逃げられない状況っていうのはこのことなのよね。 誰かが言ってたっけ。 「前門のエレブー、後門のグラエナ」って。 つまり、逃げ場がないってこと。 あたしたちは数では有利だけど、相手が相手なだけに、侮る事は許されない。 ナナシマ編 11.5の島大乱戦(中編) アゲハ:「戦うしかないってことね…。」 リーフィー:「そうね。」 同意してくれたのは同じちょうちょポケモンであるバタフリーのリーフィー。 相手に対して威嚇してるのは、最近仲間になったばかりのポチエナのポチと、美香ちゃんのリザード。 そしてそれを見守るのはトドクラーのタマちゃん。 そんなあたしたちが対峙している相手はスペース団のシザリガーとナマズン。 彼らがいるのは、あたしたちが海に出るためにようやく探し当てた川。 でも、逃げようとしても意外に動きの早いシザリガーが後を立ちはだかってしまうかもしれない。 だから「前門のエレブー、後門のグラエナ」なのだ。 シザリガー:「そろそろやってもいいかな?」 ナマズン:「相手が動かない以上、こちらが動くのが道理であるだろうな。」 シザリガーは両ばさみを何度もチョキチョキしながら楽しそうに近づき、ナマズンはシザリガーを諭しながらも 動き出そうとしていた。 アゲハ:「みんな、やるよ!蓮華と美香ちゃんに合流するために!」 リザード:「おう!」 ポチ:「分かった!」 タマ:「やるしかないんだね!」 リーフィー:「行くよ!」 シザリガーとナマズンが本気で動いた時、あたしたちも動いた。 アゲハ:「リーフィー、やるよ!」 リーフィー:「O.K!タマちゃん!」 タマ:「うん、凍える風だ!」 アゲハ&リーフィー:「ダブル風起こし!」 あたしたちの風起こしの力で、凍える風の勢いをさらに高め、それによって凍える風の冷気を高めた事でシザリガーとナマズンの 素早さを下げようとしたのだ。 シザリガー:「くっ、ならバブル光線だ!」 ナマズン:「水の波動を食らうがいい!」 でも、風の勢いをはねかえすかのように、二つの水の攻撃が向かってきて、凍える風を退けてしまった。 シザリガー:「そんなくらいじゃ無理だね。」 ポチ:「だったらシャドーボールだ!」 リザード:「炎の渦でコンビネーション!」 ポチとリザードの攻撃が重なり、炎に巻かれた黒い球体がナマズンに向かう。 シザリガー:「そんなの俺には効かないね!クラブハンマー二刀流だ!」 だけど、これはナマズンの前に立ちはだかったシザリガーによって四散されてしまった。 ゴーストタイプと炎タイプの攻撃は水・悪タイプのシザリガーにはほとんど効果がないのだ。 ナマズン:「我らはダブルバトルには慣れている。だからそなたたちの攻撃の対処法は分かっているのだ。 しかも、我らに可能な攻撃を与えられぬ炎や氷、悪タイプのポケモンが主力ではな。」 なるほどね、シザリガーはともかく、あのナマズンは多分、操られている蓮華の知り合いの電撃ガールズのポケモン。 だからダブルバトルには慣れていてもおかしくない。 でも、こうして見ているのはもう無理だった。 シザリガー:「そういうことさ、行くぞ、バブル光線!」 ナマズン:「地震じゃ!」 あたしたちに向かってバブル光線が、リザードたちに向かって地震が放たれたのだ。 炎タイプのリザードや、まだ幼いポチにはナマズンの地震はダメージが高かった。 あたしもバブル光線の余波を受けて落下してしまったし、再び飛翔するには時間が必要だった。 あたしとリーフィーが、この闘いの鍵を握っているって言うのに。 シザリガー:「あははは、3体はそろそろ不能。そろそろ本気で行こうかな。」 ナマズン:「お前もか。私もだ。一撃必殺で行こうか。」 一撃必殺…? あ、はさみギロチンと地割れだ。 忘れてた。 彼らの最終段階攻撃。 命中率が低い技だけど、今動けないメンツが3匹(あたしも含む)もいる時点で確実に当たる確率は高い。 シザリガー:「行くぞ!はさみギロチンだ!」 シザリガーはあたしに向かってきた。 もう駄目なの? そう思ったとき、目の前に防御として立った子がいた。 アゲハ:「リーフィー…?」 あたしには普通は持ってない技がある。 仲良しのアゲハが倒されるのは嫌だから、あたしはここで使う。 それに、仲間がやられるのを見ているだけなんて、あたしには耐えられない。 人間は勝手な人が、ポケモンを考えない人が多いけど、あたしを助けてくれた蓮華が、そして同じようにポケモンを 思う美香ちゃんがいると分かってるから、だからあたしは頑張れる。信じられるから頑張れる。 蓮華たちに会うまでに倒れるわけには行かない! シザリガー:「わざわざやられに来たのか!」 はさみは目前に迫った。 でも。 リーフィー:「そんなわけないでしょ?バリアよ!」 あたしとシザリガーの間に、大きなバリアが現われ、はさみはバリアに阻まれていた。 シザリガー:「な、何!?」 リーフィー:「オマケよ!必殺、銀色の風!」 あたしたち虫タイプの技の中では最強クラスの技の一つ。 そして悪タイプにとって弱点であるこの技が、シザリガーにおもいっきり放たれ、シザリガーは吹っ飛ばされていた。 リーフィー:「女を甘く見ると怖いのよ。」 アゲハ:「リーフィー!…あたしも!必殺、銀色の風よ!」 あたしが時間を稼ぎ、同時にシザリガーを吹っ飛ばした事でナマズンの動きは止まっていた。 そこにアゲハの銀色の風も放たれたので、シザリガーは両はさみを地面につきながら、何とか立ち上がろうとするくらいになっていた。 特性のために急所には当たらなかったみたいね。 でも、今が反撃のチャンス。 リーフィー:「みんな、今よ!」 リザード:「おう!メタルクローだ!」 リザードがシザリガーをメタルクローアッパーで投げ飛ばし、 ポチ:「シャドーボールだ!」 タマ:「冷凍ビーム!」 ポチとタマちゃんの攻撃が、シャドーボールが冷凍ビームに纏われながらまっすぐ飛び、上空のシザリガーにぶつかって 爆発を起こした。 これでシザリガーは戦闘不能、ナマズンが黙ってるわけがないけど…。 ナマズン:「なっ!シザリガーが!よくもやったな!」 と、やはり黙ってるはずがなく、ナマズンはあたしたちに向かってきた。 ナマズン:「波乗りの力を食らうがいい!」 川の水が津波のようになり、波に乗ったナマズンがあたしたちに向かってくる。 アゲハ:「一斉攻撃で波乗りを打ち消すわよ!銀色の風!」 タマ:「任せて!オーロラビームだ!」 ポチ:「シャドーボール!」 リザード:「炎の渦!」 リーフィー:「サイケ光線!」 アゲハの掛け声であたしたちは一斉に攻撃を放った。 でも、それでも津波は消えない。 このままじゃ波に飲まれてしまう! だって、今のあたしたちの使える攻撃では、どんなに頑張っても無理がありすぎる! どうしよう…。 そう思ったときだった。 突然どこかから放たれた一斉攻撃が、津波を軽く弾き、ナマズンを跳ね飛ばしていた。 リーフィー:「今のは…?」 アゲハ:「あっ、アレ!」 アゲハが示す方向を見ると、そこにはカイリュウと、カイリュウに乗ったキレイハナとたねね、マリルリがいた。 リザード:「救援か。」 タマ:「あれってリュウだよね?進化したんだね。」 ポチ:「すげえ…、あれがリュウなんだ…。」 と、キレイハナたちが舞い降りてきた。 キレイハナ:「やっほ〜、苦戦してるみたいね。」 アゲハ:「キレイハナ、助かったよ。」 リーフィー:「同感。後はあのナマズンだけ。みんなで片をつけましょ!」 あたしたちは多大な力を持った救援のおかげで一気に形勢逆転した。 ナマズン:「おのれ…」 リーフィー:「あなたの作戦も攻撃も、これで泡と散ったわね。」 ポチ:「よっしゃ!頑張るぞ!ウォー!!」 あたしたちは一斉攻撃を放とうとした。 その時、ポチが光りだした。 そして。 ポチはグラエナに進化していた。 キレイハナ:「うふふ、これで4人目よ。」 リュウ:「あたしにぎょぴにポーに続いてね。」 タマ:「えっ!ぎょぴも進化したのか…。」 アゲハ:「だったら頑張らないと!行くよ、日本晴れ!」 アゲハの日本晴れが照らし出された直後、ナマズンから破れかぶれの破壊光線が放出された。 キレイハナ&たねね&アゲハ&リーフィー:「ソーラービーム!」 マリルリ&タマ:「水の波動!」 リュウ&ポチ:「破壊光線!」 リザード:「炎の渦!」 あたしたちの一斉攻撃は流石に強力だった。 ナマズンの破壊光線を軽〜く貫き、倒れているシザリガーを巻き込んで大爆発を起こし、倒れていた。 リーフィー:「よし!」 アゲハ:「終わったね!」 リザード:「ああ。」 タマ:「ポチも進化したし。」 ポチ:「おう!」 キレイハナ:「それじゃ、5人ともこっちに来て!少しでも多く、仲間と合流した方がいいでしょ?」 アゲハ:「あ、待ってよ!」 あたしたちは戦いを終え、キレイハナの案内でデンやメノノたちのいるところに向かうことにした。 ナマズンは、操られている人のポケモンなので、このままにしておくわけにもいかなく、連れて行くしかなく、 カイリュウが抱えあげていた。 あたしたちのところは前門後門だと思ってた。 でも、それよりもヤバイ状況になった4人組が実はいたんだって、後になってから分かった(byアゲハ)。 しかも相手はあたしたちと同じ2体で、この組み合わせになったことはいいことなのか、悪い事なのか、 それは結果として考えてはいいことでも、経験しないのかも分からないとあたしたちは思う(byリーフィー)。 そのうえ、初めに戦えていたのは一匹。 しかも道理をわきまえすぎて、見に力を入れすぎる真面目すぎのあいつだったって言うのが、結果を見てるあたしたちには 無茶のし過ぎって言いたいくらいかな(byキレイハナ)。 サン:「ブレイククローだ!」 ゴルダック:「弱いな、乱れ引っ掻き!」 サン:「くっ…、この状況は部が悪いな。」 サンドパンの俺が戦ってるのは相性の不利な相手、水タイプのゴルダックだった。 なっぴ:「サン!ゴメンね、あたしがこんなことになってるから…」 ゴルダック:「ふっ、騒ぐのはやめた方がいいぞ、草ポケモンのお嬢さん。その体が完全に凍らされたくなければ、 黙っていた方がいい。」 ナッシー:「それにさ、こっちには僕の眠り粉で爆睡してるカモネギとコータスもいるんだよ。 いつでもギガドレインで体力を吸い取ってもいいんだよね。」 今、俺はとってもヤバイ状況にいた。 大爆発によってポケモンがバラバラになったとき、俺が落下した場所には俺しかいなかった。 仲間を探さなければならないと思い、動こうとした時になっぴの悲鳴が聞こえ、駆けつけてみるとそこには、 頭を残して後を氷に覆われたなっぴが、そして眠ってしまっているネギとひがめがいたのだ。 落下した直後の不意を突かれて元々おっとりしている3人が破れたと見るのが一番だろうな。 そして駆けつけた俺は、仲間を助けるには自分を倒せというゴルダックの言葉を受け、こうして戦っていた。 ゴルダックは相性の不利な戦いで俺がどう出るかを遊び半分で見ているようだったけど、今の状況では俺は逃げるわけにはいかなかった。 仲間を見捨てるわけには行かない。 ナナの家で出会ったサンドパンのおっさんが言っていた事だ。 おっさん:「仲間を裏切る事、仲間を見捨てる事が、本当の敗北を示す。」 と。 おっさんは一度それをしてしまって後悔しているらしい。 何がどうしてそうなったのかは知らない。 でも、俺はそれを行った人だから言葉の重みをよく感じられ、心に強く誓っていた。 ゴルダック:「ははは、そろそろ命乞いをしてもいいんじゃないかな?雨乞いだ。」 雨が降ってきた。 ゴルダック:「これで君は動きが鈍るね。」 サン:「それはどうかな?行くぞ、影分身からメタルクロー、そしてツバメ返しだ!」 ゴルダックは雨が地面タイプの弱点と読んだらしいけど、それは違っていた。 俺は生まれた時に薬品を被った事で水に強い体を持っていた。 だから全く動きは鈍らず、普通に攻撃をしてやった。 今度はさすがにゴルダックも驚いたらしく、しかもまともに攻撃を受け、その隙にツバメ返しでナッシーを攻撃して ひがめたちから遠ざけた。 ゴルダック:「貴様、水に強いのか?」 ナッシー:「よくもやってくれたな、今の攻撃で条約は破棄だ。」 ナッシーはツバメ返しで自慢の葉っぱを切り落とされた事を怒り、突進しかねない状況だった。 でも、俺のところにはなっぴもひがめもネギもいる。 戦える状況ではないけど、俺は守ってやる。 そんな時、ナッシーの攻撃は既に行われていた。 なっぴ:「これは…眠り粉!…これじゃ…眠っ…ちゃう…」 サン:「なっぴ…、しっかりし…ろ…」 朦朧とする意識の中、ナッシーの次の攻撃、卵爆弾と、ゴルダックの冷凍ビームをまともに食らってしまった。 でも、眠気がひどくて戦おうにも立つ事ができない。 あきらめたくない! このまま負けたくもない! 仲間を見捨てたくもないし、このまま眠ってしまうわけにも行かないんだ! 俺は何とか立ち上がろうとした、その時だった。 強力なとてつもない叫び声が響き渡り、眠りかけだった俺やなっぴ、眠っていたひがめとネギが飛び起きたのは。 ゴルダック:「何!このやかましい音は…」 ナッシー:「ポケモンの騒ぐ攻撃…」 ぴぴ:「そうよ!一か八かあたしが指をふるで頑張って出したけど、成功してよかったわ。」 草むらから現われたのは、ピクシーのぴぴだった。 他にフシギソウのダネッチとピジョン(多分ポッポのポー)の姿もあった。 ダネッチ:「仲間は徐々に集まりつつある。」 ポー:「だから救援に来たよ。」 ゴルダック:「くそぉ…、ならばもう一度氷漬けにしてやる!食らえ、冷凍ビーム!」 ナッシー:「眠り粉を受けろ!」 彼らの出現で形勢は逆転に見えた。 が、眠りから覚めたばかりの二人は意識が朦朧としているようだし(ぴぴの騒ぐ攻撃が不完全だったから)、 なっぴも体が凍ったままで、ダネッチたちが攻撃しようにも俺の体が邪魔らしく、攻撃に移れそうになかった。 しかも、俺も下半身が凍ってしまっていた。 だが、救援に来たのは3人だけではなかったのだ。 ??:「もう一人いるわよ!」 その声と共に地面から水が噴出し、噴出した水が冷凍ビームと眠り粉を打ち消し、さらに飛び出したアクアが、 神秘の守りで状態異常が起こらないようにしてくれていた。 アクア:「あたしも救援よ。このあたりは地下水脈が豊富だから、あたしが通ってくる事もできたの。 ほらっ!ひがめもネギも寝てんじゃないわよ!起きろ!」 ひがめ:「ん…あ、なっぴ、悪いな。」 なっぴ:「暖かい…、ようやく自由になれるわ。」 アクア:「あたしたちはあなたたちがやばくなったら力を貸してあげる。」 ぴぴ:「だからそれまでは4人で頑張ってよ!」 ネギ:「さて、仲間をここまで追い詰めた恨み、俺たちで晴らしてやるよ!」 アクアの叱咤でひがめとネギが起き、ひがめの炎でようやくなっぴの氷が溶かされた。 そして復活した3人は俺の横に立ち、戦闘態勢に入っていた。 ナッシー:「そ、それでも俺たちはお前たちを処刑するんだ!」 流石にナッシーは怖気づいていたが、 ゴルダック:「慌てるな、ナッシー、数が増えようと、俺たちは最強さ。」 ゴルダックの言葉で何とか思い立ったようだ。 ナッシー:「ああ、食らえ!タマ投げに卵爆弾!」 ナッシーから大量の木の実と卵爆弾が飛んできた。 だが。 ネギ:「任せろよ!必殺、ネギの舞!」 ネギによるネギの舞が飛んでくる木の実を全て切り落とし、卵爆弾も全て叩き落としていた。 ゴルダック:「くそっ、ならばこれだ!冷凍ビームだ!」 なっぴ:「日本晴れのソーラービームよ!」 なっぴの顔が光り輝いて光の光線を放ち、 ひがめ:「オーバーヒートだ!」 さらに炎の強力な波動がそれに加わった事で冷凍ビームを押し返し、ゴルダックの顔面におもいっきり命中していた。 ゴルダック:「ぐはっ、…よくもやってくれたな…」 ゴルダックは流石に効いたらしく、顔を押さえて悶絶していて、ナッシーがゴルダックの前に立った。 ナッシー:「ゴルダックによくも!サイコウェーブだ!」 サン:「泥かけだ!」 ナッシーの攻撃は強力だったけど、俺だって動けなくても戦える。 俺の放った泥は、サイコウェーブにぶつかって相殺していた。 そして。 ナッシー:「それなら踏み付けだ!食らえ!」 ついにここまでかと思ったのか、ナッシーは卵爆弾を飛ばしながら向かってきていた。 ほぼ突進のようで、突進の衝撃で俺たちを踏みつけようとしているようだった。 でも、俺もようやくひがめによって体の氷を溶かしてもらっていたので、動けるのだ。 サン:「なっぴ、行くぞ。」 なっぴ:「ええ、剣の舞からリーフブレードよ!」 なっぴの両手の葉っぱが鋭い刃に変わり、体を回転するかのようにナッシーを切り刻み、 サン:「食らえ!俺の一撃、ブレイククロー!」 俺の両爪のブレイククロー、十文字斬りがナッシーをぶった切った。 ナッシーも2段刃攻撃には打つ手がなく、そのまま無言で倒れこんでいた。 ゴルダック:「ナッシー!」 そこでゴルダックがようやく起き上がってきた。 ゴルダックの顔はソーラービームとオーバーヒートによって真っ赤に焼けていて、光線を出したり念力などを使う時に必要な、 額の赤い珠も焦げ付いていたが。 ゴルダック:「光線も出せないが、まだ水の攻撃はできるのさ!食らえ、ハイドロポンプだ!」 ゴルダックは後がもうないと分かり、白いハーブを持っていないために特殊攻撃能力の下がったひがめに攻撃を集中していた。 ひがめ:「火炎放射だ!」 ひがめも反撃するが、ゴルダックの口から噴出している攻撃に徐々に押されている。 サン:「ひがめ!」 俺はもう考えてる暇もなく、ひがめに放たれ続けている水流を自分の体で止めていた。 ひがめ&ネギ:「サン!?」 なっぴ:「ちょっと無茶しすぎよ!」 アクア:「サン、あなたの体は戦いで傷ついてる!いくら水に強い体だからってそんな攻撃を受けたら…」 サン:「分かってる!」 それくらい分かってた。 確かに体にはかなりの衝撃と痛みが走っていた。 でも、俺にこの水に強い耐性がついたのは、こういうときのためだし、仲間を守るためだ。 負けるわけには行かない! サン:「分かってるけど、俺は負けないんだ!食らえ、破壊光線!」 残ってる力を使って出した破壊光線は、何とかハイドロポンプを相殺したが、破壊光線を出した直後の動けない俺は、 その隙に向かってきたゴルダックのメガトンパンチを諸に受けていた。 ゴルダック:「甘いな。」 ゴルダックのメガトンパンチが当たったのは、先ほど冷凍ビームを受けた部分で、攻撃を特に集中された場所だった。 防御力の高い俺でも、流石に効いていた。 サン:「甘い…か。」 でも。 サン:「甘くないさ。カウンター。」 俺はカウンターでメガトンパンチの衝撃をやり返した。 その直後、気を失ってしまったので何も覚えてない。 なっぴ:「馬鹿!」 気がついたのはそれから数時間後だった。 起きた時に聞いたのはなっぴの一言だった。 なっぴ:「死んじゃったかと思って心配したんだから!」 サン:「悪かった。」 辺りを見回すと、アゲハやメノノ、キレイハナたちの姿も見受けられるし、どうやら進化したらしい仲間の姿もあった。 そして見覚えのある薬草もいくつか置いてあった。 サン:「合流したのか。」 キレイハナ:「そうよ、まだ救援に行ったり捜索に行ったりしてるメンバーも多いけど、何とか徐々に集まってきてるわ。」 サン:「そうか、…あいつは?」 アクア:「ゴルダックの事?あなたのカウンターを受けてもまだ倒れてなくて、あなたのわき腹に乱れ引っ掻きを行ってたから、 流石になっぴが切れてね、なっぴのリーフブレードが倒したわよ。」 アゲハ:「その後ここに運んでからも、ず〜っとあたしたちさえも寄せ付けないであなたの看病をしてたんだから。」 メノノ:「少しはなっぴのこと、考えてやれよな。」 俺はなっぴを探したが、彼女はいなかった。 サン:「なっぴ…、探してく…」 俺は心配をかけすぎたと反省した。 が、動こうとすると、キレイハナの蔓が、メノノの触手が、アゲハの糸が、アクアの尻尾がそれを遮っていた。 キレイハナ:「待ちなさい。あんたは重症患者よ。ここにある薬草とさっき拾ってきた誰かの鞄から見つけた包帯で応急処置を したばかりなの。これ以上動いて蓮華が悲しむような事は起きてほしくないから。 だから当分は動いちゃ駄目。ゴンたちが見つかったら、ゴンたちに運搬を頼むつもりよ。」 当分はバトルにも出れそうにないな。 でも、あいつらを守れてよかった。 でも、まさかな…。 俺とあいつ…両思いだったのか…。 サンとなっぴ、このまま幸せになってくれたらいいかな。 それにしても、あの時、サンが倒れた直後になっぴの起こした行動は驚くものだったけど、それよりも驚いたのは、 ゴルダックの尻尾が突然燃え出した事。 そして、何故かゴルダックが動こうとしても体が動かず、影に引っ張られるようにしてなっぴの攻撃を受けた事。 アレは明らかに能力者のサポートによるものだけど、この島には蓮華達以外にもまだ、能力者はいるの? いたら、どうして出てこようとしないの? まだ味方と言うわけには行かないのかな? それはともかく、蓮華はどこにいるんだろう…。 あたしたちは、どこに行けば蓮華と合流して、みんなと一緒になれるのかな。 早く会いたい。(byキレイハナ) その頃。 キレイハナたちのいる場所から数キロはなれた場所、思い出の塔の跡地に蓮華はいた。 蓮華:「これが思い出の塔…あるトレーナーを自分のために命を犠牲にして守ったイワークの事を祀るために作られた、 イワークをモチーフにした岩の塔が、こんなに破壊されるなんて、スペース団、許せない。 みんなを探し出して、早くこの島を復旧できるようにしなきゃ。」 それに久美ちゃんたちを戻さないと…。 そう思っていたあたしは、ふいに岩のしたから何かの声がするのに気がついた。 蓮華:「誰か、いるの?」 あたしはその岩の下に向かって聞いてみた。 すると、二つの反応が返ってきていた。 だから急いで蔓で岩をどかしてみた。 蓮華:「大丈夫?怪我はない?」 あたしは、岩の下で震えていた二人のポケモン、クチートとナックラーを抱き上げた。 ちょっと重いし、バランスも取りずらかったけど。 蓮華:「岩の下敷きになってたのね、ナックラーは穴を掘ったけどそれで閉じ込められて、クチートは岩が重すぎて 出られなかったわけか。」 あたしは荷物を探り、傷薬とポケモンフーズを出し、手当てをしながら食べさせてあげた。 蓮華:「どう?元気は出たかしら?」 そう聞くと、 ナックラー:「ナック、ナック!」 クチート:「クチー!」 二人は元気に声を上げていた。 そんなときだった。 希:「見つけたわよ!」 あたしたちの目の前には、サンダースとヌオーを引き連れた希ちゃんが立っていた。 希:「ようやくここで見つけたからには、あなたを処刑してあげる。ポケモンを持ってないあなたじゃ、 あたしたちには勝てないわね!」 確かにポケモンがいない。 どうしようかと思ったとき、クチートとナックラーがあたしの前に立っていた。 蓮華:「あなたたち…あたしのために戦ってくれるの?」 聞いてみたら、二人はうなずいていた。 希:「あらあらあら、そんなポケモンであたしに勝てるのかしら?サンダース、ヌオー、行くわよ!」 希ちゃんはこの状況を見て、勢いづいたのか向かってきた。 あたしは咄嗟に、二人のポケモンに技マシンを2個ずつ投げた。 そして、両手からソーラー弾を発射してけん制した。 その様子を見て驚く二人。 蓮華:「あたしは能力者なの。それでもついてきてくれる?技マシンは、あたしのために前に出てくれたことへのお礼。 今ここから逃げても攻撃される可能性があるから、その技でなら、逃げられるはずよ。」 あたしはソーラー弾で希ちゃんの足止めをした直後に尋ねた。 でも、クチートもナックラーも、あたしをまっすぐと見ていて、その場から逃げようとはしていなかった。 蓮華:「戦ってくれるのね、それじゃ、行くわよ!」 そこにサンダースが向かってきた。 希:「サンダース、10万ボルトよ!」 蓮華:「ナックラー、10万ボルトを受けて!あなたは地面タイプだから攻撃のダメージは受けないわ!そして影分身よ!」 ナックラーは10万ボルトを受け止め、サンダースの周囲を影分身で取り囲んだ。 希:「何!?ならばサンダース、ミサイル針で一気に分身を消すのよ!」 蓮華:「ナックラー、穴を掘る攻撃!」 サンダースは体の針を一気に飛ばし、ナックラーを攻撃しようとしていた。 でも、ナックラーの体はミサイル針のような針を簡単に受けるような弱い体ではなく、硬い。 だからゆっくりと穴を掘って地面に潜っていった。 希:「くそっ、ならばサンダースはジャンプ!そしてヌオー、地震よ!」 蓮華:「させないわ!クチート、ソーラービームよ!」 クチートは、大あごに光を溜め込み、ヌオーに向かってソーラービームを放った。 直後、地震も発生し、ヌオーとクチートは共にダメージを受けた。 が、クチートは倒れなかった。 倒れたのはソーラービームを受けたヌオーの方だった。 希:「何で!?受けたダメージはほぼ同じなのに、どうしてヌオーは倒れたのよ!」 と、その時だった。 ヌオーが倒れた場所の近くから、ナックラーが飛び出したのは。 蓮華:「ギガドレインよ。地面に潜り、そのままナックラーはヌオーの真下でギガドレインを使っていたの。 だから体力がなくてフラフラの状態で地震を放ったので、地震の威力は弱く、クチートは倒れなかったのよ。」 技マシンを投げた時、ナックラーとクチートは、自分が何の技マシンを使われたのかは感じた。 でも、ギガドレインの指示はしてなかった。 これはポケモンの意思によるものだったのだ。 あたしは能力のおかげで草の力を感じたので、クチートに指示を出せた。 ポケモンを信じ、ポケモンの意思を尊重したのが、勝機の理由かな。 蓮華:「さて、クチート、最後に気合パンチよ!ナックラーは岩石封じでサンダースの動きを止めて!」 このまま波に乗る事が、バトルで勝利をつかめる勝機につながる。 希ちゃんはナックラーの行動に驚いていたので、あたしはその隙をつくのが一番かと思ったのだ。 サンダースは飛び上がり、着地した直後に岩石封じを受け、自分から電光石火で避けようとしているが、足場から突然出てくる 岩の柱によってその動きは制限されていた。 そこにクチートの気合パンチがサンダースの体を跳ね飛ばし、倒していた。 希:「サンダースまで…!?そんな…!」 蓮華:「あなたは操られた事で、催眠術にかかった事で、本当の自分になってないからポケモンに対しての指示も 遅くなってるのよ。我が力よ、彼女と彼女のポケモンにかかった悪の力を弾きなさい!ヒーリングフラッシュ!」 あたしは力を放出した。 クチートとナックラーはそれを眩しそうにしながら、同時に暖かい光を嬉しそうに浴びるように見ていた。 そして希ちゃんは、サンダースやヌオーは、そして遠くにいるナマズンは、その光や波動を受けて、ゲンガーの力から解放されていた。 それは草原にいるキレイハナたちにも届いていたわけで。 キレイハナ:「…感じた?」 アクア:「ええ。」 アゲハ:「離れてるけど、蓮華がいるね。」 メノノ:「いるな。」 あたしの力を感じていたらしいけど。 なっぴ:「ナマズンもさっきより表情が和らいでるから、あの希ちゃんって言う子が、蓮華の力で元に戻ったのかもしれないね。」 キレイハナ:「ええ、でも…どうする?」 サン:「俺が探しに行くよ。さっきの波動を受けたら、何か体が軽くなった。」 メノノ:「…確かにそうだな。蓮華の力は癒しの光だ。俺たちの体の疲労を消化するくらい可能だ。」 アゲハ:「でも、みんなはここにいて。あたしが探してくるよ。」 アクア:「任せたわ、アゲハ。あたしたちはここでみんなを待つから。」 でも。 あたしはまさかキレイハナたちが離れた場所に、ここから行ける距離の場所にいるとは思ってなく、希ちゃんがすぐに目を覚ました直後、 彼女を連れてすぐそこを離れてしまっていた。 希:「ゴメンね。あたし、これで2度目…」 蓮華:「しょうがないよ。奴らは強いもん。あたしだって結構敗北してる。希ちゃん、早くみんなと合流して、 スペース団を倒そうよ。」 希:「うん…、あたしのこと、怒ってないの?」 蓮華:「怒ってないよ。希ちゃん自身があたしを攻撃したんじゃないって分かってるからね。」 希:「…ありがとう。」 希ちゃんは泣いていた。 あたしも思わずもらい泣きをしていた。 あたしは思った。 「早くみんなと合流して、スペース団の野望を打ち砕く!だって、人が自分の意思と違うことをするように操られるなんて、 後になって傷つくようなものなんだから。そんな心の傷を受ける人ばかりになるのは、普通に感じてられない!」 何としても、みんなの力を借りて、この戦いを終わらせるんだ! ???:「うふふ、蓮華ちゃんの方は、これでもう大丈夫ね。??の方はどうだったのかしら?あたしのサポートは今回は必要なかったけど。」 その少し前に、美香は久美と対峙していた。 久美:「ようやく見つけたわよ、子猫ちゃん。あたしの手でかわいく処刑してあげるわね。」 光沢先輩は普段の少々の荒っぽさとはかけ離れた口調になっていた。 何となくだけど、調子が狂う。でも、それを気にしてばかりはいられない。 美香:「あたしは簡単にやられないわよ。」 両手に炎の弓矢を具現化させてけん制すると、先輩はメガニウムとエレブーを出していた。 久美:「そんなおもちゃで私のポケモンには勝てないわよ。メガニウムは葉っぱカッター、エレブーは電磁砲よ。」 容赦のない攻撃だった。 電磁砲を葉っぱカッターが包んでいる。 でも、あたしには防御策がなかったので、一発目を炎の矢で相殺させた後、空から攻撃をすることに決めた。 美香:「攻撃補助、翼の矢!」 炎の矢とは別の矢羽の大きい矢を具現化させて、宙に撃つと、それはUターンするように戻ってきて背中の辺りで 大きな翼に変化した。 この動作は慣れてたから、3秒もかからずに終わり、あたしはすぐにその場から飛翔した。 久美:「空に逃げる気か、しかしエレブー、雨乞いから雷だ!」 美香:「えっ!?」 でも、あたしより先輩の方が上手だった。 雷は翼の片羽に落ち、あたしは落下を余儀なくされていた。 それに、雨乞いが続いている時点で、あたしの炎の力も激減してしまう。 あたしは何とか着地を成功させてすぐ、茂みに飛び込んで身を隠した。 久美:「あら?どこに行ったのかしら?せっかく雷で焦がしてあげようと思ったのに…」 今の状況は先輩の有利な方向に向いている。 あたしはついさっき友達になったあの子以外は所持してないし、出したところで勝ち目はない。 ただ、勝機の可能性があるとしたら、それは相手のメガニウムを倒すところから始まるだろう。 不意にバッグの中身を見てみた。 適当なものしか入ってないけれど、あたしと蓮華は4の島を出るときにナナから技マシンを幾つか貰ってきた。 それは旧タイプのもあるので、役に立つらしいけど…。 そんな中、あたしはちょうどいいものを見つけ、その子にいくつかの技を覚えさせておいた。 美香:「よし、…気分が乗らないけどやってみようかな。」 あたしは祈った。 美香:”我に宿る炎の精霊よ、我に力を与えたまえ。水に負けない炎の美しさを称えた炎の噴水よ、出でよ!” すると。 あたしの3つ目の技、炎の祈りは成功した。 これは成功率がすごく低いから滅多に使わないのだ。 地面から雨乞いの雨に負けないくらいの力で燃え盛る炎があたしと先輩の間の地面から噴出していた。 久美:「何っ!?こんな事は聞いてないわよ…」 美香:「聞いてるか、聞いてないかは別じゃない?必殺、炎のミリオンショット!」 炎の矢が分身を作って相手に攻撃を与える技だ。 矢は炎の中を通って威力は増し、メガニウムを攻撃した。 久美:「メガニウム!よくもやったわね、エレブー、雷で炎を消し飛ばし、あの女に雷パンチよ!」 先輩はメガニウムを倒された事で怒りだしていた。 そして充電を終えたらしきエレブーの雷は、炎の噴水を相殺によって消化し、あたしに向かってきた。 美香:「今よ、オタチ!泥かけよ!」 あたしの6匹目の、ついさっきゲットしたポケモンだ。 オタチは飛び出してすぐに地面の泥をエレブーに向かってかけた。 元々雨が降ったことで、辺りには水溜りも多数できていて、泥は十分なほどあり、エレブーは避ける間もなく、 泥かけを顔に受けていた。 美香:「今よ、脳天にアイアンテールよ!」 泥かけを受けたエレブーはあたしに当てるはずだった雷パンチを見事に外していた。 視界が泥で見えなくなったのだろう。 その間にエレブーの頭に、静電気で麻痺する事を知っての上で攻撃させた。 久美:「エレブー、リフレクタよ!」 でも、先輩も黙ってみているだけの人ではない。 だけど、その時だった。 あたしたちの近くを、とんでもない光の波動が流れていったのだ。 美香:「これ…蓮華の癒しの波動…」 蓮華が癒しの波動を放ったということは、蓮華は希ちゃんと遭遇したのかな? 不意にそんなことを思った。 だとすると先輩は? あたしは先輩の方を見てみると、先輩は立ち上がり、今の状況とコスチュームに驚いていた。 久美:「えっ?…あたし、何をしてたの?」 美香:「先輩、実は…」 だからあたしは、先輩に事のあらすじを教える事にした。 そしてあたしと先輩はそのまま、みんなのもとに合流しようと歩き出した。 アレだけあたしに攻撃した割に、先輩はあっけらかんとしていて、流石にあたしも怒る気がしなかった。 ただ気になるのは、あたしの祈りの最中に、他の炎の能力者の気配がしたこと。 感知できたけど、すぐにその気配は消えてしまった。 この島にはまだ、誰かいるのかな? ??:「ふぅ、ここもようやく終わったか。それにしても一瞬ばれそうになったのにはヒヤッとしたぜ。」 その頃。 7の島のスペース団アジトでは、なにやら変わった動きが起こり始めていた。 ある団員が、自分は誰なのかと困惑し、疑問に思い、トラブルを起こしていたのだ。 ??:「俺は…本当は誰なんだよ…」 それは偶然の事だったのだ。 ボスであるドリームがセクトスと話しているのを偶然聞いた。 その会話を聞いてからだった。 ドリーム:「??の調子はどうだ?」 セクトス:「はい、あやつはバトルとしても使える奴です。十分に育ってると見てよろしいでしょう。」 ドリーム:「そうか、それでは記憶を消した事は正解だったな。あやつは自分がスペース団員と思い込んでいる。 このまま洗脳と催眠の強度を増していけば、昔の記憶も完全に消去できるであろうな。」 セクトス:「ええ、彼は元が強いのですから。実験に使われていた状態から復元して正解でしたわね。」 それが自分のことを言ってると分かってから、彼はずっと悩んでいた。 ??:「毎晩、セクトス様からお呼び出しを受けていた事、そしてそのことを何故か覚えていないこと。 それは…俺が本当は別人で、洗脳や催眠を受け続けていたからなのか…?」 そんな時、ふと頭を強く打ち付けてしまう出来事があり、彼はその時洗脳が解けていた。 ??:「俺は…!!そうだ、あいつに伝えなければ…」 彼はある人物に接触を試みた。 しかしそれは、接触が成功する間際、駆けつけたセクトスによって遮られていた。 セクトス:「催眠が戻ってしまうとはね。」 ??:「くっ、もう俺は、お前らの元で屈しない!」 セクトス:「それはどうかな?お前を発見し、保護し他のはこの組織だ。既にお前は帰る場所がないのだぞ。 このままスペース団の元で悪事の全てを重ねるのだ、リューク。」 セクトスは、リュークが動くよりも早く、彼の動きを封じ、再び彼を洗脳しなおした。 だが、一度破られた催眠はやぶれやすくなってしまうため、ドリームはさらにリュークの記憶にプロテクタとなる 暗示をかけていた。 ドリーム:「これでようやく安定だろう。ドリーム、お前はリュークが接触しようとした人物を拘束し、リュークとの 記憶を抹消するのだ。行け!」 セクトス:「はっ!」 しかし、この出来事が後でさらに発展する事になるとは、この時はまだ誰も考えていなかった。 いつになったら反撃できるのか。 そんなことを考えてる暇はない。 今俺たちは、奴から逃げるしかない。 奴は炎の塊となって俺たちに襲い掛かっていた。 ソルル:「トロ、羽の具合は大丈夫なのか?」 トロ:「微妙よ。さっき攻撃を受けたのが痛かったわ。」 俺だけだったらあんな奴の一匹、昔みたいな走りで逃げれた。 でも今は、俺の居場所を作ってくれた大事な仲間が一緒だ。 こいつらを見捨てたら、俺はまた一人だ。 それに、見捨てられるはずがない。 俺の大事な親友であり、仲間であるこいつらを。 ソルル:「しかし、あいつをどうする?」 トロ:「そうね…ヒメ、ニド、あなたたちの意見も聞かせて。」 俺と一緒にいるのは、トロピウスのトロ、ニドリーノのニド、そしてリングマのヒメだった。 俺たちを追い続けているのはスペース団のギャロップ。 性格は短気だと思う。 俺たちに対し、火炎車の体勢で追いかけ続けてきているのだ。 既にトロが羽に、ヒメとニドが体に火傷を負い、二人はトロの背に乗り、逃走を続けていた。 ニド:「そうだな…あいつのところに帰る為にも、蓮華の元に戻るためにも戦うしかないんだけどな…」 ヒメ:「ソルルのカマイタチとトロの草技以外は直接攻撃しかできないメンバーだけどな。」 ヒメの言葉はよく分かる。 俺以外のこいつらが火傷を負ったのも、直接攻撃を行った結果なのだ。 それに、ニドは奥さんがいるから、ここで死ぬわけには行かない、実は一番負けたくない意識の持ち主だった。 だが、考える時間はもう残ってなかった。 ギャロップが高速移動で俺たちに突っ込んできたのだ。 ギャロップ:「遊びは終わりだ!燃え尽きろ!」 俺は何とかかわしたが、トロたちはまともに受けてしまい、周囲を炎に囲まれてしまった。 ソルル:「トロ、ヒメ、ニド!」 トロ:「ソルル、あなただけでも逃げて!」 ソルル:「逃げられっかよ!俺は仲間を見捨てて逃げるような奴にはなりたくない!俺の居場所はお前らと一緒にいる場所だ!」 トロ:「でも逃げて!」 ヒメ:「ソルル、お前が一番無事なんだ!」 ニド:「無傷なのに傷を負って倒れるより、ここで逃げて仲間を連れてきたほうがいい!行け!」 みんなは炎に囲まれながら、そう叫んでいた。 でも。 そんなこと、できるわけがなく、俺は逃げなかった。 目の前にはギャロップが前足を蹴りながら、俺に狙いを定めている。 ギャロップ:「何故逃げない?」 ソルル:「居場所を捨てたくねえからさ。」 ギャロップ:「ほぉ〜、お前の居場所はこいつらや仲間ってことか?」 ソルル:「ああ。」 ギャロップ:「それはおかしい、アブソルは群れを持たないし、群れを持つアブソルもホウエンにいるらしいが、 そいつらも仲間を見捨てているぞ。」 ソルル:「それくらい知ってる。ホウエンで経験したからな。」 ギャロップにそう言い放つと、奴も、渦の中の3人も驚きの声や表情を上げていた。 言ってなかったもんな。 俺は昔はホウエンにいたから。 ホウエンの群れに生まれ、群れで生活をしていた。 でも、群れがハンターに襲われた直後、傷ついた母さんと父さんを群れは見捨て、俺を無理やり連れて旅立った。 いや、父さんと母さんって言っても血はつながってないけどな。 俺の父親と母親の代わりに、我が子同然で育ててくれた人たちだった。 そんな優しい人でも、そういう考えの人は、あの群れでは長く生きていけないらしかった。 だから俺は、その時、親を奪われた時に群れを捨て、人間も信じなくなった。 それ以前から、俺たちは災いをもたらすポケモンだって決め付けられていたから、人間たちはずっと俺たちを見たら 攻撃ばかりしてきていた。 自分ばかり助かればいい奴ばかりの世界なんて、そんな奴らばかりがいる場所なんて、信じられるわけがねえよ。 いる気もしねえ。 だから俺は一人になった。 そして人知れず、人間の貨物船に潜り込み、カントウにやってきた。 それ以前に二人だけ、信じてもいい人間に出会ったことはある。 一人は俺と同じ、悪タイプのポケモンばかりを連れた奴で、そいつのアブソル、確かソリューとかいったかな? そいつのおかげでその人間は信じる事ができた。 でも、俺はそいつのそばには居られなかった。 居場所は既に埋まっていて、俺がソリューより強かったら、ソリューの居場所がなくなる事が理解できた。 だから俺は人知れず、そいつと別れた。 まだ耳に、そいつの得意だったブルーハープの音色が残っている。 もう一人は、確か飛行ポケモンに乗った女だった。 俺が怪我をしたチルットをしょうがなくポケモンセンターまで運んだ時、チルットを傷つけたと思われて攻撃を受けた。 それを助けたのは、その町のジムリーダーとか言う女だった。 怪我が治ったらすぐ旅立ったが、そいつの言った言葉。 「空を見ている時は、雲の流れを見るといい。その流れを見て、気持ちを落ち着かせ、自分なりの空を作るように生きなさい。」 あいつはそんなことを言ってた。 今でもあいつらだけはちゃんと覚えてる。 そして、カントウに来て、偶然すれ違った時に気持ちが落ち着く気がして、その力を持ったトレーナーを追いかけた。 それが蓮華だ。 俺は蓮華に色々と危険を伝えたが、あいつはそれに飛び込んでポケモンを助けようとする無茶な奴だった。 だが、俺が殺されそうになったとき、自分も能力者だといって、殺されるかもしれないのに、俺の盾になって守ってくれた。 今まで会った人間の中で、一番俺が神に近い存在と思った相手。 それが蓮華だった。 そして、この仲間たちを、居場所を得た。 もう、俺は一人でいるのは嫌だと、強く思ったのもその時だった。 もう一人になりたくないし、ここで終わりたくもない。 そして負けない! 俺は体に強い波動が高まるのを感じた。 今までもあったけど、蓮華と居る事で、俺は何か自分に変化がおきるのを感じた。 それはあいつといるからで、仲間と居るからで、それで俺が強くなれるからだった。 負けないと、仲間を守ると、強く思う気持ちが、俺に力をくれた。 ソルル:「俺はお前を倒す!」 俺は、体に高まっていった波動を力に変えて、目の前から向かってくる火炎車のギャロップにぶつけた。 ソルル:「破壊光線だ!」 今までは覚えてなかった技だった。 でも、今は使える技。 使えるようになった技だ。 仲間を守りたい、一心の気持ちによって、この技が取得できた。 ギャロップは、破壊光線を受けてその場に倒れていた。 俺の強い気持ちにこいつは負けたんだ。 ソルル:「3人とも、まだ大丈夫か?」 トロ:「ギリギリね。でも、そろそろ危ないわ。」 ソルル:「そうか、ちょっと待てよ。」 俺は、実は炎に対抗する方法を持っていた。 ただ、隠していたわけじゃなく、ついさっき草葉の陰に落ちていた技マシンのおかげで使える様になっただけだった。 ソルル:「さっきそこに落ちてた技マシンで使えるようになったんだ。雨乞いを。」 俺の持ってる技の中では、コンボにもならない、覚えていても意味のない技だけど、仲間のために使うにはもってこいの技だった。 俺が集中して強く念じた時、俺たちの周囲にだけ局地的な雨が降り、ギャロップにさらにダメージを与えると同時に、 仲間たちを燃やそうとしていた炎を消していた。 トロ:「助かったわ。」 ヒメ:「やったな。」 ニド:「ソルル、ありがとう。」 ソルル:「ああ、…聞こえる。」 3人:「?」 ソルル:「誰か来るぞ、俺たちの身内の。」 不意に聞こえた声だった。 俺たちを探している声が、遠くから聞こえた。 災害を感じる能力を持つ俺だけど、最近はそれ以外の何かを感じる事もできるようになってきた。 誰かが呼ぶ声や、助けを求める声も。 そして今聞こえたのは、リュウ姉の声だ。 ソルル:「助けがようやく来たみたいだぜ。」 俺が言うと、既に3人とも喜んで、その場に座り込んでいた。 疲れたよな? 俺も疲れた。 でも、俺が休めるのはもう少し先だ。 リュウ姉一人じゃ、例え進化したってこいつらを運ぶのは苦労ものだ。 俺はもう少し、起きてる必要がある。 そんなことを考えていると、本当に進化したらしいリュウ姉が、リーフィーとアゲハ、そして進化したポーを伴って 飛んでくるのが見えた。 仲間っていいな。 だが、そんなときにソルルは再び何かを感じ取っていた。 ソルル:「…今のはなんだ?嫌な予感でもないが、何かさらにこの状態を混乱させる事が起きそうだが…」 ソルルはこの時、それが既に始まっているとは気づいていなかった。 その頃。 ナナシマ列島で様々なバトルが行われていた頃、ある日の夕暮れ時だった。 クチバシティのある少女の下に、とある電話がかかってきていた。 ??:「はい、…どなたですか?」 ??:「渚か?」 ??:「えっ…、…輝治、なの?」 少女、渚は死んだはずの彼氏からの電話を受けていた。 渚:「輝治、どうして…」 輝治:「悪い、お前には知らせておきたかったんだ。実…」 ぷつっ。 だが、その電話は話中に突然切られていた。 渚:「輝治…」 彼が何を知らせたかったのかは分からなかったが、その電話の履歴は、ナナシマからだという事が分かった。 どこの島かは分からないが、今何かが起きているらしいナナシマに彼がいることは明らかだった。 渚:「輝治が何を言いたかったのか、そしてどうして生きてるのかを知るためにも、あたしはナナシマに行って確かめなきゃ! プクリン、手伝ってね。」 ナナシマに暗雲が立ち込める中、一人の少女がまた、新たに戦いに加わろうとしていた。