渦巻き列島の渦巻きカップ、通称「アクアカップ」の名前が主流化しているこの大会は、渦巻き列島の一つ、赤岩島の カクイシティで行われる。 この街の海辺から、3年に一度、一定の期間だけ、海から古代のコロシアムが顔を出す。 そこに海面から8つの様々な高さの柱が立ち、そこが渦巻きアクアカップのバトルフィールドとなるのだ。 そして、このアクアカップ(渦巻きカップ)を主催するのが、「海の魂」と呼ばれる秘宝を持つ神官のマヤさん。 彼女の一族が3年ごとに行われるこの大会を主催し、水を司り、水を纏う戦士たちの戦いを見守り、戦士たちに海からの祝福を 示し、優勝者を海の勇者として称えている。 あたしが全国各地にいるポケモンマスターの親友に聞く限りでは、どうやら今年は水のエキスパートに値するトレーナーが アクアカップに出場するらしい。となると、今までのように200人くらいで行われているような大会にはならないような気がする。 でも、それだけポケモントレーナーたちがお互いの力をぶつけ合い、ポケモンと心を交し合うのなら、あたしとしては とってもいいことだと考えている。 つい先ほど、蓮華ちゃんたちも、アクアカップに出場するためにここからアサギシティまで向かっていった。 アサギシティから赤岩島のカクイシティに向かう船が出ているのだから。 あたしも結果が知りたいし、バトルが見たいとは思うけど、あたしはこれからホウエン地方に出発する。 帰ってきたら、蓮華たちの応援にいった律子から、アクアカップでの話を聞こうとするかな。 渦巻き編 2.船上での出会い 蓮華:「今年は人が多いらしいね。」 律子:「そうらしいね、まさかこんな豪華客船が出るとは思わなかったわ。」 蓮華:「3年前はどうだったの?」 律子:「兄貴が言うには、かなり大規模の大会らしいよ。今年の大会も、かなりのトレーナーが出場する事は間違いないし。」 アサギシティに着いてみれば、港にはトレーナーの山で、そしてすごく大きな豪華客船があったのだ。 ミカンさんとコナツちゃんに聞くと、これが渦巻き列島の赤岩島に向かう船だと教えられ、あたしたちは乗船したというわけだ。 あたしたちのメンバーはヒカリちゃんも含めて14人。 そして応援としてやってきた律子や鈴香、悠兄たちも合わせると、いつも何か事件があると集まるようなメンバーの数になっていた。 まっ、来てない人も何人かいるけどね。 律子:「ところで、蓮華の方は準備万端なの?」 蓮華:「ええ、みんな元気だし、いつでもバトルは可能よ。」 だけど、ハスボーのハッスルやドジョッチのドンは絆たちの力を借りてトレーニングしたものの、実戦はまだだからちょっと微妙かな。 それを察したのか、律子が何かを思いついたらしい。 律子:「ねえ、この船の誰かと試しにバトルでもしたら?」 蓮華:「えっ?」 律子:「大会前のウォーミングアップよ。予選開始は明日だし、この船にもたくさんポケモンを回復させるための機械が置いてあるわけだし、 やらないよりはマシだと思うけど?」 蓮華:「そうだね。」 あたしは周囲を見回してみた。 ここにいる現実世界組はあたしたちだけだけど、あたしたち以外にもトレーナーはたくさんいた。 でも、誰に声をかけようか、迷ってしまっていた。 そんな時。 ??:「ど〜しったの?何かを探してる?あたしでよかったら、相談に乗ってあげるよ。」 あたしと律子の前に、同い年くらいの女の子が現われた。 蓮華:「あたしの水ポケモン、9人いるんだけど、実戦したことのない子が二人いて、大会前のウォーミングアップをしたいんだけど、 誰に声をかければいいのか分からないの。」 あたしは目の前のすごく可愛い笑顔の子に教えた。 ??:「なぁ〜んだ、そ〜ゆ〜ことかぁ。いいよ、あたしとやろうよ。」 蓮華:「えっ?」 ??:「いいでしょ、いいでしょ?あたしはモコナ、あなたは?」 蓮華:「あ、あたしは蓮華。」 モコナ:「蓮華ちゃんか。よろしくね、それじゃ、使用ポケモン2体のダブルバトルだよ。そこのみんなぁ〜、ダブルバトルやるから ちょっとどいてくれない?」 モコナは、あたしがバトルを了承すると、周囲のトレーナーたちに言って場所を空けた。 律子:「ものすごい行動派ね。あたしや美香以上の。」 ミューズ:「確かに。」 モコナ:「それじゃ、蓮華ちゃん、やるよ。あたしのポケモンはこの子達、シェルダー、シャワーズ、お願いね!」 モコナのポケモンは特性シェルアーマーのシェルダーと、特性貯水のシャワーズだった。 蓮華:「あたしは、ハッスルとドン!お願いね!」 モコナ:「ふぅ〜ん、水と草の属性のハスブレロに、水と地面の属性のドジョッチかぁ。なるほどね〜。でも、ウォーミングアップでも、 あたしは負けないんだからね。蓮華ちゃん、先攻やってもいいよ!」 蓮華:「ええ、ハッスルはシャワーズに葉っぱカッター、ドンはシェルダーに泥かけよ!」 ドンの攻撃はともかく、ハッスルの攻撃は草タイプの技なので、水タイプのシャワーズには効果抜群だろう。 でも、 モコナ:「そうくるの。シャワーズは影分身で葉っぱカッターをかわして!シェルダー、広範囲にオーロラビームを拡散するのよ!」 葉っぱカッターは影分身によって避けられてしまい、さらにドンの泥かけがシェルダーを攻撃したものの、広範囲に拡散された オーロラビームによって、ハッスルもドンも攻撃を受けてしまっていた。 モコナ:「葉っぱカッターは命中率が高いけどね、必ず当たるってわけじゃないんだよ。それに、シェルダーは自分の目の前の範囲になら 広範囲にオーロラビームを拡散させて放つくらいできるから、2体同時に攻撃だって可能なの。ただし、拡散させるのは特訓しないと 無理なんだけどね!」 蓮華:「それなら、ハッスルはシャワーズに乱れ引っ掻き!ドンは岩石封じをシェルダーに放って!」 モコナ:「残念でした、シャワーズは溶ける攻撃、シェルダーは殻に篭る攻撃だよ!」 乱れ引っ掻きは液体状になったシャワーズを引っかけられずに終わり、ドンの岩石封じも殻に篭ったシェルダーには あまりダメージを与えられなかった。 モコナ:「シャワーズは溶けちゃえば物理攻撃を液体状になることで無効化しちゃえるんだよ。シェルダーも殻に篭っちゃえば 防御力が上がって岩石が落下してもダメージを減らせちゃうの。蓮華ちゃん、このくらいにしておかない? あたしのポケモンはまだまだ戦えるけど、その子たちは実戦不足だから、今いる7人がどうしても戦えない時に使う事にしたらいいよ。」 蓮華:「うん、分かった。」 よくよく見れば、ハッスルとドンは実戦不足もあって、少し早く疲れ始めていた。 多分、拡散されたオーロラビームの影響もあるだろう。 水タイプには氷タイプの技は効果が薄いものの、二人は草タイプ、地面タイプでもあり、氷タイプの技は効果が抜群なのだ。 となると、ダメージは普通に効くことになるのだ。 モコナ:「それじゃ、あたしは行くね。まったね〜!」 モコナは兎が跳ねてるみたいに走りながらどこかに行っちゃった。 でも、船の中だからまた会えるね。 綾香:「あ、この前森で会ったよね?」 あたしは船の中を歩いていて、アメタマやサニーゴと遊んでる少年を見つけた。 彼にとっては4,5日前だけど、あたしにとっては2日前くらいに会ったことになる彼、確か…コタロウ君だ。 コタロウ:「あぁ、あのときの姉さんか。前よりか強くなったか?」 綾香:「どうだろうなぁ、一応ウパーもヌオーに進化したよ。でも、強くなってるかどうかは分からない。 あたしはあたしらしくやるつもりだし。」 コタロウ:「それが一番ええことやと思うけどな。ま、俺と予選であわないことを願ってれば、古代コロシアムの中で 戦えるはずやで。」 彼はそう言うと、さっさと行ってしまった。 まぁ、あたしもそうは思ってるかな。 アクアカップの予選で大部分のトレーナーが敗退する事になるらしい。 あたしとしても蓮華や志穂ちゃんたちと当たったら、敗退は目に見えているようなものだ。 ところで、みんなはどこに行ったのかな? 海:「プータル、キングドラ、気持ちいい?」 玲奈:「よっぽど水の中が気持ちいいみたいね。」 海:「ええ、だってプータルは水浴びが大好きなんだもの。」 あたしと玲奈先輩は、屋外のプールの中にいた。 ここからは船の甲板の様子がよく分かる。 さっき蓮華がウォーミングアップのバトルをしていた様子もよく見えた。 あたしは大丈夫なのかって聞かれたら、ちょっと微妙なんだけど、美香のマリルリとは親しいし、新しくあたしのポケモンになった トサキントとパールルは、あたしの家の庭にある大きな池の中で、錦鯉たちと仲良く暮らしてる子だったので、あたしにも すごく懐いていた。だから、バトルも何とかなると思う。 元々レベルも高いと思うのよね、錦鯉を荒らしに来たカラスや野良猫に攻撃してたくらいだし。 海:「それにしても、気持ちいいですね。」 玲奈:「そうね、ポケモンたちも喜んでるし。」 玲奈先輩は浅香ちゃんや菜々美からポケモンを借りてきていた。 でも、玲奈先輩は貝の力を司る神秘の力が水の力に近いということもあり、水ポケモンと心を通わせていたので、結構 試合では厄介な相手になるんじゃないかと思う。 そんなあたしたちのいるプールに、何かの集団がやってきた。 玲奈:「何なのかしら?」 海:「さあ?」 あたしたちは彼らを気にせずにプールで楽しんでいたら、突然声をかけられた。 でも、その時の言葉がムカッと来た。 ??:「おい、ちょっと邪魔だからどいてくれよ。」 だったから。 玲奈:「どうして?このプールはまだまだ十分な広さがあるのよ。」 海:「みんなのプールなんだし、邪魔にならないと思うけど?」 だが。 ??:「姫様が入るにはお前らは邪魔なんだ、どいてくれよな。」 海&玲奈:「姫様?」 ??:「ああ、我らが尊敬する姫様がもうすぐこのプールにやってくると聞いている。となれば、姫様が泳ぐに狭いこの場所を 広くするには、そこにいるお前らと、そこのポケモン、そしてそこの変な生き物をどかさなければならないんだ。」 変な生き物って言葉は多分、プータルのことだと思う。 でも、流石に無理やりのこれには、さらにムカついた。 海:「悪いけど嫌よ。」 玲奈:「その姫様って言う人が言うならともかく、関係ない他人があたしたちに向かって言う言葉じゃないと思うんだけど? 海ちゃん、遠慮しないで遊んでよ。」 海:「そうですね。」 あたしたちは彼らを完全に無視しようとした。 すると、すぐに彼らは騒ぎ出した。 でも、その騒ぎ出し方は、あたしたちが無視したからじゃなかった。 誰かがプールのあるここまで上がってきたのだ。 海:「うわぁ…」 玲奈:「綺麗な人ね。」 やってきたのは背が高くて大人びた、早い話が美少女って感じの女性だった。 美香や菜々美とは別の意味(美香や菜々美の場合は可愛いっていう意味)で美少女って言葉が似合う人だ。 海:「多分、あの人が姫様って言う人なんじゃないですか?」 玲奈:「そうかもね。」 と、その姫様と呼ばれてる人は、すぐにプールに入ってきた。 でも、別に邪魔になるようなわけじゃなく、あたしたちはその後も水に戯れていた。 ただ、ちょくちょく彼女に視線が向いたのは言うまでもないかな。 すると。 ??:「貴方達、私に何か用でもあるのか?」 つい目が合ってしまい、あたしたちは声をかけられた。 玲奈:「別に。」 海:「ただ綺麗な人がいるなぁって思っただけです。」 ??:「そうか、私は、香川姫乃だ。………よろしく。」 海:「あたしは海、よろしくね。」 玲奈:「あたしは玲奈。…あなたもアクアカップに出るの?」 姫乃:「ええ、貴方達も出るようね。…貴方もキングドラをお持ちなのね。でも、そのポケモンは何ていう名前なの? 見た事がないわね。」 海:「この子?この子はポケモンじゃないわ。あたしの式神。」 姫乃:「式神?」 玲奈:「あたしたち、能力者なの。聞いたことない?スペース団と戦ったりした事あるのよ。」 姫乃:「ああ、貴方達がそうなのか。」 海:「ええ、それで、あたしはこの子を使役しているの。プータルっていうの。水浴びが好きだから、一緒に遊んでたのよ。 姫乃さん、アクアカップの目標は何ですか?」 姫乃:「目標か?もちろん優勝する事だ。私はこれで失礼する。次は予選で、または試合で会うかもしれないな。 その時は、貴方達が私以上に水を愛していなければ、私には勝てない。これだけは言っておくわよ。」 姫乃さんは最後にすごく鋭い眼光で言った。 その時の表情は鳥肌が立つほどのものだった。 そして、姫乃さんが行ってしまうと、取り巻きなのか、親衛隊なのかは分からないけど、あの集団も去っていった。 ただ、さっき因縁を吹っかけてきた奴が、あたしたちから目を反らしていたのはすぐに分かった。 多分、あたしたちが能力者だって知ったからか、または彼らよりもあたしたちが姫乃さんに親しくしていたからだろう。 それにしても。 海:「姫乃さん、強そうでしたね。」 玲奈:「ええ、キングドラをお持ちって言ってたから、多分姫乃さんもキングドラが手持ちにいるのよ。これは厄介な相手よ。」 海:「そうですね。」 水とドラゴンタイプのキングドラには電気タイプ、草タイプの攻撃はあまり効果がなく、同じドラゴンタイプの技が最も効果的なのだ。 それに、玲奈先輩は気づいてないけど、姫乃さんの視線はパルシェンにも向いていた。 多分、パルシェンも手持ちにいるんだと思う。 だとしたら、ものすごく厄介な相手、強豪トレーナーである事は事実だろう。 清香:「何だか寂しそうね、菜々美ちゃんが来てないから?」 健人:「何のことだ?」 清香:「とぼけても無駄よ。不機嫌になると健人はよく顔に出てるんだからね。海斗もそうだけど。」 健人:「バレたか。…あいつはライブツアーが終わりに近いからな。」 船が出港して2時間、後2時間くらいで渦巻き列島に着くと聞いてる。 その間、あたしたちはみんな、色んなところにいるわけで、あたしは偶然健人を見つけた。 今回、能力者メンバーの中で最も水ポケモンを持っていないのはあたしだろう。 パートナーのプテラとトゲチックを覗くと、たったの2体。 だから、もし試合でのダメージが大きかったら、試合続行不可能での敗退もありえるのだ。 そうならないことを願いたいものだけど。 あたしはその後、健人と別れて誰もいない場所までやってきた。 久々にやってみようかな。 今は部活は陸上に入ってるけど、中学の時は綾香ちゃんにリボン演技を教えた事あるし、今でもやれないかな? あたしは周囲を見回して誰もいないことを確認したうえで、ちょっと演技をやってみた。 プロよりは落ちるけど、あたしは自分の演技には十分満足していた。 ちょっと自分の世界に浸っていた。 すると、演技を終わらせた直後、背後から拍手を受けていた。 びくっとして振り返ると、そこには知らない青年が立っていた。 ??:「君、結構うまいんだね。すごくよかったよ。」 清香:「あ、ありがとう…。…いつから見てたんですか?」 ??:「ちょっとくらい前かな。君、今一人?」 清香:「え、ええ。」 ??:「それじゃ、俺とデートしないか?」 あたしはデートに誘われた。 一見すると、かっこいいなって感じのイケメンだったけど、中身はナンパ男のようだ。 清香:「悪いけど、あたし、これでも彼氏、いるんだよね。それじゃ。」 あたしは目の前の青年を無視していこうとすると、腕をつかまれた。 ??:「待てよ、少しくらいならいいだろ?」 清香:「そこまで言うんなら、あたしとバトルして勝ってからにしてよね。」 ??:「そっか、それなら楽勝だな。俺はチアキ。相棒はこのハリーセンさ!」 青年、チアキはハリーセンを繰り出してきた。 清香:「あたしはこの子よ!オムスター!」 あたしが持ってる水ポケモンは、化石ポケモンのカブトプスとオムスターだけなのだ。 チアキ:「ハリーセン、ヘドロ爆弾だ!」 清香:「オムスター、殻に篭って転がる攻撃よ!」 オムスターは転がる攻撃によってヘドロ爆弾を弾き、そのままハリーセンを跳ね飛ばした。 清香:「さらに原始の力よ!」 そこを原始の力が襲ったことで、ハリーセンは倒れていた。 チアキ:「ハリーセン!」 清香:「そういうわけだから、それじゃ!」 あたしはチアキがハリーセンに駆け寄った隙に、その場を去った。 すると。 海斗:「大丈夫だったか?」 海斗がいた。 清香:「あ、海斗!」 海斗:「清香が負けたら出て行って、あいつから取り返そうと思ったんだけどな…」 清香:「…もう、早く来てよね、今度からは。」 海斗:「ああ。」 全く…、って思うけど、ちょっと嬉しかった。 カメールにマリル、ヒトデマンの調子はいいな。 健康状態も悪くないし、マリルの尻尾の丸さ、ヒトデマンの赤いコアの光具合、カメールの尻尾の柔らかさ、どれも健康さをしっかり表しているし、 この分なら予選通過できるかもしれないな。 ??:「ねえ、あなたって2年前にリーグ会場でポケモンのケアをしてなかった?」 俺が自分のポケモンの状態を見ているときだった。 声をかけられ振り向くと、そこには結構年上そうな女性が立っていた。 ??:「あたしのポケモン、ちょっと見てくれない?」 涼治:「え、ええ、いいですよ。」 俺は戸惑ったものの、ものすごく顔を近づけてくるこの人の頼みを聞くことにした。 ポケモンドクターを目指すだけに、出来るだけの範囲の事はしようと思ったのだ。 そして連れてこられたのはプライベートルームの一室だった。 ??:「あたし、この部屋を一人で使ってるの。いいでしょ?あたしのポケモンはこの奥の、プライベートルームを借りれた人だけが 使える、専用のプールにいるの。こっちに来て。」 涼治:「あ、はい。」 俺は彼女の案内でそこまで行った。 ??:「そうだ、この腕章を付けてくれない?あなたは一応部外者でもあるから、この腕章をつけないと、警備員に追い出されちゃうかもしれないわ。」 彼女は俺に金属で出来た腕章(?)のような腕輪を渡してきた。 腕にはめたとき、一瞬めまいがしたような気がするのは何だったのか…。 そしてプールに着いた。 だが、そこには誰もいない、深そうなプールがあるだけで、警備員や他のトレーナーすらいない。 そしてプールから顔を出したのは、ギャラドス、サメハダー、ハリーセンだった。 この3匹のケアは難しいものの、一応ジョーイさんに聞いた事があるだけに、多少のことなら出来る。 だからどこを見てほしいのか聞いてみた。 涼治:「どこか悪いところがあるんですか?」 しかし。 ??:「別に、どこも悪くないから見なくても結構よ。」 涼治:「えっ?」 プールまでやってくると、彼女の様子は突然豹変していた。 冷たい目で嘲笑っているように見える。 ??:「3年前の大会で、予選直前に申し込んで姿を消したトレーナーが何人かいたこと、知ってる?…知らないわよね。知ってるはずがないわ。 それに、その姿を消したトレーナーはみんな、入院していたんだもの。」 涼治:「それって…あなたが…?」 ??:「ええ、あたしのポケモンたちは強いけど、アクアカップに出場する人数は多すぎるんですもの。予選直前に何人かを潰しておかないと、 あたしが予選を勝ち進めないのよね。今日、あなたで5人目よ。他の4人はゴムボートに乗せてこっそりと海に落としてきたし。 あなた、ポケモンの状態を見れるようだから、今後厄介な相手になりそうですもの。」 彼女は俺にジリジリと近づいてきた。 背後はギャラドスやサメハダーのいるプール、目の前には何をするのか予測のつかない女性。 ??:「それに、あなた、能力者なんでしょ?あたしのあの現場にいたから知ってるの。だから、その腕章を渡したのよね。 あたしの知り合いに、とっても優秀な科学者がいてね、能力者が能力を発揮できず、しかも普通の人間以下になるような機械を作ってくれたの。 それがその腕章。」 俺はようやく、さっきの眩暈の正体を察し、腕章を外そうとした。 しかし、外れない!? ??:「うふふふ、その腕章、あたししか外せない様にできてるの。それに、この装置でそれを作動させれば、あなたはもう、立っていられないのよね。 どう?棄権するって言うなら助けてあげてもいいわよ。」 涼治:「…」 俺、またこんな事に引っかかっちまうとはな。 貧乏くじっちゅうか、でも、断ろう。 涼治:「悪いけど、俺は断らせてもらう。そんなことで他人から俺の道を指図されたくないのでね。」 ??:「そう、残念ね。スイッチ、オン。」 彼女がスイッチを押した。 直後、俺は強烈な頭痛に襲われ、プールに倒れていた。 でも、その時には意識を失っていた…。 ??:「これで5人目ね、次は誰にしようかしら…。」 そんな声が頭に残っていた。 数分後。 志穂:「…涼治君の気が途絶えた。」 鈴香:「えっ?お姉ちゃんの彼氏が!」 悠也:「あいつ、また何か変なことに巻き込まれたんじゃないか?」 志穂:「そうかもしれないわね、涼治君の場合、ポケモンドクター関連の事で話しかけられたり頼まれたりすると、断れないから…。 辿れる限りの気を辿ってみましょうか。」 さらに数分後。 晃正:「えっ、涼治先輩が?」 ??:「そうなの、あたしの部屋のプールで倒れちゃって…。お知り合いの方が写ってる写真を見せてもらったからね。 あなたに声をかけたの。ちょっと、来てくれないかしら?」 晃正:「いいですよ。」 ヤツデ:「あれっ?先輩、どうしたんですか?もしかして…浮気っすか?」 晃正:「馬鹿、何てこと言うんだよ。俺には浅香がいる…じゃなくて、ヤツデ、お前も来いよ。涼治先輩が倒れたらしいんだ。 この人がポケモンの具合を見てもらってる最中に。」 ヤツデ:「えっ…、先輩ってそういえば、最近疲れてるっぽかったもんな。」 ??:「それで、よろしいかしら?」 晃正:「ええ、いいっすよ。」 さらにさらに数分後。 志穂:「嘘…、どうしてあたしたちの仲間はこうなのよ…。」 鈴香:「志穂姉、どうしたの?」 志穂:「はぁ…、晃正君と八手君の気まで途絶えたのよ。」 悠也:「…マジか?」 志穂:「マジよ、大マジ!」 綾香:「ヤツデがどうかした?」 志穂:「涼治君と晃正君と一緒に何か変なことに巻き込まれたみたい。」 綾香:「えっ、…あの馬鹿。」 志穂:「3人の気、色んなところに散らばってて分かりにくいんだけど、辿るの手伝ってくれない?蓮華ちゃんたちを巻き込むと 事の重大さが激しくなりそうだから。」 綾香:「確かにそうだね。了解。」 数時間後、ゴムボートに乗った3人を鈴香ちゃんが見つけた。 でも、体中傷だらけの上、3人のポケモンが全員傷だらけで戦闘不能だった。 記憶も曖昧な上、変な腕章によって力を封印されたらしい。 この分だと、玲奈ちゃんと律子の力を借りることになりそうだ。 ??:「あらっ?ここに置いといたのに…。まぁ、いいわ。あの3人の少年が持ってた、この写真を見る限り、出場者の何人かを 判別する事は出来そうだし、出場者潰しはやめられなさそうね。」 4時間という短いようで長い時間の間に、様々な事が赤岩島行きの船の中で起きていた。 そして船は、赤岩島にたどり着いた。 玲奈:「さっきの事、どう思う?」 律子:「あのことですか?」 玲奈:「ええ、あたしのヒーリング能力と、あなたのハピナスの卵うみが必要になっていたこと。」 律子:「トレーナー潰しがいるってことですね。あたし、今から動きます。6人の力で、ちょっと探ってみます。」 玲奈:「ええ、お願いね。」 蓮華:「あれっ?律子は?」 綾香:「ちょっと用事があるんだってさ。それより、あれ見て。」 あたしは赤岩島でアクアカップの申し込みをポケモンセンターでし終えた。 そしてすぐに、綾香と一緒に、海にほんの少し顔を出した状態の古代コロシアムの姿を見に来た。 後数日位経つと、海の水が少し引いて、古代コロシアムのバトルフィールドが姿を現すらしい。 ここであたしたちは水タイプポケモンでのバトルをする。 どんな事が起きるのかな? どんなバトルが行われて、どんなドラマが生まれるのかな? あたしたちは、どんな経験をするのかな? 考えても想像がつかないくらいのことが起きそうな気がする。 楽しみだなぁ。