双葉:「みんな揃ってくれた?」 双葉さんの招集であたしたちは龍宮神社に集まった。 けど、ここに集まっていないメンバーも何人かいる。 蓮華ちゃんは清香が看病していてここにはいなく、なずなちゃんの家も滅茶苦茶にされた状態で警察が捜査している状態だった。 しかも、涼治君もまだ家に帰っていない上に、泉さんや雪美ちゃんとの連絡も途絶えていた。 それ以外は、仕事を終えたばかりの菜々美ちゃんも含め、全員集まっていた。 今回初めて、ポケモン世界にいたナナちゃんも呼ばれてきていた。 でも、ほとんどのみんなが何故招集されたのかは分かっていなかった。 分かってるのはクールナイトの正体を知っているメンバーだけだった。 来美:「いきなり集められた理由は何なんですか?」 哲也:「平日の深夜にいきなりの召集って、事件以外の何ものでもないと思うんですよね。しかも蓮華もいない。」 美香:「なずなや涼治君もいないなんて…」 双葉:「それなんだけど、その二人が事件に巻き込まれちゃったのよ。それで蓮華ちゃんも被害を受けて、今清香ちゃんが看病してくれてるの。」 哲也:「蓮華が!?」 ナナ:「一体何が起きたんですか?あたしがこっちに呼ばれることも驚きなんだけど。」 律子:「なずなの家が荒らされて、なずなの行方が分からなくなった事も気になるし…。」 健人:「なぁ、海斗。お前は理由知ってるのか?」 海斗:「あ、ああ。あのさ、双葉さん、こういうことは早めに言ったほうがいいんじゃないか?」 双葉:「そうね。」 双葉さんに視線が集中していた。 怪盗編 7.知らされた真実!蓮華の決意 双葉:「実はね、今まで怪盗がいたでしょ?あたしと、ここにいない泉と雪美、その怪盗のサポートをしてたの。」 一瞬、間が開いた。 シ〜ンとしていた。 そして。 哲也:「双葉さん、どういうことなんだよ!」 健人:「今まで俺たちを騙してたのか?」 哲也や健人は案の定、怒っていて、他のみんなも似たような感じだった。 来美:「ちょっと二人とも、落ち着いたら?双葉さん、理由を言ってよ。どうして怪盗が現われたのか、サポートをするきっかけになったことも含めて。」 でも、来美先輩は違い、こう言い放っていた。 双葉:「そうね、それじゃ話すわ。」 双葉さんは話してくれた。 ナナシマ事件の時にドリームが飛ばした黒い物体が、様々な物体に飛んでいたということ。 その黒い物体は黒い種のようなもので、それが取り付くことで、人間が豹変したり、ものが周囲を不幸に巻き込んでしまうらしい。 さらに、それが発芽すると、それはドリームの分身として復活し、ドリームが再来してしまうからだと言った。 双葉さんたちがうっかりそれを行って、妖怪たちの力で何とか倒した事も。 双葉:「そして2つ目の種を見つけたときだったの。あたしたちは、ある人がその種を手に触れただけで消滅させた姿を見たの。 だから、その人に種を集めて消滅させる事を頼んだの。それが結果的に、怪盗になったの。」 ナナ:「それじゃ、あたしのアクセサリーが取られた事も、最近彼氏が電話をくれるようになった事と関係してたの?」 双葉:「ええ。そのアクセサリーに種ではなかったけど、種の波動に似たものがあったのよ。多分、一度取り付いて、別に移ったのよ。 でも、波動が憑いてた事でナナちゃんに不幸を与えていたのよ。」 律子:「それで、誰なんですか?その怪盗って言うのは。」 律子ちゃんが聞いたけど、こんな話をしていて、ここにいない人物がそうじゃないかって、既に周囲はそんなことを話す雰囲気に変わっていた。 美香:「もしかして…」 海:「そのもしかして、よ。あたしも知ってるの。」 そして、海ちゃんがカミングアウトをし、双葉さんが言う前に、みんなが次々とカミングアウトをし、 周囲はさらに混乱した空気に変わっていた。 美香:「えっ?」 菜々美:「実は、あたしも。ゴメンね、健人。ちょっと言えなかったんだ。」 健人:「菜々美…」 小麦:「あたしも海から聞いて知っていたわ。」 刹那:「私もだ。」 志穂:「あたしは前から気づいてたわ。だから傍観してた。」 綾香:「それじゃ、どうしてあたしたちに教えてくれなかったの?」 香玖夜:「ナナシマ事件の煽りなら、ここにいる全員が関わっている事じゃないの。あたしたちが知ってもよかったのに。」 ヤツデ:「怪盗の正体って…」 晃正:「俺を避ける時にあのステップ…」 浅香:「涼風の力…」 双葉:「もう分かってると思うけど、怪盗クールナイトは、涼治君よ。ちなみに、チェリーナイトは蓮華ちゃん。今回の召集は、なずなちゃんが 何かのきっかけで黒い種に飲み込まれてしまったの。多分、取り付かれたの。そして、涼治君がやられたの。そして、二人によって蓮華ちゃんがやられた。 監視についてた泉や雪美までもね。こうなった限りでは、あたしたちだけで動くわけには行かないってことになって、あたしや海ちゃんたちも、 蓮華ちゃんに真相を聞いた玲奈ちゃんたちも、同じことを思ったの。」 玲奈:「そう。あたしたちも数時間前に蓮華ちゃんが話してくれたんだ。だから知って、みんなに話して、みんなで何とかしたほうがいいって思ったの。」 あたしと双葉さんの言葉に、ここに集まったメンバーは何も言えなくなっていた。 結局は涼治君に騙されていたわけでもあり、蓮華ちゃんや海ちゃんたちが知っていて、それを打ち明けなかった事もあり、色々な面で重なっていて、 言いたい言葉が見つからない、無言が続く雰囲気だった。 そんな時、双葉さんは話してくれた。 涼治君が怪盗を始めた日に起こしてしまったミスを。 双葉:「これがきっかけで、彼はみんなが敵になっても、怪盗を続けようと思ったのよ。でも、一時期哲也君にバレかけたときは、かなり悩んでたわ。 あたしもあの時、あの場所で見てたから。」 哲也:「涼治が…」 晃正:「そうだったんですか…。」 菜々美:「アレを聞いちゃうとね、邪魔しちゃいけないんだなって思ったの。だから、健人にも言えなかったわけ。」 双葉:「涼治君は真剣だったわ。だから、誰にも言わないようにして、一人で行おうとしてた。偶然こっちで立て続けに種の可能性があるものが確認されて、 それで蓮華ちゃんや海ちゃんたちにはバレてしまったけどね、蓮華ちゃんがチェリーナイトになったときも、涼治君はつらい思いをさせたくなくてわざと 突き放してたくらいだもの。でも、アレで溝が出来かけちゃったけど。」 海:「だからあたしたちが後押ししたの。蓮華と涼治君が別れてほしくなかったから。でも、あたしたち、忘れてたのよね。 涼治君に恋をしていたのは蓮華だけじゃなかった事に。」 美香:「それが…なずなだったっけ…」 ナナ:「う〜ん、そういえばヤマブキの時に…」 美香:「そうだよ。敵として出てきて、涼治君と恋人になってた事があったもんね。」 綾香:「なずなが黒い種に取り付かれた原因って、それなの?」 香玖夜:「多分、それも原因の一つじゃないかしら?ドリームは人の悩みや心の弱い部分を突くから。一志がそうだったみたいに。」 一志:「だな。俺の悩みにあいつは突いてきた。」 秋一:「俺もあいつにそこを突かれたんだよな。あいつは人の悩みを見抜けるから。無意識のうちに心に入ってくるし。」 来美:「…それで、これからどうするの?話を聞いてる限りだと、連絡を取れなくなったことで泉さんと雪美ちゃんも敵に回った可能性があるわ。 そのうえ、こっちで確認できないってことは、ポケモン世界に行った事も考えられるし。あたしたちで向こうに行くべきなのかしら?」 双葉:「それが一番かもしれない。でも、今日の召集は、これだけよ。一晩考えて。もしかしたらこの戦いでナナシマの事件は本当に終わらせられるとしても、 黒い種にやられたなずなちゃんは心が壊れてしまうかもしれない。涼治君も。 それに、泉と雪美が敵になったことで、あたしたちが命を落とす危険性もあるわ。ドリームは、あたしたちに封印されたでしょ? あたしたちを恨んでるわ。それもあって、本当に参加するかどうか、それは明日の昼3時にここに来る事で教えて。 別に来なくてもいいわよ。来るのは強制じゃなくて、自分の意志だから。」 双葉さんはそう言うと、姿を消した。 そして、呆然とした表情で、一人、また一人と、みんな、自宅に戻っていくのだった。 残ったのは、あたしと、哲也と、志穂ちゃんだけだった。 玲奈:「二人はどうするの?行く?行かない?」 志穂:「あたしは行くわ。心に憑いた闇でも、怨念を払えるあたしがいたほうがいいでしょ?あたしは傍観していたから。その分、動かなきゃね。 何とかしたいとも思うしね。」 でも、哲也は何も答えなかった。 玲奈:「哲也?」 哲也:「ゴメン、俺、もう少し一人で考えるよ。」 玲奈:「やっぱり、涼治君の事…」 哲也:「ああ。あいつが俺に黙っていた事も許せない。あいつがミスした事を聞いても、俺たち仲間に打ち明けなかった事は許せないからな。 でも、それであいつが倒れたら、蓮華もきっと悲しむ。それを考えるとまだ、決められないんだ。」 玲奈:「そう、分かったわ。あたしは行くから。明日、ここで待ってるね。でも、来なくても別れたりはしないから。だって、強制じゃないもん。」 そう言って、二人と別れた。 明日の3時、どれくらいのメンバーが集まるのかな? その頃、ポケモン世界では奇妙な事が起こり始めていた。 カントウ中を暗雲が立ち込め、覆い尽くそうとしていたのだ。 そして、クチバシティの海に、突如貝や珊瑚で作られたと思える城が出現し、港から出ようとする船を閉じ込めるように存在していた。 同時刻にハナダシティに氷の城が、タマムシシティに植物の城がそびえ立っていた。 二つの城は地面から沸き立つように出現し、周囲の民家や建物を破壊した状態になっていた。 さらに、ヤマブキシティのビル街が空から飛来した暗雲に包まれ、異形の、城のような、宮殿のような建物に姿を変えていた。 ポケモン警察はすぐに城に潜入しようとしたが、どの城も侵入者を受け付けないほどに警戒しているのか、人が近づくだけで様々な攻撃を仕掛けていた。 ナナ:「あの中に…なずなちゃんたちはいるのね。」 律子:「多分。植物の城は誰も反応がなかったけど、でも、もし、あの種に心を取られてしまって入りそうなのは一人いるわ。」 ナナ:「蓮華ね。」 律子:「ええ。あたしは明日のあの場所に行くよ。」 ナナ:「あたしも。この世界で起きた事を終わらせられるなら、あたしは絶対に行く。」 あたしもナナも、蓮華と涼治君が怪盗だったことはショックだった。 でも、何となく、二人の気持ちが分からないわけでもなく、何とかしたいと思ってた。 ナナ:「何とかしようね。」 律子:「うん。」 清香:「そう、それで海斗はどうする?」 あたしが蓮華ちゃんの話し相手になっていたとき、海斗は戻ってきた。 そして、神社での話をしてくれた。 海斗:「俺は行くからな。清香も行くだろ?」 清香:「ええ。でも、蓮華ちゃんはどうする?」 あたしも海斗も何か出来る事があればしたいって気持ちで行こうと思っていた。 でも、蓮華ちゃんは黙ったままだった。 あの涼治君の行為が操られたからだったとしても、なずなちゃんが黒い種に取り込まれたとしても、再びあのような姿を見せつけられたのだ。 何も言えなくてもしょうがないのは分かる。 蓮華:「あたしは…もうちょっと考える。今すぐには…決められないから。」 そう言うと、蓮華ちゃんは寝てしまっていた。 結構精神的につらいんだろう。 だから、眠ってしまうんだと思う。 寝顔は安らかだったけど、心の中は暗雲が立ちこめた状態だろうなぁ。 美香:「ひどいよ、あたしに黙ってるなんてさ。」 海:「言うに言えない状態だったのよ。美香だって、あたしの立場だったら言ってないでしょ?」 美香:「そうかもしれないけど…」 でも、黙ってるのはズルイ。 あたしだって蓮華の親友だし、親友のあたしとなずなに理由を教えてくれてたら、こんな事は起きてなかったと思う。 海:「こうなっちゃったのは確かにあたしにも責任があるけど、こうなってしまった以上、あたしたちの手でなずなを元に戻すのよ。」 海はそう言いながら、目線を下に下げた。 あたしたちは実は空中にいた。 プータルに乗った状態で。 あたしたちが見ているのは、なずなの家だった。 普段なら綺麗なのに、所々を黒ペンキで汚され、窓ガラスが全て割られ、室内もかなり滅茶苦茶になっている。 そして、なずなの部屋が一番破壊されつくしている。 海:「破壊を好まないのがなずなだよね。」 美香:「うん、能力者の中で戦いを好まないのがなずなだもんね。空気属性だった事が分かっても、戦いには参戦してこなかったし、 いつもテレポート能力であたしたちをサポートする事しかしてなかったもんね。」 海:「でも、怒った時だけはあのものすごい攻撃力を出すけど…。」 美香:「うんうん、…海、頑張ろうね。」 海:「そうね。」 家の窓には珍しく、なずなのお父さんとお母さんの姿があった。 いきなりこんなことになって、慌てて出張や研修から帰ってきたらしい。 なずなは唯一能力者であることを大人に知られていない能力者だから、どうしてなずなが行方不明になったのか、分からないはず。 でも、限度はあと3日ね。 あたしたちも向こうに行くから、向こうに行ってる一週間(現実世界では約3日ほど)の間になずなを元に戻さなきゃ、多分能力者であることも バレる。だって、あたしたちも姿が見えなくなるから。 あたしたちが、能力者メンバーがそろっていなくなれば、なずなや涼治君の事でも怪しまれるもの。 そして次の日。 志穂:「どうなるかと思ったけど、結局蓮華ちゃん以外は集まったわね。」 美香:「蓮華ったら、一体どこに行ったのよ。」 来美:「家にも戻ってこなかったのよね。」 律子:「ポケモン世界にも来てなかったよ」(←一晩中向こうにいた) ナナ:「向こうでは謎のお城が出現して、周囲にいる人たちが次々に原因不明の病で倒れているの。」 哲也:「それが黒い種の力、ドリームの力なのか?」 一志:「多分、そうだろうな。」 香玖夜:「ええ、そうね。」 綾香:「黒い種の力が集まり、ドリームの力が集まったのかもしれない、か…。」 浅香:「頑張るしかないですね。」 玲奈:「みんなの力をあわせて。」 龍宮神社には蓮華を除く能力者が揃い、双葉の開いたゲートを使い、ポケモン世界に向かうのだった。 その頃、その蓮華はといえば…。 既にポケモン世界にいた。 キレイハナ:「みんなに行ってこなくてよかったの?」 蓮華:「うん。涼治はあたしの大事な人だし、なずなはあたしの大事な親友だもん。あたしがみんなを戻したいの。 チェリーナイトとして、ね!」 キレイハナ:「全く、昨日の夜ず〜っと寝込んでたくせに。いきなり元気になっちゃって…。」 キレイハナはすごく怒ってるっぽいけど、実際は喜んでるのがよく分かった。 あたし、泣いてばかりはいられないんだよね。 嫌な事や悲しい事だって、ポケモン世界でたくさん経験してて、いつの間にか、ちょっと心が強くなってたのがあたしだった。 そして、色々考えてるうちに、何回も洗脳されたり捕まったりしてドジを踏みまくってる涼治に、すごく腹が立ったのだ。 こうなったら一発ぶちかましてやんなきゃね。 あたしの事が好きだって、考えてるから怪盗のサポートはさせたくないって言ってたくせに、どうして簡単に黒い種に負けちゃうのかな? つらくさせたくないんだったら、こんな事になるなって言うのよ。 蓮華:「行くよ、キレイハナ。」 キレイハナ:「ええ。」 あたしたちはトロに乗り、ヤマブキシティに向かった。 でも、あたしはタマムシシティに舞い降りていた。 植物で出来た城に目が向いたのだ。 蓮華:「トロ、戻って。…まさか、こんなものがあるとはね。」 キレイハナ:「あたしたち、ここに引き寄せられちゃってた?」 蓮華:「いいえ、あたしが何かを感じたの。もしかしたらここに、涼治がいる気がするから。」 キレイハナ:「えっ…?でも、いたとしても、どうして分かるの?」 蓮華:「う〜ん、愛の力って奴かな?」 キレイハナ:「…愛か…。まだ経験した事ないし…。」 あたしたちが茂みでこそこそ喋っていると、そこに誰かがやってくる気配がした。 今あたしはこっちの世界では初披露のチェリーナイトの姿をしているんだけど、見つかったらやばい事には変わりない。 蓮華:「そこにいるのは誰?」 あたしはこうなったら戦ってでも、と思った。 今は手段を選んでるわけにも行かないから。 しかし、茂みから出てきたのは知っている人だった。 ??:「蓮華さんじゃないですか、どうしたんですか?このような場所で。」 そこにいたのは、タマムシジムのジムリーダーのエリカさんだった。 蓮華:「エリカさん…」 キレイハナ:「そちらこそどうしてここに?この街の人はもう避難し終えてるはずよ。」 エリカ:「ええ、このお城のような植物が現われてから、町の人々も苦しみだし始めました。しかし、植物を愛するエキスパートのあたしには、 この植物が放つ異臭は効かなかったのですわ。だから様子を見ながら、町の見回りを行っているのです。」 蓮華:「そうなんですか…」 あたしはエリカさんなら信じてもいいって分かってるので、今回の事件の事情を話した。 エリカ:「そうでしたの…。蓮華さん、実はこのお城に唯一は入れる場所がありますの。案内しますわ。この事件を解決できるのは、多分あなただけ でしょうから。」 蓮華:「ええ。」 あたしはエリカさんの案内で、タマムシホテルに入った。 そこは建物の半分が植物の城と融合したらしく、植物の城の中に入れるのが分かった。 蓮華:「ここから入れるのね、エリカさん、ありがとう。」 エリカ:「どういたしまして、でも、蓮華さん、一つだけお願いがありますの。よろしいですか?」 蓮華:「何ですか?」 エリカさんはあたしの目の前に立った。 何か様子がおかしい。 すごく嫌な予感がするって感じた時だった。 エリカ:「死んでください、ね!」 エリカさんはモンジャラ、ウツボット、ラフレシアと一緒に襲い掛かってきた。 蓮華:「嘘!?エリカさん、やめて!」 キレイハナ:「うわっ、ちょっとあんたたち、何すんのよ!」 エリカさんはあたしに日本刀を向けているし、キレイハナも3匹のポケモンの攻撃に避けるのが精一杯だった。 エリカ:「やめませんわ、この植物のお城は私のお城ですもの。私はこの植物の城の女王、フローラ。ドリームの放った黒い種の一人ですの。 この女性は植物を愛していましたから、あたしの力で押さえ込むのはたやすかったですわ。黒い種の中で、植物系の力を持つあたしなら。」 黒い種にも色々な種類があるらしい。 多分、なずなに取り付いたのが偶然ドリームの分身になれる種だったとしたら、雪美さんや泉さんには水や氷の力を持った種が取り付いてるってことなの? でも、今はその疑問を解決する事は出来なかった。 あたしの植物の攻撃は、全て日本刀に寸断されてしまうのだから。 こうなったら! 蓮華:「本気でやるしかないわね。チリリ、よま、きっぴー、キレイハナのサポートよ!出でよ、プラントロッド!」 能力者にはそれぞれ、一応それなりの武器がある。 普段は戦いでも能力だけで十分だし、今までだってこの武器を使った事は数回しかないけど、日本刀相手に能力だけっていうのは分が悪い。 ロッドを利用して、日本刀に対抗していくあたし。 目を横に向けると、チリリとよまがモンジャラを、きっぴーがウツボットを、キレイハナがラフレシアを追い詰めてるところだった。 エリカ:「あらあら、どうしてそんなに強いのですか?」 蓮華:「強いわよ、あなたとここで遊んでるわけには行かないんだから!」 あたしは片手でロッドを持ち、エリカさん(フローラ)の眼前で指を鳴らした。 すると、そこから花びらがどっと出て、流石の彼女も驚き、隙ができていた。 蓮華:「チャンス!我が力よ、悪しき心を浄化せよ!プラントマジック、花びらの舞!」 ロッドから大量の花びらが放出され、エリカさんが包み込まれ、そこから黒い煙が放出していた。 それは、植物の城の中に入っていくのが見えた。 キレイハナ:「蓮華、こっちも終わったよ。やっぱり、草の力では黒い種の力は消せないみたいだね。」 蓮華:「うん。…でも、やりすぎじゃない?」 蔓の鞭で雁字搦めになり、目を回して伸びているラフレシアに、丸焦げのウツボット、体の蔓が滅茶苦茶に伸びきった状態で所々を焦がしているモンジャラ。 キレイハナ:「あたしに乱暴した報いよ。いいじゃない、少しくらい。」 蓮華:「…そうかもね。」 キレイハナが本気で怒ったのがよく分かった。 でも、ここでこうしているわけにも行かない。 あたしは4人をボールに戻して、植物の城の中に入っていった。 ただ、その前にポケギアが鳴ったのでした。 相手は、哲兄から。 哲也:「蓮華、お前やっぱりここにいたんだな!」 蓮華:「うん。涼治はあたしが何とかするから。雪美さんと泉さんの方、お願いってみんなに言っておいて。」 哲也:「おい、蓮華!」 美香:「蓮華、一人で行っちゃ駄目だよ!」 志穂:「単独行動が危険を生むって言ったほうがいいかしら?」 綾香:「あたしたちに何も言わないなんて、あたしたちを信じてない証拠に感じるけど?」 蓮華:「みんなまで…。ゴメンね、何も言わなくて。でも、涼治はあたしが何とかしたいの。1発ぶん殴らなきゃ気がすまないし。 だから、あたしに任せて。チェリーナイトの仕事よ。それに、予告状、久美ちゃんのショルダーに入れてあるから。」 久美:「えっ?あ、いつの間に!」 『親愛なる能力者の皆様 今宵、クールナイトの心はチュリーナイトが癒します。手は出さないでくださいね! 怪盗チェリーナイト』 蓮華:「そういうわけだからね。」 海:「蓮華、待って!」 蓮華:「何?」 海:「…何を言っても無駄みたいだし、頑張ってね。あたしたちは死ぬ気で強力な2大妖怪に喧嘩売ってくるから。 蓮華も早く来てよね。」 蓮華:「O.K!了解、任せてよ。」 あたしはそこで電話を切った。 哲兄の悲痛な声が聞こえてたけど…。 そして再びかかってくる電話…。 うざいわね。 ボキバキボキッ! キレイハナ:「れ、蓮華…」 蓮華:「ん?何?」 キレイハナ:「べ、別に…(ポケギア握りつぶすなんてあたしよりも滅茶苦茶じゃないの…)」 蓮華:「それじゃ、行こっ!」 あたしはキレイハナをもう一度ボールに戻し、植物の城の中に入っていった。 涼治、あたし、絶対に元に戻すからね。 待っててよ、首を洗って。  『オマケ』 ??:「どうやらカントウに不穏な動きがあるようだな。」 ??−?:「あの、俺、行ってきてもいいっすか?」 ??:「…ああ、ただし帰ってきたら…」 ??−?:「分かってますよ。特訓は頑張ってやりますから。」