審判:「コータス、ベトベトン、戦闘不能!よってこの勝負、ジムリーダー、ナナの勝ち!」 トレーナー:「そんなぁ…。」 ナナ:「炎タイプと毒タイプで虫タイプに軽々と勝とうなんて、まだまだ甘いわよ。出直してきなさい!」 ナナシマでの事件や怪盗騒ぎで遅れ、たまっていたあたしのジムリーダーとしての仕事がようやく終わった。 あたしに挑戦に来ていた100人のトレーナーはほとんどが炎タイプ、毒タイプ、岩タイプのポケモンしか持っていなくて、 毒タイプを兼ねているモルフォンのサイコキネシスや、水タイプの攻撃が可能なバルビーとイルミー、草タイプの攻撃が可能な アゲハントたちだけで、十分に相手が出来て、一度に5人と対戦もしたけど、あたしの楽勝だった。 そんなあたしのところに、体の太いある人物がやってきた。 ??:「よお、盛況のようだな。」 ナナ:「ええ、でも、あなたのお眼鏡に叶うようなトレーナーはゼロよ。今日来た人たちはみんな、ポケモンリーグ途中敗退の トレーナーばかりだったし、あたしのポケモンに一発でも攻撃を入れられた人はいないんだから。」 ??:「そうか、それは残念だな。だが、もうすぐ始まるアクアカップでは俺がスカウトできる奴が出てくるよな?」 ナナ:「いるんじゃないの?ていうか、とっくにスカウト予定の人がいるでしょ?あたしの知り合いの中に山ほど。」 ??:「ちぇっ、お前には負けるなぁ。ああ、お前の知り合いのほとんどは俺のスカウト予定者だ。悪いか?」 ナナ:「別に。ただ、どうしてスカウトしないのかなぁって思って。」 ??:「そんなことか。アクアカップに出てくるだろうと思ってな、始まるのを待ってるだけだ。」 ナナ:「そう。」 彼はあたしとちょっと話すと、すぐに帰っていった。 ナナ:「それにしても、今年のアクアマスターになるのは誰なのかしら…。」 前回ダブル優勝のカスミちゃん、ツバキちゃんに続くようなトレーナー。 蓮華や海斗君たちがなるのかな? 渦巻き編 1.大会への準備!アクアカップに備えて… 綾香:「アクアカップ?」 蓮華:「うん、夏休み最後の思い出作りとして出場しない?最低でも水ポケモンを2体持ってれば予選出場可能だし。」 浅香:「先輩は出場するんですよね?」 蓮華:「そうよ。どうかな?今のところ、出場するのはあたしと来美ちゃん、海斗先輩とヤツデ君の4人なの。ナナが言うには、 ヒカリちゃんも出るって言ってるみたいだし、綾香たちはどうかなって思ってね。」 向こうではあと一週間。 こっちでは後3日で、ポケモン世界でのアクアカップが始まる。 水系ポケモンのトレーナーである来美ちゃんたちはもちろんのことで、あたしも7人の絆と一緒に出ようと決めていた。 でも、人は多いほうがいいなぁって思ったから、みんなに声をかけてみたのだ。 玲奈先輩や海ちゃんも出ようかどうかを考えてるらしい。 綾香に声をかけたのは、ペリッパーとミロカロスを持ってるからだった。 蓮華:「どうかな?」 綾香:「そうだね、それじゃ、出てみようかな。」 浅香:「ヤツデ君とバトルすることになっちゃったりして…」 綾香:「それは…考えたくないかな…」 蓮華:「ふふふ…、ホントだね。」 あたしの水ポケモンは、ギャラドスのコイッチ、サニーゴのサゴッピ、トドクラーのタマちゃん、アズマオウのぎょぴ、 ドククラゲのメノノ、サクラビスのパル、ミロカロスのアクアという面々。 電気タイプ、草タイプをかねた水タイプが相手でも、メノノには電気タイプの攻撃は効果ないし、何とかなるかもしれないとは思ってる。 でも、あたしは生粋の水系タイプのエキスパートじゃないし、ちょっと心配な面もある。 蓮華:「みんなを誘ってみたけど、どうしたものかなぁ…」 ミューズ:「う〜ん、そう言われるとそうなんだよね。特訓して、水タイプ以外の技も使える様になったけどさ、どうなるかは バトルをやってみないと分からないもんね。また、誰かゲットするつもりなの?」 蓮華:「それを迷ってるのよ。」 ミューズ:「いいんじゃないの?別にパルたちもさ、仲間が増えても別にいいって言ってたし。」 蓮華:「そう?それじゃ、ゲットしようかな?」 美香:「ポケモンを貸してほしいって?」 突然訪ねてきた海ちゃん。 何かなぁって思ってたら、返ってきたのがこの一言だった。 海:「うん…。駄目?」 美香:「いいけどさ、海ちゃんもアクアカップに出るの?」 そういえば、海ちゃんが大会に出るのはこれが初めてなんだよね。 ちょっと珍しいかな。 海:「うん、キングドラと一緒に。でも、あたしのポケモンって元々2体だけで、キングドラとカポエラーしかいないじゃん。 だから、マリルリ貸してくれない?菜々美ちゃんのマリルリとホエルコはもう他の人が借りちゃったんだ物。」 美香:「えっ?誰?」 海:「玲奈先輩。」 美香:「…ふぅ〜ん。」 玲奈先輩なら納得かな。 先輩はパルシェンとサクラビス、ハンテールを持ってたっけ。 水ポケモンが最低2匹いれば出場可能だし、それに、アクアカップのバトルでは最高でもポケモン2体でのバトルしかないのだ。 そうなると、2匹だけのポケモンで勝ち抜いていけば、自ずから攻略法や弱点を他のトレーナーに読まれてしまうこともあり、 少しは多めに水ポケモンがいたほうがいいんじゃないかって思われてたりもする。 美香:「分かった。いいよ、マリルリ、海ちゃんと一緒に頑張ってきてね。」 ボールの中で会話を聞いていたマリルリをボールから出して、海ちゃんに託した。 マリルリも結構やる気だ。 元々、親しい仲なので、マリルリが海ちゃんの言う事を聞かないことはないし、大丈夫だろうな。 そして数時間後、綾香からの電話で、綾香も出場するという事を知った。 あたしの彼氏の翼先輩は出ないのかな? ためしに電話をしてみた。 すると。 翼:「アクアカップ?俺は出ないけど?」 美香:「え、出ると思ってたんだけどなぁ…」 意外な答えが返ってきたので驚いた。 一応、翼先輩は水翼の能力者、簡単に言えば、水と風の能力者で、水ポケモンも何匹か持ってた。 だから出ると思ったんだけど。 翼:「俺はさ、別に大会に出場したいとは思ってないんだ。」 美香:「そうなんんだ…。」 翼:「美香は出るのか?」 美香:「あたし?あたしも出ないよ。ただ、海ちゃんがあたしのマリルリで出るって言ってた。」 翼:「そうか。でも、今回も結構色んな奴が出るんだよな。」 美香:「えっ?」 翼先輩情報によると、海斗先輩や玲奈先輩以外にも、清香先輩も出るらしかった。 その3人に、蓮華と海ちゃんと綾香、来美先輩にヤツデ君も入れて、能力者は7人か。 どうなるのかな? またポケモンリーグみたく、混戦状態での大バトルになるような気がする。 でも実は、あたしが知らないだけで、まだ数人いた。 一応出るって決めたんだし。 でも、ペリッパーとミロカロスをずっと戦わせて、ポケモンセンターで元気になってもらうのもいいけど、疲労がたまるのは いけないと思う。 だから、もう少し仲間を増やすのが一番かな。 あたしの他のポケモンは、ニドクイン、マグカルゴ、ドクケイルの3人だし、トレーナーが普段持ち歩くポケモンの数を考えると、 後一匹分、開いてる。(ま、蓮華のような例外もいるけど。) というわけで、あたし、綾香は今ポケモン世界に来ていた。 ようするに、水ポケモンゲットのためだった。 綾香:「森の奥地には、結構強いポケモンがいるんじゃないかな?」 そう思って歩き続けて3時間。 こんなことなら、ヤツデと一緒に海に行けばよかったな。 ヤツデはラプラス達と特訓のために海に向かっていた。 海辺の方が、水ポケモンは多いと思ったけど、あたしは敢えて、森の中にいた。 すると、水ポケモンがたくさん泳いでる池を発見した。 綾香:「ラッキー!」 あたしは駆け寄ってみた。 が。 綾香:「トレーナーいるじゃん。」 そこには一人の少年がいた。 どうやら彼のポケモンのようだった。 ??:「ん?君は誰?」 綾香:「あたし?ちょっと水ポケモンを探しにきたの。あなたは?」 ??:「ああ、俺は水ポケモンを遊ばせに来たのさ。今度のアクアカップで頑張ってもらうためにな。」 綾香:「アクアカップ?あなたも出るの?」 ??:「そう言うとなると、君も出るのか?」 綾香:「ええ。でも、あたしの水ポケモン、二人だけなんだ。ずっと戦って疲れを溜めさせるわけにも行かないし、 3匹目がいたら少しは大丈夫じゃないかって思ってね。」 ??:「そうか。…なあ、俺と勝負してみないか?」 あたしは突然勝負を申し込まれた。 ??:「俺は水ポケモンのエキスパートを目指すコタロウっちゅうもんだ。使用ポケモンは2体。ただし、水ポケモン以外も 使う事は可能だからな。ここで倒れられちゃ、アクアカップには出られんからさ。」 綾香:「いいわよ。」 あたしはコタロウの勝負を買った。 売られた喧嘩は買うのが礼儀。 ただ、一瞬スペース団にいたコタロウの顔を思い出したんだけど、彼とは別人だってすぐに分かった。 コタロウ:「俺の一番手はこいつだ!ルンパッパ、行け!」 綾香:「あたしのポケモンはこの子よ、ドクケイル!」 コタロウのポケモンは水・草タイプのルンパッパで、あたしのポケモンは虫・毒タイプのドクケイル。 タイプ的に言えば、あたしのほうが有利だった。 でも、バトルではどうなるか分からない。 コタロウ:「ルンパッパ、肩慣らしの葉っぱカッターだ!」 綾香:「ドクケイル、きりもみ旋回で避けて毒針よ!」 葉っぱカッターは必ず当たる技ではないから、ドクケイルが避けたところでUターンしてくることはなく、毒針がルンパッパに 襲い掛かっていた。 でも。 コタロウ:「ルンパッパ、影分身で避けて池に飛び込め!」 影分身をしたルンパッパは、軽く毒針を避け続けながら池に飛び込んだ。 そして。 コタロウ:「ルンパッパ、自然の力だ!」 綾香:「ドクケイル、スピードスターで相殺するのよ!」 あたしはバトル経験が少ないから自然の力の効果を知らなかったので、必ず当たる攻撃で相殺しようとしていた。 そして、ルンパッパの放った攻撃はバブル光線だった。 綾香:「何だ、バブル光線か。すごいのが来るかと思ってた。」 あたしはひょうしぬけていた。 でも、それが間違いだったとすぐに知った。 コタロウ:「おいおい、姉さん、自然の力の効果が分かってないみたいだな。ルンパッパ、池の深いところでもう一回自然の力だ!」 ルンパッパは池の深い場所に潜っていった。 綾香:「またバブル光線でしょ?」 あたしは油断していて、ドクケイルに毒針を放たせた。 でも、ルンパッパが放ってきたのはとてつもない水流、ハイドロポンプで、毒針を軽く跳ね除けて、ドクケイルに襲い掛かっていた。 コタロウ:「そのドクケイル、もう戦闘不能だな。」 綾香:「ホントだ…、ドクケイル、戻って!」 コタロウ:「ルンパッパ、ウォーミングアップは終わりだから戻っていいぞ。次はこいつで行こうかな。ヌオー、行けよ!」 あたしがドクケイルを戻し、相手を決めていたら、コタロウはクールに振舞いながらヌオーを投入してきた。 ヌオーは水・地面タイプで、スピードが遅いポケモンだけど、強さは並じゃない。 でも、草系の技も使えるドクケイルが倒れちゃった今、炎や地面タイプではヌオーの相手は出来ない。 ここはあたしのアクアカップでの練習も兼ねて、ミロカロスかペリッパーを出す以外にはなかった。 コタロウ:「どうしたんだ?もう終わりなのか?」 綾香:「まさか!終わりじゃないわよ、行きなさい、ペリッパー!」 ヌオーが地面タイプの技を使ってくる事も考えて、あたしの出したのは水・飛行タイプのペリッパーだった。 コタロウ:「ペリッパーか。地面には飛行タイプやけど、電気タイプのチョンチーが相手じゃ一発やな。」 綾香:「別に、その時には手を考えるわ。ペリッパー、高速移動から翼で撃つ攻撃よ!」 ヌオーが素早さの低いポケモンなら、ペリッパーの攻撃の早さには追いつけないはずだ。 コタロウ:「高速移動か。ヌオー、黒い霧で姿を隠せ。」 ヌオーの全身から周囲に渡って黒い霧が放出され、ヌオーの居場所が分かりにくくなっていた。 広い範囲を霧に包まれてしまい、流石に闇雲に突っ込んでもヌオーに攻撃が避けられてしまう。 綾香:「ペリッパー、風起こしよ!」 まずは黒い霧を吹き飛ばすしかないと思った。 でも、その隙にコタロウとヌオーは次の手を始めていた。 コタロウ:「ヌオー、鈍いや!それに度忘れも忘れずにやっとけよ!」 「鈍い」は自分の素早さを落とし、攻撃力と防御力を高める技、それに「度忘れ」は自分の特殊防御力を高める技だった。 これではあたしのペリッパーの攻撃はあまり通じない。 こうなったら一か八かね。 綾香:「ペリッパー、蓄える攻撃よ!」 あたしは賭けに出た。 コタロウ:「蓄えて吐き出す気やな。それならさっさと決める。ヌオー、滝登りでペリッパーより上に上がれ!そして岩石封じや!」 綾香:「だったらペリッパー、影分身から吐き出す攻撃よ!」 あたしの手は読まれていたので、影分身でヌオーの攻撃をかわし、吐き出す攻撃を当てることに成功していた。 ダメージは「鈍い」で防御力があがっていたから、あまり効かなかったものの、技が当てれてよかったと思った。 綾香:「このまま一気に行くわよ!ペリッパー、ハイドロポンプよ!」 あたしはこの波に乗ろうとしていた。 でも、あたしは間違いを起こした事に気づいていなかった。 コタロウ:「姉さん、もう少し勉強した方がいいで!ヌオー、原始の力や!」 突然ヌオーはさっきよりも元気に動き出し、原始の力でペリッパーを沈めてしまった。 綾香:「嘘…」 コタロウ:「ペリッパー戦闘不能で、俺の勝ちだな。残念ながらヌオーの特性は貯水。水タイプの攻撃を受けると回復するんや。 もう少し勉強せんと、アクアカップでは敗退してしまうぞ。」 あたしはようやく間違いに気づいた。 でも、負けてしまい、バトルは惨敗だった。 コタロウ:「素早さが遅くてもヌオーはその素早さの遅さをカヴァーできるようになっとるんや。姉さんもウパーがこの辺に 生息しとるし、育ててみるんはどうや?じゃ、アクアカップでまた会おうな。」 綾香:「う、うん。それじゃ…」 あたしは彼と別れた。 そして、ミロカロスでウパーをゲットしたんだけど、やっぱり負けたことに対するショックは大きかった。 綾香:「このままじゃ不味いわね。これが水系トレーナーの実力だし、頑張らないと…」 あたしは猛烈に頑張ろうと誓った。 その頃。 実はヤツデもバトルをしていたらしい。 ヤツデ:「ふぅ〜、ラプラスもキングラーもホエルコもそれなりに成長したし、これでアクアカップでは頑張れるな。」 海辺での特訓で、3匹とも前よりも強くなったと感じていた。 そんな俺の前に、一人のトレーナーが現われた。 ??:「もしよかったら、あたしと勝負してくれない?アクアカップに出るんでしょ?」 ヤツデ:「ああ、いいけど…。」 ??:「あたしはシルバー。アクアカップ目前だから、ちょっとポケモンの調子を確かめたいの。一対一でのバトル、 お願いできるかしら?」 ヤツデ:「ああ。俺はヤツデ。よろしくな。」 シルバー:「よろしく。」 彼女はそう言うと、ポケモンを2体だし、片方の上に乗った。 シルバー:「バトルは海上で行うわよ。あなたも水ポケモンの上に乗って、海上でもう一体の水ポケモンに指示を出すの。 いいかしら?」 ヤツデ:「ああ。」 彼女が出していたのはジュゴンとスターミーで、スターミーの上に乗っていた。 ヤツデ:「それじゃ俺は、キングラーとラプラス、出て来い!」 俺はラプラスの上に乗った。 シルバーのポケモンは水・氷タイプのジュゴン、俺のポケモンは水タイプのキングラー。 相性的に言えばどっちも互角だと思える。 後は、ポケモントレーナー歴の短い俺が、どこまで対抗できるかだな。 そしてバトルは始まった。 ヤツデ:「キングラー、先手必勝のクラブハンマーだ!」 キングラーのクラブハンマーで海を叩けば、強い波が出てジュゴンを押し返せる。 そう踏んでいた。 だが。 シルバー:「ジュエロ、猫騙しよ!」 ジュゴンの猫騙しがキングラーを驚かし、ひるませて攻撃を止めてしまった。 シルバー:「ジュエロ、今よ!物真似でクラブハンマーよ!」 その隙を突き、物真似でクラブハンマーを覚えたジュゴンの攻撃は、俺が行おうとした事を逆に行った。 ジュゴンの尻尾がクラブハンマーのように波を叩き、波は大きく荒れるようにしてキングラーを押し流していた。 シルバー:「ふふふ、攻撃はしてこないの?」 ヤツデ:「くそっ、海上ではマッドショットも波で相殺されるし、挟む攻撃も踏みつける攻撃も至近距離に近づかないと駄目だ。 だったらキングラー、泡攻撃だ!ジュゴンを泡で捕まえろ!」 泡によって素早さを落とし、ジュゴンに近づこうと思った。 シルバー:「ジュエロ、泡を避けるために水中に潜って!水中から破壊光線よ!」 ヤツデ:「何っ!」 ジュゴンが水中に潜ってしまい、泡攻撃は外れてしまった。 しかも、泡攻撃から他の攻撃に移るのが送れ、水中からの破壊光線がキングラーを跳ね飛ばしていた。 ヤツデ:「キングラー、そのままクラブハンマーの体勢をとるんだ!」 シルバー:「遅いわよ!ジュエロ、冷凍ビームよ!」 キングラーは破壊光線のダメージが大きかったこともあり、冷凍ビームを受けてしまい、氷漬けで落下してきた。 ヤツデ:「キングラー!」 シルバー:「キングラー、戦闘不能よ。早くポケモンセンターに行った方がいいわ。もう少し骨があると思ったんだけど、 ちょっと残念ね。アクアカップでまた会いましょ。」 ヤツデ:「あ、ああ。」 シルバー:「それじゃ、スター、このまま波乗りよ!」 彼女はスターミーに乗って、その場を立ち去っていった。 水系トレーナーになりたての俺じゃ、まだまだ物足りないって事が分かった。 でも、ちょっと、今後のバトルが厄介だとも思った。 このままじゃ、絶対にヤバイな。 蓮華:「えっ?綾香とヤツデ君が?」 コガネシティ近くの川でポケモンをゲットし終えた時、セレビィと共に律子が現われ、あたしに教えてくれたのだ。 律子:「うん、アクアカップに出場予定のトレーナーに惨敗したんだってさ。さっき、ナナから連絡があったの。 蓮華、頑張ってよ。」 蓮華:「うん。さっきハスボーとドジョッチをゲットしてきたから、これで水タイプは9匹。あたしは何とかなると思うかな。」 律子:「だったらいいけど…。まっ、ポケモンリーグの優勝者の蓮華ちゃんなら大丈夫か。」 確かに、綾香やヤツデ君とはトレーナー歴も長いし、バトル経験も豊富だからね。 そんな時、こう来るとあたしも申し込まれるかなって思ってた事が起きた。 ??:「さっきから話を聞いてると、アクアカップを舐めてるように聞こえるぞ。俺と勝負しろ!」 トレーナーにバトルを申し込まれたのだ。 蓮華:「いいわよ。」 ??:「悪いけど、俺は強いからな。二人一緒にかかってこいよ。」 律子:「あたしも?」 ??:「当たり前だ。俺はポケモンリーグ上位に行った事も、アクアカップの上位に行った事もあるからな。」 あたしたちの目の前に現れたのは、とっても天狗になってるらしいトレーナーだった。 蓮華:「律子、やるよ。」 律子:「そうだね、あたしも最近水タイプをゲットしたし。」 ??:「どうなってもこの俺、将来有望な水ポケマスターになる純一様には勝てないな。ニョロボン、シザリガー、行け!」 純一って言う奴のポケモンは水・格闘タイプのニョロボンと、水・悪タイプのシザリガーだった。 律子:「蓮華、ニョロボンはあたしに任せてね。マンタイン、お願いね!」 律子が最近ゲットしたポケモンは、水・飛行タイプのマンタインらしかった。 あたしたちがバトルをする場所は近くを流れる川を含めたこの通りなので、マンタインはすぐに川に飛び込んでいた。 蓮華:「だったらあたしの相手はシザリガーね。メノノ、あなたに任せるから!」 あたしのポケモンは水・毒タイプのドククラゲのメノノ。 シザリガーはどうなってもエスパータイプの技を使えないわけだから、メノノなら対抗できるというわけだ。 純一:「ドククラゲにマンタインか。俺にとっては雑魚だな。俺は強いから、後攻にしてやるよ。お前らで先攻しろよな。」 律子:「いいの?」 純一:「ああ、勝手にやれよ。」 蓮華:「それじゃ、遠慮なく。」 あたしたちは動いた。 蓮華:「メノノ、影分身から嫌な音よ!」 メノノがニョロボンとシザリガーの周囲を影分身で囲むように取り巻き、嫌な音で足止めをし、 律子:「マンタイン、水から出て凍える風攻撃よ!」 マンタインが空中から凍える風を2体に向かって吹きかけた。 2体にとっては嫌な音と凍える風は体調を崩す程の強烈なものだろう。 そして水に戻ろうとするマンタイン。 でも、純一も黙ってみているわけじゃなかった。 純一:「くそっ、ニョロボン、マンタインを地面に叩きつけろ!シザリガーはマンタインの翼を挟むんだ!」 2体で一斉にマンタインを先に倒そうとしていた。 蓮華:「メノノ、ニョロボンとシザリガーを絡みつく攻撃で防いで!」 水に戻ろうとするマンタインには、2体に反撃する余裕はない。 だからあたしが動いたのだ。 凍える風で素早さが遅くなった分、メノノの方が素早い。 2体の足は触手に絡まれて思いっきり転び、その隙にマンタインは水に戻った。 純一:「くそぉ!ニョロボンは水鉄砲、シザリガーはバブル光線でドククラゲを先に攻めろ!」 蓮華:「残念でした。メノノ、ミラーコートよ!」 純一のポケモンはメノノに攻撃を仕掛けたけど、それはミラーコートで倍返しされ、川際に押された。 そして。 律子:「マンタイン、翼で撃つ攻撃よ!」 水から飛び出したマンタインの至近距離からの翼で撃つ攻撃を受け、まずニョロボンが倒れた。 純一:「ニョロボン!?くそぉ!シザリガー、クラブハンマーでマンタインを攻撃しろ!」 ニョロボンを倒された純一は、水から体を出しているマンタインを襲おうとしていた。 シザリガーは防御力が少し高いらしく、嫌な音を受けた後の翼で撃つ攻撃やミラーコートの倍返しでも、まだ倒れないようだった。 だが、2対1ではもう勝負は決まっていた。 蓮華:「後ろを忘れてるわよ!メノノ、スパークよ!」 律子:「マンタイン、水鉄砲!」 前方と後方からの攻撃を受け、シザリガーも敢え無く倒れたのだった。 純一:「そんな…い、インチキだ!」 純一はあたしたちに食って掛かってきた。 律子:「そっちがあたしたちが先攻でいいって言ったし、川もバトルフィールドに入れるって言ったのよ。」 蓮華:「インチキなんて無理なのに、勝手な言いがかりはやめてくれない?」 あたしたちが反論すると、今度はギャラドスとグラエナを出して威嚇さえもしてきた。 純一:「こいつらに襲われたくなかったらインチキを認めろ!」 と。 ここまで来ると、あたしも律子も怒る気は失せた。 そして。 蓮華:「コイッチ、ポチ、後はお願いね。」 純一のギャラドスとグラエナよりも、一回り分大きなコイッチとポチの出現は、純一を怯えさせ、ポケモンたちを怯ませるのに 十分なほどだった。 数分後、「覚えてろ!」という捨て台詞を残して彼は逃げ帰っていった。 ナナ:「ああ、そいつなら覚えてるわ。確かに上位にいたけど、雑魚よ、雑魚。」 帰る直前にナナに聞いてみたところ、2年前にバルビート一匹で水ポケモン6匹を軽く倒された、ナナにとっては雑魚中の雑魚のトレーナーらしい。 ナナ:「蓮華と律子が勝っても当たり前よ。でも、十分な肩慣らしにはなったんじゃない?」 と、ナナは言っていた。 そして数日後、アクアカップが開催される。 あたしたちはみんな、それぞれ不安もあるけど、夏休み最後の思い出として、頑張ろうと思う。  『オマケ』 蓮華:「えっ?涼治も出るの?」 涼治:「ああ、晃正も出るってさ。後、希先輩も出るそうだし、お互い頑張ろうな。」 涼治に頑張ってくると告げようとした矢先の言葉に、あたしは言葉を失うのでした。 よくよく考えれば、わざわざポケモン世界に行かなくても、こっちでも一応ポケモンをゲットする事は出来るのでした。 特に、あたしが今回ゲットしたドンちゃん(ドジョッチ)とハッスル(ハスボー)は、普通に近所で見かけるポケモンでした。 涼治:「後さ、志穂と鈴香と悠也さんが同盟結んで志穂が代表で出るっても聞いたぞ。」 蓮華:「え…」 涼治:「強敵ぞろいだな。ま、頑張るしかないな。」 実は健人先輩と哲兄も出るのです。 よくよく考えて聞いたら、もしかしたら上位者はあたしたちで埋まるんじゃないでしょうか? 蓮華:「頑張るしかないね。」 涼治:「ああ。」 ちょっと不安かも。 久々に訪れた、不安の想いです。