!!(激怒)」 ライがまだ出してないのに怒鳴って言った。 涼治:「あ、ああ。行け!ガラガラ!」 涼治が出したのは地面タイプのガラガラだった。 ライ:「それじゃあたしはこいつさ!フロート!遊んでやりなよ!」 ライのポケモンはちょっと卑怯な気がした。 フロートというニックネームのポケモンは毒・霊タイプ、特性に浮遊を持つゴーストだった。 ライ:「ヒカリから聞いてるぞ。あんた達は相性不利でも勝てるんだろ?だったら浮遊でも勝てるよな?」 どうやら初めから相性不利な相手を出す気がいたようだ。 でも、涼治はライの様子を見てやる気になっていた。 涼治:「ああ、勝ってみせるさ。ガラガラ、砂嵐だ!」 一応街の中のバトルフィールドを借りて行っているから、街の人たちには迷惑にはならない。 ガラガラは砂嵐を起こしてゴーストから自分を隠すようにしていた。 特性は砂隠れではなく避雷針らしいけど、浮遊特性のゴーストでも砂嵐のダメージは受けるはずであり、地面、岩、鋼 以外の属性のポケモンには厄介な技であることには変わりない。 しかし、ライは結構強かった。 ライ:「これくらいでフロートの攻撃をかわすつもりか?フロート、連続でシャドーパンチだ!」 ゴーストの手が二つとも体から離れ、砂嵐の中をガラガラに向かって飛び、ガラガラを殴りつけていた。 シャドーパンチは必ず当たる技なので、たとえ命中率を下げようとしても無駄なのだ。 涼治はシャドーパンチを骨棍棒で受け止めようとしていたけど、嘲笑うかのようにシャドーパンチは決まっていた。 ライ:「あははははは!所詮はその程度だな。フロート、そのままナイトヘッドで止めをさせ!」 ゴーストの手はガラガラのそばで止まり、黒い波動のようなものをガラガラに放った。 ナイトヘッドは相手に自分のレベルと同じくらいの威力の攻撃を放つ事ができるのだ。 涼治:「させないぜ!ガラガラ、見切れ!そして岩なだれだ!」 ガラガラはナイトヘッドをすんでのところでかわし、骨棍棒を地面に向かって振り下ろした。 すると地面が割れ、岩が噴出するように飛んでゴーストの本体や手に向かって落下していった。 ゴーストは手に意識を向けて攻撃を放っていたため、岩なだれを諸に受けたようだ。 ライ:「何!?フロート、だったらメガドレインで体力を吸収してやれ!」 涼治:「させないぞ!ガラガラ、バブル光線だ!」 ライは岩なだれの威力に驚き、メガドレインで勝負に出ようとしていたけど、スピードはガラガラの方が速かった。 メガドレインが使用される前にゴーストはバブル光線を受け、倒れていた。 涼治:「残念だったな。俺の勝ちだ。」 ライ:「ちッ。負けちまったよ。また、バトルしないか?」 涼治:「そうだな。またやろうぜ。」 トレーナー同士はバトルが終わったら友情を確かめ合い、いつかのバトルを約束しあう。 と、ガラガラも疲れているようで、骨を杖のようにしていた。 涼治:「そろそろポケモンセンターに行かないと行けないようだな。」 蓮華:「そうだね。ナナにも電話したいし…。」 あたしたちはまだ、この島のポケモンセンターを訪れていない。 すると、それを察したライは別の方向に歩き出していた。 ヒカリ:「ライ?どこ行くの?」 ライ:「ちょっとな。育て屋とかに行くから帰る。じゃあな。」 ライはさりげなくあたしたちに気を利かせたらしい。 口が悪そうだったり、短気そうだったりのそぶりが多いけど、実際はとっても優しい子なのかもしれない。 だからヒカリとも親友になったのかも。 あたしも交流を深めたかったなぁ。 そしてあたしたちはポケモンセンターに向かった。 ポケモンセンターは足止めされているトレーナーが多いようで、ラッキーも忙しく動き回っていた。 涼治:「忙しそうだな。」 美香:「そうね。何か地面タイプや岩タイプがたくさんいる気がするし…」 涼治:「岩タイプのポケモンのケアは大変だからなぁ、忙しいわけだろうな。…にしても多いな。岩タイプのトレーナーが 集まってるのかもな。」 蓮華:「それじゃ、ポケモン預けたし、あたし、ちょっと電話してくるね。」 美香:「ええ、あたしたちは男女別に部屋取ったから。」 涼治:「何かあったら知らせてくれよ。」 蓮華:「了解。」 あたしたちは一旦別れた。 ナナ:「ライと勝負したの?」 蓮華:「うん、あたしじゃなくて涼治が。」 あたしはポケモンを預けてすぐ、ナナに電話をかけた。 前回ナナがこの島を訪れたときに、4の島だけは通信を回復させておいたらしい。 美咲ちゃんと拓也が監視をすることになり、ナナはグロウタウンに戻っていた。 美香と涼治は部屋や喫茶ルームで休んでいる。 流石に来たすぐは休みたかったから、ようやく体を伸ばしてるんだろう。 ナナ:「ふぅ〜ん、ライはね、口は悪いけど結構強いのよ。そうじゃなかった?」 蓮華:「見た感じ強かったよ。…バトルしたことあるの?」 ナナ:「うん、あの子はね、あたしがマスタークラスって分かってても勝負を挑んでくるくらい、負けるのを恐れない 強い心を持ってるの。だから、あたしも、あたしに対戦してくる人にはそれくらいの気持ちをもってほしいって思うくらいなのよ。」 ナナはマスタークラスのトレーナー用のジムのジムリーダー。 でも、負けると察してポケモンを戻すトレーナーや、あきらめちゃったり、自信をなくしたりするトレーナーも多いらしく、 ナナは強いトレーナーを待っているらしい。 ナナ:「ところでね、律子の招集が少し遅れてるらしいの。明日まで待ってくれない?」 蓮華:「うん、今のところはいいけど…何かあったの?」 ナナ:「ううん、みんな元々スケジュールがあったから、それを調整してるのよ。」 蓮華:「そっかぁ。分かった。みんなに知らせておくね。」 電話を切ったら、あたしはジョーイさんに呼ばれた。 蓮華:「なんですか?」 ジョーイ:「私は3の島のジョーイの親戚のイトコの姉です。彼女からはお世話になったと聞いています。 実はちょっとお願いがあるのよ…」 あたしは微妙に違和感を感じたけど、ジョーイさんに頼まれごとをもらった。 ジョーイ:「さっきいてだきの洞窟の近くでうめき声を聞いた子がいるのよ。そこにモンスターボールを置き忘れてきちゃったそうなの。 私は仕事がたまっていてね、取りにいけないのよ。お願いしてもいいかしら?」 蓮華:「いいですよ。」 あたしは簡単な事だったので、ひとりで行く事にした。 これくらいの事で3人、4人で行くわけにはいかないし。 美香:「あれっ?蓮華、どこに行くの?」 蓮華:「ちょっとね。ジョーイさんに頼まれごと。」 あたしは美香に頼まれごとの内容を話した。 蓮華:「簡単な事だから、ポケモンもサゴッピだけでいいかなって思ったし。」 美香:「大丈夫なの?だってあそこはスペース団がいたって場所だよ。」 美香は心配性だなぁ。 確かに危ないかもしれないけど、入り口くらいなら大丈夫だから。 美香:「う〜ん…」 …大丈夫なのに。 蓮華:「大丈夫!心配しないでね。他の絆たち、まだ預けてる最中だから、代わりに受け取っておいて。」 美香:「了解!」 美香と別れてすぐ、あたしは洞窟に向かった。 蓮華:「確かここなのよね?」 あたしは洞窟の近くに来たけど、何故か誰かが来たって言う形跡を確認する事ができなかった。 蓮華:「あれっ?おかしいなぁ。」 と、洞窟の壁に不釣合いなボタンがあった。 蓮華:「これは…?」 ジョーイ:「それはこの洞窟に作ったスペース団基地に行くためのゲートを開くボタンよ。」 蓮華:「ジョーイさん!…えっ、どうし…」 あたしは突然ジョーイさんが背後にいたのかが分からなかった。 分からないまま、背後から放たれた冷凍ビームか何かが、あたしを包み込み、あたしはそのまま氷付けにされてしまった。 美香:「大丈夫なの?」 美香の言葉が頭をよぎった。 これは…罠…でも…。 あたしはもう動く事もできない。だんだん意識も失われていくような気がして…、あたしは気を失った。 数時間後。 蓮華が戻ってこない…。 涼治:「なぁ、何かおかしくないか?」 突然、涼治が部屋を訪ねてきた。 すごく焦った表情をしていたので、あたしも蓮華が帰ってこないことも含めて心配になってきた。 美香:「えっ?」 涼治:「ジョーイさんもラッキーの姿も見かけないぞ。ポケモンも回復してない状態で置いてあったし。」 見に行ってみると、確かに機械が全く動いてない。 ていうか、そういえば、4の島に足止めされているはずのトレーナーの姿も見かけないことに気づいた。 ここに来た時は、確かに何人かのトレーナーを見かけたし、ラッキーとジョーイさんの姿も見かけたのに…。 誰もいない…。 美香:「蓮華、確か洞窟に行ったはずよ。」 涼治:「洞窟?それってスペース団を見かけたって言うアレか?」 美香:「うん…」 涼治:「おい!あそこは危ないって俺たちでも知ってるだろ?何で止めなかったんだよ!」 あたしが蓮華の事を話すと、涼治が切れた。 美香:「あたしも言ったよ。でも、入り口近くに行くだけだから大丈夫だって…あぁ!」 あたしはあることにすっかり忘れていた。 涼治:「おい、今度はなんだよ。」 涼治の声が荒れている。下手なことを言うとさらに切れそうだと思った。 でも言うしかない。 美香:「今って、確か一般の人は外には出ないのよね。しかも、スペース団のいた場所に近づく子供はいない。 なのに、いてだきの洞窟の近くで落し物をしたトレーナーがいたなんて…。あぁ、もう、何で気づかなかったんだろう…」 あたしが言うと、涼治は呆れた様なため息をした。 涼治:「お前もお前だけどさ、蓮華も蓮華だな。…さてと、探すぞ。」 美香:「えっ?」 涼治:「探すんだよ。もしさっき俺たちが来たときにいた奴らが全部偽者なら、本物はどこかにいるはずだろ?」 美香:「そうよね。」 あたしは涼治に言われ、蓮華のポケモンも持ってポケモンセンターの中を探すことにした。 でも、誰もいない。 涼治:「俺、もうちょっと奥を探してくるよ。」 俺は美香に言って離れた。 声が帰ってこなかったから聞こえていないかもしれないが、実は怪しい人影を見つけたからだった。 美香に言うと騒ぎそうだったんだよな。 それで一人で奥に入っていった。 でもこれだと、さっき美香に怒った事と矛盾してる気もする。 だから怪しい奴が確認できたらあいつを呼んで、二人で捕まえようと思っていた。 が、奥の部屋に行ったのに誰もいない。どこかの倉庫のようで、たくさんの物が置いてあるが、それは人が入れそうな 大きさではなかった。 涼治:「気のせい、だったのか?」 まさか、そんなはずはない。けど、実際に人はいない。 しょうがなく引き返した俺だったけど、その直後、背後で音がした。 が、振り返ろうとした矢先、俺は何かに包まれていた。 涼治:「な、何だよ、これは!」 ボールを手に取ろうと思ったが、俺を包み込んで物は、俺の体中を覆ってしまい、口も何もかも塞がれてしまった。 けど、だからって負けない。 俺は手から風を放出してそれらを膨らませて免れようと思った。 それは成功した。 成功したけど…。 目の前にはジョーイさんがいて、黒ずくめの誰かがナイフを当てている。 声を上げようと思ったが、ジョーイさんがシーっと言った。 俺は風の軌道をカーブをつけて黒ずくめに送り、ジョーイさんを助けた…はずだった。 涼治:「大丈…うぅっ!…」 ジョーイさんを助けたかと思ったのに、ジョーイさんが俺の鳩尾を殴り、何かを口に当ててきた。 俺は不意打ちを受け、さっきの何かに包まれた時のダメージもあって気を失っていた。 蓮華や美香に言えないな…これじゃ。 美香:「誰もいない…、どうなってるのよ!」 探し始めて時間が経ったけど、誰もいる気配がない。 そう思ったときだった。 蓮華のボールからキレイハナが出てきたのだ。 キレイハナ:「ふぅ〜、お昼寝の最中に騒がしいと思ったら、全く、前回の事があるのに油断するんだもの。 あたしも手伝うよ。」 ボールの中で一部始終を知ったらしい。 キレイハナは近くの書類の入った箱をどけ始めた。 美香:「何してるの?」 キレイハナ:「あのね、この下見て。」 キレイハナの示した場所には、地下室への入り口があった。 そこを開けてみると、そこには縛られて猿轡を付けられたジョーイさんや、ラッキーたちや、カゴの中に閉じ込められたポケモンたちや、 たくさんのトレーナーの姿があった。 あたしとキレイハナの姿を見ると、ようやく歓声に近いうめき声が聞こえ始めていた。 美香:「こんなところにいたんだ…」 キレイハナ:「あたしには聞こえたのよ。ポケモンの力を借りればすぐだったのに…。」 美香:「あ…」 キレイハナ:「全く、美香ちゃんも涼治君も動揺しすぎだよ。焦りすぎ!…っていうか、涼治君は?」 キレイハナに指摘されて気づけば、涼治の姿がなかった。 すると。 ??:「この子をお探しかな?」 背後から声が聞こえた。 振り返るとそこには、ボイスチェンジャーを口につけた男性が立っていて、男性は縛られた状態の涼治を担いでいた。 ??:「気づかれてしまったが、4の島は既に俺たちスペース団が制圧した。ヒカリもライという少女も、そしてお前らの仲間の 草使いも眠らせたからな。」 美香:「あなたは…誰?」 キレイハナ:「その容姿だと、幹部クラスみたいだけど…。」 男性のコスチュームは前の戦いで幹部が着ていたものと同じだったのだ。 ??:「俺か?俺は岩と鋼の戦士ガントス。こいつはお前たちに返すぞ。」 ガントスは床に涼治をたたきつけた。 美香:「涼治君!ひどい!」 ガントス:「ひどいか?いい褒め言葉だ。」 涼治君は薬で眠らせられているのか、叩きつけられても呻き声一つさえも上げていなかった。 ガントス:「さてと、俺たちはここをおさらばしますかね。いや、草使いの少女を処分してからだな。」 美香:「蓮華を処分ですって?」 キレイハナ:「させるわけないでしょ!」 ガントス:「ふん、お前らが阻止できるわけがない。お前らにはこれだ!」 ガントスがボールを取り出して、あたしたちに放ってきた。軌道上で行くと、ポケモンたちは涼治君の真上に出ることになる。 ヤバイ! そう思ったら、キレイハナも同じことを思ったのか、蔓の鞭で近くまで引き寄せていた。 そして、出てきたポケモンは3匹のゴローニャと、2匹のフォレトスだった。 そのうえ、ガントスのさらに後から出てきた影は、カビゴンを出している。 美香:「ここはやるしかないようね。」 ガントス:「はぁ?俺たちはお前の相手をしている気はない。」 ??:「そうね、そんなことをするよりもこうするの。手っ取り早いわ。」 キレイハナ:「何ですって?」 キレイハナが問いかけた時、彼らは言い放った。 ガントス&??:「一斉に大爆発だ!」  と。 そしてポケモンたちは一斉に光り出していた。 あたしとキレイハナは咄嗟に涼治君を連れて地下室に飛び込んだ。 直後。 大爆発がポケモンセンターを襲った。 ポケモンセンターが大爆発を起こした直後、センターの近くにはガントスと、もう一人、同じ幹部服を着た女性が立っていた。 ガントス:「やはり呆気なかったな。」 ??:「そのようね。まだまだ奴らは子供だし、詰めが甘いのよ。この島の奴らはすべて抑えたし、後は洞窟の中で氷漬になっている 草使いの少女を粉々に砕いてしまおうか。」 ガントス:「そうだな。我々の作戦の邪魔になるものは全て生かしておくわけには行かない。」 ガントスと女性は、4の島の各地に配置された団員に通信機で指示を送ろうとした。 しかし。 全く通信をする事ができない。 自分たちは特別な電波で通信ができる通信機を持っているというのに…。 ??:「どういうことだ?」 ガントス:「分からん。」 だけど、彼らはそれを分からせられる結果になった。 ??:「許さない。」 突然響いた冷たい声と共に、島全体に雷が落ち、風が吹き荒れ、吹雪が二人を襲ったのだ。 ガントス:「何!?」 ??:「まさか、援軍だと?」 ナナ:「ええ、そのとおりよ。」 吹雪も風も止み、ガントスと女性の前にはナナを筆頭に、ヒカリたち4の島の住人と、氷雨や志穂たち援軍の姿があった。 ナナ:「よくも蓮華ちゃんたちにひどいことをしてくれたわね。」 氷雨:「そのうえポケモンセンターを爆破させるとは。」 志穂:「許すまじ。」 ガントス:「それがどうした。ここで宣言しておこう。我々スペース団は今からナナシマに一斉攻撃を行う、とな。」 ??:「すでにナナシマ全域にはお前たちの知らない場所で団員たちが動いている。お前たちがどんなに足掻こうとも、 最後にはこの瓦礫の下にいる者たちの二の舞になるのだからな。」 ガントスたちは援軍の姿に圧倒され、しかも島の外に配置したはずの団員たちを山のように返されたというのに、 まだ負けたとは思っていないらしかった。 だが。 美香:「誰が二の舞よ!」 今度はポケモンセンターの下敷きになったはずの美香の声が響いたのだ。 直後。 センターの瓦礫から多数の炎の矢が噴出し、瓦礫を一気に取り除いていた。 ??:「何!あの爆発から逃れるとは…」 美香:「残念でした。あたしは炎属性なの。爆発の力で、高音の熱を受けても、あたしのシールドはそれらを簡単に弾いてくれるのよ。 さて、どうするつもり?」 ガントス:「しかしまだ我らの手には草使いの命も…」 キレイハナ:「蓮華が何だって?」 今度は背後からキレイハナが叫んだ。 ??:「な…」 流石にもう声が続かないようだった。 美香:「爆発を逃れた後で、キレイハナがチリリと一緒にボールごと洞窟にテレポートしたのよ。」 キレイハナ:「あたしたち、39の絆で大暴れさせてもらったから。」 キレイハナが言い、蓮華のポケモンたちが一斉に吠えた時、洞窟の方で爆発が聞こえた。 ガントス:「こうもすべてを我々の包囲網よりも大きな包囲網で破るとは…」 ??:「ドリーム様があなたたちに危険を感じるわけですね。しかし、我々は負けません。今日はこのくらいにしておきましょう。」 女性が煙玉を投げ、煙が包まれ、それをリーフィーたちが吹き飛ばしたのだが、一瞬のうちに団員たちと、二人の幹部は姿を消していた。 ナナ:「逃げられた…」 ヒカリ:「そうだね…」 その直後だった。 ナナにはニシキから、ヒカリにはユウから連絡が入っていた。 ニシキ:「大変だ!スペース団が1の島に攻撃を仕掛けて来たんだ!既に様々な施設が損害を受…うわぁ!」 ナナ:「ちょっと、ニシキ!?」 ニシキからの連絡はすぐに途絶えてしまった。 ユウ:「ヒカリ、援軍をくれ!」 ヒカリ:「ユウ?」 ユウ:「スペース団の総攻撃が始まったんだよ!俺とキワの婆さんでもう少し頑張ってみるけど、早く来てくれ!」 ヒカリ:「う、うん!分かった!」 ナナ:「スペース団の総攻撃が始まったわね。」 ヒカリ:「ええ、ここはみんな、分かれて行動しないといけないわね。ナナ、蓮華ちゃんたちはナナと律子ちゃんに任せるから、 この援軍を1,2,3,5,6の島に分かれて向かわせて。7の島へは後で行くとして、まずは本拠地にされていない島で スペース団を追い出さなきゃ。」 ナナ:「分かったわ。」 ナナの指示は素早かった。 氷雨と健人、菜々美は攻め落とされた可能性が高い1の島に、哲也と玲奈、翼、そして志穂は援軍として2の島に、 海斗と清香、晃正と浅香は民衆が再び洗脳されている可能性がある3の島に、久美と希、海は5の島、鈴香と悠也、なずなは 6の島に向かい、律子とナナ、ヒカリは蓮華たちと一時、4の島に残る事になった。 みんなが行ってしまうと、美香たちは自己治癒能力を放出して、ポケモンセンターの瓦礫に巻き込まれた人や、怪我を負った人、 そして蓮華と涼治を助ける事にした。 数時間後。 蓮華:「ん…、ナナに律子!あれっ?あたし…」 あたしが目覚めると、何故か外にいて、たくさんの人が動いていて、しかもポケモンセンターが瓦礫に変わっていた。 蓮華:「これって一体…」 美香:「スペース団の罠だったのよ。あたしたち、また見事にはまっちゃったの。」 ヒカリ:「しかも町に住んでたあたしやライたち島民も、あっさりと騙されちゃったのよ。」 あたしはこれまでのあらすじを聞き、流石に単独行動に出たことを呪った。 蓮華:「涼治は?」 美香:「もうだいぶ前に目を覚まして、今はポケモンたちのケアに励んでるよ。」 律子:「蓮華の事、すご〜く心配してたし。」 蓮華:「そう…」 と、ナナが来た。 ナナ:「これからどうする?」 蓮華:「う〜ん、あたし…戦う。」 ナナ:「やっぱり行く?」 蓮華:「うん。あたし、迷惑かけた分、頑張りたいもの。」 美香:「蓮華が行くならあたしも行くよ。」 ヒカリ:「あたしだって、これから2の島に行くし。」 ライ:「おい、あたしを忘れてもらっちゃ困るぞ。」 ナナ:「結局みんな、戦う気マンマンなのね。」 律子:「それじゃ、あの連中を倒す?」 ふと律子が、妙な気球を発見していた。 律子:「そこの気球に言うわよ!言いたくないけど、あんた達何者なのよ!」 律子が叫ぶと、あたしたちは聞いたこともない、どこかかっこいい曲が流れたのを聞いた。 そして3人組が団員たちとパラシュートで降りてくるのが見えた。 ヒカリ:「あ、あいつらだ…」 ヒカリは誰なのか分かったらしかったが、それを言う前に口上が始まっていた。 スパイル:「何者なのかと聞かれたならば」 セイラム:「答えなくてもいいのだろうが、どうしても聞きたいという者のために」 ブラスト:「お答えするのが我らの役目であり、使命」 スパイル:「冒険の情熱を燃やすため」 セイラム:「神秘の秘宝を守るため」 ブラスト:「そしてスペース団の栄光を広めるため!」 スパイル:「究極の愛と」 セイラム:「最高の神秘と」 ブラスト:「敬愛なる誠実の元に」 3人:「パワフルファイターな4幹部直属の部下!」 スパイル:「スパイル」 (気球からパープル色のスポットライトがつき、バラのホログラムが彼を取り巻いた) セイラム:「セイラム」 (気球からスカイブルーのスポットライトがつき、オーロラのホログラムがバックを飾った) ブラスト:「ブラスト」 (気球から黄色のスポットライトがつき、雷のホログラムが出た) スパイル:「神秘的な密林を駆け抜け」 セイラム:「秘宝を探し回り」 ブラスト:「冒険の情熱を知るスペース団の3人には」 スパイル:「パープル」 セイラム:「スカイブルー」 ブラスト:「そしてイエローな」 3人:「明るい未来が待ってるぜ!」 長い口上が終わった時、他の団員が一斉に拍手をしているのだった。 セイラム:「アンコールは聞きたいですか(ハート)?」 団員:「聞きたいで〜す!もう一度お願いします!」 セイラム:「よろしいですけど、ここはあたしのギリギリまででいいわよね?」 セイラムの胸元ギリギリ、スカートギリギリが行われ始め、ヒカリが切れてフライゴンの破壊光線をスペース団に放っていた。 ヒカリ:「あんたたち、何しに来たの?」 セイラム:「あらあら、怖いわね。女の美貌がないから嫉妬してるの?」 スパイル:「君たちのような美しい女性には怒りは必要ないよ。その怒りで美貌が崩れるからね。」 ブラスト:「まぁ、それはいいとして、俺たち4幹部直属によって、この4の島は制圧させてもらうからな。」 ライ:「何だって?もう一度言ってみやがれ!」 美香:「そんな事は絶対にさせないから。」 蓮華:「あたしたち、戦う気で一杯なの。」 ナナ:「今回はあたしも行こうかな〜。」 律子:「それじゃあたしは、みんなの援護をしようかな。」 既にスペース団の長い向上中に、島の人たちは安全な場所に涼治とジョーイさんが避難させていて、蓮華たちとスペース団以外は センター跡地には誰もいなかった。 あたしたちがボールを出そうとすると、 ??&??:「ちょっと待て!我々もいるぞ!」 と、今度はテレビで聞き覚えのありすぎる声がした。 ヒカリ:「あれっ?この声は…」 セイラム:「全く、お前たちは作戦に必要ないとアレほどまで言ったのに…」 ヒカリが声の主に気づき、セイラムがすごく呆れた声で言い、 ヒカリ&セイラム:「来ても邪魔でしかない。」 と、何故かハモってしまうくらい、ハモって言った。 それだけ、あいつらはスペース団の中ではお荷物扱いなんだなぁとあたしたちも思うのだったが、何も言っていないのに 口上が始まっていた。 ヤマト:「なんだかんだと聞かれたら...」 コサブロウ:「答えてあげないの普通だが...」 二人:「まあ特別に答えてやろう!」 スパイル:「答えない方がいいけどな。」 ブラスト:「聞く気もない。」 団員たち:「(コクンと頷く)」 ヤマト:「地球の破壊を防ぐため...」 コサブロウ:「地球の平和を守るため...」 ヒカリ:「相変わらずありきたりな口上ね。」 セイラム:「地味だわ。」 ヤマト:「愛と誠実の悪を貫く...」 コサブロウ:「キュートでお茶目な敵役...」 ナナ:「ホントに相変わらずだなぁ」 律子:「うん、ナナ、破壊光線であの二人だけ一掃しない?せっかくの戦いの邪魔だよ。」 ヤマト:「ヤマト!」 コサブロウ:「コサブロウ!」 既に聞いてるものはいないのに、それに気づかず久々の登場と口上にヤマトとコサブロウは浸っていた。 しかもコサブロウはコサンジと呼ばれないことに喜んでいる。 美香:「あ、言い忘れてた。」 ライ:「何をだ?」 美香:「あのコサブロウって奴、コサンジっていう別の名前があるのよ。」 ライ:「へぇ、そうなのか。」 ヤマト:「宇宙を駆けるスペース団の二人には...」 コサブロウ:「ショッキングピンク、桃色の明日が待ってるぜ!」 ヤマト「なーんてな!」 二人は言い終えていたけど、ほんとにはっきり言って、仲間のスペース団たちも、あたしたちも全く見てないし、 聞いてもいないことを知り、怒り始めた。 ヤマト:「ちょっと!あんた達人の話は最後まで聞くように教えられてないの?」 コサブロウ:「そうだそうだ!これでは俺たちが馬鹿になるではないか!」 ヒカリ:「とっくの昔に馬鹿だったじゃない!」 ヤマト:「何ですって…!!裏切り者のあんたに言われる筋合いはない!」 セイラム:「あらあら、元団員にまではっきり言われてしまうなんて、流石はスペース団の弱小お荷物下っ端雑用係さんですわね。」 スパイル:「お前たちにはドリーム様の部屋を綺麗にする義務があったはずだ。」 ブラスト:「それが終わったら4幹部様の個室を掃除し、幹部服を綺麗にし、団員の談話室を散り一つ残さずに掃除するはずじゃ なかったのか?」 どうやらヤマトとコサンジはスペース団の中では散々な扱いらしかった。 ヤマト:「うるさいわよ!あたしたちだってそれなりに強いんだから!」 ナナ:「そう、それじゃ、あたしが相手よ。」 コサブロウ:「おう、お前の相手をしてやるよ。」 数秒後。 5秒も立たずにヤマトとコサンジのポケモンはすべてナナのポケモンに倒されていた。 ナナ:「うっわぁ〜、弱い。ポケモン使い始めた新米トレーナーよりも弱いわね。」 ナナは流石にきつい一言を放った。 でも、この状態を見ているあたしたちと団員たちも何なんだろうな。 それから数秒後。 美香:「コサンジバイバ〜イ!」 ライ:「ヤマトのオバサン、もうちょっと肌の手入れをしろよ!」 ヤマト、コサンジはナナのポケモン(進化したてのバタフリー)の破壊光線でぶっ飛ばされていた。 ヤマト:「コラァ〜!まだあたしはオバサンじゃないわよ!」 コサンジ:「おい、俺の名前はコサブロウだ!間違えるな!」 二人:「やな気持ち〜!!」 二人が行ってしまうと、セイラムは煙玉を取り出していた。 セイラム:「今の状態でバトルをしても面白くなさそうなので、帰らせていただきますわ。」 ヒカリ:「そうして。」 今の状況では、あたしたちもスペース団員たちも意見が同じだった。 ヤマトとコサンジの登場で、戦う覇気が失われてしまったのだ。 ホントなら倒さなきゃいけないスペース団なんだけど、あたしたちはそれを見送り、再び4の島の救助作業が始まったのでした。 明日から、あたしたちは他の島に移動します。   『オマケ』 島に3の島に出発するメンバーが最後に出発する前のことでした。 涼治と晃正は二人で話していた。 涼治:「まさか晃正が来るとはな。部活はどうだ?」 晃正:「順調ですよ。ご愁傷様です。」 晃正が涼治を哀れそうな目で見ながら言い、 涼治:「…えっ?」 流石に嫌な予感がするといった表情を涼治がした。 晃正:「何か、ペナルティが増えてますよ。博也先輩たちが言ってました。」 涼治:「何だって?俺の支障にきたさない軽めのはずじゃなかったのか?」 晃正:「初めはそうだったんですけど…」 晃正がペナルティ内容を話し、それに哲也と翼が色をつけ、さらに律子が葉っぱかけたと知り、涼治は青くなっていた。 涼治:「おいおい…それって尋常じゃなくないか?」 晃正:「しょうがないですよ。…買出しの時は頼みますね。俺と尊は軽めの物を頼みますけど。」 晃正はさりげなく言ったのだが… 涼治:「…(流石に晃正を睨みたくなったらしい)」 涼治は突き刺すような視線を晃正に向けていた。 晃正:「あははははは…(乾いた笑い)」 それを見てがっくりため息をつく涼治。 涼治:「はぁ…、まぁ、試合に勝つためだしな。」 晃正:「でも、涼治先輩がいなくても試合には勝てそうですよ。」 晃正は博也たちのコンビプレーを見ていたのでそう思ったらしく、ついそのまま言ってしまった。 実は晃正は知らないのだが、そのコンビプレーがさらに流れやすくするのには涼治の存在が必要となることを。 涼治:「ほぉ〜、初めはスリーポイントも、ゴールの真下からでもシュートがろくにできなくて泣いてた奴が言うのはこの口か? ボールに触れてもすぐに雑用やランニングばかりさせられて、実力もないからお荷物扱いされて、最初は泣いてばっかりだった お前がそこまで言うようになったんだな。」 晃正はついに涼治を切れさせていた。 流石に言い過ぎたと思ったようだが、もう後の祭りだった。 晃正:「い、痛いっすよ!涼治先輩!やめてください!」 涼治の体はすっと動き、晃正にプロレス技のはめ技をかけていた。 涼治:「お前なぁ、調子には乗るなよ。分かってるか?」 晃正:「は、はい…」 涼治:「それじゃ聞こうかな。俺が復帰したら何を買わせたいんだ?怒らないから正直に言えよ。」 晃正:「あ、はい。2リットルのペットボトルの水を3…うわぁ!?」 誠実な晃正は、思ったことをはっきりそのまま言ってしまい、最後にジャーマンスプレックスを涼治にかけられ、 苦しみ悶えていた。 浅香:「…晃正の馬鹿。」 それを見ていた浅香も、流石に晃正の正直ぶりには呆れているのだった。