蓮華:「この吹雪…、氷雨さん!」 7の島を吹雪が包み込み、あたしはすぐに察した。 氷雨さんが…消滅した…。 レイク:「どうかしたの?あたしとの勝負の途中よ。エネコロロ、キリンリキ、行きなさい!」 蓮華:「…そうね。クピー、ネギ、迎え撃つわよ!」 あたしはバトルをしながら思った。 氷雨さんにはかなりお世話になったから。 でも、もう氷雨さんはいない。 あたしも自分の力で頑張らなきゃ!氷雨さんが見ていても、恥じないくらいの頑張りをみせてやる! でも、寂しくなるな…。 氷雨さん…さようなら。 ナナシマ編 16.悲しみを乗り越えて!混乱波乱のバトル 菜々美:「本部まで案内しなさい!」 一瞬耳がキ〜ンとなった。 俺より菜々美の怒りの方が相当上だろう。 俺が地球一個分の怒りだとしたら、菜々美はその一回り上だな。 こんな近くでここまで逆上した菜々美を見ているせいか、ぶっちり切れていたはずの俺は一瞬で冷めてしまっていた。 そして、俺と菜々美の怒りの矛先になっているのは、つい先ほど崖から落とされて氷から逃れられたばかりのガントスだった。 ガントス:「やめろ!殺さないでくれ!」 菜々美:「それじゃ、本部まで連れて行ってくれない?」 健人:「状況に寄れば、お前の耳は機能しなくなるぞ。」 ガントス:「分かった!言うとおりに…するとでも思ったか!」 俺と菜々美が追い詰めたが、結果的にはガントスは逆切れをして襲ってきた。 奴はまだハガネールやノズパス、レアコイルを持っていたらしく、そいつらも一緒に襲ってきた。 だが。 再び奴らは凍り付いていた。 ??:「馬鹿ね、あなたはもう既に負けているのに…。どこまでもあなたは馬鹿よ。」 そして俺たちの目の前には、どこか見覚えのある女性が姿を現していた。 菜々美:「氷雨さん…じゃない。あなたは?」 氷雨さんには姿は似ている。 白い浴衣に、ピンク色の帯、すらっとした手足が垣間見え、吹雪を伴っている。 でも、氷雨さんよりも幼く感じた。 そんな彼女の次の言葉に、俺たちは二の句が告げられなくなっていた。 ??:「あたしのこと、もう忘れちゃったの?あたしは、雪と氷の能力者、雪美よ、…前まではね。」 健人:「えっ…?」 雪美:「あたしは…妖怪だったの。妖怪って言うか、妖怪に転生する可能性を秘めて生まれた人間だった。」 菜々美:「どういうこと?」 雪美:「氷雨さんが亡くなって、彼女の力は雪と氷の能力者であるあたしが受け継いだの。それと同時に、あたしは妖怪に転生したわ。 元々、あたしも蓮華ちゃんたちと同じで、両親を過去に失っていたし、今も一人暮らしだったし、それに、あたしが妖怪に転生した事で、 能力者以外の記憶からは、あたしの人間としての姿の記憶は消えたのよ。これからは一人の雪女として、あたしは生きていくの。」 健人:「そうか…。」 雪美は前々から能力が氷雨さんの互角にあるってことで不思議に思われたりしていたが…、初めからこうなるかもしれない予測を持って 生まれていたんだな。 健人:「それで、お前はこれからどうするんだ?」 雪美:「あたし?あたしは…そこの馬鹿を締め上げてから、現実世界に戻るわ。やらなきゃいけないことがあるから。」 菜々美:「やらなきゃいけないこと?」 雪美:「ええ、氷雨さんの消滅は既に現実世界の妖怪たちが気づいているはずよ。妖怪たちの中で、再びNO.1争いが始まる。 あたしはそれを阻止するために戻るの。みんなを巻き込む可能性も捨てきれないし、あたしが新たにNO.1になれば、天下を取れば、 もう大丈夫だから。」 雪美はそう言うと、氷漬けのガントスと、氷雨さんの残した3つのモンスターボールと共に、吹雪に包まれて姿を消した。 菜々美:「健人、あたしたちも行くよ。」 健人:「そうだな、ここの戦いに終止符を打つんだ。氷雨さんのためにも。」 菜々美:「うん!」 俺たちは、ガントスが言いかけた本部の方向を目指して動き始めていた。 悲しんでばかりはいられない。 あたしはそう感じた。 既に7の島に監禁されていた人たちは助け終え、既にセレビィのテレポートで 6の島に移しておいた。 そして今は、あたしがやっているのは他の施設の団員たちを倒す事だった。 あたしがやるべきことは、蓮華ちゃんや先輩たちのところに邪魔な団員が行かないためにも、あたしはここで団員をできる限りしなきゃ! みんなにこれ以上の手間をかけちゃいけない! 団員A:「ラッタ、怒りの前歯だ!」 団員B:「ドガース、ヘドロ攻撃!」 団員C:「ヘルガー、火炎放射だ!」 律子:「セレビィ、神秘の守りよ!」 あたしは3匹の仲間と一緒に団員をひきつけていた。 律子:「セレビィ、サイコキネシスよ!ロゼリアは花びらの舞い!ハピナスは卵爆弾!」 団員たちの攻撃が神秘の守りによって阻まれ、サイコキネシスによって操作された花びらの舞と卵爆弾が、団員たちを跳ね除けていった。 でも、かなりたくさんいるから厄介だった。 だけど、だからといって倒れるわけには行かない! 律子:「セレビィ、ロゼリア、宿り木の種を地面にまいて!」 セレビィとロゼリアが、地面に、特に団員たちのそばの地面に向かって、宿り木の種を撒き散らした。 律子:「ハピナス、日本晴れよ!」 そして周囲を強い日差しが照らし始めた。 団員A:「何をするつもりだ?」 団員C:「これで俺たちの炎系ポケモンが有利になったぞ!」 団員D:「一斉に火炎放射だ!」 スペース団員達は攻撃を始めようとしていたけど、あたしには考えがあった。 律子:「我が力よ、植物に安らぎを…そして広大なる生命の神秘を与えよ!ライトプランター!」 セレビィが神秘の守りで、ハピナスが光の壁で、ロゼリアが種マシンガンで攻撃を防ぎ、相殺している隙に、あたしは最近身につけた能力を 両手に集中し、光に変えて辺りに照らした。 すると、地面に植えられた種が、日本晴れによって発芽し、あたしの照らした光で巨大な蔓に姿を変えていた。 団員B:「何だ!?この蔓は…!?」 団員C:「動きが取れない…、これではあの少女を捕獲する事も…!!」 あたしの照らした光によって、あたしと戦っていた団員たちは全員、巨大蔓植物によって動きを封じられ、気を失っていった。 律子:「ふぅ、これでいいわね。みんな、戻って!」 みんなをボールに戻すと、あたしは地図で見たはずの遺跡に向かって歩き出していた。 何故か、遺跡に引き寄せられる気がしたのだ。 神秘の力が遺跡に何かを感じて、あたしを引き合わせようとしている、そんな気がした。 氷雨さんの気が消えた…。 人生を全うしたのかな? ボムの攻撃で倒れたはずのポケモンたちが、ボールの中で突然蘇っていた。 氷雨さんの力が、ポケモンたちを元気付けてくれたみたい。 ボム:「どうしたのかしら?マルマイン、マタドガス、行きなさい!」 ナナ:「バタフリー、きりもみ先回で回避してサイケ光線で相殺!モルフォン、サイコキネシスで拡散させるのよ!」 マルマインの電撃波をバタフリーが、マタドガスのヘドロ攻撃をモルフォンが相殺し、自爆及び大爆発の影響を受けない場所に 避難するように下がっていく。ボールの中から爆発の様子を見ているだけに、あたしのポケモンたちもしっかり警戒してくれて いるのだった。 ボム:「ならばさらにイワーク、パルシェン、カビゴン、そしてゲンガーも行きなさい!」 あたしとポケモンとの目の前には、6匹の、いつ爆発してもおかしくない技を持ったポケモンが現われた。 ボム:「これだけの相手をできるのかしら?スペース団の中にもポケモンを6匹使いこなそうとした馬鹿な女がいたけど、 彼女にはできなかったみたいよ。でも、あたしならできるの。あなたはできるかもしれないけど、この状況でそれをこなせるのかしら?」 ボムの言葉と共に、ポケモンたちは襲い掛かってきた。 電撃波や冷凍ビームが飛び、ヘドロ攻撃やナイトヘッドが足元を、頭をかすめ、カビゴンの気合パンチが、イワークの叩きつける攻撃が、 あたしに向かってくる。バタフリーとモルフォンもかわすのが精一杯だった。少しでも気を抜けば攻撃を食らって撃ち落されてしまうだろう。 ボム:「オホホ、これであなたもおしまいね!逃げ続けられないように、もう少し増やしてあげるわ!ゴローニャ、オニゴーリ、さらに、 メタグロスとマルノームよ、行きなさい!」 ポケモンが10匹になった。 コメットパンチやヘドロ爆弾、岩なだれや凍える風も含まれ、ついにバタフリーとモルフォンが撃ち落されてしまった。 ボム:「流石のポケモンマスターも、ここまで来たら何もできないのね。逃げ続けるしかできないただの少女。」 ボムは高笑いを繰り返し、ついにあたしはポケモンたちに囲まれてしまっていた。 でも…。 あたしが何もしていないなんて、そんなこと、普通ありえないわよ。 あたしだって、力を秘めた能力者だから。 記憶を書き換えるくらい…。 ボム:「一斉攻撃よ!」 ポケモンたちの一斉攻撃があたしに向かって放たれていた。 ナナ:「必殺、防御結界!」 あたしは防御の能力でポケモンたちの攻撃を全て受け止めていた。 さすがに全てを受け止めるのはきついけど、すでに、仕掛けは施してる。 ボム:「その防御がいつまで持つのかしら?」 なんてボムは言ってるけど、今からあたしの反撃を開始するわよ! ナナ:「ボム、いい気になってられるのは今のうちだから。あたしの能力の一つは、記憶の書き換えよ。 あたしが逃げている間にしていたこと、それはあなたにも見られていたけど、あたしはあなたの脳裏からその部分を削除していたのよ。 だから、あなたはもう罠にはまったわ。」 ボム:「何!?どういう意味だ!」 ナナ:「こういうことよ、一斉開閉作動!」 森の至る所から、モンスターボールの開かれる音がし、同時にボムのポケモンたちに、あたしのポケモンが攻撃を始めていた。 ナナ:「カイロス、カビゴンに地獄車!ヘラクロスはオニゴーリに瓦割よ!テッカニンはシャドーボールをゲンガーに、 ヌケニンはソーラービームをパルシェンに、バルビーはマタドガスに10万ボルト、イルミーはゴローニャに水の波動、 アゲハントとドクケイルは銀色の風をメタグロスに、アメモースとアメタマはイワークにバブル光線、アーマルドはマルマインに メタルクロー、ハッサムはメタルクロー、アリアドスはナイトヘッドでマルノームを攻撃するのよ!」 あたしの虫ポケモン軍団の行動は早かった。 元々、ボムの出した爆弾ポケモンのほとんどは動きの遅い、素早さの低いものばかり。 それに引き換え、あたしのポケモンたちは素早さの高いものが多く、低いものにも先制の爪を持たせたりしていたことで、 ボムが指示を出す前に攻撃をする事ができた。 弱点を突いた攻撃や、相手の攻撃に負けない属性のメンバーを出したりした事もあり、ボムのポケモンたちは自爆、大爆発をすることなく 次々に倒れ、残ったのはメタグロスとマタドガスのみとなった。 エスパータイプに弱点の銀色の風を放ったものの、メタグロスは鋼属性でもあり、倒れるほどのダメージには至らなかったらしい。 同時にマタドガスはバルビーが泥棒し損ねた事で、オボンの実で回復を遂げていた。 ボム:「まさか森の至るところにボールを隠し、お前の防御の能力でイワークたちが上を通っても壊れないようにしていたとはな。 しかし、私のポケモンはまだ全て倒れていないぞ!メタグロス、サイコキネシスだ!マタドガスはスモッグで行け!」 ボムはなかなかしぶとかった。 ナナ:「しぶとい女は嫌われるのよ!それにあたしもポケモンは残しているわ!フォレトス、行きなさい!」 ボールから飛び出たフォレトスは高速スピンの竜巻によってスモッグを吹き飛ばし、サイコキネシスの攻撃も受け止めていた。 ボム:「くっ、ならば!」 ナナ:「遅いわよ、虫ポケマジック!バルビー、イルミー、行くよ!」 あたしのパートナーのバルビーとイルミーが飛び出した。 あたしの指示に従い、電磁波や10万ボルト、水の波動やシグナルビームを放ってけん制し、影分身や甘い香りで相手を惑わしていく。 ボムも負けじと攻撃を繰り返していたが、あたしの足元にも及ばず、逆に…。 ボム:「何!?」 ボムの攻撃は全く当たらず、逆にメタグロスの攻撃はマタドガスに炸裂する事になった。 そのため、最後に残ったのはマタドガスのみだった。 ボム:「こうなったら最後の手段!マタドガス、大爆発よ!」 マタドガスはついに光りだした。 ナナ:「みんな、戻って!そして、行くのよ…」 辺りを大爆発が包み込んだ。 周囲の木々が大きくなぎ倒されていき、直径10メートルほどのクレーターが後にできていた。 ボムはバリヤードのバリアで助かっていたのだが、バリヤードは大爆発の威力で倒れこんでいた。 マタドガスはボムのパートナーであり、タウリンを多く使ったドーピングで攻撃力がかなり高かったため、このようなことになったのだった。 ボム:「ふっ、流石のポケモンマスターも吹き飛んだか。」 ボムはそう思っていた。 が。 ナナ:「あたしを見くびったら困るわ!」 ナナは立っていた。 彼女の前にはソーナンスの姿があった。 しかも、気合の鉢巻をつけて、その場に残っていたのだ。 ボム:「何だと!?」 ナナ:「うふふ、あたしのほうを見くびってたのね。残念でした。ソーナンス、カウンターよ!」 あたしのソーナンスは実は道連れも行っていたのだ。 彼女のバリヤードが倒れたのもこういう理由。 既に虫ポケモンたちと一緒に出ていたソーナンスは、カイロスたちの陰に隠れるように待機し、爆発が起こる時期を待っていた。 同時に、ボムの近くで攻撃をしてこないバリヤードに、道連れの技がかかるようにもしていたわけだった。 そして爆発が起きる時に飛び出たのだ。 あたしは絶対防御の力で耐えていたので爆発から逃れられたのだ。 気合の鉢巻が合っても、ソーナンスは倒れてしまい、そしてバリヤードが倒れたわけだけど、あたしはすぐにソーナンスが 復活できるアイテムを持っていたので、今こうしてソーナンスはカウンターを放っていた。 ナナ:「さようなら、爆弾使い。」 あたしはカウンターをまともに受けて吹っ飛んでいくボムの姿を眺めていた。 ナナ:「それにしても、聖なる灰は役に立つわね。」 へその岩に行ったとき、ホウオウから貰っておいて、正解だったわ。 ルギアの加勢によって海岸沿いのスペース団員たちを倒したあたしは、ルギアと別れて森の中を進んでいた。 さっき一瞬吹雪を感じて、敵の来襲かと思ったけど、あれは癒しと暖かな光を帯びていて、能力者と覚醒してまだ1年も満たしていない あたしでも、これが何であるかは分かった。 綾香:「氷雨さんがやられちゃったなんて…。」 あたしが偶然目覚めたのは、部活の途中だった。 リボン演技の途中で、リボンをまわしていたら火の粉が飛び出続けていて、あたしは体が動くまま止まらず、氷雨さんが来てくれなかったら、 あたしも、他のみんなも火事で焼け死んでいたところだった。 そして氷雨さんは、能力者としてのことを教えてくれて、同時に先輩である清香先輩を、能力者の先輩として紹介してくれた。 それからずっと特訓して、あたしは今に至るけど、氷雨さんに教わった事は忘れていない。 あたしは、氷雨さんのことは絶対に忘れないし、同時に、あたしはここで悲しんでばかりはいられない! 氷雨さんができなかった分は、あたしが頑張ってやるんだ! 綾香:「さっきからつけてきているのは誰?」 あたしは火の粉を放った。 すると、木陰からは先ほど海岸にいて、団員たちに指示を出していた男が現われた。 ??:「見つかったか、俺はスペント。そこの女よ、お前の逃げ場はないぞ!」 綾香:「誰が逃げるもんですか!あたしはあんたなんかには捕まらないわ!」 あたしが身構えていたら、スペントはボールを出し、バグーダを繰り出してきた。 スペント:「それはどうかな?バグーダ、噴火だ!」 動くよりも早く、バグーダが走ってきて噴火攻撃を始めていた。 あたしは咄嗟に避けたけど、噴火攻撃によって撒き散らされた燃え盛る岩石が木々を燃やし、あたしは倒れて燃え盛る木々に周囲を囲まれて しまっていた。 スペント:「これでもう逃げる事はできないぞ。」 綾香:「くっ…」 炎属性をもつあたしは、炎によって焼け死ぬ事はないし、炎攻撃でダメージを受けることはないけど、バグーダは炎以外に地面属性を持っている。 だから、岩や地面系の攻撃も得意。 だとしたら、この状態ではあたしは攻撃を受けてしまうし…。 綾香:「あれっ?これは…」 そんな時にあるものを見つけた。 スペント:「これで終わりだ!バグーダ、岩なだれだ!そして火炎放射だ!」 無数の岩があたしに向かって降り注いできた。 同時に火炎放射が岩を纏い、威力を増してもいた。 綾香:「きゃあ!」 岩は綾香のいた場所を埋め尽くしていた。 スペント:「これであの女も終わったな。バグーダ、とどめの地割れだ。」 バグーダの地割れが倒れた木々や、無数の岩石を破壊し、割れた地面の中へ藻屑のように消えていき、地面が閉じた。 スペント:「簡単だったな。あの女、弱いにも程がある!」 綾香:「弱いって誰が?」 スペント:「それは…何っ!」 綾香:「あたしは生きてるわよ!」 スペントが驚いていた。 当然だと思う。 彼はあたしが地面の藻屑と化したんだと思っているようだから。 でも、あたしは生きてるのよ。 綾香:「この子のおかげよ!出てきて、ニドクイン!」 ニドクインの穴を掘る攻撃によって、あたしはそこから少し離れた場所に移動できたのだ。 スペント:「何!?情報に寄ればお前はニドリーナだったはずだが…」 情報…?それって一体どういうことだろう…。 あたしたちの情報が漏れているってことなの? あたしがゲットしたものが、しかも昨日進化したばかりの事が知られているなんて…。 綾香:「あなたには聞かなきゃいけない事ができちゃったみたいね。その前に教えてあげるわ!あたしはあなたが倒した木々の中から 月の石を見つけたの。だからニドクインに進化させる事ができ、あたし一人分も穴に隠れられるくらいの穴を掘らせる事ができたのよ。 このままあなたを倒す!」 あたしは持っている他のポケモンも出した。 綾香:「みんな!一斉攻撃よ!」 スペント:「させるか!バグーダ、もう一度噴火だ!」 両者の攻撃が同時に放たれた。 マグカルゴの火炎放射が、ミロカロスのハイドロポンプが、ニドクインの破壊光線が、ペリッパーの超音波が、そしてドクケイルのサイケ光線が 噴火攻撃を一気に相殺し、そのままバグーダを吹っ飛ばすのだった。 そして、マグマの鎧を特性に持つバグーダの巨体は、そのままスペントの上に落下した。 スペント:「ぐぎゃ〜!?」 強烈な悲鳴が辺りをこだましていた。 あたしは多分、この状態になっても火傷をしたりしないだろうから分からないけど、地獄の痛みなんだろうな。 数分後。 綾香:「話してくれない?情報ってどういうこと?」 あたしは蛍火の癒しの光で彼の痛みを少しずつヒーリングしながら尋ねていた。 交換条件だった。 だって頭の固いオジサンだったし、あたしの太ももを触って拝見したい、何て言うんだもん。 怪我を治す事を交換条件にするので精一杯だった。 スペント:「昨日になって知った事だが、お前たちの仲間の中に、既に我らスペース団に情報を流しているものがいるのだ。 その情報によって、我らは能力者たちとそのポケモンたちへの対処法を考え、配置についているのだ。」 綾香:「それでかなり苦戦したわけね。みんなとの連絡が取れないのも、苦戦しているから…。」 スペント:「そういうことだ。」 綾香:「で、誰なの?情報を流している奴って言うのは。」 あたしが聞きだそうとした時だった。 突然頭を強く殴られ、あたしは倒れこんでいた。 その時に力が暴発し、スペントは炎に包まれて、叫びながら逃げていった。 ??:「余計な真似事を…」 綾香:「あ、あなたは…、あなたが裏切っていたのね…」 ??:「ふん、元々俺は、スペース団に忠誠を誓っていたのだ…」 信じられなかった。 まさか彼が、ヤツデが敵だったなんて…。 操られているのかもしれないけど…、でも、あたしは悲しかった。 あたしは、ヤツデのことに気づかなかったから…。 そして、そのままあたしは気を失ってしまった。 その頃。 氷雨さんが消滅した事で、唯一特大のダメージを受けたものがいた。 他の能力者たちは氷雨さんの分も頑張ろうとしていたが、彼だけは、悲しみの淵に佇んでいた。 俺は翻弄されていた。 信じたくないけど、氷雨さんが消滅した事も、俺にはすごく悲しい事で、それもあって、悲しい事を乗り越えてバトルしようとしても ヒータスの言動に振り回され、俺はまともな指示がカメールに出せずにいた。 ヒータス:「ドルク、君の動きには隙があるね。ラブリー、火炎放射だ!」 マグマッグの火炎放射をカメールがまともに受けてしまった。 涼治:「カメール、水鉄砲だ!」 だが、日本晴れの状況で水鉄砲は威力が少なく、同時に俺の放てる涼風も効果が薄く、ヒータスからの攻撃にカメールが 倒されてしまった。 涼治:「そんな…カメールがやられるなんて…」 ヒータス:「ドルク、悲しい事があったのかな?君の表情が悲しくなってるよ。」 涼治:「俺はドルクじゃない!それに、お前には関係ない!」 ヒータス:「そうかな?」 俺は次のポケモンを出そうとしていたが、マグマッグの攻撃によって倒れこみ、リザードンの怖い顔を見て、足がすくんでしまっていた。 体が恐怖に包まれている。 立たなきゃいけない、立ってバトルをして、ヒータスを倒さなきゃいけない…。 なのに、なのに俺は…ヒータスに対して恐怖を抱いているのか…? 怖くて、立ち上がる事ができずにいた。 そこに、突然鳴り出したポケギアに出ていたヒータスが戻ってきていた。 ヒータス:「どうやら、雪女が消滅したそうだね。僕達の仲間であり、君たちの仲間だったスパイ君が教えてくれたよ。」 涼治:「スパイだって!?そんな奴、俺たちの仲間には…」 ヒータス:「現にいたのさ、ドルク。君たちの仲間の一人は、既に心も体もドリーム様のものになっている。 それにしても残念だな、あの雪女はこの僕が頂こうと思っていたのに。彼女の冷たい心を、僕の炎のように燃える心が包み込もうと、 そう考えていたと言うのに、まことに残念だ。」 涼治:「お前…。それに俺はドルクじゃ…」 ヒータス:「お前はドルクだ。俺より弱く、俺を慕い続けていたドルクだ。エアなんかに心変わりをしたが、お前は俺のものだ。」 ヒータスは俺のあごを掴み、じっと俺の事を見てきた。 涼治:「な、何だよ…」 ヒータス:「俺と君はこういう関係だったのさ。エアが邪魔をしなければ、俺たちは永遠に結ばれていた。俺が君に対して 容赦のない攻撃をしているのは、君が俺のものであることを君に分からせるためなのだ。」 ヒータスの顔が近くまで迫ってきていた。 やめろ…、やめてくれ…! その時だった。 ??:「やめろ、変態。」 突然現われた仮面の少年が、ヒータスを蹴飛ばしていた。 助かった…。 ヒータス:「何だ、スパイ君。俺の邪魔をしないでくれよ。もう少しだったのに…。」 スパイ:「別に。見ていて面白いものではなかっただけだ。」 涼治:「おい、スパイってどういうことだよ!」 スパイ:「別にいいだろ?俺はお前らを騙してやっただけだ。」 その声…、どこかで聞いたことあるな。 同級生にはいないから…年下の野郎は…。 涼治:「ヤツデか。」 スパイ:「ああ。だが、お前も仲間なのだろう?ドルク。」 涼治:「誰がドルクだ。」 スパイ:「まぁ、いい。ドルク、雪女は邪魔だったからいなくなってよかっただろう?お前もいなくなってよかったと、 心のどこかで思っているはずだ。」 涼治:「俺はそんなことない!」 そんなことはない!氷雨さんは俺にとって、命の恩人であり、大切な人なんだ。 スパイ:「そうか?お前の過去を知っているから、お前にとっては疎くてたまらない存在だったはずだ。」 ヒータス:「それに、君は僕のものだ。もうここにい続けてもいいよ。」 ヒータスと再び眼があった。 その時、急に頭痛がして、俺は意識を失っていた。 スパイ:「おい、催眠術をかけたのか?」 ヒータス:「まあね、彼はせっかく僕が行動に移そうとしても、ドルクと名乗っていた頃と違って怯えた表情しかしないからさ、 あの時のような凛々しい、クールな表情を出してもらうためにも、こいつは連れて行こうと思ってるのさ。」 スパイ:「程ほどにしておけよ、あの草使いの蓮華が聞いたら八つ裂きだからな。…俺は再び行動に移る。 既に俺を信用している奴は二人とも遺跡に閉じ込めた。」 ヒータス:「そうか、まぁ、気をつけろよ。」 こうして涼治はヒータスに捕らえられた。 その頃。 その問題の遺跡では…。 綾香:「ん…、あれっ?ここは…?」 目が覚め、気がついた時、あたしは手足を縛られた状態で、どこかの部屋に閉じ込められていた。 ??:「気がついたか?」 綾香:「その声は…、海斗先輩!」 海斗:「ああ、ヤツデが操られていたとはな。」 綾香:「ええ。あたしもスペントを倒した直後に、情報漏れを知ったんですが、ヤツデに殴られて…」 海斗:「俺は幹部の一人、ミアトスと戦っていた時だった。バトルが有利になったかと思えば、突然ヤツデのポケモンが俺のポケモンを攻撃し、 俺はヤツデの泡によって動きを封じられてしまった。 そして目の前でポケモンたちの倒される状況を見せ付けられ、俺も泡が割れると同時に意識を失わせられた。」 綾香:「あたし…ヤツデの事に気づいてあげられなかったんです。」 海斗:「気を落とすな。あいつだって心の中では戦ってるはずだ。まずは、この場所を確認し、ここから脱出する事が大事だ。」 あたしは海斗先輩に励まされ、何とかロープを解く事に成功した。 ロープを炎で焼いた訳だけど…。 ただ、一つだけ分かったのは…。 綾香:「あれっ?」 海斗:「どうした?」 綾香:「ポケモン、一匹も取られてないです。」 海斗:「何!…俺もだ。今まで気づかなかったが、既に回復措置も取られている…。」 綾香:「これって…。」 海斗:「ヤツデの洗脳が解け始めたのかもな。」 二人はそう思っていたが、すぐにポケモンたちが全て戦闘不能になっていることに気づくのだった。 海斗:「やられた…。回復するための道具も全て抜き取られている。」 綾香:「これじゃ、ここから脱出する事もできないですね。」 そんな時、壁が急に丸い赤い明かりを出現させていた。 何だろう? そう思っていたけど、海斗先輩が警戒したので、あたしたちは少しその場から下がっていた。 すると。 突然の爆発が起き、あたしと海斗先輩のいる部屋の壁が崩れ落ちていた。 そして。 律子:「あれっ?どうしてこんなところにいるんですか?」 律子が割れ目から顔をのぞかせていたのだ。 綾香:「律子、あなたこそどうしてここに?」 律子:「あたし、この子に呼ばれたの。」 律子は、アルファベットのAの形をしたアンノーンと一緒にいた。 律子:「あたしの4番目のポケモンよ。神秘の力が働いて、この遺跡に呼ばれたら、この子がいて、誰かが遺跡に閉じ込められている事を 教えてくれたの。それから、一つ分かった事があります。」 突然、笑っていた律子の表情が厳しくなった。 海斗:「どうしたんだ?」 律子:「オーロラのカケラ。それを破壊する方法が見つかりました。」 綾香:「本当?」 律子:「うん。一度全てを結集させて、元に戻したところを、太古の昔、世界を破滅に導きかねない、海と陸の戦いを沈めた3つの力による攻撃を オーロラの珠に当てれば、オーロラのカケラは破壊する事ができます。そして、それらのカケラを全て集めていても、復元する事は その後10年は不可能になります。」 海斗:「それじゃ、今度はカケラのほとんどを現実世界に封印してしまえばいいって事か?」 律子:「そういうことです。あたしは、アンノーンの力を借りて、もう少し調べてみます。この子が言うには、ここからさほど 離れていない場所に、スペース団基地の一つがあるそうです。そこには誕生の島に行くための潜水艦が置かれているそうなので、その潜水艦の破壊を お願いします。」 綾香:「分かったわ。」 海斗:「今すぐ行ってこよう、お前も気をつけろよ。」 律子:「はい!」 あたしと海斗先輩は、律子のポケモンたちの力を借りてポケモンたちを元気にさせてから出発した。 律子:「さてと、みんな!手伝ってね!」 律子は、自分のアンノーンと遺跡に入り、無数のアンノーンたちと再び、調査を始めていた。 そこに団員たちが襲ってくることもあったが、壁の陰に隠れていたロゼリアの眠り粉が、そしてたくさんのアンノーンたちの目覚めるパワーが、 彼らを倒し続けているのだった。 律子:「ハピナス、あなたは眠る攻撃で休んでいて。卵海の連続使用は体力を浪費させるわよ。」 蓮華:「ドラちゃん、行くのよ!」 あたしはレイクとのバトルを続けていた。 既にクピーとネギが倒されているけど、レイクの方もエネコロロとキリンリキ、グランブルが倒れていた。 レイクは後1体しかいない。 レイク:「岩・鋼タイプ…だったらもう、あたしは今の状況では負けを認めるわ。」 蓮華:「どういうこと?」 レイク:「あたしの研究、それはポケモンの毒によって傷を受けた人を治すための解毒剤を作る事だった。 でも、その開発を行うには費用が必要だったの。だけど、その特効薬は既に開発が終わっているから、あたしの研究に 費用を出してくれる人はいなかった。」 蓮華:「既にできているなら、いらないんじゃないの?」 レイク:「いいえ、最近はマルノームやニドキングの中に、今までにない毒物を体に秘めた種類が確認されたのよ。 その毒にも有効なものを作るのが研究員の役目。でも、もうそれは無理なのね。」 レイクの出したポケモンはスピアーだった。 確かに、岩・鋼タイプのドラちゃんには、虫・毒タイプでは勝ち目がないだろう。 蓮華:「これからどうするの?」 レイク:「そうね、ここまで粘ったけど、再びあなたに負けちゃったし、一からやり直す旅に出るわ。 そして、経験を重ねて再び研究員として動き出すつもりよ。」 蓮華:「そう、頑張ってね。」 レイク:「ありがとう。」 性格につかみ所がないけど、さっぱりしている彼女とのバトルはこうして幕が閉じられた。 レイクは、テレポートのためだけに持っているケーシィで姿を消した。 ただ、とんでもない手紙が残っていた。 『草使いさんに、一つだけ教えておくわ。あたしたちスペース団の中にヒータスという団員がいるんだけど、そいつ、ホモよ。 ものすごいから気をつけて。特に、あなたの彼氏を狙ってるそうよ。 後、実はあなたたちの仲間の泡使いは、既にドリーム様の洗脳にかかっているから。 スペース団の今後にはあたしは関わる気がないから教えているの。頑張りなさいね。  byレイク』 とんでもない事を教えてくれた。 …のはいいけど、涼治とヤツデ君…どうしよう…? いきなりこんな事を言われ、あたしはただただ固まるしかなかった。 『オマケ』 ??:「おっ、呆然としてる奴を発見したぞ。」 ??:「ここであたしたちの腕の見せ所ね!」 手紙を見て呆然としているところに何も言ってないのに、いつもの曲が流れ出していた。 そして… ヤマト:「なんだかんだと聞かれたら...」 コサブロウ:「答えてあげないの普通だが...」 二人:「まあ特別に答えてやろう!」 キレイハナ:「ん?何か来た…」 ヤマト:「地球の破壊を防ぐため...」 コサブロウ:「地球の平和を守るため...」 ソルル:「ソルソル(邪魔なやつらだな)」 ヤマト:「愛と誠実の悪を貫く...」 コサブロウ:「キュートでお茶目な敵役...」 パル:「パルルルル、パル(誰が張り倒す?あたしは嫌よ、あんなのと関わるのは)」 ヤマト:「ヤマト!」 コサブロウ:「コサブロウ!」 キレイハナ:「あたしがやるよ、充電開始。」 ヤマト:「宇宙を駆けるスペース団の二人には...」 コサブロウ:「ショッキングピンク、桃色の明日が待ってるぜ!」 ヤマト「なーんてな!」 キレイハナ:「発射!」 ヤマト:「なっ!ちょっとぉ!」 コサンジ:「俺たちまだ何も・・・」 キレイハナ:「問答無用、バイバイ、オバサンとコサンジ!」 ソーラービームによって二人は遠くまで跳ね飛ばされていくのだった。 ヤマト:「やな気持ち〜!」 コサンジ:「俺はコサンジじゃない!コサブロウだ!」 蓮華:「…あれっ?何かあったの?」 キレイハナ:「別に。何もないよ。」 蓮華:「そう…」