ある晴れた昼下がりの事でした。 ??:「う〜ん、やっぱり体を動かすのはいいもんだなぁ。」 一人の少年がポケモンとのトレーニングを一休みして、原っぱで体を伸ばしていました。 ??:「父さんがくれたリョクも育ちが早くてよかったし…、あれっ?」 一人の少年の元に、1羽のペリッパーが舞い降りました。ポケモン郵便局の配達ポケモンのようです。 ペリッパーは少年の前に降り立ち、葉書きを突き出しました。 ??:「えっ?俺に?」 少年は葉書きを受け取りました。すると急いでいるのか、ペリッパーはすぐに飛び立って行きました。 ??:「ええと、トレーナー同士の交流パーティーか。…俺も行ってみようかな。」 その少年はこの時思ってもいませんでした。 ??:「多分、ハルカたちもこれを見てるのかもな。…俺は一人か。」 まさか、自分が特別な出会いをすることになるとは。 番外編 パーティーの夜に… 蓮華:「ポケモントレーナー友好のための交流パーティー?」 ナナ:「そう、何かね、先週から決まってたらしいんだけど、ポケモン世界にいる全国のポケモントレーナー (コーディネーターなども含む)を集めて、交流しあうためのパーティーをしようってことになったのよ。」 突然尋ねてきたナナが言ったのだ。 ちょうど家にいたあたしとミューズも流石に顔を見合わせてしまった。 中学を卒業して高校受験も成功し、来美ちゃんも大学受験を成功し、さてようやく春休みかと思ったときのこと。 ナナ:「それで、一応蓮華たちも出ないかなぁと思ってね。」 蓮華:「あたしはいいけどさ…」 ミューズ:「あたしはどうなるの?」 ナナ:「えっ?ああ、それなんだけどね…」 ナナが言うには、どうやらポケモントレーナー同士で集まればバトルが起こりかねない事は確かだし、コーディネーター 同士のライバルも顔をそろえれば多少の自慢のし合いをしないとも限らない。 ただ、トレーナー同士はバトルの後は友情を確かめ合うんだけど、でも、厄介な事は当たり前。 そのため、トレーナーが連れてくる事ができるのは一匹、または連れてこないのどちらか、ということらしい。 ナナ:「例外はあたしたちジムリーダーと四天王くらいかな。2匹から4匹くらいが限度みたいだけどね。」 蓮華:「それで、そのパーティーっていつ?」 ナナ:「明日。」 蓮華&ミューズ:「えっ?」 ナナ:「あたしもさ、聞いたのは昨日なのよね。それで、男子は礼服、女子はドレスでっていう決まりらしいのよ。 だから衣装選びに時間かかってて…あれっ?蓮華は?」 ミューズ:「飛び出していったよ。蓮華がドレスを持ってるわけないじゃん。あたしはみんなに知らせないとねぇ〜。」 ナナ:「あ、そっかぁ。」 そう言うと、準備のためか、すぐにナナも帰っていってしまいました。 ミューズ:「全く、あたし一人に全部やれって言うのね。…ったく。」 あたしはみんなにパーティーの事を知らせた。 海:「えっ?パーティーのお誘い?」 ミューズ:「うん、そういうことだから、みんなに知らせるのを手伝ってくれないかなぁ?あたし一人で色々と動き回るのもさ、 結構疲れるんだよね。」 海:「そういうことなの。分かった。」 海ちゃんに知らせれば、後はみんなに伝わるのは事実だった。 多分、式神を一斉に放つはずだろう。 そう思ったとき、玄関先に来た久美ちゃんの元に一匹の空飛ぶ狐が舞い降りていた。 …やっぱり。 そんなこんなが過ぎて、パーティー当日。 ゲートを潜り抜けて能力者軍団はひとまず、ナナの家に合流するのでした。 普段は着ないような、タキシードとかの礼服を着込んだ男子と、ドレスアップした女性陣に、高価そうな着物を着た双葉さんや泉さん、雪美さんまで。 それと、それぞれ一応みんな、一体ずつポケモン(ほとんどパートナーポケモン)を持ってきました。 ナナ:「あ、みんな来たんだね。」 蓮華:「うわぁ、ナナの衣装すごいね。」 ナナ:「えへへ、そうかなぁ?みんなもすごいよ。男はともかく、蓮華たちは自分の能力やポケモンをあしらってるんだもの。」 ナナ達はドレスの見せ合いを始めていた。 確かに、礼服の男子は、タキシードか、もしくはスーツがブランドかとかだけど、大体同じような姿だもんね。 でも、凛々しいことは事実かな。 哲兄や涼治はともかく、晃正君やヤツデ君も結構かっこよく見える。 蓮華たちも運がよかったと思う。だって、全員の予定がつかなかったらカップルなのに一人淋しい思いをするとこだったし。 そんな時。 双葉さんがそろそろ出発しないかと言い出した時だった。 ナナ:「あ、そういえば、突然の知らせだったんだけどね、やっぱりトレーナー同士の交流も必要だけど、余興として、 仮面をつけようって話になったの。」 あたしたちポケモンは関係ないけど、いきなりの知らせだった。 涼治:「仮面?」 希:「え…」 なずな:「どうして?」 玲奈:「仮面なんかしなくてもいいんじゃない?」 ここで拒否発言をしたのは、一度ブラッキーの化身ダークに操られて、あたしたちの敵になったことのある4人。 あの時は…全然似合わない仮面だったなぁ。 ナナ:「やっぱり言うと思ったよ。でも、それが決まりだから。まぁ、突然の知らせだけど、パーティー会場で配布されるから 心配しないで。」 ナナはそう言うと、なずなちゃんにテレポートを頼んだ。 場所はホウエン地方にあるトゲピーが多く生息する平和な、メルヘンチックな国。 その名は「ミラージュ王国」 あたしたちはそこのお城の中に入った。 お城に入るとあたしたちはバラバラに分かれる事にした。 あたしは蓮華と分かれての別行動に決めた。 それにしても、パーティー会場は人、人、人の集まりだね。 仮面っていうか、様々な色、一番多いのは白色の、眼鏡みたいな感じの仮面の男性ばかり。 でも、交流は和やかに、楽しく行われているように感じた。 ツンツンツン…。 そんな会場を窓辺に座ってみていると、背中を叩く誰かがいた。 ミューズ:「何?」 振り返ってみると、そこには哲也さんのピジョットと、美香ちゃんのエイパムがいた。 ピジョット:「楽しんでるか?」 ミューズ:「う〜ん、普通かなぁ。」 エイパム:「(それって楽しんでるみたいには聞こえないよ。)」 ミューズ:「でもさ、あたしたちポケモンにはあまり交流のしようがないと思うんだけど?」 ピジョット:「確かにそうだな。哲也も俺を連れてきたが、あいつはバトルをしたり見せびらかしたりするタイプではない。 だから俺は自由行動を取れるのだが。」 エイパム:「(美香もだよ。でも、それって僕達だけじゃないんだよ。)」 エイパムとピジョットが言うには、あたしは歩き回ってないから知らないんだけど、色んなところに色んなポケモンがいるらしい。 でも、楽しんでるポケモンは少ないという。 と、そこに見覚えのあるポケモンはやってきた。 ミューズ:「あ、久しぶりなのが来た!」 ピジョット:「知り合いか?」 ミューズ:「う〜ん?そんなトコかな。それじゃ。」 あたしはあたしの姿を見て走ってきたポケモンと出会った。 それは、前にタマムシでコンテストでやり合った(直接バトルはしてない)ポケモンのエネコとロゼリアだった。 ロゼリア:「(やはり、あなたも来ていらしたようですわね。)」 エネコ:「(君のトレーナーは?)」 ミューズ:「さぁ?どこかにいるんじゃない?あたしは自由に動いてるんだもん。」 ロゼリア:「(そうですの…、あなたは全くコンテストに出ていらっしゃらないから、一度はあなたとコンテストバトルが してみたいのですけど…。)」 エネコ:「(そうだよね。今のコンテストって、出る人が決まってきてるからね。)」 ロゼリア:「(最終的には私か、エネコか、ムサシさんと渚さんのポケモンが残るだけですもの。)」 ミューズ:「分かった。それじゃ、蓮華や美香ちゃんを焚きつけてみるね。」 菜々美ちゃんはアイドル仕事が加速し始めてるから無理だろうなぁ。 今が一番、旬だとか聞くし。 あたしは少ししてから二人とも別れた。 二人はやってきたサーナイトとピカチュウ、ルンパッパと一緒に走っていくのが見えた。 と、聞いたことのある声がした。 そして、聞いたことのある曲が。 特設ステージで、ポケモンによるダンスが行われているのだ。 あたしはテーブルに乗り、その様子を見た。 ミューズ:「あ、やっぱりニャースか。」 ステージで熱唱しているのはニャースで、変わったロッドを振り回しながらソーナンスと踊っていた。 歌は「ポルカ・オ・ドルカ」で、途中から何とルンパッパとピカチュウが加わり始めたのだ。 そして気づけば、ナナのバルビーとイルミー、美香ちゃんのエイパム、海ちゃんのカポエラーが加わりだしていた。 チリーンやエネコ、サーナイトやロゼリアと、続々ダンスを踊っているし、ルンパッパは種マシンガンまでやってるし…。 ミューズ:「楽しそうだけど…あたしはパスだなぁ。」 ついそう言ってしまうくらい、妙な賑やかさなのだ。 と、今度はタンゴのリズムが聞こえた。 ここからはトレーナー同士も見ず知らずの男女が手を取り合って踊ったり、その様子を見たりしていた。 ステージ上では、ピカチュウとトゲチック、ニャースとソーナンスが踊りだしている。 ミューズ:「ふぅ、あたしはやっぱりやめておこうっと。」 あたしはその場を後にした。 だって、ベトベターやリングマに手を出されてもね。 あたしは同じ草ポケモン(ただしさっきのルンパッパ以外)が手を出さない限りは踊りたくないもん。 好みっていうものがあるのよ、好みっていうものが。 それにしても。 本当に暇だと思った。 あたしは見ているか、ポケモンと交流するか、それくらいしかない。 でも、実際にあたしは言葉を話しているからか、珍しがってるトレーナーは多い。 ただ、ここにいるのは持ち主のいるポケモンなので、ゲットできなくて悔しがってるトレーナーを何人か見かけた。 あたしは野生だとしても、ボール攻撃は全部弾き飛ばすもんね。 それよりもやめてほしいのは、自分の♂ポケモンをあたしに焚きつけること、かな。 だからあたしは、パーティー会場を出ることにした。 会場を出ると、お城の中は綺麗で華やかで、ゴージャスだった。 でも薄暗いからちょっとなぁ。 そう思っていると、一つの部屋から明かりが漏れていた。 ミューズ:「どうしたのかな?」 あたしは部屋に入っていくと、そこには高級そうなグラスに一杯の何かが入っていた。 ミューズ:「何だろう…ここ、スイートルームじゃないし…、研究室みたいだけど…ワインかシャンパンなのかな?」 あたしは迷っていた。 飲んでみたいんだよね。 すごくおいしそうだったし、ちょっと喉が渇いてたし。 こんな…綺麗な色のワインみたいな…匂いからしてお酒みたいだけど…。 あたしは一応シャンパンやカクテルくらいなら飲んだ事あるから大丈夫だけど…。 いいや、飲んじゃえ! あたしはそれを飲んだ。 ミューズ:「ん…、…不味い。」 それは、おもいっきり不味かった。 あたしは、見た目に騙されたと思った。 飲んだ後、噴水の近くには来たんだけど、それからすごく眠くなって…あたしは気を失っていた。 その頃、実はミューズと同じ事を思った少年がいた。 来たのはいいけど、つまらないパーティーだと思った。 礼服だからって事もあるけど、バトルの話で盛り上がりそうな雰囲気じゃなかった。 さっきも知らない奴と喋ったけど、ポケモンも自慢で終わるくらいで、育て方とか、バトルとかの話に転がろうとしたけど、 そんな話を始めるとすぐに他に移ってしまっていた。 場をわきまえているのかもしれないけど、これなら前にハルカやシュウたちと行った、サントアンヌ号の野外パーティーの 時のほうが楽しかったと思った。バトルや交換も普通に行われたくらいだったからだ。 さっきシュウだと思う奴に会ってそう喋ったけど、 シュウ:「そう思うんだったら帰ったほうがいいだろうね。君には多分この雰囲気は似合わないんだよ。」 とまで言われてしまった。 確かに言われても仕方ないけどな。 俺とシュウを比べたら、この雰囲気で似合うのは間違いなくシュウだ。 ??:「やっぱり帰ろうかな?あ、でもそれならリョクを探さないとな。」 俺の育て中のポケモン、ジュプトルのリョクは、中庭の森の中で楽しんで来いと離してきたばかり。 今俺が育てているのはジュプトルのリョク、バルキーのタク、そしてマグカルゴのカルグ。 それぞれ一応専門家というか、師匠かな? いや、兄さんや姉さんみたいな人だ。 そういう人たちに育て方とかを教わりながら育てているけど、タクとカルグは結構育てが難しかった。 そんな事も話せるかと思ったのに、全然だな。 そして中庭に来たけど、リョクはここにはいないらしかった。 が、その代わりに噴水の近くで、俺と同じくらいの年齢かと思える少女が倒れていた。 髪が長くて、二つの花飾りでその髪を綺麗にまとめているし、衣装は明るめの緑と青のドレスだった。 すごく綺麗な人だった。 と、その人は目を覚ました。 女性:「ん…あれっ?あたし…」 ??:「大丈夫ですか?」 女性:「あたし…あれっ?…」 ??:「どうしたんですか?さっきここに来たらここに倒れていたんですよ。気分でも悪いんですか?」 その人はすごく驚いた顔をしたり、唖然としたり、気分が悪いのかと思った。 女性:「大丈夫よ、ありがとう。あたし、ちょっとパーティーの雰囲気が苦手でね、ここで風に当たってたの。」 ??:「あ、俺もです。俺、交流会って聞いてたから育て方とかバトルのことを話そうと思ったけど、そういうことを話すと みんな避けていくんだ。」 俺は、この人とは話しが合うと思った。 女性:「あたし、ミューズ。あなたは?」 ??:「俺はユウキ。ホウエン地方のミシロタウンから来たんだ。」 女性:「あたしはポケモンは今日は連れてないんだけどね、タマムシシティから来たの。」 ミューズは俺に、ポケモンの色々な事を教えてくれた。 バルキーやマグカルゴの詳しい育て方や、技の勧めや色々と。 ミューズ:「ユウキはさ、育て方がいいと思うからこれからも続けていくといいよ。絶対強いポケモンになると思うんだ。 そしたら、あたしとバトルしてね。」 ユウキ:「ああ、いいよ。」 この人と喋ってると楽しいと、この時すごく思った。 この人と一緒にいたいと。 と、中庭にもダンスのメロディが流れてきた。 踊るのは好きじゃないけど…いいかな? ユウキ:「あの…」 ミューズ:「えっ?」 ユウキ:「俺と、踊っていただけますか?」 すると。 俺の差し出した手をミューズは取ってくれた。 ミューズ:「喜んで。」 俺は彼女と踊っていた。 彼女と俺がどれだけ釣り合っているのかは分からない。 でも、俺は今彼女とつりあいたいとすごく思った。 ユウキ:「このパーティー終わってからも…会えるよね?」 これからも、色々教えてほしいと思ったし、彼女に会いたいと思った。 タマムシシティなら一日くらいかかるけど、行けない場所でもない。 でも。 ミューズ:「ごめんね。あたし、外国に行くんだ。だから、このパーティーで思い出が作りたかったの。 あなたに会えてよかった。」 彼女はすごく残念そうな顔を、申し訳なさそうな顔をしていた。 でも、それならしょうがないと思った。 俺も残念だけど、しょうがないと思うしかなかった。 ユウキ:「いいよ。仕方ないよね。ごめん、最後に、後味の悪い事聞いちゃって。」 ミューズ:「ううん、あたし、気にしてないから。…そろそろ、帰らないといけないの。」 ユウキ:「そう、か…」 ミューズ:「あの…目を閉じて。」 ユウキ:「えっ?」 ミューズ:「あたしがいなくなる姿を見てほしくないの。あたしも、あなたが寂しくあたしを見ていると思うと、 帰る事ができないわ。すごく悪い一言だけど…」 確かにそうだと思った。 俺は黙って目を閉じた。 ミューズ:「ごめんね。」 ユウキ:「…!!!」 俺はつい目を開けていた。 でも、唇の感触は残っているのに…数秒の間に彼女の姿は消えていた。 ユウキ:「ミューズ…、また会えるよな。」 俺はそれからしばらく、その場を動けなかった。 気を失ってしばらく経ったのかな? あたしは目を覚ました。 ミューズ:「ん…あれっ?あたし…」 何か…違う気がする。 ??:「大丈夫ですか?」 振り返るとそこには蓮華たちと年齢が変わらないくらいの年の少年がいた。 タキシードを着て、仮面はしてたけどそこから見える目は純粋に綺麗だった。 髪は白っぽくて、体つきは幼さが残るかと思うけど、多少はしっかりしてるかなって感じだった。 でも、いつもより人が小さく見える…え、えぇ!? ミューズ:「あたし…あれっ?…」 あたしは流石に驚いていた。 ??:「どうしたんですか?さっきここに来たらここに倒れていたんですよ。気分でも悪いんですか?」 つい心配されてしまった。 驚くよね。 起きてみたら、人間の姿になっていたなんて。 でも、多分この人には言えない気がした。 いや、言ったらいけない気がした。 だから。 ミューズ:「大丈夫よ、ありがとう。あたし、ちょっとパーティーの雰囲気が苦手でね、ここで風に当たってたの。」 ??:「あ、俺もです。俺、交流会って聞いてたから育て方とかバトルのことを話そうと思ったけど、そういうことを話すと みんな避けていくんだ。」 あたしと同じ事を、いや、多分ポケモンの何匹かが同じことを考えてるのかもしれないけど、あたしと同じことを考えてる人、 本当にいるんだなぁ。 女性:「あたし、ミューズ。あなたは?」 一応名乗る事にした。 名前を考えるのは面倒だったから。 それにあたしの名前は一つだけだし。 ??:「俺はユウキ。ホウエン地方のミシロタウンから来たんだ。」 ミシロタウン…かぁ。 あたし、ホウエンに来るのは今日が初めてだからなぁ。 女性:「あたしはポケモンは今日は連れてないんだけどね、タマムシシティから来たの。」 一応植物ポケモンを持っていることにして、あたしはタマムシ出身にした。 マサラやトキワだとばれそうだし、グロウタウンって言うのはそれ以上にいけないと思ったのだ。 ミューズ:「ユウキって呼んでいいよね?ユウキは、どんなポケモンを育てているの?」 ユウキ:「俺、一度はポケモン結構旅でゲットして育てたんだ。で、今はゲットしたポケモンたちや、育ててなかったポケモンを もう一度一から育ててるんだ。ジュプトルや、マグカルゴや、バルキーを今は育ててるよ。」 ユウキはそう言うと、育て方の難しさを色々と話してくれた。 苦戦してるんだなぁって、あたしはすごく思った。 バルキーはなかなか育ちにくい傾向が強く、徐々に育てていくと強くなって、進化するのだ。 だからあたしは、ナナに聞いて勉強した知識を色々と教えてあげた。 自分で気づくのもいいかもしれないけど、知っていることを教えてあげないのは悪い気がしたからだ。 そして教えてあげると、ユウキはすごく喜んだり、うなずいたりしていた。 ちょっと難しそうな顔もしていた。 でも、心から喜んでるって思った。 あたしは、何か彼を見ているとドキドキしてしまう気がしていた。 ミューズ:「ユウキはさ、育て方がいいと思うからこれからも続けていくといいよ。絶対強いポケモンになると思うんだ。 そしたら、あたしとバトルしてね。」 ユウキ:「ああ、いいよ。」 ユウキと喋ってると楽しいし、心がすごく苦しくなると、この時すごく思った。 そして、ユウキと一緒にいたいと。 そんな時だった。 中庭にもダンスのメロディが流れてきた。ゆっくりとした曲だった。 とっても静かで、あたしとユウキしかここにいなくて、あたしはすごくドキドキが続いていた。 あたし…彼に恋してるみたい。 ユウキ:「あの…」 その時、ユウキはあたしより腰を下げ、手を差し出していた。 ミューズ:「えっ?」 あたしはつい戸惑ってしまった。 ユウキ:「俺と、踊っていただけますか?」 あたしと…。あたしはすごく嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて…。 そっと彼の手を取っていた。 ミューズ:「喜んで。」 あたしはユウキと、すごく長い時間踊っていた。 ダンスのメロディが聞こえなくなるまでずっと。 多分、あたしの今までのうちで、蓮華と一緒にいなかった時間の中で、一番楽しくて、とっても最高な時間だと思った。 このまま付き合いたいな。そう思った。 すると。 ユウキ:「このパーティー終わってからも…会えるよね?」 ユウキもあたしと同じ事を思っていたようだ。 でも、この時からだった。 あたしの体の感覚が少しずつ失っていると気づいたのは。 まだあたしは、人の姿には、自分の意思ではなれないようだ。 だからか、そろそろ元の姿に戻ってしまうようだ。 せっかくの時に、と思った。 でも、あたしが元の姿に戻ったら、ユウキはさらにガッカリすると思う。 こんなにいい思い出なのに…。 ミューズ:「ごめんね。あたし、外国に行くんだ。だから、このパーティーで思い出が作りたかったの。 あなたに会えてよかった。」 だからあたしはこう言い繕った。 言ってすぐ、後悔もした。 正直に言った方がよかったのかもしれないとも思った。 そして、ユウキはすごくガッカリしていた。 ユウキ:「いいよ。仕方ないよね。ごめん、最後に、後味の悪い事聞いちゃって。」 無理してるのが見てよく分かる。 ミューズ:「ううん、あたし、気にしてないから。…そろそろ、帰らないといけないの。」 ユウキ:「そう、か…」 あたしはこれ以上、ユウキをガッカリさせたくないと思った。 そしてさっきよりも体の感覚が違っているのに気づいた。 だから。 ミューズ:「あの…目を閉じて。」 ユウキ:「えっ?」 これが夢だったとは思わせたくないけど…でも…。 ミューズ:「あたしがいなくなる姿を見てほしくないの。あたしも、あなたが寂しくあたしを見ていると思うと、 帰る事ができないわ。すごく悪い一言だけど…」 こっちの方がひどいよね。すごくゴメンねって思った。 でも、ユウキは黙って目を閉じてくれた。 ミューズ:「ごめんね。」 すでにあたしは元の姿に戻っていた。 でも、このまま別れる訳にはいかないとも思っていた。 だから、あたしはユウキにキスをしていた。 あたしの、最初のfirst kissを。 ユウキ:「…!!!」 ユウキが目を開くと感じたから、あたしは蔓の鞭で噴水の反対側に飛んだ。 でも、それからしばらく、そこを動く気がしなかった。 また、あの姿になったときに会いたいと思った。 ユウキ:「ミューズ…、また会えるよな。」 そういう声が、パーティー会場から聞こえる音楽と共にふっと聞こえた。 あたしも会いたいよ、ユウキ。 あたしは心の中でそう思った。 それからパーティー会場に戻ったあたしは、蓮華と合流した。 パーティーはお開きになりつつあった。 蓮華:「ミューズ、どうだった?」 ミューズ:「あたし?…う〜ん、どうだろうね。」 あの事はあたしの胸の中に閉まっておこうと思った。 ミューズ:「蓮華は涼治君とどこまで行ったの?」 蓮華:「え、それは…」 蓮華はとっても赤面していた。 あたしは赤面した蓮華と、聞こえない振りをしている涼治君をそのままにして、そこを離れた。 すると、ポケモンとぶつかった。 ??:「(痛いなぁ、大丈夫か?)」 ミューズ:「ええ。ごめんね。」 あたしは相手を見ると、それはジュプトルだった。 ミューズ:「どうしたの?何かを探してるの?」 もしかして、と。 あたしはそう思った。 すると。 ジュプトル:「(ああ、ユウキって名前なんだ。この中にはいないみたいなんだけど、白い髪なんだ。見なかったか?)」 ミューズ:「知ってるよ。彼なら、さっき噴水の近くにいたのを見たけど?」 あたしはそう教えておいた。 案内は断った。 これ以上、切ない気持ちは勘弁してほしかったから。 ジュプトル:「あれっ?何であのミューズ、ユウキがそいつだって知ってたんだ?」 しばらくしてあたしは、ニャースとソーナンスにも会ったし、あのマサキにも会った。 ただ、マサキは何かを探してるみたいだった。 ミューズ:「ねえ、マサキは一体何を探してるの?」 ニャース:「にゃあ、確かあのリースイって奴の血液が残ってたそうにゃ。それを分析し続けて作ったポケモンを人間に 変える事ができるかもしれない薬らしいにゃ。」 ミューズ:「へぇ〜」 あたしは内心思った。 あれって成功した試作品だったんだ、と。 ニャース:「でも空っぽだったそうにゃ。多分、容器がないからって高級グラスに入れたから誰かに飲まれたと思うにゃ。」 まさかニャースはあたしが飲んだとも知らずに話してくれたのでした。 ニャース:「ただにゃ、それは二つあったそうにゃ。それが二つとも残ってなかったそうにゃ。」 あたしが行った時は一つしかなかったのに。 ニャース:「本当はにゃーとソーナンスが実験台になるはずだったのにゃ…」 ミューズ:「あっそう…」 あまり想像したくないわね、あんたたちのは。 それからあたしは、ピジョットを誘って空のドライブをした。 ミューズ:「ねえ。」 ピジョット:「ん?」 ミューズ:「あんたはさ、人間の姿になれたことある?」 ピジョット:「…一度だけな。」 ミューズ:「そう、どうだったの?」 ピジョット:「…お前はあるのか?」 ミューズ:「あるよ。…もしかしてさぁ、グラスの液体?」 するとピジョットは止まった。 この様子だとあたしの共犯は彼だろう。 ミューズ:「あたしも飲んだからね。…さっきね、一人の少年と出会ったんだ。それでね、恋したみたいなんだ…。」 あたしはピジョットにだけ、打ち明けた。 すると。 ピジョット:「俺も…そうなんだ。」 ピジョットも知らない少女と恋に落ちかけ、ピジョットの場合はキスをして分かれるまでは元の姿に戻らなくてよかった らしかった。 ミューズ:「いつかね、あたし、もう一度会って打ち明けたいんだ。」 ピジョット:「俺も同じだ。いつか、だけどな。」 あたしたちは泣いた。 ピジョットの場合は男泣きだけど、この際関係なく、あたしたちは泣いた。 悲しくて切ない悲恋を思って。 数時間後。 ナナ:「今日のパーティーは静かだったね。」 蓮華:「恋人には最高だったのかもしれないけど…やっぱり物足りないのかもね。」 綾香:「何言ってるの?蓮華は十分に最高っぽく見えたけど?」 香玖夜:「そうよね、涼治君のそばを離れてなかったし。」 蓮華:「///」 翼:「だけどさ、バトルとかができないと物足りないもんだよな。」 哲也:「ああ、これならサントアンヌ号のパーティーの方が良さそうだな。」 それからあたしたちはなずなの力で帰った。 ナナはもう少しポケモン協会と検証してみよう、と、言っていた。 哲也:「なあ、そういえばピジョットの様子がおかしいんだけど、蓮華は何か知らないか?」 蓮華:「え?哲兄のピジョットもなの?ミューズもなんだけど…。」 哲也:「そうか。それにしてもな、涙の跡があるし、その割には笑ってるし、こいつはどうしたんだろうな。」 蓮華:「さあね。本人が話してくれるまで、待つしかないわね。」 ミューズ:「いつかまた、ユウキに会って、今度は想いを伝えたいな。」