ナナシマでの事件が解決し、2週間が経ったある日の事、ハナダシティの美術館に、このような葉書が届いた。 『拝啓、ハナダ美術館館長様、今宵深夜0時に「水晶の雫」を頂きに参ります。 怪盗クールナイト』 だが、美術館館長はその葉書をイタズラと思い、気にする事もなかった。 それに、この美術館にはしっかり盗難防止システムがあるので、何かをしなければならないとも思わなかったのだ。 しかし次の日の朝、館長が美術館を訪れると、彼の持つ鍵でしか開けることのできないはずのガラスケースに穴が開いていて、 「水晶の雫」はどこにも存在していなかった。 赤外線システムも本体が凍らされていて作動していなかったのだ。 これがこれからカントウ中にその名を広める怪盗クールナイトの最初の事件だった。 怪盗編 1.ポケモン世界震撼?謎の怪盗出現! 蓮華:「えっ、盗難事件?」 律子:「そうなのよ、昨日で2件目。できたばかりのトキワ図書館で、トキワの歴史が記された古文書が盗まれたの。」 部活の休憩時間、律子に呼ばれ、口パクでポケモン世界で事件って言ってたから、何かと思ったらこういう話をしてきた。 律子:「ハナダの美術館でも、『水晶の雫』って言う宝石が盗まれてね、カントウ中、大変な事になってるのよ。ポケモン警察も 総力をあげて捜査してるみたいだけど、肝心の犯人がどこにもいなくて、完全に行き詰ってるのよ。」 蓮華:「ふぅ〜ん、それで、あたしの力が借りたいわけ?」 律子:「ええ、ナナも頼んでたけどね。どうやら、犯人が能力者の可能性が高いから。」 蓮華:「えっ?」 その時、あたしたちの部室のそばをバスケ部員が通り過ぎた。 律子:「あ、涼治君だよ。」 言われなくてもすぐに分かっていた。 涼治は先頭に立って、晃正君たち他の部員とグラウンドを走っていた。 涼治はようやく1週間のペナルティを終え、今まで以上に部活を頑張っていて、でもあたしとのデートを中旬に約束してくれていた。 蓮華:「お〜い、涼治!」 律子:「頑張って〜!」 あたしたちの声に涼治は気づいたが、一瞬顔を向け、笑いかけるくらいしかしてくれなかった。 当然だよね、部活中だもん。 律子:「それにしてもさ、涼治君も大変だよね」 蓮華:「うん…」 最近、あたしたちの間ではこんな事件があった。 涼治は医者になる夢を持つと同時に、ポケモンドクターにもなろうとしている。 そして、ポケモンたちの怪我も些細なものなら勉強したので治療できるのだが、全てのポケモンを診れるわけじゃない。 涼治にだって経験した事のないポケモンがいるわけで、5日前に涼治に怪我を見てもらいに来た他校の生徒のポケモンもそうだった。 律子:「ヤミラミ、だっけ?」 蓮華:「うん。涼治も悪・ゴーストタイプのあのポケモンの怪我に当たっては治療方法を知らなかったのよ。 元々、悪・ゴーストのポケモンはヤミラミだけだし、ジョーイさんがくれた古い医学書にもヤミラミの治療法は載ってなかったの。」 そのため、悪戦苦闘して治療に失敗した涼治は、その子に散々罵倒され、偶然居合わせたヤツデ君のヒーリング能力で ヤミラミの怪我は治ったんだけど…。 ヤミラミのトレーナー:「ポケモンの怪我を治療できない人より、この人のほうがお医者さんね。あなたみたいな人は医者としても呼べないし、 信用できないわ。ポケモンの怪我が分かるからって調子になるのはやめたら!」 涼治はさらに罵倒され、その日は副主将の博也君が涼治を家に帰したけど…。 律子:「それでも次の日にはさっぱりした表情で学校に来たのよね、眼が赤かったけど…」 蓮華:「うん…。」 でも、それだけで終わらず、実は涼治はあたしの家にあるドアを潜って、ポケモン世界にヤミラミを捕まえに行っていた。 治療できなかった事で自分でヤミラミをゲットして、再びあのような事が起きないようにしたのだ。 蓮華:「あたし、少しは休んだらって言ったけど、でも涼治が頑張ってる姿を見てると、やめなさいなんて言えないんだ。」 律子:「へぇ〜、しっかり彼女やってるのね。」 蓮華:「えへへ…」 律子:「でもさ、何かもう少し言った方がいいんじゃない?明らかに疲れを押してるように見えるけど?」 律子は再び近くまでやってきた涼治達の姿を見て言った。 確かに、涼治は寝不足なのか、勉強のしすぎなのか分からないけど、何かホントに疲れを押しているようだった。 蓮華:「うん、もう少し、休むように助言してみるね。」 律子:「その方がいいよ。」 その時、、部室の方で浅香ちゃんがあたしたちを呼ぶ声がした。 律子:「あ…、休憩時間、終わってた…!!」 蓮華:「嘘、ヤバイ!戻ろ!」 あたしたちはいそいそと部室に戻り、教えに来てくれている先輩の指示を聞きながら練習に励むのだった。 あたしは涼治がアレだけ、疲れを押してまで頑張ってるから頑張らなきゃと思い、練習に打ち込み、何とか形を覚えなおす事ができた。 そして部活終了のことだった。 律子:「蓮華、さっきセレビィがナナからのメールを持ってきたんだけど…、何かまた、予告状が届いたらしいの。」 蓮華:「予告状?」 律子:「うん。だから、蓮華、今日ポケモン世界に来てくれないかな?後、香玖夜と綾香も誘ってきて。」 蓮華:「分かったわ。」 すると。 こういう面白い事には目がないものが、ボールの中にいるわけで…。 キレイハナ:「それは面白そうね、あたしは行っていいかな?」 と言って、案の定、キレイハナが立候補してきた。 律子:「あらら、やっぱり聞いてたのね。」 律子もそれは予想していたようだ。 キレイハナ:「当たり前でしょ、面白そうなんだもん。蓮華と41の絆がいれば百人力よ。」 蓮華:「でも、予告状ってことは、犯人は共通してるの?」 律子:「ええ、共通してるわ。彼は自分のことを怪盗クールナイトと名乗っているわ。」 蓮華:「怪盗…」 キレイハナ:「クールナイト…?」 律子:「ええ。でも、あたしもどんな人かは知らないの。目撃者自身がいないし、いつも予告された品物のあった場所に、 アディオスって書かれたメモと怪盗クールナイトっていうサインが残されてるだけだから。」 蓮華:「ふぅ〜ん。」 キレイハナ:「(なんか、名前からしてクールでかっこいい人なのかなぁ…?)」 そんなわけで、あたしとキレイハナたちは舞さんの許可を得て、夜、ポケモン世界に行った。 もちろん綾香と香玖夜も誘い、ドアを開けると既に律子とナナが一緒にいた。 ナナ:「来てくれて助かったわ。」 香玖夜:「いいのよ、あたしたちの力が役に立つのなら、幾らでも使って!」 幻影を使って相手を惑わせる綾香に、暗闇でも視界が効く香玖夜、そして植物の力を使えるあたし。 この3人がいれば、怪盗は一発で捕まるだろうな。 それを考えてナナもあたしたち3人を指名してきたんだから。 綾香:「ところで、今日の狙いは何なの?」 ナナ:「それはね、ここに書いてあるわよ。これ、予告状のコピー。これ見たら、そこに行くから。」 ナナに手渡された紙には、こう書かれていた。 『拝啓、ニビシティ博物館館長様、今宵深夜0時、現在特別公開中の進化石、太陽の石を頂きに参ります。 怪盗クールナイト』 ナナ:「今ね、本物が飾ってあるのよ。普段はレプリカなのに。」 律子:「太陽の石って、週1のコガネの虫取り大会でゲットする以外はソルロック関係でゲットするしか方法ないから、レアなのよ。 だからじゃないかなって思って。今まで盗まれた水晶の雫だって、今のところ世界に一個しかないくらいの貴重な一品だし、 古文書だって価値は相当なものよ。だから太陽の石のようなレアアイテムだって狙われてもおかしくないわけよ。」 蓮華:「ふぅ〜ん、でも、太陽の石ってそんなに貴重品だった?」 あたしの一言は、すぐ前の律子の言葉を否定する言葉だったため、一瞬その場をシーンとさせていた。 律子:「…あのさ、そりゃ蓮華ちゃんのポケモンは太陽の石で進化したけど…アレは滅多にないと思うよ。」 ナナ:「そうそう、特にニビジムの時は。」 蓮華:「…そういえばそうよね。」 あたしのキレイハナの場合は、極めて例外なのだ。 ニビジムでのバトルの時だった。 クサイハナに進化した時、地面に攻撃が当たって出てきた岩の中から、偶然太陽の石が見つかったのだ。 当時のニビジムのバトルフィールドは、ソルロックが出現するようになっていたお月見山で採取していたため、その時に 紛れ込んだものと言われていたけど…、確かにそれは例外中の例外よね。 蓮華:「ナナ、律子、それより、時間はまだいいの?」 流石にいたたまれなくなったあたしは強引に話題を変えた。 ナナ:「あ、そうだ、そろそろ行っておかないとね。ケーシィ、テレポートよ!」 そしてあたしたちはニビに向かった。 ニビシティの博物館に着くと、ポケモン警察が既に監視を始めていた。 野次馬もかなりいた。 でも、あたしたちはナナがいるおかげで入る事ができた。 ナナ:「それじゃ、二手に分かれて監視をしていましょ。」 律子:「そうね、香玖夜と綾香は一緒に回ってくれない?蓮華、行くよ。」 蓮華:「えっ?あ、うん…。」 あたしたちは二手に分かれた。 すると、ナナと律子は何やら笑いを堪えているようだった。 蓮華:「二人とも…?」 キレイハナ:「何か…、隠してない?」 ナナ:「あ、分かる?」 ナナはすごく笑いを堪えていた。 律子:「あのさ、ここ、ニビだよ。分からない?」 そして律子は既に噴き出していた。 蓮華:「えっ?…、あ…」 なるほどね、アレね。 そういえばニビって言えば、あの人がいるのよね。 あの、ブリーダーとしては一流で、あの部分さえなければかっこいい人がいるのだ。 ナナ:「あの二人、ニビは初めてでしょ?」 律子:「多分、アレが起きるでしょうね〜。」 二人はどうやらこれを見るために画策したらしい。 確かに、考えてみれば、あの人と綾香と香玖夜は初対面だ。 しかも、香玖夜は喋らなければおとなしい人に見えるし、綾香もきれいだしモデル体型だ。 何も起きない方がおかしい。 あたしもキレイハナも、多分、起きるだろうなって思った。 キレイハナ:「でもさ、ここにはジュンサーさんや、綺麗そうな感じの人もいっぱいいるからそんなに早くはないでしょ。」 蓮華:「そうだよね。」 あたしとキレイハナはまだ起きないとも思っていた。 でも。 あたしとナナと律子が離れて数秒後だった。 ??:「お嬢さん方、俺と愛の監視デートをしませんか?俺と熱い愛を監視しながらじっくりと深め合っては…」 ズルッ!(キレイハナがずっこけた) すぐに予想してた事が起き、この速さにキレイハナがずっこけていた。 キレイハナ:「相変わらず早いわね…」 さすがのあたしも呆れてものが言えなかった。 早くも綾香と香玖夜は、彼の綺麗な人観測レーダーに引っかかってしまったようだ。 あたしたちが振り返ると、そこには動揺している綾香と、迷惑顔の香玖夜の二人の手を握り、アプローチをかけている、 ニビジムのジムリーダー、タケシの姿があった。 確か、あたしもされたのよね、ここに初めて来た時。 ニャースの入れ知恵で、妖精の姿になり、少し年上っぽくなった時だった。 あの時は力のコントロールが不正確だったから、だから少し年上の妖精の女王みたいな姿になってたけど、今はこの状態のまま、 妖精のコスチュームを着た感じになるだけだった。 律子もナナも経験があるらしい。 律子はナナに案内された時、ナナは本来の姿としてきた時に。 タケシ:「さぁ、俺とこのまま愛の逃避行でも…」 彼のナンパは長く続くかと思っていたけど、でも、実際、よく考えると、相手が悪かったと思った。 二人とも、彼氏がいると同時に、断り方も半端じゃないのだ。 綾香:「すいません、あたし、彼氏がいるので、軽い人にはついていけません。」 タケシの目を見て直球で言う綾香と、 香玖夜:「悪いけど、許容範囲狭いので。好みの顔じゃないし、細い目の男は好きじゃないし。それに彼氏もいるし、大迷惑です。」 毒っぽい言葉を織り交ぜて言う香玖夜。 「逃避行」って言葉に反応したらしく、二人は反射的に見事に断っていた。 ナナ:「あらら、長く続くと思ったのに…。」 律子:「綾香、香玖夜、大丈夫?」 律子が声をかけると、綾香と香玖夜が顔を膨らませてやってきた。 綾香:「あ、律子!蓮華!あたしたちを分けたのって、これのため?」 香玖夜:「顔が笑ってるってことはそうなのね!ひどいよ、こんな男と会わせるために分けるなんて…」 二人は完璧怒っていた。 逆にタケシさんはあたしたちの姿を見ると、表情を蒼くしていた。 やばいところを見られたとでも言っているような、顔だった。 まぁ、確かにそうかな。 あたしはともかく、律子とナナは他のジムリーダーとよく会話してるから、この話も多分雑談に使われるんじゃないかな? この後、あたしたちは5人で歩き回りながら、綾香と香玖夜に説教を受ける羽目になった。 そんな蓮華たちが博物館の中を回っていた時だった。 ??:「今日もマスコミは多いな。…ん?…どうやら、ついにあいつらが出てきたか。」 野次馬に混ざり、一人の青年が博物館の周囲を歩いていた。 そして、窓に写る蓮華たちの姿を見て、こうつぶやいていたのだった。 ??:「俺としては会いたくない相手がいる場所だが、これから先、あいつらに会い続けることになるんだろうな。」 彼は林の中に入り、姿を消した。 数分後、近くを通った警備員が姿を消し、再び姿を現したが、その顔が少し若く見えた事に気づいたものはいなかった。 ??:「だが、誰がいようとも俺のやることには手出しはさせないぞ、蓮華。」 そしてそのまま、彼は博物館に入っていった。 そして、深夜11時50分をまわった。 あたしたちは固まってると能力者の存在として気づかれやすいので、バラバラになって怪盗が来るのを待ち構えていた。 その中で、最も頑張ろうと思っていたのは香玖夜だった。 彼女はナナシマ事件以降、能力者であることをクラスメイトにカミングアウトしたが、蓮華たちのおかげで今までと同じ生活を 続ける事ができていた。 その分の恩返しも兼ねているのだろう。 いつ来ても構わないわよ。 あたしの目は昼間みたいに見えてるから。 あたしはそう思い、太陽の石の置いてある場所のフロアで監視していた。 近くには警備員は二人。 でも、役には立たないだろうな。 今までだっていても意味がなかったらしいし。 そう思っていたら、突然警備員の片方が、何の前触れもなく倒れたのだ。 倒れていない警備員:「おい、しっかりしろ!」 香玖夜:「大丈夫ですか?」 あたしは駆け寄った。 倒れた警備員は眠ってるだけだったけど、あたしがこの階に来た時はそんな気配は全くなかった。 それに、彼らが眠たそうにはしていなかったし、今のは突然の出来事。 あたしは混乱しかけていた。 香玖夜:「一体どうして…」 走り出そうとしたあたしを止めたのは、倒れていない方の警備員だった。 倒れていない警備員:「君、私が彼を下の階に運ぶまで、ここで見張っていてくれ。」 香玖夜:「あ、はい。分かりました。」 あたしは警備員に言われ、彼を見送り、太陽の石を近くまで行って、しっかりガン見していた。 倒れていない警備員:「一体何故こいつは眠ってしまったんだ…。先ほどまでそんな様子じゃなかったというのに…」 別の警備員:「お疲れ様です。」 不思議がっていた彼は倒れた方を近くの椅子に座らせ、再び元の場所に戻ろうとしていた。 そこへ。 警備員:「お疲れ様です、交代の時間です。」 他の警備員がやってきた。 しかし、今が交代の時間ではない事は確かであり、交代制でもないのだ。 倒れていない方はすぐに偽警備員と感じて掴みかかろうとしていた。 だが。 警備員:「遅いな。」 倒れていない方の警備員の眼前から彼の姿は消え、後には脱ぎ捨てられた制服が残っていた。 そして、振り替える間もなく首に痛みを感じ、彼はその場に横たわっているのだった。 警備員:「残念ですが、あなた方がいると邪魔なのでね。」 香玖夜:「おかしいわ。すぐに戻ってくるはずなのに…」 警備員が戻ってこないため、あたしは一度階段の近くまで行こうとしていた。 その時、壁のポスターが一瞬ぶれたのを感じ、じっと見ていた。 すると、何かが張り付いていて、その場で動くのを見たのだ。 香玖夜:「そこね!」 あたしはボールを取り出そうとした。 その時だった。 ??:「させないよ、お嬢さん。」 突然背後に気配を感じ、振り替える間もなく、口を何かでふさがれた。 意識が遠ざかってくる…、クロロホルム…? その時あたしが遠ざかる視界の中で見たのは、銀髪の後姿だった。 時刻は深夜11時59分だった。 ??:「ふぅ、これで終わりだな。」 しかし、彼の計算は少し誤っていた。 展示場で青年が石に手をかけたのと同時刻、彼の気配を感じ取ったものがいたのだ。 それは、この建物の一階にいた。 ソルル:「ソルル、ソル!ソル!」 あたしのボールから、突然ソルルが飛び出してきた。 時刻は後数十秒で0時を回る時だった。 蓮華:「ソルル、どうしたの?」 キレイハナ:「蓮華、何かあるって!ソルルが何かを感じたみたい!」 ソルルは危険な事や何かが起きる時を予知できるのだ。 もしかしたら、太陽の石に異変が起きたんじゃ…。 蓮華:「二人とも、ついてきて!」 あたしはキレイハナとソルルと一緒に、展示場に向かった。 すると、階段近くの救護室内に二人の警備員が倒れていて、踊り場には香玖夜の姿があった。 3人とも気を失っていたし、警備員二人は両手、両足を縛られていた。 そして脱ぎ散らされた警備員の制服も落ちていた。 キレイハナ:「嘘、いつの間に…」 蓮華:「香玖夜が気を失ってるなんて…」 あたしは、香玖夜ほどの能力者がやられたことに一番驚いていた(既に警備員の実力は眼中になし)。 キレイハナ:「それにこれ…、いつの間にか潜入してたんだね。」 蓮華:「うん。…キレイハナ、ソルル、この人たちや香玖夜を助ける必要もあるし、ナナたちに知らせて。」 キレイハナ:「分かったわ、蓮華、早く行って!」 あたしはソルルとキレイハナにナナたちに知らせるように言うと、そのまま展示場に入った。 するとそこには、太陽の石を手に取った青年の姿があった。 蓮華:「待ちなさい!」 あたしが叫ぶと、声に反応したのか、青年は振り返っていた。 そして、ちょうど午前0時を回った。 設置された警察のサーチライトが展示場を明るめに照らし、あたしは青年の姿を見た。 銀髪に緑色のバンダナを巻き、顔は白い布で覆っていて、目しか見えないけど、目の色は淡い青色だった。 そして黒いパンツに黒のタンクトップらしき服を着て、黒い革靴を履き、白衣のようなものを肩においていた。 青年:「まさか、もう気づかれるとは思わなかったな。」 蓮華:「あなたが…怪盗…?」 あたしは涼治っていう彼氏がいるのにもかかわらず、彼に対してほのかな感情を抱きかけていた。 心が熱くなるのを感じる、人を好きになる時と同じ感覚がした。 青年:「そうだよ。はじめまして、僕は怪盗クールナイト。お嬢さん、君のハートも盗んであげようか?」 蓮華:「//////…馬鹿にしないでよ!ちょっと、盗みはいけない事なのよ!それを元の場所に返して!」 あたしは一瞬、「はい」って言いそうになり、我に返って正論をぶつけた。 しかし。 青年:「悪いが、それはできないね。これは僕が貰っておくよ。」 彼は肩にかけていた白衣を着て、石を内ポケットに滑り込ませた。 クールナイト:「お嬢さん、少しは女らしくした方がいいと思うよ。そうしたら、僕が彼氏になってあげるからね。」 蓮華:「な、何であなたにそんなことを言われなきゃいけないのよ!結構よ!」 つい彼の言葉に反応してしまうあたし。 そのあたしの様子を彼は面白がってみていた。 クールナイト:「そうかな?まぁ、いいだろう。お嬢さん、また再び君とは出会いがありそうだね。」 彼は窓を開けた。 そして。 クールナイト:「それじゃ、またどこかで会おうか。アディオス。」 彼が指を鳴らすと、小さな吹雪が起こり、紙吹雪がそれと共に舞った。 蓮華:「目くらまし!?待って!」 追いかけようとした。 でも。 あたしが視線を反らした一瞬のうちに、彼は姿を消していた。 ナナ:「蓮華!」 キレイハナ:「蓮華、大丈夫?」 我に返った時、周囲には紙吹雪と、『石は頂きました、アディオス』と書かれたメモが散らばり、あたしは紙吹雪だらけの状態で、 その場に立ち尽くしているのだった。 その数時間後、博物館からハンググライダーが飛んでいくのを野次馬が見かけた。 野次馬A:「ここは俺の飛行ポケモンで追ってやるぞ!オオスバメ、行け!」 数人の野次馬が怪盗を捕まえようと、飛行ポケモンを出して尾行を始めていた。 だが、誰一人最後まで追う事はできなかった。 なぜなら…。 クールナイト:「今宵の僕の仕事は全てパーフェクトに終わる。君たちには用はないよ。」 彼の言葉と共に、飛行ポケモンたちに雷が落ち、全てが撃ち落されたのだった。 そして、誰一人として彼を捕まえられなかったのだった。 ナナ:「蓮華と香玖夜ちゃんで失敗するとはね。」 律子:「あたしも意外だよ。」 綾香:「それで、どんな人だったの?会ったんでしょ?」 香玖夜:「あたしも聞きたいな、銀髪だった事しか分からないし。」 あの後は大変だった。 マスコミとかが駆けつけるし、あたしはナナのケーシィのテレポートで逃げなかったらマスコミに囲まれてたと思う。 そして次の日の新聞で、『ポケモンリーグ優勝者、怪盗に敗北!』って書かれてたと思う。 香玖夜は薬で、警備員は催眠術で眠らされていた事が分かった。 香玖夜の言葉で、あの場所にポケモンが潜入し、警備員を眠らせていた事も明らかになっていた。 また、林の中で気を失った下着姿の警備員も見つかったらしい。 あたしは一応見たままを伝えたけど、何となく、胸の奥に抱いた感情を考えずにはいられなかった。 クールナイト…、あなたは一体誰なの?何者なの? また、会えるのかな…?クールナイト。 クールナイト:「またどこかで会おうか。」 彼の言葉が実際に起きそうな気がした。 多分、また会える。 あたしもそんな気がする。 ??:「蓮華とやりあうことになるとはな…これから先、残りを探すのは難だと思う。」 ??:「でも、あなたにしかできないことなの。」 ??:「だからあなたにお願いしているの。」 ??:「これからもお願いね、クールナイト。」 クールナイト:「分かったよ、フラウ、アクエリ、スノウ。残りも早く見つけ出すとするかな。」 フラウ:「それまでは、あたしたちがあなたのサポートをし続けるわ。」 アクエリ:「あなたの正体が知られないために。」 スノウ:「そして、混沌の世界が生まれないために…。」 クールナイト:「そして…誰もが傷つかない、幸せが壊されない世界にするために。傷つく人間は俺だけで十分だ。」