スペース団の攻撃が開始されてから数時間後のことだった。 ??:「うふふふ、やっぱりこの島の攻略は簡単だったわね。」 ユウとキワが先頭に立って立ち向かっていたはずの2の島はほぼ壊滅状態になり、幹部らしき女性の姿がそこにあった。 女幹部:「まさかこうも楽にいくとは思わなかったし…まぁ、あたしだけの力じゃないにしても、今からここに来る 能力者とか言う子たちも、あたしたちも攻撃に倒れ、スペース団の捕虜になるでしょうね。」 女性が冷たく言うと、そこに団員の一人がやってきた。 団員:「ご報告申し上げます。2の島の島民は裏切り者のユウと技伝え人のキワ以外すべて捕虜として拘束しました。」 女幹部:「よろしい。他の二人の行方はつかめたかしら?」 団員:「いえ、岬にも街の中にも姿から気配さえも感じ取る事はできずじまいでして…」 女幹部:「そう、…確かに虫一匹しか入れない場所や地中にもいないのよね。…了解したわ。あなたたちは引き続き、 島民を恐喝し、スペース団の団員になるように洗脳教育を続けなさい。」 団員:「はっ!」 団員が行ってしまうと、木陰からは別のコスチュームをつけた少年が立っていた。 女幹部:「??、あなたの仕事はおすみかしら?」 少年:「はい。作業は順調に進んでいます。しかし、どうやら邪魔な輩がこちらに向かってきている模様です。 どのような対処をしましょうか?」 女幹部:「邪魔な…能力者のことね。やっぱり下っ端の団員を使った足止めは効かなかったようだし…、そうね、 あなたに任せるわ。あなたがもし駄目だった場合、その時はあたしが出るから。分かったわね?リューク。」 リューク:「はっ!」 リュークと呼ばれた少年がポケモンに乗って海を渡っていくと、女幹部は再び2の島を眺めていた。 ナナシマ編 7.2の島の激闘!ポケモン攻防戦 4の島を出発して早1時間。 あたしたちは壊れた船を水ポケモンの助けを借りて進めていた。 ついさっき下っ端と思われる団員たちの奇襲を受けて、船のエンジンとモーターを破壊されてしまったのだ。 この島に乗ってるのはあたし(玲奈)と巫女の志穂ちゃん、親友の翼と、あたしの彼氏の哲也。 翼と哲也は風使いの能力者だから先に飛んでいけばいいんだけど、そんなことをしたらあたしと志穂ちゃんは ランターンとパルシェンの力だけで船を進めるしか方法がなくなってしまうため、この場に残っていてくれていた。 志穂:「先輩、ユウからの連絡はどうでした?」 玲奈:「駄目、全く応答はないわ。」 あたし達が4の島に到着してすぐに始まったナナシマへの攻撃。 あたしたちも頑張って向かってるけど、船がこの状態では到着も遅れてしまうため、2の島にそれを告げたかった。 でも、その無線も先ほどようやく志穂ちゃんの式神の力を借りて直したばかり。 ユウとの連絡も全く取れずにいた。 翼:「2の島がヤバイ状況なのは考えておかないとな。」 哲也:「ああ。しかし、それは考えたくない事だな。」 玲奈:「そうだね。…みんなは頑張ってるかな?」 翼:「頑張ってんじゃねえか?…あっ…」 簡単に返事を返した翼がいきなり、間の抜けたような声を出した。 哲也:「どうかしたのか?」 翼:「あのさ、健人達、大丈夫かと思ってさ。」 哲也:「健人達がって?」 翼:「ほら、1の島は健人と菜々美ちゃんの他にって、氷雨さんだろ?」 翼の言ってる事はあたしも理解できた。 哲也はまだ分かっていないみたいだけど、つい最近氷雨さんの過去を知る事件があったのだ。 あたしたちも古椿の双葉さんに触りだけ聞いたんだけど、氷雨さんは昔は極悪妖怪の一人だったらしく、 その時の仲間に健人が攫われて、菜々美ちゃんを巻き込んだ事件になりかけたらしい。それがあってから、 あの二人と氷雨さんの間には溝ができているのだ。 と、志穂ちゃんの説明を受けて哲也もようやく理解したらしい。 翼:「健人ってさ、俺たちの中ではリーダー格だし、氷雨さんとも一番仲がよかっただろ?だから少し心配なんだよな。」 哲也:「でも、氷雨さんは氷雨さんだろ?今は今だよ。」 翼:「…それでいいのかよ。」 哲也:「えっ?」 翼:「俺たちだって氷雨さんは大切だけど、あの人がやってることは過去に仲間だった奴らを裏切って、俺たちにそいつらを 攻撃させていたようにも感じるぞ。それなのに、今は今って、俺たちも少しは関係してるのに、そんな簡単に言い切れるのかよ。」 あの事件の前から氷雨さんの事情を知っていた志穂ちゃんや蓮華ちゃんたち、知ったけど、あまり深く考えなかったあたしや 久美ちゃんたちと違い、氷雨さんとの間に溝を生じさせたのは、実は健人と菜々美ちゃんだけじゃなかった。 みんながみんな、あまり気にしなかったのに対し、翼だけは深く考えて、よくあたしたちとぶつかるようにもなっていたのだ。 中学の時は哲也と健人、翼の3人はゴールデントライアングルって名前がつくほど仲がよかったのに、今はそれが3つに分裂してる。 そんな事をふと考えているうちに、哲也と翼の口論はつかみ合いになっていた。 哲也:「何で昔の事ばっかり持ち出すんだよ!」 翼:「うるせえ!お前こそ簡単に考えすぎだ!」 玲奈:「ちょっと、ここで喧嘩なんてしないでよ!」 あたしと志穂ちゃんが止めようとしてた。 でも、そこに別の声が重なっていた。 ??:「あれっ?喧嘩してるのか。ラッキーな事だな。」 その声を聞いて、ふと手を止める二人。 その声は上を見上げる形で誰か分かった。 そこにはカイリュウがいて、その上にスペース団幹部候補生の制服を着た少年が立っていたのだ。 玲奈:「あなたは?」 ??:「俺はドラゴンのリューク。ドラゴンタイプのエキスパート生さ。お前たち能力者を2の島に近づけさせないために 来た。まぁ、今2の島に行っても壊滅したし、もう行っても意味ないけどね。」 翼:「何だって!」 哲也:「遅かったか…」 リューク:「さてと、お喋りはこのくらいにして、君たちを海の藻屑に変えてあげるよ。」 リュークの声と共に、カイリュウの破壊光線が襲ってきた。 とっさにあたしたちは、それぞれの水ポケモンに飛び乗った。 あたしはパルシェンに、志穂ちゃんはランターンに、翼はシャワーズに、哲也はカメックスに。 だけど、カイリュウの破壊光線を受けた船は大爆発を起こし、あたしたちは吹っ飛ばされる事になった。 リューク:「ありゃ?失敗か。まぁ、奴らを分散させたし、爆発を受けて怪我をしてないわけもない。 探して一人ずつ、息の根を止めるとしようかな。」 ハプニングが重なってし止め損ねたと知ったリュークは、そのままカイリュウに乗って飛び去ることにした。 リューク:「あ、セクトス様ですか?能力者の奴らを…はい、こういうわけなので…。」 彼の上司である幹部に連絡を入れながら。 そして2の島では、その連絡を、幹部セクトスが受けていた。 セクトス:「もうよろしい、十分理解した。あなたは引き続き、海に散らばった能力者たちを探し、息の根を止めなさい。」 セクトスは通信を切ると、リュークが作業をしていた特設ホールに入っていった。 彼女が入るのがもう少し遅かったら、彼女は2の島周辺にある孤島の一つに流星の様なものが落下したのを見ていただろう。 それを目撃したスペース団員が姿をくらました事にも気づいただろうに。 そこは普段なら特別なショップが建つ場所なので、十分にスペースが空いていたため、スペース団の特設本部兼作業所を 作るのにちょうどよかったのだ。 そして中に入った彼女は、中央の機械が多く並べられた場所に向かった。 そこには円形のテーブルのようなものが置いてあり、誰かが手足、首、胴を特殊合金で拘束された状態で寝かせられていた。 拘束された誰かはセクトスの姿を見つけると、再びその枷を外そうとしたが、全く外れる様子はなかった。 セクトス:「無駄よ、それを外せるのはリュークだけだから。」 彼女はそう言いながら、彼の真上に何かの装置を移動させ、固定し、それを起動させた。 ??:「うぅ…!?やめろ…」 セクトス:「悪いけど、やめるわけにはいかないわ。あなたがスペース団に潜入して調べ上げた事を全て吐くまで、 特殊な音波と電磁波による体の器官や神経を狂わす拷問は続けさせてもらうわ。」 セクトスはさらに彼に対する音波を強めたが、彼は口を全く割る気はなかった。 ??:「たとえ…何があったとしても…俺は…お前たちに言う気などな…ぐはっ!」 セクトス:「強気のようね。でも、その意地がいつまで続くかなんて、分からないわよ。さっさと吐いて、楽に…」 と、その時作業所のブザーが鳴った。 どうやらテレビ電話のようだった。 セクトス:「どなたですの?」 彼女が出ると、映し出されたのはドリームだった。 セクトス:「ドリーム様!」 ドリーム:「作業の方は、やはりはかどってないだろうな。」 セクトス:「もうしわけありません。この男、なかなかの強情で全く口を割ろうとはしません。」 ドリーム:「だと思っていた。セクトス、その男への尋問は続けるとして、知らせなければならない事ができた。 カントウのほかの四天王の奴らが動き出したと隠密部隊から連絡が入った。気をつけるのだぞ。」 そこで通信が切れた。 セクトス:「…あなたの仲間は勘が鋭いようね。ポケモンGメンのワタルさん。」 ワタル:「ふっ、お前らには分からないだろうけどな。」 セクトス:「まぁ、いいわ。今は勘弁してあげる。この質力で耐えられたらね!」 セクトスは余裕の表情を示したワタルに対し、先ほどの5倍の音波と電磁波を機械から放たせた。 ワタル:「…」 ワタルは顔を引きつりながら、それを耐え続けていたため、流石のセクトスも言葉がなく、機械を切った。 セクトス:「また後で行う。その時は今の2倍で行うわ。その時までに口を割るのね。」 ワタル:「誰…が、割、るか…」 セクトス:「うふふふ、次は割るわよ。そろそろ島民もヒマでしょうし、あなたのポケモンを十分に機械洗脳したから、 そのポケモンたちに島民を襲わせるところ、目の前でみせて上げるわね。」 セクトスはそう言うと、絶句したワタルを嘲笑いながら出て行った。 ワタル:”誰か…早く気づいてくれ!これ以上の犠牲を出す前に…” ワタルはセクトスが出て行ったすぐ後に、ようやく反抗をやめ、その反動で、自我を意識の海に落としていた。 誰かに自分の思いが伝わるのを望みながら。 玲奈:「ようやく行ったわね。」 あたしは、リュークが飛び去っていくのを海中で静かに身を殺しながら見ていた、巨大な真珠貝の中で。 あたしと親友の清香の持っている能力は、神秘属性。 他の能力にも属さないけど、神秘的に思われる能力のため、仲間内でこう識別されているのだ。 そしてあたしの持つ神秘の能力は貝が関係しているものだった。 今あたしは巨大な半透明の真珠貝の中に、パルシェンと避難していた。 爆発の直後に具現化させて入り込んだのだ。 玲奈:「行っちゃったわね。…このまま2の島に向かうわよ。」 あたしはパルシェンをボールに戻し、そのまま真珠貝を海面近くで動かしながら2の島に向かった。 氷雨さんに言わせると、あたしは海の妖精、清香は太古の精霊の力のようなものらしい。 それでなのかは知らないけど、2の島に行き着くまで、あたしは水ポケモンから攻撃を受けず、逆に慕われたり、笑顔を向けられたりしていた。 普段かなりのトレーナーに恐れられているギャラドスや大きなドククラゲにさえも。 それはこの力のおかげのようだけど…何か、微妙。 玲奈:「それにしても、哲也たちはどうなったのかな?」 考えているうちに心配になってきた。 今の哲也は冷静じゃなかったし、翼もそうだった。 あの状況ではチームワークも成り立たないから、敵に狙われたら自滅する可能性が高い。 何年もそばにいて、彼女づきあいの前から近くにいたから分かるのよね。 と、そんな時だった。 リューク:「見つけたぞ!」 あたしは考えているうちに真珠貝を海面より上に上げてしまったらしい。 コントロールを忘れちゃうのがあたしの癖だったので、気をつけているつもりだったけど、しっかり見つかってしまった。 玲奈:「見つかったけど、あなたには負けない!」 リューク:「そんな事は言わせないよ。カイリュウ、破壊光線だ!」 玲奈:「貝殻シールドよ!」 あたしはカイリュウの破壊光線を直径1メートルくらいの貝を具現化させ、シールドとして使って防いだ。 リューク:「何!破壊光線を防いだだって!?」 玲奈:「それくらいの攻撃、あたしには軽いわ!パルシェン、行くのよ!」 そしてパルシェンを投入した。 リューク:「それならカイリュウ、10万ボルトでパルシェンを倒すんだ!」 玲奈:「パルシェン、守る攻撃よ!そしてオーロラビーム!」 貝を閉じ、鉄壁の守りで10万ボルトから身を守り、オーロラビームを発射するパルシェン。 でも、空での移動が軽いカイリュウには、攻撃が失敗しても逃れられる状態だった。 オーロラビームは氷タイプの技だけど、カイリュウに当てられなければ意味がない。 リューク:「残念だったね。それくらいだとカイリュウには勝てないよ!カイリュウ、高速移動からドラゴンクローだ!」 カイリュウは高速移動で落下し、あたしたちに急接近して爪でパルシェンをなぎ払った。 落下のスピードを含めたドラゴンクローは、パルシェンの殻を簡単に破壊し、戦闘不能にしてしまっていた。 玲奈:「そんな!」 あたしはパルシェンを戻した。 そして次のポケモンを投入しようかと思った。 でも。 それは遅かった。 リューク:「遅いよ!カイリュウ、龍の舞から破壊光線!」 龍の舞で攻撃と素早さをアップさせたカイリュウの破壊光線が、あたしを襲っていた。 破壊光線があたしの手前の海面に放たれて大爆発を起こした。 あたしはその衝撃で気を失い、貝も消滅し、あたしは海に投げ出されていた。 リューク:「さてと、一人目完了だな。この女は…生け捕りにしておこうかな。セクトス様が好きに料理できるように。」 その頃。 爆発で飛ばされた哲也はある人物に助けられていた。 …ん?焚き火の音がする…、俺、何で…。 気がつくと、俺は洞窟みたいな場所に横たわっていた。 近くには焚き火があり、誰かの荷物と俺の荷物が置いてあり、さっきまで誰かがいた気配も感じられた。 後、手足のいたるところに多少の痛みがあり、よく見ると包帯が巻かれていた。 ここにいた誰かが、俺を手当てしてくれたらしい。 哲也:「リュークって奴の攻撃で飛ばされて…、玲奈、志穂、翼と離れちまったか…。」 俺や志穂はともかく、玲奈は主力のパルシェン以外の3匹はリュークに勝てるとは限らないポケモン。 偶然が重なっても難しいと思うから、早く合流してやらないといけない。 でも、ここはどこなんだろう…? 俺は少し辺りを見てみようかと思った。 その時、誰かの足音を聞いた。洞窟の中では物音が響くから、近くなのか遠くなのかは分からないけど、 俺のいる方に向かっていることだけは確かだった。 哲也:「誰だ?」 相手が敵でないことを祈り、怒らせないように穏便に尋ねると…。 ??:「ようやくのお目覚めのようだな。体の方は大丈夫か?痛みはないか?」 声の主は優しく俺に話しかけていた。 哲也:「体の方は何とか大丈夫です。痛みは少しありますけど。」 俺はこの声と、風が伝える相手の雰囲気で敵ではないと判断できた。 ??:「そうか。突然俺のところに飛ばされてきたからな。かなり怪我をしていたようだが、無事で何よりだ。」 そしてようやくやってきた人に、俺は見覚えがあった。 野性的な容姿、頑丈で力強く感じられる筋肉の肉体美、そして強い目と穏やかな表情…。 哲也:「あなたは…確か四天王の…」 ??:「そうだ。俺は四天王の一人、シバだ。ある理由で俺はカンナに呼ばれてな、4の島に向かう途中でお前と出会ったのさ。 確か、ナナの言っていた風使いの少年だったよな?」 哲也:「はい。俺の名は哲也といいます。俺は仲間と2の島の救援に向かう途中でした。でも、途中でカイリュウ使いの スペース団員の攻撃を受けて、爆発で飛ばされてしまったんです。」 俺はシバさんにこれまでのことを話した。 すると、シバさんには途中から何かを考え始め、唸り始めていた。 シバ:「…哲也君といったな、悪いが俺に協力してくれないか?」 哲也:「何を、ですか?」 シバ:「どうやら君が会った少年と、俺のここに来た理由は関係していたようだからな。」 そしてシバさんは教えてくれた。 とんでもなく大変なことを。 ??:「ふぅ、久しぶりに力を使ったけど、やりすぎちゃったかな?」 少女の周囲には何本もの巨大な氷の塊があった。 ??:「一体ここで何が起きてるんだろう…チルット?」 彼女は考え込もうとしたが、飛んできた自分のチルットの姿を見て、そしてコラッタの示す方向を見て、その場に歩いていった。 ??:「何か、あるのね?」 彼女は2匹のポケモンに連れられて海岸の方に向かった。 そして、そこに一匹のポケモンと、一人の少年が倒れているのに気づいた。 ??:「嘘…!?翼君?!」 志穂:「ワタルさんがスペース団に捕らえられたんですか?」 流石のあたしも驚いた。 あたしは爆発で投げ出されたけど、飛ばされた小さな無人島で、四天王のキクコさんと巡り合えたのだ。 というより、勝手に出てきたゴーストが、あたしが気絶している事に泣き叫び、その時に出た波動をキクコさんが 感じ取ったに過ぎないけど。 キクコ:「そうじゃ。ナナシマのことはカンナから聞いておったが、ワタルがポケモンGメンとしてスペース団に 潜入したと聞いておったから大丈夫じゃと思っておった。 しかし、ワタルからの通信が途中で切断されたらしく、それと同時にナナシマ列島にスペース団の総攻撃も開始された。 だから私とシバはナナシマに来たのじゃが…」 二人が1の島を通り過ぎた直後、念と氷の力でできたと思われる道を渡って突進してきた大量のケンタロスの猛攻を受けて、 二人は離れ離れになり、キクコさんはこの無人島にたどり着いたらしい。 ワタルさんが捕らえられたのは、ケンタロスを操っていたと思われる団員が喋ったらしかった。 志穂:「それじゃ、あの時あたしたちを襲ってきたカイリュウは…」 キクコ:「そうじゃ、今お主の思念から見る事のできたカイリュウはワタルのカイリュウじゃ。どうやら操られたようじゃ。」 志穂:「それなら、早くしないと他のみんなが危ないです。私も協力します。」 キクコ:「そうじゃと思ったわい。それでは行くとしよう。」 哲也と志穂がそれぞれ四天王と出会い、新たな重大事実を知った頃、翼もある人物に助けられていた。 翼:「ああ、君のおかげで助かったよ。」 ??:「どういたしまして。でも、翼君とここで出会えるなんて思わなかったわ。」 翼:「それはこっちのセリフだよ。まさかこんなところに君がいるなんて、想像もつかないよ。」 ??:「それはそうだよね。でも、何があったの?」 俺が飛ばされたのは、2の島の周辺にある小島の一つだった。 橋がかけられていて、民家も少しあるのでここが無人島でない事も明らかだった。 しかし人っ子一人いない。 ??:「あたしがここに来た時には、ここがもうスペース団の手に落ちた後だったからよ。」 俺はシャワーズと一緒に島の海岸に打ち上げられていたらしい。 ??:「それにしても、スペース団って言う悪い奴らを何とかしないといけないわよね。ここも向こうに知られてるし、 あたしの事がばれたら攻撃が来るのは目に見えてるから…。」 翼:「ばれたらって、雪美、お前なんかやったのか?」 雪美:「うん、ちょっとね。」 まぁ、こいつが何をやったのかはスペース団員と思われる奴らが逃げようとしている状態で氷の柱になっていれば、 一目瞭然だったけど。 雪美:「翼君、ところで哲也君や玲奈がいたのよね?みんなは?」 翼:「それなんだよな…。攻撃を受けてバラバラになって…」 雪美:「そう。…だったらここにいても意味ないよね。あたしも協力するから、何とかしようよ。」 雪美は俺の腕を引っ張りながら動き出した。 彼女の後をチルットとコラッタと、明らかに他の2匹と不釣合いの、どでかい物体がついていった。 まさかこんな事が起きているとは思わなかったな。 あたしがこの世界に来たのは2度目のこと。この世界のことは美咲から詳しく教えてもらったからいいとして、 何とかしないといけないわね。 でも、あたしなら何とかできるかも。 あたしは…これでも能力者2位の実力者だから。 シバ:「さて、そろそろ動くとしようか。君の実力も分かった。」 哲也:「そうですね。」 怪我は治癒能力が目を覚めたと同時に働いて、傷もすっかり癒えていた。 そしてシバさんと多少の話し合い、バトルを繰り返した結果、俺は再び2の島に向かうことを決めた。 そんな時、誰かがシバさんを訪ねてきた。 ??:「やはりここにおったか。ゴーストが導いてくれたぞ。」 ??:「まさか同じ島に流れ着いていたとはね。」 シバ:「キクコか。そして隣のもの…確かナナの知り合いの…」 哲也:「やっぱり志穂か。」 志穂:「哲也、ここにいたのね。大変なの。玲奈が捕まったみたい。」 哲也:「何!」 志穂:「知らないってことは風に聞いてないのね。あたしの式神がつい先ほど教えてくれたわ。」 シバ:「どうやら2の島に向かう同士を増やしたようだな。」 キクコ:「さようじゃ、あの娘、わし以上の力の持ち主のようじゃ。この先、ワタルを助けるにはあのものたちの力が 必要になるじゃろうて連れてまいった。」 シバ:「そうか。…キクコ、俺たちはこれから2の島に行くところだ。お前も来るか?」 キクコ:「ああ、当たり前じゃろう?わしもいくぞ。」 俺とシバさんは、キクコさんと志穂と合流し、2の島に向かった。 玲奈:「…あれっ?」 あたしが目を覚ますと、あたしはなぜか縛られている事に気づいた。 玲奈:「ここは…どこだろう…?」 爆発で気を失って…、あ、捕まったのね。 と、そんな時だった。 あたしの目の前には幹部らしい女性がやってきた。 玲奈:「何者?」 ??:「私はセクトス。スペース団4幹部の一人よ。あなたを殺しに来たの。」 玲奈:「直球ね。」 セクトス:「別に。さて、どうしようかしらね?どのように殺されたい?」 玲奈:「水攻め。」 あたしははっきり言った。 もしスペース団があたしの能力を表面上しか知らなければ、っていうか知らないはずだから。 これを言えば多分…。 セクトス:「水攻めにすると逃げられそうね。私を誘導しようというの?あなたは火あぶりよ。」 かかった。 セクトスはあたしの周囲に火を放ち、その場を去った。 セクトス:「うふふ、確かリュークはあなたを貝使いと言っていたわ。だとしたら、あなたが消滅すると、 おいしい蛤(はまぐり)が食べられるのかもしれないわね。」 という言葉を残して。 玲奈:「さてと、あたしの力を舐められたお返しをしなきゃいけないわね。」 あたしは力を手に込め、そして腕を巻きつけていたロープをほどいた。 続いて足の方もやり終えると、あたしの周囲は炎に包まれていた。 幸いボールはあたしの腰のベルトについたままだったから助かった。 玲奈:「この小屋は木でできているからよく燃えるようね。さてと、必殺、バブルイリュージョン!」 あたしはここで燃え尽きた事にしなきゃいけない。 相手が油断するように仕向けるには、あたしが彼らの視界からなくならなくては。 だから、あたしはここで一度蚊帳の外に行く。 外に出たセクトスと数人の団員は、その小屋が炎に包まれ、倒壊したのを眺めた後、玲奈の姿を探した。 セクトス:「どう?女の遺体は見つけたかしら?」 すると、数人の団員は女性の骨と燃え残りの服を見つけてきた。 それを見ると、セクトスは笑みを浮かべ、さらにその場所をダグドリオによって平らで何もなかったような地面に変えさせ、 その場を去った。 彼女らがいなくなると、玲奈が姿を現していた。 玲奈:「ふぅ、まさか光の屈折を利用して人の視界にあたしの姿が入らなくなる泡の中にあたしがいるなんて、 誰も思いつかないわよね。あたしの姿を見られるのは能力者だけだから、今この島にいる団員が能力者ではないことも 明らかになったし。」 あたしはこっそり泡に入った状態で、彼らの後をつけることにした。 雪美に出会った俺は、彼女の助けで2の島にもぐりこんでいた。 すると、そこにはケンタロスに乗る団員と、カイリュウやギャラドスを連れたリューク、そして女幹部らしき人物が アジトのような場所から出てくるのを見た。 雪美:「アジトよ、あれが。今まで、あんな場所にはあんなものは作られていなかったから。」 翼:「そうか。だとしたら、あいつらを追い出せばこの島は何とかなりそうだな。」 雪美:「でも、あの人たち強そうよ。」 その時だった。 いきなり背後で羽音がしたかと思えば、スピアーとテッカニン、ヌケニンが襲い掛かってきたのだ。 咄嗟に避けるためには、彼らの前に出て行くしかなかった。 セクトス:「あらっ?こんなところにいたのね。」 リューク:「セクトス様、ここは俺たちにお任せを。」 ??:「おれたちがこいつらを始末します。」 俺と雪美は一瞬でスペース団員に取り囲まれていた。 セクトス:「せっかくだから名乗りをあげた方がいいわね。私は2の島の支配を任された4幹部の一人、セクトスよ。 あなたたちの始末はタロス、リュークを筆頭に行う事。彼らは倒せば、残るは巫女と風使いのみだから。」 翼:「どういうことだ?」 リューク:「残念だったな。お前の仲間の貝使いは炎で燃え尽きたぞ。」 玲奈が…死んだだって!? 翼:「お前ら、許さない!」 タロス:「ふん、勝手に叫べよな。悪いが、俺のケンタロスの素早さには追いつけないぞ。」 リューク:「そこの譲ちゃんも含めてお前らを地獄に送ってやるよ。セクトス様は、すぐ中に!」 翼:「おい、待て!」 雪美:「逃がしません!」 俺たちは追いかけようにも、団員たちが一斉に襲い掛かり、俺と雪美はすぐに羽交い絞めにされていた。 タロス:「お前らもここで終わりだな。」 リューク:「多勢には無勢って言葉、お前らは知らないようだな。さて、あの女のように火あぶりで消えてもらおうか。」 その時だった。 玲奈:「誰が死んだ、ですって?」 とてつもない強風が吹き、俺たちの動きを封じている団員が吹っ飛ばされると、俺たちの目の前には玲奈が現れた。 玲奈:「あたしの妖精の力、人間の目には見えなくなる能力、知らなかったようね。残念でした。」 リューク:「くそぉ、舐めた真似を!カイリュウ、ギャラドス!そいつらに破壊光線だ!」 リュークは玲奈が現れた事で驚き(俺たちも驚いたが)、そして怒り、俺たちに攻撃を食らわしてきた。 しかし。 その攻撃は玲奈のシールドが受け止めていた。 玲奈:「あたしのシールドに一度邪魔されたのを忘れた?雪美、彼はお願い。」 雪美:「了解。ドラゴン使いさん、あなたの相手はあたしよ。」 玲奈:「そしてあたしはそこのケンタロスの団員よ。翼、あなたが生きていたなら、哲也と志穂ちゃんもどこかにいるはず。 あの二人が駆けつけるまで、スペース団幹部をひきつけておいて!」 翼:「分かった。ここは任せたぞ!」 玲奈と雪美が団員の邪魔をした隙に、俺はアジトに乗り込んだ。 俺がアジトに入っていくと、謎の機械が多数あり、その中にワタルさんがいるのを見つけた。 駆け寄ってみたが、気を失っているのが分かった。 翼:「機械だらけだな。早く助けないと…ぐわっ!」 俺はワタルさんを封じている金具の一つに触れ、そこに流れる電磁波を受けてしまった。 咄嗟に飛びのいたが、左腕が麻痺していて動かない。 セクトス:「どうかしら、電磁波の味は。」 翼:「お前…」 セクトス:「うふふ、この人はスペース団に潜入していたのよ。だから捕まえて情報を引き出しておこうと思ったの。 でも、口が堅くて何も言わないから、しょうがなく拷問にかけたのよ。でも、何も喋らなかったの。」 翼:「当たり前だ。お前らに話す事なんてない!」 セクトス:「まぁ、その代わりこの人はこの電磁波を長時間受け続けて殺す事にしたから。」 俺はセクトスの言葉でワタルさんをすっと見た。 すると、生命の反応を示す風がおとなしくなり始めているのを感じた。 俺も風使いの端くれなので、風使いだけが分かる相手の生命エネルギーの風の流れを読んでみたのだ。 このままだと本当にワタルさんは死んでしまう。 早く何とかしなければ。 でも、俺が動こうとした時、機械の隙間から次々に大量の虫ポケモンが飛び出し、足元にはダグドリオが現れた。 翼:「こいつら…お前のポケモンか?」 セクトス:「ええ、私は地面と虫のエキスパート。ここは私のテリトリーだから、この子達がしっかり隠れていたのよ。 あなたもようやく私のしようとしていることに気づけたのに、もうここでおしまいね。」 スピアーの一匹が鋭い針を俺に向け、少しずつ近づいてきた。 足はダグドリオの砂地獄が封じ、動くに動けない状態だった。 雪美:「チルットは歌う攻撃!コラッタは必殺前歯よ!サイドン、メガトンパンチで受け止めて!」 玲奈:「パルシェン、オーロラビームよ!アゲハントは銀色の風!」 あたしと玲奈はタロス、リュークと戦っていた。 リュークのカイリュウはあたしの力で一撃で倒してけど、彼らの持つ残りのポケモンは、あたしの力では倒せない。 だからここはバトルで何とかするしかなかった。 ギャラドスに対して玲奈が向かい、タロスのケンタロスには、あたしのポケモンたちが当たってくれていた。 タロス:「くそっ、ケンタロス、暴れる攻撃だ!」 雪美:「チルット、コラッタ、戻って!サイドン、地割れよ!」 あたしのポケモンはチルット、コラッタ、サイドンの3匹。 サイドンがパートナーなのだ。 あたしのポケモンたちはタロスのケンタロス軍団をようやく静めたけど、残っていたケンタロスの一匹が暴れ始めていた。 ケンタロスの暴れている範囲を見る限りから考えて、あたしはサイドンに地割れを指示した。 タロス:「何!?俺のケンタロス軍団がこうも簡単に、だと!?」 雪美:「さすがは一撃必殺のことだけあるわね。」 玲奈:「やるじゃん、雪美。パルシェン、アゲハント、畳み掛けるわよ!」 玲奈はアゲハントに風起こし、パルシェンに凍える風を指示した。 凍える風が風起こしによって風圧の威力をあげ、冷気を高めてギャラドスを襲う。 水・飛行タイプで氷タイプの技はあまり効果がないギャラドスだけど、これは効果があった。 ギャラドスは風起こしで作られた竜巻に包まれ、凍える風によって凍り付いていた。 玲奈:「さてと。」 雪美:「スペース団のタロスとリューク、まだやる気?」 あたしたちは言い放った。 しかし。 ??:「これがまた、伏兵がいたりするんだよね。」 突然現れたサーナイトのサイケ光線がアゲハントとパルシェンを、エネコロロの吹雪がサイドンを襲い、彼らを戦闘不能に変えていた。 玲奈:「嘘!」 雪美:「あ…」 あたしたちの前にはもう一人の団員が出現していた。 サーナイトのテレポートで現れたようだ。 玲奈:「何者?」 ??:「あなたたち、草使いさんのお知り合い?あたしはレイク。一時はスペース団を辞めてたけど、実験の成果を上げる資金を 寄付してくれたからこっちに舞い戻ったの。あなた達はもう終わりよ。残念でした。」 あたしたちは一転不利になっていた。 雪美:「あたしのチルットとコラッタじゃ、彼らを十分には相手にできないし…」 玲奈:「あたしのパールルたちも、時間をもらえなきゃ相手にできない…」 動くに動けない状態が再び出来上がった上、タロスはドードリオを、リュークはプテラとリザードンを出していた。 タロス:「さて、どうするかな?」 リューク:「形勢逆転だな。」 レイク:「降参するなら今のうちよ。」 あたしたちは追い詰められていた。 それぞれが追い詰められていた。 でも、3人ともあきらめる事だけはしていなかった。 そして、再び救援が現れるのだった。 セクトス:「うふふ、どうするかしら?」 鋭い針が少しずつ、少しずつ迫ってきている。 翼:「…」 セクトス:「あらあら、怖くて声も出ないのかしら?」 セクトスは笑いながらスピアーの数を増やした。 が。 スピアーたちは突如目の前に現れた火の玉によって燃え始めていた。 セクトス:「何!?」 次々と火傷を負ってその場に落ちるスピアー。 それと同時に周囲の虫ポケモンや地面ポケモンも力尽きるように崩れ落ちていった。 セクトス:「な、何事だ!?」 ??:「ふっ、おぬしはまだまだ甘いようじゃ。このように暗い部屋ならば、わしのゴースたちが隠れるのはうってつけだったわい。」 ??:「スピアーも火傷を負っては力も出せないでしょうね。」 俺の目の前に現れたのは志穂と、四天王のキクコさんだった。 翼:「志穂、助かったよ。」 志穂:「油断のしすぎよ。外は哲也とシバさんに任せたから。」 翼:「そうか、それじゃ行くかな。ハッサム、出ろ!」 俺はハッサムを、志穂は横にいるジュペッタの他にウィンディを出していた。 キクコさんのそばにはゴースとゲンガーがいた。 セクトス:「おのれ!ヌケニン、スピアー、サンドパン、行け!」 ヌケニンはメタルクロー、スピアーはダブルニードル、サンドパンはブレイククローで攻めてきた。 志穂:「ウィンディ、熱風よ!」 翼:「ハッサム、スピードスターだ!」 キクコ:「ゴースは戻っているがいい、ここはゲンガーのシャドーボールじゃ!」 6つの攻撃はぶつかり合い、そして爆発と同時に空間が歪むのを感じた。 キクコ:「何が起きたのじゃ?これは一体…」 セクトス:「オホホホ、ここにある機械は洗脳装置だけじゃないわ。空間をゆがめてバトルフィールドを作ったまでの事。 あなたたちは私の虫ポケモンの餌食になりなさい!私にはこの男を処刑する義務もあるから。」 追いかけようと思った。 でも、気づけば周囲は一面の草原が広がり、俺の目の前にはスピアーとヘラクロスの姿があった。 翼:「やるっきゃないようだな、ハッサム、オクタン!」 スピアーは高速移動、影分身で分裂飛行をし、ハッサムに向かってきた。 オクタンはヘラクロスのメガホーンを8本の足で器用に絡めとり、何とかその場を保っていた。 が、背後から別のスピアーの姿もある。 翼:「何!?…これは残像か。目くらましの代わりに俺の意識をバトルから遠ざけ、惑わすつもりだな。」 だったらこっちにも考えがあった。 翼:「能力を解放するかな。」 俺は背中の翼を大きく広げた。 ここまでやるなんて、敵もあたしの登場で追い詰められたのね。 あたしのウィンディとジュペッタはバタフリーとアゲハント、ツボツボを相手にバトルを繰り広げていた。 残像の方はあたしの式神の鬼火と管狐が弾き、消し続けているから全然気にならない。 でも、この空間を何とかしないとね。 ヤタガラスが知らせてくれる状況を考えると、翼とキクコさんは有利な状況だし、あたしも頑張ろうかな。 志穂:「ウィンディ、火炎車よ!ジュペッタはシャドーボール!そしてベロリンガ!ツボツボにのしかかる攻撃よ!」 バタフリーとアゲハントが攻撃によって墜落し、ベロリンガはツボツボの頭に体重をかけた足を落とした。 その頃。 劣勢の雪美と玲奈の下には突風と共に哲也とシバが現れていた。 哲也:「伏兵がそっちにいるなら、こっちにも伏兵はいるぞ!」 シバ:「スペース団に言う。ワタルを返してもらおうかな。」 雪美:「よかった、来てくれたのね。」 玲奈:「ありがとう、哲也。…さてと、あたしの援護をしてよね。」 玲奈は二つのポケギアを出していた。 雪美:「何をするつもりか知らないけど、できるだけやるわ。チルット、コラッタ、出て!」 シバさんはタロスに、哲也君はリュークに向かった。 となると、あたしの相手はレイクになる。 レイク:「そんなポケモンであたしを倒すつもり?サーナイト、エネコロロ、行くのよ!」 雪美:「チルット、風起こしよ!コラッタはバブル光線!」 レイク:「サーナイト、チルットにサイケ光線です。エネコロロはコラッタに乱れ引っ掻きよ!」 あたしはできる限りの力で作業中の玲奈を守るためにバトルをした。 進化前と進化後ではレベルも威力も桁違いだけど、あたしはあたしなりにやる! でも、やっぱりコラッタもチルットもエネコロロのアイアンテールによって倒されてしまった。 レイク:「うふふふ、弱いポケモンであたしの足止めは無理よ。あきらめなさい。」 雪美:「嫌よ。次はあたしの能力を思い知ったら?」 あたしは我慢して押さえ込んでいた能力を解放した。 すると、あたしを吹雪が包み込み、あたしは白い浴衣を来た姿に変わった。 レイク:「あなた…雪女なの?」 雪美:「まさか、あたしは人間よ。ただ、氷雨さんと同じ力の、雪氷の能力者なの。」 ただ、あたしの力で倒すのはポケモンバトルのセオリーに反しているから、あたしは敢えて、弱めの吹雪を吹かせて レイクの動きを封じるだけにした。 その時。 玲奈:「成功したよ!雪美、ありがとう。ここはあたしは行く!」 玲奈はそう言って、海に飛び込んだ。 あたしは玲奈がレイクを倒すつもりなのを感じ、そのまま消えた。 姿を消して、アジトに行く事にした。 レイク:「そこね!」 雪美が消えた直後、あたしが海にいるのを見たレイクが襲ってきた。 レイクはボートに乗ってきていた。 あたしは真珠貝を出して、その上に立った。 レイク:「その状態であたしのポケモンを倒せるのかしら?」 玲奈:「そうよ。行くよ、ハンテール、サクラビス!」 あたしがついさっき、雪美に援護してもらったのには理由があった。 持っているパールル2体を進化させることに決めたからだった。 ポケギアが2つあるのは、通信進化をするためだった。 パールルは、深海の牙でハンテールに、深海の鱗でサクラビスに進化するのだ。元々はパールルはあたしの 真珠細工材のために必要であり、進化はさせないつもりでいた。 でも、あたしはもう現実世界に戻れるから、真珠細工を作らなくてもいい。 だから、進化させたのだった。 玲奈:「ハンテール、嫌な音!サクラビス、超音波よ!」 嫌な音と超音波が水面の波打ちを激しくし、ボートの揺れを激しくした。 レイク:「くっ、エネコロロ、水面に吹雪よ!」 玲奈:「させない!サクラビス、エネコロロにサイコキネシスよ!ハンテールはサーナイトに水の波動よ!」 ハンテールとサクラビスの特性は「すいすい」。 この特性は雨が降った状態で素早さを2倍にするものだけど、ここは海の上、水の中だから、すいすいの特性は 十二分に発動できた。 そしてエネコロロが吹雪を放つ前に、サクラビスとハンテールは攻撃をしてポケモンを倒す事ができた。 レイク:「そんな!」 玲奈:「残念でしたっていうのはそっちよ。サクラビス、ハンテール、渦潮よ!」 2匹はレイクのいるボートの周囲をグルグル回り、大きな渦潮を起こした。 そして、渦潮の中心から2匹の水の波動が放たれ、レイクはボートごと吹っ飛ばされていった。 哲也:「カメックス、ハイドロポンプだ!」 リュークのポケモンはワタルさんのポケモンだ。 だからあまり傷付けるべきじゃない事は分かっていた。 でも、だからと言って倒さないわけには行かない。 カメックスとピジョットはリザードンとプテラに攻撃をしながら、長期戦を使っていた。 リューク:「あははは、君は遠慮しているようだな。でも、そんな事では俺のポケモンを倒せないぞ!」 哲也:「誰がお前のポケモンだ!みんな、ワタルさんのポケモンじゃないか!」 リューク:「うるさい!黙れ!ハクリュウ、バンギラス、お前らも行くんだ!」 リュークはさらにハクリュウとバンギラスも出し、10万ボルトと岩なだれが襲い掛かってきた。 哲也:「くそっ、ニドキング、二人を守るんだ!」 地面タイプであるニドキングが、カメックスとピジョットに向かってくる攻撃を打ち消す。 でも、これ以上続ければ俺の方が不利だ。 その時だった。 目の前にイワークが2匹現れていた。 シバ:「苦戦しているようだな。」 哲也:「シバさん、タロスは?」 シバ:「ドードリオなど、俺の敵ではない。イワーク、締め付ける攻撃だ!」 イワークがリザードン、プテラ、ハクリュウ、バンギラスを一瞬のうちに締め付けた。 が、イワークはいきなり倒れてしまった。 よく見れば、リュークのそばにはキングドラの姿がある。 リューク:「残念だったね。それくらいでは俺を倒せないよ。キングドラ、そのままハイドロポンプだ!」 キングドラの攻撃はニドキングとピジョットさえも倒してしまった。 残されたのは俺のカメックスだけ。 シバさんが格闘ポケモンを何体か持っているけど、相手は飛行タイプも兼ねている。 玲奈:「哲也!」 玲奈がそこに来てくれたはいいが、玲奈の力でも多分かなう相手ではないと思った。 その時、アジトが大爆発を引き起こした。 リューク:「何!?」 セクトス:「リューク、案ずるな。私が中に入った能力者と四天王を巻き込み、機械を連動させてショーとさせ、 大爆発を起こしておいただけだ。」 哲也:「何だって!?」 シバ:「くそっ、遅かったか…」 セクトス:「さて、リューク、手間取っているようだな。ヌケニン、テッカニン、ダグドリオ、スピアー、こいつらを倒すんだ!」 セクトスもポケモンを出し、相手はポケモンが9体になった。 明らかに不利だった。 でも。 それは実は違ったのだった。 雪美:「誰が巻き込まれて倒れた、ですって?」 吹雪が一瞬起き、冷気が意思を持つかのようにしてハクリュウとテッカニン、ダグドリオを包み込んで倒し、 そして姿を現したのは雪美だった。 雪美:「あたしは能力者2位の実力者よ。簡単に倒されるほど柔じゃないわ。」 志穂:「そうね、それは言えてる。」 翼:「俺たちは負けないんだ、絶対に。」 爆発で燃え盛るアジトから、水柱が立ち、雷と炎が合わさったような塊が炎を突き抜けて出た。 翼と志穂だった。 そして二人は気を失っているキクコさんとワタルさんを連れていた。 志穂:「爆発は起きたけど、あたしは炎の能力者でもあるの。炎の能力者の共通した能力の一つが、爆発に巻き込まれても 傷一つ負わないことと、結界を張れば弾く事ができる事。だからみんなを助けるくらい、簡単な事だったわ。」 翼:「それに、俺は水翼の能力者、いわば水と風の能力者だ。水の力で炎から身を守るくらい簡単だったのさ。」 志穂:「バトルフィールドを空間をゆがめて作ったのも失敗よ。あたしたちはただ人質があったから動くに動けなかっただけ。 でも、そこから離れてしまえば動く事なんて容易だったわ。ワタルさんにはめられていた枷も、あたしに雷の力がある限り、 あたしが触れても全く意味がないんだ物。残念だったわね。」 志穂は余裕の表情でセクトスに言い放っていた。 セクトス:「おのれ…」 リューク:「セクトスさま、ご安心ください。こちらにはあのワタルのポケモンがいます。彼らは人質でもありますから。」 セクトス:「ああ、そうだな。」 セクトスも余裕の表情を浮かべていた。 志穂:「あのポケモンたちを元に戻すには、普通以上の攻撃をしなきゃいけないようね。」 雪美:「でも、あたしたちのポケモンだけではドラゴンタイプを圧倒する攻撃力はないわ。能力なら別だけど…」 翼:「能力の攻撃では目を覚まさないだろうな、多分。」 哲也:「それじゃ、一体どうすればいいんだ…」 玲奈:「う〜ん…」 どうすればいいか、あたしには分からなかった。 哲也も翼も、雪美も志穂ちゃんも、あたしも、そしてシバさんまでも。 あたしたちは対峙したままだった。 向こうも下手に攻撃ができずにいる。 そんな時、再び意外な伏兵が現れていた。 空中から、リュークとセクトスに向かって龍の息吹が放たれていたのだ。 セクトス:「何者だ!ヌケニン、迎え撃て!」 セクトスはヌケニンを放つが、今度は彼らの目の前にフーディンが出現し、シャドーボールがヌケニンを倒していた。 セクトス:「何!?」 ??:「残念だったな。この際、隠れているのもいけないだろうし。」 空中に姿をみせたのはボーマンダだった。 そして乗っているのは…。 セクトス:「何!?ユウとキワ!お前ら生きてたのか!」 ユウ:「ああ、お前のテッカニンが攻めてきた時、煙玉と自爆スイッチを押しておいた通信機でその場を逃れたのさ。 ボーマンダ、龍の息吹だ!」 現れたユウはボーマンダの龍の息吹でリュークたちに攻撃を続けていた。 あたしたちは圧倒されていた。 が、そこにフーディンがまた現れ、キワさんを連れて立っていた。 シバ:「キワさんか。そうだ、頼みが…」 キワ:「分かっている。そこの二人、お前たちになら教えられる。ポケモンを出すがいい。」 キワさんは哲也と志穂ちゃんに言った。 何を出すかなんて分からない、はずだった。 でも、キワさんが言っている事が何となく分かった。 なぜか、あたしたちみんな、キワさんの言葉が分かった。 それは、哲也のカメックスと、志穂ちゃんのメガニウムを指していると。 キワ:「それでは、この2匹に最終奥義を授ける。カメックスには怒涛の水の力、ハイドロカノンを、 メガニウムには大いなる自然の怒りを秘めた強大な植物の力、ハードプラントを。」 何かがキワさんの杖から、カメックスとメガニウムに伝わっていくのが、流れ込んでいくのが見えた気がした。 そして、カメックスとメガニウムが自信を込めて立ち上がっていた。 その時、ボーマンダが落下してきた。 ユウ:「くぅ〜、これは効いたぜ。でも、お前らに任せるぞ、ここは。」 ユウに言われるまでもなく、あたしはメガニウムの横に立った。 哲也もカメックスの横に。 あたしと哲也は決めていた。 この技で、この2の島の戦いを終わらせると。 セクトス:「何をする気だ?まさか、最終奥義を出すつもりか?それはさせないぞ。」 リューク:「俺のポケモン、リザードとコモルーが邪魔してやる。」 セクトス:「スピアー、お前も行け!」 そんなあたしたちの前に出て、迎え撃とうとしているけど、それは背後のメンバーが何とかしてくれた。 翼:「ここは俺たちに任せとけよ。必殺、水蛇絡み!」 玲奈:「バブルスプラッシュよ!」 雪美:「必殺、吹雪の舞!」 翼と玲奈の水の力が、雪美の雪氷の力が、セクトスとリュークを遮り、そしてポケモンたちの足場を凍らせていた。 こうなると、もうセクトスもリュークも身動きができない。 だから、あたしは言った。 哲也も同時に。 哲也:「カメックス、ハイドロカノンだ!」 志穂:「メガニウム、ハードプラントよ!」 カメックスの二つのキャノン砲からとてつもない水が一気に放たれた。 圧縮された水の波動が水流を伴いながら、大波を起こすように押し寄すように、相手に向かってなだれ込んでいた。 そしてメガニウムの周囲には葉っぱが取り巻き、光を一気に吸収するように体の花の花びらからソーラービームを 放ちながら、葉っぱカッター、花びらの舞、ソーラービームを一斉に放つような攻撃をメガニウムが放った。 一瞬だったけど、すごく強力だったこの攻撃には、あたしもみんなも圧倒されてしまった。 そしてそれを受けたポケモンたちは倒れたが、リュークが近づくと、蝿を追い散らすように睨み付けていた。 リューク:「何!?洗脳がとけただと!?」 セクトス:「くそっ、ここは引くしかないようだな。」 リュークとセクトスは形勢不利と感じ、ケーシィでその場を去っていった。 こうして、2の島の戦いは終わった。 島民の人々は監禁された場所から助け出され、あたしたちも能力を利用して簡易的なポケモンセンターを作り、 2の島を多少立て直す事にした。 ワタルさん、キクコさんは爆発や拷問の怪我を治療するためにこの場に残っていて、シバさんも残ってくれてます。 哲也と玲奈はナナに報告を終え、バカップルを繰り広げてます。 翼は2の島の状況を見極めるためにちょっと2の島周辺を飛びまわってるかな。 さすがはポケモンウォッチャーと言うだけある。 そしてあたしは、雪美と一緒にいた。 雪美:「志穂ちゃん、あたしも戦うけどいいわよね?」 志穂:「ええ、でも、まさかあなたがここに来たとはね。」 雪美:「ごめんね、でもさ、あたしも驚いたよ。いきなりゲートが現れて、入っちゃったと思えばここに来たんだもん。 でも、あたしだけじゃん、あの街の能力者の中で、ここに来た事がなかったのは。多分、あたしは導かれたんだと思うのよね。 あたし、もしかしたら氷雨さんの後を継ぐために能力者になったのかもしれないから。」 志穂:「確かに、それはあるね。氷雨さんと同等の、氷雨さんと全く同じであり、レベルが数段上の能力者は、雪美だけだもんね。 能力者の中では蓮華の次に力があるとしても。」 雪美:「でも、その話はまだまだだいぶ先よ。」 志穂:「ええ。」 2の島は安泰。 これは分かってるけど、セクトスとリュークが逃げていった事。 これが気になる。 あいつらは強いから、まだスペース団を倒すのは先なのかも知れないって、そんな気がした。 こうして、長い一日が終わった。 明日は何が起きるのだろうか。 でも、あたしは負けない。 みんなだって。 ナナシマを救うために、 人を殺す事だって容易にやる人たちを、あたしは許さない。 蓮華ちゃんはそんな人たちも癒そうと思っているけど、あたしは癒せない人たちには何とかして分からせてやる。 だって、ポケモンも人間も生きていて、同等の権利を持って生きてるから。 生きていけないものなんていないから。 簡単に殺されてもいい物もいない。 by志穂