古代コロシアムが姿を現した日。 あたしたちの渦巻きアクアカップがついに幕を開けた。 予選で敗れちゃった健人先輩や清香先輩の分も、あたしたちが頑張ってみせる! 渦巻き編 4.アクアカップ開幕! アクアカップが始まった。 始まりを告げるのは開会式。 64人のトレーナーたちは小船に乗り、水のバトルフィールドとなる海の上で、開会式を過ごしている。 蓮華たちや、清香先輩を倒したシルバーさん、強豪の姫乃さん、蓮華の友達になったモコナたちの姿も見えた。 司会アナウンサー:「これより、渦巻きカップ開会式を行います。ご覧ください、彼らが予選を勝ち抜いた海の勇者を目指すものたちです。 古来、渦巻き列島は独自の文化文明をもって水タイプのポケモンを崇め、共生してきました。現在もその文化は費えることなく、 昔ながらの伝統を守る海の神官マヤ様によって語り継がれております。では、神官マヤさまより、開会宣言です!」 神官マヤさんが「海の魂」といわれる宝石(水晶)のついたロッドを持って、トレーナーたちの見渡せる来賓席に出てきた。 マヤ:「皆さん、3年に1度の水タイプポケモンの祭典、渦巻きカップにようこそ。 水タイプポケモンたちと心を通じ合い、共に生きるものは、ここ、渦巻き列島においては古より海の勇者と称えられてきました。 海の勇者はこの海の魂の祝福を受け、全ての水タイプポケモンと通じ合う能力を授けられたと伝えられております。 では皆さんの見当を祈り、海の魂の祝福を!」 マヤさんが「海の魂」を太陽と重ね合わせた時、「海の魂」はコロシアム中を照らす、青い神秘的な光を放っていた。 これが、海の魂を通して海の神と海のポケモンたちが放った祝福のことだろう。 来美:「これが海の魂の祝福ね。」 蓮華:「この光が、あたしたちに海のポケモンパワーをくれたってこと?」 志穂:「多分、そういうことでしょうね。」 マヤ:「海の神の祝福があらんことを!」 マヤさんの言葉で、会場中が大きく盛り上がるのだった。 アナウンサー:「なお、優勝したトレーナーには勇者の称号と共に神秘の雫を贈呈します。」 鈴香:「神秘の雫?」 悠也:「水タイプポケモンの技の威力を上げるアイテムの事さ。」 律子:「水タイプポケモンのエキスパートたちにとっては、絶対に持っていたい必須アイテムなのよね。」 これから、水タイプポケモンの大バトルが始まる。 みんな、頑張ってね。 さてと、あたしも動くとしようかな。 鈴香:「あれっ?律ちゃん、バトル見ないの?」 律子:「うん、あたしは…アレよ。」 悠也:「あぁ、トレーナー潰しを探すのか。俺たちも行こうか?」 律子:「ううん、二人は観客席でバトルを見てて。妨害者が現われないとも限らないもの。あたしと清香先輩で周囲を偵察 してるから。」 清香:「そういうことよ、お願いね。」 鈴香:「それなら分かりました。」 悠也:「任せとけよ。」 律子:「それじゃ。」 数分後。 蓮華:「で、結局こうなるというわけだ。」 あたしたちは鈴香と悠兄に場所取りをさせていたわけであり、客席でバトルを見ているのです。 だから、鈴香や悠兄が捜索組に加わってもよかったのだった。 あたしたちは、自分の番が来るまでの待機も兼ねてここにいるのです。 鈴香:「今日はお姉ちゃんたちの試合はないの?」 綾香:「ないことはないわね、ヤツデと玲奈先輩、晃正君とヒカリ、そして海ちゃんと哲也先輩が今日。明日はあたしと蓮華、涼治君と海斗先輩、 希先輩と来美先輩、それに志穂ちゃんのバトルがあるのよ。1回戦目で全員が仲間同士で当たらなかっただけマシなのよね。」 あと少ししたらヒカリのバトルが始まるのだ。 1回戦目はポケモン1体による1対1のバトル。 これによって64人が32人に絞られるのだ。 そして残りの32人は再びコンピュータによって分けられて、トーナメントとして出される事になる。 そうなれば、あたしたち全員が1回戦目で勝利したとしても、ものすごい偶然が起きない限り、ぶつからないとは限らない。 来美:「まずはここで、水タイプポケモン同士のバトルを見ながら、明日のための作戦会議を行わなきゃね。」 希:「誰かが行った方法と同じ方法を使う、イコール技を盗むことで勝利できる場合もあるものね。」 海斗:「それにしても、結構いるよな、64人って。」 海斗先輩が今年の渦巻きアクアカップの出場者がしるされたパンフレットを見て言った。 あたしが出会ったモコナ、綾香の出会ったコタロウ、清香先輩と倒したシルバーさんに、ナンパしたらしいチアキ、強豪といわれてる姫乃さん、 律子の言っていた潰し探しをしているコウキさん、セイジさん、ミサトさん、あたしと律子が誘拐から助けたタイヤさん…。 それに、変わった名前の選手が二人いた。 綾香:「アクアリウスとアクアリウム?」 来美:「水を意味するアクア、飲料用水のアクエリアスをもじったような名前ね。」 それに、常連といわれているアミカさんとタカミさんに、志穂ちゃんと海ちゃんが気にしているマサオミさん。 何だか、ホントにすごいメンバーだなぁ。 実は、今言った何人かとあたしたちが当たっていたりもするのよね。 どうなることやら。 と、その時、バトルフィールドでは、ハリーセンのミサイル針をシャワーズがバブル光線でかわし、突進で倒す姿が見えた。 審判:「ハリーセン戦闘不能!シャワーズの勝利!」 このバトルの次がヒカリだったわね。 来美:「今のバブル光線はよかったわね。」 海斗:「突進の威力もよかったと思うぞ。」 あたしがボ〜っとみている横では、仲間内では水タイプのエキスパートである二人が、こんな事を話していた。 ヒカリ:「頑張ってくるね、絶対優勝を勝ち取ってみせるから!」 あたしはユウやライ、セイラムやスパイル、ブラストたちにそう宣言して、ここにやってきた。 ホントなら喧嘩友達になったセイラムや、氷のエキスパートでもあったスパイルも出るはずだった。 でも、カンナ様が、あたしたち6人のうち、バトルしあって勝ち上がった者一人が、渦巻きアクアカップに出場するということを 決めたのだ。そしてあたしが勝ち、ここにやってきたのだ。 あたしの相手はミサトという人。 律子が言うには、前回も出てた人で、トレーナー潰し探しの一人らしい。 でも、今はあたしにとって、1回戦目で倒さなければならない相手だった。 彼女に勝って、あたしは2回戦にあがるんだから。 アナウンス:「これより、ミサト選手対ヒカリ選手の試合を開始します。」 アナウンスと共に、あたしはバトルフィールドまで出てきた。 アクアカップのバトルフィールドは8本の細く長い柱と2本の太く短い柱が海面から突き出た状態のもので、水に潜ったり、柱の上や、柱そのものを うまく使う事もバトルの鍵となるのだ。 ミサト:「あたしのポケモンはこの子よ!お願いね、ニョロゾ!」 ミサトのポケモンは特性が「貯水」か「湿り気」のニョロゾ、 ヒカリ:「ジュゴン、あたしたちも行くわよ!」 対するあたしは、氷タイプも兼ね備える、特性「厚い脂肪」のジュゴンだ。 審判:「それでは、試合開始!」 ミサト:「先手必勝よ!ニョロゾ、泡攻撃!」 ヒカリ:「ジュゴン、相手の一発目を封じるわよ!猫騙しよ!」 泡攻撃の態勢に入ったニョロゾを、ジュゴンの両手が強く合わさった猫騙しによって驚き、すぐに怯んでいた。 ミサト:「ニョロゾ!」 ヒカリ:「隙ありね、ジュゴン、ニョロゾの足に冷凍ビームよ!」 ジュゴンはニョロゾの足を冷凍ビームによって凍らせ、動きを封じていた。 ミサト:「あぁ!ニョロゾ、泡攻撃で氷を割るのよ!」 ニョロゾは泡攻撃を足元に放ち、氷を割ろうとしている。 でも、なかなか氷は割れそうにない。 ヒカリ:「今よ、ジュゴン、波乗りよ!」 バトルフィールドの海面を大きく動かして、大きな波に乗って、ジュゴンはニョロゾに向かっていた。 ミサト:「間に合わない!…そうだ、ニョロゾ、波に向かって冷凍ビームよ!」 ニョロゾは動けない状態ながらも、冷凍ビームを放って、ジュゴンごと、波を氷漬けにしていた。 アナウンス:「おおっと、ミサト選手のニョロゾ、ジュゴンごと波を凍らせてしまった!これではジュゴンの動きが取れないか?」 アナウンスの言葉と共に、審判が旗を揚げようとしていた。 でも、あたしは分かってた。 まだジュゴンが動けること。 そして、ジュゴンが氷から出る手段を持っていることを。 ヒカリ:「悪あがきは最後までするわよ!ジュゴン、角ドリルよ!」 あたしが叫ぶと同時に、大きな氷山の中から、とっても大きな、歯医者の「キ〜ン」のような嫌な音が聞こえ、そして ジュゴンが氷から飛び出していた。 ミサト:「嘘、ジュゴンは氷の中にいたのよ。たとえ氷タイプのポケモンであっても、ダメージは受けていないわけじゃないのに…」 ヒカリ:「確かに受けたわよ。でも、ジュゴンの特性は厚い脂肪。氷タイプの技のダメージを半減させるの。 だからジュゴンはまだ十分動けるのよ!ジュゴン、ニョロゾにオーロラビームよ!」 氷から顔を出した状態で、ジュゴンはオーロラビームを放った。 それは未だに氷が溶けず、動く事の出来ないニョロゾに命中し、ニョロゾはその場に倒れるのだった。 審判:「ニョロゾ戦闘不能!よってこの勝負、ジュゴンの勝利!」 あたしはジュゴンのおかげで、1回戦目を勝利した。 ヒカリ:「ジュゴン、ありがとう!これで1回戦、ゲットよ!」 来美:「流石はカンナさんの弟子なだけあるわね。」 希:「確かにそうね、ヒカリちゃんのポケモン、ジュゴン以外も氷タイプでもあるのよね。」 志穂:「吹雪や絶対零度も使いかねないわね。こりゃ、強敵としか思えないわ。」 蓮華:「ホントね、…あれっ?涼治は?」 綾香:「トイレだってさ。あ、次始まるよ。」 その頃、涼治は、懐かしい人物と再会していた。 涼治:「まさかお前がいるとは思わなかったよ。」 ??:「俺もだ。元気そうだな。」 涼治:「ああ、少し変わったな、お前。前に会った時はかなり無愛想だったもんな。」 ??:「それを言うなよ、皿数えが笑顔を大切にしろってうるさいんだ。しょうがないって。」 俺がトイレで再会したのは、数ヶ月前に無人島で知り合った、俺と同じ境遇を経験してる水使いのエイクだった。 エイク:「アリサやルリも来てるし、後でお前のことを話しておくよ。きっと会いたがるだろうからさ。」 涼治:「ああ、でも、俺には彼女、いるぜ。」 エイク:「分かってるよ。前にレストランに来てた子だろ?草使いだっけ?」 涼治:「ああ。…それより、お前、出てるんだよな、アクアカップに。」 エイク:「ああ、出てるぞ。アクアリウムって名前でな。」 涼治:「お前だったのか。」 変わった名前だと思ったけど、水使いのこいつになら当てはまるかもしれないな。 エイク:「まっ、どうなっても今日、お前らを訪ねるからさ。会わせたい奴がいるんだ。それじゃ。」 エイクはそう言うと、どこかに行ってしまった。 蓮華:「長かったね。」 涼治:「いや、ちょっとさ、前にアサギで親友になった奴がいたんだ。それでちょっと話してただけさ。」 蓮華:「ふ〜ん、そう。ヤツデ君の試合が始まるよ。」 綾香:「よ〜し、応援しないとね。今日のためにこういう格好してきたんだもの!」 俺たちの目の前で衣装チェンジした律子の姿、それは、新体操部のユニフォームであり、スペース団下っ端にも見せたことのある レオタード姿だった。 周囲の客の視線を浴びるだけだと思うけどな。 だが、それよりも驚いたのは、ヤツデの相手だった。 まさか、エイクだったとはな。 本当の意味で、水の能力者同士の対決が出来上がってしまったようだ。 もう一度、あのシルバーさんとバトルして勝ちたい。 あの時負けてから、ずっとそう思っていた。 だから、彼女とバトルするためにも、この1回戦は勝ち越してみせる。 そう思ってバトルフィールドに出てきた俺は、対戦相手のアクアリウムって奴から、何か知り合いのような雰囲気を感じた。 会うのも初めてなのに…、まさか、同じ水属性の能力者なのか? だったら、ここでどっちの水の能力者が強いかを証明してもらうぞ! と、アナウンスが俺とアクアリウムの名前を呼んだ。 ヤツデ:「行ってこい、キングラー!」 俺は特性が「怪力バサミ」のキングラー、 アクアリウム:「頑張ってこいよ、カメックス!」 相手のポケモンは特性が「激流」のカメックスだった。 俺の方は攻撃力が、相手の方は防御力が優れていることになる。 審判:「それでは、試合開始!」 ヤツデ:「先手必勝だ!キングラー、クラブハンマーで海面を叩け!」 キングラーのクラブハンマーが海面を叩いた。 すると、海面が大きく波打ち、フィールド中の海面が割れ、大きな渦が巻き起こり、荒れた嵐のときのような海に変わっていた。 そして、クラブハンマーによる水の波動のような衝撃が、カメックスに強く向かっていった。 ヤツデ:「いける!」 そう思ってた。 だが。 アクアリウム:「よくあるパターンだな、カメックス、殻に篭って高速スピンだ!」 カメックスが殻に篭った事で、水の波動のような一撃は当たったものの、カメックスを柱の上から弾くだけになっていた。 しかも、波打つ海面上で高速スピンを行っているために、高速スピンの回転が渦の回転を逆流させて相殺させ、クラブハンマーによって 作り出された荒れた嵐のようなフィールドが元に戻ってしまっていた。 アクアリウム:「次はこっちの番だ!カメックス、キングラーにハイドロポンプだ!」 そしてカメックスの2つのキャノン砲から、ものすごい水量のハイドロポンプが放出されていた。 ヤツデ:「キングラー、こっちは破壊光線だ!」 キングラーは大きなハサミから破壊光線を発射している。 破壊光線とハイドロポンプ、威力は破壊光線の方が上だが、ここは水のフィールド。 精神的な面から考えても水タイプの技の威力が上がる可能性も高い。 そうなると、技の威力は互角に近くなる。 だが、ハイドロポンプは、破壊光線に徐々に押されてきていた。 ヤツデ:「よし、キングラー、一気に畳み掛けるんだ!フルパワーで破壊光線だ!」 キングラーは先ほどよりもパワーを増したような破壊光線を放出していた。 ハイドロポンプがドンドン押されていっている。 だが、何故かアクアリウムの表情は冷静で、全く動揺していなかった。 どうしてだ? 破壊光線を受ければカメックスはひとたまりもないのに…。 と、その時、カメックスが動いた。 アクアリウム:「カメックス、放出をやめろ!」 突然、アクアリウムはカメックスにハイドロポンプをやめさせた。 その瞬間、破壊光線は勢いよくカメックスに向かっていった。 ヤツデ:「…まさか!キングラー、破壊光線をやめ…」 アクアリウム:「もう遅いよ、カメックス、カウンターだ!」 カメックスのカウンターが発動して、破壊光線は2倍のパワーを示し、キングラーにぶつかっていった。 キングラーは硬い甲羅に守られた体であり、防御力も並ではない。 しかし、破壊光線が倍の威力を持ってぶつかってために、泡を吹いて倒れてしまっていた。 審判:「キングラー戦闘不能!よってこの勝負、カメックスの勝利!」 俺は、清香先輩たちに続いて、第1回戦目で負けてしまったのだった。 綾香:「あ〜あ、ヤツデ、負けちゃった…」 蓮華:「カメックスはミラーコートもカウンターも覚えれるし、地震やハイドロポンプ、冷凍ビームなどの強力な技も覚えられる ポケモンよ。しかも、クラブハンマーの一撃を防いじゃってたし…」 海斗:「今回のバトルはヤツデの経験不足が招いたようだな。」 希:「それもあるかもね、…でも、敗北する事で成長するものよ。ヤツデ君は、トレーナーになって日も浅いんだし。 キングラーとも出会ってまだ1ヶ月もしてない。だから、もうちょっとお互い信頼しあえるように成長しないとね。」 涼治:「そうかもしれないっすね。…蓮華、綾香、先輩たち、今日の夜、俺の知り合いの…アクアリウムが会いたいそうです。 連れてきていいっすよね?」 一瞬間があった。 蓮華:「え、涼治の知り合いって、アクアリウムの事だったの!?」 綾香:「会ってもいいけど…」 海斗:「ヤツデが混乱するかもしれないな。」 希:「ま、いいけどね。」 来美:「でも、何の用なの?」 涼治:「いえ、何か、会わせたい奴がいるようです。誰か知らないけど…」 志穂:「ちょっと、次のバトルが始まるわよ。次は海ちゃんのバトルよ。」 俺が次の句を言えなくなった所で、志穂が助け舟を出すように言った。 そして、俺たちは再びバトルを見ることにした。 エイク:「ふぅ〜、終わったぜ。」 アリサ:「エイク、お疲れ様。」 ルリ:「バトル、よかったわよ。」 エイク:「サンキュ〜、あのさ、さっき涼治に会ったぞ。今日の夜、アヤネを紹介する事にした。」 アリサ:「涼治と?」 ルリ:「アヤネを会わせるのね、分かったわ。あたしたちも一緒に行く。」 アリサ:「そうね、いいでしょ?エイク。」 エイク:「当たり前だろ、お前らも一緒だよ。」 何か緊張してきた。 そういえば、あたしがこういう大会に出るのって初めてだっけ。 ポケモンリーグにも参加した事ないし、ジム戦に出たこともないし…。 こんなあたしなのに、よくカポエラーもキングドラも一緒についてきてくれてなぁ。 今になって考えると、本当によく分かる。 それに、バッジ持ってないあたしが美香ちゃんのマリルリで予選を勝ち抜いたこともちょっとすごいかも。 今度本格的にジム戦に挑戦してみようかな。 1回戦目はやっぱり、キングドラで行く。 アナウンス:「バトルも徐々にヒートアップしてきました!さて次の試合は、空選手対海選手のバトルです。」 あたしの相手は空という少年だった。 バスケの選手のような姿をしていて、モンスターボールをドリブルするかのように扱っている。 弾まないボールでよくあそこまでドリブルが出来るなぁ。 空:「僕は決勝まで勝ちあがっていこうと思ってる。だからここで君を倒すシュートをさせてもらうよ!行ってくるんだ、コダック!」 空の出したポケモンは特性が「湿り気」か「ノーてんき」のコダック。 対するあたしはドラゴンタイプを兼ねている、特性「すいすい」のキングドラだ。 でも、コダックの特性が「ノーてんき」であるかもしれないだけに、キングドラが雨乞いを使っても、雨乞いが発動しないかもしれない。 ここは雨乞いを使わないで、素早さを下げられないようにしなきゃいけないわね。 審判:「試合開始!」 空:「僕から行かせてもらうよ!コダック、キングドラに凍える風だ!」 コダックは口から凍える風を噴き出した。 ドラゴンタイプを併せ持つキングドラには、ドラゴンタイプのダメージが効果的だけど、水タイプを兼ねたキングドラには 普通に効いてしまうことになるうえ、凍える風は素早さを下げる力もあった。 海:「キングドラ、水に潜ってかわすのよ!そして高速移動、影分身よ!」 キングドラは水に潜って冷気からかわし、再び海面に顔を出した時はフィールド上を素早く動きながら、複数の分身を作っていた。 でも、キングドラが影分身を終えた直後、コダックが乱れ引っ掻きで次々と分身を倒し始めていた。 海:「な、何!?」 空:「コダックの自己暗示だよ。自己暗示のおかげでコダックもキングドラと同じように素早く動き、同時に影分身で分身も作った。 この状況で、本物のコダックは誰だか分かるかな?」 海:「それは…」 自己暗示を使ってくるとはね。 あたしも油断してた。 ていうか、あたしの知ってるコダックは、ハナダシティのあのコダックだけだったこともあったんだけど…、これは言い訳ね。 空:「コダック、そのままキングドラに水鉄砲だ!」 空の言葉に反応したコダックは、真後ろにいた。 至近距離からの水鉄砲にふらつくキングドラ。 でも、これ以上偽者に翻弄されてはいられない。 海:「キングドラ、竜巻よ!」 キングドラを中心に水が引き寄せられ、大きな水竜巻が出来上がっていた。 その強い水の流れによって、コダックの分身は次々と姿を消し、唯一、一匹だけそこから逃れようとするコダックがいた。 空:「だったらコダック、念力でキングドラの動きを封じるんだ!」 コダックの目が青く光り、キングドラは竜巻を起こすのを無理やり止められ、苦しそうにしていた。 空:「そのまま大きく投げ飛…」 海:「そうはいかないわよ!キングドラ、煙幕よ!」 キングドラは動きが止められた状態なので、体を動かす事は出来ない。 でも、口から攻撃する事までは止められていない。 これは念力によるもので、金縛りによるものではないからだ。 キングドラの煙幕はコダックやキングドラを含む、フィールド中を包み込んでいた。 空:「コダック、凍える風で煙幕を吹き飛ばせ!」 空の声が聞こえ、コダックが鳴く声が聞こえ、そして、冷たい風が煙幕を吹き飛ばしていた。 しかし、フィールド上にはキングドラの姿はなく、コダックも空も動揺し始めていた。 海:「キングドラ、今よ!水中から龍の息吹!」 実は煙幕にまぎれて、キングドラは水に潜っていたのだ。 煙幕がフィールドを包み込んだ時からずっとキングドラが海面上にいるとは大間違いなのだ。 そして、水中から放たれた龍の息吹は、コダックに命中した。 空:「コダック!こっちも水に潜るんだ!コダック!」 空が必死に言うけど、コダックは体が思うように動けていない。 何故なら、龍の息吹の副作用により、コダックは麻痺してしまっていたのだ。 空:「コダック、もう一度念力だ!」 海:「キングドラ、コダックにハイドロポンプよ!」 麻痺して素早さが遅くなったコダックの念力は発動するのが遅れた。 そして、キングドラのハイドロポンプは、コダックを大きく弾き飛ばし、コダックは水に落下した。 審判:「コダック、戦闘不能!よってこの勝負、キングドラの勝利!」 空:「そんな…、僕のシュートが大きく外れたなんて…」 空は座り込むように崩れ落ち、コダックは目を回しながら水に浮いていた。 海:「やったぁ!1回戦目、勝った!キングドラ、ありがとう!」 ヒカリ:「海ちゃん、流石ね。」 来美:「そうね、アレで今までジム戦一度も経験してないなんて思えないわ。」 蓮華:「それだけ強敵ではあるってことよね。」 ヤツデ:「俺と綾香よりも強いんだよな?」 綾香:「それは当たり前よね、多分。」 希:「えっと、次の3戦が終わると哲也のバトル、その次に晃正君や玲奈のバトルがあるのね。」 来美:「そうみたいね、少し休憩しましょうか。座ってるだけでも疲れるわよ。」 綾香:「でも、次の試合は注目株よ。シルバーさんの試合や、姫乃さんの試合が続くんだもの。あたしは見てよっと。」 希:「それじゃ、見ていたい人だけね。あたしはちょっと体を伸ばしてくるわ。」 鈴香:「あたしも行く!」 その頃。 ??:「見つけたわ、あの子も確か注目株の子ね。ここで潰しておくのが決めてだわ。」 謎の女性トレーナーが一人の少年に目を向けていた。 ??:「あらっ?こっちに来るわ、それじゃ、いつもの作戦と行きますか。」 女性は角に隠れ、気配を察して少年にわざとぶつかっていき、わざと跳ね飛ばされたような仕草をとった。 ??:「きゃっ!」 少年:「うわっ!…イテテ、大丈夫ですか?」 ??:「ええ、ん、痛い!足を、くじいちゃったみたい…」 少年:「すいません!あの、あの、肩を貸してください。救護室まで…」 少年が女性に近づいた時、女性は少年の首筋に一本の注射器を刺そうとしていた。 だが、彼女の作戦は偶然にも壊れようとしていた。 希:「う〜ん、やっぱり座ってるだけってのは疲れるわね。」 鈴香:「このまま偵察にでも行きません?律ちゃんと清香先輩に任せき…、希さん、あれ!」 希:「えっ?あぁ!」 二人が通りかかり、女性が少年に注射器を近づける瞬間を目にしていた。 希:「ちょっとそこで何してるのよ!電撃波!」 鈴香:「メガホンソニックブーム!」 希と鈴香はすぐに行動に動いていた。 流石は能力者として、戦士としての経験が高いだけある。 二人の放った軽めの電撃と、弱めの音波は、女性ごと注射器を女性から離した。 希:「あなたね、トレーナー潰しをしてるのは!」 鈴香:「ようやく見つけたわよ、ここで成敗してやる!」 ??:「ふん、ドガース、煙幕よ!」 女性はドガースを出し、煙幕を出して逃げてしまった。 残っていたのは呆気にとられていた少年の…… 鈴香:「あ、アクアリウムさんだ。」 希:「確か、涼治君の知り合いよね?大丈夫だった?」 二人が偶然にも助け出したのは、涼治の親友のエイクだった。 ??:「ちっ、せっかくのチャンスだったのに…。全く、どうしてここは能力者が多いのよ。」 二人がエイクのことに気づいた時、失敗した女性は、一人、また別のトレーナーに狙いを定めようとしていた。 ??:「もう男も女も関係ないわね。あそこにいる少年でいいわ。いや、あれは青年かしら?」 女性がその人物に近づこうとした時、女性は自分に向かって吹いてきた、ものすごい突風に弾き飛ばされていた。 ??:「きゃっ!」 女性が弾かれた時、その青年、哲也は振り向いた。 哲也は反射的に自分に敵意が向いたのを感じて突風を放っていただけだった。 しかし、それが功を成し、哲也は助かっていた。 哲也:「もしかして、トレーナー潰しか!」 ??:「ええ、でも、ここで会わなくてもよかったのね。数時間後のバトルで会いましょう。」 この時哲也は思い出した。 ポケモンセンターのスクリーンに出ていたトレーナーが、彼女だった事に。 哲也:「お前が俺の相手…」 ??:「ええ、あたしはアミカ。よろしくね、風を操るトレーナーさん。今は何もしないわ。せっかくのバトルですから、 面白く、苛めてあげるわ。」 トレーナー潰しの女性、アミカはその場から去っていった。 この時、哲也もアミカも気づいていない事があった。 哲也の肩辺りから、何かが離れていったのを。 それは、志穂の式神だった。 志穂:「ふぅ〜ん、なるほどね、…そういうことか…」 一人、壁際に立つ志穂に来美が話しかけていた。 来美:「志穂ちゃん?何してるの?」 志穂:「今ね、式神からの報告を聞いていたの。哲也の試合の時、全員をここに集めて。どうやら、哲也の相手があたしたちの 探している相手らしいから。」 来美:「え、ホント?」 驚き動揺する来美。 志穂:「みたいよ。今日バトルがある哲也たち一人一人に式神をつけておいたの。その一人からの報告だから。」 来美:「分かったわ、玲奈ちゃんと晃正君以外の全員を集めてくるわ。」 来美が外の方に走っていった。 そして志穂は、来美とは逆の方向に眼を向けていた。 志穂:「お願いね。………それにしても、こんなに早く、片が着くとはね。…誰?」 志穂が言い放つと、壁際から、一人の青年が姿を現した。 志穂:「あなたは…あの時あたしを見ていた人ね。…何か用かしら?」 ??:「別に。…君から変わった力を感じるからね。少し警戒しているだけさ。」 志穂:「変わった力なら、このコロシアムの中に10人以上いるけど?」 ??:「そのようだが、俺が感じたのは二つ。君と、キングドラのトレーナーだけだ。君たちは、ここで何もしないよね?」 志穂:「悪いけど、あたしたちは正義の戦士よ。何もしないわ。」 ??:「そうか、だが、まだ安心できないな。」 志穂:「そう、それじゃ、もう少し監視を続けていれば?あたしは別に気にしないから。」 志穂はそう言うと、観客席の方に戻っていった。 あの人、どこかの神社の宮司か何かね。 そうじゃなきゃ、あたしと海ちゃんにだけある、陰陽道の力を感じることはないわ。 この力は使い方によっては悪い事も起こすから。 でも、あの人が心配するような事は起こさない。 それが海ちゃんだし、それに、あたしは龍宮神社の巫女なんだもの。 この時、フィールド上ではシルバーが、そして姫乃がバトルをし、圧勝していた。 蓮華:「すごいバトルだね…」 綾香:「うん、あたしたちがもしかしたらバトルをする相手になるかもしれないんだよ。」 蓮華:「だとしたら、頑張らないとね。」 シルバーさんのジュエロという名前のジュゴン、姫乃さんの色違いのミロカロス、どちらもギャラドスやランターンに対して 2ターンから3ターンで倒していた。 分かってる限り、シルバーさんは予選をジュゴンとゴルダックだけで、姫乃さんはミロカロスだけで勝ちあがっていた。 でも、明らかにボールがまだ数個確認されてるだけに、他にも強力なポケモンを持っていると考えられる。 だから、あたしたちも気を引き締めないとね。 そんな時、来美ちゃんと志穂ちゃんを筆頭に、みんながあたしたちの周囲に集まってきていた。 これって一体、何なのかしら…?