綾香:「香玖夜、どう?情報は調べ終えた?」 香玖夜:「ええ。翼先輩は何か分かりました?」 翼:「ああ、一応な。」 浅香:「それで、今の状況はどんな感じなんですか?」 あたしと綾香ちゃんは、香玖夜と翼先輩と行動していた。 風属性を持つ翼先輩と、闇の能力者の香玖夜には、それぞれ独特の情報を集める能力を持っていた。 風を読み、風から方法を聞く翼と、意識を様々な人や物の影を伝って渡らせて状況を知る香玖夜。 そして4人は今の状況を詳しく知った。 綾香:「今残ってる敵は、ガントスを除いた3幹部と、スパイル、そしてドリームなのね。」 浅香:「オマケとして下っ端の団員が数多くも、ですね。」 香玖夜:「それ以外の蓮華ちゃんたちが戦った団員たちはみんな、ナナちゃんと律子がポケモン警察に引き渡したみたいね。」 ナナちゃんと律子には頭が上がらないなぁ。 実力のある団員の後始末を裏方としてやってくれてるなんて。 翼:「だが、ドリームの場所に行くまでのこのルート、厄介だな。」 香玖夜:「ええ、空間を歪めたことで、最低5分かかるルートでも、最低1時間はかかるルートになってるわ。」 綾香:「空間を歪めてるのはドリームなの?」 香玖夜:「いいえ、空間を歪める機械があったわ。確かそれを作ったのは…セクトスよ。」 翼:「セクトス…、あいつか…。」 翼先輩にはセクトスと何かの因縁があるらしいです。 浅香:「う〜ん…、でもどうして、どうして団員のスパイルがまだ残ってるのかな?」 綾香:「そういえば、そうよね。…まさか、本当の幹部ってスパイルだったりして…」 ??:「ご名答。」 はっとして振り向いたあたしたちの前に、いつの間にかスパイルが現われていた。 スパイル:「僕の本当の名前はルイトス。ガントスは形ばかりの幹部で、本当は僕が4幹部の一人だったのさ。 今までの戦いも、ほとんどは途中からわざと負けていたのに過ぎない。 君たちの実力を計算するために動いていたに過ぎないのさ。俺の相棒のセイラムとブラストもうまく動いてくれたしね。」 ナナシマ編 21.4幹部との決戦 綾香:「でも、あなたはライちゃんや志穂ちゃんの攻撃でボロボロになったり顔をつぶしたりしてたんでしょ? アレはわざと負けていたとは思えないけど…。」 ルイトス:「これのことですか?」 あたしの言葉にルイトスは突然、顔をミイラのような顔に変えた。 浅香:「うわっ…何それ…」 綾香:「もしかして…あなたも能力者?」 ルイトス:「いや、僕は変装の名人でね、顔を変えるのは得意なんだ。これを知ってるのは相棒の二人と他の幹部、そしてドリーム様 だけさ。これを買われて僕は幹部に上り詰めた。それに、多少の切り傷も特殊メイクで簡単に作れるからね。 君たちは僕のパフォーマンスに騙されていただけさ。さてと、ネタ明かしはこれくらいにして、この僕、氷と風のパフォーマー、 ルイトスが、君たちをここで眠らせてあげるよ。」 ルイトスがそう言った途端に、周囲は氷上のバトルフィールドに変わっていた。 翼:「今まで俺たち、通路にいたよな?」 浅香:「まさか、全てを見られていたってわけ?」 綾香:「そのようね、隠しカメラか盗聴器…」 香玖夜:「流石に気づかなかったわ。」 ルイトス:「さて、僕一人で4人の相手は十分かな。トドゼルガ、ヤドラン、スターミー、デリバード、頼むよ。」 彼が出したのは水と氷のタイプのポケモンばかり。 でも、水系、氷系ポケモンが共通して覚える事ができる技、そしてこのフィールドが関係している技と言えば、一つある。 「吹雪」と「凍える風」だ。 明らかに使ってくるわね。 だったら、それに対抗できるポケモンで行くべきかも。 綾香:「マグカ…」 浅香:「あの、ここ、氷の上…」 綾香:「あ…」 あたしはちょっと迂闊だった。マグカルゴを乗せたら溶けるよね、ここ。 綾香:「ドクケイル、お願い!」 浅香:「デンリュウ、頼んだよ!」 翼:「行け、ハッサム!」 香玖夜:「ブラッキー、お願いね!」 あたしたちはポケモンを出して迎え撃つ体勢を取った。 ルイトス:「ポケモンを出したか。…でも、すぐにバトルは終わるだろうな。トドゼルガ、絶対零度だ!スターミーは凍える風、 デリバードとヤドランは吹雪だ!」 あたしの想像は一部が遥か越え、初っ端から来た。 絶対零度は命中率が悪いけど、場所が場所だけに当たる確率が高い。 だったらそれを受け流せる攻撃で反撃しなきゃ! 綾香:「ドクケイル、吹き飛ばしよ!」 浅香:「デンリュウ、10万ボルト!」 翼:「ハッサム、銀色の風だ!」 香玖夜:「ブラッキー、電磁砲よ!」 片方は氷と風、もう片方は雷と風という攻撃で、両者がぶつかり合った。 ただ、やっぱり氷の威力は強い。 あたしたちの攻撃は徐々に押し戻されていた。 綾香:「このままだったら押し切られちゃうよ…」 香玖夜:「ここは…能力使う?」 浅香:「いいのかな?」 翼:「いいだろうな、奴らには散々迷惑かけられてるし。」 多分、私怨が大きいんだろうな、翼先輩は。 そしてあたしたち、いや、香玖夜がちょっと仕掛けることにした。 香玖夜:「イタズラでよく使うのよね、これ。」 香玖夜は、少しかがみ、自分の影をなでた。 すると、香玖夜の影がだんだんルイトスのポケモンに近づいていき、そしてトドゼルガの影に重なりかけた。 香玖夜:「よし、必殺、影パンチ!」 香玖夜が何もないところを強く殴ると、ルイトスのトドゼルガが突然前に倒れた。 香玖夜:「今よ!」 あたしたちはどういう力なのかよく分からなかったけど、一応攻撃を強め、向こうとの攻撃を相殺する事ができた。 ルイトス:「トドゼルガ!?…どうやら能力を使ってくれたようだね?」 香玖夜:「ええ、使ったわよ。こんなこともでき…」 香玖夜が胸を張って言いかけたときだった。 突然それは起きた。 香玖夜が氷漬になったのだ。 綾香:「えっ?」 ルイトス:「残念だったね、グロウの力は知ってるから。グロウがスペース団員だったときにさり気に調べておいたから。 だから分かってたよ。君の影には意識がある。だから、影を凍らせれば君も凍る。これでグロウは撃破だね。」 浅香:「そんな…」 翼:「能力も理解されてて、この状況かよ…」 ルイトス:「そろそろさ、僕に土下座して負けを認めれば、君たちは氷漬になるだけですむよ。処刑はしないから。どうかな?」 綾香:「嫌よ。」 ルイトス:「嫌か…、でも、僕にとって君たちは目障りだからな。特に、僕とドリーム様以外の男は奴隷以外の何者でもない! デリバード、そいつに吹雪だ!」 ルイトスは本性を表していた。 多分、今この状況で、あたしたちが全員負けて、ドリームが世界を征服した場合、ルイトスとドリーム以外の男性は奴隷として 使われるんじゃないかな?スペース団員たちも下っ端はそうなるのかも…。 そして吹雪を受けた翼先輩も、ハッサムごと氷漬けにされてしまうのだった。 浅香:「後はあたしたちだけ…」 ルイトス:「そうだな、どっちから先に始末しようかな?」 綾香:「…」 ルイトス:「決めた、そこの炎使いからだ!」 狙われたのはあたしだった。でも、負けたくない。 あたしは自殺行為になるかもしれないけど、マグカルゴを出して影に隠れた。 ルイトス:「何!?」 でも、マグカルゴがいるのに氷は溶けなかったのだ。 綾香:「もしかして…結局はここは氷の上だと思わせられてるだけで、通路の上なのね。」 浅香:「あ、そうか。あたしたちはフィールドに飛ばされたと思ってた。でも、実は背景が変わってただけだったんだ…。 それならレアコイル、参戦して!ハガネールも!」 バトルフィールドの正体が分かったことで、あたしと浅香ちゃんは反撃に出た。 マグカルゴの特性はマグマの鎧。 氷攻撃を受けても氷状態にならないのだ。だからルイトスに対抗できる唯一のポケモン。 綾香:「マグカルゴ、火炎放射よ!ドクケイルはサイケ光線!それに香玖夜のブラッキー、シャドーボールよ!」 浅香:「デンリュウは電撃波、レアコイルは電気ショック、そしてハガネールは龍の息吹!」 6匹の攻撃は、融合し、ルイトスのポケモン4匹の氷と風の攻撃を打ち破った。 そして、炎によってデリバードが、シャドーボールによってヤドランが、電撃によってトドゼルガとスターミーは倒れた。 でも。 ルイトス:「くっ、しかしまだやられたわけじゃないぞ。お前らは絶対に倒す。ニューラ、行け!」 彼はしぶとく、5匹目のニューラを出していた。 そして彼のそばにはサワムラーとノクタスの姿もある。 ニューラはあたしに目掛けて襲ってきていた。 綾香:「同じ手は食わないわ!必殺火の粉騙し!」 あたしは両手を前に出し、ニューラの目の前でおもいっきり叩いた。 すると、膨大な火の粉が手から飛び出し、ニューラに降りかかり、ニューラはその場に倒れた。 氷タイプであるために、炎によって顔をやられたのだろう。 綾香:「マグカルゴ、のしかかりよ。」 普段なら駆け寄るあたしかもしれない。 でも、今はそれが嘘じゃないかと思い、マグカルゴに止めをさせた。 ルイトス:「くっ、それならサワムラーとノク…」 浅香:「あたしを忘れたら困るな。デンリュウ、フラッシュよ!そしてトゲチック、天使のキッスよ!」 あたしがニューラの相手をしている間、浅香ちゃんはルイトスの他のポケモンに挑んでいた。 襲いかかろうとするポケモンたちをフラッシュによって足止めし、天使のキッスで混乱させた。 これにより、サワムラーの飛び膝蹴りがノクタスに、ノクタスのニードルアームがサワムラーに当たり、両者共に倒れたのだった。 ルイトス:「何!?」 ルイトスは流石に動揺していた。 嘘の演技とかじゃなくて、あの動揺はマジだった。 浅香:「さてと、覚悟はいいですか?」 浅香ちゃんの手からは雷が放出し始め、 綾香:「メイクでもできないような傷、あたしたちがつけてあげるよ。」 あたしも体が熱くなるのを感じた。 浅香:「必殺、光の嵐!」 綾香:「必殺、火の粉の舞!」 電撃や高熱の光、そして膨大な量の火の粉がルイトスを包み込んでいた。 そして。 浅香:「フォール、イン!」 綾香:「ライト、ブレイク!」 浅香ちゃんの声と共に、特大の光の光線が、雷を纏って落下し、あたしの声と共に、火の粉が彼に張り付くような状況になって 花火のように破裂した。 後には…、ボロボロのコゲコゲになったルイトスの姿があった。 浅香:「光の封印です。」 さらに浅香ちゃんは結界に閉じ込めていた。 と、周囲の状況が変わり、あたしたちは気づくと通路内に戻っていた。 翼先輩と香玖夜は気を失ってるだけだった。 あたしたちは二人を起こしたら、ドリームのところに急がなきゃ。 できるだけ、みんなの力になるために。 そして、世界征服と復活の野望を打ち砕くために。 蓮華:「こっちでいいのかな?」 キレイハナ:「う〜ん…、道なりに行くしかないでしょ。」 ヒータスとの対戦後、あたしたちはどこに続いてるのかも分からない道をまっすぐ歩いていた。 空間が歪められてる事は分かってる。 でも、それを何とかできるわけじゃなく、ただただ歩き続けていて、そして大きな部屋にやってきた。 そこは、室内ジャングルみたいだった。 蓮華:「ここ…、何の部屋なのかな?」 キレイハナ:「さぁ?」 ??:「ここは私の私室よ。ようこそ、草使い。ここを今からあなたの墓場に変えてあげるわ。」 蓮華:「誰?」 ジャングルの中、突然声が響いた。 そして、目の前からはペルシアンとザングース、そしてヘルガーがやってきた。 そして、キリンリキに乗って、幹部らしき女性が出てきた。 ??:「4の島で一度会ったけど、顔をあわせるのは今が初めてね。あたしはスペース団4幹部の一人、マルトス。 別の名は、ノーマル使いとでも言っておこうかしら?」 4の島で一度? …あの時ジョーイさんに変装してた奴だ! 蓮華:「あの時はよくも騙してくれたわね!」 マルトス:「騙される人が悪いのよ。周囲を見渡したらどうかしら?」 蓮華:「えっ?」 キレイハナ:「うわ…」 気づいたら、周囲にはたくさんのノーマルタイプと悪タイプのポケモンがいて、あたしたちを睨みつけていた。 見えない木々の間からも、そして真上からも睨みつける視線がひしひしと伝わってきていた。 マルトス:「ここはあたしの私室。だからあたしのポケモンたちが生息しているの。その中にまんまと入ってきてくれて助かったわ。 みんな、そこのトレーナーに攻撃しなさい!」 ポケモンたちは、マルトスの声と共に襲い掛かってきた。 急降下してくる飛行ポケモンたちや、突進してくるノーマルポケモン、木々の陰から飛び出してくる悪ポケモンたち。 蓮華:「これじゃ、対処できないよ…」 キレイハナ:「蓮華、あたしたちに任せて。みんな、突撃よ!」 直後、あたしのボールからはみんなが飛び出していた。 キレイハナがなっぴやダネッチと一緒に葉っぱカッターでけん制し、ゴンは自分と同じカビゴンに組み合っていた。 コイッチとアクアは体に群がる小型ポケモンたちを振り払いながらハイドロポンプで攻撃し、ドラとゴマは突進、ヘラクロはメガホーン、 ポーやアゲハたちは吹き飛ばし、デンは電気ショックと、みんなできる限りの攻撃で一斉攻撃を押しとどめていてくれた。 この状況、状態で相手に対して不利かと思えるワタワタやぎょぴたちは出てきていなかった。 でも、みんなのおかげで大体のポケモンを追い払う事ができた。 マルトス:「残念ね、せっかく始末できると思ったのに…」 蓮華:「あたしのポケモンたちはあたしを信頼してくれてるから、あなたには簡単に負けたりしないのよ。」 マルトス:「そう、だったら、本当の実力を見せてもらいたいわ。こっちに来なさい。」 あたしは罠かとも思いかけたけど、マルトスが攻撃してこないのを見て、彼女の後についていった。 もちろん、ポケモンをボールに戻してから。 すると、バトルフィールドのある場所に案内された。 マルトス:「ここであたしと勝負よ。ここなら邪魔は入らないわ。」 蓮華:「いいわよ。」 マルトス:「ただし、負けたらあなたは地獄行きね。キリンリキ、行きなさい!」 マルトスの一番手はノーマル・エスパータイプのキリンリキだった。 蓮華:「あたしはポチ!頼むよ!」 あたしのポケモンはグラエナのポチ。エスパータイプには悪タイプのこの子がいいだろう。 マルトス:「キリンリキ、高速移動で突進よ!」 蓮華:「ポチ、影分身で避けて!」 キリンリキの突進はポチの分身の一つに飛び込んでいった。 でも、あのスピードと威力、ポチが一度でも受けたらひとたまりもない。 ここはキリンリキの体調を崩す方がいいかも。 蓮華:「ポチ、砂かけ攻撃よ!そしてどくどく!」 ポチは大量の砂をキリンリキに向かって後足でかけ、さらに強力な毒の液を放った。 でも、それはいきなりポチに全て返ってきていた。 逆に目を砂でやられたうえに、猛毒状態になってしまうポチ。 蓮華:「そんな…」 マルトス:「残念でした。」 キリンリキの前には光の壁とは違うバリアのようなものが出ていて、そして消えた。 蓮華:「マジックコート…」 マルトス:「ご名答、そういうことよ。マジックコートは砂かけは返せないけど、キリンリキはエスパーポケモンでもあるのよ。 念力で砂を押し返すくらいできるわ。キリンリキ、そのまま踏みつけなさい!」 キリンリキは砂と毒を受けてうずくまっているポチを踏みつけた。 蓮華:「ポチ!」 マルトス:「あら、しぶといわね。まだ余力が残っているなんて。だったらもう一度、キリンリキ、踏みつけなさい!」 キリンリキは大きく足を上げた。 蓮華:「今しかない、ポチ、驚かす攻撃よ!」 足を上げた状態のキリンリキに対し、目が見えにくくても相手の位置を感じ取っていたポチは吠えたりする声とは少し違う、 相手を驚かすような突拍子もない声を上げ、キリンリキを驚かせた。 これには流石に怯むキリンリキ。 マルトス:「キリンリキ、しっかりしなさい!アイアンテー…」 蓮華:「ポチ、キリンリキの首に噛み砕く攻撃よ!」 今度はあたしのほうが早かった。 驚いた時に声も上げているために、キリンリキの場所は性格にポチが感じ取っていた。 流石は狼に似たポケモンだ。狩りの基本はおさえてる。 ポチはキリンリキに飛びかかり、その長い首におもいっきり噛み付いていた。 同時にポチの体に、キリンリキの尻尾が強く当たっていた。 そして、両者が動かないまま、時間が経ち、ポチもキリンリキもその体勢のまま倒れた。 マルトス:「この勝負はドローね。次よ。」 蓮華:「ええ。」 防御力の少ないポチがキリンリキの攻撃によく耐えたと思った。 多分、噛み砕く攻撃が急所に当たったのだろうけど。 それにしても、あのキリンリキの特性が、精神力じゃなくてよかったわ。一か八かの賭けは成功だった訳だし。 マルトス:「お次はこの子よ。行きなさい、マッスグマ!」 マルトスの2番手は、ノーマルポケモンのマッスグマだった。 ノーマル攻撃には岩や鋼の力は強い。 格闘タイプはヘラクロしかいないわけだし、ヘラクロにはこれ以降に出てくるかもしれないポケモンに使いたい。 だったら次はこの子よ。 蓮華:「クピー、行きなさい!」 あたしの2番手は鋼タイプ、クチートのクピーだ。 マルトス:「鋼タイプなの…残念ね、もう勝負は決まったわ。」 蓮華:「どういうこと?」 マルトス:「こういうことよ、マッスグマ、炎のパンチ!」 蓮華:「えぇ!?」 あたしは驚いた。 クピーもキレイハナも驚いていた。 マッスグマはどうなっても炎のパンチは覚えないのに…。 でも、ここは避けるしかない。 蓮華:「クピー、守る攻撃よ!」 炎のパンチは何とか止められていた。 でも、その後に電撃波や水の波動が襲い掛かってくる。 マルトス:「マッスグマは多彩な技が使えるの。クチートもそうらしいけど、あなたはその状態では戦うに戦えないでしょ?」 素早さが違うだけに、マッスグマの攻撃は早く、クピーは水の波動をきあいパンチで相殺したすぐ後に、足場を凍らされてしまっていた。 蓮華:「でも、あたしはクピーを信じてるわ。この子にしかできない事ができるもの。」 マルトス:「そう、でもこれで最後よ!マッスグマ、シャドーボール!」 蓮華:「クピー、日本晴れからソーラービームよ!」 威力は弱いけど、ソーラービームはシャドーボールを相殺させた。 直後。 マルトス:「再び炎のパンチ!」 マッスグマはクチートに向かって飛びかかってきた。 マルトス:「終わりね。」 蓮華:「どうかなぁ?」 あたしはもう手を打っていた。 蓮華:「クピー、マッスグマを挟んで噛み付くのよ!」 クピーはマッスグマが近づいてきた瞬間、後ろを振り向き、頭の後ろにぶら下がっている大きな口(オオアゴ)を開けた。 そして、そのままマッスグマをはさみ、さらに噛み付くように口を閉じたのだった。 炎のパンチを受けてしまったけど、この状態ではマッスグマは苦しくて何もできない。 マルトス:「マッスグマ、ミサイル針よ!」 でも、その攻撃は効果なかった。 虫タイプの技の針がどれだけクピーに当たっても、内部に当たっても、体の硬いクピーには効果がなかったのだ。 蓮華:「これで終わりよ、クピー、破壊光線!」 オオアゴに一瞬光が見えたかと思うと、特大の光線がオオアゴから発射され、マッスグマはまともに受けると同時に、部屋の壁にめり込むほど 吹っ飛ばされていた。 マルトス:「くっ、マッスグマ、戻りなさい!これがポケモンリーグ優勝者の強さなのね…。」 蓮華:「次は誰が来るのかしら?」 マルトス:「ふざけないで!次は一気にダブルで行くわ!ピジョット、カビゴン、行きなさい!」 次も一対一かと思ってたけど、どうやらダブルバトルになっていた。 多分、あたしが一度でも負ければそれであたしは負けたことにされるんじゃないかな。 だったら一気に行く。 蓮華:「カビゴンが地震を使う可能性も捨てきれないし、キレイハナ、それに…リュウ、頼むわよ!」 あたしのポケモンはキレイハナとカイリュウのリュウだ。 蓮華:「リュウ、カビゴンをお願い!キレイハナはピジョットよ!」 キレイハナ:「了解。」 マルトス:「あたしのピジョットに草ポケモンですって?あたしもなめられたものね。」 蓮華:「なめてないわよ、キレイハナ、種マシンガン!リュウはメガトンパンチよ!」 マルトス:「ピジョット、軽く避けてそのまま急降下、ツバメ返しよ!カビゴンは腹太鼓から突っ張り攻撃よ!」 キレイハナの種マシンガンは軽く避けられ、そのままキレイハナに突っ込んでくるピジョット。 同時に腹太鼓で最大限に体力をあげ、リュウのパンチを軽く手で払いのけるカビゴン。 でも、キレイハナが飛行ポケモンとバトルをするのは初めてではない。 あたしが言うまでもなく、キレイハナはどう対処するのか決めていた。 キレイハナ:「必殺、真下にソーラービーム!」 キレイハナは自分から真下にソーラービームを放ち、ピジョットが向かってくる前に上昇した。 日本晴れ効果が続いていたおかげだった。 でも、ツバメ返しは見事に決まってしまった。 マルトス:「カビゴン、早くカイリュウを投げ飛ばすのよ!ピジョットはキレイハナを風起こしの竜巻で包みなさい!」 キレイハナはピジョットに接近して蔓の鞭で体を絡めとろうとしたけど失敗し、竜巻に包まれてしまった。 カビゴンもリュウに掴みかかり、両者押し合いが続いていた。 蓮華:「キレイハナ、高速スピンで竜巻を相殺するのよ!リュウはその体勢で10万ボルト!」 竜巻を高速スピンで相殺するキレイハナ。花びらと葉っぱカッターが出ていたのは、いつもの癖だろう。 そこをピジョットが襲ってきたけど、今度はそうはいかない。 同時に、リュウは体から電気を発した事で、カビゴンを自分から離していた。 蓮華:「キレイハナはフラッシュ、リュウはドラゴンクローでアッパーよ!」 再びツバメ返しを使おうとしたピジョットも、眼前のフラッシュには耐性はなかった。 そしてキレイハナはピジョットの体に蔓の鞭を巻きつけた。 リュウはキレイハナのフラッシュを受けたカビゴンに対し、ドラゴンクローによるアッパーを食らわして跳ね飛ばした。 マルトス:「ならばこれよ、カビゴン、破壊光線!」 蓮華:「だったら、キレイハナは叩きつける攻撃!リュウは大文字よ!」 一気に形勢が逆転したことで、マルトスはピジョットを無視し、カビゴンの破壊光線で決めようとしていた。 でも、キレイハナが蔓の鞭を大きく振り回してピジョットをカビゴンの顔に叩きつけ、そこを大文字が襲ったため、 ピジョットは倒れ、カビゴンも顔に火傷を負っていた。破壊光線も出せる状態ではないだろう。 マルトス:「な、な、な…」 蓮華:「うふふ、これで最後ね。キレイハナ、ソーラービーム、リュウ、龍の息吹よ!」 二つの攻撃はカビゴンを倒す最後の技となった。 マルトス:「私が負けたか…。ならば、私が地獄を見ることになるだろうな。」 蓮華:「どういうこと?」 勝負が終わった時、マルトスの様子はどこかおかしかった。 マルトス:「私は負けた時点でスペース団の幹部でもなくなったのだ。私自身もこれで終わるのだ。」 あたしは嫌な予感を感じ、マルトスに駆け寄ろうとした。 でも。 マルトス:「さらばだ、草使い。私のような負けたものはスペース団には必要ないのだ。」 マルトスの足場に突然穴が開き、そこにまっさかさまにマルトスは落ちていった。 あたしもキレイハナも、リュウも間に合わなかった。 そして、同時にマルトスの部屋が消え、あたしは通路に立っていた。 蓮華:「間に合わなかった…。」 キレイハナ:「スペース団の幹部の中で一番卑怯じゃなかったわね。…どうせなら、トレーナーとして復帰してほしいくらい。」 蓮華:「うん。なのに、どうして…」 あたしたちは何とも言えない悲しい気分になっていた。 そんなあたしたちは、歩いていくうちに、大きなドアにたどり着くのだった。 その頃、外にいた他のメンバーも本部の中にたどり着き、迷路のような通路を歩いていた。 志穂:「この部屋、何なのかしら?」 海:「機械がいっぱいあるね。」 美香:「うん、でも、何か、気味が悪い。」 なずな:「お化けに見慣れてても、この状況は好きじゃないわね。」 菜々美:「本当よね。」 その中の一団、蓮華を含めればなかよしグループ勢ぞろいになるようなあたしたち5人は、とある部屋にたどり着いていた。 そこには奇妙な形の機械が立ち並んでいた。 ??:「ようこそ、スペース団の空間製造工場へ。」 志穂:「誰?」 ??:「あら?あたしのお忘れ?」 志穂:「あんた、セクトス…」 忘れるわけなかった。 あたしたちの目の前に現れたのは、あたしが2の島に行った時にあたしや雪美ちゃん、翼君たちに攻撃を加えた、マッドサイエンティスト だった。 海:「空間製造工場って行ったわよね?」 セクトス:「ええ。」 美香:「もしかして、この通路が迷路みたいなのは…」 菜々美:「その機械によるものなの?」 セクトス:「ご名答、そういうことよ。でも、もうそれを知っても無意味なのよ、ここがあなたたちの墓場になるのだから。」 言葉と共にセクトスは消えた。 今までのは立体映像だったようだ。 そして、機械の間から様々な視線があたしたちに向けて放たれていた。 海:「何だろう、この感覚…」 なずな:「見られてるね。」 美香:「あたしたちを襲おうとしてるのかな?」 菜々美:「じゃないかな?何かいっぱい羽音が聞こえるよ。」 志穂:「でも、相手側からなきゃ対処の仕様が…」 その時だった。 あたしはいきなり周囲が明るくなるのを感じ、気づいた時、あたしは海岸に立っていた。 志穂:「あれっ?ここは…」 セクトス:「ようこそ、私の空間の間に。この世界であなたを倒します。ストライク、フライゴン、行きなさい!」 あたしは海岸にいて戸惑っていた。 そこを奇襲をかけるように、ストライクとフライゴンが襲い掛かってきた。 あたしは護符を出そうとしたけど、何故か護符が作用しない…。 それに、ボールも持っていなかった。 志穂:「どうして…きゃっ!」 あたしは普通の女の子になっていた。 ポケモンもいなく、護符も使えず、能力が作用しない。 セクトス:「そのままストライクに切り裂かれ、フライゴンに倒されるのね。」 同じ頃、草むらで海が、森の中で美香が、山道でなずなが、崖の上で菜々美がポケモンとセクトスから攻撃を受けていた。 彼らも志穂と同じ状況だった。 だが、思ってることは5人とも同じだった。 志穂:「能力が使えなくても絶対に負けない…」 海:「あたしたちは…今まで逆境に耐えてきたから…」 美香:「こんなところで負けてたら、今まで頑張ってきた事が全て泡になっちゃうよ…」 なずな:「力がなくても…あたしたちは負けない!」 菜々美:「あんたたちみたいな、悪い奴には征服されない!」 その時だった。 突然、5人それぞれの目の前にモンスターボールが現れたのは。 よく分からなかったが、5人はそれを手に取った。 すると、志穂の前にはウィンディが、なずなの前にはメタモンが、海の前にはカポエラーが、美香の前にはエイパムが、 菜々美の前にはマリルリが姿を現していた。 それぞれがパートナーポケモンと出会ったのだった。 志穂:「どういうことか分からないけど、でも、これで負けないわよ。」 あたしには何が起きたか理解できない。 でも、この子があたしのパートナーである事は違わない! セクトス:「おのれ、フライゴン、地震攻撃だ!」 志穂:「ウィンディ、神速でフライゴンに攻撃よ!」 地震が発動する前に、ウィンディはフライゴンに神速で攻撃し、フライゴンを海に突き落としていた。 地面タイプのフライゴンは水に塗れて起き上がろうにも起き上がれないでいた。 セクトス:「何!?」 志穂:「ウィンディ、火炎放射よ!」 そしてストライクが倒れた時、辺りの景色が、ガラスが割れるように砕け散っていった。 同じ頃。 海:「カポエラー、トリプルキックよ!」 美香:「エイパム、スピードスターから目覚めるパワーのコンボよ!」 なずな:「メタモン、テッカニンに変身して高速移動から乱れ引っ掻きよ!」 菜々美:「マリルリ、波乗りから吹雪のコンボ!」 他の4人も相手の虫ポケモン、地面ポケモンを倒していた。 そして、周囲の景色が砕け散っていくのを見るのだった。 気づいた時、あたしたちは元の部屋で一緒にいた。 そばにはあたしたちのパートナーポケモンがいて、そして相手になっていたポケモンたちが倒れている。 そして、部屋も明るくなっていて、セクトスがパソコンに向かって倒れていた。 志穂:「何だったのかしら?」 海:「さぁ?」 ??:「ようやく目を覚ましたか?」 あたしたちが顔を見合わせていたら、機械の影からストールが出てきた。 そばにはポリゴン2の姿があった。 美香:「今のは何だったの?」 ストール:「この幹部は、お前らの意識をパソコンの中に閉じ込め、能力もポケモンもシャットアウトした状態で、 意識だけを永遠の闇に葬ってしまおうとしてたのさ。パソコンの中でデータ化されてたから、データとして入力されてた お前らの力とかも、こいつが簡単に削除できたってわけ。」 あたしたちがそれでやられた直後、ストールはその様子を見て事の次第に気づき、ポリゴン2であたしたちのパートナーポケモン の意識を送ってくれたようだ。 同時にセクトス本体をストールが殴り倒した事で、分身した意識はポケモンの統率がしにくくなり、あたしたちが勝った様だ。 なずな:「それで、セクトスはこれからどうなるわけ?」 ストール:「多分、そろそろ意識が戻る頃だろうな。…それより、お前らの力でこの機械、壊せないか?」 美香:「どうして?」 ストール:「どうやら、この空間の歪みを作り出してるのはこの機械らしい。だから、これを壊せばボスの部屋にも行きやすくなるのさ。」 菜々美:「そう、ならやりますかな。」 あたしたちはセクトスをロープで縛りつけ、一斉に機械たちに攻撃をした。 さっきまで能力が使えなかった分、一気にやりまくり、機械が一斉に火を吹いた直後、あたしたちは部屋から脱出した。 すると、スペース団本部は今までよりも狭くなるのを感じるのだった。 空間が元に戻ったからだろう。 志穂:「早くドリームのところに急ぎましょ。」 哲也:「ピジョット、風起こしだ!」 玲奈:「パルシェン、オーロラビームよ!」 清香:「プテラ、破壊光線!」 海斗:「ドククラゲ、ハイドロポンプだ!」 志穂たちが空間を元に戻した頃、最後の4幹部、ミアトスとのバトルが始まっていた。 しかし、4人の攻撃は簡単にウィンディとミロカロスに相殺されてしまい、歯が立っていなかった。 ミアトス:「もう終わりかしら?」 哲也:「いや、まだだ。」 清香:「そうね、まだ負けたわけじゃないもの。」 玲奈:「あたしたちはスペース団を倒すために戦ってる。」 海斗:「まだ負けてもいないのに諦められるかよ!」 既にピジョットたちも息があがっていたが、誰一人逃げずにその場に残っていた。 ミアトス:「でも、そんなことを言ってもあなたたちはそれを可能にはできないわ。ドリーム様が世界で一番強いんだから。 ウィンディ、オーバーヒート。ミロカロス、ハイドロポンプよ。」 哲也:「負けない!風よ、ピジョットを包み込め!ピジョット、ゴットバードだ!」 風の力でスピードと威力を増したピジョットがオーバーヒートとハイドロポンプを貫き、 玲奈:「光よ、小さな虫に最高の力を!アゲハント、ソーラービームよ!」 玲奈が照らした光によって生まれた、アゲハントのソーラービームが、 清香:「私たちに歴史を伝える化石よ、プテラに太古の力を!プテラ、原始の力よ!」 清香の神秘の力を纏った、プテラの原始の力による岩攻撃が、 海斗:「大いなる海の精霊よ、ドククラゲに広大なる力を!ドククラゲ、ハイドロポンプだ!」 海の力を受けたドククラゲのハイドロポンプが、水、岩、光の3つの力が融合し、ミアトスと、彼女のポケモンを覆い尽くした。 そして、4人が気づいた時、ミアトスは倒れ、彼女のポケモンたちも倒れるのだった。 だが、4人とポケモンたちも一緒に倒れた。 ミアトスとの対戦で、それぞれの力を使いすぎたのだ。 こうして、スペース団4幹部は倒され、下っ端団員も倒れ、残るのはドリームただ一人となった。 そして、蓮華はその部屋の前まで来ていた。 もうすぐで、全てに決着がつく…。