マユミ:「さっさと吐いたらどうなの?」 エイジ:「全てを吐け。そうすれば楽になるぞ。」 馬鹿みたい。 あたしは思った。 わざと捕まってみたら久美ちゃんと希ちゃんに手の内をばらされて式神のお札を没収されたのは痛いけど、 あたし以外の能力者の能力を詳しく吐け、だなんて言われて、あたしがそれを実行するわけないじゃない。 海:「オバサンとオジサン、あたしは全く話す気がないから。」 マユミ:「オバサン、ですって!てめえ、さっさと吐け!この野郎!」 エイジ:「マユミ、落ち着け。こいつには後で好きにできるんだ。ボスのポケモンを使えばこいつも俺たちの奴隷なんだ。」 マユミ:「そうね…。」 さっきからずっとこの調子だった。 そろそろいいかな? 海:「しょうがないわ、話すわよ。」 マユミ:「そう、ようやくあたしたちの力が分かったのね。」 海:「しょうがなくよ、どうせ、オバサンには理解できないから。」 マユミ:「そうかしら?理解してあげるわよ!」 エイジ:「おい…、さぁ、早く吐くんだ。」 あ、ひっかかった。 エイジはともかく、マユミが引っかかったのは予想通りかな。 海:「あたしの能力は、自然から授かったエネルギーを物体に変え、それを波動にして撃ち出す技を使う能力よ。 そして、その力が体の周囲に行き渡った時、あたしの言霊は、あたしの話したことを実現させるの。」 マユミ:「言霊って言うのは何よ。」 海:「人間が喋る言葉に力や霊力が宿ったものよ。」 マユミ:「信じられないわね。何かやってみなさいよ。」 海:「たとえば、あたしを縛ってるこの鎖よ、消滅しろ!みたいな、こんな感じに。」 あたしがそう言うと、あたしの体に強く巻きついていた鎖が砂のようになって床を流れていった。 海:「引っかかったわね。出でよ、プータル!」 そして、あたしの両手によってできた輪の形が光り、エメラルド色の小型の竜のような式神、プータルが飛び出した。 マユミ:「何!?ひっかけたわね!」 エイジ:「俺たちが誘導させるとは…、しかし、お前のポケモンと式神の札はこちらの手の内にあるぞ。 これらを処分されたくなければ…」 うるさいなぁ…、そんな脅しが通用するとでも思ったの? あたしはこれでも修羅場潜ってるのよ。 海:「プータル砲、発射。」 あたしは容赦無しにボールとお札をあたしに見えるように出している二人に攻撃を放った。 マユミ:「なっ!?」 エイジ:「何っ!?」 発射直後にシールドの式神、亀甲壁を出して防いでいたら、煙が晴れ、マユミとエイジは倒れていた。 海:「はぁ、あたしのボールとお札にはあたしの式神が放った攻撃で壊れたり消滅したりはしないように、術を仕掛けてあるのよね。 だから、あなたたちには容赦なく攻撃ができるわけ。それに、プータルと亀甲壁はあたしの両手の輪からしか出せないし。 まぁ、これを知らなかったからあなたたちは負けたのよね。それじゃ、失礼させてもらうわ。」 この島にいる団員たちを一掃させなきゃ。 海:「キングドラ、カポエラー、力を貸して!」 ナナシマ編 12.5の島大乱戦(後編) これで大体片付いたかな? 1の島にいたスペース団も、やってくるスペース団員も片付いて数日。 そろそろあたしたちも結集するべきじゃないか。 そんな気がしていた。 菜々美:「氷雨さん?どうかしたんですか?」 氷雨:「ちょっとね、そろそろ蓮華ちゃんたちの元に結集する時期が来たんじゃないかって思ったの。」 菜々美:「結集…ついにスペース団との大決戦って事ですか。」 氷雨:「ええ、これが終わらないと全てが終わらないと思うの。この島はぬら爺たちに任せておけばいいから。」 菜々美:「そうですね。」 そこに健人君がやってきた。あたしと目が合うとすぐに反らしてしまったけど、あたしのところに来たようなのは分かった。 氷雨:「どうしたの?」 健人:「あんたの知り合いが来てるぞ。」 氷雨:「えっ?…ナツメ?」 健人:「いや、あんたの同類だ。」 そう言うと、健人君はさっさといなくなってしまった。 まだ怒ってる、あたしは許されていない。 そんな気がした。 もう一生、健人君とは昔のように普通にわだかまりなく、話せないのかな? 菜々美:「氷雨さん、健人の方はあたしに任せて。健人、あたしとオバサンの攻撃でちょっと機嫌が悪いだけなんです。」 氷雨:「ええ。」 あたしは菜々美ちゃんと別れると、ポケモンセンターの入り口に向かった。 すると、そこには妖怪仲間達が集まっていて、その中心にいたのは…。 氷雨:「双葉に大河?」 双葉:「氷雨、久しぶり。」 大河:「ちょっと厄介な事になってさ、ここにみんながいるって聞いて駆けつけたんだ。」 中心にいたのは、あたしの知り合いで、古椿の双葉のお姉さん的存在の二口女の双葉と、彼女の助手の、狛犬の化身の 大河だった。二人は人の思いを叶えるための使命を果たしていたはずだけど…。 氷雨:「何があったの?」 双葉:「厄介なの、あたしが大河や美香ちゃんたちと一緒に願いを叶えてあげた子の記憶が戻ってしまったらしいのよ。」 氷雨:「えっ?」 双葉:「最近具合が悪くてね、あたしの蛇が前に吸収したはずの代償分の記憶が一人分、外に出てしまったの。」 大河:「それが、この近くを漂った形跡があるんだ。それにな、その子は死んでしまう彼氏と別れを告げるために 願いを叶えたんだが…」 そこに、菜々美ちゃんがやってきた。 お客の正体を知って、駆けつけたらしい。 そういえば、美香ちゃんと菜々美ちゃんなのよね、妖怪仲間以外でこの二人の使命を知ってるのは。 菜々美:「渚の事?」 双葉:「ええ、どうやら、彼氏が生きていたみたいなの。」 菜々美:「えっ!それで渚は…」 大河:「ナナシマに来たらしい。力を借りたい。既に記憶が戻ってしまった今、もう一度吸収する方法もあるが、 彼氏が生きている以上、彼女の願いは不完全だと言う事にもなり、今回の代償分の記憶は無効になる。 ただし、その分彼女が傷ついていないかなどの自己処理をする義務が俺たちにはあるんだ。」 双葉:「だから、渚ちゃんを探すのを手伝って。」 菜々美:「分かりました。…それで、彼氏はどこにいたんですか?」 あたしはあまり話についていけなかった。 しょうがないか。 どうやら双葉と大河の持ち込んだトラブルに関わってるのは美香ちゃんと菜々美ちゃんくらいらしいから。 だけど、次に双葉の口にした言葉は、この場にいたあたしたちや、様子を見に来た健人君、それに妖怪仲間も驚かせる言葉だった。 双葉:「渚ちゃんの彼氏は今…記憶を失ってスペース団にいるわ、…リュークと名乗って。」 パル:「あ〜、あたしに相応しい場所ね…破壊されてなかったら。」 ルナ:「確かに、こういうのはパルには似合いそうだな。」 ぺろん:「だね…。」 よま:「かもな。」 壊れてなかったら、破壊されつくされてなかったら、絶対にあたしに相応しいと思う。 爆発に巻き込まれてついた場所は、確かゴージャスリゾートっていうお金持ちのための観光施設や別荘地がある島だけど、 全てが無残に壊されていた。 全く、どうしてこんなになるまで破壊したんだか…。 パル:「何とかして元の島に戻らないと、他のみんなと合流できないわね。」 ルナ:「そうだな、俺がぺろんを運ぶから、よまはパルを頼むよ。」 考えるまでもなかった。 よくよく考えれば、ルナは特性が浮遊だから飛べるし、よまもゴーストポケモンだから飛べるのよね。 あたし、ヤマブキで運んでもらったっけ。 でも、よまはその時何かを見つけたようだった。 よま:「ああ、…だけどさ、アレを何とかしないと厄介じゃないか?」 ぺろん:「アレって?」 ぺろんが聞いたけど、その時にはそれは、あたしたちの目の前に出現していた。 ドリルの角を使って、瓦礫の中から出てきたのだ。 サイドンだった。 見覚えがある、スペース団のキザったらしいオタクみたいな奴が持ってた。 サイドン:「お前ら、能力者のポケモンだな。」 よま:「それがなんだ?」 サイドン:「ようやく探し当てた。お前たちを処刑してこの島の肥やしにするようにエイジから頼まれたのだ。」 ぺろん:「処刑!?」 パル:「そう、あなたがここにいるってことは、他のポケモンはあたしたちの仲間のところにいるのね?」 サイドン:「そういうことだ、覚悟!」 サイドンが地面を殴った時、砂浜からは無数の岩石が出現し、あたしたちを取り囲んでいた。 パル:「これは…サイドンの岩石封じ…」 ルナ:「戦うしかないね。冷凍ビームだ!」 ぺろん:「水の波動!」 よま:「ナイトヘッドだ!」 あたしを守るようにして、3人がサイドンに攻撃を放った。 しかし。 サイドン:「角ドリル!」 サイドンの角ドリルが回転し、3つの攻撃に当たり、逆に攻撃が弾き返されてしまった。 よま:「何!?」 ぺろん:「僕達の攻撃が弾かれたなんて…」 サイドン:「残念だったな、俺は攻撃に対抗できる術を持ってるし、水の攻撃も効かないぞ。そこの貝殻の攻撃もな! 食らえ!突進角ドリル!」 角ドリルの回転を利用して、攻撃を回転で角に纏わせ、それらを弾いたり、あたしたちに返すこともできるってわけだ。 でも、その攻撃はあたしが防御してやる! パル:「みんな、下がって!あたしの鉄壁のバリアよ!」 あたしは3人の前に出て、サイドンの角ドリルを鉄壁で受け止めた。 パル:「あたしの絶対防御よ!あなたの角ドリルも通用しないわ!」 サイドン:「それはどうかな!このままメガホーンだ!」 ビシッ! あたしは聞きたくなかった音を聞いた。 あたしは今まで、攻撃を全て防御する自身が十分にあった。 でも、この防御がついに敗れるときが来たと、あたしは感じた。 よま:「パル!」 よまの声が聞こえた気がした。 でも、そんな声を掻き消すかのように、あたしの殻は角ドリルに貫通され、上の殻が粉々に割れてしまった。 サイドン:「このまま爆裂パンチだ!」 攻撃の痛みを初めて感じた。 あたしはサイドンの一撃で意識を失った。 よま:「パル!」 防御に自信を持っていたパルが倒された。 パルは殻が粉々にされたことで生命力が乏しくなっている。 ゴーストポケモンの俺にはそれが分かった。 このまま見ているだけなのはいけないが…、あの破壊されたリゾートの中に何かあればいいが…。 よま:「ルナ、ぺろん、ここであいつをひきつけてくれないか?パルが危ない。」 ルナ:「パルが!?」 ぺろん:「そんな…」 よま:「こいつに何かあったら、ここであいつを倒せても蓮華に顔向けできない。散々操られて攻撃した事がある俺を 昔みたいに仲間扱いしてくれた他のみんなにも、蓮華にも。」 ルナ:「分かった、行け!必殺、冷凍ビームだ!」 ルナはサイドンに再び冷凍ビームを放った。 しかしそれは今度は跳ね返されていた。 ぺろん:「火炎放射!」 ぺろんの攻撃がそれを相殺したが、いつまで続くか分からない。 早く戻らないとな! よま:「すぐ戻る、テレポート!」 俺は破壊されたリゾート内部に飛んだ。 だが、壊されたものばかりで何か当てになるものはない。 このままこいつを死なせたくない! パル:「…よま?」 よま:「パル、大丈夫か?しっかりしろよ!」 パル:「あたし…もう駄目っぽいよ。力が出ない。」 よま:「そんなこと言うな!お前を絶対に助けるからな!」 パル:「よま…」 その時、パルの力がさらに乏しく、息が細くなった。 よま:「パル、絶対助けるぞ!」 何かないか、こいつを助けられるものは…。 元気のカケラや塊があればよかったが、アイテムに関するものは全て破壊されたか奪われたかになっている…。 待てよ…、もう一つ、可能性を持つのは…進化だ。 こいつはいつも、あのアイテムを持っている。 前に聞いた事があった。 よま:「なあ、パルは進化しようって思ったりするのか?」 パル:「えっ?何で?」 よま:「だってさ、そのウロコをいつも大事そうにしてるじゃないか。」 パルは深海のウロコをいつの間にか手に入れていたのだ。 渦潮を利用してよく綺麗に洗っていた。 よま:「だから進化したいのかなって思ってさ。」 パル:「う〜ん、あたしはね、進化はしたくないかな。限界に来たら進化しなきゃいけないのかもしれないけど、 あたしに限界はないと思うんだ。ヤバイってなったらみんなが助けてくれそうだもん。」 よま:「そうか。」 パル:「あっ、でもね、あたしが死にそうになったら、…その時は、よまがあたしを助けてよね。」 よま:「へっ?俺?」 パル:「うん。よま、あたしはよまになら助けられてもいいかな。」 よま:「パル…」 直後、とてつもない水鉄砲を食らった。 よま:「うおっ!」 パル:「あははははははは…、真顔になってるよ。嘘に決まってるじゃない!引っかかった、引っかかった!」 よま:「パル!」 その時はからかわれたけど、こうなってしまうと、俺は彼女を進化させてやらないといけないような気がした。 何とか原形をとどめている転送マシンを見つけた。 転送先は…4の島がいいかな?いや、ここにはもう一つあるし、多分、通信進化ポケモンをすぐにゲットしたい金持ちのために あるのかもな。これでパルを進化させよう、適当なボールに入れて…。 パル:「よ…ま…、ありがとう。あの時言った事…嘘じゃ…な…」 よま:「何も言うな。言うだけ、それが告白でも、お前の力が使われてしまう。力尽きさせなんかしないからな。」 俺はパルをボールに入れて転送装置を作動させた。 電力は俺の電磁砲を利用し、サイコキネシスも使った。 作動するまでに少し時間がかかった。 でも、原形をとどめているだけじゃなく、壊れてもいなかったようだ。 通信は成功した。 俺は、パルをボールから出した。 よま:「パル…」 パル:「…」 殻が割れた状態で息も乏しいパルは、少しも動かない…。 よま:「パル!」 何度も叫び続けた。 すると。 パル:「よま…、ありがとう。」 目を覚ましたパルは光りだした。 そして、パルはサクラビスに進化した。 パル:「よま、進化したことで何とか助かったみたい。ありがとう、好きだよ、よまのこと。」 よま:「ああ、俺も…」 その時、上のほうで爆発音が聞こえた。 よま:「そうだ、ぺろんとルナが危ない。」 パル:「うん、まだバトル中だったね。」 俺はパルを連れてルナたちのところに戻った。 よま:「ルナ、ぺろん!」 戻ってみて、俺たちは愕然とした。 ルナは体のあちこちに大きなひびが入った状態で既に倒れていて、鼻もへし折れていた。 そして、ぺろんがサイドンに踏み潰されていた。 サイドン:「ようやく戻ったか、こいつらは倒させてもらった。次はお前たちだ。だがその前に、こいつの処理をしないとな。」 ぺろんがサイドンに持ち上げられ、瓦礫の中に叩きつけられた。 パル:「ぺろん!」 よま:「ルナ、しっかりしろ!」 まだ二人の生命エネルギーの波動をしっかり感じるので、ダメージは受けているがそれぞれ特性や防御力のおかげで 戦闘不能に陥ってるだけなのは分かる。 しかし、このままにしておくわけにはいかない。 早く、あいつを倒さないと…。 ルナ:「ん…、よまか。パルも、進化したんだね。」 よま:「ルナ、ひどくやられたな。」 ルナ:「ああ、もう動く事もできないよ。リフレクタを張っていたけど、あいつのビルドアップを発動させてしまったから、 瓦割りにやられてしまった。捨て身の大爆発も、冷凍ビームも、サイコウェーブも全く効…」 ルナが意識を失った。 同時にぺろんが投げ飛ばされた方にはさらに破壊光線が打ち出されていた。 むちゃくちゃだ! よま:「サイドン、俺が相手だ!」 サイドン:「サマヨールか、いいだろう。食らえ、岩石封じだ!」 俺の周囲に無数の岩石が出現した。 しかも初めに囲まれた時よりも岩は高くそびえていた。 サイドン:「そのまま目覚めるパワーを受けろ!」 俺は岩の間を縫って逃げようとした。上から抜けては狙われかねない。 しかし、サイドンの目覚めるパワーは岩に当たって反射を繰り返し、全ての攻撃が俺にぶつかった。 体中にとんでもない衝撃が走る…。 よま:「何だ…この威力…」 サイドン:「俺の目覚めるパワーは悪タイプの属性を持つのさ。そこのエスパー野郎もこの攻撃で止めを指したのさ。」 俺のようなゴーストタイプや、ルナのようなエスパータイプは悪タイプの攻撃に弱いのだ。 威力が強すぎて体が動かない…、さっきパルのためにサイコキネシスや電磁砲で力を使いすぎたのか…。 よま:「鬼火にシャドーパンチだ!」 何とか攻撃を放つが、サイドンの尻尾を振る攻撃が鬼火を弾き消し、シャドーパンチも破壊光線で消滅してしまった。 サイドン:「さて、お前は打撃攻撃では倒せないんだよな、もう一度、目覚めるパワーだ!」 サイドンの攻撃が放たれた。 ヤバイ!俺もやられる! そう思ったときだった。 そうはさせないよ! あたしの命の恩人を、あたしの大切な、大好きな人をこのまま倒させはしないから! パル:「サイコキネシスよ!」 あたしのサイコキネシスの波動が目覚めるパワーを相殺した。 あたしがいるのは海の中。 ついさっき、よまとサイドンの戦いが始まる前に、あたしの力が十分に出せる海に入ったのだ。 サイドン:「くそっ、もう少しのところを!お前が先だ!」 サイドンの地割れが襲ってきた。 でも、攻撃が放たれたのはあたしの身代わりだった。 サイドン:「何!?身代わりか。」 パル:「うふふ、残念でした。行くわよ、渦潮に念力!」 あたしの放った渦潮が念力によって水竜巻を作り、サイドンを包み込んだ。 サイドン:「くっ、先ほどのカクレオンに受けた傷がここで痛むとは…」 そうなんだぁ、そう思ったとき、ぺろんが瓦礫から這い出してきた。 ぺろん:「僕は一箇所に集中して攻撃したのさ。」 サイドン:「何!?生きてただと!?」 ぺろん:「僕が最後に受けたのは君のロックブラストだった。そのおかげで岩タイプになっていたからな、破壊光線を 防ぎきる事ができたのさ。」 サイドン:「くそぉ、ならばお前たち全てを倒す!地震だ!」 サイドンはおもいっきりジャンプして地震を起こそうとしていた。 でも、それを簡単にはさせない。 なぜなら、よまとルナが動けないうえに、ここで全員が倒れるわけには行かないからだった。 あたしとぺろんしか、動けるものはいないのだ。 パル:「サイコキネシスよ!」 ぺろん:「原始の力だ!」 あたしのサイコキネシスがサイドンの落下速度を落とし、さらに、あたしはどこに力を隠していたのか不思議に思うくらいの、 巨大な岩をぺろんは砂浜から出現させ、サイドンに下からおもいっきりぶつけていた。 それによって地震が放たれたのはその岩に対してで、サイドンは足を突っ込む形になっていた。 サイドン:「くっ、あの地震を防がれるとは…、足が抜けん!」 足が抜けない以上、サイドンは角ドリルの体勢で攻撃を弾く事はできない。 今がチャンスだった。 パル:「今ね!必殺、ハイドロポンプ!」 ぺろん:「水の波動だ!」 よま:「ナイトヘッド!」 体が動かない状態のサイドンはハイドロポンプと水の波動の合体攻撃を、そしてようやく立ち上がったよまの攻撃を、 ぺろんに受けた傷と、サイドンの口に受け、徐々におされ気味になっていった。 サイドン:「うっ…」 パル:「よま、ぺろんとルナを助けていて!あたしが決めるから!」 あたしはそう叫ぶと、海に潜り、高速移動で海底から海上に登っていった。 これを決めれば例えサイドンであっても倒せる。 パル:「必殺、波乗りよ!」 あたしは波と共に、ハイドロポンプも一緒に放ちながら、サイドンにぶつかった。 サイドン:「ぐあっ…、水タイプには負けないはずだったが…」 ルナたちは、よまの光の壁のおかげで助かっていた。 ようやく、あたしたちはサイドンを倒す事ができた。 リーフィー:「お〜い!」 その時だった。 遠くからリーフィーや、アクアたちがやってくるのが見えた。 パル:「遅いよぉ〜!」 あたしは叫びながら、バトルを終えた嬉しさから、ついよまに飛びついてキスをしているのだった。 後でおもいっきり冷やかされた。 血迷ったわけじゃないって説明するのに時間がかかったけど、この船が手に入れられてよかったと思う。 自動操縦で行きたい島まで一直線っていうのはお得なのかもしれないけど、こんな船を隠し持ってた大好きクラブの会長さんは 本当にいい人だ。 それでナナシマの入力はしたけど、ナナシマのどの島に行くかがまだ入力し切れてないから、ナナシマ1の島に向かってる状態の今。 でも、電話回線を友達のポケモンで調べてもらった結果、行き着いたのは7の島だった。 あたしだって知ってるよ、7の島が今どうなってるか。 7の島は新聞で見た限りではスペース団の本拠地だって言ってた。 だとしたら、あたしはこのまま7の島に行っても輝治に会う前にスペース団に何かをされてしまうかもしれない。 だから、…そうだ、5の島に行ってみよう。 襲撃が起きてるのは知ってるけど、何となく勘で、5の島に行くべきなのかもしれないような気がした。 あたしの直感は当たる事が多い。 だから入力行き先をナナシマ5の島と入れておいた。 でも、輝治はどうしてスペース団にいるんだろう…。 それに、どうして生きてたんだろう…。 あの時、あたしを救命器具に入れて逃がしてくれて…、あれっ? 何か大事な事を忘れてるような…。 あたしがコンテストに出るのをやめてまで、輝治と一緒に船に乗ったのは…。 …忘れてるなんておかしいよ。 あたし、何かとっても大事な事を忘れてる。 …忘れてはいけなかったのに…、何がどうし…、アーボックとハブネーク…。 渚:「あっ!思い出した!あたしは、輝治と3回別れを告げたんだ。あの幻の願いのお店に行って…」 確か、女の人が、あたしの願いの代償に記憶を食べたはず…なのに、どうしてあたしに記憶が戻ったんだろう…。 忘れていた、消し去られてしまっていた記憶を…。 でも、もういい。 あたしは、輝治に会いに行くんだ! しつこい奴は嫌われる。 あたしはそう思う。 でも、あたしたちは逃げるしかない。 勝ち目があっても逃げるしかない。 何故なら、ここではかなり不利だった。 破壊された発電所に飛ばされてしまったあたしたちは、合流できたのはよかったけど、 目の前に現れた、発電所の電気を帯びたエレブーから逃げる羽目になっていた。 サゴッピ:「どうしてここはこんな迷路みたいな場所なのよ!」 叫ばずにはいられなかった。 きっぴー:「しょうがないよ、こういう建物なんだからさ。」 チリリ:「ディグは建物には入れなかったから外であたしたちを待ってるはずだけど…外に出られるかな?」 逃げているうちに建物に入っていたあたしたち。 ディグを連れて行く事が不可能なあたしたちにディグは、 ディグ:「外で待ってるから、早く出てこいよ。」 と言って、エレブーに向かっていったけど、そのすぐ後にエレブーが追いかけてきたことから、ディグは負けたのかもしれない。 だから、あたしたちは何とか外に出たい。 でも、出れると言うより、追いかけられることで建物の内部に誘導されているように感じた。 エレブー:「待て!おいコラ待て!」 きっぴー:「待ってられるか!」 サゴッピ:「ねえ、そろそろ戦わないとやばくない?」 チリリ:「そうだけど、あたしたち…このメンツで戦える?」 サゴッピ:「でもやるっきゃないじゃん!」 あたしは立ち止まった。 すると。 きっぴー:「思い立ったら吉日のサゴッピには負けるよ。」 チリリ:「しょうがないから付き合ってあげる。」 二人も立ち止まってくれた。 と、そこにエレブーが肩を切らしてやってきた。 エレブー:「ようやくたどり着いた。ここでお前らを倒してやるよ。ここは発電所だ、俺の充電能力も最高値を示している。 食らうがいい、電磁砲を!」 狭い室内で、エレブーは強烈な電磁砲を放射してきた。 チリリ:「神秘の守りよ!」 チリリが神秘の守りで電磁砲を防いだ。 と思っていたら、部屋の金属の壁を伝わって、電磁砲はあたしたちに降り注いでいた。 サゴッピ:「これが…あいつの力なの?」 きっぴー:「こんなにも大きなダメージがあるなんて…」 チリリ:「神秘の守りで守りきれないなら、光の壁でも意味はないわね。」 エレブー:「そういうことさ、この場所にいる限り、俺の攻撃は全てお前らに当たるってわけだ。」 この建物は金属製でできた壁が使われている。 だから電気を通してしまうため、エレブーの攻撃は全て当たるってわけか。 ここは地面じゃないし、鉄の床だから岩石封じや原始の力は使えないし、あたしの水鉄砲は電気を通してしまう。 待てよ、この壁とかをポケモンに変えて考えると…金属は…鋼! サゴッピ:「きっぴー、周囲の壁に火炎放射や炎の渦よ!」 きっぴー:「えっ…」 サゴッピ:「いいから早く!」 きっぴー:「分かったよ、火炎放射!」 きっぴーは火炎放射を当たりかまわず、あたしたちには当たらないように放ってくれた。 エレブー:「何をする気だ?」 サゴッピ:「こういうことよ!硬くなって体当たりよ!」 炎によって金属の壁の強度は落ちている=柔らかくなっている。 だから岩の体で体当たりすれば鉄の壁でも破る事は可能よ。 考えどおり、壁を破ったあたしが行き着いたのは、偶然にも発電機の置いてある部屋だった。 サゴッピ:「あ、運がいい。エレブーさん、残念だけど、あなたの力パワーダウンにしてあげるわね。」 エレブー:「何!?やめろ!」 サゴッピ:「一斉攻撃よ!バブル光線!」 チリリ:「サイコウェーブ!」 きっぴー:「オーバーヒートだ!」 所かまわず攻撃したあたしたちによって、発電機はすぐに止まった。 同時に、突然地震が起きてこの建物全体が揺れ始めていた。 エレブー:「何!?」 きっぴー:「何だ?この地震は。」 サゴッピ:「揺れ方が半端じゃないわ!」 チリリ:「地震…?まさか!きっぴー、サゴッピ、つかまって!テレポート!」 チリリがいきなり叫んだ。 あたしはきっぴーをつなぎにしてチリリと間接的につかまる事ができた。 そして外に出たあたしたちが見たのは、発電所の崩壊だった。 ??:「やっぱり、大丈夫だったか。」 その時に背後から聞こえた声に、あたしたちは身構えかけたけど、その姿を見てすぐに攻撃姿勢をやめた。 サゴッピ:「ディグ、進化したのね。」 あたしたちの目の前に現れたのはディグダの進化系のダグドリオだった。 ディグ:「ああ、さっきのエレブーの奴にはやられたけどさ、何とか進化できたし、チリリがいるから出られるはずだと思ってさ。 おもいっきり地震を起こしたんだ。」 ディグは足止めのつもりでマグニチュードを放ったらしいが、ランダムに振動の威力が変わるため、震度4の地震ではエレブーに あまりダメージが与えられず、メガトンパンチを食らって倒されてしまったらしい。 だけど、ディグは元々いつ進化してもいいくらいの経験地を持っていただけに、この際進化してあたしたちを助けようと してくれたらしかった。 チリリ:「えっと…、エレブーは…あ、下敷きにはならなかったけど、瓦礫のせいで道が塞がれてるわ。」 エスパータイプのチリリは、エレブーの様子を能力で感知したようだった。 サゴッピ:「いいんじゃないの?どうせ、力が溜まったら出てくるわよ。」 ディグ:「そうだな。俺たちも移動しようぜ。早くみんなと合流しないといけないからな。」 チリリ:「そうだね。」 あたしたちは歩き出した。 でも、何故かきっぴーが崩壊した発電所を見続けていた。 サゴッピ:「きっぴー?」 きっぴー:「あのさ、発電所破壊しちゃったら、この島の電力ってどうなるんだ?」 3人:「・・・・・・・・・・・・・」 何も言葉が続かなかった。 よく考えたらあたしたち、スペース団の破壊活動を手伝っちゃったのかな? サゴッピ:「…まぁ、いいか。」 チリリ:「そうね、いいね。」 ディグ:「元々ここも襲撃にあった後だしな。」 きっぴー:「黙ってれば分からないか。」 結局あたしたちは、開き直った。 キルリア:「光の壁!」 フィル:「神秘の守り!」 あたしと美香ちゃんのキルリアはウィンディと対峙していた。 あたしたちが迷い込んだ場所は変わった洞窟だった。 それは、どこに入っても同じ場所にたどり着いたり、最後には同じ場所に来てしまったり、別の場所に入ったりしてしまう、 どういう造りになっているのかがよく分からない洞窟だった。 そして背後から、今度は真横から火炎放射が襲ってきて、影分身で避け続けたらウィンディに出会ったのだ。 ウィンディ:「避けるばかりじゃ勝ち目はないぞ。食らえ、影分身から火炎放射だ!」 キルリア:「サイコキネシス!」 フィル:「サイコウェーブ!」 火炎放射が周囲4つの穴から噴出してきた。 あたしとキルリアの力で相殺させたけど、ここにいては勝ち目がない。 だけど、どの穴に入れば火炎放射を少しでも防げるのだろうか…。 考えなきゃ。 キルリア:「フィル?」 フィル:「あたしが道を探すから、それまで耐えてて。」 キルリア:「分かったわ、神秘の守り、そして瞑想、さらに影分身に秘密の力よ!」 キルリアは周囲に神秘の守りを張り、さらに瞑想をかけ、あたしの周囲に影分身で分身を作り、分身が一斉に秘密の力を 放っていった。洞窟内では秘密の力が発動した場合、相手は混乱する。 ただ、ウィンディは攻撃を避けているから長く続くかは分からない。 でも、キルリアのためにもやらなきゃ。 フィル:「…瞑想。」 あたしは額の赤い宝石に意識を集中させ、周囲の物音を聴き取り、全ての感覚を感じるようにした。 風の音、周囲の細かい音、誰かの鳴き声、雫の滴り…羽音…? 近い、誰かがいる。 あたしたちとウィンディ以外にも、ここに飛ばされた子がいる…。 この音…スピアー、はり! いるのは…右の穴を通ってまっすぐ、そして左の穴! それに、ウィンディのいる場所につながっているのは左の穴と前の穴。 前後左右から来るのは、後ろと右の穴からいける部屋の穴が、ウィンディのいる部屋の穴とつながっているから…。 だったらあたしが攻撃するべきなのは…左の穴! そこに攻撃すれば、ウィンディの真横に当たる! フィル:「見えたわ!必殺、シャドースター!」 スピードスターを纏わせたシャドーボールを左の穴に放ち、すぐに自己暗示をかけた。 ウィンディは多分高速移動を行っているはずだから、自己暗示を使えば多少のチャンスがある。 フィル:「キルリア、乗って!」 あたしはキルリアが飛び乗ってすぐに動いた。 フィル:「電光石火!」 右、前、左! あたしがそこに跳ぶように走ると、そこにはテンテンとはりがいた。 テンテン:「フィル!」 はり:「おい、ここはどうなってんだ?」 フィル:「二人とも!話は後よ!一緒に来て!」 あたしが通り過ぎ、慌てて炎に追われるように追いかけてくる二人。 はり:「どうなってんだよ!ここは!」 テンテン:「フィル、道は分かってるの?」 フィル:「大丈夫!さっき瞑想したから。」 大体の道筋は分かった。 ただ、一部屋だけ、何かがいて、どうもそこの部分だけよく分からなくて、道が塞がってもいる。 だけど、奥に行かなきゃ行けない理由もあった。 フィル:「奥の奥にカケラがあったの!あのカケラと反射したかすかな光を感じた!」 キルリア:「カケラって…オーロラのカケラ?」 フィル:「そう!」 テンテン:「それじゃ、それを取りに…うわぁ!」 突然あたしたちは立ち止まる羽目になった。 目の前に突然神速で追いつき、前に回りこんだウィンディがいたのだ。 ウィンディ:「手の込んだ事をしてくれたな。」 キルリア:「あたしたちをどうするつもり?」 ウィンディ:「もちろん焼き尽くしてやるよ、そこにはよく燃えそうな虫けらが2匹増えてるからな。まぁ、そのまえに 遊んでやるよ。神速だ!」 フィル:「させない!電光石火!そしてサイケ光線!」 あたしは神速の前に出て、サイケ光線を放った。 さっき行った自己暗示で素早さの上がってるあたしだから、電光石火でテンテンとはりを襲おうとしたウィンディの行く手を遮って、 サイケ光線を放つ事ができた。 ウィンディ:「弱いな、オーバーヒートだ!」 フィル:「えっ…きゃあ〜!!」 あたしは一瞬で炎に包み込まれていた。 一瞬のことだった。 フィルが炎に包まれたのは。 キルリア:「フィル!…よくも、よくも!」 フィルは会ってすぐに友達になれた。 あたしよりもすごく色々と考えていて、色々と教えてくれて、強くて…。 フィルをよくも傷つけたわね! キルリア:「許せない!」 あたしが強く思った時、体が強く光りだしていた。 フィル:「朝、の…日差…し!」 ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…何とか助かったわ。 ウィンディのオーバーヒートは日本晴れでパワーが上がっていた。 すんでのところで光の壁を使ったけど、光の壁を打ち破る炎に堪える攻撃で何とか耐え抜く事ができた。 日本晴れのおかげで、朝の日差しによる回復も十二分にもできた。 でも、流石に疲れは消えないのね。 はり:「フィル!」 テンテン:「よかった…、フィル、キルリアが…」 フィル:「キルリア?」 あたしが前を見ると、そこにはキルリアじゃなく、サーナイトが立っていた。 サーナイト:「フィル、生きててよかった。あたし、進化しちゃった。」 フィル:「いいじゃん、進化しても。さて、ウィンディ、ここからが本番よ!」 ウィンディ:「ふざけたことを!俺の炎のもう一発食らえ!オーバーヒート!」 ウィンディは再びオーバーヒートを放っていた。 白いハーブはあたしたち二人と対峙した時に、あたしが使った鳴き声の効果によって消滅しているから、 あいつの攻撃は少し威力が下がっている。 でも、日本晴れによってパワーが増してることもあって、火炎放射よりも強力である事は変わらない。 フィル:「サイコキ…」 サーナイト:「待って、ここはあたしがやるわ。サイケ光線。」 サーナイトが片手を前に出し、放った光線は、オーバーヒートを軽く吹っ飛ばしていた。 ウィンディ:「何!?」 サーナイト:「進化して、力がついたみたい。あなたの攻撃に恐れる事はもうないわ。」 ウィンディ:「ふざけるな!ならば噛み付いてやる!」 ウィンディはあたしたちに向かってきた。 でも。 はり:「ミサイル針!」 テンテン:「スピードスター!」 それは二人の攻撃によって遮断され、あたしたちはちょうど総攻撃をかけるのに、ちょうどいい状態だった。 フィル:「行くよ、サーナイト。」 サーナイト:「ええ。」 フィル&サーナイト:「ダブルサイケ光線!」 あたしたちはウィンディに向かって攻撃を放った。 まっすぐに光線は飛んでいく。 が。 光線が避けられてしまった。 ウィンディ:「残念でした。」 ウィンディは嘲笑うようにあたしたちを見ているけれど、あたしとサーナイトは、その直後にあることを感じた。 それは、いい予感でもあり、嫌な予感でもあった。 ただ、嫌な予感って言うのは、ウィンディが受けることになるだろうけど。 変な地響きがあった後、 ??:「誰だ?いい気持ちで寝ていたのを邪魔したのは。」 と言う声と共に、 ??:「破壊光線!」 強力な攻撃がウィンディに至近距離で放たれ、さらにその攻撃はウィンディのいる左右からも飛び出してきた。 ウィンディは流石に破壊光線を3方向から受けたため、その場に倒れていた。 ??:「あ、倒しちゃった…あれっ?フィルにテンテンにはりじゃないか。サーナイトもいるな。どうしたんだ?」 あたしたちの最大のピンチを救ってくれた相手、それは、いつからここにいたのかは分からないけど、 ずっとあたしたちのいる前の部屋で眠っていたカビゴンのゴンだったのだ。寝起きの悪さがここであたしたちを救うとは…。 多分、あたしが瞑想で通路を見た時、見えなかった場所があったのはゴンがいたからだろう。 通路が塞がっていたのも、ゴンの巨体による仕業だったと言うわけだ。 ともかく、助かったかな。 フィル:「みんな、あたしについてきて。外に出るよ。」 あたしはみんなに声をかけた。 カケラはと言うと、出てきたゴンがしっかり持っていたのだった。 ゴン:「これ、体を掻くのにちょうどいい感じなんだよね。」 なぁ〜んてなことを言ってたけど。 ともかく、みんなと合流しないといけないわね。 ハガネール:「アイアンテールだ!」 ヘラクロ:「メガホーン!」 相変わらず飽きないんだねって言いたくなってきた。 さっきからずっとこれだ。 いつ終わるのか、全く見当がつかない。 コイッチ:「ただいま、…まだやってたのか?あいつら。」 ゴマ:「うん、ずっとだよ。」 ドンファンの僕とコイッチと、ワタワタとヘラクロが飛ばされたのは、さっき蓮華がいた場所からそう離れていないショッピング街だと 思われる場所だった。そして、僕たちが蓮華を探しに行こうと出かけようとしたら、目の前にはハガネールが立ちはだかった。 でも、何故か戦うつもりがないらしいんだ。 ゴマ:「どういうことなんだ?」 聞いてみたら、 ハガネール:「俺は一応お前らの処刑を頼まれたけど、俺はそろそろ寿命なのさ。スペース団ポケモンとして育てられて ここまで成長したのはいいが、そろそろこのバトルにも飽きたからな。お前たちと戦う気もない。 ただ、そこのヘラクロス、お前との力比べがしてみたくてな。相手をしてくれよ。」 と言ったのだ。 そしてヘラクロはというと、慎重な性格だってのに、妙に熱くなる癖があるらしく、その言葉に乗って、今まで一時間以上、 打撃攻撃同士の技の張り合いを続けているのだ。 僕はここに残って留守番をし、ワタワタとコイッチがみんなを探しに行ってるけど、戻ってきたのをみると見つからなかったようだな。 コイッチ:「あいつらは飽きないのかな?」 ゴマ:「さあね?」 ワタワタ:「あ、二人とも、ただいま!」 コイッチ:「どうだった?」 ワタワタ:「駄目、この辺にはいないよ。」 ゴマ:「そうか…、みんなどこにいるんだろうな?」 その時だった。 ヘラクロ:「うわあ〜!」 ヘラクロの声に現実に戻された僕たちは、ヘラクロがハガネールの龍の息吹で倒されるのを見た。 龍の息吹がヘラクロを麻痺させ、さらにその息吹によって地面に押さえ込んだのだ。 俺たちが駆け寄った時には、ヘラクロスは戦闘不能に陥っていた。 ゴマ:「おい、そんなのがあるのかよ!」 ハガネール:「ああ、お前らを処刑するのに邪魔なヘラクロスは倒せたからな。」 コイッチ:「騙したな。」 ハガネール:「騙される方が悪い!次はお前だ!」 ハガネールが襲い掛かってきた。 狙いはコイッチらしく、コイッチの体に巻きついて、コイッチを締め付け始めた。 コイッチ:「ぐはっ!この…火炎…ぐあっ!」 一瞬だった。 コイッチが火炎放射を吐くより前に、ハガネールの噛み砕く攻撃により、コイッチの体が崩れ落ちたのは。 ゴマ:「コイッチ!」 ワタワタ:「ひどい、ひどすぎるよ!」 ハガネール:「んあ?弱いから倒してやったまでさ。食らえ、アイアンテールを!」 僕達はハガネールの攻撃を避けるように逃げた。 僕もワタワタも地面タイプを兼ねているハガネールには、鋼タイプがあるとはいえ対抗手段がないわけじゃない。 でも、なかなかそのチャンスはない。 ハガネール:「さて、後ろは瓦礫の山だ。これで最後だな。」 そして追い詰められていた。 でも。 ゴマ:「うぅん、負けないぞ!水鉄砲だ!」 ワタワタ:「種マシンガン!」 僕達は攻撃で何とか迎え撃ってみたけど、ハガネールは涼しい顔をしながら尻尾でそれらを受け止めていた。 全く効果がない…。 水鉄砲も、僕が水タイプじゃないから威力が薄いらしい。 ハガネール:「残念だな、お前らもここで終わりだ。」 その時だった。 突然何かが僕達の前に飛び出し、ハガネールを一発の攻撃で殴り飛ばしたのだ。 ハガネール:「ぐわっ!…何者だ!」 ??:「弱いものいじめをする奴は許せないからな。」 それは一匹のプクリンだった。 プクリン:「食らえ!爆裂パンチだ!」 プクリンは爆裂パンチを今度はハガネールの体に叩き込んでいた。 流石のハガネールも、格闘タイプの技には弱いらしい。 ワタワタ:「ゴマ、あたしたちもやるよ。」 ゴマ:「えっ、でも攻撃は通用しないのに…」 ワタワタ:「通用しなくても、ダメージがないとは限らないわよ。必殺、ソーラービーム!」 ワタワタはプクリンがハガネールから避けた直後を狙い、ハガネールの体にソーラービームを打ち込んでいた。 ハガネールは爆裂パンチを受けた場所に攻撃を受けたらしく、よろけていた。 ゴマ:「今だね、僕もやるよ!水鉄砲だ!」 ワタワタ:「今度は葉っぱカッターよ!」 プクリン:「とどめのシャドーボール!」 そして3つの攻撃がハガネールの一点に集中し、ハガネールは倒れた。 ゴマ:「助かったよ、ありがとう。君は?」 ワタワタ:「同感、あたしからもありがとう。でも、この島にはもうトレーナーはいないはずなのに…」 プクリンは首にリボンをつけていたので、トレーナーのポケモンであることは分かったけど、ここにいるのが何故か、 よく分からなかった。 プクリン:「頼まれたんだ。こっちに着てよ。」 僕達は彼の案内で着いていくと、そこにはもう一匹、メスのプクリンがいて、さらに蓮華の親友と知らない女の子もいた。 美香:「あ、蓮華のドンファンにワタッコ!」 ??:「美香、こっちにヘラクロスとギャラドスがいるわ!」 美香:「分かったわ!」 何が起きているのかは分からないが、助かった事は事実だと思う。 蓮華の親友にも会えたんだ。 きっと蓮華にも会えるだろう。 そしてそれから3時間くらいが経過して、この場所に蓮華と、僕たち全員は集結する事ができた。 蓮華:「みんな、進化したんだね。」 キレイハナ:「うん、色んなところでスペース団のポケモンと戦って、ピンチにもなったけど、バトルをして、 進化したらしいよ。リュウも、ぎょぴも、ポーも、ディグもパルも、ポチも。 あたしたち、蓮華に会いたかったんだ。ずっと離れてて、でもいつか会えるって思ってたら会えたから。 もう、離れる事はないよね?」 蓮華:「あたりまえでしょ。」 あたしがクピーとなっくんを連れて希ちゃんと歩いていたら、遠くの方で巨大な雷と炎が立ち上るのが見えたのだ。 だからその場所に向かってみたら、みんなと再会できたのだった。 流石に、進化してる子が多いのを知った時は驚いたけど。 いつの間にか、海ちゃんと駆けつけたポケモン警察によって、5の島にいた団員とマユミ、エイジは捕まった。 マユミとエイジが意識を失っていたのは、多分海ちゃんの仕業だろう。 でも、海ちゃんの攻撃は常人が食らっても3日ほどで目を覚めるようなものだから。 それに、あいつらはしぶとそうだから、すぐに眼を開けるかもしれない。 キレイハナ:「それにしてもさ、厄介な事が浮かび上がったよね。」 蓮華:「ええ。」 あたしたちが集結してすぐに知った事が一つだけあった。 それは、一度あたしがコンテストでバトルをしたことのあるコーディネーターの渚ちゃんのことだった。 渚ちゃんは♂と♀のプクリンを持っているトレーナーなんだけど、双葉さんと大河のお店で何かをして、彼氏と 別れを告げたはずだったらしい。 なのに、何と、彼氏がスペース団にいて生きていたと言うのだ。 キレイハナ:「あの子の彼氏を助けなきゃいけないわよね。」 蓮華:「そうね、スペース団の壊滅と同時に。」 あたしたちにはやることがたくさんある。 でも、それを成し遂げて、この世界も、この島も平和にしなきゃいけない。 それは、この島の人たちのためでもあるし、あたしたちの使命でもある。 そんな気がする。  『オマケ』 氷雨:「蓮華ちゃんたちが5の島で渚ちゃんに会ったそうよ。」 菜々美:「そうですか、美香も渚ちゃんと友達だから、話は蓮華たちにも十分伝わるはずです。あたしたちも急ぎましょう。」 氷雨:「そうね。健人君、運転代わろうか?」 あたしと菜々美ちゃんと健人君は、1の島のボートで5の島に向かっていた。 双葉と大河も乗ってるけど、二人はこの島に来るのに妖力を使い、今は休んでる最中だった。 健人:「いや、あんたに代わって事故りたくないからね。」 氷雨:「でも、健人君も疲れてるでしょ?代わろ…」 健人:「触るな!」 氷雨:「…ごめんなさい。」 健人:「別に。あんたには触られたくないんだ。」 菜々美:「健人、そんな言い方は…」 健人:「菜々美も菜々美だ。そいつに騙されてた事を忘れるなよ。」 健人君はまだあたしに怒っている。 そして、菜々美ちゃんとの間も、ひび割れが生じだしていた。 3人は互いに傷ついていたが、どうしようにも方法がなく、仲たがいやすれ違いが続いていた。 そして。 彼らのそんな様子を見ているものがいたことに、全く気づくこともなく、時間だけが流れていった。 「あいつら…使えるぞ。」